IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両 図1
  • 特開-車両 図2
  • 特開-車両 図3
  • 特開-車両 図4
  • 特開-車両 図5
  • 特開-車両 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011411
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113510
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】梶原 彰人
(72)【発明者】
【氏名】羽原 洋平
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB01
5H125BA00
5H125BA04
5H125BB00
5H125BB02
5H125BB07
5H125CA00
5H125CA02
(57)【要約】
【課題】走行状態に応じてうなり音を柔軟に抑制できる車両を提供する。
【解決手段】異なる2つの車輪11,12をそれぞれモータ21,22によって駆動させる駆動部25,26と、それぞれの駆動部25,26のモータ21,22に給電するインバータ31,32と、インバータ31,32を制御する制御部35と、を備え、制御部35は、それぞれの駆動部25,26で生じるノイズバイブレーションNVL,NVRの周波数差異Xが、ノイズバイブレーションNVL,NVRの合成によってうなり音が発生するうなり音発生範囲A~Bから外れるように、インバータ31,32を制御して駆動部25,26におけるキャリア周波数CFL,CFRを可変制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2つの車輪をそれぞれモータによって駆動させる駆動部と、
それぞれの前記駆動部の前記モータに給電するインバータと、
前記インバータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、それぞれの前記駆動部で生じるノイズバイブレーションの周波数差異が、前記ノイズバイブレーションの合成によってうなり音が発生するうなり音発生範囲から外れるように、前記インバータを制御して前記駆動部におけるキャリア周波数を可変制御する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪毎のモータと減速機構を備えるインホイールモータを有する車両において、少なくとも一の組み合わせのインホイールモータ相互間において、減速機構の歯数の組み合わせを異ならせることにより、各インホイールモータの減速機構やモータから発生する音が干渉しあって生じるうなり音を抑える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-37133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行する車両では、その運転状態に応じてうなり音が生じる。このため、減速機構の歯数の組み合わせを異ならせて特定の周波数のうなり音を抑える特許文献1に記載の技術では、走行状態に応じて生じるうなり音を十分に抑制することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、走行状態に応じてうなり音を柔軟に抑制できる車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の車両は、
異なる2つの車輪をそれぞれモータによって駆動させる駆動部と、
それぞれの前記駆動部の前記モータに給電するインバータと、
前記インバータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、それぞれの前記駆動部で生じるノイズバイブレーションの周波数差異が、前記ノイズバイブレーションの合成によってうなり音が発生するうなり音発生範囲から外れるように、前記インバータを制御して前記駆動部におけるキャリア周波数を可変制御する。
【0007】
この構成の車両によれば、各車輪のモータへ給電するインバータを制御して駆動部でのキャリア周波数を可変制御することにより、走行状態に応じてうなり音を柔軟に抑制できる。また、うなり音を抑えるために減速機構の歯車の組み合わせを変えるものと比較し、コストの嵩張り及び重量の増加を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行状態に応じてうなり音を柔軟に抑制できる車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る車両の概略構成図である。
図2図2は、左右の車輪の駆動部におけるノイズバイブレーションを示すグラフである。
図3図3は、制御部による制御を説明するフローチャートである。
図4図4は、制御部によるうなり音の発生の抑制について説明する左右の車輪の駆動部におけるノイズバイブレーションを示すグラフである。
図5図5は、直進時における左右の車輪の駆動部におけるノイズバイブレーションを示すグラフである。
図6図6は、旋回時における左右の車輪の駆動部におけるノイズバイブレーションを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る車両1の概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、前方に前輪となる2つの車輪11,12と、後方に後輪となる2つの車輪13,14と、を備えている。車両1は、前輪となる車輪11,12が駆動輪とされた前輪駆動車である。なお、前輪駆動車からなる車両1は、一例であり、後輪からなる車輪13,14が駆動輪である後輪駆動車または全ての車輪11~14が駆動輪である全輪駆動車であってもよい。
【0012】
