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  • 特開-冷却システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011403
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113496
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】須田 浩
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
(57)【要約】
【課題】電気自動車の冷却システムにおいて、バッテリーや電気系部品の温度を効率的に冷却し、且つ、それら部品の搭載レイアウトの自由度を向上する。
【解決手段】通電により発熱する電気系部品1と、前記電気系部品に給電するバッテリー6と、冷却水の加熱または冷却を行うヒートポンプ9と、冷却水を冷却するラジエータ14とを備え、冷却水により前記電気系部品と前記バッテリーの温度を調整する電気自動車の冷却システム100であって、前記ヒートポンプまたは前記ラジエータから供給され前記電気系部品の外周を通過した冷却水を、前記ヒートポンプの加熱用入力と前記ラジエータと前記バッテリーの外周とのいずれかに流す第一の切替弁5と、前記バッテリーの外周を通過した冷却水を前記ヒートポンプの加熱用入力と冷却用入力とのいずれかに流す第二の切替弁9と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する電気系部品と、前記電気系部品に給電するバッテリーと、冷却水の加熱または冷却を行うヒートポンプと、冷却水を冷却するラジエータとを備える電気自動車において、冷却水により前記電気系部品と前記バッテリーの温度を調整する冷却システムであって、
前記ヒートポンプまたは前記ラジエータから供給され前記電気系部品の外周を通過した冷却水を、前記ヒートポンプの加熱用入力と前記ラジエータと前記バッテリーの外周とのいずれかに流す第一の切替弁と、
前記バッテリーの外周を通過した冷却水を前記ヒートポンプの加熱用入力と冷却用入力とのいずれかに流す第二の切替弁と、
を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記電気系部品の外周を通過した冷却水の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度に基づき前記第一の切替弁と前記第二の切替弁のそれぞれの弁の切替動作を制御する制御部と、
が設けられることを特徴とする請求項1に記載された冷却システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプにより冷却された冷却水を前記バッテリーの外周へ供給するための第一の電動ウォーターポンプと、
前記ヒートポンプにより温められた冷却水及び前記ラジエータから供給された冷却水のいずれか一方または両方を前記電気系部品の外周へ供給するための第二の電動ウォーターポンプと、
を備え、
前記第二の切替弁の切り替え動作により前記ヒートポンプの冷却用入力に冷却水が供給されない場合には、前記第一の電動ウォーターポンプは稼働しないことを特徴とする請求項1に記載された冷却システム。
【請求項4】
前記第一の切替弁と前記第二の切替弁は、電動弁であることを特徴とする請求項1に記載された冷却システム。
【請求項5】
前記第一の切替弁は、電動弁であり、前記第二の切替弁は、冷却水の温度によりワックスエレメントが膨張または収縮することで弁の開閉を行うワックス式温度調整弁であることを特徴とする請求項1に記載された冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関し、特に駆動用のバッテリーや電気系部品の冷却を行う電気自動車の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)は、パワートレインを構成する走行用のモータ、直流電流を出力する駆動用のバッテリー、バッテリーからの直流電流をモータ駆動のための交流電流に変換するインバータ等を搭載している。
電気自動車に搭載される駆動用のバッテリーは、常温付近(10℃~30℃)の状態を保つ必要がある。温度が低すぎても高すぎてもバッテリーの性能、耐久性に影響を及ぼす。そのため、バッテリーの温度を常温付近に保持するための制御が必要である。
【0003】
