IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

特開2025-113385地図情報更新装置及び地図情報更新方法
<>
  • 特開-地図情報更新装置及び地図情報更新方法 図1
  • 特開-地図情報更新装置及び地図情報更新方法 図2
  • 特開-地図情報更新装置及び地図情報更新方法 図3
  • 特開-地図情報更新装置及び地図情報更新方法 図4
  • 特開-地図情報更新装置及び地図情報更新方法 図5
  • 特開-地図情報更新装置及び地図情報更新方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025113385
(43)【公開日】2025-08-01
(54)【発明の名称】地図情報更新装置及び地図情報更新方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20250725BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250725BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20250725BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20250725BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20250725BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/09 D
G08G1/09 F
G08G1/0969
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025084819
(22)【出願日】2025-05-21
(62)【分割の表示】P 2021141135の分割
【原出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 英雄
(72)【発明者】
【氏名】伊東 哲也
(72)【発明者】
【氏名】武田 航
(72)【発明者】
【氏名】小家 亜斗吏
(57)【要約】
【課題】地図情報の更新に要する時間を短くできる地図情報更新装置及び地図情報更新方法を提供する。
【解決手段】車両に設けられた撮像装置から、車両の周辺画像を取得し、車両の位置情報を取得し、周辺画像から、車両の周辺道路を認識し、位置情報に基づき、地図情報において周辺道路が未登録か否かを判定し、地図情報において未登録の周辺道路を車両が走行した場合、車両が走行した未登録の周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成することで、地図情報を更新する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新装置であって、
前記車両に設けられた撮像装置から、前記車両の周辺画像を取得する画像取得部と、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記周辺画像から、前記車両の周辺道路を認識する道路認識部と、
前記位置情報に基づき、前記地図情報において前記周辺道路が未登録か否かを判定する判定部と、
前記地図情報において未登録の前記周辺道路を前記車両が走行した場合、前記車両が走行した前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加することで、前記地図情報を更新する更新部、を備え、
前記更新部は、前記車両が走行した前記未登録の前記周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成することで、前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図情報更新装置であって、
前記更新部は、前記車両が走行した前記未登録の前記周辺道路が前記地図情報において計画道路として仮登録されている場合、前記計画道路を表す仮ノード及び仮リンクを有効化することで、前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項3】
請求項2に記載の地図情報更新装置であって、
前記更新部は、前記仮ノード又は前記仮リンクに関連付けられた地物の情報を有効化することで、前記地物の情報を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項4】
請求項1に記載の地図情報更新装置であって、
前記更新部は、前記車両が前記未登録の前記周辺道路を所定の距離走行するたびに、前記ノード及び前記リンクを新たに生成する 地図情報更新装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
前記周辺画像から、道路に設けられた道路標識、前記道路に含まれる車線の数、前記車線の幅、前記車線の進行方向、及び前記道路の制限速度のうち少なくとも何れか一つを含む道路情報を取得する道路情報取得部を備え、
前記更新部は、前記未登録の前記周辺道路に関する前記道路情報を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加するか否かを前記車両の乗員に問い合わせ、問い合わせに対する前記乗員の回答が入力される問い合わせ部を備え、
前記更新部は、
前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加する前記乗員の回答が入力された場合、前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加し、
前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加しない前記乗員の回答が入力された場合、前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加しない地図情報更新装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
前記周辺画像から、前記車両の前方に位置する交差点を認識する交差点認識部を備え、
前記道路認識部は、前記交差点において前記車両が走行する前記未登録の前記周辺道路に交差する交差道路を認識し、
前記更新部は、前記交差道路を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
前記周辺画像から、前記車両の前方を走行する先行車両を認識する先行車両認識部を備え、
前記更新部は、前記未登録の前記周辺道路を前記先行車両が走行した場合、前記先行車両が走行した前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
