(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114131
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】レンズユニットの光学特性測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20250729BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20250729BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20250729BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20250729BHJP
G03B 43/00 20210101ALI20250729BHJP
【FI】
G01M11/02 B
G03B30/00
G03B15/00 V
G03B17/56 Z
G03B43/00
G01M11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008614
(22)【出願日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 駿
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真治
(72)【発明者】
【氏名】横山 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岸 宣孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑果
(72)【発明者】
【氏名】石井 友基
(72)【発明者】
【氏名】坂口 仁志
【テーマコード(参考)】
2G086
2H105
【Fターム(参考)】
2G086HH01
2H105EE11
(57)【要約】
【課題】レンズ振動中のレンズユニットの動的光学特性を適切に且つ正確に得ることができる測定方法及び測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の測定方法は、振動周波数を所定の範囲内でスイープさせて振動体を振動させることにより所定のレンズを所定の持続時間にわたって振動させるサーチモードと、所定の範囲内にあるほぼ一定の周波数で振動体を振動させることにより所定のレンズをサーチモードにおける所定の持続時間よりも長い所定の持続時間にわたって振動させるドライブモードとを交互に繰り返すレンズ振動ステップS3,S4と、レンズ振動ステップ中において、ドライブモードにあるときにのみレンズユニットの光学特性を測定する測定ステップS6とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体を介して所定のレンズを振動させつつ前記所定のレンズを含むレンズユニットの光学特性を測定するための測定方法であって、
振動周波数を所定の範囲内でスイープさせて前記振動体を振動させることにより前記所定のレンズを所定の持続時間にわたって振動させるサーチモードと、前記所定の範囲内にあるほぼ一定の周波数で前記振動体を振動させることにより前記所定のレンズを前記サーチモードにおける前記所定の持続時間よりも長い所定の持続時間にわたって振動させるドライブモードとを交互に繰り返すレンズ振動ステップと、
前記レンズ振動ステップ中において、前記ドライブモードにあるときにのみ所定の測定器を用いて前記レンズユニットの光学特性を測定する測定ステップと、
を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記ドライブモードの前記持続時間の長さは、前記測定器によって前記光学特性を測定するために必要な時間以上であり、前記測定ステップは、所定の1回の前記ドライブモード内で前記光学特性の所定の測定シーケンスを完了することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記測定ステップは、複数の前記ドライブモードにわたって分割して段階的に前記光学特性を測定することによって前記光学特性の所定の測定シーケンスを完了することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
少なくとも前記光学特性の測定に関与する前記複数のドライブモードにおいて、前記振動体を振動させる駆動回路から前記測定器にトリガ信号が出力され、このトリガ信号に基づいて前記測定器が前記レンズユニットの光学特性を測定することを特徴とする請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
振動体を介して所定のレンズを振動させつつ前記所定のレンズを含むレンズユニットの光学特性を測定するための測定装置であって、
前記振動体を振動させる駆動回路と、
前記レンズユニットの光学特性を測定するための測定器と、
前記駆動回路及び前記測定器の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
