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特開2025-11412印刷データ生成装置、印刷データ生成方法、及び印刷用画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011412
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】印刷データ生成装置、印刷データ生成方法、及び印刷用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113512
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】舘林 優太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB58
2C056EC79
2C056FA11
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】共通液室を介して連通するノズル列を備える印刷ヘッドを用いて印刷を行う場合におけるノズル列でのインク吐出量の変動を抑制し、印刷画像の画質低下を抑制する。
【解決手段】印刷データ生成装置10は、印刷ヘッドが複数のノズルN1~N5を備える第1のノズル列NC1と、複数のノズルN6~N10を備える第2のノズル列NC2とを有し、各ノズル列NC1、NC2は第1の方向に間隔をおいて配置され、かつ共通液室200を介して連通している場合において、印刷ヘッドを用いてメディアに画像を印刷する際の印刷データを生成し、画像の画像領域の、第1の方向の端部350R、350Lにおいて、各ノズル列のインク吐出量が変動して画質低下が生じるか否かを判定する画質低下判定部66と、画質低下が生じる場合に、画像データを、例えば所定の角度だけ回転させて傾ける画像回転処理部68と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドが、第1の方向と交差する第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第1のノズル列と、前記第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第2のノズル列と、を有し、前記第1、第2の各ノズル列は、第1の方向に間隔をおいて配置され、かつ共通液室を介して連通している場合において、前記印刷ヘッドを用いてメディアに画像を印刷する際の印刷データを生成する印刷データ生成装置であって、
前記画像の画像領域の、前記第1の方向の端部において、前記第1、第2の各ノズル列のノズルからのインク吐出量が変動することによって画質低下が生じるか否かを判定する画質低下判定部と、
画質低下が生じると判定される場合に、印刷対象である画像の画像データを、所定の角度、又は算出された角度だけ回転させて傾ける画像回転処理部と、
を有する、印刷データ生成装置。
【請求項2】
前記画質低下判定部は、
前記第1、第2の各ノズル列のノズルの数を合算したノズル総数に占める、前記端部でインクを吐出するノズル数、又は前記端部でインク吐出を終了するノズル数の割合が第1の閾値以上である場合に、画質低下が生じると判定する、
請求項1に記載の印刷データ生成装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドが、前記第1の方向に沿って、少なくとも1回移動する場合の動作を1パスとすると共に、1パス毎に、前記印刷ヘッドと前記メディアとの前記第2の方向における相対的位置関係を更新して印刷を実施し、前記画像領域をmパス(mは2以上の整数)で印刷する場合において、
前記画質低下判定部は、
パス毎に、前記第1、第2の各ノズル列のノズルの数を合算したノズル総数に占める、前記端部でインクを吐出するノズル数、又は前記端部でインクの吐出を終了するノズル数の割合が第1の閾値以上であるか否かを判定し、
前記mパスに占める、前記第1の閾値以上であったパスの数の割合が第2の閾値以上である場合に、画質低下が生じると判定する、
請求項1に記載の印刷データ生成装置。
【請求項4】
前記画質低下判定部による判定は、少なくとも前記画像領域の前記端部が、隙間なくインクが塗布されるベタ画像領域である場合に実施される、
請求項1に記載の印刷データ生成装置。
【請求項5】
印刷ヘッドが、第1の方向と交差する第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第1のノズル列と、前記第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第2のノズル列と、を有し、前記第1、第2の各ノズル列は、第1の方向に間隔をおいて配置され、かつ共通液室を介して連通している場合において、前記印刷ヘッドとメディアとを前記第1の方向に沿って相対移動させて、前記メディアに画像を印刷する際の印刷データを生成する印刷データ生成方法であって、
前記画像の画像領域の、前記第1の方向の端部において、前記第1、第2の各ノズル列のノズルからのインク吐出量が変動することによって画質低下が生じるか否かを判定する第1のステップと、
画質低下が生じると判定される場合に、印刷対象である画像の画像データを、所定の角度、又は算出された角度だけ回転させて傾ける第2のステップと、
前記第2のステップの後の画像データをRIP(Raster Image Processor)処理して印刷データを生成する第3のステップと、
を含む印刷データ生成方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1~4の何れか1項に記載の画質低下判定部、及び画像回転処理部として機能させる、印刷用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データ生成装置、印刷データ生成方法、及び印刷用画像処理プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液滴を吐出する複数のノズルを含み、これら複数のノズルによって構成された少なくとも2列のノズル列と、複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、複数の圧力室に液体を供給する1又は2の共通液室と、これら共通液室の各々に設けられ、共通液室を画定する複数の内面の少なくとも1つの面をなすダンパと、を有する液滴吐出ヘッドが示されている([0003]、[0044]~[0047]、図5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-273193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によって、以下の事項が明らかとされた。
