(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011314
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた光学部材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250116BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20250116BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20250116BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20250116BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20250116BHJP
C08K 5/23 20060101ALI20250116BHJP
C08K 5/08 20060101ALI20250116BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20250116BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20250116BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/00
C08L67/00
C08L69/00
C08K5/34
C08K5/23
C08K5/08
C08G64/04
G02B1/04
G02B5/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024185850
(22)【出願日】2024-10-22
(62)【分割の表示】P 2020563291の分割
【原出願日】2019-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018244717
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】茂木 篤志
(72)【発明者】
【氏名】石原 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】西森 克吏
(72)【発明者】
【氏名】池田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】大島 健輔
(72)【発明者】
【氏名】神田 正大
(72)【発明者】
【氏名】村田(鈴木) 章子
(72)【発明者】
【氏名】緒方 龍展
(72)【発明者】
【氏名】末松 三豪
【テーマコード(参考)】
2H148
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA20
4J002AA011
4J002CF001
4J002CG001
4J002CG041
4J002EE026
4J002EQ016
4J002EU006
4J002FD096
4J002GP00
4J029AA01
4J029AA08
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE04
4J029BB00
4J029BB16B
4J029BB18
4J029BC00
4J029BC09
4J029HA01
4J029HC03
4J029HC05A
4J029JA121
4J029JF031
4J029KC01
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可視光をカットし、かつ赤外光透過性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と、色材とを含む、熱可塑性樹脂組成物であって、波長894nmにおける屈折率が1.60以上であり、厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超1.00%以下であり、かつ、波長840nm~940nmにおける平均透過率が80%以上である、熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
色材
とを含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
波長894nmにおける屈折率が1.60以上であり、
厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超1.00%以下であり、かつ、波長840nm~940nmにおける平均透過率が80%以上である、
熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエステルカーボネート樹脂からなる群より選択される樹脂を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、モノマーとして、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択されるジオール化合物を含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(I)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、酸素原子、窒素原子及びイオウ原子から選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数7~17のアラルキル基を表し、
p、q、rおよびsは、それぞれ独立して0~4の整数を表し、
Rは、
【化2】
であり、
ここでiは0~10の整数を表し、iiは1~10の整数を表し、iiiは1~10の整数を表す。)
【化3】
(一般式(II)中、
R
6及びR
7はR
1~R
4と同義であり、
n及びmは、0~5の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【化4】
(一般式(III)中、
R
8及びR
9はR
1~R
4と同義であり、
a及びbは、0~4の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【請求項4】
前記色材が、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、及び紫色顔料のうち少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記色材が、アントラキノン系顔料、ペリノン系顔料、メチン系顔料、イソインドリン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料、及びレーキ顔料のうち少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超0.8%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超0.5%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学レンズ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、赤外線カメラ用レンズ。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、生体認証カメラ用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、より詳細には、高屈折材を含む熱可塑性樹脂組成物、及び当該熱可塑性樹脂組成物を用いた光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線カメラや赤外線センサーは、物体の温度変化に伴い物体から放射される赤外線を赤外線量の変化として可視化するためのものであり、可視光線などで検出する場合と比較して、暗所での動作安定性を有する。赤外線カメラや赤外線センサーは、医療分野における診断、建築物や電気設備などの劣化を発見するための非破壊検査、安全保障分野における暗視カメラ、金融機関ATMや空港などにおける生体認証カメラなどの個人認証などに広く用いられている。
【0003】