振動周波数を所定の範囲内でスイープさせて前記振動体を振動させることにより前記所定のレンズを所定の持続時間にわたって振動させるサーチモードと、前記所定の範囲内にあるほぼ一定の周波数で前記振動体を振動させることにより前記所定のレンズを前記サーチモードにおける前記所定の持続時間よりも長い所定の持続時間にわたって振動させるドライブモードとを交互に繰り返すように前記駆動回路の動作を制御し、
前記ドライブモードにあるときにのみ前記レンズユニットの光学特性を測定するように前記測定器の動作を制御する、
ことを特徴とする測定装置。
【請求項6】
前記ドライブモードの前記持続時間の長さは、前記測定器によって前記光学特性を測定するために必要な時間以上であり、前記測定器は、所定の1回の前記ドライブモード内で前記光学特性の所定の測定シーケンスを完了することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定器は、複数の前記ドライブモードにわたって分割して段階的に前記光学特性を測定することによって前記光学特性の所定の測定シーケンスを完了することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、少なくとも前記光学特性の測定に関与する前記複数のドライブモードにおいて、前記測定器にトリガ信号を出力し、
前記測定器は、前記トリガ信号に基づいて前記レンズユニットの光学特性を測定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニットの光学特性を測定するための測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなレンズユニットは、車両(自動車)のフロントグリル等の取付部に取り付けられて、最も物体側に位置するレンズが外部に露出している場合もある。そのような場合、当該レンズの表面(レンズ面)には水滴や泥水、氷雪、霜などの異物が付着し易く、付着した場合には、レンズユニットによる明瞭な観察視野を確保するべく異物を除去する必要がある。
【0004】
レンズ(又はレンズカバー)の表面に付着した異物の除去に関しては、近年、レンズ(又はレンズカバー)を振動体によって振動(超音波振動)させることによって異物を除去することも行なわれている。例えば、特許文献2では、ドーム状のカバー(レンズカバー)に付着した水滴や埃などの異物を除去するための振動装置が、レンズユニットを備えたカメラに設けられている。
【0005】
具体的に、
図6に示されるように、そのような振動装置2は、レンズ6と撮像素子を含む回路が内蔵された撮像部5とをカメラ本体3の上部に備えるカメラに設けれており、ドーム状の透明カバー11と、カバー11が固定されている筒状の振動体12と、振動体12に固定されて振動体12を介してカバー11を振動させる圧電素子13とを備える。振動体12は、カバー11側に位置している第1の端部14aと、カバー11とは反対側に位置している第2の端部14bとを有する円筒部14と、円筒部14の第1の端部14aに連結されて、円筒部14よりも内径が大きい円筒からなる筒状の第1の連結部15と、第1の連結部15とカバー11との間に介在して、第1の連結部15の内径よりも内径が小さい第1のリング状部16と、円筒部14の第2の端部14bに連結されて、円筒部14よりも外径が小さい円筒からなる第2の連結部17と、第2の連結部17と圧電素子13との間に介在して、第2の連結部17の外径よりも外径が大きい第2のリング状部18とを有する。
【0006】
このような振動装置2では、圧電素子13を駆動させて振動体12を介してカバー11を超音波振動させることにより、液滴の移動及び液滴の霧化をより効果的に果たすことができ、或いは、カバー11の表面に付着した異物を除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-231993号公報
【特許文献2】特許第6977784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、以上のような様々なタイプのレンズユニットの光学特性は、一般に、レンズが固定された不動状態で測定されて評価される。すなわち、前述したようにレンズを超音波振動させることができる振動装置を備える構成においても、レンズが振動されない静的な状態で、光学特性が測定されて評価される(静的光学特性が測定・評価される)。
【0009】
しかしながら、超音波振動によってレンズ表面の異物を除去できる前述したような振動装置を備えたカメラの存在下では、レンズを振動させている状態でレンズユニット(カメラ)の光学特性を測定して評価する必要性(動的光学特性の測定・評価の必要性)もでてきている。
【0010】
ここで、振動装置を備えるカメラにおいて動的光学特性を測定する場合には、適切で正確な測定結果を得られるかどうかが大きな問題となる。以下、これについて説明する。
【0011】
