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▶ NSKステアリング&コントロール株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011416
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113518
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 智也
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CD05
3D333CD14
3D333CD45
3D333CD60
3D333CE06
3D333CE31
3D333CE33
(57)【要約】
【課題】より少ない型を有する鋳造型で成形が可能な減速機ハウジングを備える電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、ウォームシャフトハウジングとウォームホイールハウジングとのいずれかを少なくとも含み且つ鋳造品からなる減速機ハウジングを備える。減速機ハウジングの外面には、ハーネスの位置を規制する複数のフックが設けられる。複数のフックは、Y方向に延びるパーティングラインに沿って配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸に取り付けられるウォームシャフトを収容するウォームシャフトハウジングと、前記ウォームシャフトに噛み合うウォームホイールを収容するウォームホイールハウジングとのいずれかを少なくとも含み且つ鋳造品からなる減速機ハウジングを備え、
前記減速機ハウジングの外面には、当該外面から突出して第1方向の一方側に延び且つハーネスの位置を規制する複数のフックが設けられ、
前記複数のフックは、前記第1方向に交差する第2方向に延びるパーティングラインに沿って配置される、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記フックは、
前記第2方向から見てU字状の切り欠きが設けられる位置規制部を備える鍵フックであって、前記切り欠きの開口から挿入される前記ハーネスが前記位置規制部によって位置が規制され、
複数の前記鍵フックは、前記第2方向の一方側から他方側に向けて順に並ぶ、第1鍵フック、第2鍵フックおよび第3鍵フックを含み、
前記第1鍵フックにおける前記切り欠きの前記開口は、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向の一方側を向き、
前記第2鍵フックにおける前記切り欠きの前記開口は、前記第3方向の他方側を向き、
前記第3鍵フックにおける前記切り欠きの前記開口は、前記第3方向の一方側を向く、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記第1方向から見て、前記パーティングラインは、
前記第1鍵フックに対して前記第3方向の他方側に位置し、
前記第2鍵フックに対して前記第3方向の一方側に位置し、
前記第3鍵フックに対して前記第3方向の他方側に位置する、
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記パーティングラインは、前記第1方向から見て、直線状である、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記第1鍵フックにおける前記外面から前記第1方向に沿った第1高さは、前記第2鍵フックの第2高さと異なり且つ前記第3鍵フックの第3高さと同じである、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記第1鍵フックと前記第2鍵フックとの前記第2方向に沿った第1距離は、前記第2鍵フックと前記第3鍵フックとの前記第2方向に沿った第2距離と相違する、
請求項2から5のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記フックは、前記外面から前記第1方向の一方側に突出する柱状フックであり、
当該柱状フックは、円柱状の小径部と、当該小径部に対して前記第1方向の一方側に設けられ且つ前記小径部よりも径が大きい円柱状の大径部と、を備え、
前記小径部で前記ハーネスの位置が規制される、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記第1方向および前記第2方向に交差する方向を第3方向とする場合、
前記第1方向から見て、
複数の前記柱状フックは、前記第2方向に延びる直線状に配置され、
前記パーティングラインは、直線状であり、且つ、複数の前記柱状フックの前記第3方向の中央を通る、
請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
複数の前記柱状フックは、前記第2方向の一方側から他方側に向けて順に並ぶ、第1柱状フック、第2柱状フックおよび第3柱状フックを有し、
前記第1柱状フックと前記第2柱状フックとの前記第2方向に沿った第1距離は、前記第2柱状フックと前記第3柱状フックとの前記第2方向に沿った第2距離と相違する、
