(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114122
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】発酵システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20250729BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
C02F11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008601
(22)【出願日】2024-01-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】上西 真里
(72)【発明者】
【氏名】大庭 靖史
(72)【発明者】
【氏名】幸長 亮太
(72)【発明者】
【氏名】古田 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】武本 高明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】西野 寛志
(72)【発明者】
【氏名】谷 賢二
(72)【発明者】
【氏名】中山 直紀
(72)【発明者】
【氏名】井関 芳和
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004BA03
4D004CA18
4D004CB04
4D004CB05
4D004CB42
4D004CB43
4D004CB45
4D004CC03
4D004CC07
4D059AA01
4D059AA23
4D059BA12
4D059BA34
4D059BD00
4D059BE01
4D059BJ00
4D059BK08
4D059CA01
4D059CA14
4D059CB01
(57)【要約】
【課題】簡素化が可能であり、レイアウト変更や生産量の変動にも容易に対応が可能な発酵システムを提供する。
【解決手段】原料2を発酵させるための発酵システム1であり、開口部11、及び開口部11を密閉する蓋12を有する複数の発酵槽10と、複数の発酵槽10を収容する発酵棚30とを備え、発酵槽10に原料2を投入する原料投入ポジションP1と、発酵棚10が配置されると共に、発酵棚10に収容された発酵槽30において原料2を発酵させる発酵ポジションP2と、発酵後の発酵後原料を排出する発酵後原料排出ポジションP3とがそれぞれ異なる位置に配置されており、発酵槽10は、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3の間を移動自在であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を発酵させるための発酵システムであって、
開口部、及び前記開口部を密閉する蓋を有する複数の発酵槽と、
前記複数の発酵槽を収容する発酵棚と、
を備え、
前記発酵槽に前記原料を投入する原料投入ポジションと、
前記発酵棚が配置されると共に、前記発酵棚に収容された前記発酵槽において前記原料を発酵させる発酵ポジションと、
発酵後の発酵後原料を排出する発酵後原料排出ポジションと、
がそれぞれ異なる位置に配置されており、
前記発酵槽は、前記原料投入ポジション、前記発酵ポジション、及び前記発酵後原料排出ポジションの間を移動自在であることを特徴とする発酵システム。
【請求項2】
前記発酵棚が、前記複数の発酵槽を保持する発酵槽保持部を備えており、
前記発酵槽保持部は、前記複数の発酵槽から発生するバイオガスを回収するバイオガス回収配管が配設されており、
前記複数の発酵槽は、前記バイオガス回収配管を接続するための接続部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の発酵システム。
【請求項3】
前記接続部材は、前記発酵槽が前記発酵棚の所定位置に載置されることに連動して前記バイオガス回収配管に接続されることを特徴とする請求項2に記載の発酵システム。
【請求項4】
前記原料投入ポジションにおいて前記発酵槽に投入された前記原料は、前記発酵後原料排出ポジションにおいて、全量排出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発酵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物等の原料を発酵させて処理する発酵システムに関する。さらに詳しくは、有機性廃棄物等の原料を発酵させてメタンガス等のバイオガスを回収する発酵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッチ式のメタン発酵用発酵槽が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のメタン発酵用発酵槽は、1つの撹拌装置を利用して複数の発酵槽内の発酵原料の前処理を行うことで、設備を共通化し設備費用の低減を図るものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッチ式の発酵用プラントでは、さらなるバイオガス回収の効率化や設備のコスト削減などの要請があり、特許文献1に記載の従来技術のより一層の効率化が求められている。しかしながら、上述した特許文献1に記載のメタン発酵用発酵槽は、バッチ式ではあるものの発生するバイオガス(例えば、メタンガス)の回収や発酵槽を適温に保つための手段等を具体的に開示するものではない。
【0005】
そこで本発明は、簡素化が可能であり、レイアウト変更や生産量の変動にも容易に対応が可能な発酵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の発酵システムは、原料を発酵させるための発酵システムであって、開口部、及び前記開口部を密閉する蓋を有する複数の発酵槽と、前記複数の発酵槽を収容する発酵棚と、を備え、前記発酵槽に前記原料を投入する原料投入ポジションと、前記発酵棚が配置されると共に、前記発酵棚に収容された前記発酵槽において前記原料を発酵させる発酵ポジションと、発酵後の発酵後原料を排出する発酵後原料排出ポジションと、がそれぞれ異なる位置に配置されており、前記発酵槽は、前記原料投入ポジション、前記発酵ポジション、及び前記発酵後原料排出ポジションの間を移動自在であることを特徴とするものである。
【0007】
上述した発酵システムは、原料投入ポジション、発酵ポジション、及び発酵後原料排出ポジションが、それぞれ異なる位置に配置されており、複数の発酵槽がそれぞれ原料投入ポジション、発酵ポジション、及び発酵後原料排出ポジションの間で移動自在とされている。そのため、上述した発酵システムは、複数の発酵槽で個別に発酵処理を行うことができる。これにより、上述した発酵システムは、一部の発酵槽に異常が生じた場合であっても、他の発酵槽により、バイオガス(例えば、メタンガス)を回収することができる。異常が生じた発酵槽は、例えば、他の正常な発酵槽と交換するようにすれば、発酵システムの稼働効率が低下することを抑制できる。ここで、上述した発酵システムは、原料として、含水率が低い(例えば、含水率が90%以下)肉牛の牛糞や含水率が高い(例えば、含水率が90%を超える)乳牛の牛糞など、各種の水分量の有機性廃棄物を原料として利用できる。すなわち、上述した発酵システムは、いわゆる乾式発酵(原料含水率が90%以下)及び湿式発酵(原料含水率が90%を超える)のいずれにおいても利用できる。