振動装置を備えるカメラにおいてレンズ表面上の異物を効果的に除去するためには、振動体(したがって、レンズ)を異物の固有振動数で振動させて異物を共振(増幅振動)させることが望ましい。そのため、周波数を所定の範囲でスイープさせた交流出力信号を圧電素子(圧電振動子)に印加しながら、その際の周波数及び電流値の測定結果から異物の固有振動数を特定する(異物のタイプを特定する)サーチモードと、サーチモードで特定された固有振動数(共振周波数)の前後でスイープさせた交流出力信号を圧電素子に連続的に印加することによって異物を連続的に共振(増幅振動)させて(共振周波数での振動を継続させることにより)異物をレンズ表面から効果的且つ効率的に除去する(異物を洗浄する)ドライブモードとを交互に繰り返すことで、刻々と変わる状況(例えば、付着する異物の変化や温度変化に伴って共振周波数が変動する状況)に合わせて異物を常に効果的に除去(洗浄)できるようにすることも行なわれている。
【0012】
しかしながら、そのような2つのモードを交互に繰り返す超音波洗浄形態の場合には、レンズを振動させて光学特性を測定している際に周波数ドリフトが生じたり、或いは、光学特性の測定の最中にモードが切り換わるなどして、適切で正確な測定結果を得られない場合がある。
【0013】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、レンズ振動中のレンズユニットの動的光学特性を適切に且つ正確に得ることができる測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、振動体を介して所定のレンズを振動させつつ前記所定のレンズを含むレンズユニットの光学特性を測定するための測定方法であって、
振動周波数を所定の範囲内でスイープさせて前記振動体を振動させることにより前記所定のレンズを所定の持続時間(例えば、0.5秒)にわたって振動させるサーチモードと、前記所定の範囲内にあるほぼ一定の周波数で前記振動体を振動させることにより前記所定のレンズを前記サーチモードにおける前記所定の持続時間よりも長い所定の持続時間(例えば、3秒)にわたって振動させるドライブモードとを交互に繰り返すレンズ振動ステップと、
前記レンズ振動ステップ中において、前記ドライブモードにあるときにのみ所定の測定器を用いて前記レンズユニットの光学特性を測定する測定ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の上記構成によれば、2つの振動モードが交互に繰り返されるレンズの変則的な振動形態において、ほぼ一定の周波数でレンズが振動する安定した振動作動状態にあるドライブモードでのみレンズユニットの光学特性を測定するようにしているため、レンズ振動中のレンズユニットの動的光学特性を適切に且つ正確に得ることが可能となる。また、サーチモードよりも持続時間が長いドライブモードにおいて光学特性を測定するようにしているため、測定器によって光学特性を測定するために必要な時間を確保し易い。
【0016】
また、このような光学特性の測定は、レンズユニット又はレンズユニットを含む光学機器(カメラなど)の完成品の出荷前の検査プロセス中に行なわれてもよく、或いは、レンズユニットの実装後、すなわち、レンズを振動させる振動体を含むレンズユニットを備えたカメラ等の光学機器が所定の設置場所に設置された後、レンズが振動している際(例えば、レンズに付着した異物を除去するために当該レンズを振動体によって振動させる超音波振動洗浄プロセス中)に行なわれてもよい。
【0017】
一例として、前記超音波振動洗浄プロセスを想定した検査中において光学特性を測定する場合、ドライブモードでは、振動体(したがって、レンズ)を想定された所定の異物の固有振動数で振動させてもよい。複数種の異物を想定する場合には、それに対応した複数の異なる固有振動数で振動体(したがって、レンズ)を振動させて個々に測定結果を取得してもよい。また、実際の超音波振動洗浄プロセス中において光学特性を測定する場合、サーチモードでは、振動周波数を所定の範囲内でスイープさせて振動体を振動させることにより、その際の周波数及び電流値の測定結果から異物の固有振動数を特定し(異物のタイプを特定し)、ドライブモードでは、サーチモードで特定されたほぼ一定の固有振動数(共振周波数)で振動体を振動させることにより異物を連続的に共振(増幅振動)させ(共振周波数での振動を継続させ)てもよい。
【0018】
また、上記構成において、ドライブモードの持続時間の長さは、測定器によって光学特性を測定するために必要な時間以上であり、測定ステップは、所定の1回のドライブモード内で光学特性の所定の測定シーケンスを完了することが好ましい。これによれば、有意な測定を行ない易く、また、光学特性の測定を簡潔に効率良く短時間で行なうことが可能となる。また、この場合、測定器による測定所要時間に基づいてドライブモードの持続時間を設定してもよい。
【0019】
また、上記構成において、測定ステップは、複数のドライブモードにわたって分割して段階的に光学特性を測定することによって光学特性の所定の測定シーケンスを完了してもよい。これによれば、ドライブモードの持続時間が光学特性の測定時間によって制約を受けないで済む(逆もまた同様である)。また、使用可能な測定器の種類がドライブモードの持続時間によって制限されることも回避できる(逆もまた同様である)。
