(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025113848
(43)【公開日】2025-08-04
(54)【発明の名称】弾性波装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/08 20060101AFI20250728BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20250728BHJP
C30B 29/30 20060101ALI20250728BHJP
【FI】
H03H3/08
H03H9/25 C
C30B29/30 A
C30B29/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008223
(22)【出願日】2024-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大門 克也
(72)【発明者】
【氏名】野竹 直弘
【テーマコード(参考)】
4G077
5J097
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC32
4G077BC37
4G077FJ03
5J097AA32
5J097BB02
5J097EE08
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA03
5J097HA07
5J097HA08
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】圧電膜の結晶性を高くすることができ、かつ生産性を高くすることができる、弾性波装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の弾性波装置の製造方法は、基板22及び支持部材33を用意する工程と、基板22上にバッファ層23を設ける工程と、バッファ層23上に圧電膜28を設ける工程と、基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体における圧電膜28を、支持部材33に接合する工程と、圧電膜28から、バッファ層23及び基板22を除去する工程とを備える。基板22の格子定数をLS、バッファ層23の格子定数をLB、圧電膜28の格子定数をLPとしたときに、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]であり、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及び支持部材を用意する工程と、
前記基板上にバッファ層を設ける工程と、
前記バッファ層上に圧電膜を設ける工程と、
前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程と、
前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程と、
を備え、
前記基板の格子定数をLS、前記バッファ層の格子定数をLB、前記圧電膜の格子定数をLPとしたときに、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]であり、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である、弾性波装置の製造方法。
【請求項2】
前記バッファ層を、前記基板上においてエピタキシャル成長させることにより形成し、
前記圧電膜を、前記バッファ層上においてエピタキシャル成長させることにより形成する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項3】
前記圧電膜を前記バッファ層上に成膜により形成する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項4】
前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程において、ウェットエッチングを用いて前記バッファ層を除去する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項5】
前記バッファ層のバンドギャップが、前記基板のバンドギャップよりも小さく、
前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程において、レーザー光を前記基板側から前記バッファ層に照射することにより、前記基板の前記バッファ層からの剥離を行い、該剥離の後に前記バッファ層を前記圧電膜から除去する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項6】
前記レーザー光の波長が150nm以上、450nm以下である、請求項5に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項7】
前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程の後に、前記圧電膜の高温加熱処理または放電処理を行う工程をさらに備える、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項8】
前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程の後に、前記圧電膜における、前記バッファ層が積層されていた側の主面の算術平均粗さRaを1nm以下にする工程をさらに備える、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項9】
前記基板の材料が、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム及びサファイアのうちいずれかである、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項10】
前記基板の材料が、オイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価であるニオブ酸リチウム、オイラー角(φ,θ,ψ)が(90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内,30°±30°の範囲内)もしくはこれと等価であるニオブ酸リチウム、オイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価であるタンタル酸リチウム、オイラー角(φ,θ,ψ)が(90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内,30°±30°の範囲内)もしくはこれと等価であるタンタル酸リチウム、並びにオイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,122.23°±30°の範囲内,任意のψ)もしくはこれと等価であるサファイアのうちいずれかである、請求項9に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項11】
前記バッファ層の材料が、アルミニウム、チタン、窒化ガリウム、酸化チタン及び窒化アルミニウムのうちいずれかである、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項12】
前記圧電膜の材料が、ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうち一方であり、
前記バッファ層及び前記基板の材料の組み合わせが、前記バッファ層/前記基板の表記において、窒化ガリウム/サファイア、窒化ガリウム/ニオブ酸リチウム、酸化チタン/ニオブ酸リチウム、及び酸化チタン/タンタル酸リチウムのうちいずれかである、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項13】
前記圧電膜の材料が、ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうち一方であり、
前記バッファ層が第1のバッファ層及び第2のバッファ層を含む積層体であり、前記基板上に前記第1のバッファ層が設けられており、前記第1のバッファ層上に前記第2のバッファ層が設けられており、前記第2のバッファ層上に前記圧電膜が設けられており、
前記バッファ層及び前記基板の材料の組み合わせが、前記第2のバッファ層/前記第1のバッファ層/前記基板の表記において、窒化ガリウム/窒化アルミニウム/サファイア、酸化チタン/窒化ガリウム/サファイア、酸化チタン/チタン/ニオブ酸リチウム、及び酸化チタン/チタン/タンタル酸リチウムのうちいずれかである、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項14】
前記支持部材が少なくとも支持基板を含み、
前記支持基板の材料が、ガラス、水晶、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、ダイヤモンドライクカーボン及び酸化アルミニウムのうちいずれかである、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項15】
前記支持部材が支持基板のみを含み、
前記支持基板における、前記圧電膜に接合する主面の算術平均粗さRaを1nm以下にする工程と、
