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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011399
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】データ伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20250117BHJP
   H04L 25/40 20060101ALI20250117BHJP
   H04L 45/24 20220101ALI20250117BHJP
   G06F 13/36 20060101ALI20250117BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H04L25/02 J
H04L25/40 Z
H04L45/24
G06F13/36 530B
G06F13/38 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113492
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 哲郎
【テーマコード(参考)】
5K029
5K030
【Fターム(参考)】
5K029AA11
5K029AA18
5K029DD04
5K029DD12
5K029DD13
5K029DD23
5K029DD28
5K029DD29
5K029JJ10
5K030GA03
5K030HA08
5K030LB05
5K030MB09
(57)【要約】
【課題】伝送システムにおいて、製造コストを抑制しつつ、データ伝送効率の低下を抑制する。
【解決手段】2つの電子機器21、22間においてデータを双方向に伝送するデータ伝送システム10であって、一方の電子機器から他方の電子機器への第1の方向へのデータ伝送を行う第1の単方向伝送路110、300、210と、2つの電子機器間において、第1の方向とは逆の第2の方向へのデータ伝送を行う第2の単方向伝送路120、400、220と、2つの電子機器間において、第1の方向と第2の方向とのうち、設定された方向にデータ伝送を行う双方向伝送路130、500、230と、双方向伝送路におけるデータ伝送方向を設定する伝送方向設定部152、252と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電子機器(21、22)の間においてデータを双方向に伝送するデータ伝送システム(10)であって、
一方の前記電子機器から他方の前記電子機器への第1の方向へのデータ伝送を行う第1の単方向伝送路(110、300、210)と、
前記2つの電子機器間において、前記第1の方向とは逆の第2の方向へのデータ伝送を行う第2の単方向伝送路(120、400、220)と、
前記2つの電子機器間において、前記第1の方向と前記第2の方向とのうち、設定された方向にデータ伝送を行う双方向伝送路(130、500、230)と、
前記双方向伝送路におけるデータ伝送方向を設定する伝送方向設定部(152、252)と、
を備える、
データ伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ伝送システムであって、
前記伝送方向設定部は、前記データ伝送システムの起動時に前記データ伝送方向を設定する、
データ伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ伝送システムであって、
前記伝送方向設定部は、前記データ伝送システムの運転状態において予め定められた周期時間が経過するごとに前記データ伝送方向を設定する、
データ伝送システム。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ伝送システムであって、
前記伝送方向設定部は、各前記電子機器を送信元とする伝送要求データ量を取得して互いに比較し、前記2つの電子機器のうち、前記伝送要求データ量がより大きい送信元である前記電子機器から他方の前記電子機器へデータ伝送を行うように、前記データ伝送方向を設定する、
データ伝送システム。
【請求項5】
請求項4に記載のデータ伝送システムであって、
前記伝送方向設定部は、各前記電子機器に対応して設けられており、
各前記伝送方向設定部は、前記第1の単方向伝送路と前記第2の単方向伝送路とのいずれか一方を介して、他方の前記電子機器を送信元とする前記伝送要求データ量を取得する、
データ伝送システム。
【請求項6】
請求項4に記載のデータ伝送システムであって、
前記第1の単方向伝送路、前記第2の単方向伝送路および前記双方向伝送路とは異なる伝送路であって、各前記電子機器の前記伝送要求データ量を伝送する伝送路であるデータ量伝送路(610、620)をさらに備え、
前記伝送方向設定部は、前記データ量伝送路を介して前記伝送要求データ量を取得する、
