(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025113580
(43)【公開日】2025-08-04
(54)【発明の名称】現像装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20250728BHJP
【FI】
G03G15/08 390B
G03G15/08 226
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007816
(22)【出願日】2024-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 智博
(72)【発明者】
【氏名】橋村 直柔
(72)【発明者】
【氏名】関川 曉
(72)【発明者】
【氏名】重廣 浩司
(72)【発明者】
【氏名】深澤 俊也
(72)【発明者】
【氏名】縄 里志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 麗菜
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AB02
2H077AB14
2H077AC02
2H077AD06
2H077AD13
2H077CA12
2H077EA01
2H077GA13
(57)【要約】
【課題】 現像回転体上の現像剤が穂立ちする領域で現像剤に当接するシート部を備えた現像装置において、画像不良の発生を抑制する。
【解決手段】 現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、現像回転体を覆うためのカバー部と、カバー部に固定して設けられ、現像回転体に接触するように配置された第1シート部と、カバー部に固定して設けられ、第1シート部が現像回転体に接触する側の面とは反対側の面と重なり合うように配置された第2シート部と、を備え、第1シート部の自由端は、現像回転体の回転方向に関して現像回転体に対して規制部が対向する位置よりも下流且つ現像回転体と像担持体との最近接部よりも上流に在り、第2シート部の自由端は、現像回転体の回転方向に関して第1の磁極の上流側半値位置よりも下流であって且つ像担持体に接触しない位置に在り、第2シート部の剛度は、第1シート部の剛度よりも大きいことを特徴とする現像装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、
像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する現像回転体と、
前記現像回転体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像回転体と前記像担持体との最近接部に配置された第1の磁極と、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極よりも上流に前記第1の磁極と隣り合って配置され且つ前記第1の磁極とは異極である第2の磁極と、を有するマグネットと、
前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体に担持される現像剤の量を規制する規制部と、
前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体を覆うためのカバー部と、
前記カバー部に固定して設けられ、前記現像回転体に接触するように配置された第1シート部と、
前記カバー部に固定して設けられ、前記第1シート部が前記現像回転体に接触する側の面とは反対側の面と重なり合うように配置された第2シート部と、
を備え、
前記第1シート部の自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記現像回転体に対して前記規制部が対向する位置よりも下流且つ前記現像回転体と前記像担持体との前記最近接部よりも上流に在り、
前記第2シート部の自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極の上流側半値位置よりも下流であって且つ前記像担持体に接触しない位置に在り、
前記第2シート部の剛度は、前記第1シート部の剛度よりも大きい
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記第2シート部の前記自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極のピーク位置よりも下流であって且つ前記像担持体に接触しない位置に在る
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第2シート部の前記自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極の下流側半値位置よりも下流であって且つ前記像担持体に接触しない位置に在る
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第1シート部は、前記現像回転体の現像剤搬送能力が在る領域の長手方向の一端部と他端部の全域に亘って設けられており、
前記第2シート部は、前記現像回転体の前記現像剤搬送能力が在る領域の長手方向の一端部と他端部の全域に亘って設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第1シート部は、ウレタンシートであり、
前記第2シート部は、PETシートである
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項6】
前記カバー部に固定して設けられ、前記現像回転体の回転方向に関して前記現像回転体と前記像担持体との前記最近接部よりも下流において前記像担持体に接触するように配置された第3シート部を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項7】
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、
像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する現像回転体と、