【0008】
また、上述した発酵システムは、複数の発酵槽がそれぞれ原料投入ポジション、発酵ポジション、及び発酵後原料排出ポジションの間を移動自在であるので、各ポジション間に配管を設ける必要がない。そのため、上述した発酵システムは、配管設置に掛かるコストや配管詰まり等によるメンテナンス費用を低減することができる。また、上述した発酵システムは、配管詰まり等により、発酵システムが停止することを抑制できる。これにより、上述した発酵システムは、システム稼働を維持することができるので、効率良く原料の発酵処理を行うことができ、効率良くメタンガス等のバイオガスを回収することができる。また、上述した発酵システムは、発酵槽を増設するだけで容易にプラントの拡充を行うことができる。そのため、上述した発酵システムは、原料の処理量が増加した場合であってもコストを掛けることなくプラントを拡充することができる。このように、上述した発酵システムは、大型の発酵槽を設ける必要がないので、コスト低減を図ることができ、発酵プラントの増大・縮小を容易に行うことができる。
【0009】
(2)上述した本発明の発酵システムは、前記発酵棚が、前記複数の発酵槽を保持する発酵槽保持部を備えており、前記発酵槽保持部は、前記複数の発酵槽から発生するバイオガスを回収するバイオガス回収配管が配設されており、前記複数の発酵槽は、前記バイオガス回収配管を接続するための接続部材を備えることを特徴とするとよい。
【0010】
上述した発酵システムは、複数の発酵槽は、発酵槽保持部に配設されたバイオガス回収配管に接続される接続部材を備えているので、それぞれの発酵槽で発生したバイオガスを、バイオガス回収配管に集約して排出することができる。そのため、上述した発酵システムは、バイオガスの回収に係るバイオガス回収配管の配設を簡素化することができ、配管に係るコストを低減することができる。
【0011】
(3)上述した本発明の発酵システムにおいて、前記接続部材は、前記発酵槽が前記発酵棚の所定位置に載置されることに連動して前記バイオガス回収配管に接続されることを特徴とするとよい。
【0012】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、容易に発酵槽と発酵棚におけるバイオガス回収配管とを接続することができる。そのため、上述した発酵システムは、自動化が容易に行える。ここで、接続部材は、例えば、発酵棚に設けられる接続アダプタと、発酵槽に設けられる被接続アダプタとで構成することができる。さらに、上述した発酵システムは、例えば、発酵槽と発酵棚との間に動力として例えば油圧シリンダ等の付勢手段を設けておき、発酵槽の自重で油圧シリンダを油圧に抗して押し下げると共に、当該油圧でバイオガス回収配管を押し下げてバイオガス回収配管を発酵槽に接続するように構成するとよい。かかるように構成することで、上述した発酵システムは、油圧を利用して、容易に発酵槽とバイオガス回収配管とを接続できる。
【0013】
(4)上述した本発明の発酵システムは、前記接続部材及び前記バイオガス回収配管が、水上置換を介して接続されることを特徴とするとよい。
【0014】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、接続部材における配管を例えば、水上置換用の水槽等に挿入するだけで、接続部材及びバイオガス回収配管を容易に接続することができる。そのため、上述した発酵システムは、接続部材における配管やバイオガス回収配管等の配管経路を簡素化することができる。
【0015】
(5)上述した本発明の発酵システムは、前記原料投入ポジションにおいて前記発酵槽に投入された前記原料が、前記発酵後原料排出ポジションにおいて、全量排出されることを特徴とするとよい。
【0016】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、原料投入ポジション、発酵ポジション、及び発酵後原料排出ポジションの間における原料、発酵後原料、及び発酵後残渣等を搬送するための配管やポンプを最小限で構成できる、または、設ける必要がない。そのため、上述した発酵システムは、配管詰まり等によるメンテナンス費用を低減することができる。また、上述した発酵システムは、配管詰まり等により、発酵システムが停止することを抑制できる。これらにより、上述した発酵システムは、システム稼働を維持することができるので、効率良く、原料の発酵処理を行うことができる。
【0017】
(6)上述した本発明の発酵システムにおいて、前記発酵棚は、収容された前記発酵槽を加温する加温部を有することを特徴とするとよい。
【0018】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、発酵棚に収容された発酵槽を発酵に適した温度(例えば、35~40℃、より好ましくは37℃)に加温することができる。これにより、上述した発酵システムは、効率良く原料を発酵させて、効率良くバイオガス(例えば、メタンガス)を取り出すことができる。また、上述した発酵システムは、発酵槽を個々の原料に合う発酵温度に加温できることを特徴とするとよい。
【0019】
(7)上述した本発明の発酵システムは、前記発酵槽保持部が、断熱部を有することを特徴とするとよい。
【0020】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、発酵棚(発酵槽保持部)が、外部環境(外部温度)の影響を受けることを抑制できるので、発酵棚を発酵に適した温度に保つことができる。
【0021】
(8)上述した本発明の発酵システムは、前記発酵後原料排出ポジションにおいて排出された前記発酵後原料を濾過することにより固液分離する固液分離ポジションを備え、前記固液分離ポジションにおいて固液分離された消化液が、前記原料投入ポジションにおいて前記原料に添加されることを特徴とするとよい。
【0022】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、固液分離ポジションにおいて固液分離された消化液(例えば、メタン菌を含む)を再利用することができる。これにより、上述した発酵システムは、原料コストを低減することができ、原料の廃棄コストや処理に伴う廃棄物も低減することができる。そのため、上述した発酵システムは、環境負荷低減に、より一層の貢献が期待できる。
【0023】
(9)上述した本発明の発酵システムは、前記発酵後原料排出ポジションにおいて排出された前記発酵後原料を濾過することにより固液分離する固液分離ポジションと、前記固液分離ポジションにおいて固液分離された発酵後残渣を乾燥させる残渣乾燥ポジションと、を備え、前記残渣乾燥ポジションにおいて、前記発酵後残渣を乾燥させることにより乾燥ペレットが生成されることを特徴とするとよい。