前記圧電膜における、前記支持基板に接合する主面の算術平均粗さRaを1nm以下にする工程と、
をさらに備え、
前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持基板に接合する工程において、前記支持基板における算術平均粗さRaが1nm以下である主面、及び前記圧電膜における算術平均粗さRaが1nm以下である主面を接合する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項16】
前記支持部材が支持基板及び中間層の積層体であり、
前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程において、前記圧電膜を前記中間層に接合する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項17】
前記中間層が、酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層のうち少なくとも一方を含む、請求項16に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項18】
前記支持部材を用意する工程において、前記中間層に埋め込むように犠牲層を設け、
前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程の後に、前記犠牲層を除去する工程をさらに備える、請求項16に記載の弾性波装置の製造方法。
【請求項19】
前記支持部材が支持基板及び音響反射膜の積層体であり、
前記音響反射膜が、相対的に音響インピーダンスが高い高音響インピーダンス層と、相対的に音響インピーダンスが低い低音響インピーダンス層と、を含み、
前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程において、前記圧電膜を前記音響反射膜に接合する、請求項1に記載の弾性波装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置の製造方法に関する。
【0002】
従来、弾性波装置が、携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波デバイスや、その製造方法の一例が記載されている。特許文献1に記載された製造方法においては、圧電層として圧電基板を準備する。もっとも、圧電層を準備した段階においては、圧電層の厚みは所望の厚みとはされていない。そのため、当該製造方法においては、圧電層を研削することによって薄膜化し、圧電層の厚みを所望の厚みに調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の製造方法においては、準備した圧電層の大部分が研削により除去され、廃棄されることがある。そのため、生産性を十分に高くすることは困難である。もっとも、従来においては、弾性波デバイスに用いる薄膜状の圧電層の結晶性を十分に高くするためには、結晶性が高い圧電基板を準備した後に、該圧電基板を薄膜化することを要していた。
【0005】
本発明の目的は、圧電膜の結晶性を高くすることができ、かつ生産性を高くすることができる、弾性波装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置の製造方法は、基板及び支持部材を用意する工程と、前記基板上にバッファ層を設ける工程と、前記バッファ層上に圧電膜を設ける工程と、前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程と、前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程とを備え、前記基板の格子定数をLS、前記バッファ層の格子定数をLB、前記圧電膜の格子定数をLPとしたときに、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]であり、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る弾性波装置の製造方法によれば、圧電膜の結晶性を高くすることができ、かつ生産性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態を説明するための模式的正面断面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態を説明するための略図的正面断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態の第1の変形例においての、バッファ層にレーザー光を照射する工程などを説明するための模式的正面断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態の第1の変形例においての、圧電膜からバッファ層及び基板を除去する工程などを説明するための模式的正面断面図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態の第2の変形例を説明するための模式的正面断面図である。
【
図8】六方晶の結晶構造におけるa面、m面、c面及びr面を示す模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第2の実施形態を説明するための模式的正面断面図である。
【
図11】
図11(a)~
図11(d)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第2の実施形態を説明するための略図的正面断面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図13】
図13(a)~
図13(c)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第3の実施形態においての、支持部材を用意する工程を説明するための模式的正面断面図である。
【
図14】
図14(a)及び
図14(b)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第3の実施形態においての、圧電膜を支持部材に接合する工程、並びに圧電膜からバッファ層及び基板を除去する工程を説明するための模式的正面断面図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図16】
図16(a)~
図16(d)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第4の実施形態を説明するための模式的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0012】
弾性波装置1は、圧電性基板2と、機能電極14とを有する。圧電性基板2は圧電性を有する基板である。具体的には、圧電性基板2は、支持部材3と、圧電膜8とを有する。本実施形態では、支持部材3は、支持基板4と、中間層5とを含む。中間層5は2層の誘電体層の積層体である。より具体的には、中間層5は、第1の層6と、第2の層7とを含む。支持基板4上に第1の層6が設けられている。第1の層6上に第2の層7が設けられている。第2の層7上に圧電膜8が設けられている。なお、中間層5は、例えば、単層の誘電体層であってもよい。
【0013】
圧電膜8は第1の主面8a及び第2の主面8bを有する。第1の主面8a及び第2の主面8bは互いに対向している。第1の主面8a及び第2の主面8bのうち、第2の主面8bが支持部材3側に位置している。
【0014】
図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0015】
圧電膜8の第1の主面8aに機能電極14が設けられている。本実施形態では、機能電極14はIDT(Interdigital Transducer)電極である。機能電極14は、1対のバスバーと、複数の電極指とを有する。1対のバスバーは、具体的には、第1のバスバー16及び第2のバスバー17である。第1のバスバー16及び第2のバスバー17は互いに対向している。複数の電極指は、具体的には、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19である。複数の第1の電極指18の一端はそれぞれ、第1のバスバー16に接続されている。複数の第2の電極指19の一端はそれぞれ、第2のバスバー17に接続されている。複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19は互いに間挿し合っている。
【0016】
以下においては、第1の電極指18及び第2の電極指19をまとめて、単に電極指と記載することがある。複数の電極指が延びる方向を電極指延伸方向とし、電極指延伸方向と直交する方向を電極指直交方向とする。
【0017】
圧電膜8の第1の主面8aには、1対の反射器15A及び反射器15Bが設けられている。反射器15A及び反射器15Bは、機能電極14を電極指直交方向において挟み互いに対向している。反射器15Aは複数の電極指15cを有する。反射器15Aにおいては、複数の電極指15cの両端が電気的に短絡されている。反射器15Bも、反射器15Aと同様に構成されている。機能電極14、反射器15A及び反射器15Bは、単層の金属膜からなっていてもよく、あるいは、積層金属膜からなっていてもよい。なお、反射器15A及び反射器15Bは、必ずしも設けられていなくともよい。