データ伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器間における双方向のデータの伝送方式として、互いに逆方向にそれぞれ一方向にのみデータを伝送する複数の単方向伝送路を組み合わせるPCIe(Peripheral Component Interconnect-Express)規格が知られている(非特許文献1)。また、DDR4(Double Data Rate 4)規格において用いられる方式のように、双方向へのデータ伝送が可能な双方向伝送路を備え、双方向伝送路の伝送方向を随時切り替える方式が知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】PCI Express Base Specification Revision 5.0 Version 1.0,22 May 2019
【非特許文献2】JEDEC STANDARD DDR4 SDRAM JESD79-4B,JUNE 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のデータ伝送方式では、単方向伝送路の数は予め決まっているため、データ伝送量が一方の伝送方向に偏った場合、他方の伝送方向のデータ伝送に用いられる伝送路は使用されずデータ伝送効率が低下するおそれがある。また、一方の伝送方向へのデータ伝送量と他方の伝送方向への伝送量との比率が随時変化する場合には対応することができない。特許文献2に記載のデータ伝送方式では、伝送方向を切り替えている間はデータを伝送できないためデータ伝送効率が低下する。また、双方向伝送路は2組の送信機および受信機からなるため、1組の送信機および受信機からなる単方向伝送路のみを備える構成と比較して、データ伝送システムの製造コストが増大する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、2つの電子機器(21、22)間においてデータを双方向に伝送するデータ伝送システム(10)が提供される。このデータ伝送システムは、一方の前記電子機器から他方の前記電子機器への第1の方向へのデータ伝送を行う第1の単方向伝送路(110、300、210)と、前記2つの電子機器間において、前記第1の方向とは逆の第2の方向へのデータ伝送を行う第2の単方向伝送路(120、400、220)と、前記2つの電子機器間において、前記第1の方向と前記第2の方向とのうち、設定された方向にデータ伝送を行う双方向伝送路(130、500、230)と、前記双方向伝送路におけるデータ伝送方向を設定する伝送方向設定部(152、252)と、を備える。
【0007】
この形態のデータ伝送システムによれば、双方向伝送路と伝送方向設定部とを備え、双方向伝送路は、伝送方向設定部により設定されたデータ伝送方向へデータ伝送を行うので、双方向伝送路のデータ伝送方向に応じて第1の方向へのデータ伝送量と第2の方向へのデータ伝送量との比率を調整でき、データ伝送効率の低下を抑制できる。また、双方向伝送路のみならず第1の単方向伝送路と第2の単方向伝送路とを備えるので、すべての伝送路を双方向伝送路で構成する形態と比較して、データ伝送システムの製造コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のデータ伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態のデータ伝送処理の手順を示すフローチャートである。
図3】パケットの伝送順の一例を示す説明図である。
図4】第2実施形態のデータ伝送処理の手順を示す説明図である。
図5】第2実施形態のデータ伝送処理の手順を示す説明図である。
図6】第2実施形態のデータ伝送方向の切り替えの一例を示す説明図である。
図7】第3実施形態のデータ伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A-1.システム構成:
本実施形態のデータ伝送システム10は、演算装置21と演算装置22との間に設けられて、2つの演算装置間においてデータを双方向に伝送する。以下の説明において必要に応じて、演算装置21から演算装置22へデータを伝送するデータ伝送方向を「送信方向」、演算装置22から演算装置21へデータを伝送するデータ伝送方向を「受信方向」と呼ぶ。送信方向は、本開示における「第1の方向」に相当する。受信方向は、本開示における「第2の方向」に相当する。なお、データ伝送システム10は、2つの演算装置間に限らず、記憶装置や通信装置等、データをやり取りする任意の2つの電子機器の間に設けられて、2つの電子機器間においてデータを双方向に伝送してもよい。
【0010】