更新された前記地図情報を記憶装置に記憶させる記憶部を備える地図情報更新装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
更新された前記地図情報をサーバーに送信する送信部を備える地図情報更新装置。
【請求項11】
コントローラが、車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新方法であって、
前記車両に設けられた撮像装置から、前記車両の周辺画像を取得し、
前記車両の位置情報を取得し、
前記周辺画像から、前記車両の周辺道路を認識し、
前記位置情報に基づき、前記地図情報において前記周辺道路が未登録か否かを判定し、
前記地図情報において未登録の前記周辺道路を前記車両が走行した場合、前記車両が走行した前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に加えることで、前記地図情報を更新し、
前記地図情報の更新において、前記車両が走行した前記未登録の前記周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成することで、前記未登録の前記周辺道路を前記地図情報に追加する地図情報更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新装置及び地図情報更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地図情報を更新する地図情報更新システムが知られている(特許文献1)。この地図情報更新システムは、追加情報生成部と、追加情報検証部と、地図情報更新部とを備えている。追加情報生成部は、更新依頼者からの入力に従い、地図情報に付加する追加情報を生成するように構成されている。追加情報検証部は、検証者からの入力に従い、追加情報生成部にて生成された追加情報が正しいか否かを検証するように構成されている。地図情報更新部は、更新作業者からの入力に従い、追加情報検証部にて正しいことが検証された追加情報を含む追加ブロックを生成し、その追加した追加ブロックを地図情報に付加することで、地図情報を更新するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-33053号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記地図情報更新システムでは、地図情報を更新する前に、検証者による追加情報の検証が必要なため、地図情報の更新に時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、地図情報の更新に要する時間を短くできる地図情報更新装置及び地図情報更新方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に設けられた撮像装置から車両の周辺画像を取得し、車両の位置情報を取得し、周辺画像から車両の周辺道路を認識し、位置情報に基づき地図情報において周辺道路が未登録か否かを判定し、地図情報において未登録の周辺道路を車両が走行した場合、車両が走行した未登録の周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成することで、地図情報を更新することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地図情報の更新に要する時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る地図更新装置を含む車載システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係るコントローラが有する機能ブロックの一例である。
図3図3は、更新部による地図情報の更新方法を説明するための説明図である。
図4図4は、更新部による地図情報の更新方法を説明するための説明図である。
図5図5は、更新部による地図情報の更新方法を説明するための説明図である。
図6図6は、変形例に係るコントローラの処理内容を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る地図情報更新装置及び地図情報更新方法の一実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る地図情報更新装置は、図1に示すように、車載システム1の一部として実現される。図1は、本実施形態に係る車載システム1の一例を示すブロック図である。車載システム1は、車両に搭載されたシステムであって、車両の各種制御を行うためのシステムである。車載システム1は、ドライバーが運転に関与せずに自動で運転する自動運転機能を有する車両、ドライバーによる車両の運転を支援する運転支援機能を有する車両、又は自動運転機能及び運転支援機能の何れも有さない車両に設けることができる。
【0010】
図1に示すように、車載システム1は、地図情報更新装置10と、車両位置検出装置20と、周囲環境センサ群30と、車載ナビゲーションシステム40とを含む。これらの装置及びシステムは、車両に搭載されており、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワーク2によって接続されている。
【0011】
車両位置検出装置20は、車両の現在地を検出する装置である。車両位置検出装置20は、GPSユニット、ジャイロセンサ、及び車速センサ等から構成される。車両位置検出装置20は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速に基づいて、車両の現在の位置情報を周期的に検出する。
【0012】
周囲環境センサ群30は、車両の周囲に存在する対象物を検出するためのセンサ群である。対象物とは、地物であり、例えば、道路の車線境界線、センターライン、路面標示、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、速度制限表示である。また対象物には、車載システム1が搭載されている車両以外の自動車(先行車、対向車などの他車両)、オートバイ、自転車、歩行者が含まれる。対象物には、車両の走行に影響を与える可能性がある障害物(路上の駐車車両又は停車車両など)も含まれる。
【0013】
周囲環境センサ群30は、撮像装置31と測距装置32を含む。対象物は、例えば、撮像装置31及び測距装置32により検出される。撮像装置31は、画像により車両の周囲の対象物を認識する装置であり、例えば、CCD等の撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどのカメラである。撮像装置31により認識される対象物の情報としては、例えば、対象物の種別、対象物の色、車両に対する対象物の相対位置、車両と対象物との相対距離が挙げられる。撮像装置31は、車両に複数設けることができ、例えば、車両のフロントグリル部、左右ドアミラーの下部、及びリアバンパ近傍に配置できる。これにより、車両の周囲の対象物を認識する場合の死角を減らすことができる。