前記現像回転体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像回転体と前記像担持体との最近接部に配置された第1の磁極と、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極よりも上流に前記第1の磁極と隣り合って配置され且つ前記第1の磁極とは異極である第2の磁極と、を有するマグネットと、
前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体に担持される現像剤の量を規制する規制部と、
前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体を覆うためのカバー部と、
前記カバー部に固定して設けられ、前記現像回転体に接触するように配置されたシート部と、
を備え、
前記シート部の自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記現像回転体に対して前記規制部が対向する位置よりも下流且つ前記現像回転体と前記像担持体との前記最近接部よりも上流に在り、
前記シート部の固定端から前記第1の磁極の上流側半値位置までの領域における前記シート部の剛度は、前記シート部の前記自由端における前記シート部の剛度よりも大きい
ことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
前記シート部の前記固定端から前記第1の磁極のピーク位置までの領域における前記シート部の剛度は、前記シート部の前記自由端における前記シート部の剛度よりも大きい
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
前記シート部の前記固定端から前記第1の磁極の下流側半値位置までの領域における前記シート部の剛度は、前記シート部の前記自由端における前記シート部の剛度よりも大きい
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項10】
前記シート部は、前記現像回転体の現像剤搬送能力が在る領域の長手方向の一端部と他端部の全域に亘って設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像をトナーとキャリアを含む現像剤により現像する現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式などを用いた画像形成装置では、感光体ドラム(像担持体)に形成された静電潜像を現像装置によりトナー像として現像する。このような現像装置として、トナーとキャリアを含む二成分現像剤を用いたものが、従来から使用されている。
【0003】
現像装置は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、感光体ドラムに形成された静電潜像を現像するために現像剤を担持する回転可能な現像スリーブ(現像回転体)と、現像スリーブに担持される現像剤の量を規制する規制ブレードを備える。
【0004】
現像スリーブによって静電潜像が現像される現像領域に搬送された現像剤は、現像領域で穂立ちすることにより、磁気穂(磁気ブラシ)が形成される。そして、現像領域で磁気穂から供給された現像剤中のトナーが静電潜像に供給されることにより、静電潜像がトナー像として現像される。一方、現像領域で磁気穂から供給された現像剤中のトナーの一部は、現像領域で静電潜像に付着せずに、現像領域から飛散することがある。
【0005】
特許文献1には、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちする第1領域では現像スリーブ上の現像剤に当接するように、且つ、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちされない第2領域では現像スリーブに近接するように可撓性部材が設けられた現像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成では、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちする第1領域で現像剤に可撓性部材を当接させているので、現像スリーブに対向する可撓性部材の対向面にトナーが付着しても、対向面に付着したトナーを穂立ちした現像剤によって除去することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成のように、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちする第1領域で現像剤に可撓性部材を当接させた場合、穂立ちした現像剤によって可撓性部材が持ち上げられて、可撓性部材の先端が現像スリーブから浮いてしまう虞がある。
【0009】
可撓性部材の先端が現像スリーブから浮いた状態で現像装置の稼働を続けた場合、飛散したトナーが可撓性部材の先端に堆積する。そして、可撓性部材の先端に堆積したトナーがトナー自身の自重により一定量堆積すると崩れて、感光体ドラムに落下した場合、画像上にボタ落ちと呼ばれるトナー汚れの画像不良が生じる虞がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、現像回転体上の現像剤が穂立ちする領域で現像剤に当接するシート部を備えた現像装置において、画像不良の発生を抑制することが可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る現像装置は以下のような構成を備える。