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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011405
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/60 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G06T11/60 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113500
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル デム ベティ
(72)【発明者】
【氏名】オプラ バラージュ
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA07
5B050BA07
5B050BA17
5B050DA02
5B050EA06
5B050EA19
(57)【要約】
【課題】隣接する道路グラフを高精度に結合可能な技術を提供する。
【解決手段】第1の領域に対応する第1の道路グラフと、前記第1の領域と一部が重なる第2の領域に対応する第2の道路グラフとを結合する情報処理方法であって、前記第1の道路グラフと前記第2の道路グラフにおいて互いに重なる複数のエッジの中からいずれか1つのエッジを選択し、選択されたエッジを維持し選択されなかったエッジを削除する、選択ステップと、削除されたエッジに接続されていた第1のノードについて、当該第1のノードをマージするか否かの判断、およびマージする場合にはマージ対象の第2のノードの選択を行い、前記第1のノードを前記第2のノードにマージするマージステップと、を含む、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域に対応する第1の道路グラフと、前記第1の領域と一部が重なる第2の領域に対応する第2の道路グラフとを結合する情報処理方法であって、
前記第1の道路グラフと前記第2の道路グラフにおいて互いに重なる複数のエッジの中からいずれか1つのエッジを選択し、選択されたエッジを維持し選択されなかったエッジを削除する、選択ステップと、
削除されたエッジに接続されていた第1のノードについて、当該第1のノードをマージするか否かの判断、およびマージする場合にはマージ対象の第2のノードの選択を行い、前記第1のノードを前記第2のノードにマージするマージステップと、
を含む、ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
前記マージステップは、
前記第1のノードに最も近いノードを前記第2のノードとして選択するステップと、
所定の条件を満たす場合に前記第1のノードと前記第2のノードとをマージするステップと、
を含み、
前記所定の条件は、
前記第1のノードと前記第2のノードの間の距離が閾値未満であり、
前記第1のノードと前記第2のノードが接続されておらず、かつ、
マージ後の前記第1のノードに接続されるエッジの数と前記選択ステップ前に前記第1のノードに接続されるエッジの数の差が、マージ前の前記第1のノードに接続されるエッジの数と前記選択ステップ前に前記第1のノードに接続されるエッジの数の差、よりも小さい、
という条件である、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記マージステップにおいて、前記第1のノードと前記第2のノードのマージ後のノードの位置は、前記第1のノードの位置、前記第2のノードの位置、前記第1のノードの位置と前記第2のノードの位置の平均位置、および、ノードに接続されているエッジのスコアに基づく重みを用いた前記第1のノードの位置と前記第2のノードの位置の重み付け平均位置、の少なくともいずれかである、ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記選択ステップは、前記複数のエッジのスコアを算出するステップと、前記複数のエッジのうち最も高いスコアのエッジを選択するステップと、を含み、
前記スコアは、エッジと当該エッジが属する道路グラフの中心との間の距離が近いほど高く、かつ、エッジの長さが長いほど高く算出される、
こと特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
プロセッサと記憶装置とを備える情報処理装置であって、
前記記憶装置は、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
第1の領域に対応する第1の道路グラフと前記第1の領域と一部が重なる第2の領域に対応する第2の道路グラフにおいて互いに重なる複数のエッジの中からいずれか1つのエッジを選択し、選択されたエッジを維持し選択されなかったエッジを削除する、選択ステップと、
削除されたエッジに接続されていた第1のノードについて、当該第1のノードをマージするか否かの判断、およびマージする場合にはマージ対象の第2のノードの選択を行い、前記第1のノードを前記第2のノードにマージするマージステップと、