また、電気自動車に用いられるモータやインバータ等の電気系部品は、100℃付近でも使用することができるが、信頼性の視点からは、冷却するほうが好ましい。冷却効果を高めるために電気系部品を大型化することが考えられるが、コストや意匠への影響を考慮すると小型であることが望ましく、小型の電気系部品を効果的に冷却するシステムが必要である。
【0004】
このように電気自動車では、駆動用のバッテリーや電気系部品などの温度を熱管理する必要があるが、内燃機関を用いる場合よりも熱管理が複雑であり、また、冷却水により各部品を冷却する場合、冷却水をバッテリーや各電気系部品などの配置箇所に流すための多くの流体経路と、その流路を切り替えるためのバルブが必要となる。
【0005】
特許文献1には、電気自動車において冷却水の多数の流体経路に対応するマルチポートバルブが開示されている。特許文献1に開示されるマルチポートバルブは、ラジエータやバッテリーなどに冷却水をそれぞれ流すための五つのポートとそれらポート間の流路を切り替える弁体とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2018-536128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなマルチポートバルブは、多数のポートを一つの弁体で切り替える構造であり、このマルチポートバルブを一か所に配置した上で、バッテリーや電気系部品のレイアウトを行う必要があるため、それら各部品の搭載レイアウトの自由度が低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、電気自動車の冷却システムにおいて、バッテリーや電気系部品の温度を効率的に冷却し、且つ、それら部品の搭載レイアウトの自由度を向上させることのできる冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明にかかる冷却システムは、通電により発熱する電気系部品と、前記電気系部品に給電するバッテリーと、冷却水の加熱または冷却を行うヒートポンプと、冷却水を冷却するラジエータとを備える電気自動車において、冷却水により前記電気系部品と前記バッテリーの温度を調整する電気自動車の冷却システムであって、前記ヒートポンプまたは前記ラジエータから供給され前記電気系部品の外周を通過した冷却水を、前記ヒートポンプの加熱用入力と前記ラジエータと前記バッテリーの外周とのいずれかに流す第一の切替弁と、前記バッテリーの外周を通過した冷却水を前記ヒートポンプの加熱用入力と冷却用入力とのいずれかに流す第二の切替弁と、を備えることに特徴を有する。
尚、前記電気系部品の外周を通過した冷却水の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出温度に基づき前記第一の切替弁と前記第二の切替弁のそれぞれの弁の切替動作を制御する制御部と、が設けられることが望ましい。
【0010】
この構成により、冷却水の温度に基づき、第一の切替弁と第二の切替弁とのそれぞれの弁の切り替え制御を行うことにより、電気系部品とバッテリーの温度を冷却水により効率的に調整することができる。そして、切替弁を二つに分けて配置することにより、配管の繋ぎ方を簡易にすることができ、従来のように一つのマルチポートバルブのみを配置して各部品をレイアウトするよりも、各部品の搭載レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0011】
また、前記ヒートポンプにより冷却された冷却水を前記バッテリーの外周へ供給するための第一の電動ウォーターポンプと、前記ヒートポンプにより温められた冷却水及び前記ラジエータから供給された冷却水のいずれか一方または両方を前記電気系部品の外周へ供給するための第二の電動ウォーターポンプと、を備え、前記第二の切替弁の切り替え動作により前記ヒートポンプの冷却用入力に冷却水が供給されない場合には、前記第一の電動ウォーターポンプは稼働しないことが望ましい。
このように構成することにより、バッテリーが低温時には低温の冷却水がバッテリーに供給されず、バッテリーを効果的に温めることができる。
【0012】
また、前記第一の切替弁と前記第二の切替弁とは、電動弁であることが望ましい。
このように二つの切替弁を電動弁で構成することにより、精度良く弁の切り替え制御を行うことができる。
【0013】
また、前記第一の切替弁は、電動弁であり、前記第二の切替弁は、冷却水の温度によりワックスエレメントが膨張または収縮することで弁の開閉を行うワックス式温度調整弁であってもよい。
