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2025-113645制御装置、レンズ装置、撮像装置、カメラシステム、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025113645
(43)【公開日】2025-08-04
(54)【発明の名称】制御装置、レンズ装置、撮像装置、カメラシステム、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/68 20230101AFI20250728BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20250728BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20250728BHJP
【FI】
H04N23/68
G03B5/00 J
G03B5/00 K
G03B7/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007908
(22)【出願日】2024-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瑠美
【テーマコード(参考)】
2H002
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H002CC01
2H002FB23
2K005BA02
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA24
2K005CA27
2K005CA52
5C122DA03
5C122EA41
5C122FB03
5C122FB04
5C122FB23
5C122FC01
5C122FC02
5C122FF09
5C122GA01
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA46
5C122HA82
5C122HA86
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】低速シャッター時においても、画像の中心部から周辺部までの像振れを低減可能な制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置は、カメラと交換レンズのそれぞれに設けられた2つの補正部材を備えるシステムに用いられる制御装置であって、2つの補正部材による補正を行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報に基づく、2つの補正部材による補正の比率又は該比率と異なる2つの補正部材による補正の比率に基づいて2つの補正部材の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う第1補正部と、台形歪みを補正する第2補正部と、2つの補正部による補正が行われる第1制御又は2つの補正部による補正の少なくとも一方が行われる第2制御を実行する制御部と、を有し、制御部は、撮影のシャッター速度が閾値よりも速い場合、第1制御を行い、シャッター速度が閾値よりも遅い場合、第2制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と前記撮像装置に着脱可能に装着されるレンズ装置の一方に設けられた第1補正部材と、前記撮像装置と前記レンズ装置の他方に設けられた第2補正部材とを備えるカメラシステムに用いられる制御装置であって、
前記第1補正部材を用いた補正を行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報と前記第2補正部材を用いた補正を行った場合の前記中心部と前記周辺部の像移動量に関する情報とに基づく、前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第1補正比率、又は、前記第1補正比率と異なる前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第2補正比率に基づいて、前記第1補正部材と前記第2補正部材の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う第1補正部と、
前記像振れのうち台形歪みを補正する第2補正部と、
前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正とが行われる第1制御、又は、前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正の少なくとも一方が行われる前記第1制御と異なる第2制御を実行する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記撮像装置により行われる撮影のシャッター速度が閾値よりも速い場合、前記第1制御を行い、前記シャッター速度が前記閾値よりも遅い場合、前記第2制御を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第2補正比率は、前記第1補正部材の移動可能量と前記第2補正部材の移動可能量とに基づく、前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との比率であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1制御は、前記第1補正部による前記第2補正比率に基づく補正と前記第2補正部による補正とが行われる制御であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1制御を実行する場合、前記第1補正部材の移動量及び前記第2補正部材の移動量と、前記レンズ装置の焦点距離情報とに基づいて、前記第2補正部を用いた補正の補正量を取得することを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