即ち、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する現像回転体と、前記現像回転体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像回転体と前記像担持体との最近接部に配置された第1の磁極と、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極よりも上流に前記第1の磁極と隣り合って配置され且つ前記第1の磁極とは異極である第2の磁極と、を有するマグネットと、前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体に担持される現像剤の量を規制する規制部と、前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体を覆うためのカバー部と、前記カバー部に固定して設けられ、前記現像回転体に接触するように配置された第1シート部と、前記カバー部に固定して設けられ、前記第1シート部が前記現像回転体に接触する側の面とは反対側の面と重なり合うように配置された第2シート部と、を備え、前記第1シート部の自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記現像回転体に対して前記規制部が対向する位置よりも下流且つ前記現像回転体と前記像担持体との前記最近接部よりも上流に在り、前記第2シート部の自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極の上流側半値位置よりも下流であって且つ前記像担持体に接触しない位置に在り、前記第2シート部の剛度は、前記第1シート部の剛度よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために本発明の他態様に係る現像装置は以下のような構成を備える。即ち、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持し搬送する現像回転体と、前記現像回転体の内部に非回転に固定して配置され、前記現像回転体と前記像担持体との最近接部に配置された第1の磁極と、前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極よりも上流に前記第1の磁極と隣り合って配置され且つ前記第1の磁極とは異極である第2の磁極と、を有するマグネットと、前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体に担持される現像剤の量を規制する規制部と、前記現像回転体に対して非接触に対向して設けられ、前記現像回転体を覆うためのカバー部と、前記カバー部に固定して設けられ、前記現像回転体に接触するように配置されたシート部と、を備え、前記シート部の自由端は、前記現像回転体の回転方向に関して前記現像回転体に対して前記規制部が対向する位置よりも下流且つ前記現像回転体と前記像担持体との前記最近接部よりも上流に在り、前記シート部の固定端から前記現像回転体の回転方向に関して前記第1の磁極の上流側半値位置までの領域における前記シート部の剛度は、前記シート部の前記自由端における前記シート部の剛度よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像回転体上の現像剤が穂立ちする領域で現像剤に当接するシート部を備えた現像装置において、画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る現像装置の構成を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る現像スリーブ周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【
図4】第1の実施形態に係る現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【
図5】第2の実施形態に係る現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【
図6】従来例における現像装置の構成を示す断面図である。
【
図7】従来例における現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【
図8】従来例における現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではなく、また、第1の実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0016】
[第1の実施形態]
(画像形成装置の構成)
まず、
図1を用いて画像形成装置全体の構成及び動作を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置100の構成を示す断面図である。
【0017】
画像形成装置100は、フルカラー画像形成装置であり、第1の実施形態の場合、例えば、コピー機能、プリンタ機能およびスキャン機能を有するMFP(Multi-Function Peripheral)である。
【0018】
画像形成装置100は、
図1に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー像の作像工程をそれぞれ行う画像形成部PY、PM、PC、PKを並列して設けている。各色の画像形成部PY、PM、PC、PKは、帯電器21Y、21M、21C、21K、現像装置1Y、1M、1C、1Kを有する。また、各色の画像形成部PY、PM、PC、PKは、露光装置22Y、22M、22C、22K、感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kおよびクリーニング装置26Y、26M、26C、26Kを有する。また、画像形成装置100は、転写装置3および定着装置4を有している。
【0019】
なお、各色の画像形成部PY、PM、PC、PKの構成は同様であるため、以下、画像形成装置Y、M、C、Kの区別を表す符号末尾のY、M、C、Kを省略した符号を構成部材に付した画像形成装置を用いて説明する。
【0020】
感光体ドラム2(像担持体)は、回転可能に設けられており、630mm/secのプロセススピードで矢印a方向に回転する。感光体ドラム2の表面は、帯電器21で一様に帯電され、レーザのような露光装置22(光書込部)によって情報信号に応じて変調された光で露光され、潜像(静電潜像)が形成される。
【0021】
感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像は、現像装置1により後述のような過程でトナー像として可視像化される。可視像化されたトナー像は、各ステーションに設けられた一次転写部31において、転写装置3を構成する転写ベルト30に転写される。転写ベルト30上に転写されたトナー像は、二次転写部32まで搬送される。
【0022】