請求項7または8に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トルクセンサを収容するセンサハウジングを備える減速機ハウジングが開示されている。当該センサハウジングには、貫通孔が設けられ、前記トルクセンサに接続されるハーネスが前記貫通孔を介して当該センサハウジングの外側に引き出される。前記センサハウジングには、樹脂製のクリップが取り付けられ、前記ハーネスは、前記クリップで位置が規制される。
【0003】
しかし、車両組み立て時などにおいて、クリップは、他の車両部品等が当たったときなどの外力を受けたときに損傷を受ける可能性があるため、より剛性の高いハーネス位置規制部が望まれている。
【0004】
そこで、例えば鋳造品でフックを成形することにより、剛性がより高いフックを成形することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-56943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、フックは減速機ハウジングの外面から突出しており、また、フックを複数設ける必要がある。よって、鋳造型を開くときに当該鋳造型がフックに引っ掛かることを避けるために、鋳造型を多くの型に分割し、当該分割した複数の型を複数の方向へ移動させて鋳造型を開くようにする。このように、フックが設けられた減速機ハウジングを鋳造で成形する場合、鋳造型の数が多くなり製造工程が複雑になる可能性がある。
【0007】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、より少ない型を有する鋳造型で成形が可能な減速機ハウジングを備える電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本開示の一態様の電動パワーステアリング装置は、モータの出力軸に取り付けられるウォームシャフトを収容するウォームシャフトハウジングと、前記ウォームシャフトに噛み合うウォームホイールを収容するウォームホイールハウジングとのいずれかを少なくとも含み且つ鋳造品からなる減速機ハウジングを備え、前記減速機ハウジングの外面には、当該外面から突出して第1方向の一方側に延び且つハーネスの位置を規制する複数のフックが設けられ、前記複数のフックは、前記第1方向に交差する第2方向に延びるパーティングラインに沿って配置される。
【0009】
前述したように、特許文献1の減速機ハウジングは、樹脂製のクリップを備え、当該クリップにハーネスを取り付けている。ただし、車両組み立て時などにおいて、クリップは、他の車両部品等が当たったときなどの外力を受けたときに損傷を受ける可能性があるため、例えば鋳造品で成形する高剛性のフックが望まれている。しかし、フックを有する減速機ハウジングを鋳造で成形する場合、鋳造型を開くときにフックに型が引っ掛からないように、鋳造型を多くの型に分割する必要がある。
【0010】
そこで、本開示では、フックを複数設け、パーティングラインに沿って配置している。これにより、例えば、パーティングラインを挟んで一方側に位置する第1型と、パーティングラインを挟んで他方側に位置する第2型との2つの型で鋳造型を構成することができる。そして、複数のフックの一部を第1型で成形し、残りのフックを第2型で成形することができる。このように、本開示によれば、より少ない型を有する鋳造型を用いて、フックを有する減速機ハウジングを鋳造で成形することが可能となる。
【0011】
望ましい態様として、前記フックは、前記第2方向から見てU字状の切り欠きが設けられる位置規制部を備える鍵フックであって、前記切り欠きの開口から挿入される前記ハーネスが前記位置規制部によって位置が規制され、複数の前記鍵フックは、前記第2方向の一方側から他方側に向けて順に並ぶ、第1鍵フック、第2鍵フックおよび第3鍵フックを含み、前記第1鍵フックにおける前記切り欠きの前記開口は、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向の一方側を向き、前記第2鍵フックにおける前記切り欠きの前記開口は、前記第3方向の他方側を向き、前記第3鍵フックにおける前記切り欠きの前記開口は、前記第3方向の一方側を向く。
【0012】
第1鍵フックから第3鍵フックに向かうに従って開口が第3方向で同じ向きに配置される態様では、開口が向く方向からハーネスが抜ける可能性がある。しかし、本開示では、鍵フックの開口の向きが、第1鍵フックから第3鍵フックに向かうに従って第3方向で互い違いに配置される。従って、本開示の方が、複数の鍵フックからハーネスが抜けにくくなる。このように、鍵フックの開口の向きは、第1鍵フックから第3鍵フックに向かうに従って第3方向で互い違いに配置される。従って、第1鍵フックから第3鍵フックに向かうに従って第3方向で同じ向きに配置される態様と比較すると、第1方向から見て鍵フックで位置規制されるハーネスが左右に湾曲した状態になるため、鍵フックによるハーネスの位置規制力がより高くなる。
【0013】
望ましい態様として、前記第1方向から見て、前記パーティングラインは、前記第1鍵フックに対して前記第3方向の他方側に位置し、前記第2鍵フックに対して前記第3方向の一方側に位置し、前記第3鍵フックに対して前記第3方向の他方側に位置する。