以下の説明では、第1、第2のノズル列を備える印刷ヘッドを想定する。第1、第2の各ノズル列は、第1の方向(主走査方向)に所定の間隔をおいて配置され、かつ各ノズル列は、共通液室を介して連通するものとし、また、第1、第2のノズル列は各々、第1の方向と交差する第2の方向(副走査方向)に間隔をおいて配置された複数のノズル(インク吐出口、あるいは液体吐出口)を備えるものとする。
【0005】
印刷が開始されると、印刷ヘッドは第1の方向(主走査方向)に移動され、第1のノズル列が、画像領域の、インクヘッドの走査開始端に近い側の端部内に入ってノズルからインクが吐出され、続いて、第2のノズル列もその端部内に入ってノズルからインクが吐出される。
【0006】
ここで、第1のノズル列が画像領域の端部に進入したとき、第1のノズル列は、インクを吐出しない状態から、インクを吐出する状態に急に変化する。例えば、その端部にインクを隙間なく塗布する領域(ベタ画像領域)が存在する場合には、大量のインクが急に吐出され、この影響が共通液室を介して第2のノズル列に伝播する。
【0007】
続いて、第2のノズル列が画像領域の端部内に入り、第2のノズル列も、インクを吐出しない状態から、インクを吐出する状態に急に変化する。第2のノズル列のノズルからも大量のインクが急に吐出されると、共通液室内でインクの引き合いが生じ、第2のノズル列に供給されるインク量が不足し、第2のノズル列のノズルから所望の量のインクを吐出できず、縦スジ(ノズル列におけるノズルの配置方向(言い換えれば副走査方向)に生じる、所望の濃度が得られない濃度ムラということもできる)が発生する場合がある。
【0008】
印刷ヘッドが画像領域の中央の領域に達すると、第1、第2のノズル列におけるインクの吐出量は安定するため、縦スジ(濃度ムラ)が生じる可能性は低下する。
【0009】
印刷ヘッドがさらに移動し、走査開始端とは反対側の走査終了端に近づくと、第1のノズル列は画像領域から外れることから、その直前にノズルからのインク吐出を終了させる必要がある。よって、画像領域の走査終了端に近い側の端部では、インク吐出量が急に減少し、この場合も、第2のノズル列におけるインク吐出に影響が生じる。すなわち、第2のノズル列におけるインク量が過剰となり、上記の場合と同様に縦スジ(濃度ムラ)が発生する場合がある。
【0010】
このように、画像領域の、第1の方向(主走査方向)における印刷ヘッドの走査開始端に近い端部、及び印刷ヘッドの走査終了端に近い端部において、各ノズル列のインク吐出量が大きく変動する現象が生じやすい。
【0011】
この対策としては、例えば、急激なインク吐出量の変化が生じないように、印刷する画像の濃度プロファイル(特に、インク吐出量の変動が生じやすい端部付近における濃度プロファイル)を適宜、調整することが考えられるが、この場合には、インクの打ち込み量が制限されてしまい、印刷に一定の制限が生じる場合も想定され得るのは否めない。
【0012】
上記の特許文献1には、このような課題については記載がなく、その対策についても言及されていない。
【0013】
本発明の1つの目的は、印刷ヘッドにおける、共通液室を介して連通するノズル列でのインク吐出量の変動を抑制し、印刷画像の画質低下を抑制することである。
【0014】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0016】
本発明に従う態様において、印刷データ生成装置は、印刷ヘッドが、第1の方向と交差する第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第1のノズル列と、前記第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第2のノズル列と、を有し、前記第1、第2の各ノズル列は、第1の方向に間隔をおいて配置され、かつ共通液室を介して連通している場合において、前記印刷ヘッドを用いてメディアに画像を印刷する際の印刷データを生成する印刷データ生成装置であって、前記画像の画像領域の、前記第1の方向の端部において、前記第1、第2の各ノズル列のノズルからのインク吐出量が変動することによって画質低下が生じるか否かを判定する画質低下判定部と、画質低下が生じると判定される場合に、印刷対象である画像の画像データを、所定の角度、又は算出された角度だけ回転させて傾ける画像回転処理部と、を有する。
【0017】
本発明に従う態様によれば、印刷に先立ち、印刷画像の画像領域の端部で、ノズルからのインク吐出量に大きな変動が生じて印刷画像の画質が低下するか否かを判定し、画質低下が生じると判定される場合には、画像データ(例えば画像データの全体)の回転処理によって画像を所定角度(あるいはその都度、印刷ヘッドの特性や印刷画像の形状、使用されるインク等を考慮して算出される角度)だけ傾け、これによって端部における第1、第2のノズル列におけるインク吐出量の大きな変動を抑制することができる。
よって、互いに連通する第1、第2のノズル列を備える印刷ヘッド(サブインクヘッド)を使用する場合でも、縦スジ(濃度ムラ)等の画質低下の発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、印刷システムの全体の構成例を示す図である。
図2図2は、印刷システムにおける、印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)、及び印刷装置(インクジェットプリンタ)の内部構成例を示す図である。
図3図3(A)は、印刷ヘッドの、上方向から見た透視平面図、図3(B)は、共通液室を介して連通する第1、第2のノズル列の、上方向から見た透視平面図である。
図4図4は、図3(B)に示される第1、第2のノズル列の構造例を示す断面図である。
図5図5は、印刷ヘッドの移動に伴い、印刷画像の画像領域の端部(第1の方向における、印刷ヘッドの走査開始端に近い第1の端部)内に、第1のノズル列が進入した状態を示す図である。
図6図6は、印刷ヘッドの移動に伴い、印刷画像の画像領域の端部(第1の方向における、印刷ヘッドの走査開始端に近い第1の端部)内に、第2のノズル列も進入した状態を示す図である。
図7図7は、印刷画像の画像データ(画像領域)の全体を回転させることによる、第1のノズル列におけるインク吐出量の変動の抑制効果を示す図である。
図8図8は、印刷画像の画像データ(画像領域)の全体を回転させることによる、第2のノズル列におけるインク吐出量の変動の抑制効果を示す図である。
図9図9(A)、(B)、(C)は、メディア上における、印刷画像の画像領域の一例を示す図である。
図10図10は、図9(A)に示される画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
図11図11は、図9(B)に示される画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
図12図12は、図9(C)に示される画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