【0020】
また、上記構成では、少なくとも光学特性の測定に関与する複数のドライブモードにおいて、振動体を振動させる駆動回路から測定器にトリガ信号が出力され、このトリガ信号に基づいて測定器がレンズユニットの光学特性を測定することが好ましい。これによれば、有意な測定を行ない易いとともに、モード依存の光学測定を簡単且つ効率的に制御できる。
【0021】
なお、上記構成において、光学特性の測定は、所定のタイプの測定器を用いて任意の所定の測定項目に関して測定値を得るものであり、例えばMTF(Modulation Transfer Function)に関連するものであってもよい。また、測定項目としては、焦点距離や画角像高特性、周辺光量比といった光学性能やMTFやCTFといった結像性能の測定を挙げることができ、測定方法としては、測定機や測定治具に被検サンプルを設置し超音波振動時に動かない状態で測定を行なうようにすることなどが挙げられる。
【0022】
また、本発明は、前記測定方法を実行する測定装置も更に提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の測定方法及び測定装置によれば、レンズ振動中のレンズユニットの動的光学特性を適切に且つ正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る測定方法を実施する測定装置によって光学特性が測定される光学機器の一例としてのカメラモジュールの概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る測定方法を実施する測定装置の概略ブロック図である。
【
図4】サーチモード及びドライブモードにおける周波数変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る測定方法のステップの一例のフローチャートである。
【
図6】従来の振動体を備えたレンズユニットの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本実施形態は、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」に貢献する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る測定方法を実施する測定装置によって光学特性が測定される光学機器の一例としてのレンズユニットを備えたカメラモジュールの概略断面図であり、
図2はこのカメラモジュールの斜視図である。
なお、以下で説明されるレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態のカメラモジュール300は、レンズユニット20を備えている。このレンズユニット20は、円筒状の鏡筒22と、この鏡筒22が内部に設けられた四角筒状の第1筐体(筐体)23とを備えている。
【0028】
また、鏡筒22及び第1筐体23の像側(
図1において下側)の端部は、四角筒状の第2筐体24によって支持されている。第2筐体24は第1筐体23より光軸方向の長さは短いが、外径及び内径の長さは第1筐体23より長くなっている。なお、光軸はOで示し、この光軸Oと直交する方向が径方向となる。
【0029】
第1筐体23は、鏡筒22より径方向外側に配置され、第2筐体24は第1筐体23より像側(
図1において下側)に配置されている。鏡筒22、第1筐体23及び第2筐体24は同軸に配置されている。
第2筐体24の上端部には矩形板状の内フランジ部24aが形成されており、この内フランジ部24aの径方向中央部に、物体側(
図1において上側)に突出する凸部24bが形成され、この凸部24bの径方向中央部に貫通孔24cが形成されている。
【0030】
また、内フランジ部24aの上面には段差部24dが形成され、この段差部24dに第1筐体23の下端部が嵌合している。これによって、第1筐体23は第2筐体24に対して径方向及び光軸方向の位置決めがなされている。
【0031】
また、レンズユニット20は、物体側から順に配置された複数(例えば、6つ)のレンズ31,32,33,34,35,36を備えている。
レンズ31は最も物体側に位置する第1レンズ31であり、この第1レンズ31は、第1筐体23に後述するレンズ保持部50に保持されて設けられている。
第1レンズ31より像側に配置された5つのレンズ32,33,34,35,36は鏡筒22内に設けられている。
【0032】
また、鏡筒22の下端部には、像側(
図1において下側)に突出する円筒状の突出部27が形成されており、この突出部27は第2鏡筒24に設けられた前記貫通孔24cに挿入されて嵌合している。これによって、鏡筒22と第2筐体24とは同軸かつ光軸Oと一致して設けられている。
【0033】
また、最も物体側に位置する第1レンズ31はガラスレンズであり、レンズ32~36は樹脂レンズであるが、これに限定されない(例えば、レンズ31が樹脂レンズであっても構わない)。
また、レンズ31~36の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0034】