を実行させるプログラムを記憶している、ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される地図タイル作成システムは、領域をサブ領域に分割し、分割されたサブ領域の境界線に影響を受けないように道路または鉄道路線に対する名前を使用し、最終的な地図を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-168961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の態様の一つは、隣接する道路グラフを高精度に結合可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、第1の領域に対応する第1の道路グラフと、前記第1の領域と一部が重なる第2の領域に対応する第2の道路グラフとを結合する情報処理方法であって、前記第1の道路グラフと前記第2の道路グラフにおいて互いに重なる複数のエッジの中からいずれか1つのエッジを選択し、選択されたエッジを維持し選択されなかったエッジを削除する、選択ステップと、削除されたエッジに接続されていた第1のノードについて、当該第1のノードをマージするか否かの判断、およびマージする場合にはマージ対象の第2のノードの選択を行い、前記第1のノードを前記第2のノードにマージするマージステップと、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の態様によれば、隣接する道路グラフを高精度に結合可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】道路グラフ作成装置(情報処理装置)を説明する図。
図2】道路グラフを結合する際に維持するエッジを選択する選択処理を説明する図。
図3】道路グラフを結合する際のマージ処理を説明する図。
図4】マージ処理の具体例を説明する図。
図5】道路グラフの結合処理を並列実行するための処理を説明する図。
図6】道路グラフの結合処理を並列実行する処理の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
衛星画像や空撮画像などの道路を撮影した画像を元に、道路グラフの作成が行われている。数百kmあるいはそれ以上の広い範囲の道路グラフを作成したいという要求があるが、計算上の制約から小さいサイズの画像から道路グラフを作成し、これら複数の道路グラフを結合して広い範囲の道路グラフを作成する必要がある。そこで、道路グラフの結合処理を、精度良くまた効率的に行うことが求められる。
【0009】
(全体構成)
図1(A)は、一実施形態における道路グラフ作成装置(情報処理装置)100の構成を示す図である。道路グラフ作成装置100は、プロセッサ110とメモリ120を備える。メモリ120は、プロセッサ110を画像入力部111、ROI入力部112、ROI分割部113、画像抽出部114、道路グラフ抽出部115、および結合部116として機能させるためのコンピュータプログラムを非一時的に格納する。結合部116は選択部117とマージ部118をサブ機能部として有する。
【0010】
図1(B)は、衛星画像や空撮画像などの道路画像から道路グラフを作成する処理を説明する図である。図1(B)を参照しながら道路グラフ作成装置100の各機能部の概略を説明する。
【0011】
画像入力部111は、道路画像を取得してメモリ120に記憶する。ROI入力部112は、道路グラフを作成する関心領域(ROI)の入力を受け付け、ROI分割部113に渡す。ROI分割部113は、関心領域を複数のサブ領域に分割する。分割は、それぞれサブ領域が隣接するサブ領域と一部が重なるように行われる。一例ではサブ領域は全て同じ形状および大きさであり、他の例ではサブ領域の形状または大きさがそれぞれ異なっている。画像抽出部114は、ROI分割部113によって得られたサブ領域にしたがって、画像入力部111が取得した道路画像を複数の分割道路画像(以下、単に分割画像とも称する)に分割する。なお、入力される道路画像は複数であってよく、1つの分割道路画像生成に複数の道路画像が用いられてもよい。
【0012】
道路グラフ抽出部115は、それぞれの分割画像から道路グラフを抽出する。道路グラフの抽出は、グラフテンソルエンコーディングを用いて画像から道路グラフを推測するSat2Graph (https://arxiv.org/abs/2007.09547)などの公知の技術を用いて行えばよい。道路グラフ抽出処理は、それぞれの分割画像に対して並列実行可能であり、したがってスケラーブルである。道路グラフは、複数の道路エッジ(以下、単にエッジともいう)と複数の道路ノード(以下、単にノードともいう)から構成される。エッジは、道路に対応する複数の点に対応した線分である。ノードはエッジの端点であり、1つのノードには1つまたは複数のエッジが接続される。
【0013】