その後、二次転写部32まで搬送されてきたトナーは、記録材であるシートP上に転写された後、定着装置4によってシートP上にトナー像を定着し、画像を得る。
【0023】
感光体ドラム2上の転写残トナーと定着後に転写ベルト30上に残留したトナーは、クリーニング装置26、33により除去される。また、画像形成で消費された現像剤中のトナーは、トナーカートリッジからキャリアと共に補給される。
【0024】
(現像装置の構成)
続いて、
図2を用いて第1の実施形態に係る現像装置の構成及び動作を説明する。
図2は、第1の実施形態に係る現像装置1の構成を示す断面図である。
【0025】
現像装置1は、トナーとキャリアを含む二成分現像剤(以降、単に現像剤と呼ぶ)を収容する現像容器110を備える。
【0026】
第1の実施形態では、現像剤として、非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)を使用している。非磁性トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、及び、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子であり、その表面にコロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている。
【0027】
第1の実施形態で用いた非磁性トナー粒子は、負帯電性のポリエステル系樹脂であり、体積平均粒径は約4μmから8μm程度である。また、磁性キャリア粒子は、例えば表面が酸化処理された鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属粒子からなり、体積平均粒径は約40μmである。
【0028】
現像容器110の内部は、現像容器110内の略中央部は紙面に垂直方向に延在する隔壁117によって現像室118と攪拌室119に上下に区画されており、トナーと磁性キャリアが混合された現像剤は現像室118及び攪拌室119に収容されている。
【0029】
現像室118及び攪拌室119には、現像剤を攪拌・搬送し、現像容器110内で現像剤を循環させる循環手段である第1搬送スクリュー114及び第2搬送スクリュー115がそれぞれ配置されている。
【0030】
第1搬送スクリュー114は、現像室118の底部において、回転可能な現像スリーブ(現像回転体)の回転軸方向に沿ってほぼ平行に配置されている。第1搬送スクリュー114が回転駆動されることにより、現像室118内の現像剤は第1搬送スクリュー114の回転軸線方向に沿って一方向に搬送される。また、第2搬送スクリュー115は、攪拌室119内の底部に第1搬送スクリュー114とほぼ平行に配置されている。第2搬送スクリュー115が回転駆動されることにより、攪拌室119内の現像剤は第1搬送スクリュー114と反対方向に搬送される。
【0031】
このようにして、第1搬送スクリュー114及び第2搬送スクリュー115の回転によって搬送された現像剤は、隔壁117の両端部の開口部(連通部)を通じて現像室118と攪拌室119との間で循環される。
【0032】
現像室118内の現像剤は、第1搬送スクリュー114の回転駆動によって規制ブレード(規制部)113と隔壁117の開口部から現像剤を供給する構成を採っている。なお、第1搬送スクリュー114及び第2搬送スクリュー115は、回転軸の周りに非磁性材料で構成された攪拌翼をスパイラル状に設けたスクリュー構造である。各スクリュー径は全てφ20mm、スクリューピッチ30mmであり、回転数は630rpmに設定している。
【0033】
現像容器110の感光体ドラム2に近接する部位には開口部が設けられている。そして、現像容器110には、現像剤担持体として、上流現像スリーブ111(第1現像剤担持体)及び下流現像スリーブ112(第2現像剤担持体)の2本が設けられている。なお、上流現像スリーブ111及び下流現像スリーブ112は、それぞれ厚さが1mm、外径が25mm、スラスト方向の長さが350mmである。また、上流現像スリーブ111と感光体ドラム2とのギャップ(SDギャップ)は約270μm、下流現像スリーブ112と感光体ドラム2とのギャップ(SDギャップ)は約450μmに設定している。
【0034】
上流現像スリーブ111の内部には、ローラ状の第1マグローラ131(第1磁界発生部材としての第1マグネット)が非回転に固定して配置されている。上流現像スリーブ111は矢印bの方向に感光体ドラム2に対する周速比140%で回転し、現像剤を担持搬送する。上流現像スリーブ111と感光体ドラム2との対向部(以降、第1現像領域A1と呼ぶ)において、上流現像スリーブ111の回転方向(矢印bの方向)は感光体ドラム2の回転方向(矢印aの方向)と同方向である。
【0035】
上流現像スリーブ111の回転方向(矢印bの方向)に関して第1現像領域A1よりも上流側には、上流現像スリーブ111の上方であって且つ上流現像スリーブ111に対して非接触に対向して規制ブレード113が配置される。この構成により、現像室118内の現像剤であって第1搬送スクリュー114から上流現像スリーブ111に供給された現像剤は、規制ブレード113により現像剤の層厚を規制される。第1の実施形態では、規制ブレード113によって上流現像スリーブ111上の単位面積当りの現像剤コート量が30mg/cm2に規制される。
【0036】
規制ブレード113の近傍における第1マグローラ131の内部には、磁極N1(汲上極)が配置される。磁極N1が発生する磁力線(磁力、磁界)に拘束されて溜った現像剤は、規制ブレード113にて適正な層厚に規制される。その後、層厚が規制された現像剤は第1現像領域A1に担持搬送される。
【0037】
また、第1マグローラ131は、第1現像領域A1に対向する磁極S2(現像極)を有している。磁極S2(現像極)は、上流現像スリーブ111と感光体ドラム2との最近接部に配置された磁極である。
【0038】
磁極S2が第1現像領域A1に形成する磁界により、第1マグローラ131上には現像剤の磁気穂(磁気ブラシ)が形成される。この磁気ブラシは、第1現像領域A1で矢印a方向に回転する感光体ドラム2に接触する。
【0039】
これにより、感光体ドラム2上の静電潜像が第1現像領域A1にて現像され、トナー像となる。これが、現像装置1による1回目の現像である。なお、この際、磁気ブラシに付着しているトナーと、上流現像スリーブ111の表面に付着しているトナーは、感光体ドラム2上の静電潜像の画像領域に転移して当該静電潜像を現像する。