第1筐体23及び鏡筒22に固定されて支持されている複数のレンズ31~36は、それぞれの光軸を一致させた状態に配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ31~36が並べられた状態となって、撮像に用いられる1群のレンズ群Lを構成している。
【0035】
また、本実施形態では、第1筐体23が鏡筒22の径方向外側に配置されている。
第1筐体23は、SUS等の金属で形成されたものであり、四角筒状の筐体本体23aと、この筐体本体23aの上端部に筐体本体23aと一体的に形成された矩形板状の天板部23bと、この天板部23bの内周側の縁部に天板部23bと一体的に形成された係止部23cとを備えている。つまり、本実施形態の天板部23bは、
図6に示す天板部105bより筐体本体23aの上端縁から内側に向かう長さが短くなっており、当該天板部23bの内周側の縁部に係止部23cが形成されている。
天板部23bの厚さ(光軸方向の厚さ)は筐体本体23aの厚さ(径方向の厚さ)より薄くなっている。
【0036】
係止部23cは、天板部23bの内周側の縁部から物体側(
図1において上側)に突出して形成された略円筒状の突出部23dと、この突出部23dの上端部から径方向内側に折曲された押え部23eとを備えている。この押え部23eに光軸Oに対して傾斜する傾斜面23fが周方向に沿って形成されている。
そして、傾斜面23fによって第1レンズ31の表面縁部を押えることによって、当該第1レンズ31を固定している。つまり、第1筐体23及び鏡筒22内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、押え部23eの傾斜面23fによって、レンズ群Lの最も物体側に位置する第1レンズ31を押えて、第1筐体23の物体側端部に光軸方向で固定している。
【0037】
また、鏡筒22の像側の端部(
図1において下端部)には、第6レンズ36よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部26が設けられている。この内側フランジ部26と押え部23eの傾斜面23fとにより、第1筐体23及び鏡筒22内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ31~36が光軸方向で保持固定されている。
また、内側フランジ部26の下面には、赤外線カットフィルタ等のフィルタ99が設けられている。
【0038】
また、本実施形態では、第1レンズ31を保持するリング状のレンズ保持部50を備えている。
このレンズ保持部50はSUS等の金属を旋削加工によって薄いリング状に形成することによって製作されたものである。レンズ保持部50は内周側に、円筒面状の内周面50aと、当該内周面50aと直交する円環面50bとを備えており、内周面50aと円環面50bは断面L字形に形成されている。内周面50aは、光軸Oと同軸に配置されており、円環面50bは光軸Oと直交して配置されている。
また、レンズ保持部50は、円環面50bに直交し、かつ光軸Oと同軸に配置された内周面50cを有しており、この内周面50cは内周面50aより像側(
図1おいて下側)に配置され、内周面50aより内径寸法が小さくなっている。
【0039】
また、リング状のレンズ保持部50の内周面50cの内径寸法は、前記鏡筒22の外径寸法より大きくなっており、これによって、鏡筒22の上端部がレンズ保持部50の内周面50cの内側に配置されている。
また、レンズ保持部50は、第1筐体23に接合されている。すなわち、レンズ保持部50の外周面50dと上面50eとはそれぞれ、第1筐体23の押え部23eの内周にほぼ隙間なく当接しており、これによって、レンズ保持部50は第1筐体23の天板部23bに嵌合している。このようにしてレンズ保持部50は、天板部23bを有する第1筐体23に接合されている。
第1筐体23に接合されたレンズ保持部50は、当該レンズ保持部50の軸が光軸Oと一致し、かつ光軸方向の位置決めがなされている。
【0040】
また、レンズ保持部50は第1レンズ31を保持している。すなわち、レンズ保持部50の内周面50aは第1レンズ31の外周面に隙間なく当接しており、これによって、第1レンズ31は径方向の位置決めがなされて、光軸Oと同軸に配置されている。また、レンズ保持部50の円環面50bは第1レンズ31の像側を向く平坦な底面31eに隙間なく当接しており、これによって、第1レンズ31は光軸方向の位置決めがなされている。
また、第1レンズ31より像側に配置されているレンズ32~36は鏡筒22によって、光軸が一致するように保持され、鏡筒22は、第2筐体24と同軸かつ光軸Oと一致して設けられているので、第1レンズ31と、第1レンズ31より像側に配置されたレンズ32~36とは、同軸ないし所定の偏心量以下で配置されている。
【0041】
また、本実施形態では、第1レンズ31を振動させる振動機構60を備えている。
振動機構60は、超音波振動する振動子61と、この振動子61の超音波振動を第1レンズ31に伝達する振動体62とを備えている。このような振動機構60は、第1筐体23より径方向内側でかつ鏡筒22より径方向外側に配置されている。