【0014】
測距装置32は、車両に対する対象物の相対位置と、車両と対象物との相対距離及び相対速度とを演算するための装置であり、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDAR(Light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーである。測距装置32は、撮像装置31と同様に、車両に複数設けることができ、例えば、車両の前方、右側方、左側方、及び後方に配置できる。これにより、車両の周囲の対象物について、車両に対する対象物の相対位置と、車両と対象物との相対距離及び相対速度を正確に演算することができる。
【0015】
撮像装置31及び測距装置32は、所定の時間間隔で、車両の周囲を検出する。撮像装置31及び測距装置32の検出結果は、後述する地図情報更新装置10のコントローラ11にて統合又は合成し、検出結果に不足している対象物の情報を補完する構成であってもよい。例えば、車両位置検出装置20から出力された車両の現在地である測位情報(自己位置情報)と、撮像装置31又は測距装置32により検出された車両に対する対象物の相対位置(距離と方向)により、コントローラ11にて対象物の位置情報を算出する構成であってもよい。また自動運転制御又は運転支援制御に用いられる高精度地図の情報を車両が有している場合、これに代えて、高精度地図情報と、オドメトリによる測位情報と、車両と対象物の相対位置(距離と方向)とを対応させて、対象物の位置情報を算出してもよい。算出された対象物の位置情報は、コントローラ11にて、撮像装置31及び測距装置32の検出結果、高精度地図情報などの複数の情報と統合され、車両の周囲環境情報として形成されてもよい。
【0016】
車載ナビゲーションシステム40は、車両位置検出装置20により検出された車両の位置情報に基づき、車両の現在地から目的地までのルートをディスプレイに表示させて車両の乗員に案内する。車載ナビゲーションシステム40は、地図情報41を有している。車載ナビゲーションシステム40は、地図情報41を地図データベースとして格納してもよいし、地図情報41を記憶する記憶装置を備えていてもよい。なお、車載ナビゲーションシステム40が地図情報41を有する構成に限られず、例えば、地図情報41は、車両の外部に設けられたサーバーに格納されていてもよい。この場合、車載ナビゲーションシステム40は、無線機能を有する車載通信装置(不図示)を介して、車外のサーバーから地図情報41を受信する。
【0017】
地図情報41は、車両の走行予定ルートを乗員に案内するためのカーナビゲーション用の地図(以降、カーナビ用地図と称する)を含む。車両の走行予定ルートは、車両の現在地から目的地までのルートである。カーナビ用地図は、道路網を示す道路網情報と、道路周辺又は道路上の各種地物を示す地物情報とを含む。カーナビ用地図は、所定の更新周期で、更新される。例えば、更新されたカーナビ用地図が、車両の外部に設けられたサーバーに存在する場合、車載ナビゲーションシステム40は、上述した車載通信装置を介して、更新されたカーナビ用地図をサーバーから受信し、地図情報41を更新する。
【0018】
道路網情報は、ノードとリンクの組み合わせによって表される道路網の情報である。ノードは、カーナビ用地図において、交差点の位置やリンクの結束点として道路上の所定地点に設定される。ノードは、カーナビ用地図における座標(緯度及び経度)で表された位置情報を有する。リンクは、カーナビ用地図において、実際の道路形状に対応するように、隣り合うノード間を連結することで形成される。またリンクは、リンクの属性情報として、道路の種別(高速道路、有料道路、国道、県道等の種別)、リンクの長さ、リンク形状等の情報を有している。ノード及びリンクには、それぞれ固有の番号が設定されている。車載ナビゲーションシステム40は、設定された固有番号又はノードが有する位置情報から、カーナビ用地図に表される各道路網を識別できる。これにより、車載ナビゲーションシステム40は、カーナビ用地図において、車両の現在地から目的地までのルートを検索することができる。
【0019】
また道路網情報には、ノード及びリンクが正規に登録されている道路に限られず、ノード及びリンクが仮登録されている計画道路の情報も含まれる。計画道路とは、完成されてない計画中の道路であって、カーナビ用地図には正規に登録されていない道路である。計画道路を表すノード及びリンクは、カーナビ用地図に仮登録されている。道路網情報では、計画道路を表すノード及びリンクと、正規に登録されているノード及びリンクとは、それぞれを識別可能な態様で区別されている。例えば、計画道路を表すノード及びリンクには、正規に登録されているノード及びリンクに付す固有番号のルールとは異なるルールによって、番号や記号などが付されている。計画道路を表すノード及びリンクの識別方法については、車載ナビゲーションシステム40の仕様により決められている。なお、以降では、計画道路を含め、地図情報41に正規に登録されていない道路を、「未登録の道路」と称する。また、地図情報41に正規に登録されているノード及びリンクと区別するために、計画道路を表すノード及びリンクを、それぞれ「仮ノード」及び「仮リンク」と称して説明する。
【0020】
地物情報は、道路網情報におけるノード及び/又はリンクに関連付けられた地物の情報である。地図情報41における地物としては、例えば、橋、高架、トンネル、踏切、歩道橋、料金所等の建造物、信号機、道路標識、路面標示(区画線や横断歩道を含む)等が挙げられる。地物情報は、正規に登録されているノード及び/又はリンクに関連付けられている。地物情報は、仮ノード及び/又は仮リンクには関連付けられているか否かは特に決められておらず、未完成の道路の段階で仮ノード及び/又は仮リンクに地物情報を関連付けている場合もあれば、そうでない場合もある。
【0021】