図13図13は、図9(A)、図10に示される画像領域を所定角度、時計回りに回転させた画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
図14図14は、図9(C)、図12に示される画像領域を所定角度、時計回りに回転させた画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
図15図15は、印刷データ生成方法における主要な処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0021】
なお、本明細書において「インクジェットプリンタ」には、従来公知のインクジェット技術による印刷方式、例えば、2値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般を含めることができる。
【0022】
また、「プリンタ(インクジェットプリンタ)」には、2次元の画像を印刷する2Dプリンタと、3次元の造形物を造形する3Dプリンタ(3次元造形装置)とを含めることができる。
【0023】
また、「インク」という用語は広義に解釈することができる。例えば、「液体」と表現することもできる。例えば、「インクジェットプリンタ」という用語は、「液体吐出装置」と表現することも可能である。
【0024】
(第1の実施形態)
図1を参照する。図1は、印刷システムの全体の構成例を示す図である。
印刷システム1は、第1、第2のフォルダ37、44と、各フォルダに接続される印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)10と、印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)10に接続される液晶ディスプレイ等からなる表示部16と、操作部(入力部)としてのキーボード18及びマウス19と、印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)10に通信線L11を介して接続された印刷装置(プリンタ)50と、を有する。ここでは、印刷装置50として、インクジェットプリンタが使用される。
【0025】
印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)10には、記憶装置(メモリ)12が設けられる。この記憶装置(メモリ)12には、本発明に係る、印刷用画像処理プログラム15が保持されている。
【0026】
また、第1のフォルダ37には、印刷画像の画像データ(印刷画像データ)39が保持されている。この画像データは、例えば、ベクトル画像のRGBデータである。
【0027】
また、第2のフォルダ44には、画像データに対応する入力プロファイル45、及び、印刷装置50に対応する出力プロファイル47が保持されている。なお、出力プロファイル47は、複数の出力プロファイルの中から、印刷条件に適合するものを1つ選択することで特定されてもよい。
【0028】
次に、図2を参照する。図2は、印刷システムにおける、印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)、及び印刷装置(インクジェットプリンタ)の内部構成例を示す図である。
【0029】
印刷システム1を構成する印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)10は、印刷対象の画像データが入力される画像データインタフェース(I/F)60と、入力された画像データに画像処理を施す画像データ処理部62と、画像処理後の画像データ(言い換えれば、生成された印刷データ)を出力する印刷データ出力部78と、を有する。
【0030】
画像データ処理部62は、インク吐出量変動抑制部64と、RIP(Raster Image Processor)72と、を有する。
RIP72は、ベクトル画像データをラスタ画像(ピクセル画像)データに変換するラスタライズ部71(画像データを一時的に蓄積する画像データ蓄積部73を含む)と、色変換機能(例えば、RGBデータをCMYKデータに変換する機能)を有する色変換部74と、階調補正等の機能を有する画像補正部76と、を有する。
なお、本明細書では、RIP72は、「RIP処理」を実施する。「RIP処理」は広義に解釈され、本明細書では、ラスタライズ処理、色変換処理、階調補正処理等の画像処理全般の処理を含むものとして取り扱う。
ラスタライズ部71は、ベクトル画像データが入力された場合は、ラスタライズ処理を実施してベクトル画像データをラスタ画像データに変換する。変換後の画像データは、画像データ蓄積部73に一時的に蓄積(記憶)される。
また、ラスタ画像(ピクセル画像)が入力された場合には、ラスタライズ処理は不要であるため、ラスタライズ部71は、入力された画像データを、画像データ蓄積部73に一時的に蓄積(記憶)する処理(すなわち、画像データのバッファリング処理)のみを実施する。
【0031】
インク吐出量変動抑制部64は、画像領域の端部で画質低下が生じるか否かを判定する画質低下判定部66と、画質低下が生じると判定された場合に、画質低下を抑制するために画像データの、例えば全体を回転させて傾ける画像回転処理部68と、を有する。画像回転処理部68は、使用される印刷ヘッド、印刷画像の形状や濃度、使用されるインク等を考慮して適宜、回転量を算出する回転量算出部70を備えてもよい。
【0032】
画像データインタフェース(画像データI/F)60から入力される画像データは、上述のとおり、必要に応じてラスタライズ部71によりラスタライズされ、画像データ蓄積部73に一時的に蓄積される。蓄積された画像データ(ここでは複製された画像データとし、元の画像データは画像データ蓄積部73内に残されるものとする)は、画質低下判定部66に供給される。
【0033】
画質低下判定部66は、画質低下が生じるか否かを判定し、画質低下が生じないと判定した場合は、その判定結果をRIP72に送信する。この場合は、RIP72は、画像データ蓄積部73に蓄積されている画像データを色変換部74に供給する。
【0034】
一方、画質低下判定部66によって画質低下が生じると判定された場合は、画質低下を抑制するために、画像回転処理部68にて、画像回転処理が実施される。この場合、画像回転処理部68は、画像データインタフェース(画像データI/F)60から再度、画像データを取得し、その画像データに対して、所定角度、あるいは算出された角度の回転処理を実施し、回転処理後の画像データをラスタライズ部71に供給する。
【0035】
ラスタライズ部71は、回転処理後の画像データを必要に応じてラスタライズし、画像データ蓄積部73に蓄積(この場合は上書き保存)する。その後、画像データ蓄積部73に蓄積された画像データは、色変換部74に供給される。
【0036】