図1に示すように、本実施形態のデータ伝送システム10は、第1の送受信装置100と、第2の送受信装置200と、データバス300と、データバス400と、データバス500とを備える。第1の送受信装置100と第2の送受信装置200とは、演算装置21と演算装置22とにそれぞれ対応して設けられている。データバス300とデータバス400とデータバス500とは、それぞれ第1の送受信装置100と第2の送受信装置200との間に設けられて、第1の送受信装置100と第2の送受信装置200とを互いに接続している。
【0011】
第1の送受信装置100は、送信部110と、受信部120と、送受信部130と、バス140と、制御部150とを備える。第2の送受信装置200は、受信部210と、送信部220と、送受信部230と、バス240と、制御部250とを備える。第1の送受信装置100と第2の送受信装置200との構成は同様であるため、以下の説明においては、第1の送受信装置100について主に説明する。
【0012】
送信部110は、データバス300を介して受信部210へデータを送信する。送信部110とデータバス300と受信部210とは、演算装置21と演算装置22との間における送信方向のデータ伝送を行うデータ伝送路を形成する。かかるデータ伝送路は、本開示における「第1の単方向伝送路」に相当する。なお、図1において図示は省略されているが、本実施形態のデータ伝送システム10は、第1の単方向伝送路を複数備えている。
【0013】
受信部120は、データバス400を介して送信部220からデータを受信する。受信部120とデータバス400と送信部220とは、演算装置21と演算装置22との間における受信方向のデータ伝送を行うデータ伝送路を形成する。かかるデータ伝送路は、本開示における「第2の単方向伝送路」に相当する。なお、図1において図示は省略されているが、本実施形態のデータ伝送システム10は、第2の単方向伝送路を複数備えている。
【0014】
送受信部130は、送信部131と受信部132とを備える。送受信部130は、後述する制御部150により設定されるデータ伝送方向に応じて送信部131と受信部132とを切り替えて使用可能に構成されている。以下の説明において、送信部131を使用する際の送受信部130の状態を「送信状態」と呼び、受信部132を使用する際の送受信部130の状態を「受信状態」と呼ぶ。第2の送受信装置200が備える送受信部230は、送受信部130と同様に、受信部231と送信部232とを備える。
【0015】
送受信部130と送受信部230とは、データバス500を介して互いに接続されている。データバス500は、送信方向へのデータ伝送と受信方向へのデータ伝送とを、上述のデータ伝送方向に応じて実行可能に構成されている。送受信部130とデータバス500と送受信部230とは、演算装置21と演算装置22との間における双方向のデータ伝送を行うデータ伝送路を形成する。かかるデータ伝送路は、本開示における「双方向伝送路」に相当する。なお、図1において図示は省略されているが、本実施形態のデータ伝送システム10は、双方向伝送路を複数備えている。
【0016】
制御部150は、バス140を介して、送信部110と受信部120と送受信部130とのそれぞれと互いに接続されている。制御部150は、伝送制御部151と、伝送方向設定部152と、送信バッファ153と、受信バッファ154とを備える。制御部250は、伝送制御部251と、伝送方向設定部252と、受信バッファ253と、送信バッファ254とを備える。制御部150と制御部250との構成は同様であるため、以下の説明においては、制御部150について説明する。
【0017】
伝送制御部151は、演算装置21から出力されたデータ(以下、「伝送要求データ」とも呼ぶ)の、上述のデータ伝送路を介したデータ伝送の制御を実行する。伝送制御部151による具体的な処理については後述する。
【0018】
伝送方向設定部152は、上述の双方向伝送路のデータ伝送方向を設定する。より具体的には、送受信部130の状態を上述の送信状態と受信状態とのいずれの状態にするかを設定する。本実施形態では、伝送方向設定部152は、ユーザにより予め指定されたデータ伝送方向に従って、データ伝送システム10の起動時に双方向伝送路のデータ伝送方向を設定する。例えば、演算装置21から演算装置22へ伝送されるデータ量が、演算装置22から演算装置21へ伝送されるデータ量と比較して多くなることが予測される場合には、ユーザによってデータ伝送方向を送信方向とすることが指定される。なお、本実施形態では、伝送方向設定部152は、複数の双方向伝送路のすべてのデータ伝送方向が同一となるように、各双方向伝送路のデータ伝送方向を設定する。このように、伝送方向設定部152は、双方向伝送路のデータ伝送方向を切り替えることにより、データ伝送システム10におけるデータ伝送量の傾向に応じて、送信方向のデータ伝送量と受信方向のデータ伝送量との比率を調整することができる。なお、第1の送受信装置100および第2の送受信装置200は、ユーザがデータ伝送方向を指定するためのパーソナルコンピュータ等の端末と通信を行うための図示しないインタフェースを備えている。
【0019】