【0040】
第1の実施形態では、第1マグローラ131は、磁極S2(現像極)や磁極N1(汲上極)の他に磁極S1(搬送極)、磁極N2(搬送極)、磁極N3(受渡極)の5極を有する。また、第1マグローラ131が有する複数の磁極のうち、磁極N1と磁極N3は同極で隣り合っており、この間には磁束密度が5mT以下の領域である低磁界領域(第1反発磁界領域RF1)が形成される。第1反発磁界領域RF1は、現像剤に対してバリアが形成される領域である。
【0041】
上流現像スリーブ111の下方であって、上流現像スリーブ111および感光体ドラム2の双方に対向した領域には、下流現像スリーブ112が配設される。下流現像スリーブ112は、矢印c方向に感光体ドラム2に対する周速比140%で回転可能に配設している。下流現像スリーブ112は上流現像スリーブ111と同様に非磁性材料で構成される。
【0042】
下流現像スリーブ112の内部には、ローラ状の第2マグローラ132(第2磁界発生部材としての第2マグネット)が非回転に固定して配置されている。第2マグローラ132は、磁極S3(受取極)、磁極N4(現像極)、磁極S4(搬送極)、磁極N5(搬送極)、磁極S5(剥取極)の5極を有する。
【0043】
このうち、磁極N4上の磁気ブラシは、下流現像スリーブ112と感光体ドラム2との対向部(以降、第2現像領域A2と呼ぶ)で感光体ドラム2に接触している。このため、第2現像領域A2では、第1現像領域A1を通過後の感光体ドラム2に対し、更に2度目の現像が行われる。下流現像スリーブ112で2回目の現像に供された現像剤は攪拌室119に戻される。
【0044】
また、第2マグローラ132が有する複数の磁極のうち、磁極S3と磁極S5は同極である。このため、磁極S3と磁極S4の間には磁束密度が5mT以下の領域である低磁界領域(第2反発磁界領域RF2)が形成される。第2反発磁界領域RF2は、現像剤に対してバリアが形成される領域である。
【0045】
また、第2マグローラ132の磁極S3(受取極)は、第1マグローラ131の磁極N3(受渡極)に対して、上流現像スリーブ111と下流現像スリーブ112とが最も接近している位置の近傍で対向している。また、第2マグローラ132の磁極S3は、第1マグローラ131の磁極N3とは異極である。これにより、第1マグローラ131の磁極N3と第2マグローラ132の磁極S3との間で磁力線が形成されて、当該磁力線により第1マグローラ131から第2マグローラ132へ現像剤が受け渡される。
【0046】
なお、上流現像スリーブ111と下流現像スリーブ112とが最も接近している位置において、下流現像スリーブ112の回転方向(矢印cの方向)は上流現像スリーブ111の回転方向(矢印bの方向)と逆方向の関係にある。
【0047】
第1の実施形態で用いる現像バイアスは、現像バイアス印加手段によって上流現像スリーブ111及び下流現像スリーブ112に交流成分と直流成分を重畳した現像バイアスを印加する。第1の実施形態では、交流成分が間欠的に間引かれた直流成分のブランクパルスを設けたもので、交流成分が12kHzの矩形波で、ブランク部は矩形波の半周期を1パルスとしたときのパルス数を8とした。また、現像側の電界と回収側の電界の比率(以下、Duty)は50%とした。
【0048】
(現像剤の流れ)
前述した構成によって行われる現像剤の流れについて
図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施形態に係る現像スリーブ周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【0049】
現像剤Dは、非磁性トナーに対して磁性キャリアが混合しているため、第1マグローラ131の磁極N1に拘束される。次に、上流現像スリーブ111の回転に伴って、規制ブレード113に対向する磁極N1を通過し、現像剤Dが所定量に規制される。規制ブレード113によって規制された現像剤Dは、第1マグローラ131の磁極S1と磁極N2を通過し、感光体ドラム2に対向する磁極S2極へ現像剤Dが供給される。第1現像領域A1を通過し、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像に対してトナーが供給されて、トナーが消費された現像剤Dは、第1マグローラ131の磁極N3極へ搬送される。ここで、第1マグローラ131の磁極N1と磁極N3の極間には、第1反発磁界領域RF1が形成されている。また、下流現像スリーブ112には、第2マグローラ132の磁極S3と磁極S5の間に、第2反発磁界領域RF2が形成されている。
【0050】
このため、前述したように上流現像スリーブ111上を搬送されて、第1現像領域A1を通過した現像剤Dは、第1マグローラ131の磁極N3に到達する。一方、第1現像領域A1を通過した現像剤Dは、第1反発磁界領域RF1及び第2反発磁界領域RF2によって、上流現像スリーブ111と下流現像スリーブ112の最近接位置を通過することができない。
【0051】
そして、上流現像スリーブ111上の現像剤Dは、矢印dのように第1マグローラ131の磁極N3から第2マグローラ132の磁極S3方向へ伸びる磁力線に従って、下流現像スリーブ112側へ移動する。その後、現像剤Dは、下流現像スリーブ112上を搬送されて、第2現像領域A2を通過して第2マグローラ132の磁極S5に到達する。現像剤Dは、磁極S5で第2反発磁界領域RF2により下流現像スリーブ112から剥ぎ落とされて、攪拌室119内の第2搬送スクリュー115まで搬送される。
【0052】
なお、上流現像スリーブ111の回転方向に関して第1マグローラ131の磁極N1と磁極S2の間の極(第1の実施形態では磁極N2と磁極S1)を省略した構成では、現像剤の搬送が不安定になり、濃度ムラが生じる原因になることがある。そこで、第1の実施形態では、第1マグローラ131において、搬送極である磁極S1と磁極N2を、磁極N1と磁極S2の間に設けた構成を採っている。
【0053】
また、下流現像スリーブ112の回転方向に関して第2マグローラ132の磁極N4と磁極S5の間の極(第1の実施形態では磁極S4と磁極N5)を省略した構成では、現像剤の搬送が不安定になり、濃度ムラが生じる原因になることがある。そこで、第1の実施形態では、第2マグローラ132において、搬送極である磁極S4と磁極N5を、磁極N4と磁極S5の間に設けた構成を採っている。