インクジェットプリンタ(印刷装置)50は、通信インタフェース(I/F)80と、制御部82と、キャリッジ22(印刷ヘッド42を搭載する)を第1の方向(主走査方向)に走査する(言い換えれば、移動させる)走査系の構成20と、メディアを、第1の方向と交差(例えば直交)する第2の方向(副走査方向)に搬送する搬送系の構成30と、印刷ヘッド42に搭載されるノズル列のノズルからのインク(広義には液体)の吐出を制御するインク吐出系の構成40と、を有する。
なお、上記の構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。例えば、キャリッジ22を主走査方向および副走査方向に移動させる構成を採用してもよい。
また、メディアを、主走査方向及び副走査方向に移動させる構成を採用してもよい。
また、キャリッジ22は移動せず、メディアがノズルの並ぶ方向と交差(例えば直交)する方向に搬送される構成(ライン方式)を採用してもよい。
【0037】
制御部82は、キャリッジ22の第1の方向における走査(移動)を制御する走査制御部84と、メディアの第2の方向における搬送を制御する搬送制御部85と、印刷ヘッド42のノズルからのインクの吐出を制御するインク吐出制御部87と、を有する。
【0038】
走査系の構成20は、キャリッジ用モータ21と、キャリッジ22と、キャリッジ22の第1の方向における位置を検出する位置検出部23と、を有する。
【0039】
搬送系の構成30は、搬送用モータ31と、搬送用ローラ32と、メディアの第2の方向における搬送量を検出する搬送検出部33と、を有する。
【0040】
インク吐出系の構成40は、印刷ヘッド駆動部41と、印刷ヘッド42と、インク量検出部43と、を有する。
【0041】
印刷ヘッド42は、印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)10から供給される印刷データに基づいて、メディアにインクを吐出する。なお、印刷ヘッド42は、キャリッジ22に搭載される。
【0042】
キャリッジ用モータ21、搬送用モータ31、及び印刷ヘッド駆動部41により、駆動部86が構成される。位置検出部23、搬送検出部33、及びインク量検出部43により、検出部88が構成される。検出部88の検出結果(検出信号)は、制御部82にフィードバックされる。
【0043】
次に、図3を参照する。図3(A)は、印刷ヘッドの、上方向から見た透視平面図、図3(B)は、共通液室を介して連通する第1、第2のノズル列の、上方向から見た透視平面図である。
【0044】
以下の説明において、第1の方向(主走査方向)をX方向とし、第1の方向に交差する(例えば直交する)第2の方向(副走査方向)をY方向とし、X、Yの各方向に直交する方向(上下方向)をZ方向とする。
【0045】
また、仮にメディアが第2の方向に沿って移動(搬送)されることを想定したとき、メディアの搬送元の方向を「上流」とし、搬送先の方向を「下流」とすることができる。言い換えれば、印刷ヘッドに対してメディアが第2の方向に沿って相対移動される場合には、メディアの「移動元」の方向を「上流側(+Y)」とし、「移動先」の方向を、「下流側(-Y)」としてもよい。
【0046】
図3(A)において、印刷ヘッド(インクヘッド)42は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色のカラーインクを吐出するサブインクヘッド102、104、106、108を有する。
【0047】
各サブインクヘッドにおけるノズル(インク吐出口)の配置は同じである。以下の説明では、サブインクヘッド102を例にとって説明する
【0048】
サブインクヘッド102は、第1の方向(X方向)に間隔をおいて配置される第1、第2のノズル列NC1、NC2を有する。
【0049】
各ノズル列NC1、NC2は、実際には多数のノズルを備えるが、図3では、説明の便宜上、各ノズル列が5個のノズルを備えるものとして、簡略化して描いている。
【0050】
第1、第2の各ノズル列NC1、NC2の各々は、第1の方向(X方向)と交差する第2の方向(Y方向)に配置される、インクを吐出する複数のノズルN1~N5、N6~N10を備える。
【0051】
図3(B)には、図3(A)のサブインクヘッド102における、第1、第2のノズル列NC1、NC2の具体的な構成例が示されている。なお、図3(B)では、破線の楕円で示される領域Z1に含まれるノズルN1、N6にのみ符号を付しており、他のノズルについては符号を省略している。
【0052】
図示されるように、第1、第2のノズル列NC1、NC2は、共通液室200、ならびにインクが流れる流路204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224を介して連通している。なお、共通液室200には、インク供給口202を介してインクが供給される。また、各流路を、共通液室の構成要素に含めてもよい。
【0053】
次に、図4を参照する。図4は、図3(B)に示される第1、第2のノズル列の構造例を示す断面図である。図4において、図3と共通する部分には、同じ符号を付している。
【0054】
図4では、図3(B)の、破線の楕円で示される領域Z1における断面構造を簡略化して模式的に示している。また、図中の矢印は、サブインクヘッド102の内部におけるインクの流れの典型例を示している。
【0055】
サブインクヘッド102は、ノズルN1用のノズル板240a、ノズルN6用のノズル板240bと、インクの流路を形成する流路隔壁250a、250bと、圧電素子で構成されるアクチュエータ270a、270bと、各アクチュエータ270a、270bによって駆動されて振動する振動板260a、260bと、サブインクヘッド102の容器を構成する容器壁280a、280bと、を有する。各振動板260a、260bの振動による圧力によって、各ノズルN1、N6からインクが吐出される。
【0056】
また、先に説明したように、サブインクヘッド102は、インク供給口202と、共通液室200と、流路204、206、208と、を有する。
【0057】
次に、図5を参照する。図5は、印刷ヘッドの移動に伴い、印刷画像の画像領域の端部(第1の方向における、印刷ヘッドの走査開始端に近い第1の端部)内に、第1のノズル列が進入した状態を示す図である。
【0058】
図5のA-1では、メディア300上に、四角形の画像領域(画像が印刷される領域)302が示されている。
【0059】
また、画像領域302には、第1の方向(X方向)における端部(端部領域)350R、350Lが設定されている。各端部350R、350Lには砂模様が付されている。
【0060】
なお、端部350Rは、第1の端部と称される場合があり、また、端部350Lは、第2の端部と称される場合がある。
【0061】
また、各端部350R、350Lは、図2に示した画質低下判定部66により、印刷画像の形状や印刷ヘッドにおけるノズル配置等を考慮して、適宜、設定される。
【0062】
また、図5のA-1に示されるように、第1の端部350Rの第1の方向(主走査方向)における幅L2は、サブインクヘッド102における第1、第2のノズル列NC1、NC2の第1の方向(主走査方向)における幅L1以上に設定するのが好ましい(この点は、第2の端部においても同様である)。