一般に、赤外線カメラや赤外線センサーは、赤外線を検出する装置として、シリコン半導体などの半導体を搭載している。しかしながら、このような半導体は、赤外線のみならず可視光線も検出する。したがって、赤外線カメラ/センサー用レンズに用いる材料には、赤外線を検出し、かつ可視光線をカットするという特性が求められる。
【0004】
従来、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学素子の材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されてきた。このうち、赤外線を検出し、かつ可視光線をカットする光学用樹脂として、ビスフェノールA-ポリカーボネート等による可視光線カット材料が知られており、赤外線透過フィルターなどに用いられている(特許文献1~3)。
【0005】
しかしながら、高屈折材を含む熱可塑性樹脂組成物、及び当該熱可塑性樹脂組成物を用いた光学レンズは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55-62410号公報
【特許文献2】国際公開2015/056734号公報
【特許文献3】特公昭62-53801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
可視光をカットし、かつ赤外光透過性を有する材料として、高屈折材を含む熱可塑性樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた光学レンズの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、可視光をカットし、かつ赤外光透過性を有する光学レンズ用材料として、熱可塑性樹脂と色材とを含む熱可塑性樹脂組成物を開発し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の実施形態を含む。
【0010】
(1)熱可塑性樹脂と、色材とを含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
波長894nmにおける屈折率が1.60以上であり、
厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超1.00%以下であり、かつ、波長840nm~940nmにおける平均透過率が80%以上である、
熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
(2)前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエステルカーボネート樹脂からなる群より選択される樹脂を含む、上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
(3)前記熱可塑性樹脂は、モノマーとして、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択されるジオール化合物を含む、上記(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(I)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、酸素原子、窒素原子及びイオウ原子から選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数7~17のアラルキル基を表し、
p、q、rおよびsは、それぞれ独立して0~4の整数を表し、
Rは、
【化2】
であり、
ここでiは0~10の整数を表し、iiは1~10の整数を表し、iiiは1~10の整数を表す。)
【化3】
(一般式(II)中、
R
6及びR
7はR
1~R
4と同義であり、
n及びmは、0~5の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【化4】
(一般式(III)中、
R
8及びR
9はR
1~R
4と同義であり、
a及びbは、0~4の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【0013】
(4)前記色材が、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、及び紫色顔料のうち少なくとも1種を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
(5)前記色材が、アントラキノン系顔料、ペリノン系顔料、メチン系顔料、イソインドリン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料、及びレーキ顔料のうち少なくとも1種を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0015】
(6)厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超0.8%以下である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0016】
(7)厚さが1mmの場合の前記熱可塑性樹脂組成物において、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超0.5%以下である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0017】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学レンズ。
【0018】
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、赤外線カメラ用レンズ。
【0019】
(10)上記(1)~(7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、生体認証カメラ用レンズ。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高屈折材を含む熱可塑性樹脂組成物は、赤外線透過性を有し、かつ可視光線をカットすることにより、可視光線に由来するノイズを減らすことができる。よって、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた光学レンズは、赤外線カメラや赤外線センサーの画像精度を向上させることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を光学レンズに用いることにより、光学レンズの度数アップや枚数軽減ができる。さらに、赤外線透過フィルターなどの可視光線をカットする手法と比較して、フィルターレスにすることができるため、部品点数の軽減や低背化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明は、熱可塑性樹脂と、色材とを含む、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0023】
(A)熱可塑性樹脂
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に用いることができる熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエステルカーボネート樹脂が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂である。
【0024】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に用いることができる熱可塑性樹脂は、モノマーとして、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択されるジオール化合物を含み得る。
【0025】
【化5】
(一般式(I)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、酸素原子、窒素原子及びイオウ原子から選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数7~17のアラルキル基を表し、
p、q、rおよびsは、それぞれ独立して0~4の整数を表し、
Rは、
【化6】
であり、
ここでiは0~10の整数を表し、iiは1~10の整数を表し、iiiは1~10の整数を表す。)