このように構成することにより、製造コストをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる冷却システムによれば、バッテリーや電気系部品の温度を効率的に冷却し、且つ、それら部品の搭載レイアウトの自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明にかかる一実施形態の冷却システムの構成例を示す回路図であり、低温モードの状態を示す。
図2図2は、本発明にかかる一実施形態の冷却システムの構成例を示す回路図であり、中間モードの状態を示す。
図3図3は、本発明にかかる一実施形態の冷却システムの構成例を示す回路図であり、高温モードの状態を示す。
図4図4は、本発明にかかる冷却システムの変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる冷却システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書及び図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0017】
<冷却システムの構成>
図1乃至図3は、一実施形態の冷却システムの構成例を示す回路図であり、電気自動車の冷却システムの一例を示している。図1乃至図3の回路図において、矢印の実線及び破線は冷却水の流通経路を示し、矢印の実線は冷却水が流れている経路、破線は冷却水が流れていない経路を示す。
【0018】
冷却システム100が搭載される電気自動車は、通電することにより発熱する電気系部品1を備え、この電気系部品1は、充電機2と、パワートレインの出力制御を行うモジュールであるPCM3と、パワートレインを構成するモータ4とを有する。
また、この電気自動車は、その駆動源であり電気系部品1に給電する複数のバッテリーを含むバッテリーパック6(バッテリー)と、周囲の空気から熱を集め、居室内の暖房・冷房の熱源となるとともに、冷却水の加熱または冷却が可能なヒートポンプ9とを備える。
【0019】
また、この電気自動車は、ヒートポンプ9により冷却された空気を出力する空調(A/C)用のクーラー10と、ヒートポンプ9により温められた空気を出力する空調(A/C)用のヒータ11と、を備え、クーラー10の外周にはヒートポンプ9により冷却された冷却水(冷水と呼ぶ場合がある)が流れ、ヒータ11の外周にはヒートポンプ9により温められた冷却水(温水と呼ぶ場合がある)が流れるように構成されている。
また、この電気自動車はラジエータ14を備え、このラジエータ14は、冷却水の冷却経路を通り高温となった冷却水を冷却するものである。
【0020】
本発明の冷却システム100は、クーラー10の外周を通過した冷水をシステム全体に循環させるための第一の電動ウォーターポンプ(EWP)12と、ヒータ11の外周を通過した温水をシステム全体に循環させるための第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13と、冷却液の温度を検出する複数の水温センサとを備える。本実施の形態において、水温センサは、少なくともバッテリーパック6を通過した冷却液の温度と、電気系部品1を通過した冷却液の温度を検出可能な位置に設けられる。
【0021】
また、この冷却システム100では、冷却水の経路を切り替えるための二つの切替弁を備える。本実施形態では、切替弁として二つの電動弁5,7を備える。各電動弁5,7は、それぞれ制御部を有し、水温センサで検出された温度に応じて冷却水の流路を切り替える。尚、制御部は、車両のエレクトロニックコントロールユニット(ECU)であって、二つの電動弁5,7を切り替え制御してもよい。
第一の電動弁5(第一の切替弁)は四方弁であり、電気系部品1の外周を通過した冷却水が流入する入力ポート5aと、バッテリーパック6の外周へ冷却水を流すための出力ポート5bと、ヒートポンプ9へ冷却水を流すための出力ポート5cと、ラジエータ14へ冷却水を流すための出力ポート5dとを有する。
【0022】
また、第二の電動弁7(第二の切替弁)は三方弁であり、バッテリーパック6の外周を通過した冷却水が流入する入力ポート7aと、ヒートポンプ9の加熱用入力9aへ冷却水を流すための出力ポート7bと、ヒートポンプ9の冷却用入力9bへ冷却水を流すための出力ポート7cとを有する。
【0023】
また、冷却システム100は、ヒートポンプ9で加熱された冷却水をヒータ11の外周、第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13、電気系部品1の外周の順に流すための第一の流路R1と、第一の電動弁5からバッテリーパック6の外周へ冷却水を流すための第二の流路R2と、第一の電動弁5からヒートポンプ9の加熱用入力9aへ冷却水を流すための第三の流路R3と、第一の電動弁5からラジエータ14へ冷却水を流すための第四の流路R4とを備える。