【0018】
機能電極14に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。弾性波装置1は、弾性表面波共振子である。もっとも、弾性波装置1が主モードとして利用する弾性波は弾性表面波に限定されない。例えば、弾性波装置1は、厚み滑りモードのバルク波を主モードとして利用するように構成されていてもよい。この場合、圧電膜8の厚みをd、隣り合う第1の電極指18及び第2の電極指19の中心間距離をpとしたときに、d/pが0.5以下であることが好ましい。それによって、厚み滑りモードが好適に励振される。
【0019】
弾性波装置1は、例えば、複数の機能電極14が設けられたウエハを個片化することにより得ることができる。ウエハが個片化された基板が圧電性基板2である。
【0020】
以下において、弾性波装置1の製造方法の一例を説明する。なお、当該製造方法は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態である。
【0021】
図3(a)~
図3(d)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第1の実施形態を説明するための模式的正面断面図である。
図4(a)及び
図4(b)は、弾性波装置の製造方法の第1の実施形態を説明するための略図的正面断面図である。なお、
図4(a)及び
図4(b)においては、機能電極14、反射器15A及び反射器15Bを、矩形に2本の対角線を加えた略図により示す。他の略図的正面断面図においても同様である。
【0022】
図3(a)に示すように、基板22を用意する。次に、基板22上にバッファ層23を設ける。このとき、バッファ層23を、例えば、基板22上においてエピタキシャル成長させることにより形成する。この場合、例えば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法や、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、バッファ層23を形成すればよい。本実施形態においては、バッファ層23はエピタキシャル層である。
【0023】
本明細書においてエピタキシャル層とは、エピタキシャル成長した配向膜からなる層をいう。さらに、本明細書において、エピタキシャル成長した配向膜とは、単結晶膜、または、双晶構造を有する多結晶膜をいう。ある層がエピタキシャル層であるか否かは、X線回折法により極点測定を行うことによって確認することができる。当該層が双晶構造を有する場合、回折パターンは複数の対称中心を有する。この場合、当該層は、エピタキシャル層である。
【0024】
次に、バッファ層23上に圧電膜28を設ける。このとき、圧電膜28を、例えば、バッファ層23上においてエピタキシャル成長させることにより形成する。この場合、例えば、HVPE法や、MOCVD法などを用いて、圧電膜28を形成すればよい。本実施形態においては、圧電膜28はエピタキシャル層である。なお、圧電膜28は、後の工程において個片化されることにより、
図1に示した圧電膜8となる。
【0025】
圧電膜28は、第1の主面28a及び第2の主面28bを有する。第1の主面28a及び第2の主面28bは互いに対向している。第1の主面28a及び第2の主面28bのうち、第1の主面28aが、バッファ層23側に位置している。
【0026】
一方で、
図3(b)に示すように、支持部材33を用意する。支持部材33は、後の工程により、個片化されることにより、
図1に示した支持部材3となる。
図3(b)に示す支持部材33を用意する工程においては、まず支持基板34を用意する。次に、支持基板34上に中間層35を設ける。より具体的には、支持基板34上に第1の層36を設ける。次に、第1の層36上に第2の層37を設ける。第1の層36は、本実施形態では窒化ケイ素層である。第2の層37は、本実施形態では酸化ケイ素層である。第1の層36及び第2の層37は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などにより形成することができる。
【0027】
次に、
図3(c)に示すように、基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体における圧電膜28を、支持部材33に接合する。具体的には、本実施形態では、圧電膜28の第2の主面28bを、支持部材33の中間層35に接合する。
【0028】
次に、ウェットエッチングにより、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する。具体的には、ウェットエッチングによりバッファ層23を除去すると共に、
図3(d)に示すように、圧電膜28から基板22を剥離する。これにより、ウエハ32を得る。より具体的には、ウエハ32は、支持部材33及び圧電膜28の積層体である。なお、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去するに際しては、例えば、レーザーリフトオフ法などを用いてもよい。
【0029】
次に、圧電膜28における第1の主面28aの洗浄を行う。第1の主面28aは、圧電膜28における、
図3(c)に示したバッファ層23が積層されていた側の主面である。第1の主面28aからは、バッファ層23が完全に除去されていない場合がある。当該洗浄により、第1の主面28aから、バッファ層23をより確実に除去することができる。それによって、バッファ層23の残渣に起因する不良を抑制することができ、生産性を高くすることができる。もっとも、第1の主面28aの洗浄は必ずしも行わなくともよい。
【0030】
次に、圧電膜28に、高温加熱処理または放電処理を行う。これにより、圧電膜28における分極の状態をより確実に揃えることができる。もっとも、圧電膜28の高温加熱処理または放電処理は必ずしも行わなくともよい。
【0031】
次に、圧電膜28の第1の主面28aの算術平均粗さRaを調整する。第1の主面28aの算術平均粗さRaの調整は、例えば研磨などにより行えばよい。この場合、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などを用いてもよい。第1の主面28aの算術平均粗さRaを1nm以下とすることが好ましい。これにより、得られる弾性波装置1の電気的特性を良好にすることができる。なお、本明細書における算術平均粗さは、JIS B 0601:2001における算術平均粗さRaに準拠する。もっとも、圧電膜28の第1の主面28aの算術平均粗さRaを調整する工程は必ずしも行わなくともよい。
【0032】
次に、
図4(a)に示すように、圧電膜28の第1の主面28aに、複数の機能電極14、複数の反射器15A及び複数の反射器15Bを設ける。なお、第1の主面28aには、機能電極14及び各反射器以外の配線を、機能電極14及び各反射器と同時に設けてもよい。機能電極14、各反射器及び配線は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法を用いたフォトリソグラフィ法などにより形成することができる。
【0033】
次に、ウエハ32を個片化する。ウエハ32の個片化は、例えば、ダイシングなどにより行えばよい。これにより、
図4(b)に示すように、複数の弾性波装置1を得ることができる。
【0034】
以下においては、
図3(a)に示した基板22の格子定数をLS、バッファ層23の格子定数をLB、圧電膜28の格子定数をLPとする。基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットを、|LS-LB|/LS)×100[%]とし、バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットを(|LP-LB|/LP)×100[%]とする。
【0035】
本実施形態の特徴は、以下の構成を有することにある。1)基板22上にバッファ層23を設ける工程と、バッファ層23上に圧電膜28を設ける工程とを有すること。2)基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体における圧電膜28を、支持部材33に接合する工程と、圧電膜28から、バッファ層23及び基板22を除去する工程とを有すること。3)基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットが、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]であること。4)バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットが、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]であること。それによって、得られる弾性波装置1における圧電膜8の結晶性を、より確実に高くすることができる。加えて、弾性波装置1の生産性を高くすることができる。これを以下において説明する。
【0036】
本実施形態では、
図3(a)に示すように、基板22上にバッファ層23を形成する。そして、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットが20%以下である。それによって、バッファ層23の結晶性をより確実に高くすることができる。次に、バッファ層23上に、圧電膜28を形成する。そして、バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットが10%以下である。それによって、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。この圧電膜28を、