【0024】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、固液分離ポジションにおいて固液分離された発酵後残渣を乾燥ペレット化することができる。ここで、乾燥ペレットは、堆肥等として利用することができるので、原料の廃棄コストや処理に伴う廃棄物も低減することができる。そのため、上述した発酵システムは、環境負荷低減に、一層の貢献が期待できる。
【0025】
(10)上述した本発明の発酵システムは、前記原料における含水率が90%以下であり、乾式発酵により、前記原料が発酵されることを特徴とするとよい。
【0026】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、固液分離で分離される廃液としての水分を減じることができる。そのため、上述した発酵システムは、廃液処理のために大型の水処理装置を設ける必要がないので、設備コストの低減が期待できる。
【0027】
(11)上述した本発明の発酵システムにおいて、前記発酵棚は、収容された前記発酵槽を加温する加温部を有しており、前記バイオガス回収配管が、部材を加熱する加熱炉に接続されており、前記加熱炉は、前記バイオガスを燃料として供給するガス供給部と、前記加熱炉を冷却するための冷却水を循環させる冷却水供給部と、冷却に供された後の回収冷却水を排出する回収冷却水排出部と、を備え、前記加温部は、前記発酵棚を加温するための加温水を供給する加温水供給部を備え、前記ガス供給部には、前記バイオガス回収配管が直接的又は間接的に接続されており、前記回収冷却水排出部が、前記加温水供給部に接続されることにより、前記回収冷却水が前記加温水として前記加温部に供給されることを特徴とするとよい。
【0028】
上述した発酵システムでは、発酵槽で発生させたバイオガス(例えば、メタンガス)が加熱炉の加熱用の燃料として利用される。また、上述した発酵システムは、加熱炉の冷却に供された冷却水(温水)が、発酵棚における加温部の加温水として供給される。また、上述した発酵システムは、発酵棚の加温部に供給された加温水を利用して、発酵棚に収容された発酵槽が加温される。このように、上述した発酵システムでは、バイオガスが、加熱炉の加熱用燃料として利用されると共に、加熱炉の冷却水が、発酵槽の加温として利用される。さらに、発酵槽における発酵後原料は、固液分離されて消化液及び乾燥ペレットとして再利用される。このように、上述した発酵システムは、有機性廃棄物等の処理を効率的に行うことができるので、環境負荷の少ない発酵プラントを提供することができる。
【0029】
(12)上述した本発明の発酵システムにおいて、前記原料は、含水率が40~70%の牛糞を250~300重量部と、前記発酵ポジションにおける発酵後の前記原料を固液分離することにより回収され、含水率が70~80%の消化液を65~150重量部と、水を150~285重量部と、を含み、全体として含水率が75~90%かつ590~610重量部となるように調製されたものであることを特徴とするとよい。
【0030】
上述した発酵システムは、かかる構成とすることにより、有機性廃棄物(牛糞)の処理を効率的に行って、バイオガス(メタンガス)を効率的に回収できる。また、上述した発酵システムは、含水率が比較的低い牛糞を利用した乾式発酵を利用することにより、処理において発生する水(廃水)を減じることができる。そのため、上述した発酵システムは、廃液処理のために大型の水処理装置を設ける必要がないので、設備コストの低減が期待できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、簡素化が可能であり、レイアウト変更や生産量の変動にも容易に対応が可能な発酵システムを提供することができる。また、本発明によれば、発酵槽を個別管理することで多種類の原料を個別管理することが可能な発酵システムを提供することができる。また、本発明によれば、個々の材料廃棄物に対して最適な原料投入ポジション、発酵ポジション、及び発酵後原料排出ポジションを設定可能であると共に、これらの各ポジションにおける最適条件を設定可能な発酵システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発酵システム概略を示す全体説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る発酵システムで発生させたメタンガスを加熱炉で利用する場合の一実施形態を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の発酵システムを構成する発酵槽をバイオガス回収配管に接続する場合の一実施形態を表す模式図である。
【
図4】本発明の発酵システムを構成する発酵槽をバイオガス回収配管に接続する場合の変形例に係る模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る発酵システム1について、図面を参照しつつ詳細を説明する。なお、各図は、理解が容易なように模式的に表したものであり、実際の形状・サイズや構成部品の配置とは異なる場合があることに留意されたい。
【0034】
図1は、本発明の発酵システム1の一実施形態を示す概略全体説明図である。発明の発酵システム1は、牛糞等からなる有機性廃棄物等としての原料2を発酵させるためのものとされている。原料2は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、含水率が90%以下の肉牛の牛糞が利用される。原料2には、牛糞の他、メタン菌を含む消化液、及び水分量を調整するための水が含まれている。原料2の混合比の詳細は後述する。
【0035】
発酵システム1は、複数の発酵槽10、発酵棚30、及び発酵槽10を搬送する搬送装置40等を備えている。発酵システム1は、前記の他、原料2を混錬する混合槽3、発酵後原料を固液分離する濾過装置4、発酵後残渣を乾燥させる乾燥機5、脱湿機6、及び脱硫機7等を備えている。また、発酵システム1では、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3がそれぞれ異なる位置に配置されている。また、発酵システム1は、前記の他、固液分離ポジションP4及び残渣乾燥ポジションP5が配置されている。
【0036】
まず、各ポジションの概略及び発酵システム1の概略について説明する。原料投入ポジションP1では、原料置き場60に供給された原料2が、搬送装置40によって搬入されるものとされている。原料投入ポジションP1には、混合槽3が配置されている。原料投入ポジションP1では、混合槽3に複数の組成からなる原料2が投入され、投入された原料2が混錬される。また、混錬された原料2は、発酵槽10に投入される。原料投入ポジションP1において原料2が投入された発酵槽10は、搬送装置40によって発酵ポジションP2に搬送される。
【0037】
発酵ポジションP2は、発酵槽10を収容する発酵棚30を備えている。発酵槽10は、搬送装置40によって搬送され、発酵棚30に収容される。発酵ポジションP2では、発酵槽10が加温され、原料2の発酵処理が行われる。また、発酵ポジションP2では、発生したバイオガスがバイオガス回収配管15を通じて回収される。発酵処理が完了した発酵槽10は、搬送装置40によって、発酵後原料排出ポジションP3に搬送される。発酵後原料排出ポジションP3では、発酵槽10において発酵処理された発酵後原料が排出され、濾過装置4に搬送される。排出された発酵後原料は、固液分離ポジションP4に搬送される。