2制御は、前記第1補正部による前記第1補正比率に基づく補正が行われ、前記第2補正部による補正が行われない制御であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2制御は、前記像振れのうち第1周波数領域に対して前記第1補正部による前記第2補正比率に基づく補正と前記第2補正部による補正とが行われ、前記像振れのうち前記第1周波数領域よりも高周波領域である第2周波数領域に対して前記第1補正部による前記第1補正比率に基づく補正が行われ、かつ第2補正部による補正が行われない制御であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2制御を実行する場合、前記第1周波数領域に対する補正における前記第1補正部材の移動量及び前記第2補正部材の移動量と、前記レンズ装置の焦点距離情報とに基づいて、前記第2補正部による補正の補正量を取得することを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記閾値は、前記レンズ装置の焦点距離情報に応じて設定されることを特徴する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項9】
前記閾値は、前記レンズ装置の焦点距離が短いほど大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の制御装置と、
撮像光学系と、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の制御装置と、
撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の制御装置と、
撮像光学系と、
撮像素子と、を有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項13】
撮像装置と前記撮像装置に着脱可能に装着されるレンズ装置の一方に設けられた第1補正部材と、前記撮像装置と前記レンズ装置の他方に設けられた第2補正部材とを備えるカメラシステムに用いられる制御装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記第1補正部材を用いた補正を行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報と前記第2補正部材を用いた補正を行った場合の前記中心部と前記周辺部の像移動量に関する情報とに基づく、前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第1補正比率、又は、前記第1補正比率と異なる前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第2補正比率に基づいて、前記第1補正部材と前記第2補正部材の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う第1補正部と、
前記像振れのうち台形歪みを補正する第2補正部と、を備え、
前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正とが行われる第1制御、又は、前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正の少なくとも一方が行われる前記第1制御と異なる第2制御を実行するステップを有し、
前記ステップにおいて、前記撮像装置により行われる撮影のシャッター速度が閾値よりも速い場合、前記第1制御を行い、前記シャッター速度が前記閾値よりも遅い場合、前記第2制御を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の制御方法を撮像装置又はレンズ装置のコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムを記憶した、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、レンズ装置、撮像装置、カメラシステム、制御方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
中心射影方式を採用する交換レンズ内の光学系によっては、手振れ時に被写体像上で生じる像点移動量が画像の中心部と周辺部で異なることが起こりうる。特に光学系が広角になる程、周辺部の像点移動量は中心部に比べて大きくなり、防振を行うと、周辺部では中心部に比べて像振れが大きく残ることがある。特許文献1には、撮像装置に加えられる振れによって撮像画像が台形状に歪む像振れを画像変形させることにより打ち消す、いわゆる電子式像振れ補正の一つである、あおり補正を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6103877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、電子式像振れ補正を行うため、低速シャッター時に補正効果を十分に得ることができない。特に、光学系が周辺部の像振れが大きくなる広角レンズである場合、周辺部の補正効果が低下するシャッター速度はより高速となる。
【0005】