【0054】
(トナーの遊離)
現像スリーブ上の現像剤Dは、各磁極から隣接する搬送方向の磁極へ伸びる磁力線に従って、磁気穂が穂立ちと穂倒れを交互に繰り返しながら搬送される。現像スリーブ上の現像剤Dが搬送される時の遠心力や、現像剤Dの磁気穂が磁力線に倣ってバタつくことによる衝撃や、磁気穂の穂倒れ時の衝撃により、トナーが遊離する。この現象は、上流現像スリーブ111が回転する速度が速くなるほど顕著になる。
【0055】
(現像スリーブカバーと飛散防止シート)
図2に示すように、第1の実施形態に係る現像装置1では、現像容器110に対して現像スリーブカバー120(カバー部)が、上流現像スリーブ111に対して非接触に対向して設けられている。また、現像スリーブカバー120は、規制ブレード113から現像容器110の上側を覆うように設けられている。
【0056】
ここで、現像スリーブカバー120の詳細について
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施形態に係る現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【0057】
規制ブレード113によって規制された現像剤Dは、第1マグローラ131の磁極S1と磁極N2を通過し、感光体ドラム2に対向する磁極S2極へと搬送される。
【0058】
図4に示すように、磁極N2で穂立ちする現像剤Dに当接するように第1飛散防止シート121(第1シート部)が現像スリーブカバー120に接着剤や両面テープ等で固定して設けられている。
【0059】
また、第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)は、感光体ドラム2に当接し、且つ、第1現像領域A1に入り込まない位置に設けられている。なお、第1飛散防止シート121は、上流現像スリーブ111の現像剤コート領域(現像剤搬送能力が在る領域)の長手方向の一端部から他端部の全域に亘って設けられている。なお、現像スリーブの外表面にブラスト加工や溝加工が施されている場合、これらの加工が施されている領域が、現像スリーブの現像剤搬送能力が在る領域となる。
【0060】
第1飛散防止シート121は、上流現像スリーブ111上の現像剤に沿って接触させるためにヤング率の小さいシートが好ましい。第1の実施形態では、第1飛散防止シート121は、厚さが約100μmのウレタンシートで構成されている。
【0061】
第1の実施形態では、第1飛散防止シート121を上流現像スリーブ111上の現像剤Dに当接することによって、現像剤のバタつきを小さくし、トナーの遊離を抑制している。
【0062】
また、上流現像スリーブ111の回転方向に関して第1飛散防止シート121の下流から第1現像領域A1で遊離したトナーが現像容器110の上側に飛散し、他のパーツを汚さないようにする必要がある。そこで、第1の実施形態では、第1飛散防止シート121と約2~3mm程度の隙間を設けて、且つ、感光体ドラム2に当接するように第2飛散防止シート122(第3シート部)が現像スリーブカバー120に設けられている。第2飛散防止シート122は、第1飛散防止シート121と同様に厚さ約100μmのウレタンシートで構成されている。
【0063】
(従来例)
図6は、従来例における現像装置10の構成を示す断面図である。また、
図7及び
図8は、従来例における現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。とりわけ、
図8は、従来例においてボタ落ち発生時の現像スリーブカバー周辺を模式的に表したものである。
【0064】
図6及び
図7に示した従来例のように、第1飛散防止シート121を上流現像スリーブ111上の現像剤Dの磁気穂に当接するように配置したとする。このような場合、上流現像スリーブ111の回転駆動に伴って、第1飛散防止シート121は磁気穂の当接部が穂立ちした磁気穂によって持ち上げられる。
【0065】
そして、穂立ちした磁気穂によって第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)が上流現像スリーブ111から浮いた状態になると、穂倒れ部では第1飛散防止シート121と上流現像スリーブ111上の現像剤Dが接触できなくなる。
【0066】
その結果、遊離したトナーが、上流現像スリーブ111上の現像剤Dと接触していない領域の第1飛散防止シート121に堆積してしまう。特に、
図8に示したように、第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)に堆積したトナーは、トナー自身の自重により一定量堆積するとトナー間の付着力よりも重力に負けた堆積したトナーの塊が崩れて、感光体ドラム2に落下する。このため、画像上にボタ落ちと呼ばれるトナー汚れの不良画像が発生する虞がある。
【0067】
そこで、第1の実施形態では、穂立ちした磁気穂による第1飛散防止シート121の変形を抑制するために、第1飛散防止シート121をバックアップするためのバックアップシート123(第2シート部)を現像スリーブカバー120に設ける。これにより、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちする領域で現像剤に当接するシート部を備えた現像装置において、画像不良の発生を抑制するものである。以下にその詳細を説明する。
【0068】
(バックアップシート)
まず、第1の実施形態に係る現像スリーブカバー120の構成について
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施形態に係る現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【0069】
上流現像スリーブ111上の現像剤Dは、上流現像スリーブ111の静止時に第1マグローラ131の磁力に引っ張られているため、上流現像スリーブ111の表面に密集するような形で引き付けられて担持されている。一方、上流現像スリーブ111の回転駆動時は遠心力が加わるため、遠心力と磁力の引き付ける力とが釣り合うところまで磁気穂が伸びる。このため、上流現像スリーブ111の回転駆動時に第1マグローラ131の磁極N2の磁気穂が第1飛散防止シート121を持ち上げてしまう。