図3(d)に示すように、支持部材33に接合することによって、ウエハ32を得る。次に、
図4(b)に示すように、ウエハ32を個片化することにより、複数の圧電性基板2を得る。これにより、各圧電性基板2における圧電膜8の結晶性をより確実に高くすることができる。
【0037】
なお、上記のように、
図3(c)及び
図3(d)により示した、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する工程おいては、レーザーリフトオフ法を用いてもよい。この詳細を、第1の実施形態の第1の変形例として説明する。
【0038】
図5(a)及び
図5(b)は、弾性波装置の製造方法の第1の実施形態の第1の変形例においての、バッファ層にレーザー光を照射する工程などを説明するための模式的正面断面図である。
図6(a)及び
図6(b)は、弾性波装置の製造方法の第1の実施形態の第1の変形例においての、圧電膜からバッファ層及び基板を除去する工程などを説明するための模式的正面断面図である。
【0039】
図5(a)に示すように、基板22側からバッファ層23に、レーザー光Lを照射する。バッファ層23にレーザー光Lを照射することにより、バッファ層23の一部が分解される。次に、バッファ層23から基板22を剥離する。言い換えれば、圧電膜28側から基板22を除去する。なお、基板22のバンドギャップがバッファ層23のバンドギャップよりも小さいことが好ましい。それによって、基板22におけるレーザー光Lを透過させる透過率を高くすることができる。これにより、レーザー光Lをバッファ層23に好適に照射することができる。
【0040】
なお、レーザー光Lの照射により、バッファ層23の一部が分解されるに伴い、変質層23Aが形成されることもある。本実施形態では、変質層23Aが形成される場合の例を示す。もっとも、変質層23Aを形成しなくともよい。
【0041】
次に、圧電膜28からバッファ層23及び変質層23Aを、
図6(b)に示すように除去する。圧電膜28からバッファ層23及び変質層23Aを除去するに際しては、例えば、ウェットエッチングを用いればよい。基板22が除去された状態において、ウェットエッチングなどの処理を行うため、バッファ層23及び変質層23Aを容易に除去することができる。以上により、ウエハ32を得る。
【0042】
図5(a)に示す工程において、レーザー光Lの波長が150nm以上、450nm以下であることが好ましい。それによって、バッファ層23における基板22側の表面付近の部分を、より確実に分解させることができる。これにより、圧電膜28側から基板22をより確実に、容易に除去することができる。
【0043】
本変形例においても、圧電膜28からバッファ層23を除去した後に、圧電膜28における第1の主面28aの洗浄を行う。それによって、バッファ層23の残渣に起因する不良を抑制することができ、生産性を高くすることができる。次に、圧電膜28に高温加熱処理または放電処理などを行う。これにより、圧電膜28における分極の状態をより確実に揃えることができる。
【0044】
本変形例では、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する工程以外の工程は、第1の実施形態と同様にして行うことができる。従って、本変形例においても、得られる弾性波装置における圧電膜の結晶性を、より確実に高くすることができる。
【0045】
図6(a)及び
図6(b)により示した工程の後には、基板22上にバッファ層23または変質層23Aの一部が残る場合がある。そこで、圧電膜28からバッファ層23、変質層23A及び基板22を除去した後に、基板22におけるバッファ層23が積層されていた面の洗浄を行ってもよい。これを、第1の実施形態の第2の変形例として説明する。
【0046】
図7(a)及び
図7(b)は、弾性波装置の製造方法の第1の実施形態の第2の変形例を説明するための模式的正面断面図である。
【0047】
図7(a)に示すように、基板22の一方の面には、変質層23Aが残っている。本変形例においては、基板22における変質層23Aが残っている面を洗浄する。言い換えれば、基板22における、
図5(a)などに示すバッファ層23が設けられていた面を洗浄する。これにより、変質層23Aを除去する。あるいは、基板22の一方の面にバッファ層23が残っている場合においても、当該洗浄により、該バッファ層23を除去することができる。
【0048】
当該洗浄により、変質層23A及びバッファ層23が残っていない、
図7(b)に示す基板22をより確実に得ることができる。それによって、基板22を、弾性波装置の製造に好適に再利用することができる。従って、生産性を効果的に高くすることができる。
【0049】
本変形例では、基板22におけるバッファ層23が設けられていた面を洗浄する工程以外の工程は、第1の変形例と同様にして行うことができる。従って、本変形例においても、得られる弾性波装置における圧電膜の結晶性を、より確実に高くすることができる。
【0050】
なお、本変形例以外の、本発明における弾性波装置の製造方法においても、基板22の当該洗浄の工程を採用することができる。例えば、
図3(c)及び
図3(d)に示すように、第1の実施形態では、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する工程において、ウェットエッチングによりバッファ層23を除去する。このときに、基板22上にバッファ層23の一部が残る場合がある。基板22における、バッファ層23が設けられていた面を洗浄することにより、基板22を好適に再利用することができる。
【0051】
本発明においては、
図3(a)などに示す圧電膜28を、成膜により形成することが好ましい。成膜により形成するとは、薄膜として形成することをいう。圧電膜28が成膜により形成された場合、圧電膜28の厚みまたは算術平均粗さRaの調整の前に、圧電膜28は薄膜とされている。
【0052】
より具体的には、圧電膜28を形成する工程において、圧電膜28の厚みを1500nm以下とすることが好ましく、400nm以下とすることがより好ましい。この場合には、圧電膜28を形成した後に、圧電膜28の厚みを研磨などによって調整する場合においても、研磨などの量を少なくすることができる。あるいは、圧電膜28を形成するときの条件の設定により、圧電膜28の厚みを調整することによって、圧電膜28を所望の厚みの薄膜とすることができる。この場合、圧電膜28を形成した後に、圧電膜28の厚みを研磨などにより調整することを要しない。従って、生産性をより一層高くすることができる。
【0053】
加えて、本発明では、基板22及びバッファ層23の積層体上に、圧電膜28を設ける。よって、圧電膜28を成膜により形成する場合においても、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。従って、例えば、
図1に示す弾性波装置1における圧電膜8の結晶性を、より確実に高くすることができる。
【0054】
以下において、各部材の材料の例を示す。なお、圧電性基板2またはウエハ32における各部材の材料の例を示す際、各部材を示す符号には、個片化前の符号を用いている。
【0055】
圧電膜28の材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうち一方を用いることができる。圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのオイラー角(φ,θ,ψ)が、(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)、並びにオイラー角(φ,θ,ψ)が(30°±30°の範囲内,90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)のうちいずれかであることがより好ましい。これらの場合、弾性波装置1の電気的特性をより確実に良好にすることができる。
【0056】
基板22の材料としては、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム及びサファイアのうちいずれかを用いることが好ましい。基板22上には、バッファ層23を介して間接的に圧電膜28が設けられている。基板22の材料を上記のうちいずれかとすることによって、圧電膜28の形成に際し、圧電膜28をエピタキシャル成長させ易い。これにより、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。
【0057】
基板22の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのオイラー角(φ,θ,ψ)が、(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)であることがより好ましい。基板22の材料として、カット角30°±30°の回転Yカットのニオブ酸リチウム、及びカット角30°±30°の回転Yカットのタンタル酸リチウムのうち一方を用いることがさらに好ましい。それによって、圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合において、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのオイラー角(φ,θ,ψ)を、(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)とし易い。