車載ナビゲーションシステム40によるナビゲーション機能の一例について説明する。車載ナビゲーションシステム40は、例えば、マップマッチング機能、検索機能、ガイド機能等を有している。タッチパネル等の車載ユーザーインターフェース(車載入力装置)を介して、車両の乗員により目的地が設定されると、車載ナビゲーションシステム40は、マップマッチング機能により、車両位置検出装置20により検出された車両の現在地の情報に基づき、カーナビ用地図上での車両の現在地を推定する。車載ナビゲーションシステム40は、検索機能により、カーナビ用地図上での車両の目的地を検索する。また車載ナビゲーションシステム40は、検索機能により、車両の現在地から目的地までの一又は複数のルートを検索する。車載ナビゲーションシステム40は、検索結果として複数のルートが得られた場合、各ルートを車載ディスプレイに表示させる。複数のルートのうち一のルートが車両の乗員により選択されると、車載ナビゲーションシステム40は、選択されたルートを案内用ルートとして設定する。車載ナビゲーションシステム40は、ガイド機能により、案内用ルートを車載ディスプレイに表示させたり、スピーカー等の車載出力装置を介して、音声で案内用ルートの情報を出力したりする。なお、本実施形態では、車載ナビゲーションシステム40の機能は特に限定されず、車載ナビゲーションシステム40には、本願出願時に知られたナビゲーション機能を適用できるものとする。
【0022】
ここで、カーナビ用地図の更新頻度とカーナビ用地図の情報精度との関係について説明する。カーナビ用地図は、例えば、半年に一回等といった比較的長期の更新間隔で更新されるため、実際の道路網とカーナビ用地図の間に差が生じ、カーナビ用地図の情報精度が低下する場合がある。例えば、カーナビ用地図の所定の更新時期において、未完成の道路は、地図情報41には正規に登録されていない。しかし、この道路が次の更新時期前に完成した場合、実際には車両が完成後の道路を通行できるにもかかわらず、次の更新時期を迎えていないため、地図情報41では依然として正規に登録されていない。この場合、現存する道路にもかかわらず、車載ナビゲーションシステム40は、ルート検索の際に、当該道路を検索候補に含めることができず、車両の乗員に当該道路を含むルートを案内できないという問題がある。このような、カーナビ用地図の更新頻度に起因して情報精度が低下する時期があるという課題に対して、本実施形態に係る地図情報更新装置10は、地図情報41において未登録な道路であっても、車両が未登録の道路を走行した場合、未登録の道路を地図情報41に追加して、更新頻度にかかわらず、カーナビ用地図の情報精度が低下するのを抑制する。
【0023】
次に、地図情報更新装置10について説明する。図1に示すように、地図情報更新装置10は、コントローラ11を備えている。コントローラ11は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成され、プログラムを格納したメモリと、このメモリに格納されたプログラムを実行するCPU等を有している。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。
【0024】
図2は、コントローラ11が有する機能ブロックの一例である。図2に示すように、コントローラ11は、機能ブロックとして、地図情報取得部12と、画像取得部13と、位置情報取得部14と、道路認識部15と、道路情報取得部16と、判定部17と、更新部18と、記憶部19を有している。コントローラ11は、メモリに記憶されたソフトウェアによって、機能ブロックの各機能を実現する。
【0025】
地図情報取得部12は、車載ナビゲーションシステム40から、地図情報41に含まれるカーナビ用地図を取得する。例えば、地図情報取得部12は、車両のイグニッションスイッチが乗員によりオンされ、イグニッションがオンされたことを示す信号を検知した場合、車載ナビゲーションシステム40からカーナビ用地図を取得する。なお、カーナビ用地図の取得タイミングは一例であって、取得タイミングを限定するものではない。
【0026】
画像取得部13は、撮像装置31から、車両の周辺が写る撮像画像を取得する。画像取得部13は、所定の周期で、撮像装置31から車両の周辺画像を取得する。車両の周辺画像は、少なくとも車両の前方が写る撮像画像(車両の前方画像)を含む。
【0027】
位置情報取得部14は、車両位置検出装置20から、車両位置検出装置20により検出された車両の現在の位置情報(車両の現在地の情報)を取得する。位置情報取得部14は、所定の周期で、車両位置検出装置20から車両の位置情報を取得する。車両の位置情報は、車両の現在地を表す座標情報、及び車両の進行方向を表す進行方向情報を含む。
【0028】
道路認識部15は、画像取得部13により取得された車両の周辺画像から、車両の周辺に存在する周辺道路を認識する。道路認識部15は、車両の周辺画像に対して画像認識処理を実行し、車両の周辺に存在する道路の特徴点から周辺道路を認識する。例えば、道路認識部15は、車両の前方画像からエッジを抽出し、エッジ画像からレーンマーカーを特定し、レーンマーカーから車線を推定する。道路認識部15は、前方画像から車線を推定できた場合、当該車線を含む道路を周辺道路として認識する。レーンマーカーとは、車線の左右両側又は片側に位置する車線境界線である。車線境界線は、実線又は破線で表せれ、またその色は白色又は黄色で表される。また雪や水たまりによって、レーンマーカーが隠れている等、レーンマーカーが部分的にしか認識されない場合、道路認識部15は、各候補点に共通する直線から直線形状を検出するハフ変換処理や、各候補点を中心にした複数の円から曲線形状を検出する拡張ハフ変換処理を行ってもよい。道路認識部15には、本願出願時に知られた画像認識技術を適用できるものとする。また道路認識部15は、車両の前方画像から、車両の進行方向に位置する道路を周辺道路として認識し、車両の進行方向左側が写る左側方画像から、車両の進行方向左側に位置する道路を周辺道路として認識し、車両の進行方向右側が写る右側方画像から、車両の進行方向右側に位置する道路を周辺道路として認識する。周辺道路は、少なくとも、車両が走行している道路(車両の進行方向に沿った道路)を含む。
【0029】
道路情報取得部16は、画像取得部13により取得された車両の周辺画像から、道路認識部15により認識された周辺道路について、道路情報を取得する。道路情報は、道路に設けられた道路標識、道路に含まれる車線の数、車線の幅、車線の進行方向、及び道路の制限速度のうち少なくとも何れか一つを含む。例えば、道路情報取得部16は、上述したハフ変換処理や拡張ハフ変換処理により、周辺画像から直線形状又は曲線形状を検出し、検出された形状についてパターンマッチング処理を行い、道路標識や進行方向が描かれた路面標示を特定する。また例えば、道路情報取得部16は、周辺画像から検出されたエッジの画像から、車両が走行する車線に隣接する隣接車線を特定する。また例えば、道路情報取得部16は、周辺画像から、車両の進行方向を特定し、特定された車両の進行方向から車線の進行方向を特定する。道路情報取得部16には、本願出願時に知られた画像認識技術を適用できるものとする。例えば、道路情報取得部16は、車両の周辺画像に限られず、上述した車載通信装置(不図示)を介して車車間通信を行い、先行車両や対向車両からの情報に基づき、車線の進行方向を特定してもよい。また例えば、道路情報取得部16は、車載通信装置を介して路車間通信を行い、道路周辺に設けられた路側器等から周辺道路の道路情報(インフラ情報)を取得してもよい。
【0030】