車両1の駆動輪である車輪11,12は、それぞれモータ21,22を有しており、このモータ21,22の駆動力が車輪11,12に伝達される。このように、車両1は、車輪11,12をモータ21,22によって駆動させる駆動部25,26を備えている。各駆動部25,26のモータ21,22には、それぞれインバータ31,32から給電される。これらのインバータ31,32は、制御部35に接続されており、この制御部35によって制御される。これらのインバータ31,32は、それぞれキャリア周波数が可変可能とされている。この車両1では、制御部35によって制御されるインバータ31,32からの給電によって各駆動部25,26のモータ21,22が駆動することにより、車輪11,12が回転駆動されて走行する。
【0013】
ところで、それぞれの車輪11,12を回転駆動させるモータ21,22を有する駆動部25,26を備えた車両1では、各駆動部25,26のインバータ31,32における電力変換時にノイズバイブレーションNVが発生する。
【0014】
図2は、左右の車輪11,12の駆動部25,26におけるノイズバイブレーションNVL,NVRを示すグラフである。
図2に示すように、例えば、車両1を旋回させる際には、左右の車輪11,12のモータ21,22の回転数を異ならせる。例えば、車両1を右旋回させる場合では、左の車輪11のモータ21の回転数RLよりも右の車輪12のモータ22の回転数RRが低くなる。このとき、キャリア周波数CFL,CFRのインバータ31,32を備えた左右の駆動部25,26では、右の駆動部26で生じるノイズバイブレーションNVRの周波数FRに対して左の駆動部25で生じるノイズバイブレーションNVLの周波数FLが低くなる。
【0015】
そして、右側のノイズバイブレーションNVRの周波数FRに対する左側のノイズバイブレーションNVLの周波数FLのずれである周波数差異Xが特定範囲であるうなり音発生範囲A~Bに入ると、これらのノイズバイブレーションNVL,NVRが重なり合ってビート音であるうなり音が生じる。なお、周波数差異Xが小さく、うなり音発生範囲A~Bに達しない場合、または、周波数差異Xが大きく、うなり音発生範囲A~Bを越えた場合は、これらのノイズバイブレーションNVL,NVRの重なり合いによるうなり音の発生は収まる。
【0016】
本実施形態に係る車両1では、うなり音を抑制すべく、制御部35がインバータ31,32を以下のように制御する。図3は、制御部35による制御を説明するフローチャートである。
【0017】
まず、車輪11,12のタイヤ径、車輪速及び舵角の情報を取得する(ステップS1)。
【0018】
次に、取得した車輪11,12のタイヤ径、車輪速及び舵角の情報から車両1の旋回半径及び各車輪11,12の回転数を求める(ステップS2,S3)。
【0019】
車輪11,12のタイヤ径、車輪速及び舵角の情報、車両1の旋回半径及び各車輪11,12の回転数に基づいて、各駆動部25,26でのノイズバイブレーションNVL,NVRの周波数FL,FRを算出する(ステップS4)。
【0020】
算出したノイズバイブレーションNL,NRの周波数FL,FRのずれである周波数差異Xを求める(ステップS5)
【0021】
周波数差異Xがうなり音発生範囲A~B内に入っているか否か(A≦X≦B)を判定する(ステップS6)。
【0022】
周波数差異Xがうなり音発生範囲A~B内に入っていると判定すると(ステップS6:Yes)、周波数差異Xがうなり音発生範囲A~Bから外れるように、駆動部25,26のインバータ31,32の少なくとも一方を制御してキャリア周波数CFL,CFRの少なくとも一方を変更する(ステップS7)。
【0023】
図4は、制御部35によるうなり音の発生の抑制について説明する左右の車輪11,12の駆動部25,26におけるノイズバイブレーションNVL,NVRを示すグラフである。
図4に示すように、車両1が右旋回する場合では、例えば、右側の駆動部26のインバータ32のキャリア周波数CFRを低くする。すると、右側の駆動部26で生じるノイズバイブレーションNVRの周波数FRが下がり、周波数差異Xが減少または無くなり、うなり音発生範囲A~Bから外れる。これにより、ノイズバイブレーションNVL,NVRの重なり合いによるうなり音の発生が抑えられる。
【0024】
なお、キャリア周波数CFL,CFRの変更による左右の駆動部25,26でのノイズバイブレーションNVL,NVRの周波数FL,FRの周波数差異Xをより大きくしてうなり音発生範囲A~Bから外れるように制御してもよい。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態に係る車両1によれば、各車輪11,12のモータ21,22へ給電するインバータ31,32を制御して駆動部25,26でのキャリア周波数CFL,CFRを可変制御することにより、走行状態に応じてうなり音を柔軟に抑制できる。また、うなり音を抑えるために減速機構の歯車の組み合わせを変えるものと比較し、コストの嵩張り及び重量の増加を抑えることができる。
【0026】
ここで、図5は、車両1が直進する際の左右の車輪11,12の駆動部25,26におけるノイズバイブレーションNVL,NVRを示し、図6は、車両1が旋回する際の左右の車輪11,12の駆動部25,26におけるノイズバイブレーションNVL,NVRを示している。
【0027】
図5及び図6に示すように、車両1の諸元から、可能性のある走行状態での各車輪11,12の駆動部25,26の周波数差異Xを事前に算出し、インバータ31,32を制御してキャリア周波数FL,FRを意図的にずらしておき、予め各車輪11,12の駆動部25,26の周波数差異Xがビート音を発生するうなり音発生範囲A~Bに入らないようにしてもよい。
【0028】
なお、上記実施形態では、車両1における左右の車輪11,12の駆動部25,26に適用した場合を例示したが、本発明は、インバータによって制御されるモータによって前後の車輪が駆動する駆動部を備えた車両において、その前後の駆動部に適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 車両
11,12 車輪
31,32 モータ
25,26 駆動部
31,32 インバータ
35 制御部
A~B うなり音発生範囲
CFL,CFR キャリア周波数
NVL,NVR ノイズバイブレーション
X 周波数差異
図1
図2
図3
図4
図5
図6