【0024】
さらに、冷却システム100は、ヒートポンプ9で冷却された冷却水をクーラー10の外周からバッテリーパック6の外周へ流すための第五の流路R5と、バッテリーパック6の外周を流れた冷却水をヒートポンプ9の加熱用入力9aに流すための第六の流路R6と、バッテリーパック6の外周を流れた冷却水をヒートポンプ9の冷却用入力9bに流すための第七の流路R7とを備える。
【0025】
また、本実施形態においては、図示しない温度センサにより冷却水の温度検出がなされ、その検出温度が、上記したように第一の電動弁5と第二の電動弁7がそれぞれ有する制御部に供給され、制御部が、検出温度に基づいて、第一の電動弁5と第二の電動弁7の弁切替制御を行う。また、図示しない車両のエレクトロニックコントロールユニット(ECU)が、第一の電動ウォーターポンプ(EWP)12と第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13の制御を行うものとする。
【0026】
<冷却システムの動作>
続いて、図1乃至図3を用いて冷却システム100の動作について説明する。図1に示す冷却システム100は、低温モードの状態を示し、図2に示す冷却システム100は、中間モードの状態を示し、図3に示す冷却システム100は、高温モードの状態を示す。
尚、低温モードとは、バッテリーパック6が低温(バッテリーパック6の外周を通過した冷却水の温度TがT<10℃)のときの動作モードである。中間モードとは、バッテリーパック6が常温となった(バッテリーパック6を通過した冷却水の温度Tが10≦T<25℃)ときの動作モードである。高温モードとは、電気系部品1の外周を通過した冷却水の温度Tが高温、具体的にはT>90℃となったときの動作モードである。
尚、各モードの温度範囲は適宜変更できる。
【0027】
<低温モード>
電気自動車の稼働開始時は、バッテリーパック6が低温であり、これを常温まで温める必要がある。図1に示すように低温モードでは、ヒートポンプ9により加熱された冷却水(温水)をヒータ11の外周に流し、第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13をオン(ON)として第一の流路R1に温水を流し、この温水を電気系部品1の外周に供給する。尚、第一の電動ウォーターポンプ(EWP)12はオフ(OFF)とする。
【0028】
また、低温モードでは、制御部は、電気系部品1の外周を通過した冷却水をバッテリーパック6の外周に流すよう第一の電動弁5を制御する。これにより第二の流路R2に冷却水が流れる。バッテリーパック6の外周に流れる冷却水は温水であるため、低温であったバッテリーパック6がはやく温められる。
【0029】
また、制御部は、バッテリーパック6の外周を通過した冷却水をヒートポンプ9の加熱用入力9aへ流すよう第二の電動弁7を制御する。これにより第六の流路R6に冷却水が流れる。ヒートポンプ9に戻った冷却水は再び加熱され、ヒータ11の外周を通過した温水が、第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13によって、電気系部品1の外周、バッテリーパック6の外周、ヒートポンプ9の順に循環する。
【0030】
<中間モード>
低温モードの継続により、電気系部品1の外周を通過する冷却水の温度が上昇し、所定の温度(例えば10℃)を超えると、制御部はバッテリーパック6が常温に達したと判断し、図2に示すように、電気系部品1の外周を通過した冷却水が(バッテリーパック6に流れずに)ヒートポンプ9の加熱用入力9aに流れるよう第一の電動弁5を制御する。これにより第三の流路R3に冷却水が流れる。
【0031】
図2に示すように中間モードでは、低温モードと同様に、ヒートポンプ9により加熱された冷却水(温水)をヒータ11の外周に流し、第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13をオン(ON)として第一の流路R1に温水を流し、この温水を電気系部品1の外周に供給する。上記のように制御部により制御された第一の電動弁5は、電気系部品1の外周を通過した冷却水を第三の流路R3によってヒートポンプ9の加熱用入力9aに流す。ヒートポンプ9の加熱用入力9aに流れる冷却水は再び加熱される。即ち、中間モードでは、ヒートポンプ9と電気系部品1の外周とに冷却水が順に循環する。
【0032】