【0058】
なお、例えば、カット角30°の回転Yカットのニオブ酸リチウムにおけるオイラー角(φ,θ,ψ)は、(0°,120°,0°)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)である。
【0059】
あるいは、基板22の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのオイラー角(φ,θ,ψ)が、(90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内,30°±30°の範囲内,)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)であることがより好ましい。基板22の材料として、カット角30°±30°の回転Xカットのニオブ酸リチウム、及びカット角30°±30°の回転Xカットのタンタル酸リチウムのうち一方を用いることがさらに好ましい。それによって、圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合において、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのオイラー角(φ,θ,ψ)を、(90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内,30°±30°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)とし易い。
【0060】
なお、例えば、カット角30°の回転Xカットのニオブ酸リチウムにおけるオイラー角(φ,θ,ψ)は、(90°,90°,30°)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)である。
【0061】
基板22の材料としてサファイアを用いる場合、基板22におけるバッファ層23を形成する面が、
図8に示すr面またはこれに近い面であることがより好ましい。なお、r面を、オイラー角(φ,θ,ψ)として小数第2位まで表記した場合、(0°,122.23°,ψ)である。
【0062】
基板22の材料としてサファイアを用いる場合、具体的には、サファイアのオイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,122.23°±30°の範囲内,任意のψ)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)であることがより好ましい。サファイアのオイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,122.23°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)であることがさらに好ましい。サファイアのオイラー角(φ,θ,ψ)が(0°,122.23°±30°の範囲内,0°)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)であることがより一層好ましい。それによって、圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合において、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのオイラー角(φ,θ,ψ)を、(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価の(φ,θ,ψ)とし易い。
【0063】
バッファ層23の材料として、金属、窒化物、炭化物及び酸化物のうちいずれかを用いることが好ましい。この場合、バッファ層23の形成に際し、バッファ層23をエピタキシャル成長させ易い。バッファ層の材料として、アルミニウム、チタン、GaNなどの窒化ガリウム、TiO2などの酸化チタン及びAlNなどの窒化アルミニウムのうちいずれかを用いることがより好ましい。この場合、バッファ層23上に圧電膜28を形成するに際し、圧電膜28をエピタキシャル成長させ易い。これにより、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。
【0064】
本発明においては、圧電膜28、バッファ層23及び基板22の材料の組み合わせが重要である。例えば、材料の組み合わせを、圧電膜28/バッファ層23/基板22の表記において、ニオブ酸リチウム/酸化亜鉛/サファイアとした場合、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットは31.8%である。バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットは17.6%である。この場合、圧電膜28の結晶性を十分に高くすることはできない。以下において、圧電膜28、バッファ層23及び基板22の材料の組み合わせの好ましい例を示す。
【0065】
圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合、バッファ層23及び基板22の材料の組み合わせが、以下のいずれかであることが好ましい。すなわち、材料の組み合わせが、バッファ層23/基板22の表記において、窒化ガリウム/サファイア、窒化ガリウム/ニオブ酸リチウム、酸化チタン/ニオブ酸リチウム、及び酸化チタン/タンタル酸リチウムのうちいずれかであることが好ましい。これにより、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィット、並びにバッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットを効果的に小さくすることができる。それによって、圧電膜28の結晶性を、より確実に効果的に高くすることができる。
【0066】
もっとも、バッファ層23は複数の層を含む積層体であってもよい。例えば、バッファ層23は、第1のバッファ層及び第2のバッファ層を含んでいてもよい。この場合、基板22上に第1のバッファ層が設けられている。第1のバッファ層上に第2のバッファ層が設けられている。第2のバッファ層上に圧電膜28が設けられている。
【0067】
圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用いる場合、第1のバッファ層及び第2のバッファ層の材料の組み合わせが、以下のいずれかであることが好ましい。すなわち、材料の組み合わせが、第2のバッファ層/第1のバッファ層の表記において、窒化ガリウム/窒化アルミニウム、酸化チタン/窒化ガリウム、及び酸化チタン/チタンのうちいずれかであることが好ましい。これにより、バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットをより一層小さくすることができる。それによって、圧電膜28の結晶性を、より確実により一層高くすることができる。
【0068】
なお、バッファ層23が積層体である場合、バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットを算出するに際しては、バッファ層23における最も圧電膜28側の層の格子定数LBを用いればよい。
【0069】
圧電膜28の材料としてニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムを用い、バッファ層23が第1のバッファ層及び第2のバッファ層を含む場合、バッファ層23及び基板22の材料の組み合わせが、以下のいずれかであることが好ましい。すなわち、材料の組み合わせが、第2のバッファ層/第1のバッファ層/基板22の表記において、窒化ガリウム/窒化アルミニウム/サファイア、酸化チタン/窒化ガリウム/サファイア、酸化チタン/チタン/ニオブ酸リチウム、及び酸化チタン/チタン/タンタル酸リチウムのうちいずれかであることが好ましい。これにより、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィット、並びにバッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットをより一層小さくすることができる。それによって、圧電膜28の結晶性を、より確実により一層高くすることができる。
【0070】
支持基板34の材料としては、ガラス、水晶、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、シリコン、SiCなどの炭化ケイ素、GaNなどの窒化ガリウム、GaAsなどのガリウムヒ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)及びAl2O3などの酸化アルミニウムのうちいずれかを用いることが好ましい。
【0071】
中間層35における第1の層36は窒化ケイ素層である。もっとも、例えば、第1の層36の材料は窒化ケイ素に限定されず、例えば、シリコン、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンド、スピネルまたはサイアロンなどを主成分とする材料を用いることができる。上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl2O4、FeAl2O4、ZnAl2O4、MnAl2O4を挙げることができる。