【0026】
【化7】
(一般式(II)中、
R
6及びR
7はR
1~R
4と同義であり、
n及びmは、0~5の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【0027】
【化8】
(一般式(III)中、
R
8及びR
9はR
1~R
4と同義であり、
a及びbは、0~4の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【0028】
上記一般式(I)で示されるモノマーとしては、具体的には、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、4-(9-(4-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール、2,2’(9H-フルオレン-9,9’-ジイル)ビス(エタン-1-オール)、9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジメタノール、等が挙げられるが、これらに限定されない。これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0029】
上記一般式(I)で示されるモノマーの中でも9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]フルオレンが好ましく、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンがより好ましい。
【0030】
上記一般式(II)で示されるモノマーとしては、具体的には、2,2’-ビス(1-ヒドロキシメトキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(「BHEBN」とも称する)、2,2’-ビス(3-ヒドロキシプロピルオキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシブトキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン(「BINL-2EO」とも称する)、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル)フルオレン(「BNEF」とも称する)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(「BNE」とも称する)、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(「BPEF」とも称する)、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(「BPPEF」とも称する)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレン(「DNBINOL-2EO」とも称する)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,1’-ビナフタレン(「2DNBINOL-2EO」とも称する)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1’-ビナフタレン(「9DPNBINOL-2EO」とも称する)、6,6’-ジ-(3-シアノフェニル)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(「CN-BNA」とも称する)、6,6’-ジ-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(「FUR-BNA」とも称する)、6,6’-ジ-(ジベンゾ[b,d]チエン-4-イル)-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(「THI-BNA」とも称する)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル-エチニル)-1,1’-ビナフタレン(「D2NACBHBNA」とも称する)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェニルエチニル)-1,1’-ビナフタレン(「DPACBHBNA」とも称する)等が挙げられるが、これらに限定されない。上記一般式(II)で示されるモノマーの中でも、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンが好ましい。
【0031】
上記一般式(III)で示されるモノマーとしては、具体的には、9,9-ビス[6-(1-ヒドロキシメトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、9,9-ビス[6-(3-ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、及び9,9-ビス[6-(4-ヒドロキシブトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記一般式(III)で示されるモノマーの中でも、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレンが好ましい。
【0032】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂は、モノマーとして、上記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択されるジオール化合物を1種のみ用いて作製される一元系樹脂であってもよいし、2種を用いて作製される二元系樹脂、または3種を用いて作製される三元系樹脂であってもよいし、4種を用いて作製される四元系樹脂であってもよい。あるいは、本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂は、上記の一元系樹脂、二元系樹脂、三元系樹脂、及び四元系樹脂のうち2種以上の樹脂をブレンドしたものであってもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂は、モノマーとして、上記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択されるジオール化合物以外の他のジオール化合物を含んでもよい。このような他のジオール化合物としては、例えば、4,4’-ビフェニルジオール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロウンデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-アリルフェニル)プロパン、3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルジフェニルランダム共重合シロキサン、α,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、アダマンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、4、4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール)、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(メタン-1-オール)、2,2’-(1,4フェニレンビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-アリルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)シクロドデカン、7-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、5,6-ジメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、フルオレングリコール、フルオレンジエタノール、イソソルビドなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記他のジオール化合物は、好ましくは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0034】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂及び/又はポリエステルカーボネート樹脂を含む場合、これらの樹脂は、モノマーとして下記一般式(V)で表される化合物を含み得る。