【0014】
ハーネスは切り欠きに挿入されるため、切り欠きの周縁部にバリ等が生じると、ハーネスに損傷が生じる可能性がある。しかし、本開示では、第1方向から見て、パーティングラインが切り欠きと非重畳であるため、切り欠きの周縁部にバリ等が生じることが抑制される。
【0015】
望ましい態様として、前記パーティングラインは、前記第1方向から見て、直線状である。これによれば、鋳造型の合わせ部分が平坦面になる。即ち、第1型の縁および第2型の縁が第1方向から見て直線状になるため、鋳造型の製造が容易になる。また、鋳造型の合わせ部分が平坦面になることにより、鋳造型の合わせ部分の密閉性がより高くなるというメリットもある。
【0016】
望ましい態様として、前記第1鍵フックにおける前記外面から前記第1方向に沿った第1高さは、前記第2鍵フックの第2高さと異なり且つ前記第3鍵フックの第3高さと同じである。
【0017】
従って、第3方向から見た場合に、第1鍵フック、第2鍵フックおよび第3鍵フックで位置規制されるハーネスが緩やかなU字形状となる。これに対して、第1高さ、第2高さおよび第3高さが全て同じ態様の場合は、第3方向から見た場合に、ハーネスが直線状となる。従って、本開示によれば、第1鍵フック、第2鍵フックおよび第3鍵フックによるハーネスの曲がり度合いがより大きくなって鍵フックによるハーネスの位置規制力がより高くなる。
【0018】
望ましい態様として、前記第1鍵フックと前記第2鍵フックとの前記第2方向に沿った第1距離は、前記第2鍵フックと前記第3鍵フックとの前記第2方向に沿った第2距離と相違する。
【0019】
従って、例えば第2距離が第1距離よりも小さい場合、第2鍵フックと第3鍵フックとの間に位置するハーネスの部位の方が、第1鍵フックと第2鍵フックとの間に位置するハーネスの部位よりも、第1方向から見たときのハーネスの曲がり度合いが大きくなる。従って、第1鍵フック、第2鍵フックおよび第3鍵フックが第2方向に等間隔で並ぶ態様と比較して、鍵フックによるハーネスの位置規制力がより高くなる。
【0020】
望ましい態様として、前記フックは、前記外面から前記第1方向の一方側に突出する柱状フックであり、当該柱状フックは、円柱状の小径部と、当該小径部に対して前記第1方向の一方側に設けられ且つ前記小径部よりも径が大きい円柱状の大径部と、を備え、前記小径部で前記ハーネスの位置が規制される。
【0021】
このように、円柱状の小径部でハーネスの位置が規制されるため、ハーネスを小径部の右側に当接させてもよいし、小径部の左側に当接させてもよい。従って、ハーネスの位置規制を柱状フックで行う作業が容易になる。
【0022】
望ましい態様として、前記第1方向および前記第2方向に交差する方向を第3方向とする場合、前記第1方向から見て、複数の前記柱状フックは、前記第2方向に延びる直線状に配置され、前記パーティングラインは、直線状であり、且つ、複数の前記柱状フックの前記第3方向の中央を通る。これによれば、鋳造型を開くときに、第1型および第2型が柱状フックに引っ掛かりにくくなり、減速機ハウジングの成形作業が容易になる。
【0023】
望ましい態様として、複数の前記柱状フックは、前記第2方向の一方側から他方側に向けて順に並ぶ、第1柱状フック、第2柱状フックおよび第3柱状フックを有し、前記第1柱状フックと前記第2柱状フックとの前記第2方向に沿った第1距離は、前記第2柱状フックと前記第3柱状フックとの前記第2方向に沿った第2距離と相違する。従って、本開示によれば、第1方向から見て、第1柱状フック、第2柱状フックおよび第3柱状フックで位置規制されるハーネスの曲がり度合いが大きくなって、柱状フックによるハーネスの位置規制力がより高くなる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、より少ない型を有する鋳造型で成形が可能な減速機ハウジングを備える電動パワーステアリング装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2図2は、第1実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のフックの斜視図である。
図4図4は、第1実施形態の操舵力アシスト機構の側面図である。
図5図5は、第1実施形態の操舵力アシスト機構の模式的な正面図である。
図6A図6Aは、第1実施形態のフックの拡大斜視図である。
図6B図6Bは、第1実施形態のフックの拡大斜視図である。
図7図7は、ウォームシャフトハウジングと鋳造型とを示す模式図である。
図8図8は、第1実施形態の変形例1に係る操舵力アシスト機構の側面図である。
図9図9は、第1実施形態の変形例1に係るフックの斜視図である。
図10図10は、第1実施形態の変形例2に係る操舵力アシスト機構の正面図である。
図11図11は、第1実施形態の変形例3に係るフックの斜視図である。
図12図12は、第2実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
図13図13は、第2実施形態に係るフックの斜視図である。
図14図14は、第2実施形態に係るフックの斜視図である。
図15図15は、第3実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。