【0038】
固液分離ポジションP4には、濾過装置4が配置されており、濾過装置4において発酵後原料が、濾過により固液分離される。固液分離された発酵後原料のうち、液体成分の消化液(メタン菌を含む)は、消化液調整部65で濃度調製された後、再び原料投入ポジションP1における混合槽3に供給される。また、固液分離された発酵後原料のうち発酵後残渣は、残渣乾燥ポジションP5に搬送される。残渣乾燥ポジションP5には、乾燥機5が配置されており、乾燥機5によって発酵後残渣が乾燥される。残渣乾燥ポジションP5では、乾燥された発酵後残渣がペレット化されることにより、乾燥ペレット2Aが生成される。以上が、本発明の発酵システム1の全体処理の概要であり、次に発酵システム1の構成の詳細について説明する。
【0039】
図1に示すように、混合槽3は、原料投入ポジションP1に配置されている。混合槽3(
図3参照)は、上方側が開口されており、開口を通じて原料2を投入することができる。ここで、原料2の混合比は、例えば、含水率が40~70%の牛糞(例えば、肉牛の牛糞)を250~300重量部と、発酵ポジションP2における発酵後の原料2を固液分離することにより回収され、含水率が70~80%の消化液を65~150重量部と、水を150~285重量部と、を含み、全体として含水率が75~90%かつ590~610重量部となるように調製するとよい。また、原料2は、含水率が90%以下(より好ましくは、含水率が80%)であることが望ましい。これにより、原料2が、乾式発酵で発酵される。混合槽3には、撹拌装置(図示せず)が設けられており、投入された原料2を撹拌して混錬することができる。また、混合槽3の下方側には、混錬された原料2を排出する排出口(図示せず)が設けられている。排出口は、ドレンバルブ(図示せず)を有し、ドレンバルブの開閉により原料2の排出を適時行うことができる。また、排出口の下方側には、後述する搬送装置40によって搬送される発酵槽10を位置させることができる。
【0040】
発酵槽10は、矩形状の箱体として形成されており、上部側に例えば矩形状などに開口された開口部11を備えている。発酵槽10は、原料投入ポジションP1において開口部11から原料2を投入することができる。また、発酵槽10は、開口部11を密閉するための蓋12(
図3参照)を有している。また、本実施形態では、発酵槽10が複数設けられている。発酵槽10は、内部に投入された原料2を発酵させることができる。
【0041】
図3に示すように、蓋12は、開閉自在とされている。蓋12は、例えば、ヒンジにより開閉可能なものや着脱式のもの、あるいはシャッター式のものなど、各種の形態のものが利用できる。蓋12は、適宜のシール部材(図示せず)により、発酵槽10の開口部11を密閉することができる。蓋12は、発酵槽10の内部で発生するバイオガスを排出するための貫通孔13が形成されている。詳細は後述するが、貫通孔13には、接続部材20を介してバイオガス回収配管15が接続される。
【0042】
図1に示すように、発酵棚30は、発酵ポジションP2に複数(本実施形態では、3つ)配置されている。発酵棚30は、例えば、上下3段(図示では1段のみ記載)に形成された発酵槽保持部31を25セット備えている。すなわち、発酵棚30は、75セットの発酵槽保持部31を備えている。
【0043】
発酵槽保持部31は、発酵槽10を保持して収容するものとされている。発酵槽保持部31には、複数の発酵槽10から発生するバイオガスを回収するバイオガス回収配管15が配設されている。また、発酵槽保持部31(発酵棚30)は、収容された発酵槽10を加温する加温部35(
図2参照)を備えている。また、発酵槽保持部31は、加温部35からの熱を発酵槽10に伝達すると共に、加温部35以外の外部からの熱を断熱する断熱部33を備えている。したがって、発酵槽保持部31は、発酵槽10を所定の温度(例えば、37℃)に加温しつつ、発酵槽10を保温することができる。
【0044】
図2に示すように、加温部35は、本実施形態では、発酵棚30を加温するための温水(加温水)を循環させる循環流路35Aとして形成されている。加温部35は、加温水を供給する加温水供給部36を備えている。本実施形態では、加温水として後述する加熱炉50の冷却水が利用されている。なお、加温部35は、必要に応じて、循環流路35Aに代え、又は循環流路35Aと共に電熱ヒータ等で構成されていてもよい。
【0045】
図1に示すように、搬送装置40は、発酵槽10を保持して搬送することができる。搬送装置40は、移動自在に構成されており、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、発酵後原料排出ポジションP3、及び固液分離ポジションP4の間を自在に移動することができる。搬送装置40は、本実施形態では複数台設けられている。また、搬送装置40は、適宜のロボットアームを備え、発酵槽10を上下動及び水平動させることができる。したがって、搬送装置40は、発酵槽10を原料投入ポジションP1から発酵ポジションP2に搬送して、発酵槽保持部31上に載置することができる。
【0046】
図3に示すように、接続部材20は、貫通孔13とバイオガス回収配管15とを接続するアダプタを構成するものとされている。接続部材20は、本実施形態では、蛇腹状のクッションゴムとして形成されており、バイオガス回収配管15の先端部に取り付けられている。接続部材20は、後述する接続機構25により押圧することができる。接続部材20は、押圧により蓋12の貫通孔13に向けて移動することができる。
【0047】
接続機構25は、油圧シリンダ26と、油圧シリンダ26の油圧を伝達する油圧配管27等を備えている。油圧シリンダ26は、発酵棚30(発酵槽保持部31)の上面側に突出するように立設されている。油圧シリンダ26は、発酵槽保持部31上に発酵槽10が載置されると、発酵槽10の自重により圧縮される。
【0048】
油圧配管27は、発酵棚30の上部側に設けられたスピンドル(図示せず)に接続されており、油圧によりスピンドルを上下動させることができる。スピンドルは、バイオガス回収配管15に接続されており、バイオガス回収配管15を上下動させることができる。したがって、油圧シリンダ26が、発酵槽10の自重により圧縮されると、油圧が油圧配管27を通じてスピンドルに伝達され、バイオガス回収配管15が蓋12の貫通孔13に向けて押圧される。これにより、接続部材20を介して、蓋12の貫通孔13とバイオガス回収配管15が接続される。言い換えると、接続部材20は、発酵槽10が発酵棚30の所定位置(発酵槽保持部31)に載置されることに連動してバイオガス回収配管15に接続される。
【0049】
バイオガス回収配管15は、一端側が複数の発酵槽10に接続され、それぞれの発酵槽10内で発生するバイオガス(メタンガス)を回収することができる。