本発明は、低速シャッター時においても、画像の中心部から周辺部までの像振れを低減可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての制御装置は、撮像装置と撮像装置に着脱可能に装着されるレンズ装置の一方に設けられた第1補正部材と、撮像装置とレンズ装置の他方に設けられた第2補正部材とを備えるカメラシステムに用いられる制御装置であって、第1補正部材を用いた補正を行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報と第2補正部材を用いた補正を行った場合の中心部と周辺部の像移動量に関する情報とに基づく、第1補正部材を用いた補正と第2補正部材を用いた補正との第1補正比率、又は、第1補正比率と異なる第1補正部材を用いた補正と第2補正部材を用いた補正との第2補正比率に基づいて、第1補正部材と第2補正部材の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う第1補正部と、像振れのうち台形歪みを補正する第2補正部と、第1補正部による補正と第2補正部による補正とが行われる第1制御、又は、第1補正部による補正と第2補正部による補正の少なくとも一方が行われる第1制御と異なる第2制御を実行する制御部と、を有し、制御部は、撮像装置により行われる撮影のシャッター速度が閾値よりも速い場合、第1制御を行い、シャッター速度が閾値よりも遅い場合、第2制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低速シャッター時においても、画像の中心部から周辺部までの像振れを低減可能な制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るカメラシステムのブロック図である。
図2】像振れ補正部のブロック図である。
図3】第2の振れ補正比率の設定方法を示す図である。
図4】OISとIISで所定量のブレを補正した場合において、画像の中心部の像振れ残り量を0としたときの像高ごとの像振れ残り量を示す図である。
図5】射影変換の説明図である。
図6】電子防振の種類を示す図である。
図7】実施例1の協調補正制御を示すフローチャートである。
図8】実施例2の協調補正制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステムのブロック図である。カメラシステムは、カメラ本体(撮像装置)100、及びカメラ本体100に着脱可能かつ通信可能に装着される交換レンズ(レンズ装置)101を有する。本実施形態では、カメラ本体100と交換レンズ101の一方には第1補正部材が設けられ、他方には設けられた第2補正部材とを備える。第1補正部材と第2補正部材は、撮影画像に生じる像振れを補正するために用いられる。なお、本発明は、カメラ本体とレンズが一体になったカメラシステムに対しても適用可能である。
【0011】
カメラ本体100は、カメラMPU102、操作部103、撮像素子104、カメラ側接点端子105、カメラ側ジャイロセンサ106、撮像素子アクチュエータ107、撮像素子位置センサ108、加速度センサ109、及び背面ディスプレイ116を備える。
【0012】
カメラMPU102は、カメラシステムの制御全体を司るコントローラであり、操作部103からの入力に応じて、自動露出(AE)、自動焦点調節(AF)、及び撮像等の様々な動作を制御する。また、カメラMPU102は、カメラ側接点端子105及び交換レンズ101に設けられたレンズ側接点端子112を通じて交換レンズ101に設けられたレンズMPU110との間で各種命令や情報を通信する。カメラ側接点端子105及びレンズ側接点端子112には、カメラ本体100から交換レンズ101に対して電源を供給するための電源端子も含まれている。
【0013】
操作部103は、各種撮像モードの設定を行うモードダイヤルや、撮像準備動作や撮像の開始を指示するためのレリーズボタン等を備える。レリーズボタンの半押し操作によって第1スイッチ(SW1)がオンになり、全押し操作により第2スイッチ(SW2)がオンになる。SW1のオンに応じて撮像準備動作としてのAE及びAFが行われ、SW2のオンに応じてAE設定の確定及びAFの停止等が行われると共に、撮像(露光)の開始が指示される(SW2-1のオン)。該指示から所定時間後に実際の露光が開始される(SW2-2のオン)。SW2-1及びSW2-2は、設定された露光時間が経過し、撮像が終了したタイミングでオフされる。SW1、SW2-1、及びSW2-2のオン/オフは、通信によりカメラMPU102からレンズMPU110に通知される。
【0014】
撮像素子104は、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成され、後述する撮像光学系により形成される被写体像を光電変換して撮像信号を生成する。カメラMPU102は、撮像素子104からの撮像信号を用いて映像信号を生成する。本実施形態では、撮像素子104は、第1補正部材として機能する。
【0015】
カメラ側ジャイロセンサ106は、手振れ等によるカメラ本体100に加わる角度振れ(カメラ振れ)を検出して角速度信号としてのカメラ振れ検出信号を出力する。カメラMPU102は、カメラ振れ検出信号と後述するIISの振れ補正比率とに基づいて撮像素子アクチュエータ107を駆動することで、撮像素子104を後述する撮像光学系の光軸に直交する方向の成分を含む方向へ移動させる。これにより、カメラ振れによる像振れを低減(補正)することができる。この際、カメラMPU102は、撮像素子位置センサ108により検出される撮像素子104の位置(移動中心である光軸上の位置からの移動量)が目標位置に近づくように撮像素子アクチュエータ107のフィードバック制御を行う。上記構成により、撮像素子104の移動による像振れ補正(以下、IISという)が行われる。また、カメラMPU102は、IISを行うと共に、カメラ側ジャイロセンサ106からの信号を用いて画像を電子的に変形し、並進変形、回転変形、及び台形変形(あおり補正)等の所謂電子防振も実施する。
【0016】
加速度センサ109は、カメラ本体100の姿勢を検出したり、カメラ側ジャイロセンサ106では検出の難しいブレ(シフト振れ)を検出したりする。
【0017】
背面ディスプレイ116は、カメラMPU102が撮像素子104からの撮像信号を用いて生成した映像信号に対応する映像を表示する。撮像前においては、ユーザは表示される映像をファインダ映像(ライブビュー映像)として観察することができる。また、撮像後においては、背面ディスプレイ116に撮像により生成された記録用の静止画又は動画を表示することができる。本実施形態における「撮像」とは、記録用撮像を意味する。
【0018】