【0072】
中間層35における第2の層37は酸化ケイ素層である。もっとも、第2の層37の材料は酸化ケイ素に限定されず、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、五酸化タンタル、または、酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物を主成分とする材料を用いることができる。
【0073】
なお、中間層35は、第1の層36のみを含んでいてもよく、第2の層37のみを含んでいてもよい。あるいは、中間層35は3層以上の積層体であってもよい。
【0074】
中間層35が、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。それによって、
図4(b)に示す弾性波装置1において、弾性波のエネルギーを圧電膜8側に効果的に閉じ込めることができる。
【0075】
より詳細には、酸化ケイ素層は低音速層である。具体的には、低音速層を伝搬するバルク波の音速は、
図4(a)に示す圧電膜28を伝搬するバルク波の音速よりも低い。窒化ケイ素層は高音速層である。具体的には、高音速層を伝搬するバルク波の音速は、圧電膜28を伝搬する弾性波の音速よりも高い。同様に、支持基板34の材料として、上記の好ましい材料が用いられている場合、支持基板34は高音速層である。
【0076】
そのため、中間層35が窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層のうち少なくとも一方を含む場合、
図4(b)に示す弾性波装置1には、高音速層、低音速層及び圧電膜8の積層構成、または高音速層及び圧電膜8の積層構成が含まれる。これらの積層構成により、弾性波のエネルギーを圧電膜8側に効果的に閉じ込めることができる。
【0077】
以下において、本発明の第1の実施形態以外の実施形態に係る弾性波装置、及びその製造方法を示す。
【0078】
図9は、第2の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0079】
本実施形態は、中間層45が単層の誘電体層である点において第1の実施形態と異なる。本実施形態は、圧電膜8に複数の貫通孔8cが設けられている点、並びに圧電膜8及び支持基板4の間に空洞部41aが設けられている点においても、第1の実施形態と異なる。複数の貫通孔8cは空洞部41aに至っている。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置41は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0080】
中間層45には凹部が設けられている。中間層45上に、凹部を塞ぐように、圧電膜8が設けられている。これにより、中空部が構成されている。この中空部が空洞部41aである。本実施形態では、支持部材43の一部及び圧電膜8の一部が、空洞部41aを挟み互いに対向するように、支持部材43と圧電膜8とが配置されている。
【0081】
平面視において、機能電極14の少なくとも一部が、支持部材43の空洞部41aと重なっている。本明細書において平面視とは、
図9における上方に相当する方向から、支持部材43及び圧電膜8の積層方向に沿って見ることをいう。なお、
図9においては、例えば、支持基板4側及び圧電膜8側のうち、圧電膜8側が上方である。さらに、本明細書において平面視は、主面対向方向から見ることと同義であるとする。主面対向方向とは、圧電膜8の第1の主面8a及び第2の主面8bが対向し合う方向である。より具体的には、主面対向方向は、例えば、第1の主面8aの法線方向である。
【0082】
本実施形態では、空洞部41aが設けられていることによって、弾性波のエネルギーを圧電膜8側に効果的に閉じ込めることができる。
【0083】
以下において、弾性波装置41の製造方法の一例を説明する。なお、当該製造方法は、本発明における弾性波装置の製造方法の第2の実施形態である。
【0084】
図10(a)~
図10(c)は、弾性波装置の製造方法の第2の実施形態を説明するための模式的正面断面図である。
図11(a)~
図11(d)は、弾性波装置の製造方法の第2の実施形態を説明するための略図的正面断面図である。
【0085】
図10(a)に示すように、本実施形態では、支持部材53を用意する工程において、中間層55に埋め込むように複数の犠牲層59を設ける。犠牲層59の材料としては、例えば、ZnO、SiO
2、Cuまたは樹脂などを用いることができる。
【0086】
具体的には、例えば、支持基板34とは別の基板上に複数の犠牲層59を形成してもよい。犠牲層は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法を用いたフォトリソグラフィ法などにより形成することができる。次に、犠牲層59を覆うように、該別の基板上に中間層55を設ける。次に、中間層55を平坦化させる。中間層55の平坦化に際しては、例えば、グラインドまたはCMP法などを用いてもよい。次に、中間層55上に支持基板34を積層した後に、上記別の基板を中間層55から剥離する。なお、該別の基板は、研磨などにより除去しても構わない。
【0087】
あるいは、例えば、支持基板34上に中間層55の一部となる層を積層した後に、該層上に複数の犠牲層59を形成してもよい。次に、複数の犠牲層59を覆うように、中間層55の他の一部となる層を設ける。その後、研磨などにより、中間層55から複数の犠牲層59を露出させる。
【0088】
一方で、第1の実施形態と同様に、
図3(a)に示す基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体を用意する。次に、
図10(b)に示すように、基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体における圧電膜28を、支持部材53に接合する。具体的には、圧電膜28の第2の主面28bを、支持部材53の中間層55に接合する。
【0089】
次に、ウェットエッチングにより、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する。具体的には、ウェットエッチングによりバッファ層23を除去すると共に、
図10(c)に示すように、圧電膜28から基板22を剥離する。なお、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去するに際しては、例えば、レーザーリフトオフ法などを用いてもよい。
【0090】
次に、圧電膜28における第1の主面28aの洗浄を行う。次に、圧電膜28の高温加熱処理または放電処理を行う。もっとも、圧電膜28における第1の主面28aの洗浄や、圧電膜28の高温加熱処理または放電処理は必ずしも行わなくともよい。
【0091】
次に、圧電膜28の第1の主面28aの算術平均粗さRaを、研磨などにより調整する。もっとも、圧電膜28の第1の主面28aの算術平均粗さRaを調整する工程は必ずしも行わなくともよい。
【0092】
次に、
図11(a)に示すように、圧電膜28に、複数の犠牲層59に至るように、複数の貫通孔28cを設ける。貫通孔28cは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法などにより形成することができる。次に、貫通孔28cを介して犠牲層59を除去する。より具体的には、貫通孔28cからエッチング液を流入させることにより、中間層55の凹部内の犠牲層59を除去する。これにより、
図11(b)に示すように、複数の空洞部41aを形成する。以上により、ウエハ52を得る。
【0093】
次に、
図11(c)に示すように、圧電膜28の第1の主面28aに、複数の機能電極14、複数の反射器15A及び複数の反射器15Bを設ける。なお、第1の主面28aには、機能電極14及び各反射器以外の配線を、機能電極14及び各反射器と同時に設けてもよい。機能電極14、各反射器及び配線は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法を用いたフォトリソグラフィ法などにより形成することができる。
【0094】
次に、ウエハ52を個片化する。ウエハ52の個片化は、例えば、ダイシングなどにより行えばよい。これにより、
図11(d)に示すように、複数の弾性波装置41を得ることができる。
【0095】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板22及びバッファ層23の積層体上に圧電膜28を設ける。そして、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットが、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]である。バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットが、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である。それによって、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。従って、得られる弾性波装置41における圧電膜8の結晶性を、より確実に高くすることができる。
【0096】