図1に示すように、複数の発酵槽10に接続されたバイオガス回収配管15は、1本の配管として集約され、集約された他端側が脱湿機6に接続されている。また、バイオガス回収配管15は、脱湿機6を経由して脱硫機7に接続されている。ここで、脱湿機6は、バイオガス中に含まれる水分を除去して乾燥させるものである。また、脱硫機7は、バイオガス中に含まれる硫黄分を除去するものである。
【0050】
バイオガス回収配管15は、脱硫機7を経由してガスパック8,8に貯留される。詳細は後述するが、ガスパック8,8は、
図2に示すように、加熱炉50のガス供給部51に接続されている。
【0051】
加熱炉50は、例えば、各種の金属等の部材を溶解する溶解炉とされている。加熱炉50は、加熱するための燃料としてのバイオガス(メタンガス)を供給するためのガス供給部51を備えている。また、加熱炉50は、冷却するための冷却水を供給する冷却水供給部52と、冷却に供された後の回収冷却水を排出する回収冷却水排出部55等を備えている。
【0052】
ガス供給部51には、ガスパック8,8におけるガス供給管8Aが接続されている。言い換えると、ガス供給部51にバイオガス回収配管15が間接的に接続されている。したがって、ガス供給部51には、発酵槽10から排出されたバイオガスが燃料として供給される。
【0053】
冷却水供給部52は、図示しない適宜のチラー等に接続されており、冷却水を供給することができる。冷却水供給部52は、循環流路53の上流側に接続されており、冷却水を循環流路53に供給することができる。また、循環流路53は、下流側が回収冷却水排出部55に接続されている。したがって、冷却水供給部52に供された後の回収冷却水は、循環流路53に供給され、加熱炉50の冷却に供された後、回収冷却水として回収冷却水排出部55から排出される。
【0054】
回収冷却水排出部55には、冷却水排出用配管56が接続されている。冷却水排出用配管56は、発酵棚30における加温水供給部36に接続されている。また、冷却水排出用配管56は、中間に送液ポンプ57が設けられている。したがって、加温水供給部36には、加熱炉50の冷却に供された後の回収冷却水(加温水)が供給される。このように、本発明の発酵システム1においては、回収したバイオガスが、加熱炉50の燃料として利用され、加熱炉50の冷却に供された回収冷却水が加温水として発酵槽10の発酵のための加温に利用される。加温水は、発酵棚30における循環流路35Aにより循環された後、加温水排出部58から排出される。図示を省略するが、加温水排出部58から排出された加温水は、再びチラーに送液され冷却される。
【0055】
図1に示すように、固液分離ポジションP4には、濾過装置4が設けられている。濾過装置4は、適宜のフィルタ(図示せず)を備えており、発酵槽10から排出された発酵後原料を濾過して固液分離することができる。本実施形態では、発酵後原料排出ポジションP3において、発酵槽10における発酵後原料の全量が取り出されて(排出されて)固液分離ポジションP4における濾過装置4に搬送装置40等によって供されるものとされている。ここで、濾過装置4による固液分離では、液体成分として消化液(メタン菌を含む)が分離され、固体成分として発酵後残渣が分離される。
【0056】
濾過装置4には、消化液を送液する消化液送液管4Aが接続されている。消化液送液管4Aは、消化液調整部65を介して混合槽3に接続されており、濃度調製された消化液を混合槽3に投入(添加)することができる。消化液送液管4Aは、必要に応じバルブや送液ポンプを設けることができる。
【0057】
消化液調整部65は、回収された消化液に水分を添加したり、メタン菌を追加したりすることで、消化液の濃度を調整するものとされている。濃度調製された消化液は混合槽3に繋がる消化液送液管4Aを介して混合槽3に投入される。
【0058】
乾燥機5は、残渣乾燥ポジションP5に配置されている。乾燥機5は、固液分離された発酵後残渣を加熱することができる。乾燥機5において乾燥された発酵後残渣は、ペレット化され乾燥ペレット2Aが生成される。ここで、乾燥ペレット2Aは、堆肥等として再利用することができる。このように、本発明の発酵システム1は、廃棄物を大幅に減じることができるので、環境負荷を低減できる。
【0059】
乾燥ペレット2Aは、搬送装置40によって、乾燥ペレット置き場61に搬送される。本実施形態では、乾燥ペレット置き場61に搬送された乾燥ペレット2Aが、適宜の車両等で出荷される。
【0060】
以上が、本発明の発酵システム1の一実施形態である。次に、本発明の発酵システム1により実現される作用効果について、以下に説明する。
【0061】
上述した発酵システム1は、以下の(A)~(K)のような特徴的構成を備えている。そのため、本発明の発酵システム1は、以下のような従来技術では達し得ない特有の効果を奏することができる。
【0062】
(A)本実施形態の発酵システム1は、原料2を発酵させるための発酵システム1であって、開口部11、及び開口部11を密閉する蓋12を有する複数の発酵槽10と、複数の発酵槽10を収容する発酵棚30と、を備え、発酵槽10に原料2を投入する原料投入ポジションP1と、発酵棚30が配置されると共に、発酵棚30に収容された発酵槽10において原料2を発酵させる発酵ポジションP2と、発酵後の発酵後原料を排出する発酵後原料排出ポジションP3と、がそれぞれ異なる位置に配置されており、発酵槽10は、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3の間を移動自在であることを特徴とするものである。
【0063】
上述した発酵システム1は、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3が、それぞれ異なる位置に配置されており、複数の発酵槽10がそれぞれ原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3の間で移動自在とされている。そのため、上述した発酵システム1は、複数の発酵槽10で個別に発酵処理を行うことができる。これにより、上述した発酵システム1は、一部の発酵槽10に異常が生じた場合であっても、他の発酵槽10により、バイオガス(例えば、メタンガス)を回収することができる。異常が生じた発酵槽10は、例えば、他の正常な発酵槽10と交換するようにすれば、発酵システム1の稼働効率が低下することを抑制できる。ここで、上述した発酵システム1は、原料2として、含水率が低い(例えば、含水率が90%以下)肉牛の牛糞や含水率が高い(例えば、含水率が90%を超える)乳牛の牛糞など、各種の水分量の有機性廃棄物を原料2として利用できる。すなわち、上述した発酵システム1は、いわゆる乾式発酵(原料含水率が90%以下)及び湿式発酵(原料含水率が90%を超える)のいずれにおいても利用できる。
【0064】