【化9】
(一般式(V)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、酸素原子、窒素原子及びイオウ原子から選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数7~17のアラルキル基を表し、
a及びbは、0~4の整数を表す。)
【0035】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂は、ランダム共重合構造、ブロック共重合構造、及び交互共重合構造のいずれを含んでもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、好ましくは20,000~200,000であってよい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、より好ましくは、25,000~120,000であり、さらに好ましくは28,000~55,000であり、特に好ましくは30,000~45,000である。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、成形体が脆くなることを防ぐことができ、溶融粘度が過度に高くならないようにして製造後の樹脂の取り出しを容易にし、更には流動性を改善し溶融状態で射出成形することを容易にすることができる。
【0037】
本発明の別の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂に、他の樹脂をブレンドして、光学レンズの製造に供することができる。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があげられるが、これらに限定されない。
【0038】
(B)色材
色材は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いることができるものであれば特に限定されず、例えば染料及び顔料、有機系色材及び無機系色材などを用いることができる。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に用いることができる色材は、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、及び紫色顔料のうち少なくとも1種を含み得る。好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に用いることができる色材は、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、及び紫色顔料を含む。
【0039】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に用いることができる色材は、アントラキノン系顔料、ペリノン系顔料、メチン系顔料、イソインドリン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料、及びレーキ顔料のうち少なくとも1種を含み得る。
【0040】
熱可塑性樹脂組成物に用いることができる緑色顔料としては、例えば、アントラキノン系、ペリノン系などを用いることができ、有本化学工業社製Oil Green 5602、ランクセス製MacrolexGreenG、オリエント化学工業製Oplas Green 533などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
熱可塑性樹脂組成物に用いることができる赤色顔料としては、例えば、ペリノン系、アントラキノン系などを用いることができ、有本化学工業社製Oil Red 5303、Fluorescent Red DR-345、Plast Red 8355、8360、8365、8370、D-54、DR-426N、DR-427N、ランクセス製MacrolexRedA、MacrolexRedEGなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
熱可塑性樹脂組成物に用いることができる黄色顔料としては、例えば、メチン系、アントラキノン系、ペリノン系などを用いることができ、有本化学工業社製Oil Yellow 5001、Plast Yellow 8000、8005、8040、8050、8070、ランクセス製MacrolexYellow6Gなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
熱可塑性樹脂組成物に用いることができる紫色顔料としては、例えば、アントラキノン系、ペリノン系などを用いることができ、有本化学工業社製Plast Violet 8840、8850、8855、ランクセス製MacrolexViolet3Rなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
(C)その他の成分
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、添加剤として酸化防止剤および離型剤を含むことができる。
【0045】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及び3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0046】
前記酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中に0.50質量%以下であることが好ましく、0.10~0.40質量%であることがより好ましく、0.20~0.40質量%であることが特に好ましい。
【0047】
離型剤としては、その90質量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。
【0048】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステル又は部分エステル等が挙げられる。
【0049】
前記離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中に0.50質量%以下であることが好ましく、0.01~0.10質量%であることがより好ましく、0.03~0.05質量%であることが特に好ましい。
【0050】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その他の添加剤として、加工安定剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤、ブルーイング剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0051】
(D)不純物
本発明の熱可塑性樹脂には、製造時に生成するフェノールや、反応せずに残存したモノマーであるジオールや炭酸ジエステルが不純物として存在していてもよい。熱可塑性樹脂中のフェノール含量は、0.1~3000ppmであることが好ましく、0.1~2000ppmであることがより好ましく、1~1000ppm、1~800ppm、1~500ppm、または1~300ppmであることが特に好ましい。熱可塑性樹脂中のジオール含量は、0.1~5000ppmであることが好ましく、1~3000ppmであることがより好ましく、1~1000ppmであることが更により好ましく、1~500ppmであることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂中の炭酸ジエステル含量は、0.1~1000ppmであることが好ましく、0.1~500ppmであることがより好ましく、1~100ppmであることが特に好ましい。熱可塑性樹脂中に含まれるフェノールおよび炭酸ジエステルの量を調節することにより、目的に応じた物性を有する樹脂を得ることができる。フェノールおよび炭酸ジエステルの含量の調節は、重縮合の条件や装置を変更することにより適宜行うことができる。また、重縮合後の押出工程の条件によっても調節可能である。
【0052】
フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を上回ると、得られる樹脂成形体の強度が落ちたり、臭気が発生したりする等の問題が生じ得る。一方、フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を下回ると、樹脂溶融時の可塑性が低下する虞がある。
【0053】
2.熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂は、WO2018/016516に記載の方法に従って、製造することができる。具体的には、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択されるジオール化合物と、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質とを、塩基性化合物触媒及び/又はエステル交換触媒の存在下または触媒の非存在下において、加熱下で、さらに常圧又は減圧下で、溶融重縮合法により反応させて製造することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、上記の製造方法に限定されない。
【化10】
(一般式(I)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、酸素原子、窒素原子及びイオウ原子から選択されるヘテロ環原子を含んでいてもよい炭素数6~20のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数7~17のアラルキル基を表し、
p、q、rおよびsは、それぞれ独立して0~4の整数を表し、
Rは、
【化11】
であり、
ここでiは0~10の整数を表し、iiは1~10の整数を表し、iiiは1~10の整数を表す。)
【化12】
(一般式(II)中、
R
6及びR
7はR
1~R
4と同義であり、
n及びmは、0~5の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【化13】
(一般式(III)中、
R
8及びR
9はR
1~R
4と同義であり、
a及びbは、0~4の整数を表し、
Yは炭素数1~5のアルキレン基を表し、
n1及びn2は、各々独立に、0~10の整数を表す。)
【0054】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、上述のようにして製造された熱可塑性樹脂と色材とを溶融混錬することにより製造することができる。本発明の熱可塑性樹脂は、例えば、タンブラーにて混合した後、二軸押出機などを用いて溶融混錬し、ストランドカットによりペレットとして得ることができるが、この方法に限定されない。
【0055】
3.熱可塑性樹脂組成物の物性
色材を添加した高屈折材である本発明の熱可塑性樹脂組成物は、可視光をカットし、かつ赤外光透過性を有する。よって、本発明の熱可塑性樹脂組成物を赤外光カメラ/センサー用の光学レンズに用いることにより、可視光に由来するノイズを効果的に減らすことができる。
【0056】
(A)屈折率(nD)
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、波長894nm、23℃における屈折率が1.60以上であってよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物の波長894nmにおける屈折率は、好ましくは1.61~1.71であり、さらに好ましくは1.62~1.70であり、特に好ましくは1.64~1.68であってよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、屈折率が高く、光学レンズ材料として適している。屈折率は、JIS B7071-2に準拠して、Vブロック法屈折計(カールツアイスイエナ社製「PR-2」)を用いて測定することができる。
【0057】
(B)透過率
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、厚さが1mmの場合、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が0%超1.00%以下であり、かつ、波長840nm~940nmにおける平均透過率が80%以上であってよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、厚さが1mmの場合、波長380nm~630nmにおける透過率の最大値が、好ましくは0%超0.8%以下であり、より好ましくは0%超0.5%以下、さらにより好ましくは0.1%以下であってよい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、厚さが1mmの場合、波長840nm~940nmにおける平均透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは99%以上であってよい。波長380nm~630nmにおける透過率の最大値、および波長840nm~940nmにおける平均透過率が上記の範囲内であれば、可視光線に由来するノイズを効率的に減らすことができ、赤外線カメラや赤外線センサーによる測定波長において、画像精度を向上させることができる。さらに、本発明の好ましい実施形態において、波長720nmにおける透過率は50%以下であり、波長780nmにおける透過率は50%以上であってよい。波長720nmにおける透過率は、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。波長780nmにおける透過率は、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。透過率は、JIS K7105に準拠して、段付き平板状試験片の1mm厚みの部分について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて測定することができる。
【0058】
(C)ガラス転移温度(Tg)
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、90~180℃であり、より好ましくは95~175℃であり、さらに好ましくは100~170℃、さらにより好ましくは130~170℃、特に好ましくは135~150℃である。熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が上記の範囲内であれば、射出成形するのに好都合である。Tgが90℃より低いと、使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また180℃を越えると、樹脂の溶融温度が高くなり、樹脂の分解や着色が発生しやすくなるため好ましくない。樹脂のガラス転移温度が高すぎると、汎用の金型温調機では、金型温度と樹脂ガラス転移温度の差が大きくなってしまう。そのため、製品に厳密な面精度が求められる用途においては、ガラス転移温度が高すぎる樹脂の使用は難しく、好ましくない。また、成形流動性及び成形耐熱性の観点からは、Tgの下限値は130℃が好ましく、135℃がより好ましく、Tgの上限値は、160℃が好ましく、150℃がより好ましい。
【0059】
(D)その他の特性
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高い耐湿熱性を有する。耐湿熱性は、熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる光学成形体に対して、「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)を行い、試験後の光学成形体の全光線透過率を測定することで評価することができる。PCT試験は、直径50mm、厚さ3mmの射出成形物を、120℃、0.2Mpa、100%RH、20時間の条件で保持することで行うことができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、PCT試験後の全光線透過率が60%以上であり、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらにより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。全光線透過率が60%以上であれば、従来のポリカーボネート樹脂に対して高い耐湿熱性を有すると言える。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物のb値は、好ましくは5以下である。b値が小さいほど黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる残存フェノール量は、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる残存ジフェニルカーボネート(DPC)量は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