【0063】
また、図5の例では、画像領域302は、少なくとも第1、第2の各端部(各端部領域)350R、350Lにおいて、同一色のインクが隙間なく塗布されるベタ画像(特に、濃いベタ画像)が形成される領域(ベタ画像領域)であるとする。
【0064】
印刷が開始されると、印刷ヘッド42は、走査開始端P1から第1の方向(+X方向)に沿って、走査終了端P2に向けて移動する。これに伴い、印刷ヘッド42に搭載されるサブインクヘッド102も同様に移動する。以下の説明では、サブインクヘッド102がインクを吐出することを想定して説明する。
【0065】
図5のA-2では、まず、第1のノズル列NC1における全部のノズルN1~N5が、画像領域302の第1の端部350Rの内部に進入しており、したがって、これらのノズルN1~N5の各々からインクが一斉に吐出される。
【0066】
次に、図6を参照する。図6は、印刷ヘッドの移動に伴い、印刷画像の画像領域の端部(第1の方向における、印刷ヘッドの走査開始端に近い第1の端部)内に、第2のノズル列も進入した状態を示す図である。
【0067】
図6のA-1では、図5のA-2を再掲したものである。図6のA-2では、印刷ヘッド42の移動に伴い、第1の端部350R内に、第2のノズル列NC2も進入している。よって、第2のノズル列NC2における全部のノズルN6~N10の各々からインクが一斉に吐出される。つまり、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2においてインク吐出量が大きく変動し、よって、共通液室200を介して連通する第1、第2のノズル列NC1、NC2においてインクの引き合いが生じ、第2のノズル列NC2においてインク不足が生じ、縦スジ等が生じる可能性がある。
【0068】
言い換えれば、第1の端部350Rでは、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2のノズル(N1~N5、N6~N10)を合算したノズル数(10個)に占める、インクが吐出されるノズル数(N1~N10)の割合は100%である。
【0069】
ここで、第1の閾値を80%とすると、求められた(検出された)割合は第1の閾値以上である。よって、先に図2で示した画質低下判定部66は、第1の端部350Rにおいて、画質低下が生じる(言い換えれば、生じる可能性が高い)と判定する。
【0070】
なお、第2の端部(走査終了端側の端部)350Lにおいても同様である(この例については図示しない)。
【0071】
すなわち、サブインクヘッド102が第2の端部350L内にあるときは、言い換えれば、インク吐出終了の直前のタイミングであり、このとき、第1のノズル列NC1における各ノズルN1~N10に供給されるインクの量は急激に減少する。この影響で、第2のノズル列NC2における各ノズルN6~N10においてインクの過剰供給が生じ、縦スジ等の濃度ムラが生じる(言い換えれば、生じる可能性が高い)と判定され得る。
【0072】
上記の場合、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2のノズル(N1~N5、N6~N10)の数を合算したノズル数(10個)に占める、インクの吐出が終了される(言い換えれば、インクの吐出の終了が予定される)ノズル数(N1~N10)の割合は100%である。ここで、求められた(検出された)割合を、上記の第1の閾値(80%)と比較すると、求められた(検出された)割合は第1の閾値以上である。よって、先に図2で示した画質低下判定部66は、第2の端部350Lにて画質低下が生じる(言い換えれば、生じる可能性が高い)と判定する。
【0073】
この場合、印刷画像の画質低下を抑制するために、画像データを回転させて傾かせる画像処理が実施される。以下、この点について説明する。
【0074】
次に、図7を参照する。図7は、印刷画像の画像データ(画像領域)の全体を回転させることによる、第1のノズル列におけるインク吐出量の変動の抑制効果を示す図である。
【0075】
図7のA-1、A-2は、先に説明した図5のA-1、A-2に対応する。図7のA-1では、印刷画像の画像データの回転によって、画像領域302が所定角度(ここでは、時計回りに略15°とする)だけ回転されている。言い換えれば、画像領域302は、Y方向(副走査方向)を基準として略15°だけ傾いている。
【0076】
この結果、第1の端部350R(砂模様が付されている領域)の形状は、図5のA-1と比べて変形され、また、その面積が縮小される。
【0077】
よって、図7のA-2に示すように、第1のノズル列NC1が第1の端部350R内に進入した場合に、インクが吐出されるノズルは、N2、N3の2個である。
図7のA-2では、図5のA-2と比べて、第1のノズル列NC1におけるインク吐出量の変動が十分に抑制されている。
【0078】
次に、図8を参照する。図8は、印刷画像の画像データ(画像領域)の全体を回転させることによる、第2のノズル列におけるインク吐出量の変動の抑制効果を示す図である。
【0079】
図8のA-1、A-2は、先に説明した図6のA-1、A-2に対応する。図8のA-1は、図7のA-2を再掲したものである。
【0080】
図8のA-2では、第2のノズル列NC2が第1の端部350R内に進入した場合に、インクが吐出されるノズルは、N6、N7の2個である。図6のA-2と比べて、第2のノズル列NC2におけるインク吐出量の変動が十分に抑制されている。
【0081】
言い換えれば、図8のA-2に示すように、第1の端部350Rでは、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2のノズル(N1~N5、N6~N10)の数を合算したノズル数(10個)に占める、インクが吐出されるノズル数(N2、N3、N6、N7:合計で4個)の割合は40%であり、第1の閾値(80%)以下となる。よって、画質低下が抑制される。
【0082】
なお、上記の画質低下の抑制効果は、第2の端部350Lにおいても同様に得られる。
【0083】
(第2の実施形態)
本実施形態では、3つの態様の印刷画像を例にとって、マルチパス印刷にてメディアに印刷する場合について説明する。
【0084】
次に、図9を参照する。図9(A)、(B)、(C)は、メディア上における、印刷画像の画像領域の一例を示す図である。
【0085】
図9(A)には、四角形(矩形)の画像領域302(先に図5図6で示したものと同じものとする)が示されている。
【0086】
図9(B)には、メディア300の中央に、比較的大きな星形の画像領域306が設定されている。
【0087】
図9(C)には、メディア300の、第2の方向(Y方向)の上流側に四角形の画像領域308が設定され、また、メディア300の下流側の中央に、比較的小さな星形の画像領域309が設定されている。
【0088】