振動子61は、円環板状に形成され、第1筐体23の筐体本体23aの内部に設けられている。振動子61は例えば圧電素子によって形成されている。
【0042】
振動体62は、ドーナツ円板状の取付部62aと、この取付部62aから物体側(
図1において上側)に向けて延び、かつ軸方向(光軸方向)において、連続的に外径及び内径の寸法が変化して膨らみとくびれのある略筒状でかつ、断面S形状の本体部62bと、この本体部62bの上端部に形成されたリング状の接合部62cとを備えている。取付部62aの下面には、振動子61が取付け固定され、接合部62cの上面がレンズ保持部50の下面(像側を向く面)に接着剤によって接合されている。
【0043】
このような振動機構60では、振動子61が所定の周波数で超音波振動することによって、振動体62が超音波振動する。振動体62が振動すると、振動体62がレンズ保持部50に接合されているので、このレンズ保持部50を介して第1レンズ31が同じ周波数で超音波振動し、これによって、第1レンズ31のレンズ面31aについた水滴や泥水、氷雪、霜などの異物が除去される。
【0044】
レンズ保持部50は、第1筐体23の天板部23bに嵌合しているが、天板部23bの厚さが筐体本体23aの厚さに比して薄く、天板部23bがダンパーとして機能するので、レンズ保持部50の振動が筐体本体23aに伝わり難くなる。このため、筐体本体23aに嵌合している第2筐体24に振動が伝わり難くなり、その結果、第2筐体24に嵌合している鏡筒22にも振動が伝わり難くなって、レンズ32~36にも振動が伝わり難くなって、振動によるレンズ32~36の位置ずれに起因する光学性能の低下を抑止できる。
【0045】
また、本実施形態では、第1筐体23、第1筐体23に保持されている第1レンズ31、鏡筒22、鏡筒22に保持されているレンズ32~36、レンズ保持部50、振動機構60等によってレンズユニット20が構成されている。
このレンズユニット20と、当該レンズユニット20の第1筐体23に嵌合している第2筐体24とによって、本実施形態のカメラモジュール300が構成されている。
第2筐体24は、その内部にパッケージセンサ(撮像素子;イメージセンサ)304を備えている。
【0046】
パッケージセンサ304は、フィルタ99と対向して第2筐体24の内部に配置されており、かつ、レンズユニット20により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット20を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0047】
また、第2筐体24は、その内部に駆動回路基板305を備えている。駆動回路基板305は、振動機構60の圧電素子61に所定の周波数の電圧を与えて駆動させる駆動回路4(
図3参照)を有する基板である。この駆動回路基板305と前記振動子(圧電素子)61とはFPC等によって形成され、第2筐体24の内フランジ部24に形成された配線穴24fを通された配線306によって接続されている。
【0048】
以上のような構成を成すカメラモジュールは、本発明の一実施形態に係る測定方法を実施する測定装置1によってその光学特性が測定される。測定装置1は、振動体62を介して第1レンズ31を振動させつつ第1レンズ31を含むレンズユニット20の光学特性を測定するものであり、
図3に示されるように、駆動回路基板305に設けられて振動体62を振動させる(圧電素子61に所定の周波数の電圧を与える)駆動回路4と、レンズユニット20の光学特性を測定するための測定器6と、駆動回路4及び測定器6の動作を制御する制御回路2とを備える。
【0049】
この場合、制御回路2は、振動周波数を所定の範囲内でスイープさせて振動体62を振動させることにより第1レンズ31を所定の持続時間にわたって振動させるサーチモードと、前記所定の範囲内にあるほぼ一定の周波数で振動体62を振動させることにより第1レンズ31をサーチモードにおける所定の持続時間よりも長い所定の持続時間にわたって振動させるドライブモードとを交互に繰り返すように駆動回路4の動作を制御するとともに、ドライブモードにあるときにのみレンズユニット20の光学特性を測定するように測定器6の動作を制御するようになっている。
【0050】
具体的には、一例として、カメラモジュール300の出荷前の検査中、
図4のタイミングチャートにも示されるように、サーチモードの期間(t
CYCLE期間;例えば0.5秒の持続期間)では、制御回路からの制御信号s2に基づき、駆動回路4が、例えば駆動電圧Vdrを所定の電圧とし、周波数fをf
MIN~f
MAXまでスイープさせた交流出力信号s1を圧電素子61に印加する。したがって、スイープした周波数で振動体62が振動し、第1レンズ31が所定の持続時間t
CYCLEにわたって振動される。
【0051】
なお、実際の実装後の超音波洗浄時には、このサーチモードにおいて、図示しない例えば信号処理回路が、サーチモードでの共振周波数及び電流値の測定結果に基づき、所定のスイープ範囲fMIN~fMAX内にあるほぼ一定の周波数を異物が共振する共振周波数として特定する。例えば、信号処理回路は、第1レンズ31の表面に付着した異物が水である、すなわち、共振周波数(異物の固有振動数)がf01であると判断する。