【0070】
一方、第1の実施形態では、
図4に示すように、第1マグローラ131の磁極N2の磁気穂を覆うように、第1飛散防止シート121をバックアップするためのバックアップシート123が現像スリーブカバー120に固定して設けられている。バックアップシート123を現像スリーブカバー120に固定する手段として、例えば接着剤や両面テープ等が挙げられる。
【0071】
また、
図4に示すように、バックアップシート123を、第1飛散防止シート121が上流現像スリーブ111に接触する側の面(第1飛散防止シート121の接触面)とは反対側の面(第1飛散防止シート121の背面)と重なり合うように配置する。これにより、上流現像スリーブ111の回転駆動時に第1飛散防止シート121が持ち上がらないようにしている。
【0072】
前述したように、第1飛散防止シート121は、上流現像スリーブ111の現像剤コート領域(現像剤搬送能力が在る領域)の長手方向の一端部から他端部の全域に亘って設けられているものである。そこで、バックアップシート123についても、第1飛散防止シート121と同様にして、上流現像スリーブ111の現像剤コート領域(現像剤搬送能力が在る領域)の長手方向の一端部から他端部の全域に亘って設けられている。
【0073】
バックアップシート123の先端(自由端123a)の位置は、磁極N2の上流側半値位置よりも上流現像スリーブ111の回転方向下流側に配置することが好ましい。また、より好ましくは、バックアップシート123の先端(自由端123a)の位置を、磁極N2のピーク位置よりも上流現像スリーブ111の回転方向下流側に配置することである。更により好ましくは、バックアップシート123の先端(自由端123a)の位置を、磁極N2の下流側半値位置よりも上流現像スリーブ111の回転方向下流側に配置することである。
【0074】
なお、磁極N2のピーク位置とは、上流現像スリーブ111の外周面に対する法線方向の磁極N2の磁束密度Brがピーク値となる位置のことである。また、磁極N2の上流側半値位置とは、上流現像スリーブ111の外周面に対する法線方向の磁極N2の磁束密度Brのピーク値の半分の値となる位置のうちの上流現像スリーブ111の回転方向上流側に在る位置のことである。また、磁極N2の下流側半値位置とは、上流現像スリーブ111の外周面に対する法線方向の磁極N2の磁束密度Brがピーク値の半分の値となる位置のうちの上流現像スリーブ111の回転方向下流側に在る位置のことである。
【0075】
第1の実施形態では、バックアップシート123の先端(自由端123a)の位置を、磁極N2の下流側半値位置よりも上流現像スリーブ111の回転方向下流側であって、感光体ドラム2に接触しない位置に配置している。これにより、第1飛散防止シート121は、磁気穂で持ち上げられることを抑制することができ、上流現像スリーブ111上の現像剤Dに沿って隙間なく第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)まで現像剤Dの磁気穂に接触できるようになる。
【0076】
なお、バックアップシート123は、第1飛散防止シート121の変形を抑制するために、第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)よりも剛度が大きいシートを採用することが好ましい。本明細書において、剛度とは、例えば、クラーク剛度(JIS P8143)、ガーレー剛度(JIS L1085, JIS L1096)、テーバー剛度(JIS P 8125-2)等の各種の試験規格による測定値のことである。また、本明細書において、剛度とは、例えば、ヤング率(ASTM D882)、引張弾性率(JIS K7162)、曲げ弾性率(JIS K7171)等の各種の実験による実測値のことであってもよい。
【0077】
第1の実施形態では、バックアップシート123は、厚さ約100μmのPETシートで構成されている。
【0078】
仮に、第1飛散防止シート121の変形を抑制するために、第1飛散防止シート121を剛度が大きいシート、例えば、厚さが約100μmのPETシートで構成したとする。この場合、第1マグローラ131の磁極N2の磁気穂によるシートの変形を抑制することはできるが、シートの剛度が大きいために、上流現像スリーブ111上の現像剤Dに沿わせることができない。その結果、第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)にかけて現像剤Dと接触しない領域ができてしまうので、第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)に遊離、飛散したトナーが堆積してしまう虞がある。
【0079】
そこでこの様な課題を解決する為に、上流現像スリーブ111上の現像剤Dに沿って隙間なく第1飛散防止シート121の先端(自由端121a)まで現像剤Dの磁気穂が接触できるように、第1飛散防止シート121は剛度が小さいシートを用いるのが好ましい。一方で、第1マグローラ131の磁極N2の穂立ちによる第1飛散防止シート121の変形を抑制するために、第1飛散防止シート121をバックアップするためのバックアップシート123は剛度が大きいシートを用いるのが好ましい。
【0080】
そこで、第1の実施形態では、バックアップシート123を、厚さが約100μmのPETシートで構成しているが、例えば、厚さが約50μmのPETシートでも良く、好ましくは厚さが約75μm以上、より好ましくは厚さ約100μm以上である。
【0081】
また、第1の実施形態では、磁気穂による第1飛散防止シート121の変形を抑制するために、バックアップシート123には剛度が大きいシートを用いたが、剛度を大きくする手段はこれに限られない。例えば、第1飛散防止シート121と同じ厚さ約100μmのウレタンシートを複数枚合わせる。これにより、第1飛散防止シート121をバックアップする機能を持たせて、第1マグローラ131の磁極N2の穂立ち部における剛度を大きくする変形例であってもよい。
【0082】
以上説明したように第1の実施形態によれば、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちする領域で現像剤に当接するシート部(第1飛散防止シート121)を備えた現像装置において、画像不良の発生を抑制することができる。