ここでは、画像領域302、306、308、309の各々は、少なくとも、第1の方向(X方向)における端部がベタ画像(特に、濃いベタ画像)である場合を想定する。各画像の端部については、図10図14を用いて後述する。
【0089】
図10を参照する。図10は、図9(A)に示される画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。図10において、前掲の図面と共通する部分には同じ符号を付している。
【0090】
図10の例では、印刷ヘッド42(言い換えれば、サブインクヘッド102)が、第1の方向(X方向)に沿って一方向に移動する場合の動作を1パスとすると共に、1パス毎に、印刷ヘッド42(サブインクヘッド102)とメディア300との第2の方向(Y方向)における相対的位置関係を、例えば所定の画素数に相当する距離STだけ更新して印刷を実施し、四角形の画像領域302の全体を、mパス(mは2以上の整数であるが、説明の便宜上、図10の例ではm=4とする)で印刷する場合を想定する。
なお、双方向印刷を実施する場合は、印刷ヘッド42は、往路にて一方向に移動し(往路でのパス)、続いてメディアを搬送し、次に復路にて一方向に移動し(復路でのパス)、続いてメディアを搬送する、という制御が実施される。双方向印刷においては、上記の「1パス」は、往路でのパス、復路でのパスの何れであってもよい。
言い換えれば、印刷ヘッドが、第1の方向に沿って、少なくとも1回移動する場合の動作を1パスとする。
【0091】
なお、図10において、1パスに相当する領域311には斜線を施している。
また、図10の右側に示される、1パス目~4パス目の各々に対応するサブインクヘッド102において、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2におけるノズルN1~N5、N6~N10のうち、画像領域302の端部350R、又は350Lにおいてインクを吐出するノズルは、黒で塗りつぶして描かれており、インクを吐出しないノズルは白抜きにて描かれている。この点は、図11図14においても同じである。
【0092】
先に図5図6を用いて説明したように、1パス目において、第1の端部350Rでは、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2のノズル(N1~N5、N6~N10)の数を合算したノズル数(10個)に占める、インクが吐出されるノズル数(N1~N10)の割合は100%である。ここで、求められた(検出された)割合を、上記の第1の閾値(80%)と比較すると、求められた(検出された)割合は第1の閾値以上である。第2~第4パス目においても同様である。
【0093】
ここで、全パス(mパス:ここではm=4)の数に占める、上記の第1の閾値以上と判定されたパスの数(第1~第4のパスの全部)の割合は100%である。第2の閾値を50%とすると、求められた(検出された)割合(100%)は、第2の閾値(50%)以上である。
【0094】
よって、画質低下判定部66は、第1の端部350Rにおいて、画質低下が生じると判定する。第2の端部350Lにおいても同様である。
【0095】
次に、図11を参照する。図11は、図9(B)に示される画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
【0096】
図11において、星形の画像領域306において、第1の方向(X方向)における4つの端部350RU、350RD、350LU、350LDが示されている。ここで、RUは右上、RDは右下、LUは左上、LDは左下を意味する。
【0097】
これらの4つの端部350RU、350RD、350LU、350LDは、インク吐出量変動抑制部64が、画像領域の形状や印刷ヘッドのノズル構成等を考慮し、画質低下が生じやすい箇所として、適宜、設定する。この点は、後述する図12の例においても同様である。
【0098】
また、端部350RU、350RDは、印刷ヘッド42の走査開始端に近い側の端部であるため、先の図5図6の例における「第1の端部」に相当する。また、端部350LU、350LDは、印刷ヘッド42の走査終了端に近い側の端部であるため、先の図5図6の例における「第2の端部」に相当する。
【0099】
図11の例では、端部350RUにおいて、1パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは2個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は20%であり、2パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは2個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は20%である。
【0100】
また、端部350RDにおいて、3パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは2個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は20%である。
【0101】
1パス目、2パス目、及び3パス目の何れにおいても、求められた(検出された)割合(20%)は、第1の閾値(80%)以下である。
【0102】
よって、第1の閾値以上となったパスの数はゼロであり、mパス(m=3)に占める、第1の閾値以上となったパス数の割合は0%である。
【0103】
よって、画質低下判定部66は、第1の端部350RU、350RDにおいて、画質低下が生じないと判定する。第2の端部350LU、350LDにおいても同様である。
【0104】
次に、図12を参照する。図12は、図9(C)に示される画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
【0105】
図12において、メディア300の、第2の方向(Y方向)の上流側(+Y方向)に設定される四角形の画像領域308には、印刷ヘッド42の走査開始端側の端部350Rと、走査終了端側の端部350Lが設定される。
【0106】
また、メディア300における、四角形の画像領域308の下流側、かつ中央に設定される星形の画像領域309には、印刷ヘッド42の走査開始端側の端部350RUと、走査終了端側の端部350LUが設定される。
【0107】
端部350R、350RUは、図5図6の例における「第1の端部」に相当し、端部350L、350LUは、図5図6の例における「第2の端部」に相当する。
【0108】
図11の例では、四角形の画像領域308の端部350Rにおいて、1パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは10個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は100%であり、2パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは8個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は80%である。