判定部17は、位置情報取得部14により取得された車両の位置情報に基づき、地図情報41において道路認識部15により認識された周辺道路が未登録か否かを判定する。本明細書では、未登録とは、地図情報41に正規に登録されていないことと同義とし、上述した仮ノード及び仮リンクも未登録のノード及びリンクに含まれる。例えば、判定部17は、車両の現在地と周辺道路との相対的な位置関係と、カーナビ用地図のノード及びリンクとに基づき、周辺道路が未登録か否かを判定する。判定部17は、カーナビ用地図上で、車両の現在地に対する周辺道路の位置を推定する。判定部17は、カーナビ用地図において、周辺道路の推定位置にノード及びリンクのいずれも存在しない場合、周辺道路を未登録の道路と判定する。一方、判定部17は、カーナビ用地図上で、周辺道路の推定位置にノード又はリンクが存在する場合、周辺道路を正規に登録された道路と判定する。道路認識部15が複数の周辺道路が認識した場合、判定部17は、各周辺道路について、地図情報41において未登録か否かを判定する。
【0031】
更新部18は、判定部17により地図情報41において未登録と判定された周辺道路を、車両が走行した場合、車両が走行した未登録の周辺道路を地図情報41に追加することで、地図情報41を更新する。また更新部18は、道路情報取得部16により、未登録の周辺道路に関する道路情報を取得した場合、未登録の周辺道路に関する道路情報を地図情報41に追加する。車両が未登録の周辺道路を走行する際、車両の運転主体は特に限定されず、車両は、ドライバーの運転により未登録の周辺道路を走行してもよいし、また車両は、運転支援機能により未登録の周辺道路を走行してもよい。
【0032】
更新部18による具体的な地図情報41の更新方法について、図3図5を用いて説明する。図3図5は、更新部18による地図情報41の更新方法を説明するための説明図である。
【0033】
図3は、車両Vの進行方向(車両Vの前方)が写る撮像画像Pの一例である。撮像画像Pは、車両Vの前方に設けられた撮像装置31により撮像された撮像画像の例である。また撮像画像Pは、車両Vが交差点手前の停止線で停止した際に撮像され、交差点が写る画像である。撮像画像Pは、車両Vが交差点を直進した場合の進路として周辺道路R1が存在することを示し、また車両Vが交差点を左折した場合の進路として周辺道路R2が存在することを示し、また車両Vが交差点を右折した場合の進路として周辺道路R3が存在することを示している。図3に示す場面において、車両Vが交差点を直進して周辺道路R1を走行する場面を例に挙げて説明する。なお、地図情報41において、周辺道路R1は正規に登録されていない道路、また周辺道路R2、R3は正規に登録されている道路とする。道路認識部15は、周辺道路R1~周辺道路R3を、車両Vの周辺道路として認識し、また判定部17は、周辺道路R1を地図情報41において未登録の周辺道路として判定しているものとする。
【0034】
図4は、周辺道路R1が計画道路として地図情報41に仮登録されている場合に、周辺道路R1を地図情報41に追加する方法を説明するための説明図である。図4(A)及び図4(B)において、円形状の図形はノードを示し、ノード間を接続する線分はリンクを示し、また黒色のノード及び実線のリンクは、それぞれ地図情報41に正規に登録されているノード及びリンクを示し、破線で示す白抜きのノード及び破線で示すリンクは、それぞれ地図情報41に仮登録されている仮ノード及び仮リンクを示す。また符号Vは、車両位置検出装置20により検出された車両Vの現在地を示す。
【0035】
図4(A)に示すように、車両Vが交差点に到達した時点では、周辺道路R1を表す仮ノードUN1~UN3及び仮リンクUL1、UL2は、地図情報41に仮登録されている。交差点の信号機が信号不可の表示(赤信号)から信号可の表示(青信号)に変わると、車両Vは交差点を直進し、周辺道路R1を走行し始める。
【0036】
図4(B)は、図4(A)の場面から所定時間経過後の場面を示す。図4(B)に示すように、車両Vが仮リンクUL1(図4(A)参照)で表される道路区間を通過し、仮リンクUL2で表される道路区間を走行している場合を考える。この場合、まず、更新部18は、地図情報41及び車両Vの現在地に基づき、車両Vが仮リンクUL1で表される道路区間を通過したと判定する。次に、更新部18は、車両Vが通過した道路区間を表す仮ノードUN1及び仮リンクUL1を、それぞれ有効化する。有効化とは、仮ノード及び仮リンクを地図情報41に正規に登録されたノード及びリンクと一時的に見なすことであって、仮ノード及び仮リンクを地図情報41に正規に登録することではない。図4(B)では、有効化された仮ノードUN1は、ノードEN1として示され、有効化された仮リンクUL1は、リンクEL1として示されている。図4(B)の場面では、地図情報41には、ノードEN1及びリンクEL1が更新部18により追加され、地図情報41は更新される。
【0037】
また図4(B)の場面から所定時間が更に経過し、車両Vが仮リンクUL2で表される道路区間を通過し、仮リンクUL3で表される道路区間を走行している場合、まず、更新部18は、地図情報41及び車両Vの現在地に基づき、車両Vが仮リンクUL2で表される道路区間を通過したと判定する。次に、更新部18は、車両Vが通過した道路区間を表す仮ノードUN2及び仮リンクUL2を、それぞれ有効化する。以降、更新部18は、車両Vが地図情報41に正規に登録された道路に到達するまで、車両Vが走行した道路区間に応じて、仮ノード及び仮リンクの有効化を繰り返し行う。
【0038】
また仮ノード及び/又は仮リンクに、地物の情報が関連付けられている場合、更新部18は、仮ノード及び仮リンクの有効化とともに、当該仮リンク及び/又は仮リンクに関連付けられている地物の情報を有効化する。有効化された地物の情報は、有効化された仮ノード及び仮リンクと同様に、地図情報41に正規に登録されたものと一時的に見なされた地物の情報であって、地図情報41に正規に登録された地物の情報ではない。
【0039】
図5は、周辺道路R1が計画道路として地図情報41に仮登録されていない場合に、周辺道路R1を地図情報41に追加する方法を説明するための説明図である。図5(A)及び図5(B)において、円形状の図形はノードを示し、ノード間を接続する線分はリンクを示し、また黒色のノード及び実線のリンクは、それぞれ地図情報41に正規に登録されているノード及びリンクを示す。また符号Vは、車両位置検出装置20により検出された車両Vの現在地を示す。なお、図5(A)の場面は、図4(A)の場面に対応し、図5(B)の場面は、図4(B)の場面に対応する。
【0040】
図5(A)に示すように、車両Vが交差点に到達した時点では、周辺道路R1を表すノード及びリンクは、地図情報41に登録されていない。また周辺道路R1を表すノード及びリンクは、計画道路として地図情報41に仮登録もされていない。交差点の信号機が信号不可の表示(赤信号)から信号可の表示(青信号)に変わると、車両Vは交差点を直進し、地図情報41には存在しない周辺道路R1を走行し始める。