図16図16は、第3実施形態に係るフックの斜視図である。
図17図17は、第3実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
図18図18は、第3実施形態に係るフックの斜視図である。
図19図19は、第3実施形態に係るフックの斜視図である。
図20図20は、第3実施形態の変形例1に係る操舵力アシスト機構の正面図である。
図21図21は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の側面図である。
図22図22は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
図23図23は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。
図24図24は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。
図25図25は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
図26図26は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の側面図である。
図27図27は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
図28図28は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
図29図29は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。
図30図30は、第5実施形態に係るフックの斜視図である。
図31図31は、第5実施形態に係るフックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
なお、以下において、第1から第3実施形態はウォームシャフトハウジングにフックを設ける態様を示し、第4および第5実施形態はウォームホイールハウジングにフックを設ける態様を示す。また、第1、第2、第4および第5実施形態はフックが鍵フックである態様を示し、第3実施形態はフックが柱状フックである態様を示す。さらに、第1、第4実施形態はパーティングラインが非直線状である態様を示し、第2、第3、第5実施形態はパーティングラインが直線状である態様を示す。なお、本発明では、フックの数を3つに設定したが、3つ以上のフックを備えてもよい。
【0028】
さらに、以下の実施形態では、コラムタイプのステアリング装置における減速機ハウジングにフックを設ける態様を示すが、本発明は、これに限定されず、シングルピニオンタイプやデュアルピニオンタイプのステアリング装置における減速機ハウジングにフックを設ける態様も含む。
【0029】
第1実施形態から第3実施形態においては、図面中X方向は、第1方向である。X方向は、中心軸AX1の径方向と平行である。X1側は、第1方向の一方側であり、X2側(他方側)の反対側である。Y方向は、第2方向である。Y方向は、X方向に直交(交差)する。Y方向は、中心軸AX1の軸方向と平行である。Y1側は、第2方向の一方側であり、Y2側(他方側)の反対側である。Z方向は、第3方向である。Z方向は、X方向およびY方向に直交(交差)する。Z1側は、第3方向の一方側であり、Z2側(他方側)の反対側である。
【0030】
第4実施形態から第5実施形態においては、図面中x方向は、第1方向である。x方向は、中心軸AX2の径方向と平行である。x1側は、第1方向の一方側であり、x2側(他方側)の反対側である。y方向は、第2方向である。y方向は、x方向に直交(交差)する。y方向は、中心軸AX2の軸回りの周方向と平行である。y1側は、第2方向の一方側であり、y2側(他方側)の反対側である。z方向は、第3方向である。z方向は、x方向およびy方向に直交(交差)する。z方向は、中心軸AX2の軸方向と平行である。z1側は、第3方向の一方側であり、z2側(他方側)の反対側である。
【0031】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。図2は、第1実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。図3は、第1実施形態のフックの斜視図である。図4は、第1実施形態の操舵力アシスト機構の側面図である。図5は、第1実施形態の操舵力アシスト機構の模式的な正面図である。図6Aは、第1実施形態のフックの拡大斜視図である。図6Bは、第1実施形態のフックの拡大斜視図である。図7は、ウォームシャフトハウジングと鋳造型とを示す模式図である。
【0032】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、中間シャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ステアリングギヤ88と、ECU90と、車速センサ95と、イグニッションスイッチ98と、電源装置99と、を備える。
【0033】