図12は、第3の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0097】
本実施形態は、支持部材63が、支持基板4及び音響反射膜65の積層体である点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0098】
支持基板4上に音響反射膜65が設けられている。音響反射膜65上に圧電膜8が設けられている。本実施形態では、支持基板4の全体及び圧電膜8の全体が、音響反射膜65を挟み互いに対向している。もっとも、支持基板4の少なくとも一部及び圧電膜8の少なくとも一部が、音響反射膜65を挟み互いに対向するように、支持基板4と圧電膜8とが配置されていればよい。そして、機能電極14及び音響反射膜65が平面視において重なっていればよい。
【0099】
音響反射膜65は、複数の音響インピーダンス層の積層体である。具体的には、音響反射膜65は、複数の低音響インピーダンス層と、複数の高音響インピーダンス層とを有する。低音響インピーダンス層は、相対的に音響インピーダンスが低い層である。音響反射膜65の複数の低音響インピーダンス層は、より具体的には、低音響インピーダンス層66a、低音響インピーダンス層66b及び低音響インピーダンス層66cである。
【0100】
一方で、高音響インピーダンス層は、相対的に音響インピーダンスが高い層である。音響反射膜65の複数の高音響インピーダンス層は、より具体的には、高音響インピーダンス層67a及び高音響インピーダンス層67bである。低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層は交互に積層されている。なお、低音響インピーダンス層66aが、音響反射膜65において最も圧電膜8側に位置する層である。
【0101】
音響反射膜65は、低音響インピーダンス層を3層有し、高音響インピーダンス層を2層有する。もっとも、音響反射膜65は、低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有していればよい。
【0102】
低音響インピーダンス層の材料としては、例えば、酸化ケイ素またはアルミニウムなどを用いることができる。高音響インピーダンス層の材料としては、例えば、白金またはタングステンなどの金属や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素または酸化ハフニウムなどの誘電体を用いることができる。
【0103】
本実施形態では、音響反射膜65が設けられていることによって、弾性波のエネルギーを圧電膜8側に効果的に閉じ込めることができる。
【0104】
以下において、第3の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例を説明する。なお、当該製造方法は、本発明における弾性波装置の製造方法の第3の実施形態である。
【0105】
図13(a)~
図13(c)は、弾性波装置の製造方法の第3の実施形態においての、支持部材を用意する工程を説明するための模式的正面断面図である。
図14(a)及び
図14(b)は、弾性波装置の製造方法の第3の実施形態においての、圧電膜を支持部材に接合する工程、並びに圧電膜からバッファ層及び基板を除去する工程を説明するための模式的正面断面図である。
【0106】
図13(a)に示すように、支持基板34上に低音響インピーダンス層76cを設ける。次に、
図13(b)に示すように、低音響インピーダンス層76c上に高音響インピーダンス層77bを設ける。これらのように、低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層を交互に積層する。具体的には、
図13(c)に示すように、低音響インピーダンス層76b、高音響インピーダンス層77a及び低音響インピーダンス層76aをこの順序において積層する。これにより、音響反射膜75を設ける。低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などにより形成することができる。以上により、支持部材73を得る。
【0107】
一方で、第1の実施形態と同様に、
図3(a)に示す基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体を用意する。次に、
図14(a)に示すように、基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体における圧電膜28を、支持部材73に接合する。具体的には、圧電膜28の第2の主面28bを、支持部材73の音響反射膜75に接合する。
【0108】
次に、ウェットエッチングにより、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する。具体的には、ウェットエッチングによりバッファ層23を除去すると共に、
図14(b)に示すように、圧電膜28から基板22を剥離する。なお、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去するに際しては、例えば、レーザーリフトオフ法などを用いてもよい。この後の工程は、第1の実施形態と同様にして行うことができる。
【0109】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板22及びバッファ層23の積層体上に圧電膜28を設ける。そして、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットが、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]である。バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットが、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である。それによって、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。従って、得られる弾性波装置における圧電膜8の結晶性を、より確実に高くすることができる。
【0110】
図15は、第4の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0111】
本実施形態は、支持部材83が支持基板のみからなる点において、第1の実施形態と異なる。圧電膜8は、支持部材83としての支持基板上に直接的に設けられている。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0112】
以下において、第4の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例を説明する。なお、当該製造方法は、本発明における弾性波装置の製造方法の第4の実施形態である。
【0113】
図16(a)~
図16(d)は、本発明における弾性波装置の製造方法の第4の実施形態を説明するための模式的正面断面図である。
【0114】
図16(a)に示すように、支持部材93を用意する。一方で、第1の実施形態と同様に、
図16(b)に示すように、基板22、バッファ層23及び圧電膜28の積層体を用意する。次に、圧電膜28の第2の主面28bの算術平均粗さRaを、例えばCMP法などにより1nm以下にする。なお、第2の主面28bは、
図16(a)に示す支持部材93としての支持基板に接合する主面である。
【0115】
一方で、支持部材93としての支持基板における、圧電膜28に接合する主面の算術平均粗さRaを、例えばCMP法などにより1nm以下にする。次に、
図16(c)に示すように、圧電膜28における算術平均粗さRaが1nm以下である第2の主面28b、及び支持部材93としての支持基板における算術平均粗さRaが1nm以下である主面を、オプティカルコンタクトにより接合する。
【0116】
次に、ウェットエッチングにより、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去する。具体的には、ウェットエッチングによりバッファ層23を除去すると共に、
図16(d)に示すように、圧電膜28から基板22を剥離する。これにより、ウエハ92を得る。なお、圧電膜28からバッファ層23及び基板22を除去するに際しては、例えば、レーザーリフトオフ法などを用いてもよい。この後の工程は、第1の実施形態と同様にして行うことができる。
【0117】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板22及びバッファ層23の積層体上に圧電膜28を設ける。そして、基板22の格子定数LS及びバッファ層23の格子定数LBのミスフィットが、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]である。バッファ層23の格子定数LB及び圧電膜28の格子定数LPのミスフィットが、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である。それによって、圧電膜28の結晶性をより確実に高くすることができる。従って、得られる弾性波装置における圧電膜8の結晶性を、より確実に高くすることができる。
【0118】
以下において、本発明に係る弾性波装置の製造方法の形態の例をまとめて記載する。
【0119】