【0041】
図5(B)は、図5(A)の場面から所定時間経過後の場面を示す。図5(B)に示すように、車両Vが周辺道路R1のうち所定の道路区間を通過し、周辺道路R1を走行している場合を考える。この場合、まず、更新部18は、ノードN3の座標と車両Vの現在地に基づき、車両Vが周辺道路R1を所定の距離走行したと判定する。所定の距離は、予め定められた距離であって、例えば、地図情報41におけるノードの間隔ルール又はリンクの長さのルールに基づき、設定された距離である。所定の距離は、「所定の道路区間」と読み替えてもよい。次に、更新部18は、車両Vが走行した道路区間を表すノード及びリンクを、ノードNN1及びリンクNL1として新たに生成する。更新部18により生成されたノード及びリンクは、地図情報41に正規に登録されたノード及びリンクと一時的に見なされたノード及びリンクであって、地図情報41に正規に登録されたノード及びリンクではない。図5(B)の場面では、地図情報41には、ノードNN1及びリンクNL1が更新部18により追加され、地図情報41は更新される。
【0042】
また図5(B)の場面から所定時間が更に経過し、車両Vが周辺道路R1を走行している場合、更新部18は、車両Vが周辺道路R1を所定の距離走行するたびに、車両Vが走行した道路区間を表すノード及びリンクを新たに生成する。更新部18は、車両Vが地図情報41に正規に登録された道路に到達するまで、車両Vが走行した道路区間に応じて、ノード及びリンクの新設を繰り返し行う。
【0043】
また車両Vが周辺道路R1を走行している間、道路情報取得部16により周辺道路R1の道路情報が取得された場合、更新部18は、周辺道路R1に関する道路情報を地図情報41に追加する。具体的に、更新部18は、周辺道路R1に設けられた道路標識、周辺道路R1に含まれる車線の数、車線の幅、車線の進行方向、及び周辺道路R1の制限速度のうち少なくとも何れか一つを含む周辺道路R1に関する道路情報を、地図情報41に追加する。なお、追加された道路情報は、生成されたノード及びリンクと同様に、地図情報41に正規に登録されたものと一時的に見なされた道路情報であって、地図情報41に正規に登録された道路情報ではない。
【0044】
図2に戻り、記憶部19は、更新部18により更新された地図情報41を記憶装置に記憶させる。記憶部19が更新された地図情報41を記憶させる対象の記憶装置は、特に限定されないが、例えば、車載ナビゲーションシステム40が地図情報41を記憶する記憶装置を備えている場合、記憶部19は、車載ナビゲーションシステム40が備える記憶装置に、更新された地図情報41を記憶させる。これにより、車載ナビゲーションシステム40は、地図情報41の更新時期を迎える前に、更新された地図情報41を用いて、未登録の道路を含むルートを検索することができる。また例えば、車載ナビゲーションシステム40が備える記憶装置とは別に、車載システム1が記憶装置を備える場合、記憶部19は、車載ナビゲーションシステム40とは別体の記憶装置に、更新された地図情報41を記憶させる。これにより、例えば、車両制御装置(不図示)は、更新された地図情報41を用いて、未登録の道路を含むルートを走行させるための、自動運転制御又は運転支援制御を行うことができる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る地図情報更新装置10は、車両で利用される地図情報41を更新する。地図情報更新装置10は、車両に設けられた撮像装置31から、車両の周辺画像を取得する画像取得部13と、車両の位置情報を取得する位置情報取得部14と、周辺画像から、車両の周辺道路を認識する道路認識部15と、車両の位置情報に基づき、地図情報41において周辺道路が未登録か否かを判定する判定部17と、地図情報41において未登録の周辺道路を車両が走行した場合、車両が走行した未登録の周辺道路を地図情報41に追加することで、地図情報41を更新する更新部18を備える。更新部18は、車両が走行した未登録の周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成することで、未登録の周辺道路を地図情報41に追加する。地図情報において未登録の道路を車両が走行した場合、地図情報41が更新されるため、地図情報41の更新に要する時間を短くすることができる。また、実際の道路網と地図情報41の間の差をなくすことができるため、地図情報41の更新頻度にかかわらず、地図情報41の情報精度が低下するのを抑制できる。また、計画道路としての情報が地図情報41に存在しない場合でも、新設されたノード及びリンクによって地図情報41を更新することができる。
【0046】
また本実施形態では、更新部18は、車両が走行した未登録の周辺道路が地図情報41において計画道路として仮登録されている場合、計画道路を表す仮ノード及び仮リンクを有効化することで、未登録の周辺道路を地図情報41に追加する。仮ノード及び仮リンクとはいえ、既存の情報を有効化する処理を行うだけで、地図情報41を更新できるため、ノード及びリンクを新たに生成する場合に比べて、簡便に地図情報41を更新でき、コントローラ11の演算負荷を軽減できる。
【0047】
また本実施形態では、更新部18は、仮ノード又は仮リンクに関連付けられた地物の情報を有効化することで、地物の情報を地図情報41に追加する。計画道路の段階での地物の情報とはいえ、既存の情報を有効化する処理を行うだけで、地図情報41を更新できるため、地物の情報を新たに取得する場合に比べて、簡便に地図情報41を更新でき、コントローラ11の演算負荷を軽減できる。
【0048】
また本実施形態では、更新部18は、車両が未登録の周辺道路を所定の距離走行するたびに、ノード及びリンクを新たに生成する。地図情報41に正規に登録されているノードの間隔又はリンクの長さに合わせて、未登録の周辺道路を表すノード及びリンクを地図情報41に追加することができる。
【0049】
また本実施形態では、地図情報更新装置10は、車両の周辺画像から、道路に設けられた道路標識、道路に含まれる車線の数、車線の幅、車線の進行方向、及び道路の制限速度のうち少なくとも何れか一つを含む道路情報を取得する道路情報取得部16を備える。更新部18は、車両が走行した未登録の周辺道路に関する道路情報を地図情報41に追加する。地図情報41に正規に登録されてない道路情報の追加により、実際の道路の情報と地図情報41の間の差を縮めることができ、地図情報41の更新頻度にかかわらず、地図情報41の情報精度が低下するのを抑制できる。
【0050】
また本実施形態に係る地図情報更新装置10は、更新された地図情報41を記憶装置に記憶させる記憶部19を備える。これにより、例えば、車載ナビゲーションシステム40は、地図情報41の更新時期を迎える前に、更新された地図情報41を用いて、未登録の道路を含むルートを検索することができる。