また、上述した発酵システム1は、複数の発酵槽10がそれぞれ原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3の間を移動自在であるので、各ポジション間に配管を設ける必要がない。そのため、上述した発酵システム1は、配管設置に掛かるコストや配管詰まり等によるメンテナンス費用を低減することができる。また、上述した発酵システム1は、配管詰まり等により、発酵システム1が停止することを抑制できる。これにより、上述した発酵システム1は、システム稼働を維持することができるので、効率良く原料2の発酵処理を行うことができ、効率良くメタンガス等のバイオガスを回収することができる。また、上述した発酵システム1は、発酵槽10を増設するだけで容易にプラントの拡充を行うことができる。そのため、上述した発酵システム1は、原料2の処理量が増加した場合であってもコストを掛けることなくプラントを拡充することができる。このように、上述した発酵システム1は、大型の発酵槽10を設ける必要がないので、コスト低減を図ることができ、発酵プラントの増大・縮小を容易に行うことができる。
【0065】
(B)本実施形態の発酵システム1は、発酵棚30が、複数の発酵槽10を保持する発酵槽保持部31を備えており、発酵槽保持部31は、複数の発酵槽10から発生するバイオガスを回収するバイオガス回収配管15が配設されており、複数の発酵槽10は、バイオガス回収配管15を接続するための接続部材20を備えることを特徴とするものである。
【0066】
上述した発酵システム1は、複数の発酵槽10は、発酵槽保持部31に配設されたバイオガス回収配管15に接続される接続部材20を備えているので、それぞれの発酵槽10で発生したバイオガスを、バイオガス回収配管15に集約して排出することができる。そのため、上述した発酵システム1は、バイオガスの回収に係るバイオガス回収配管15の配設を簡素化することができ、配管に係るコストを低減することができる。
【0067】
(C)本実施形態の発酵システム1において、接続部材20は、発酵槽10が発酵棚30の所定位置に載置されることに連動してバイオガス回収配管15に接続されることを特徴とするものである。
【0068】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、容易に発酵槽10と発酵棚30におけるバイオガス回収配管15とを接続することができる。そのため、上述した発酵システム1は、自動化が容易に行える。ここで、接続部材20は、例えば、発酵棚30に設けられる接続アダプタと、発酵槽10に設けられる被接続アダプタとで構成することができる。さらに、上述した発酵システム1は、例えば、発酵槽10と発酵棚30との間に油圧シリンダ26を設けておき、発酵槽10の自重で油圧シリンダ26を油圧に抗して押し下げると共に、当該油圧でバイオガス回収配管15を押し下げてバイオガス回収配管15を発酵槽10に接続するように構成するとよい。かかるように構成することで、上述した発酵システム1は、油圧を利用して、容易に発酵槽10とバイオガス回収配管15とを接続できる。
【0069】
(D)本実施形態の発酵システム1は、原料投入ポジションP1において発酵槽10に投入された原料2が、発酵後原料排出ポジションP3において、全量排出されることを特徴とするものである。
【0070】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、及び発酵後原料排出ポジションP3の間における原料2、発酵後原料、及び発酵後残渣等を搬送するための配管やポンプを最小限で構成できる、または、設ける必要がない。そのため、上述した発酵システム1は、配管詰まり等によるメンテナンス費用を低減することができる。また、上述した発酵システム1は、配管詰まり等により、発酵システム1が停止することを抑制できる。これらにより、上述した発酵システム1は、システム稼働を維持することができるので、効率良く、原料2の発酵処理を行うことができる。
【0071】
(E)本実施形態の発酵システム1において、発酵棚30は、収容された発酵槽10を加温する加温部35を有することを特徴とするものである。
【0072】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、発酵棚30に収容された発酵槽10を投入した原料2の発酵に適した温度(例えば、35~40℃、より好ましくは37℃)に加温することができる。これにより、上述した発酵システム1は、効率良く原料2を発酵させて、効率良くバイオガス(例えば、メタンガス)を取り出すことができる。また、上述した発酵システム1は、発酵槽10を個々の原料2に合う発酵温度に加温できることを特徴とするとよい。
【0073】
(F)本実施形態の発酵システム1は、発酵槽保持部31が、断熱部33を有することを特徴とするものである。
【0074】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、発酵棚30(発酵槽保持部31)が、外部環境(外部温度)の影響を受けることを抑制できるので、発酵棚30を発酵に適した温度に保つことができる。
【0075】
(G)本実施形態の発酵システム1は、発酵後原料排出ポジションP3において排出された発酵後原料を濾過することにより固液分離する固液分離ポジションP4を備え、固液分離ポジションP4において固液分離された消化液が、原料投入ポジションP1において原料2に添加されることを特徴とするものである。
【0076】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、固液分離ポジションP4において固液分離された消化液(例えば、メタン菌を含む)を再利用することができる。これにより、上述した発酵システム1は、原料コストを低減することができ、原料2の廃棄コストや処理に伴う廃棄物も低減することができる。そのため、上述した発酵システム1は、環境負荷低減に、より一層の貢献が期待できる。
【0077】
(H)本実施形態の発酵システム1は、発酵後原料排出ポジションP3において排出された発酵後原料を濾過することにより固液分離する固液分離ポジションP4と、固液分離ポジションP4において固液分離された発酵後残渣を乾燥させる残渣乾燥ポジションP5と、を備え、残渣乾燥ポジションP5において、発酵後残渣を乾燥させることにより乾燥ペレット2Aが生成されることを特徴とするものである。
【0078】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、固液分離ポジションP4において固液分離された発酵後残渣を乾燥ペレット化することができる。ここで、乾燥ペレット2Aは、堆肥等として利用することができるので、原料2の廃棄コストや処理に伴う廃棄物も低減することができる。そのため、上述した発酵システム1は、環境負荷低減に、より一層の貢献が期待できる。
【0079】
(I)本実施形態の発酵システム1は、原料2における含水率が90%以下であり、乾式発酵により、原料2が発酵されることを特徴とするものである。
【0080】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、固液分離で分離される廃液としての水分を減じることができる。そのため、上述した発酵システム1は、廃液処理のために大型の水処理装置を設ける必要がないので、設備コストの低減が期待できる。
【0081】