交換レンズ101は、像振れ補正レンズ114を含む撮像光学系、レンズMPU110、レンズ側ジャイロセンサ111、レンズ側接点端子112、レンズアクチュエータ113、及びレンズ位置センサ115を備える。
【0019】
レンズ側ジャイロセンサ111は、交換レンズ101に加わる角度振れ(レンズ振れ)を検出して角速度信号としてのレンズ振れ検出信号を出力する。レンズMPU110は、レンズ振れ検出信号と後述するOISの振れ補正比率とに基づいてレンズアクチュエータ113を駆動することで、像振れ補正レンズ114を撮像光学系の光軸に直交する方向の成分を含む方向へ移動させる。これにより、レンズ振れによる像振れを低減(補正)することができる。この際、レンズMPU110は、レンズ位置センサ115により検出される像振れ補正レンズ114の位置(移動中心である光軸上の位置からの移動量)が目標位置に近づくようにレンズアクチュエータ113のフィードバック制御を行う。上記構成により、像振れ補正レンズ114の移動による像振れ補正(以下、OISという)が行われる。本実施形態では、像振れ補正レンズ114は、第2補正部材として機能する。
【0020】
また、レンズMPU110は、本実施形態では、補正部(第1補正部)110a、及び制御部110bを備える。補正部110aは、OISとIISとの第1の振れ補正比率(第1補正比率)、又はOISとIISとの第2の振れ補正比率(第2補正比率)に基づいて、撮像素子104と像振れ補正レンズ114の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う。第1の振れ補正比率は、OISを行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報とIISを行った場合の中心部と周辺部の像移動量に関する情報とに基づいて決定される。また、第2の振れ補正比率は、第1の振れ補正比率と異なる値である。本実施形態では、第2の振れ補正比率は、撮像素子104の移動可能量と像振れ補正レンズ114の移動可能量とに基づいて決定されるが、本発明はこれに限定されない。制御部110bは、第1制御又は第2制御を実行する。第1制御では、補正部110aによる補正と後述する像振れのうち台形上に歪む振れ(台形歪み)を補正する画像変形処理部(第2補正部)217による補正とが行われる。第2制御では、補正部110aによる補正と画像変形処理部217による補正の少なくとも一方が行われる。
【0021】
なお、本実施形態では、レンズMPU110が後述する協調駆動制御を実行する制御装置として機能するが、本発明はこれに限定されない。カメラMPU102が補正部110aや制御部110bの機能を備え、協調駆動制御を行う制御装置として機能してもよい。
【0022】
以下、図2を参照して、カメラシステムの像振れ補正部の構成を説明する。図2は、像振れ補正部のブロック図である。像振れ補正部は、カメラMPU102の一部である像振れ補正部201、及びレンズMPU110の一部である像振れ補正部209を備える。
【0023】
像振れ補正部201は、カメラジャイロオフセット除去部202、カメラ側角度変換部203、カメラ情報記憶部204、レンズ通信送信部205、レンズ通信受信部206、カメラ側協調駆動制御部207、及び撮像素子駆動制御部208を備える。カメラジャイロオフセット除去部202は、カメラ側ジャイロセンサ106により検出された角速度信号から、オフセット成分を除去する。カメラ側角度変換部203は、カメラジャイロオフセット除去部202から出力された角速度信号を角度信号に変換する。カメラ情報記憶部204は、IISの補正部材である撮像素子104のストローク(移動可能量)や、センササイズ等の情報を記憶している。レンズ通信送信部205は、カメラ情報記憶部204に保存されている情報を像振れ補正部209のカメラ通信受信部214に送信する。レンズ通信受信部206は、像振れ補正部209のカメラ通信送信部213から送信された情報を受信する。カメラ側協調駆動制御部207は、カメラ情報記憶部204に保存されている情報、及びレンズ通信受信部206が受信した情報に基づいて、IISで補正する像振れ量を決定する。撮像素子駆動制御部208は、カメラ側角度変換部203から出力された角度信号とカメラ側協調駆動制御部207から出力された像振れ量とを用いて、撮像素子104の駆動制御信号を生成する。また、カメラジャイロオフセット除去部202からの出力はカメラMPU102内の別処理ブロックである画像変形処理部217に送られ、画像変形処理部217はカメラジャイロオフセット除去部202からの出力を用いて画像に対して画像変形処理を実行する。
【0024】
像振れ補正部209は、レンズジャイロオフセット除去部210、レンズ側角度変換部211、レンズ情報記憶部212、カメラ通信送信部213、カメラ通信受信部214、レンズ側協調駆動制御部215、及び像振れ補正レンズ駆動制御部216を備える。レンズジャイロオフセット除去部210は、レンズ側ジャイロセンサ111により検出された角速度信号から、オフセット成分を除去する。レンズ側角度変換部211は、レンズジャイロオフセット除去部210から出力された角速度信号を角度信号に変換する。カメラ通信送信部213は、レンズ情報記憶部212に保存されている情報を像振れ補正部201のレンズ通信受信部206に送信する。カメラ通信受信部214は、像振れ補正部201のレンズ通信送信部205から送信された情報を受信する。
【0025】
レンズ情報記憶部212は、振れ補正比率に関する情報や、OISの補正部材である像振れ補正レンズ114のストロークを記憶している。また、レンズ情報記憶部212は、撮像素子104が所定量移動した場合の像振れ補正角、すなわちカメラ像振れ補正敏感度の情報を記憶している。
【0026】
また、レンズ情報記憶部212は、像振れ補正レンズ114が画像の中心部の像振れを所定角補正した場合の画像の周辺部の像振れ補正残り量であるレンズ周辺像振れ補正残り量情報を記憶している。なお、レンズ周辺像振れ補正残り量は、像振れ補正レンズ114を所定量移動させた場合の画像の中心部の像点移動量と所定像高における像点移動量の情報でもよいし、像振れ補正レンズ114を所定量移動させた場合の像振れ補正角度の情報から求められてもよい。また、レンズ周辺像振れ補正残り量は、画像の中心部の像振れを所定角補正した場合の画像の周辺部の像振れ補正残り量が像高ごとにどのように変化するかを示す関数であってもよい。