【0051】
(変形例)
以下では、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜援用する。
【0052】
第1の変形例として、コントローラ11は、機能ブロックに、未登録の周辺道路を地図情報41に追加するか否かを車両の乗員に問い合わせ、問い合わせに対する車両の乗員の回答が入力される問い合わせ部を備える。例えば、図4(B)の場面において、問い合わせ部は、車載ディスプレイ又は車載スピーカーを介して、車両Vが走行した道路区間を表す仮ノードUN1及び仮リンクUL1を有効化して、ノードEN1及びリンクEL1を地図情報41に追加するか否かを車両の乗員に問い合わせる。また例えば、図5(B)の場面において、問い合わせ部は、車載ディスプレイ又は車載スピーカーを介して、車両Vが走行した道路区間を表すノード及びリンクとして、新たに生成されたノードNN1及びリンクNL1を地図情報41に追加するか否かを車両の乗員に問い合わせる。問い合わせ対象の乗員は、ドライバー、助手席に座る乗員、及び後部座席に座る乗員を含む。乗員への問い合わせ方法としては、例えば、車載ディスプレイに問い合わせ内容を表示させたり、車載スピーカーを介して、音声で問い合わせ情報を出力したりすることが挙げられる。また乗員による回答方法としては、例えば、乗員がタッチパネル式の車載ディスプレイを操作して回答を入力したり、車載マイクを介して、乗員が音声で回答したりすることが挙げられる。
【0053】
また第1の変形例において、更新部18は、未登録の周辺道路を地図情報41に追加するという乗員の回答が、問い合わせ部に入力された場合、車両が走行した未登録の周辺道路を地図情報41に追加する。例えば、図4(B)の例において、仮ノードUN1及び仮リンクUL1の有効化を許可する乗員の回答が問い合わせ部に入力された場合、更新部18は、仮ノードUN1及び仮リンクUL1を有効化する。また例えば、図5(B)の例において、新たに生成されたノードNN1及びリンクNL1の追加を許可する乗員の回答が問い合わせ部に入力された場合、更新部18は、ノードNN1及びリンクNL1を地図情報41に追加する。
【0054】
一方、更新部18は、未登録の周辺道路を地図情報41に追加しないという乗員の回答が問い合わせ部に入力された場合、車両が走行した未登録の周辺道路を地図情報41に追加しない。例えば、図4(B)の例において、仮ノードUN1及び仮リンクUL1の有効化を拒否する乗員の回答が問い合わせ部に入力された場合、更新部18は、仮ノードUN1及び仮リンクUL1を有効化しない。また例えば、図5(B)の例において、新たに生成されたノードNN1及びリンクNL1の追加を拒否する乗員の回答が問い合わせ部に入力された場合、更新部18は、ノードNN1及びリンクNL1を地図情報41に追加しない。
【0055】
このように、第1の変形例では、車両の乗員は地図情報41を更新するか否かを決めることができるため、乗員の好みに応じた地図情報41に変えることができる。例えば、地図情報41に未登録の周辺道路を車両が走行する頻度が高く、また乗員が当該道路を走行することに対して利便性(移動時間の短縮等)を感じた場合、乗員は地図情報41を更新する回答を問い合わせ部に入力すればよい。一方、例えば、地図情報41に未登録の周辺道路を車両が走行する頻度が低く、また乗員が当該道路を走行することに対して利便性をさほど感じない場合、乗員は地図情報41を更新しない回答を問い合わせ部に入力すればよい。
【0056】
第2の変形例として、コントローラ11は、機能ブロックに、車両の周辺画像から、車両の前方に位置する交差点を認識する交差点認識部を備える。交差点認識部は、車両の周辺画像に対して画像認識処理を実行し、車両の前方に存在する交差点を認識する。例えば、交差点認識部は、車両の進行方向が写る前方画像からエッジを抽出し、エッジ画像から交差点の特徴点を特定し、特徴点から交差点を認識する。
【0057】
また第2の変形例において、道路認識部15は、交差点認識部により認識された交差点において車両が走行する未登録の周辺道路に交差する道路を、交差道路として認識する。道路認識部15は、車両の周辺画像に対して画像認識処理を実行し、交差点において車両が走行する道路に交差する道路を認識する。例えば、道路認識部15は、車両の前方画像、車両の左側方画像、又は車両の右側方画像からエッジを抽出し、エッジ画像から交差する道路のレーンマーカーを特定し、レーンマーカーから交差道路を認識する。
【0058】
また第2の変形例において、更新部18は、道路認識部15により認識された交差道路を地図情報41に追加する。
【0059】
図6は、第2の変形例に係るコントローラ11の処理内容を説明するための説明図である。図6(A)及び図6(B)に示す、ノード及びリンクと符号Vの説明については、図5(A)及び図5(B)を用いて行った説明を援用する。また符号Cは、撮像装置31の撮像範囲を模した図形を示す。なお、図6(A)は、図5(B)の場面から所定時間経過後の場面を示す。
【0060】
図6(A)に示すように、車両VがリンクNL1で表される道路区間を通過し、周辺道路R1上にある所定の交差点の手前を走行している場合、交差点認識部は、車両Vの周辺画像から、車両Vの前方に位置する交差点を認識する。道路認識部15は、車両Vの周辺画像から、交差点認識部により認識された交差点において、周辺道路R1に交差する道路を交差道路として認識する。交差点認識部により認識された交差点、及び道路認識部15により認識された交差道路の情報は、地図情報41には正規に登録されていない。
【0061】
図6(B)は、図6(A)の場面から所定時間経過後の場面を示す。図6(B)に示すように、交差点認識部により認識された交差点を車両Vが直進した場合を考える。この場合、図5(B)を用いての説明と同様に、まず更新部18は、ノードNN1の座標と車両の現在地に基づき、車両Vが周辺道路R1を所定の距離走行したと判定する。次に、更新部18は、車両Vが走行した道路区間を表すノード及びリンクを、ノードNL2及びリンクNL2として新たに生成する。さらに、更新部18は、交差道路の道路区間を表すノード及びリンクを、ノードNN3、NN4及びリンクNL3、NL4として新たに生成する。図6(B)の場面では、地図情報41には、ノードNN2~NN4及びリンクNL2~NL4が更新部18により追加され、地図情報41は更新される。なお、NN3及びNN4は、撮像装置31の撮像範囲Cの範囲内に位置する。更新部18は、交差道路のうち撮像装置31の撮像範囲に位置するノード及びリンクを新たに生成する。
【0062】
このように、第2の変形例では、車両が走行した道路だけでなく、車両が走行していない交差道路も地図情報41に追加できるため、交差点を示す地物の情報や道路情報がなくとも、交差点の位置を地図情報41に追加することができる。