結合部116は複数の分割道路グラフを結合してROI全体に対応する道路グラフを作成する。結合部116による結合処理は、道路グラフ抽出処理の後処理と捉えられる。結合処理は、選択部117およびマージ部118を用いて行われる。選択部117は、隣接する道路グラフを結合する際に、道路グラフ間で重なり合うエッジのうち、どのエッジを維持するエッジとして選択するか決定する。マージ部118は、選択部によって選択されたエッジを用いて、隣接する道路グラフのマージを行う。結合部116(選択部117およびマージ部118)の詳細については後ほど詳しく説明する。
【0014】
分割道路マップの結合処理において重要な点は、2つの隣接する分割道路グラフの結合を精度良く行うことと、道路グラフ全体の結合処理のスケーラビリティを確保することである。結合精度の向上のためには、隣接する分割道路グラフにおいて重複するエッジおよびノードを適切に選択して結合する必要がある。また、結合処理全体のスケーラビリティを確保するためには、複数の領域に対する結合処理を並列に実行可能とする必要がある。本実施形態は、これら2点を改善する。
【0015】
(隣接道路マップの結合処理)
まず、隣接する2つの分割道路グラフを結合する処理について、図2および図3を参照して説明する。図2(A)は、選択部117が行う選択処理のフローチャートである。選択部117は、隣接する2つの分割道路グラフを対象として選択処理を実行する。
【0016】
ここでは、図2(B)に示すように、第1の分割道路グラフT1と第2の分割道路グラフT2を対象として処理を行う場合を例にして説明する。以下、分割道路グラフT1および分割道路グラフT2を単にグラフT1およびグラフT2とも称する。グラフT1とグラフT2が重なる領域について、グラフT1はエッジE1-1~E1-3を有し、グラフT2はエッジE2-1~E2-4を有する。
【0017】
ステップS201において、選択部117は、グラフT1およびグラフT2が重なり合う領域において、互いに重なる複数のエッジを抽出する。図2(B)の例では、エッジE1-1とE2-1が重なっており、エッジ1-2とエッジ2-2が重なっており、エッジ1-3とエッジ2-3が重なっている。選択部117は、各エッジに所定サイズ(例えば5メートル)のバッファを付加し、以下のいずれかの場合に2つのバッファ付きエッジが重なっていると判断する。
・複数のライン交差(Multi line intersection)である場合
・マルチポイントの交差(Multipoint intersection)である場合
・2つのエッジのうちの短い方のエッジの半分以上の長さのライン交差の場合
【0018】
ステップS202において、選択部117は、重なっていると判断されたエッジ(以下、重複エッジとも称する)をスコア付けしてメモリに一時保存する。この際、選択部117は、重複エッジのそれぞれに対してスコア付けを行う。スコアは、道路グラフの領域中心とエッジの間の距離およびエッジ長さの関数であり、領域中心からの距離が近いほど高く算出され、エッジ長さが長いほど高く算出される。このようなスコア算出の理由は、領域中心に近いエッジほど画像歪みの影響が小さくより信頼でき、また、長さエッジほど信頼できるためである。なお、重なっていないと判断されたエッジは、維持されるエッジ(出力される結合グラフに残るエッジ)としてメモリに保存される。
【0019】
ステップ203において、選択部117は、スコア付けされたエッジ(言い換えると重なっていると判断されたエッジ)を再度グルーピングする。
【0020】
ステップS204において、選択部117は、グループごとに最も高いスコアを有するエッジを維持して、その他のエッジは削除する。
【0021】
図2(C)は図2(B)に示すエッジの対する選択処理の結果の例を示す図である。ここでは、互いに重なるエッジE1-1とE2-1のうち、エッジE1-1が選択されている。同様に、エッジE1-2とE2-2のうちエッジ1-2が選択され、エッジE1-3とE2-3のうちエッジE2-3が選択されている。すなわち、選択処理によって、エッジE1-1、E1-2、およびE2-3が維持される重複エッジとして選択され、エッジE2-1,E2-2,およびE1-3は削除される。また、エッジE2-4は重複エッジではないと判断され、したがって維持されるエッジである。
【0022】
図3は、マージ部118によるマージ処理を示すフローチャートである。マージ処理は選択処理の結果に対して実行される。
【0023】
まず「ノードの次数(degree of node)」について説明する。「ノードの次数」は、そのノードに接続されているエッジの数として定義される。例えば図2(B)においてノードN1には3つのノードE1-1,E1-2,E1-3が接続されているので、ノードN1の次数は「3」である。同様に図2(B)においてノードN2の次数は「4」である。図2(C)においては、エッジE1-3が削除されたのでノードN1の次数は「2」に変更し、エッジE2-1およびE2-2が削除されたのでノードN2の次数は「2」に変更している。
【0024】
図3のマージ処理は、大きく分けてステップS301~S307を含むループ処理L1と、ステップS308~S310を含むループ処理L2によって構成される。ループ処理L1は全てのノードを対象として行われ、各ノードをマージ処理(エッジの再接続)の対象とするか否かを判定する処理である。ループ処理L2は、実際にノードをマージする処理である。