【0027】
更に、レンズ情報記憶部212は、撮像素子104が画像の中心部の像振れを所定角補正した場合の画像の周辺部の像振れ補正残り量であるカメラ周辺像振れ補正残り量を記憶している。なお、カメラ周辺像振れ補正残り量は、カメラ本体100を所定量回転させた場合の画像の中心部の像点移動量と所定像高における像点移動量の情報から求められてもよい。また、カメラ周辺像振れ補正残り量は、画像の中心部の像振れを所定量補正した場合の画像の周辺部の像振れ補正残り量が像高ごとにどのように変化するかを示す関数であってもよい。
【0028】
なお、レンズ情報記憶部212に保存される情報は、撮像光学系に含まれるズームレンズや、フォーカスレンズの移動により切り替わる情報であってもよい。
【0029】
レンズ側協調駆動制御部215は、レンズ情報記憶部212に保存されている情報、及びカメラ通信受信部214が受信した情報を用いて、OISとIISの協調駆動制御を行う。その際、レンズ側協調駆動制御部215は、各像振れ補正部で補正する像振れ量を決定するための振れ補正比率を設定する。また、レンズ側協調駆動制御部215は、レンズ情報記憶部212が記憶している情報、及びカメラ通信受信部214が受信した情報を用いて、振れ補正比率や、IISに必要な敏感度に関するレンズ内部情報を切り替える判断を行う。像振れ補正レンズ駆動制御部216は、レンズ側角度変換部211から出力された角度信号を用いて、像振れ補正レンズ114の駆動制御信号を生成する。
【0030】
以下、図3を参照して、OISとIISの第2の振れ補正比率の設定方法について説明する。振れ補正比率は、その目的によって、複数の方法から設定可能である。図3は、OISとIISの補正部材のストロークを用いて第2の振れ補正比率を設定する方法を示す図である。範囲301は、IISの補正部材である撮像素子104のメカニカルな可動範囲である。範囲302は、交換レンズ101のイメージサークルであり、OISの補正部材である像振れ補正レンズ114の可動範囲である。範囲303は、像振れ補正レンズ114のY軸方向のストローク(OISストローク)である。また、撮像素子104は、範囲301の内部かつ範囲302の内部で移動する必要がある。範囲304は、撮像素子104のY軸方向のストローク(IISストローク)である。カメラシステム全体の像振れを2つの補正部材を用いて補正を行う際、以下に示される第2の振れ補正比率を設定することで、OISとIISの補正部材のそれぞれのストロークを有効に活用して像振れ補正を行うことができる。
OISの振れ補正比率:OISストローク/(IISストローク+OISストローク)
IISの振れ補正比率:IISストローク/(IISストローク+OISストローク)
以下、画像の周辺部の像振れ残り量を抑えるための第1の振れ補正比率の設定方法について説明する。一般的な光学系には歪曲収差が残存しているため、IISで補正した際に歪曲収差量の変化によって画像の中心部と周辺部での像点移動量に差が生じる。また、OISにおいてもレンズの偏心による偏心歪曲が発生するため、偏心歪曲の変動によって画像の中心部と周辺部での像点移動量に差が生じる。したがって、IISにおいては射影方式による影響と歪曲収差の影響により、画像の中心部と周辺部の像点移動量に差が生じ、OISにおいては射影方式による影響と偏心歪曲収差の影響により画像の中心部と周辺部の像点移動量に差が生じる。すなわち、画像の中心部と周辺部の像点移動量に差が生じる原因がOISとIISで異なるため、OISとIISで画像の中心部と周辺部の像点移動量の比が異なる。
【0031】
図4は、OISとIISで所定量の像振れを補正した場合において、画像の中心部の像振れ残り量を0としたときの像高ごとの像振れ残り量を示す図である。所定量の像振れをOISで防振した場合の所定像高に対する像振れ残り量Ldと、所定量の像振れをIISで防振した場合の所定像高に対する像振れ残り量Cdを基に、OIS補正比率とIIS補正比率を以下のように算出する。
OISの補正比率:Cd/(Cd-Ld)
IISの補正比率:-Ld/(Cd-Ld)
これにより、画像の中心部の像振れ補正を行いながら周辺部の像振れを打ち消す効果が得られる。
【0032】
本実施例では、OISとIISとのそれぞれの像高に対する像振れ残り量の比から補正比率を求めたが、OIS又はIISのうち像高に対する像振れ残り量が小さいほうを選択して単独で制御するようにしてもよい。
【0033】
上記のように、補正比率の算出に画像の周辺部の像振れ残り量に関する情報を用いることで、撮像画像の電子的変換を行うことなく、画像周辺部の像振れを抑制することが可能である。一方、OISとIISの可動範囲はOISストロークとIISストロークによって制約を受けるため、OISとIISのそれぞれの像高に対する像振れ残り量の比によっては、大きなブレに対しては十分な像振れ補正効果が得られない可能性がある。
【0034】
以下、電子防振について説明する。電子防振は一般的に、射影変換等の幾何変形を用いて画像変形を行うことで実施される。例えば、図5に示されるように、ある被写体を撮影しているときの姿勢Aが姿勢Bに変化した際、行列式Hを用いて姿勢Aにおける画像I上の点Pを、姿勢Bにおける画像I上の点Pに変換することができる。射影変換の種類としては図6に示されるように、並進、回転、あおり等があり、行列式の各パラメータ設定によりそれぞれの変換を行うことができる。並進と回転の補正量は、カメラ側ジャイロセンサ106の出力及び交換レンズ101の焦点距離情報から算出可能である。あおり補正量は、並進移動量と焦点距離情報から算出可能である。
【0035】