送信バッファ153は、演算装置21からの送信要求データを一時的に保持する。受信バッファ154は、第2の送受信装置200から受信されたデータを一時的に保持する。本実施形態では、第1の送受信装置100は、受信バッファ154をひとつ備えるが、受信部120の数に対応して2つ以上備えてもよい。
【0020】
A-2.データ伝送処理:
制御部150および制御部250は、データ伝送システム10が起動されると図2に示すデータ伝送処理を開始する。制御部150と制御部250とにおいて実行される処理は同様であるため、以下の説明では、制御部150における処理について主に説明する。
【0021】
ステップS10において、伝送方向設定部152は、ユーザにより予め指定されたデータ伝送方向に従って、データ伝送方向を設定する。以下の説明では、データ伝送方向を送信方向とすることがユーザにより指定されたものとし、伝送方向設定部152は、送受信部130を送信状態に設定する。
【0022】
ステップS20において、伝送制御部151は、送信バッファ153に伝送要求データがあるか否かを判定する。伝送要求データがないと判定された場合(ステップS20:No)、伝送制御部151は、演算装置21からデータが出力されるまで待機する。伝送要求データがあると判定された場合(ステップS20:Yes)、ステップS30において、伝送制御部151は、当該伝送要求データを、予め定められたデータ量のパケットに分割する。また、本実施形態では、伝送制御部151は、分割されたパケットごとに送信順を示す番号を付与する。伝送された各パケットは送信先である制御部250の受信バッファ253に一旦保持され、制御部250は、各パケットに付与された番号に応じて元の順番に並べ直し、演算装置22へ伝送する。
【0023】
ステップS40において、伝送制御部151は、単方向伝送路が使用可能であるか否か、すなわち送信部110がデータ伝送を実行中であるか否かを判定する。単方向伝送路が使用可能であると判定された場合(ステップS40:Yes)、ステップS50において、伝送制御部151は、単方向伝送路を使用してパケットを伝送する。
【0024】
他方、単方向伝送路が使用可能でないと判定された場合(ステップS40;No)、ステップS42において、伝送制御部151は、双方向伝送路が使用可能であるか否かを判定する。「双方向伝送路が使用可能である」とは、データ伝送方向が送信方向に設定されている場合であって、送受信部130が備える送信部131がデータ伝送を実行中でない状態を意味する。なお、データ伝送システム10の起動時にデータ伝送方向が受信方向に設定された場合、データ伝送システム10の運転状態において、伝送制御部151は、送信方向のデータ伝送に双方向伝送路を使用することができない。かかる場合には、伝送制御部151は、単方向伝送路のみを使用してパケットを伝送することになるので、ステップS42の判定を実行しなくてもよい。
【0025】
双方向伝送路が使用可能であると判定された場合(ステップS42:Yes)、ステップS52において、伝送制御部151は、双方向伝送路を使用してパケットを伝送する。他方、双方向伝送路が使用可能でないと判定された場合(ステップS42:No)、伝送制御部151は、再びステップS40を実行する。
【0026】
ステップS50またはステップS52の完了後、ステップS60において、伝送制御部151は、パケットをすべて伝送したか否かを判定する。パケットをすべて伝送していない場合(ステップS60:No)、伝送制御部151は、再びステップ40を実行する。他方、パケットをすべて伝送した場合(ステップS60:Yes)、伝送制御部151は、再びステップS20を実行する。伝送制御部151は、以上説明したステップS20からステップS60を、データ伝送システム10が運転状態である間繰り返し実行する。
【0027】
以上説明したデータ伝送処理について、図3に示す例を参照してより具体的に説明する。図3において、横軸は時間経過を示しており、伝送要求データが8つのパケットP0~P7に分割された場合に、各パケットが、伝送開始からの時間経過とともに単方向伝送路と双方向伝送路とのいずれを使用して伝送されるかが示されている。なお、各パケットを示す矩形の大きさは、各パケットを伝送するために要する時間の大小と対応している。すなわち、単方向伝送路を使用して伝送する場合と比較して、同一のデータ量であっても双方向伝送路を使用して伝送する方が各パケットの伝送に時間を要する。図3に示す例において、単方向伝送路よりも双方向伝送路のデータバス幅は小さく、伝送周波数は遅いためである。
【0028】