【0025】
ループ処理L1において処理対象として選択されているノードをノードnと称する。ステップS301において、マージ部118は、ノードnが選択処理において削除されたエッジに接続していたか否かを判断する。否定判定の場合には、ノードnはマージ処理の対象とならず、ループ処理L1は次のノードの処理に移る。肯定判定の場合は、処理はステップS302に進む。
【0026】
ステップS302において、マージ部118は、ノードnの選択処理前のノードnの次数(kと称する)を算出する。
【0027】
ステップS303において、マージ部118は、ノードnの最近傍のノード(ノードn’と称する)を選択する。
【0028】
ステップS304において、マージ部118は、ノードnとn’の間の距離が閾値未満であるか否かを判定する。距離が閾値以上である場合、ノードnはマージ処理の対象とならず、ループ処理L1は次のノードの処理に移る。距離が閾値未満の場合、処理はステップS305に進む。
【0029】
ステップS305において、マージ部118は、ノードnとn’が接続されているか判定する。ノードnが最近傍のノードn’と接続されている場合、ノードnはマージ処理の対象とならず、ループ処理L1は次のノードの処理に移る。接続されている場合、処理はステップS306に進む。
【0030】
ステップS306において、マージ部118は、ノードnとn’をマージすることにより、ノードnの次数が選択処理前のノード次数に近づくか否かを判定する。詳細には、マージ部118は、以下の条件式を満たすか否かを判定する。
ABS(k0-k1) < ABS(k0-k2)
【0031】
ここで、ABSは絶対値を返す関数であり、kは選択処理前のノードnの次数、k
選択処理後のノードnの次数、kはノードnとn’をマージした場合のノードnの次数である。
【0032】
上記の条件式を満たさない場合、ノードnはマージ処理の対象とならず、ループ処理L1は次のノードの処理に移る。上記の条件式を満たす場合、処理はステップS307に進む。
【0033】
ステップS307において、マージ部118は、ノードnをマージ候補としてメモリに記憶する。この際、マージ部118は、ノードn’をノードnのマージ先としてノードnに関連付けて記憶する。
【0034】
ループ処理L1は全てのノードを対象にして実行される。
【0035】
ここで、図2(B)および図2(C)を用いて具体的に説明する。なお、ノードN1とN2の間の距離はステップS304の閾値未満であるものとする。
【0036】
ノードN2は、選択処理において削除されたエッジE2-1およびE2-2に接続されており、最近傍のノードN2との距離が閾値未満であり、マージにより次数が「2」から「4」に変更して選択処理前のノードNの次数「4」に近づく。したがって、ノードN2はノードN1とマージするものと判定される。
【0037】
ノードN1は、選択処理において削除されたエッジE2-1およびE2-2に接続されており、最近傍のノードN2との距離が閾値未満である。しかしながら、ノードN1とのマージによりノードN2の次数は「2」から「4」に変更し、選択処理前の次数「3」に近づくわけではない。したがって、ノードN1は他のノードとマージするノードとは判定されない。
【0038】
ループ処理L2はステップS307において記憶されたマージ候補ノードごとに実行される。以下では、ループ処理における処理対象の候補ノードをノードmと称する。
【0039】
ステップS308において、候補ノードmに近接する他の候補ノードm’が存在するか判定する。この近接判定のための距離閾値は、ステップS304における閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。候補ノードm’は複数存在する場合もある。候補ノードmが他の候補ノードm’と近接する場合、処理はステップS309に進み、そうでない場合、処理はステップS310に進む。
【0040】
ステップS309において、マージ部118は、候補ノードmおよび近接する候補ノードm’を同じノードにマージするために、そのマージ先ノード位置を候補ノードmおよび候補ノードm’に基づいて決定する。マージ先ノードの位置の例は、候補ノードmの位置、候補ノードm’の位置、候補ノードmと候補ノードm’の平均位置(重心)、および、候補ノードmと候補ノードm’の重み付け平均位置である。なお、重み付け平均における重みは、ノードに接続されているエッジのスコアに基づいて定めることができ、例えば、ノードに接続されているエッジのスコアの合計または平均に応じた値とすることができる。
【0041】
なお、候補ノードmに近接する他の候補ノードが存在しない場合でも、候補ノードmのマージ先ノードの位置を、候補ノードmとそのマージ先ノード(ステップS307におけるノードnとn’)に基づいて上記のように決定してもよい。また、候補ノードmに近接する他の候補ノードが存在する場合も、候補ノードのマージ先ノードも考慮に入れて上記と同様にマージ先ノードの位置を決定してもよい。
【0042】