ここで、低速シャッターにおける電子防振の効果に関して説明する。電子防振では、前述のとおり撮影画像の幾何変形を動画像の各フレームに対し実施し、防振を行うものである。したがって、1フレーム内に生じるブレ(面内ブレ)に対して補正を行うことは不可能である。低速シャッターでの撮影においては、面内ブレが生じることにより動画像に不自然なチラつきが発生する。すなわち、画像の周辺部で像振れが大きくなる広角レンズにおいては、低速シャッターでの撮影において周辺部で顕著にチラつきが発生する。
【0036】
以下、各実施例のカメラシステムのOIS、IIS、及びあおり補正を用いた協調補正制御について説明する。
【実施例0037】
図7は、本実施例のカメラシステムのOIS、IIS、及びあおり補正を用いた協調補正制御を示すフローチャートである。本フローは、カメラシステムに電源が入り、初期駆動動作等を経た後に開始される。なお、本実施例では、レンズMPU110が協調駆動制御を実行するものとする。
【0038】
ステップS701では、レンズMPU110は、協調駆動制御に必要な情報を取得する。協調駆動制御に必要な情報とは、OISとIISの補正部材のストローク、カメラ周辺像振れ補正残り量、レンズ周辺像振れ補正残り量、像振れ補正に必要な敏感度の情報、シャッタースピード情報、及び交換レンズ101の焦点距離情報等である。
【0039】
ステップS702では、レンズMPU110は、ステップS701で取得した焦点距離情報、カメラ周辺像振れ補正残り量、及びレンズ周辺像振れ補正残り量等の情報をもとに制御を変更する際の閾値となるシャッタースピード閾値を設定する。交換レンズ101の焦点距離が短いほどシャッタースピード閾値を高速シャッタースピードに設定することが望ましい。また、カメラ周辺像振れ補正残り量やレンズ周辺像振れ補正残り量が大きいほどシャッタースピード閾値を高速シャッタースピードに設定することが望ましい。
【0040】
ステップS703では、レンズMPU110は、カメラ側ジャイロセンサ106及びレンズ側ジャイロセンサ111により検出された信号を基に、角度信号を取得する。
【0041】
ステップS704では、レンズMPU110は、現在のシャッタースピード(シャッター速度)がステップS702で設定したシャッタースピード閾値よりも高速である(大きい)かどうかを判定する。レンズMPU110は、現在のシャッタースピードがシャッタースピード閾値よりも高速であると判定した場合、ステップS705の処理を実行し、そうでないと判定した場合、ステップS706の処理を実行する。なお、現在のシャッタースピードがシャッタースピード閾値と等しい場合、どちらのステップの処理を行うかは任意に設定可能である。
【0042】
ステップS705では、レンズMPU110は、OISストロークとIISストロークとに基づくOISとIISとの第2の振れ補正比率を設定する。
【0043】
ステップS706では、レンズMPU110は、OIS画像周辺振れ残り量とIIS画像周辺振れ残り量とに基づくOISとIISとの第1の振れ補正比率を設定する。
【0044】
ステップS707では、レンズMPU110は、電子防振のうちあおり補正の実施を禁止する。
【0045】
ステップS708では、レンズMPU110は、ステップS705又はステップS706で設定した振れ補正比率に基づいてステップS703で取得した角度信号からOIS駆動量を算出(取得)する。
【0046】
ステップS709では、レンズMPU110は、ステップS705又はステップS706で設定した振れ補正比率に基づいてステップS703で取得した角度信号からIIS駆動量を算出(取得)する。
【0047】
ステップS710では、レンズMPU110は、ステップS708で取得したOIS駆動量に基づいてOISを駆動する。
【0048】
ステップS711では、レンズMPU110は、ステップS709で取得したIIS駆動量に基づいてIISを駆動する。
【0049】
ステップS712では、レンズMPU110は、あおり補正の実施が許可されているかどうかを判定する。レンズMPU110は、あおり補正の実施が許可されていると判定した場合、ステップ713の処理を実行し、そうでないと判定した場合、本フローの処理を実行する。
【0050】
ステップS713では、レンズMPU110はまず、焦点距離情報、ステップS708で取得したOIS駆動量、及びステップS709で取得したIIS駆動量に基づいてあおり補正量を算出(取得)する。次に、レンズMPU110は、取得したあおり補正量を用いて撮像素子104により得られた撮像画像に対してあおり補正を実施する。
【0051】
図7のフローを実行することで、シャッタースピードが高速である場合、光学防振での補正可能量を最大限に確保しながらあおり補正により画像の周辺部の像振れを低減する。また、シャッタースピードが低速である場合、光学防振を用いて画像の周辺部の像振れを低減することで動画像のチラつきを抑制することが可能である。
【0052】
なお、図7のステップの順番や内容は、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0053】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、シャッタースピードに関わらず画像の周辺部の像振れやチラつきを低減することが可能である。
【0054】
なお、本実施例では、OISとIISのストロークや像振れ残り量からOISとIISとの振れ補正比率を計算したが、OISとIISのストロークや像振れ残り量から算出される比率情報自体を直接メモリに保持しておくようにしてもよい。
【0055】
また、本実施例では、交換レンズ方式のカメラシステムにおいて、OISとIISとあおり補正を用いて画像の周辺部の像振れを低減する場合について説明したが、面内ブレの影響のない範囲で電子防振の並進補正を組み合わせるようにしてもよい。
【実施例0056】
本実施例では、シャッタースピードがシャッタースピード閾値よりも高速でない場合に実施例1と異なる制御が実施される。図8は、本実施例のカメラシステムのOIS、IIS、及びあおり補正を用いた協調補正制御を示すフローチャートである。本フローは、カメラシステムに電源が入り、初期駆動動作等を経た後に開始される。なお、本実施例では、レンズMPU110が協調駆動制御を実行するものとする。