伝送開始された時刻t0において単方向伝送路は未だ使用されておらず使用可能であるため、パケットP0は、単方向伝送路を使用して伝送される。その後、パケットP1の伝送が開始される時刻t1において単方向伝送路はパケットP0の伝送に使用されており使用できないため、パケットP1は、未だ使用されておらず使用可能である双方向伝送路を使用して伝送される。続いて、パケットP0の伝送が終了する時刻t2において単方向伝送路が再び使用可能となるため、パケットP2は、単方向伝送路を使用して伝送される。以下、パケットP3~P7についても同様に、各パケットは、各パケットの伝送時に使用可能な伝送路を使用して伝送される。また、このように各パケットを伝送すると、パケットP0、P1、P2、P4、P3、P5、P6、P7の順に送信先である制御部250において受信され、送信順と受信順が異なることとなる。伝送された各パケットは受信バッファ253に一旦保持され、制御部250は、各パケットに付与された番号に応じて元の順番に並べ直し、演算装置22へ伝送する。
【0029】
以上説明した第1実施形態のデータ伝送システム10によれば、双方向伝送路と伝送方向設定部152とを備え、双方向伝送路は、伝送方向設定部152により設定されたデータ伝送方向へデータ伝送を行うので、双方向伝送路のデータ伝送方向に応じて送信方向へのデータ伝送量と受信方向へのデータ伝送量との比率を調整でき、データ伝送効率の低下を抑制できる。また、双方向伝送路のみならず第1の単方向伝送路と第2の単方向伝送路とを備えるので、すべての伝送路を双方向伝送路で構成する形態と比較して、データ伝送システム10の製造コストの増大を抑制できる。
【0030】
また、伝送方向設定部152は、データ伝送システム10の起動時にデータ伝送方向を設定するので、データ伝送システム10の運転状態においてデータ伝送方向を設定するための処理を実行する必要がなく、データ伝送処理が煩雑になることを抑制できる。
【0031】
B.第2実施形態:
第2実施形態のデータ伝送システム10は、図4に示すように、ステップS50の後にステップS54およびステップS56を実行する点と、ステップS10からステップS60と並列して図5に示すステップS70、ステップS80およびステップS90を実行する点とにおいて、第1実施形態のデータ伝送システム10と異なっている。第2実施形態のデータ伝送システム10のシステム構成およびデータ伝送処理におけるその他の手順は、第1実施形態のデータ伝送システム10と同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0032】
ステップS50の後、ステップS54において、伝送制御部151は、データ伝送システム10の起動後、または、予め定められた周期時間が前回経過した後、周期時間が経過したか否かを判定する。周期時間が経過したと判定された場合(ステップS54:Yes)、ステップS56において、伝送制御部151は、単方向伝送路を使用して、送信バッファ153に保持されている伝送要求データのデータ量(以下、「第1の伝送要求データ量」とも呼ぶ)を制御部250へ伝送する。制御部250においても同様のタイミングで、伝送制御部251により制御部150へ送信バッファ254に保持されている第2の伝送要求データ量が伝送される。以上のように、単方向伝送路を使用したパケットの伝送後であって周期時間の経過後に伝送要求データ量を伝送するので、伝送要求データ量を送信するためにパケットの伝送が妨げられることを抑制できる。その後、伝送制御部151は、上述のステップS60を実行する。
【0033】
他方、周期時間が経過していないと判定された場合(ステップS54:No)、ステップS56を実行することなく、上述のステップS60を実行する。
【0034】
図4および図5に示すように、伝送方向設定部152は、上述のステップS10~ステップS60と並列して、ステップS70において、データ伝送システム10の起動後、または、上述の周期時間が前回経過した後、周期時間が経過したか否かを判定する。周期時間が経過していないと判定された場合(ステップS70:No)、伝送方向設定部152は、周期時間が経過したと判定されるまで待機する。
【0035】
周期時間が経過したと判定された場合(ステップS70:Yes)、ステップS80において、伝送方向設定部152は、第1の伝送要求データ量の制御部250への送信と、第2の伝送要求データ量の制御部250からの受信とが既に実行済みか(送受信済みか)否かを判定する。送受信済みでないと判定された場合(ステップS80:No)、伝送方向設定部152は、送受信済みと判定されるまで待機する。
【0036】
送受信済みであると判定された場合(ステップS80:Yes)、ステップS90において、伝送方向設定部152は、データ伝送方向を決定する。本実施形態では、伝送方向設定部152は、送信バッファ153から取得した第1の伝送要求データ量と、制御部250から受信した第2の伝送要求データ量とを比較して、伝送要求データ量が大きい送信元である演算装置から他方の演算装置へデータ伝送を行うように、データ伝送方向を設定する。
【0037】