【0083】
[第2の実施形態]
前述した第1の実施形態では、磁気穂による第1飛散防止シート121の変形を抑制するために、バックアップシート123には、第1飛散防止シート121よりも剛度が大きいシートを用いる例について説明した。
【0084】
一方、第2の実施形態では、現像スリーブカバー120にバックアップシート123を設けない代わりに、第1飛散防止シートの構成が第1の実施形態とは異なる。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成については同じ符号を付して、説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0085】
第2の実施形態に係る第1飛散防止シートの構成の詳細について
図5を用いて説明する。
図5は、第2の実施形態に係る現像スリーブカバー周辺の構成を示す断面図(拡大図)である。
【0086】
図5に示すように、第2の実施形態では、現像スリーブカバー120にバックアップシート123が設けられていない。その代わりに、第2の実施形態では、第1飛散防止シート221の変形を抑制するために、第1飛散防止シート221の自由端221a側と固定端221b側で第1飛散防止シート221の剛度を変えている。具体的には、第1飛散防止シート221の自由端221a側である第1飛散防止シート221の先端に対して、第1飛散防止シート221の固定端221b側の剛度を大きくするためにシートの厚みを厚くしている。
【0087】
第2の実施形態では、第1飛散防止シート221の先端(自由端221a側)の厚みが100μmのウレタンシートで構成されているのに対して、固定端221b側のシートの厚みは300μmのウレタンシートで構成している。これにより、第2の実施形態では、現像スリーブカバー120にバックアップシート123を設けていなくても、第1マグローラ131の磁極N2の磁気穂による第1飛散防止シート221の変形を抑制することができる。
【0088】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様にして、第1飛散防止シート121は、上流現像スリーブ111の現像剤コート領域(現像剤搬送能力が在る領域)の長手方向の一端部から他端部の全域に亘って設けられているものである。
【0089】
第2の実施形態において、第1飛散防止シート221の剛度を大きくする領域は、少なくとも、第1飛散防止シート221の固定端221bから磁極N2の上流側半値位置までの領域としている。より好ましくは、第1飛散防止シート221の剛度を大きくする領域を、第1飛散防止シート221の固定端221bから磁極N2のピーク位置までの領域とすることである。また、更により好ましくは、第1飛散防止シート221の剛度を大きくする領域を、第1飛散防止シート221の固定端221bから磁極N2の下流側半値位置までの領域とすることである。なお、磁極N2のピーク位置、上流側半値位置、及び、下流側半値位置のそれぞれの定義は、第1の実施形態で前述したとおりである。
【0090】
第2の実施形態では、第1飛散防止シート221の剛度を大きくする領域を、第1飛散防止シート221の固定端221bから磁極N2の下流側半値位置までの領域とした。即ち、第1飛散防止シート221の固定端221bから磁極N2の下流側半値位置までの領域における第1飛散防止シート221の剛度を、第1飛散防止シート221の自由端221aにおける第1飛散防止シート221の剛度よりも大きくしている。これにより、第1飛散防止シート221は、磁気穂で持ち上げられることを抑制することができる。
【0091】
また、第2の実施形態では、磁極N2の下流側半値位置から第1飛散防止シート221の先端(自由端221a)までの剛度を小さくしている。このため、上流現像スリーブ111上の現像剤Dに沿って隙間なく第1飛散防止シート221の先端(自由端221a)まで現像剤Dの磁気穂が接触できるようになる。
【0092】
以上説明したように第2の実施形態によれば、現像スリーブ上の現像剤が穂立ちする領域で現像剤に当接するシート部(第1飛散防止シート221)を備えた現像装置において、画像不良の発生を抑制することができる。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0094】
上記実施形態では、
図2に示したように、現像装置1は、現像剤担持体として、上流現像スリーブ111と下流現像スリーブ112の2本を有し、第1飛散防止シート121が上流現像スリーブ111に当接する例について説明したが、これに限られない。現像剤担持体として1本の現像スリーブを有する現像装置に本発明を適用することも可能である。その変形例にあっては、現像装置が有する1本の現像スリーブに対して第1飛散防止シート121が当接させる。
【0095】
また、上記実施形態では、第1飛散防止シート121と約2~3mm程度の隙間を設けて、且つ、感光体ドラム2に当接するように第2飛散防止シート122を現像スリーブカバー120に設ける例について説明したが、これに限られない。現像スリーブカバー120に対して、第1飛散防止シート121(221)を設ける一方で、第2飛散防止シート122は設けない変形例であってもよい。現像スリーブカバー120に対して第2飛散防止シート122を設けるか否かは、第1現像領域A1からトナーが飛散する程度に合わせて適宜設計すればよい。
【0096】
また、上記実施形態では、
図1に示したように、画像形成装置100は、感光体ドラム2(2Y、2M、2C、2K)のそれぞれに担持されたトナー画像を転写ベルト30に一次転写する。その後、画像形成装置100は、転写ベルト30にシートPを接触させて転写ベルト30に担持されたトナー画像をシートPに二次転写する。上記実施形態では、このような構成の画像形成装置100を例に説明したが、これに限られない。感光体ドラム2(2Y、2M、2C、2K)にシートPを直接接触させて、感光体ドラム2(2Y、2M、2C、2K)のそれぞれに担持されたトナー画像をシートPに直接転写する構成の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 現像装置
110 現像容器
111 上流現像スリーブ
113 規制ブレード
120 現像スリーブカバー
121 第1飛散防止シート
123 バックアップシート
131 第1マグローラ