図1に示すように、ステアリングシャフト82は、入力軸82aと出力軸82bとを有する。入力軸82aの前方端部は、出力軸82bの内側に挿入される。操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、モータ93と、トルクセンサ91と、を含む。操舵力アシスト機構83については、詳細に後述する。中間シャフト85は、ユニバーサルジョイント84とユニバーサルジョイント86とを連結している。中間シャフト85の一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87の一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、ピニオンシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。ユニバーサルジョイント84及びユニバーサルジョイント86は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転が中間シャフト85を介してピニオンシャフト87に伝わる。すなわち、中間シャフト85はステアリングシャフト82に伴って回転する。
【0034】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを含む。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0035】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ91と、車速センサ95と、を含む。モータ93、トルクセンサ91及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ91は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、電動パワーステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に設けられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0036】
図1に示すように、ECU90は、モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ91及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいてモータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、モータ93の誘起電圧の情報又はモータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90がモータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0037】
図2および図4に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、モータ93とを含む。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。減速装置92は、ウォームシャフト922と、ウォームホイール921と、減速機ハウジング100と、を有する。ウォームシャフト922は、ウォームホイール921に噛みあう。ウォームシャフト922は、モータ93の出力軸93dに取り付けられる。ウォームシャフト922は、中心軸AX1の軸回り方向に回転する。ウォームホイール921は、中心軸AX2の軸回り方向に回転する。ウォームホイール921は、ウォームシャフト922に対して直交する。即ち、中心軸AX2は、中心軸AX1に対して直交する。減速機ハウジング100は、鋳造型6(図7参照)を用いて成形する鋳造品である。減速機ハウジング100は、ウォームシャフトハウジング2と、ウォームホイールハウジング3と、を含む。ウォームシャフトハウジング2は、ウォームシャフト922を収容する。ウォームホイールハウジング3は、ウォームホイール921を収容する。ウォームホイールハウジング3は、車体取付部34を有し、車体取付部34が図示しない車体部材に取り付けられる。
【0038】
図2に示すように、ウォームシャフトハウジング2にモータ93が取り付けられる。ウォームシャフトハウジング2のモータ取付けフランジ21とモータ93のフランジ93bとがボルトBLを介して締結される。また、図2に示すように、ウォームホイールハウジング3の内部には、前述したトルクセンサ91が収容されている。モータ93には、側方に突出する突出部910が設けられる。ウォームホイールハウジング3の下部には、トルクセンサ91と電気的に接続されたコネクタCNが設けられる。センサーハーネス(ハーネス)911の一端はコネクタCNに接続され、他端は突出部910に挿入されている。センサーハーネス911は、ウォームシャフトハウジング2の外面のフック4で位置が規制される。フック4は、図3に示すように、減速機ハウジング100に含まれるウォームシャフトハウジング2の外面2aに設けられ、X1側(第1方向の一方側)に向けて突出する。フック4は、複数設けられてセンサーハーネス911の位置を規制する。具体的には、図2に示すように、センサーハーネス911は、突出部910から、ウォームシャフトハウジング2の外面2a上を軸方向に沿って延びる。このとき、3つのフック4にセンサーハーネス911を架け渡すことにより、フック4によってセンサーハーネス911に張力が生じる。当該張力によって、センサーハーネス911のフック4に対する位置が規制される。即ち、フック4がない場合は、センサーハーネス911の位置が規制されず、センサーハーネス911に外力が加わるとセンサーハーネス911の位置が左右に移動してしまう。以下、フックについて詳細に説明する。