【0109】
また、星形の画像領域309における端部350RUにおいて、3パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは4個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は40%であり、4パス目でインクを吐出するノズル数(ここでは2個)が、全ノズル数(10個)に占める割合は20%である。
【0110】
1パス目、2パス目においては、求められた(検出された)割合(100%、80%)は、第1の閾値(80%)以上である。
【0111】
一方、3パス目、4パス目においては、求められた(検出された)割合(40%、20%)は、第1の閾値(80%)以下である。
【0112】
よって、mパス(m=4)に占める、第1の閾値以上となったパス数の割合は50%であり、第2の閾値(50%)以上である。
【0113】
よって、画質低下判定部66は、第1の端部350R、350RUにおいて、画質低下が生じると判定する。第2の端部350L、350LUにおいても同様である。
【0114】
次に、図13を参照する。図13は、図9(A)、図10に示される画像領域を所定角度、時計回りに回転させた画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
【0115】
図13の例では、四角形の画像領域302が、例えば15°~20°程度、時計回りに回転され、これにより、四角形の画像領域302が傾いて配置されている。四角形の画像領域302には、第1の端部350R1、第2の端部350L1が設定されている。以下、第1の端部350R1におけるインク吐出について説明する。
【0116】
1パス目~6パス目の各々において、第1の端部350R1においてインクを吐出するノズルは2個であり、全ノズル数(10個)に占める割合は20%であり、これは、第1の閾値(80%)以下である。つまり、第1の閾値以上となるパスは存在しない。
【0117】
よって、mパス(ここではm=6)に占める、第1の閾値以上のパスの数の割合は0%(すなわち、第2の閾値50%以下)となり、画質低下が抑制される。第2の端部350L1においても同様である。
【0118】
次に、図14を参照する。図14は、図9(C)、図12に示される画像領域を所定角度、時計回りに回転させた画像領域についてマルチパス印刷を行う場合の、各パスでの、画像領域の端部におけるインクを吐出するノズルを示す図である。
【0119】
図14の例では、四角形の画像領域308、及び星形の画像領域309が、例えば15°、時計回りに回転され、これにより、四角形の画像領域308、及び星形の画像領域309が傾いて配置されている。
【0120】
四角形の画像領域309には、第1の端部として、端部350R2、及び350R3が設定され、第2の端部として、端部350L2が設定されている。なお、星形の画像領域309については、端部は設定されていない。
【0121】
以下、四角形の画像領域308における、第1の端部350R2、350R3におけるインク吐出について説明する。
【0122】
1パス目~4パス目の各々において、第1の端部を構成する端部350R2においてインクを吐出するノズルは2個であり、全ノズル数(10個)に占める割合は20%であり、これは、第1の閾値(80%)以下である。
【0123】
また、5パス目において、第1の端部を構成する端部350R3においてインクを吐出するノズルは3個であり、全ノズル数(10個)に占める割合は30%であり、これは、第1の閾値(80%)以下である。
【0124】
よって、1パス目~5パス目の何れにおいても、第1の閾値以上となるパスは存在しない。
【0125】
つまり、mパス(ここではm=5)に占める、第1の閾値以上のパスの数の割合は0%(すなわち、第2の閾値(50%)以下)となり、画質低下が抑制される。第2の端部350L2においても同様である。
【0126】
次に、図15を参照する。図15は、印刷データ生成方法における主要な処理手順を示すフローチャートである。
【0127】
ステップS1において、入力画像の画像データ(印刷対象の画像の画像データ)を取得する。続いて、ステップS2において、入力画像の画像データをRIP処理して印刷データに変換する。
【0128】
ステップS3において、画像領域の端部において、インク吐出量が大きく変動して印刷画像の画質低下が発生するか否かを判定する。
【0129】
ステップS3で、Nのときは、ステップS6に移行して、印刷データが出力される。ステップS3で、Yのときは、ステップS4に移行する。
【0130】
ステップS4では、入力画像の画像データの回転処理が実施される。
【0131】
ステップS5では、回転処理後の画像データをRIP処理して、印刷データに変換する。
【0132】
続いて、ステップS6において、生成された印刷データが出力される。
【0133】
以上説明したように、本発明の第1の態様では、印刷データ生成装置10は、印刷ヘッドが、第1の方向と交差する第2の方向に並んで配置される複数のノズルN1~N5を備える第1のノズル列NC1と、第2の方向に並んで配置される複数のノズルN6~N10を備える第2のノズル列NC2と、を有し、第1、第2の各ノズル列NC1、NC2は、第1の方向に間隔をおいて配置され、かつ共通液室200を介して連通している場合において、印刷ヘッドを用いてメディアに画像を印刷する際の印刷データを生成する印刷データ生成装置であって、画像の画像領域の、前記第1の方向の端部350R、350Lにおいて、第1、第2の各ノズル列のノズルからのインク吐出量が変動することによって画質低下が生じるか否かを判定する画質低下判定部66と、画質低下が生じると判定される場合に、印刷対象である画像の画像データを、所定の角度、又は算出された角度だけ回転させて傾ける画像回転処理部68と、を有する。
【0134】
第1の態様によれば、印刷に先立ち、印刷画像の画像領域の端部で、ノズルからのインク吐出量に大きな変動が生じて印刷画像の画質が低下するか否かを判定(推定)し、画質低下が生じると判定(推定)される場合には、画像データ(例えば画像データの全体)の回転処理によって画像を所定角度(あるいはその都度、印刷ヘッドの特性や印刷画像の形状、使用されるインク等を考慮して算出される角度)だけ傾け、これによって端部における第1、第2のノズル列におけるインク吐出量の大きな変動を抑制することができる。よって、互いに連通する第1、第2のノズル列を備える印刷ヘッド(サブインクヘッド)を使用してメディアに印刷する場合でも、縦スジ(濃度ムラ)等の画質低下の発生を効果的に抑制することができる。
【0135】
第1の態様に従属する第2の態様において、画質低下判定部は、第1、第2の各ノズル列のノズルの数を合算したノズル総数に占める、端部でインクを吐出するノズル数、又は端部でインク吐出を終了するノズル数の割合が第1の閾値以上である場合に、画質低下が生じると判定してもよい。