4.光学レンズ
本発明の光学レンズは、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形機あるいは射出圧縮成形機によりレンズ形状に射出成形することによって得ることができる。本発明の一実施形態において、光学レンズは、WO2018/016516に記載の方法に従って、製造することができる。射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形温度は好ましくは180~300℃、より好ましくは180~290℃である。また、射出圧力は好ましくは50~1700kg/cm2である。
【0064】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0065】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。非球面レンズの非点収差は0~15mλであることが好ましく、より好ましくは0~10mλである。
【0066】
本発明の光学レンズの厚みは、用途に応じて広範囲に設定可能であり特に制限はないが、好ましくは0.01~30mm、より好ましくは0.1~15mmである。本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていてもよい。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。これらのうちでより好ましいものは酸化ケイ素、酸化ジルコニウムであり、更に好ましいものは酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの組み合わせである。また、反射防止層に関しては、単層/多層の組み合わせ、またそれらの成分、厚みの組み合わせ等について特に限定はされないが、好ましくは2層構成又は3層構成、特に好ましくは3層構成である。また、該反射防止層全体として、光学レンズの厚みの0.00017~3.3%、具体的には0.05~3μm、特に好ましくは1~2μmとなる厚みで形成するのがよい。
【0067】
本発明の一実施形態において、光学レンズは、赤外線カメラ用レンズであってよい。本発明の好ましい実施形態において、光学レンズは、生体認証カメラ用レンズである。
【実施例0068】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されることを意図しない。
【0069】
(1)透過率
熱可塑性樹脂組成物のペレットを、120℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(ファナック社製ROBOSHOT S-2000i30A)により、樹脂温度260℃、金型温度130℃、成形サイクル30秒の条件で、幅40mm×長さ80mmで厚みが1mm及び2mmの2段の段付き平板状試験片を成形した。JIS K7105に準拠して、段付き平板状試験片の1mm厚みの部分について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U-4100」)を用い、透過率の測定を行った。波長380nm~630nmにおける透過率の最大値は、波長380nm~630nmにおいて1nm毎に透過率を測定して得られた250個のデータ中の最大値である。波長840nm~940nmにおける平均透過率は、波長840nm~940nmにおいて1nm毎に透過率を測定して得られた100個のデータの平均値である。
【0070】
(2)屈折率(nD)
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物のペレットを、120℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(ファナック社製ROBOSHOT S-2000i30A)により、樹脂温度260℃、金型温度130℃、成形サイクル30秒の条件で、幅40mm×長さ40mmで厚みが3mmの平板状試験片を成形した。JIS B7071-2に準拠して、Vブロック法屈折計(カールツアイスイエナ社製「PR-2」)を用い、屈折率の測定を行った。
【0071】
(3)アッベ数(ν)
熱可塑性樹脂のアッベ数(ν)は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。アッベ数は、23℃下での波長486nm、589nm及び656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。波長486nm、589nm及び656nmの屈折率は、厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用いて、JIS-K-7142の方法で測定することができる。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0072】
(4)ポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムからMwを算出した。
【0073】
(5)ガラス転移温度(Tg)
JIS K7121-1987に基づき、示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。DSC分析計として、日立ハイテクサイエンスX-DSC7000を用いた。加熱速度は、毎分10℃である。
【0074】
(6)全光線透過率
下記b値の測定用に作成した熱可塑性樹脂からなる厚さ3mmのプレートについて、日本電色工業(株)製SE2000型分光式色差計を用い、JIS-K-7361-1の方法で測定した。
【0075】
(7)b値
製造した樹脂を120℃で4時間真空乾燥した後、射出成型機(FANUC ROBOSHOT α-S30iA)によりシリンダー温度270℃、金型温度Tg-10℃にて射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験プレート片を得た。このプレート片を用いて、JIS K7105に準じb値を測定した。b値が小さいほど黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。成形プレートの測定には、日本電色工業(株)製SE2000型分光式色差計を用いた。
【0076】
(8)残存フェノール及び残存ジフェニルカーボネート(DPC)量
秤量したポリカーボネート樹脂1.0gを精秤し、ジクロロメタン10mlに溶解し、攪拌しながら100mlのメタノールに徐々に添加して樹脂を再沈殿させた。十分に攪拌を行った後、沈殿物を濾別し、濾液をエバポレータにより濃縮して得られた固体へ標準物質溶液1.0gを精秤して加えた。さらに1gのクロロホルムを加えて希釈した溶液をGC-MSにより定量した。
標準物質溶液:200ppm、2,4,6-トリメチルフェノールのクロロホルム溶液
測定装置(GC-MS):Agilent HP6890/5973MSD
カラム:キャピラリーカラムDB-5MS, 30m×0.25mm I.D.,膜厚0.5μm
昇温条件:50℃(5min hold)~300℃(15min hold),10℃/min
注入口温度:300℃、打ち込み量:1.0μl(スプリット比25)
イオン化法:EI法
キャリアーガス:He,1.0ml/min
Aux温度:300℃
質量スキャン範囲:33-700
【0077】
(9)残存BHEBN量及び残存BPPEF量
秤量したポリカーボネート樹脂0.5gをテトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解し、試料溶液とした。標品として各化合物の純品より検量線を作成し、試料溶液2μLをLC-MSにより以下の測定条件で定量した。なお、この測定条件での検出限界値は0.01ppmである。残存BHEBN量及び残存BPPEF量以外の他の残存モノマーも、同様にして測定することができる。