【0057】
ステップS801からステップS803までの処理はそれぞれ、図7のステップ701からステップS703までの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
ステップS804では、レンズMPU110は、現在のシャッタースピードがステップS802で設定したシャッタースピード閾値よりも高速であるかどうかを判定する。レンズMPU110は、現在のシャッタースピードがシャッタースピード閾値よりも高速であると判定した場合、ステップS805及びステップS806の処理を実行し、そうでないと判定した場合、ステップS810及びステップS813の処理を実行する。なお、現在のシャッタースピードがシャッタースピード閾値と等しい場合、どのステップの処理を行うかは任意に設定可能である。
【0059】
ステップS805では、レンズMPU110は、OISストロークとIISストロークとの比に基づいてステップS803で取得した角度信号からOIS駆動量を算出(取得)する。
【0060】
ステップS806では、レンズMPU110は、OISストロークとIISストロークとの比に基づいてステップS803で取得した角度信号からIIS駆動量を算出(取得)する。
【0061】
ステップS807では、レンズMPU110は、ステップS805で取得したOIS駆動量に基づいてOISを駆動する。
【0062】
ステップS808では、レンズMPU110は、ステップS806で取得したIIS駆動量に基づいてIISを駆動する。
【0063】
ステップS809では、レンズMPU110はまず、焦点距離情報、ステップS805で取得したOIS駆動量、及びステップS806で取得したIIS駆動量に基づいてあおり補正量を算出(取得)する。次に、レンズMPU110は、取得したあおり補正量を用いて撮像素子104により得られた撮像画像に対してあおり補正を実施する。
【0064】
ステップS810では、レンズMPU110は、ステップS803で取得した角度信号に対して、例えばLPF処理を実施することによって、低周波域角度信号を取得する。
【0065】
ステップS811では、レンズMPU110は、OISストロークとIISストロークの比に基づいてステップS810で取得した低周波域角度信号から低周波域OIS駆動量を算出(取得)する。
【0066】
ステップS812では、レンズMPU110は、OISストロークとIISストロークの比に基づいてステップS810で取得した低周波域角度信号から低周波域IIS駆動量を算出(取得)する。
【0067】
ステップS813では、レンズMPU110は、ステップS803で取得した角度信号に対して、例えばHPF処理を実施することによって、高周波域角度信号を取得する。
【0068】
ステップS814では、レンズMPU110は、OISとIISで防振した場合の画像の周辺部の像振れ残り量の比に基づいてステップS813で取得した高周波域角度信号から高周波域OIS駆動量を算出(取得)する。
【0069】
ステップS815では、レンズMPU110は、OISとIISで防振した場合の画像の周辺部の像振れ残り量の比に基づいてステップS813で取得した高周波域角度信号から高周波域IIS駆動量を算出(取得)する。
【0070】
ステップS816では、レンズMPU110は、ステップS811で取得した低周波域OIS駆動量及びステップS814で取得した高周波域OIS駆動量に基づいてOISを駆動する。
【0071】
ステップS817では、レンズMPU110は、ステップS812で取得した低周波域IIS駆動量及びステップS815で取得した高周波域IIS駆動量に基づいてIISを駆動する。
【0072】
ステップS818では、レンズMPU110はまず、焦点距離情報、ステップS811で取得した低周波域OIS駆動量、及びステップS814で取得した低周波域IIS駆動量に基づいてあおり補正量を算出(取得)する。次に、レンズMPU110は、取得したあおり補正量を用いて撮像素子104により得られた撮像画像に対してあおり補正を実施する。
【0073】
図8のフローを実行することで、面内ブレの原因になる高周波領域(第2周波数領域)の振れに対しては光学防振により画像の周辺部の像振れを低減する。また、低周波領域(第1周波数領域)の振れに対しては電子防振のあおり補正を用いて画像の周辺部の像振れを低減することでOISとIISのストロークを効率的に使用することが可能となる。
【0074】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、シャッタースピードに関わらず画像の周辺部の像振れやチラつきを低減することが可能である。
【0075】
なお、本実施例では、OISとIISのストロークや像振れ残り量からOISとIISとの振れ補正比率を計算したが、OISとIISのストロークや像振れ残り量から算出される比率情報自体を直接メモリに保持しておくようにしてもよい。
【0076】
また、本実施例では、交換レンズ方式のカメラシステムにおいて、OISとIISとあおり補正を用いて画像の周辺部の像振れを低減する場合について説明したが、面内ブレの影響のない範囲で電子防振の並進補正を組み合わせるようにしてもよい。
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0077】
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)
撮像装置と前記撮像装置に着脱可能に装着されるレンズ装置の一方に設けられた第1補正部材と、前記撮像装置と前記レンズ装置の他方に設けられた第2補正部材とを備えるカメラシステムに用いられる制御装置であって、