一方、中間モードでは、さらに第一の電動ウォーターポンプ(EWP)12がオン(ON)とされ、ヒートポンプ9で冷却された冷却水がクーラー10の外周を通過した後、第五の流路R5を経由してバッテリーパック6の外周に供給される。制御部は、バッテリーパック6を通過した冷却水をヒートポンプ9の冷却用入力9bへ流すよう第二の電動弁7を制御する。冷却水は、第七の流路R7を流れて、ヒートポンプ9の冷却用入力9bに戻る。即ち、中間モードでは、ヒートポンプ9において冷却された冷却水が、バッテリーパック6の温度を常温に保つよう循環する。
【0033】
<高温モード>
中間モードを継続し、電気系部品1の外周を通過した冷却水の温度が所定の温度(例えば90℃)を超えると、制御部は電気系部品1を冷却してオーバーヒートを防ぐ必要があると判断する。具体的には、制御部は、図3に示すように電気系部品1を通過した冷却水の多くを第四の流路R4によってラジエータ14に流し、第三の流路R3を経由してヒートポンプ9の加熱用入力9aに流す冷却水の流量を減少するよう第一の電動弁5を制御する。
【0034】
高温モードでは、上記のように制御された第一の電動弁5は、電気系部品1の外周を通過した冷却水の多くをラジエータ14に流し、ヒートポンプ9の加熱用入力9aへの流量を減少させる。ラジエータ14に流れる冷却水は冷却され、ヒータ11の外周を流れる手前において、ヒートポンプ9から供給された、より少量の冷却水と合流する。ここで、第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13によって第一の流路R1を流れる冷却水の温度は、ラジエータ14によって大幅に低下しているため、高温となった電気系部品1を効果的に冷却することができる。
【0035】
また、第一の電動ウォーターポンプ(EWP)12はオン(ON)の状態が維持され、第二の電動弁7は、中間モードと同様に、第五の流路R5を経由してバッテリーパック6の外周を通過した冷却水をヒートポンプ9の冷却用入力9bへ流す。即ち、高温モードにおいても、ヒートポンプ9において冷却された冷却水が、バッテリーパック6の温度を常温に保つよう循環する。
【0036】
<効果等>
以上のように、本実施形態によれば、通電により発熱する電気系部品1と、電気系部品1に給電するバッテリーパック6と、冷却水の加熱または冷却を行うヒートポンプ9と、冷却水を冷却するラジエータ14とを備える電気自動車において、冷却システム100は、冷却水により電気系部品1とバッテリーパック6の温度を調整する。
即ち、冷却システム100は、ヒートポンプ9またはラジエータ14から供給され電気系部品1の外周を通過した冷却水を、ヒートポンプ9の加熱用入力9aとラジエータ14とバッテリーパック6の外周とのいずれかに流す第一の電動弁5と、バッテリーパック6の外周を通過した冷却水をヒートポンプ9の加熱用入力9aと冷却用入力9bとのいずれかに流す第二の電動弁7とを備える。
この構成において、制御部が、冷却水の温度に基づき、第一の電動弁5と第二の電動弁7のそれぞれの弁の切り替え制御を行うことにより、電気系部品1とバッテリーパック6の温度を冷却水により効率的に調整することができる。そして、切替弁を二つに分けて配置することにより、配管の繋ぎ方を簡易にし、従来のように一つのマルチポートバルブのみを配置して各部品をレイアウトするよりも、各部品の搭載レイアウトの自由度を向上させることができる。
また、第一の電動弁5と第二の電動弁7の弁の制御による流路の切替時に、第一の電動ウォーターポンプ(EWP)12、第二の電動ウォーターポンプ(EWP)13の回転を弱める、或いは停止することにより、第一の電動弁5及び第二の電動弁7にかかる負荷を低減できるため、弁の小型化が可能となる。
【0037】
尚、本実施形態においては、3方向のポートを有する切替弁として、第二の電動弁7を用いたが、本発明にあっては、電動弁に限定されるものではない。例えば、図4に示すように、第二の電動弁7に替えて、冷却水の温度によりワックスエレメントが膨張または収縮することで弁の開閉を行うワックス式温度調整弁20を使用してもよい。そのようにすれば、製造コストをより抑制することができる。
【0038】
また、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 電気系部品
2 充電機
3 PCM
4 モータ
5 第一の電動弁(第一の切替弁)
6 バッテリーパック(バッテリー)
7 第二の電動弁(第二の切替弁)
9 ヒートポンプ
9a 加熱用入力
9b 冷却用入力
10 クーラー
11 ヒータ
12 第一の電動ウォーターポンプ
13 第二の電動ウォーターポンプ
14 ラジエータ
20 ワックス式温度調整弁(切替弁)
100 冷却システム
図1
図2
図3
図4