(J)本実施形態の発酵システム1において、発酵棚30は、収容された発酵槽10を加温する加温部35を有しており、バイオガス回収配管15が、部材を加熱する加熱炉50に接続されており、加熱炉50は、バイオガスを燃料として供給するガス供給部51と、加熱炉50を冷却するための冷却水を循環させる冷却水供給部52と、冷却に供された後の回収冷却水を排出する回収冷却水排出部55と、を備え、加温部35は、発酵棚30を加温するための加温水を供給する加温水供給部36を備え、ガス供給部51には、バイオガス回収配管15が直接的又は間接的に接続されており、回収冷却水排出部55が、加温水供給部36に接続されることにより、回収冷却水が加温水として加温部35に供給されることを特徴とするものである。
【0082】
上述した発酵システム1では、発酵槽10で発生させたバイオガス(例えば、メタンガス)が加熱炉50の加熱用の燃料として利用される。また、上述した発酵システム1は、加熱炉50の冷却に供された冷却水(温水)が、発酵棚30における加温部35の加温水として供給される。また、上述した発酵システム1は、発酵棚30の加温部35に供給された加温水を利用して、発酵棚30に収容された発酵槽10が加温される。このように、上述した発酵システム1では、バイオガスが、加熱炉50の加熱用燃料として利用されると共に、加熱炉50の冷却水が、発酵槽10の加温として利用される。さらに、発酵槽10における発酵後原料は、固液分離されて消化液及び乾燥ペレット2Aとして再利用される。このように、上述した発酵システム1は、有機性廃棄物等の処理を効率的に行うことができるので、環境負荷の少ない発酵プラントを提供することができる。また、発酵棚30を加熱する温水は、加熱炉50の排熱を回収して供給することができる。なお、発酵棚30を加熱する温水は、バイオガス由来の加熱炉50以外からの供給でもよい。
【0083】
(K)本実施形態の発酵システム1において、原料2は、含水率が40~70%の牛糞を250~300重量部と、発酵ポジションP2における発酵後の原料2を固液分離することにより回収され、含水率が70~80%の消化液を65~150重量部と、水を150~285重量部と、を含み、全体として含水率が75~90%かつ590~610重量部となるように調製されたものであることを特徴とするものである。
【0084】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、有機性廃棄物(牛糞)の処理を効率的に行って、バイオガス(メタンガス)を効率的に回収できる。また、上述した発酵システム1は、含水率が比較的低い牛糞を利用した乾式発酵を利用することにより、処理において発生する水(廃水)を減じることができる。そのため、上述した発酵システム1は、廃液処理のために大型の水処理装置を設ける必要がないので、排水処理費用低減が期待できる。また、上述した発酵システム1によれば、設備コスト(例えば、初期費用及びランニングコスト等)の低減も期待できる。
【0085】
ここで、原料2とする牛糞の含水率幅は、例えば、30~70%、原料2に追加する消化液の含水率幅は、例えば、消化液70~90%とし、調整した原料2(スラリー)の含水率幅は、例えば70~90%の範囲とするとよい。
【0086】
以上が、本発明の実施形態の構成及び作用効果であるが、本発明の発酵システム1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下の変形例のような構成とすることができる。
【0087】
≪変形例≫
次に本発明の変形例に係る発酵システム1について
図4を参照しながら説明する。変形例に係る発酵システム1は、上述した接続機構25における接続形態が異なる以外は、上述した実施形態と同様であるので、異なる部分の構成について説明し、同様部分の説明は省略する。また、同一部品や同様の構成については、同一の符号を付していることに留意されたい。
【0088】
接続機構250は、接続部材200としての接続配管が、バイオガス回収配管15の一端側に接続されている。接続部材200は、着脱可能なアダプタ(図示せず)を介してバイオガス回収配管15と着脱可能に接続することができる。接続部材200は、例えば、発酵槽10が発酵槽保持部31に載置されるに伴って、自動的に着脱(例えば、プランジャによる着脱)できるように構成することが望ましい。接続部材200は、先端側が、水槽210の水中に浸漬されている。
【0089】
水槽210は、接続部材200が浸漬される接続部材浸漬部211と、回収されたバイオガスが水上置換される水上置換部212等を備えている。水槽210は、所定量の水が張られている。接続部材浸漬部211と、水上置換部212とは、相互に水の流通が可能なように水中部分が開口されている。水上置換部212には、水上部分の上部に水上置換されたバイオガスを排出するためのバイオガス排出部213が設けられている。また、接続部材200の先端側は、接続部材浸漬部211から水上置換部212に亘って水に浸漬されている。したがって、接続部材200から供給されるバイオガスは、水上置換されながら水上置換部212に排気され、バイオガス排出部213から排出される。すなわち、発酵システム1は、水上置換部212により接続されているので、発酵槽10内に酸素等が逆流して流入することを抑制できる。そのため、発酵槽10内で行われる嫌気性発酵を効率良く行うことができる。なお、必要に応じて、発酵槽10内が不活性ガス等で置換されてもよい。
【0090】
バイオガス排出部213には、バイオガス回収配管15が接続されている。バイオガス回収配管15は、上述した実施形態と同様にガスパック8に接続されている。
【0091】
以上が、本発明の変形例に係る発酵システム1の構成である。変形例に係る発酵システム1は、以下の(L)のような特徴的構成を備えている。そのため、本発明の発酵システム1は、以下のような従来技術では達し得ない特有の効果を奏することができる。
【0092】
(L)本変形例の発酵システム1は、接続部材200及びバイオガス回収配管15が、水上置換を介して接続されることを特徴とするものである。
【0093】
上述した発酵システム1は、かかる構成とすることにより、接続部材200における配管を例えば、水上置換用の水槽等に挿入するだけで、接続部材200及びバイオガス回収配管15を容易に接続することができる。そのため、上述した発酵システム1は、接続部材200における配管やバイオガス回収配管15等の配管経路を簡素化することができる。
【0094】
以上が、本発明に係る発酵システム1の変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、各種の変形を行うことができる。
【0095】
例えば、発酵槽10を設ける数量は、複数のものだけではなく、単一のものであってもよい。また、発酵槽10は、実施形態の数量のものだけではなく、プラントの規模に応じて各種の数量のものを設けることができる。また、発酵槽10の形状・大きさは、各種の形状・大きさのものが利用できる。また、本実施形態では、発酵棚30における発酵槽保持部31が上下3段、25セット設けられているが、発酵槽保持部31は、発酵槽10に応じて、各種の数量・大きさ・形態のものが利用できる。また、本実施形態では、原料投入ポジションP1、発酵ポジションP2、発酵後原料排出ポジションP3が、それぞれ異なる位置に配置されているが、これらの各ポジションは、少なくとも一部が重複するものであってもよい。つまり、本発明の発酵システム1は、複数の発酵槽10を組み合わせて使用できるものであれば各種のポジション配置を採用することができる。また、個々の発酵槽10は、それぞれ個別管理(例えば、スラリー含水率、温度、発酵日数等)するようにしてもよい。