前記第1補正部材を用いた補正を行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報と前記第2補正部材を用いた補正を行った場合の前記中心部と前記周辺部の像移動量に関する情報とに基づく、前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第1補正比率、又は、前記第1補正比率と異なる前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第2補正比率に基づいて、前記第1補正部材と前記第2補正部材の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う第1補正部と、
前記像振れのうち台形歪みを補正する第2補正部と、
前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正とが行われる第1制御、又は、前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正の少なくとも一方が行われる前記第1制御と異なる第2制御を実行する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記撮像装置により行われる撮影のシャッター速度が閾値よりも速い場合、前記第1制御を行い、前記シャッター速度が前記閾値よりも遅い場合、前記第2制御を行うことを特徴とする制御装置。
(構成2)
前記第2補正比率は、前記第1補正部材の移動可能量と前記第2補正部材の移動可能量とに基づく、前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との比率であることを特徴とする構成1に記載の制御装置。
(構成3)
前記第1制御は、前記第1補正部による前記第2補正比率に基づく補正と前記第2補正部による補正とが行われる制御であることを特徴とする構成1又は2に記載の制御装置。
(構成4)
前記制御部は、前記第1制御を実行する場合、前記第1補正部材の移動量及び前記第2補正部材の移動量と、前記レンズ装置の焦点距離情報とに基づいて、前記第2補正部を用いた補正の補正量を取得することを特徴とする構成3に記載の制御装置。
(構成5)
前記第2制御は、前記第1補正部による前記第1補正比率に基づく補正が行われ、前記第2補正部による補正が行われない制御であることを特徴とする構成1乃至4の何れか一つの構成に記載の制御装置。
(構成6)
前記第2制御は、前記像振れのうち第1周波数領域に対して前記第1補正部による前記第2補正比率に基づく補正と前記第2補正部による補正とが行われ、前記像振れのうち前記第1周波数領域よりも高周波領域である第2周波数領域に対して前記第1補正部による前記第1補正比率に基づく補正が行われ、かつ第2補正部による補正が行われない制御であることを特徴とする構成1乃至4の何れか一つの構成に記載の制御装置。
(構成7)
前記制御部は、前記第2制御を実行する場合、前記第1周波数領域に対する補正における前記第1補正部材の移動量及び前記第2補正部材の移動量と、前記レンズ装置の焦点距離情報とに基づいて、前記第2補正部による補正の補正量を取得することを特徴とする構成6に記載の制御装置。
(構成8)
前記閾値は、前記レンズ装置の焦点距離情報に応じて設定されることを特徴する構成1乃至7の何れか一つの構成に記載の制御装置。
(構成9)
前記閾値は、前記レンズ装置の焦点距離が短いほど大きくなるように設定されることを特徴とする構成1乃至8の何れか一つの構成に記載の制御装置。
(構成10)
構成1乃至9の何れか一つの構成に記載の制御装置と、
撮像光学系と、を有することを特徴とするレンズ装置。
(構成11)
構成1乃至9の何れか一つの構成に記載の制御装置と、
撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
(構成12)
構成1乃至9の何れか一つの構成に記載の制御装置と、
撮像光学系と、
撮像素子と、を有することを特徴とするカメラシステム。
(方法1)
撮像装置と前記撮像装置に着脱可能に装着されるレンズ装置の一方に設けられた第1補正部材と、前記撮像装置と前記レンズ装置の他方に設けられた第2補正部材とを備えるカメラシステムに用いられる制御装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記第1補正部材を用いた補正を行った場合の画像の中心部と周辺部の像移動量に関する情報と前記第2補正部材を用いた補正を行った場合の前記中心部と前記周辺部の像移動量に関する情報とに基づく、前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第1補正比率、又は、前記第1補正比率と異なる前記第1補正部材を用いた補正と前記第2補正部材を用いた補正との第2補正比率に基づいて、前記第1補正部材と前記第2補正部材の少なくとも一方を用いて像振れに対する補正を行う第1補正部と、
前記像振れのうち台形歪みを補正する第2補正部と、を備え、
前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正とが行われる第1制御、又は、前記第1補正部による補正と前記第2補正部による補正の少なくとも一方が行われる前記第1制御と異なる第2制御を実行するステップを有し、
前記ステップにおいて、前記撮像装置により行われる撮影のシャッター速度が閾値よりも速い場合、前記第1制御を行い、前記シャッター速度が前記閾値よりも遅い場合、前記第2制御を行うことを特徴とする制御方法。
(構成13)
方法1に記載の制御方法を撮像装置又はレンズ装置のコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
(構成14)
構成13に記載のプログラムを記憶した、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 カメラ本体(撮像装置)
101 交換レンズ(レンズ装置)
102 カメラMPU(制御装置)
104 撮像素子(第1補正部材)
110 レンズMPU(制御装置)
110a 補正部(第1補正部)
110b 制御部
114 像振れ補正レンズ(第2補正部材)
217 画像変形処理部(第2補正部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8