【0136】
第2の態様によれば、客観的な基準を用いて、画像領域の端部での画質低下の発生の有無を効率的、かつ正確に判定することができる。
【0137】
第1の態様に従属する第3の態様において、印刷ヘッドが、第1の方向に沿って、少なくとも1回移動する場合の動作を1パスとすると共に、1パス毎に、印刷ヘッドとメディアとの第2の方向における相対的位置関係を更新して印刷を実施し、画像領域をmパス(mは2以上の整数)で印刷する場合において、画質低下判定部は、パス毎に、前記第1、第2の各ノズル列のノズルの数を合算したノズル総数に占める、端部でインクを吐出するノズル数、又は前記端部でインクの吐出を終了するノズル数の割合が第1の閾値以上であるか否かを判定し、mパスに占める、第1の閾値以上であったパスの数の割合が第2の閾値以上である場合に、画質低下が生じると判定してもよい。
【0138】
第3の態様によれば、画像領域の全体を印刷するのに必要な全パス数に占める、画質低下が生じると判定されたパス数の割合を用いて、印刷画像の全体における画質低下の発生の程度を客観的、効率的かつ正確に判定することができる。
【0139】
第1の態様に従属する第4の態様において、画質低下判定部による判定は、少なくとも画像領域の端部が、隙間なくインクが塗布されるベタ画像領域である場合に実施されてもよい。
【0140】
第4の態様によれば、縦スジ等の濃度ムラが生じやすい、画像領域の端部におけるベタ画像領域(特に、濃い濃度のベタ画像領域)において、濃度ムラを効果的に抑制することができ、ベタ画像を含む印刷画像の画質を改善することができる。
【0141】
本発明の第5の態様において、印刷データ生成方法は、印刷ヘッドが、第1の方向と交差する第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第1のノズル列と、第2の方向に並んで配置される複数のノズルを備える第2のノズル列と、を有し、第1、第2の各ノズル列は、第1の方向に間隔をおいて配置され、かつ共通液室を介して連通している場合において、印刷ヘッドとメディアとを前記第1の方向に沿って相対移動させて、前記メディアに画像を印刷する際の印刷データを生成する印刷データ生成方法であって、前記画像の画像領域の、前記第1の方向の端部において、前記第1、第2の各ノズル列のノズルからのインク吐出量が変動することによって画質低下が生じるか否かを判定する第1のステップと、画質低下が生じると判定される場合に、印刷対象である画像の画像データを、所定の角度、又は算出された角度だけ回転させて傾ける第2のステップと、前記第2のステップの後の画像データをRIP(Raster Image Processor)処理して印刷データを生成する第3のステップと、を含む。
【0142】
第5の態様によれば、印刷画像の画像領域の端部において縦スジ等のムラが生じる可能性が高い場合でも、画像処理によって、十分に画質低下を抑制することができる。
【0143】
本発明の第6の態様において、印刷用画像処理プログラムは、コンピュータを、第1乃至第4の何れか1つの態様の画質低下判定部、及び画像回転処理部として機能させる。
【0144】
第6の態様によれば、印刷用画像処理プログラムを、コンピュータにインストールすることにより、第5の態様の印刷データ生成方法を容易に実現することができる。
【0145】
以上説明したように、本発明によれば、印刷ヘッドにおける、共通液室を介して連通するノズル列でのインク吐出量の変動を抑制し、印刷画像の画質低下を効果的に抑制することができる。
【0146】
例えば、ポスター等の、背景がベタ塗りされた画像データについては、画像データ全体を例えば、15°~25°程度の範囲で回転させて縦スジ等の発生を抑制し、一方、ステッカーなどの背景がない画像データについては、画像回転処理を実施せずに、その画像データを印刷データとして用いて画像を印刷することができる。よって、印刷システムの高機能化が達成される。また、従来、濃度ムラ等が発生しやすいとされていた濃いベタ画像を、より高精細に印刷することが可能となる。
【0147】
なお、画像データを回転させた場合において、後に、メディアのカッティングが必要になる場合には、その画像データの回転量に対応させてカッティング領域も回転させることで、特に問題は生じない。
【0148】
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々、変形、応用が可能である。
例えば、画像データの回転処理に際して、画像データに、互いに区別し得る複数の画像が含まれる場合には、画像データの全体を一律に回転させずに、複数の画像の各々毎に回転量を異ならせたり、あるいは、一部の画像のみを回転させたりすることもできる。この場合、画像処理の自由度が向上する。
【0149】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0150】
1・・・印刷システム、10・・・印刷データ生成装置(ホストコンピュータ)、12・・・記憶装置(メモリ)、15・・・印刷用画像処理プログラム、16・・・表示部、18・・・キーボード、19・・・マウス、20・・・走査系の構成、21・・・キャリッジ用モータ、22・・・キャリッジ、23・・・位置検出部、30・・・搬送系の構成、31・・・搬送用モータ、32・・・搬送用ローラ、33・・・搬送検出部、40・・・インク吐出系の構成、41・・・印刷ヘッド駆動部、42・・・印刷ヘッド、43・・・インク量検出部、37、44・・・第1、第2のフォルダ、39・・・印刷画像の画像データ(印刷画像データ)、45・・・入力プロファイル、47・・・出力プロファイル、50・・・印刷装置(インクジェットプリンタ等)、60・・・画像データインタフェース(I/F)、62・・・画像データ処理部、64・・・インク吐出量変動抑制部、66・・・画質低下判定部、68・・・画像回転処理部、70・・・回転量算出部、72・・・RIP、73・・・画像データ蓄積部、74・・・色変換部、76・・・画像補正部、78・・・印刷データ出力部、80・・・通信インタフェース(I/F)、82・・・制御部、84・・・走査制御部、85・・・搬送制御部、86・・・駆動部、87・・・インク吐出制御部、88・・・検出部、102、104、106、108・・・サブインクヘッド、200・・・共通液室、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224・・・流路、202・・・インク供給口、240a、240b・・・ノズル板、250a、250b・・・流路隔壁、260a、260b・・・振動板、270a、270b・・・アクチュエータ(圧電素子)、280a、280b・・・容器壁、300・・・メディア、302・・・四角形の画像領域、306、309・・・星形の画像領域、350R・・・第1の端部(第1の端部領域)、350L・・・第2の端部(第2の端部領域)、L11・・・通信線。
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