【0063】
第3の変形例として、コントローラ11は、機能ブロックに、車両の前方を走行する先行車両を認識する先行車両認識部を備える。先行車両認識部は、車両の周辺画像に対して画像認識処理を実行し、車両の前方を走行する先行車両を認識する。例えば、先行車両認識部は、車両の前方画像からエッジを抽出し、エッジ画像から先行車両の特徴点を特定し、特徴点から先行車両を認識する。先行車両の台数は特に限定されず、一台の先行車両であってもよいし、複数の先行車両であってもよい。
【0064】
また第3の変形例において、更新部18は、先行車両認識部により認識された先行車両が未登録の周辺道路を走行した場合、先行車両が走行した未登録の周辺道路を地図情報41に追加する。例えば、図4の例において、車両Vの先行車両が周辺道路R1を走行した場合、更新部18は、先行車両が走行した道路区間を表す仮ノードUN1及び仮リンクUL1を、それぞれ有効化する。また例えば、図5の例において、車両Vの先行車両が周辺道路R1を走行した場合、更新部18は、先行車両が走行した道路区間を表すノード及びリンクを、ノードNN1及びリンクNL1として新たに生成する。
【0065】
このように、第3の変形例では、車両よりも前方を走行する先行車両が未登録の周辺道路を走行した場合、地図情報41を更新できるため、地図情報41の更新タイミングを早くすることができる。
【0066】
第4の変形例として、コントローラ11は、機能ブロックに、更新部18により更新された地図情報41を、車両の外部に設けられたサーバーに送信する送信部を備える。送信部は、上述した車載通信装置(不図示)を介して、更新された地図情報41をサーバーに送信する。例えば、車両の外部に設けられたサーバーが他車両とも通信できる場合、更新された地図情報41を他車両と共有することができる。これにより、例えば、車載ナビゲーションシステム40は、地図情報41の更新時期を迎える前に、他車両が走行した未登録の周辺道路を含むルートを検索することができる。
【0067】
なお、以上に説明した実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0068】
1…車載システム
2…車載ネットワーク
10…地図情報更新装置
11…コントローラ
12…地図情報取得部
13…画像取得部
14…位置情報取得部
15…道路認識部
16…道路情報取得部
17…判定部
18…更新部
19…記憶部
20…車両位置検出装置
30…周囲環境センサ群
31…撮像装置
32…測距装置
40…車載ナビゲーションシステム
41…地図情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2025-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新装置であって、
前記車両に設けられた撮像装置から、前記車両の周辺画像を取得する画像取得部と、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記周辺画像から、前記車両が走行していない周辺道路を認識する認識部と、
前記周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成し、前記周辺道路を前記地図情報に追加することで、前記地図情報を更新する更新部、を備える地図情報更新装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図情報更新装置であって、
前記認識部は、前記周辺画像から地物を認識し、
前記更新部は、前記地物を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項3】
請求項1に記載の地図情報更新装置であって、
前記更新部は、前記周辺道路に関連付けられた地物の情報を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の地図情報更新装置であって、
前記更新部は、前記車両が前記周辺道路を所定の距離走行するたびに、前記ノード及び前記リンクを新たに生成する地図情報更新装置。
【請求項5】
車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新装置であって、
前記車両に設けられた撮像装置から、前記車両の周辺画像を取得する画像取得部と、
前記周辺画像から、前記地図情報における座標で表された位置情報に対応する複数の未登録物を認識する認識部と、
前記複数の未登録物、および、前記複数の未登録物の関連性を前記地図情報に追加することで、前記地図情報を更新する更新部、を備える地図情報更新装置。
【請求項6】
請求項1に記載の地図情報更新装置であって、
前記認識部が、前記周辺画像から、前記車両が走行していない前記地図情報における座標で表された位置情報に対応する複数の未登録物を認識する地図情報更新装置。
【請求項7】
請求項5または6のいずれかに記載の地図情報更新装置であって、
前記認識部は、前記周辺画像から、前記車両の前方を走行する先行車両を認識する先行車両認識部を備え、
前記更新部は、前記複数の未登録物を前記先行車両が走行した場合、前記先行車両が走行した前記複数の未登録物を前記地図情報に追加する地図情報更新装置。
【請求項8】
コントローラが、車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新装置であって、
前記車両に設けられた撮像装置から、前記車両の周辺画像を取得し、
前記車両の位置情報を取得し、
前記周辺画像から、前記車両が走行していない周辺道路を認識し、
前記周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成し、前記周辺道路を前記地図情報に追加することで、前記地図情報を更新する地図情報更新方法。
【請求項9】
コントローラが、車両で利用される地図情報を更新する地図情報更新装置であって、
前記車両に設けられた撮像装置から、前記車両の周辺画像を取得し、
前記周辺画像から、前記地図情報における座標で表された位置情報に対応する複数の未登録物を認識し、
前記複数の未登録物、および、前記複数の未登録物の関連性を、前記地図情報に追加することで、前記地図情報を更新する地図情報更新方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、車両の周辺画像から、車両が走行していない周辺道路を認識し、周辺道路を表すノード及びリンクを新たに生成し、周辺道路を地図情報に追加することで、地図情報を更新する、又は、車両の周辺画像から、地図情報における座標で表された位置情報に対応する複数の未登録物を認識し、複数の未登録物、および、複数の未登録物の関連性を、地図情報に追加することで、地図情報を更新することにより、上記課題を解決する。