【0096】
また、本実施形態の変形例として、以下の構成を採用することも可能である。例えば、原料投入ポジションP1は、原料受け入れ後の原料2と濾過して得た消化液を混合調整する混合調整部と、前記混合調整部における混合調整時に前記混合調整部を加温する加温部35(温調部35)と、を備えることを特徴とするとよい。このように、上述した発酵システム1は、発酵棚30で加温する前の原料混合時に加温することで、より効率良く原料2を所定温度に昇温できる。また、原料投入ポジションP1では、混合調整部において混合調整する際に、水分調整のための水が加えられてもよい。このように、上述した発酵システム1は、個々に独立した発酵槽10を設けることにより、投入する原料2に合わせて個々の発酵槽10毎に含水率の調整をすることができる。また、上述した混合調整部は、加温部35が設けられているとよい。これにより、加える水と消化液を加温することができる。また、上述した混合調整部は、加温部35を設けることにより、原料2の混合調整の際に温調してもよい。このように、上述した発酵システム1は、上述した混合調整部により均一なスラリーを作製することができるので発酵ポジションP2における発酵時の撹拌を省略することができる。
【0097】
ここで、原料投入ポジションP1における原料調整時は、発酵原料中の有機物(固分)に対する消化液中の固分(メタン菌)比率が所定の比率となるように調整が行われる。例えば、原料(固分)/消化液(固分)は、8.7以下であり、例えば、牛糞では8.4が好ましく食品残渣では、0.5が好ましい。ここで、上述した原料2(固分)は、原料2を110℃×12h加温し水分を除去した重量であり、消化液(固分)は、原料2を110℃×12h加温し水分を除去した重量である。
【0098】
本実施形態では接続部材20が、蛇腹状のクッションゴムで形成されているものを例示したが、接続部材20には、各種のものが利用できる。また、本実施形態では、発酵槽10が発酵棚30の所定位置に載置されることに連動して接続部材20が、バイオガス回収配管15に接続されるものとしたが、発酵槽10の載置との連動は、必要に応じて行えばよく、発酵槽10の載置と連動しないものとすることもできる。また、バイオガス回収配管15と発酵槽10との接続態様は、水上置換に係るものや油圧シリンダ26を利用するものだけではなく、各種の接続態様のものが利用できる。
【0099】
本実施形態では、水上置換によって発酵槽10におけるバイオガスを置換するように構成したが、発酵槽10におけるバイオガスは、各種の手段(例えば、不活性ガス)で置換することができる。
【0100】
本実施形態では原料投入ポジションP1において発酵槽10に投入された原料2は、発酵後原料排出ポジションP3において、全量排出されるものとしたが、本発明の発酵システム1は、これには限定されない。例えば、発酵後原料排出ポジションP3において排出される発酵後原料は、全体の一部であってもよく、段階的に順次、一部又は全量が排出されるものでもよい。
【0101】
本実施形態では、発酵棚30が、加温部35を有するものとしたが、発酵棚30を直接加温するものだけではなく例えば、発酵棚30を恒温室内に設け、恒温室自体を加温するようにしてもよい。また、本実施形態では、発酵槽保持部31が、断熱部33を有するものとしたが、断熱部33は必要に応じて設ければよく、断熱部33を設けない構成とすることもできる。
【0102】
また、本実施形態では、固液分離ポジションP4において固液分離された消化液が再利用されるものとしたが、消化液の再利用は必要に応じて行えばよく、消化液を再利用しないものとすることもできる。また、発酵後残渣は、必要に応じて、乾燥ペレット2Aとしたり、堆肥として利用したりすればよく、発酵後残渣を廃棄処理することも可能である。
【0103】
本実施形態では、発酵システム1におけるバイオガス回収配管15が、間接的に加熱炉50に接続されているものを例示したが、本発明の発酵システム1は、加熱炉50に接続されるものだけではなく、バイオガスを利用する各種の装置等に接続することができる。また、発酵システム1は、加熱炉50等の各種の装置に接続するものだけではなく、単にバイオガスを貯留するものであってもよい。また、回収するバイオガスもメタンガスだけではなく、必要に応じて、各種のガスに応用できる。また、バイオガス回収配管15は、間接的に装置等に接続されるものだけではなく、直接的に装置等に接続されていてもよい。また、本実施形態では、加熱炉50に供された冷却水を加温水として発酵槽10の加温に利用しているが、加温部35における熱源は、冷却水を再利用するものだけではなく、別途電熱ヒータ等を設けるものやその他の手段で加温するものであってもよい。
【0104】
本実施形態では、原料2の混合比(組成比)について例示したが、原料2の混合比は、これには限定されず、各種の混合比のものが利用できる。また、本実施形態では、乾式発酵で処理を実行するものを例示したが、本発明の発酵システム1は、湿式発酵においても利用できる。また、原料2は、肉牛の牛糞だけではなく、乳牛の牛糞や、その他の動物の糞や有機性の各種の廃棄物が利用できる。また、原料2における含水率も各種のものが利用できる。
【0105】
以上が、本発明に係る発酵システムの各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の発酵システムは、牛糞等の有機性廃棄物等からなる原料を発酵させて、メタンガス等のバイオガスを取得する場合に好適に利用できる。また、本発明の発酵システムは、発生させたメタンガス等を金属等の加熱炉等の熱源として利用できる。また、本発明の発酵システムは、上記に加えて、発電機のエネルギー源として電力を取り出して利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 :発酵システム
2 :原料
2A :乾燥ペレット
3 :混合槽
4 :濾過装置
4A :消化液送液管
5 :乾燥機
6 :脱湿機
7 :脱硫機
8 :ガスパック
8A :ガス供給管
10 :発酵槽
11 :開口部
12 :蓋
13 :貫通孔
15 :バイオガス回収配管
20 :接続部材
25 :接続機構
26 :油圧シリンダ
27 :油圧配管
30 :発酵棚
31 :発酵槽保持部
33 :断熱部
35 :加温部(温調部)
35A :循環流路
36 :加温水供給部
40 :搬送装置
50 :加熱炉
51 :ガス供給部
52 :冷却水供給部
53 :循環流路
55 :回収冷却水排出部
56 :冷却水排出用配管
57 :送液ポンプ
58 :加温水排出部
60 :原料置き場
61 :乾燥ペレット置き場
65 :消化液調整部
200 :接続部材
210 :水槽
211 :接続部材浸漬部
212 :水上置換部
213 :バイオガス排出部
250 :接続機構
P1 :原料投入ポジション
P2 :発酵ポジション
P3 :発酵後原料排出ポジション
P4 :固液分離ポジション
P5 :残渣乾燥ポジション