<1>基板及び支持部材を用意する工程と、前記基板上にバッファ層を設ける工程と、前記バッファ層上に圧電膜を設ける工程と、前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程と、前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程と、を備え、前記基板の格子定数をLS、前記バッファ層の格子定数をLB、前記圧電膜の格子定数をLPとしたときに、(|LS-LB|/LS)×100[%]≦20[%]であり、(|LP-LB|/LP)×100[%]≦10[%]である、弾性波装置の製造方法。
【0120】
<2>前記バッファ層を、前記基板上においてエピタキシャル成長させることにより形成し、前記圧電膜を、前記バッファ層上においてエピタキシャル成長させることにより形成する、<1>に記載の弾性波装置の製造方法。
【0121】
<3>前記圧電膜を前記バッファ層上に成膜により形成する、<1>または<2>に記載の弾性波装置の製造方法。
【0122】
<4>前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程において、ウェットエッチングを用いて前記バッファ層を除去する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0123】
<5>前記バッファ層のバンドギャップが、前記基板のバンドギャップよりも小さく、前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程において、レーザー光を前記基板側から前記バッファ層に照射することにより、前記基板の前記バッファ層からの剥離を行い、該剥離の後に前記バッファ層を前記圧電膜から除去する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0124】
<6>前記レーザー光の波長が150nm以上、450nm以下である、<5>に記載の弾性波装置の製造方法。
【0125】
<7>前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程の後に、前記圧電膜の高温加熱処理または放電処理を行う工程をさらに備える、<1>~<6>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0126】
<8>前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程の後に、前記圧電膜における、前記バッファ層が積層されていた側の主面の算術平均粗さRaを1nm以下にする工程をさらに備える、<1>~<7>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0127】
<9>前記基板の材料が、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム及びサファイアのうちいずれかである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0128】
<10>前記基板の材料が、オイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価であるニオブ酸リチウム、オイラー角(φ,θ,ψ)が(90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内,30°±30°の範囲内)もしくはこれと等価であるニオブ酸リチウム、オイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,120°±30°の範囲内,0°±10°の範囲内)もしくはこれと等価であるタンタル酸リチウム、オイラー角(φ,θ,ψ)が(90°±10°の範囲内,90°±10°の範囲内,30°±30°の範囲内)もしくはこれと等価であるタンタル酸リチウム、並びにオイラー角(φ,θ,ψ)が(0°±10°の範囲内,122.23°±30°の範囲内,任意のψ)もしくはこれと等価であるサファイアのうちいずれかである、<9>に記載の弾性波装置の製造方法。
【0129】
<11>前記バッファ層の材料が、アルミニウム、チタン、窒化ガリウム、酸化チタン及び窒化アルミニウムのうちいずれかである、<1>~<10>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0130】
<12>前記圧電膜の材料が、ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうち一方であり、前記バッファ層及び前記基板の材料の組み合わせが、前記バッファ層/前記基板の表記において、窒化ガリウム/サファイア、窒化ガリウム/ニオブ酸リチウム、酸化チタン/ニオブ酸リチウム、及び酸化チタン/タンタル酸リチウムのうちいずれかである、<1>~<11>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0131】
<13>前記圧電膜の材料が、ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのうち一方であり、前記バッファ層が第1のバッファ層及び第2のバッファ層を含む積層体であり、前記基板上に前記第1のバッファ層が設けられており、前記第1のバッファ層上に前記第2のバッファ層が設けられており、前記第2のバッファ層上に前記圧電膜が設けられており、前記バッファ層及び前記基板の材料の組み合わせが、前記第2のバッファ層/前記第1のバッファ層/前記基板の表記において、窒化ガリウム/窒化アルミニウム/サファイア、酸化チタン/窒化ガリウム/サファイア、酸化チタン/チタン/ニオブ酸リチウム、及び酸化チタン/チタン/タンタル酸リチウムのうちいずれかである、<1>~<11>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0132】
<14>前記支持部材が少なくとも支持基板を含み、前記支持基板の材料が、ガラス、水晶、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、ダイヤモンドライクカーボン及び酸化アルミニウムのうちいずれかである、<1>~<13>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0133】
<15>前記支持部材が支持基板のみを含み、前記支持基板における、前記圧電膜に接合する主面の算術平均粗さRaを1nm以下にする工程と、前記圧電膜における、前記支持基板に接合する主面の算術平均粗さRaを1nm以下にする工程と、をさらに備え、前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持基板に接合する工程において、前記支持基板における算術平均粗さRaが1nm以下である主面、及び前記圧電膜における算術平均粗さRaが1nm以下である主面を接合する、<1>~<14>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0134】
<16>前記支持部材が支持基板及び中間層の積層体であり、前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程において、前記圧電膜を前記中間層に接合する、<1>~<14>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【0135】
<17>前記中間層が、酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層のうち少なくとも一方を含む、<16>に記載の弾性波装置の製造方法。
【0136】
<18>前記支持部材を用意する工程において、前記中間層に埋め込むように犠牲層を設け、前記圧電膜から、前記バッファ層及び前記基板を除去する工程の後に、前記犠牲層を除去する工程をさらに備える、<16>または<17>に記載の弾性波装置の製造方法。
【0137】
<19>前記支持部材が支持基板及び音響反射膜の積層体であり、前記音響反射膜が、相対的に音響インピーダンスが高い高音響インピーダンス層と、相対的に音響インピーダンスが低い低音響インピーダンス層と、を含み、前記基板、前記バッファ層及び前記圧電膜の積層体における前記圧電膜を、前記支持部材に接合する工程において、前記圧電膜を前記音響反射膜に接合する、<1>~<14>のいずれか1つに記載の弾性波装置の製造方法。
【符号の説明】
【0138】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
3…支持部材
4…支持基板
5…中間層
6,7…第1,第2の層
8…圧電膜
8a,8b…第1,第2の主面
8c…貫通孔
14…機能電極
15A,15B…反射器
15c…電極指
16,17…第1,第2のバスバー
18,19…第1,第2の電極指
22…基板
23…バッファ層
23A…変質層
28…圧電膜
28a,28b…第1,第2の主面
28c…貫通孔
32…ウエハ
33…支持部材
34…支持基板
35…中間層
36,37…第1,第2の層
41…弾性波装置
41a…空洞部
43…支持部材
45…中間層
52…ウエハ
53…支持部材
55…中間層
59…犠牲層
63…支持部材
65…音響反射膜
66a~66c…低音響インピーダンス層
67a,67b…高音響インピーダンス層
73…支持部材
75…音響反射膜
76a~76c…低音響インピーダンス層
77a,77b…高音響インピーダンス層
83…支持部材
92…ウエハ
93…支持部材