ステップS310において、マージ部118は、マージ候補ノードとそのマージ先ノードとマージする。一例として、マージ部118は、マージ候補ノードに接続されていたエッジをマージ先ノードに接続し、マージ候補ノードを削除する。
【0043】
なお、ステップS308において肯定判定されている場合は、マージ部118は、候補ノードmおよびm’をマージ先ノードとマージする。また、マージ部118は、ステップS309において決定されたマージ先ノード位置を有する新規ノードを作成してノードmおよびm’を当該新規ノードにマージしてもよい。あるいは、マージ部118は、ノードmおよびm’のいずれかのマージ先ノードの位置を変更して、その他のノードを当該位置変更後のノードにマージしてもよい。
【0044】
ループ処理L2は、未処理の候補ノードmがなくなるまで繰り返される。
【0045】
ここで、図4を用いて具体的に説明する。図4(A)は図2(B)と同じ図である。
【0046】
図4(B)は、図4(A)においてノードN2とノードN1を、マージ先ノードをN2としてマージした後の図である。処理前にノードN2に接続されていたエッジE2-3およびE2-4は、ノードN1に接続するエッジE2-3’およびE2-4’に変更される。処理前にノードN1に接続されていたエッジE1-1およびE1-2は変更されない。
【0047】
図4(C)は、図4(A)においてノードN2とノードN1を、マージ先ノードを新規ノードN3としてマージした後の図である。ここでは、ノードN3の位置は、ノードN1とN2の平均位置としているが、その他の位置であってもよい。処理前にノードN1に接続されていたエッジE1-1およびE1-2は、ノードN3に接続するエッジE1-1’およびE1-1’に変更される。同様に、処理前にノードN2に接続されていたエッジE2-3およびE2-4は、ノードN3に接続するエッジE2-3’およびE2-4’に変更される。
【0048】
(道路マップ結合処理の並列処理)
図5および図6を参照して、上述した隣接道路マップの結合処理を、ROI領域全体にわたって並列に処理する方法について説明する。なお、隣接道路マップの結合処理は、道路グラフ抽出後の後処理と称することもできる。
【0049】
図5(A)は、結合部116によって行われる結合処理(後処理)のフローチャートである。
【0050】
ステップS501において、結合部116は、道路グラフ抽出部115によって抽出された複数の分割道路グラフを取得する。一実施形態では、図5(B)に示すように、分割道路グラフは矩形形状を有しており、矩形の分割道路グラフは横方向および縦方向に並べられている。なお、縦方向および横方向は説明の便宜のために用いられており、これら2つの方向は任意の方向であってよく、また、互いに直交していなくてもよい。
【0051】
ステップS502において、結合部116は、分割道路グラフをグループ分けし、グループ内の分割道路グラフそれぞれにラベルを割り当てる。一実施形態では、結合部116は、図5(B)に示すように、1グループが3×3の9つの分割道路グラフを含むようグループ分けを行う。また、結合部116は、グループ内での位置に基づいて各グループに属する分割道路グラフにラベルを割り当てる。すなわち、グループ内での相対位置に応じたラベルが分割道路グラフに対して割り当てられる。図5(B)ではラベルを「1」から「9」の数字としているが、区別ができれば数字である必要はない。ラベルおよびラベル割り当ては、それぞれクラスおよびクラス分類と称することもできる。
【0052】
ステップS503において、結合部116は、複数のラベルのうち1つのラベルを選択する。ステップS504において、結合部116は、選択されたラベルを有する分割道路グラフおよびその近傍の分割道路グラフに対して、選択部117による選択処理およびマージ部118によるマージ処理を実行して、分割道路グラフの結合を行う。結合部116は、それぞれのグループについて、結合処理(選択処理およびマージ処理)を並列実行する。結合処理における処理対象の分割道路グラフがグループ間で異なることから、結合処理(選択処理およびマージ処理)はそれぞれのグループについて並列実行できる。
【0053】
ステップS505において全ての分割道路グラフが結合されたか判定し、未結合の分割道路グラフが残っている場合、処理はステップS503に進み別のラベルを選択して処理を繰り返す。全ての分割道路グラフの結合が完了した場合、処理を終了する。
【0054】
図6を用いて、結合処理の並列実行について具体的に説明する。図6(A)は、図5(A)のフローチャートにおけるステップS503~S505のループ処理の具体例を示す
【0055】
ステップS601において、結合部116は、3×3の9つのラベルのうち、任意のラベルを選択する。ここでは9つのラベルのうち隅に位置するラベル「1」が選択されたものとする。
【0056】
ステップS602において、結合部116は、選択されたラベル「1」の分割道路グラフとその8近傍の道路グラフの9つの分割道路グラフに対して結合処理(選択処理およびマージ処理)を実行する。9つの分割道路グラフにおいて重複する領域は合計12個あるので、これら12個の重複領域(境界領域)に対する結合処理は順次行われる。また、結合部116は、結合処理をグループごとに並列実行する。