より具体的には、第2の伝送要求データ量と比較して第1の伝送要求データ量が大きい場合、伝送方向設定部152は、伝送要求データ量が大きい送信元である演算装置21から演算装置22へデータ伝送を行うように、データ伝送方向を送信方向に設定する。他方、第1の伝送要求データ量と比較して第2の伝送要求データ量が大きい場合、伝送方向設定部152は、伝送要求データ量が大きい送信元である演算装置22から演算装置21へデータ伝送を行うように、データ伝送方向を受信方向に設定する。
【0038】
また、伝送方向設定部152によりステップS90が実行される際に、伝送方向設定部252も同様に、送受信部130の状態と送受信部230の状態とがそれぞれ送信状態と受信状態とで対になるように、データ伝送方向を設定する。ステップS80の判定の実行後にデータ伝送方向を設定することとしているのは、第1の伝送要求データ量の送信と第2の伝送要求データ量との受信のいずれか一方が完了していない場合、伝送方向設定部152と伝送方向設定部252とのいずれか一方においてデータ伝送方向を設定するための情報が揃っておらず、送受信部130と送受信部230との各状態が互いに対になるようにデータ伝送方向を設定することができないためである。
【0039】
ステップS90の後、伝送方向設定部152は、再びステップS70を実行する。
【0040】
以上説明したデータ伝送方向の切り替えについて、図6に示す例を参照してより具体的に説明する。図6において、横軸は時間経過を示しており、第1の単方向伝送路において第1の伝送要求データ量が送信されるタイミングと、第2の単方向伝送路において第2の伝送要求データ量が受信されるタイミングと、双方向伝送路においてデータ伝送方向が切り替えられるタイミングとが示されている。白抜きの矩形は、各単方向伝送路において伝送されるパケットを示しており、矩形の大きさは、各パケットを伝送するために要する時間の大小と対応している。図6に示す例では、第1の単方向伝送路と比較して第2の単方向伝送路のデータバス幅が小さく、同一のデータ量であっても受信方向の各パケットの伝送に時間を要する。また、ハッチングを付して示す矩形は、各単方向伝送路において伝送される伝送要求データ量を示している。
【0041】
時刻Tc0においてデータ伝送が開始された後、時刻Tc1において周期時間が経過する。その後、第2の伝送要求データ量の受信に遅れて、時刻T1において第1の伝送要求データ量が送信されることにより送受信が完了したタイミングにおいて、伝送方向設定部152は、データ伝送方向を設定する。図6の例では、伝送方向設定部152は、第1の伝送要求データ量と比較して第2の伝送要求データ量が大きいとして、データ伝送方向を送信方向から受信方向に切り替える。
【0042】
続いて、時刻Tc2において再び周期時間が経過する。その後、第1の伝送要求データ量の送信に遅れて、時刻T2において第2の伝送要求データ量が受信されることにより送受信が完了したタイミングにおいて、伝送方向設定部152は、データ伝送方向を設定する。図6の例では、伝送方向設定部152は、第2の伝送要求データ量と比較して第1の伝送要求データ量が大きいとして、データ伝送方向を受信方向から送信方向に切り替える。
【0043】
以上説明した第2実施形態のデータ伝送システム10によれば、第1の伝送要求データ量と第2の伝送要求データ量とを取得して互いに比較し、伝送要求データ量がより大きい送信元である演算装置から他方の演算装置へデータ伝送を行うようにデータ伝送方向を設定するので、送信方向のデータ伝送量と受信方向のデータ伝送量との比率が随時変化する場合であっても適切にデータ伝送方向を設定でき、データ伝送効率の低下をより抑制できる。
【0044】
また、伝送方向設定部152は第1の伝送要求データ量を第2の単方向伝送路を利用して取得し、伝送方向設定部252は第2の伝送要求データ量を第1の単方向伝送路を利用して取得するので、伝送要求データ量を取得するための構成をさらに備える必要がなく、データ伝送システム10の製造コストの増大を抑制できる。
【0045】
C.第3実施形態:
第3実施形態のデータ伝送システム10Aは、図7に示すように、データ量伝送路610、620をさらに備える点において、第2実施形態のデータ伝送システム10と異なっている。第3実施形態のデータ伝送システム10Aのシステム構成およびデータ伝送処理におけるその他の手順は、第2実施形態のデータ伝送システム10と同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図7に示すように、第3実施形態のデータ伝送システム10Aは、データ量伝送路610、620をさらに備える。データ量伝送路610は、制御部150と制御部250とを互いに接続し、本実施形態では、伝送制御部151は、単方向伝送路に代えてデータ量伝送路610を介して、第1の伝送要求データ量を制御部250へ送信する。また、データ量伝送路620は、制御部150と制御部250とを互いに接続し、本実施形態では、伝送制御部251は、単方向伝送路に代えてデータ量伝送路620を介して、第2の伝送要求データ量を制御部150へ送信する。これにより、制御部150および制御部250は、単方向伝送路の使用状態にかかわらず、任意のタイミングで伝送要求データ量をやりとりすることができる。なお、データ量伝送路610およびデータ量伝送路620は、伝送要求データ量の送信にのみ使用されるため、上述の単方向伝送路よりもデータバス幅が小さくてよい。