【0052】
このサーチモードに続き、前記所定の範囲(スイープ範囲)内にあるほぼ一定の周波数で振動体62を振動させることにより第1レンズ31をサーチモードにおける所定の持続時間(tCYCLE)よりも長い所定の持続時間(tDRIVE;例えば3秒)にわたって振動させるドライブモードが行なわれる。具体的には、一例として、駆動回路4が共振周波数f01の前後でスイープさせた交流出力信号s1を圧電素子61に印加するドライブモードAが行なわれる。より具体的には、前述した実際の実装後の超音波洗浄に関連付けると、このドライブモードAにおいて、駆動回路4は、期間ΔTで共振周波数f01の前後の範囲fFSをスイープさせた交流出力信号s1を圧電素子61に印加する(これにより、実際の超音波洗浄では、共振周波数f01での振動を継続することにより、第1レンズ31の温度が過度に上昇することを防止でき、第1レンズ31の表面に付着した水(液滴)を霧化させることができる)。なお、圧電素子61に印加する交流出力信号は、この例では、ステップ状に周波数が変化するようになっている。具体的には、交流出力信号は、期間Δtごとに周波数fSTEPだけ増加又は減少する。無論、スイープ形態はこれに限らない。
【0053】
以降、サーチモードとドライブモードとが交互に繰り返されるが、
図4には、ドライブモードの他の例として、ドライブモードAの後のサーチモードに続き、ドライブモードBも示されている。このドライブモードBでは、駆動回路4が、共振周波数f
02で固定して交流出力信号s1を圧電素子61に印加する(共振周波数f
02で固定して圧電素子61を駆動させる)。なお、実際の実装後の超音波洗浄においては、このようなモードの交互の繰り返しにより、刻々と変わる状況(例えば、付着する異物の変化や温度変化に伴って共振周波数が変動する状況)に合わせて異物を常に効果的に除去(洗浄)できるようにする。
【0054】
そして、本実施形態に係る測定装置1では、制御回路2から測定器6に送られる制御信号s4に基づき、ドライブモードにあるときにのみレンズユニット20の光学特性が測定されるようになっている。この場合、ドライブモードの持続時間(tDRIVE)の長さは、測定器6によってレンズユニット20の光学特性を測定するために必要な時間以上であってもよく、その場合、測定器6は、所定の1回のドライブモード内で光学特性の所定の測定シーケンスが完了する。或いは、測定器6は、複数のドライブモードにわたって分割して段階的にレンズユニット20の光学特性を測定することによって光学特性の所定の測定シーケンスを完了してもよい。その場合、少なくとも光学特性の測定に関与する複数のドライブモードにおいて、振動体62を振動させる駆動回路4から測定器6にトリガ信号s3が出力され、このトリガ信号s3に基づいて測定器6がレンズユニット20の光学特性を測定するようになっていてもよい。
【0055】
トリガ信号s3に基づく段階的測定の方法ステップの一例が
図5にフローチャートで示されている。図示のように、この例では、まず最初に、測定装置1にレンズユニット20が設置される(ステップS1)。続いて、測定者等により測定条件が設定される(ステップS2)。その後、前述したようにサーチモード(レンズ振動ステップS3)及びドライブモード(レンズ振動ステップS4)が交互に繰り返され、ドライブモードにおいてトリガ信号s3が測定器6により受信される(ステップS5においてYESの場合)と、測定器6によりレンズユニット20の光学特性が測定される(測定ステップS6)。そして、測定が完了したかどうかが(例えば制御回路2により)判定され(ステップS7)、測定が完了された場合(ステップ7においてYESの場合)には、測定結果が(例えば測定器6から)出力される(ステップS8)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、2つの振動モード(すなわち、サーチモード及びドライブモード)が交互に繰り返される第1レンズ31の変則的な振動形態において、ほぼ一定の周波数で第1レンズ31が振動する安定した振動作動状態にあるドライブモードでのみレンズユニット20の光学特性を測定するようにしているため、レンズ振動中のレンズユニット20の動的光学特性を適切に且つ正確に得ることが可能となる。また、サーチモードよりも持続時間が長いドライブモードにおいて光学特性を測定するようにしているため、測定器6によって光学特性を測定するために必要な時間を確保し易い。
【0057】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、筐体、鏡筒などの形状等は、前述した実施形態に限定されない。また、ドライブモード、サーチモードの振動形態も前述した実施形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施形態の一部又は全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 測定装置
2 制御回路
4 駆動回路
6 測定器
20 レンズユニット
31 第1レンズ
60 振動機構
61 圧電素子
62 振動体