【0057】
図6(B)は、並列実行されるそれぞれの結合処理において参照される分割道路グラフを太字の矩形で示す。図示されるように、それぞれの結合処理について、処理対象の分割道路グラフが異なっているので、それぞれの結合処理を同時並行に実行可能である。
【0058】
図6(C)は、ラベル「1」を中心とする結合処理によって結合される重複領域(境界領域)を太線で示す。上述したように、ラベル「1」を中心とする9つの分割道路グラフの内部の重複領域が結合される。
【0059】
ステップS603において、結合部116は、ステップS601で選択したラベル「1」とは異なるラベルを選択する。ここで選択されるラベルは、ステップS601で選択したラベルと横方向および縦方向に異なる位置のラベルであれば、どのラベルであってもよい。ここでは、ラベル「1」の対角に位置するラベル「9」が選択されたものとする。
【0060】
ステップS604において、結合部116は、選択されたラベル「9」の分割道路グラフとその8近傍の道路グラフの9つの分割道路グラフに対して結合処理(選択処理およびマージ処理)を並列実行する。なお、ステップS602において結合処理が実施されている重複領域については結合処理を省略してよい。
【0061】
図6(D)は、並列実行されるそれぞれの結合処理における処理対象の分割道路グラフを太字の矩形620で示す。また、図6(E)は、ラベル「9」を中心とする結合処理によって結合される重複領域(境界領域)を太線で示す。
【0062】
図6(C)と図6(E)から分かるように、ラベル「1」および「9」(あるいは、3×3の分割道路グラフのうち対角に位置する2つの分割道路グラフ)に対する結合処理を実施すれば、分割道路グラフの全体が結合されることが分かる。
【0063】
なお、上記の説明では、ラベル「1」および「9」に対して結合処理を行っているが、ラベル「1」と、ラベル「5」「6」「8」「9」のいずれか1つと、の2つのラベルに対して結合処理を行えば全体の結合が行える。言い換えると、3×3の9つの分割道路グラフのうち、いずれか1つのラベルと、このラベルとは縦方向および横方向の位置がいずれも異なる別のラベルと、の2つのラベルに対して結合処理を行えばよい。
【0064】
(結合処理の変形例1)
また、9つの分割道路グラフの内部全体を結合処理の対象としているが、選択ラベルとその4近傍の分割道路グラフとの間の重複領域のみを結合処理の対象としてもよい。この場合は、ラベル「1」「3」「5」「7」「9」を選択して結合処理を5回行えば全体が結合される。
【0065】
(結合処理の変形例2)
より一般には、グループの大きさは任意であってよく、例えば、2×2であっても、あるいは4×4以上であってよい。また、グループの縦と横のサイズが異なっていてもよい。すなわち、グループの大きさはp×q(p≧2、q≧2)であってよい。
【0066】
結合部116は、第1の方向および第2の方向に並んでおり、隣接する領域と一部が重なる複数の道路グラフを、次のようにして並列実行により結合してもよい。結合部116は、複数の道路グラフ全体を、相互排他的かつ網羅的(MECE)に第1のグループ分けする(図6(B)の領域610参照)。ここで、各グループの形状はいずれもp×q(p≧2、q≧2)の道路グラフを含む同じ形状である。そして、結合部116は第1のグループ内の複数の道路グラフ全体を結合する結合処理を実施する。ここで、結合処理はグループ単位で並列実行される。次に、結合部116は、複数の道路グラフ全体を、相互排他的かつ網羅的(MECE)に第2のグループ分けをする(図6(D)の領域620参照)。第2のグループ分けは、第1のグループ分けと比較して、グループの境界位置が第1の方向および第2の方向それぞれで異なる。そして、結合部116は、第2のグループ内の複数の道路グラフ全体を結合する結合処理を実施する。一般には、このようにして2グループに対する結合処理によって、複数の道路グラフ全体の結合が可能樽。処理の並列実行が可能である。
【0067】
(実施形態の効果)
上記の実施形態によれば、道路グラフ抽出処理および結合処理の並列実行により、広い領域の道路画像から道路グラフを作成することができる。並列処理が可能であることから、計算資源を投入することでより広い領域の道路グラフを、全体の処理時間を増やすことなく作成可能である。また、上記の実施形態の選択処理およびマージ処理によれば、2つの道路グラフの結合を迅速かつ精度良く実行可能である。
【0068】
(その他の実施形態)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
【0069】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0070】
100:道路グラフ作成装置(情報処理装置) 110:プロセッサ
111:画像入力部 112:ROI入力部 113:ROI分割部
114:画像抽出部 115:道路グラフ抽出部 116:結合部
117:選択部 118:マージ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6