【0047】
以上説明した第3実施形態のデータ伝送システム10Aによれば、データ量伝送路610、620をさらに備え、伝送方向設定部152および伝送方向設定部252は、データ量伝送路610、620を介して伝送要求データ量をそれぞれ取得するので、単方向伝送路の使用状態にかかわらず任意のタイミングで伝送要求データ量をやりとりすることができる。このため、データ伝送処理において伝送要求データ量を送信可能か否か判定する必要がなく、処理が煩雑になることを抑制できる。また、単方向伝送路の使用状態にかかわらず任意のタイミングで伝送要求データ量をやりとりすることができるため、第1の伝送要求データ量と第2の伝送要求データ量との送受信のタイミングの差異を抑制でき、データ伝送方向の切り替えのタイミングが遅れることを抑制できる。
【0048】
D.他の実施形態:
(D1)上記実施形態において、データ伝送システム10は、第1の単方向伝送路と、第2の単方向伝送路と、双方向伝送路とをそれぞれ複数備えるが、本開示はこれに限定されない。データ伝送システム10は、上記各データ伝送路をひとつずつ備えていてもよい。かかる形態のデータ伝送システム10によっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
(D2)上記実施形態において、データ伝送システム10は、伝送方向設定部152と伝送方向設定部252とを備えるが、本開示はこれに限定されない。データ伝送システム10は、伝送方向設定部152のみ備え、伝送方向設定部152により、送受信部130に加えて送受信部230の状態が設定されてもよい。例えば、伝送方向設定部152は、第2の送受信装置200に対して、第1の単方向伝送路を使用して送受信部230の状態を設定する制御信号を送信することにより送受信部230の状態を設定してもよい。
【0050】
(D3)上記実施形態において、伝送方向設定部152は、複数の双方向伝送路のすべてのデータ伝送方向が同一となるように、各双方向伝送路のデータ伝送方向を設定するが、本開示はこれに限定されない。伝送方向設定部152は、複数の双方向伝送路のうち、一部の双方向伝送路と他の双方向伝送路とでデータ伝送方向が互いに逆方向となるように、データ伝送方向を設定してもよい。かかる形態のデータ伝送システム10によれば、送信方向のデータ伝送量と受信方向のデータ伝送量との比率を細かく調整することができ、データ伝送効率の低下をより抑制できる。
【0051】
(D4)上記実施形態において、伝送制御部151は、伝送要求データをパケットに分割して伝送するが、本開示はこれに限定されない。単方向伝送路と双方向伝送路との伝送周波数が互いに同じであり、単方向伝送路と双方向伝送路とをまとめてひとつのデータバスとみなせる場合には、伝送制御部151は、伝送要求データをパケットに分割することなく伝送してもよい。かかる形態のデータ伝送システム10によれば、データ伝送処理におけるステップS30~ステップS60の処理は不要となるため、データ伝送システム10における処理は煩雑になることを抑制できる。
【0052】
(D5)上記第2実施形態において、伝送方向設定部152は、データ伝送システム10の運転状態において第1の伝送要求データ量と第2の伝送要求データ量と比較することによりデータ伝送方向を設定するが、本開示はこれに限定されない。伝送方向設定部152は、例えば、データ伝送システム10Aの運転状態において演算装置21または演算装置22からデータ伝送方向を指定されて、当該データ伝送方向となるようにデータ伝送方向を設定してもよい。かかる形態のデータ伝送システム10Aによっても、上記第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
本開示に記載のデータ伝送システム10およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のデータ伝送システム10およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のデータ伝送システム10およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0054】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10、10A…データ伝送システム、21、22…演算装置、110…送信部、120…受信部、130…送受信部、152…伝送方向設定部、210…受信部、220…送信部、230…送受信部、252…伝送方向設定部、300、400、500…データバス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7