LC-MS測定条件:
測定装置(LC部分):Agilent Infinity 1260 LC System
カラム:ZORBAX Eclipse XDB-18、及びガードカートリッジ
移動相:
A: 0.01mol/L-酢酸アンモニウム水溶液
B:0.01mol/L-酢酸アンモニウムのメタノール溶液
C:THF
移動相のグラジエントプログラム:
【表1】
流速:0.3ml/分
カラム温度:45℃
検出器:UV(225nm)
測定装置(MS部分):Agilent 6120 single quad LCMS System
イオン化ソース:ESI
極性: Positive
フラグメンタ: 100V
ドライガス:10L/分、350℃
ネブライザ:50psi
キャピラリ電圧:3000V
測定イオン:
BHEBN:イオン種=[M+NH4]-、m/z=392.1
BPPEF:イオン種=[M+NH4]-、m/z=608.3
【0078】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
[製造例1]熱可塑性樹脂A(高屈折材)
原料として、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン(「BNEF」とも称する)8.0kg(14.85モル)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(「BHEBN」とも称する)7.5kg(20.03モル)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(「BPPEF」とも称する)7.5kg(12.70モル)、ジフェニルカーボネート(「DPC」とも称する)10.5kg(49.02モル)、及び2.5×10
-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10
-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10
-6モル)を攪拌機及び留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始30分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で120分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間200℃に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、2時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で245℃まで昇温し、さらに40分間攪拌を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成した熱可塑性樹脂をペレタイズして取り出した。得られた樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は32000、ガラス転移温度(Tg)は142℃であった。
【化14】
【0079】
[製造例2]熱可塑性樹脂B(高屈折材)
原料として、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]フルオレン(「BPEF」とも称する)20.86kg(47.56モル)、DPC10.5kg(49.02モル)、及び2.5×10
-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10
-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10
-6モル)を用いる以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂を得た。得られた樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は31000、ガラス転移温度(Tg)は145℃であった。
【化15】
【0080】
[製造例3]熱可塑性樹脂C(高屈折材)
原料として、BPEF18.15kg(41.39モル)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「BPA」とも称する)1.41kg(6.18モル)、DPC10.5kg(49.02モル)、及び2.5×10
-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10
-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10
-6モル)を用いる以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂を得た。得られた樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は31000、ガラス転移温度(Tg)は145℃であった。
【化16】
【0081】
[製造例4]熱可塑性樹脂E(高屈折材)
原料として、BHEBN4.53kg(12.1モル)、BPPEF8.72kg(14.8モル)、DPC5.99kg(27.9モル)、及び2.5×10
-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10
-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10
-6モル)を用いる以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂を得た。得られた樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は32000、ガラス転移温度(Tg)は140℃であった。
【化17】
【0082】
熱可塑性樹脂D(一般的な熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂Dとしては、三菱エンジニアリングプラスチックク株式会社製ユーピロンS-3000(BPAのホモポリマー樹脂)を用いた。
【0083】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
[実施例1~8]
熱可塑性樹脂、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、及び紫色顔料をそれぞれ表2に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)により、シリンダー温度260℃で溶融混練し、ストランドカットにより熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0084】
[比較例1]
熱可塑性樹脂として高屈折材である熱可塑性樹脂Aを用い、色材を含まない熱可塑性樹脂組成物を比較例1とした(表2)。
【0085】
[比較例2]
熱可塑性樹脂として高屈折材である熱可塑性樹脂Aを用い、色材としてカーボンブラックを含む熱可塑性樹脂組成物を比較例2とした(表2)。
【0086】
[比較例3]
熱可塑性樹脂として一般的な熱可塑性樹脂である熱可塑性樹脂Dを用い、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、及び紫色顔料を含む熱可塑性樹脂組成物を比較例3とした(表2)。
【0087】
実施例1~8、および比較例1~3で得られた熱可塑性樹脂組成物について、厚さが1mmの場合の、波長894nmにおける屈折率、波長380nm~630nmにおける透過率(単位:%)の最大値、波長720nmにおける透過率(単位:%)、波長780nmにおける透過率(単位:%)、及び波長840nm~940nmにおける平均透過率(単位:%)を測定し、表2に示した。
【0088】
【0089】
表2に示されているように、高屈折材と色材とを含む本発明の熱可塑性樹脂組成物は、赤外線を検出し、かつ可視光線を効果的にカットすることができる。よって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、赤外光カメラ/センサー用の光学レンズに用いることで、可視光に由来するノイズを減らし、画像精度を向上させることができる。