【0039】
図3に示すように、第1実施形態に係るフック4は、鍵フックであり、第1鍵フック41と、第2鍵フック42と、第3鍵フック43と、を備える。第1鍵フック41、第2鍵フック42および第3鍵フック43は、Y1側からY2側に向けてこれらの順に並ぶ。即ち、第1鍵フック41、第2鍵フック42および第3鍵フック43は、Y方向(第2方向)に沿って並ぶ。なお、図5に示すように、パーティングラインPL1は、Y方向に延びる。このように、複数のフック4は、Y方向に延びるパーティングラインPLに沿って配置される。
【0040】
図6Aおよび図6Bを参照し、第1鍵フック41を例として鍵フックの形状を説明する。図6Aおよび図6Bに示すように、第1鍵フック41は、基部4aと、位置規制部4bとを有する。基部4aは、ウォームシャフトハウジング2の外面2aからX1側に突出する。位置規制部4bは、基部4aの先端に固定される。位置規制部4bには、Y方向から見てU字状の切り欠き4cが設けられる。切り欠き4cは開口4eを有する。センサーハーネス911は、開口4eから挿入されて切り欠き4cで位置規制することが可能である。図3に示すように、第1鍵フック41における切り欠き4cの開口4eは、Z1側を向く。第2鍵フック42における切り欠き4cの開口4eは、Z2側を向く。第3鍵フック43における切り欠き4cの開口4eは、Z1側を向く。なお、第1実施形態では、第1鍵フック41、第2鍵フック42および第3鍵フック43におけるX方向の高さは、3つとも同じである。
【0041】
また、図5に示すように、第1鍵フック41、第2鍵フック42および第3鍵フック43は、パーティングラインPL1に沿って配置される。パーティングラインPL1は、X方向から見て、非直線状である。具体的には、図5に示すように、パーティングラインPL1は、第1鍵フック41に対してZ2側に位置し、第2鍵フック42に対してZ1側に位置し、第3鍵フック43に対してZ2側に位置する。さらに具体的には、図6Aおよび図6Bに示すように、パーティングラインPL1は、第1鍵フック41、第2鍵フック42および第3鍵フック43における位置規制部4bの背面4dを通るように配置される。換言すると、X方向から見て、パーティングラインPL1は、鍵フックの切り欠き4cに対して非重畳である。
【0042】
図2に示すように、センサーハーネス911は、Z1側に開口4eが設けられる第1鍵フック41で位置規制され、Z2側に開口4eが設けられる第2鍵フック42で位置規制され、Z1側に開口4eが設けられる第3鍵フック43で位置規制される。このように、鍵フックの開口4eの向きは、第1鍵フック41から第3鍵フック43に向かうに従ってZ方向で互い違いに配置される。従って、第1鍵フック41から第3鍵フック43に向かうに従ってZ方向で同じ向きに配置される態様と比較すると、センサーハーネス911が左右に湾曲した状態で位置規制される。
【0043】
図7に示すように、鋳造型6は、第1型61と、第2型62と、を有する。第1型61は、第2型62に対して隣接して配置される。第1型61の縁611と、第2型62の縁621とは当接する。つまり、当接した状態における縁611および縁621は、鋳造型6のパーティングラインPLである。第1実施形態に係るパーティングラインPL1は、前述のように、非直線状であり、第1鍵フック41、第2鍵フック42および第3鍵フック43における位置規制部4bの背面4dを通る。第1型61が第1方向D1に移動し、第2型62が第2方向D2に移動することにより、鋳造型6が開く。
【0044】
以上説明したように、電動パワーステアリング装置80は、ウォームシャフトハウジング2とウォームホイールハウジング3とのいずれかを含み且つ鋳造品からなる減速機ハウジング100を備える。減速機ハウジング100の外面2aには、センサーハーネス911(ハーネス)を位置規制する複数のフック4が設けられる。複数のフック4は、Y方向に延びるパーティングラインPL1(PL)に沿って配置される。
【0045】
前述したように、特許文献1の減速機ハウジングは、樹脂製のクリップを備え、当該クリップにハーネスを取り付けている。ただし、車両組み立て時などにおいて、クリップは、他の車両部品等が当たったときなどの外力を受けたときに損傷を受ける可能性があるため、例えば鋳造品で成形する高剛性のフックが望まれている。しかし、フックを有する減速機ハウジングを鋳造で成形する場合、鋳造型を開くときにフックに型が引っ掛からないように、鋳造型を多くの型に分割する必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、フック4を複数設け、パーティングラインPLに沿って配置している。これにより、例えば、パーティングラインPLを挟んで一方側に位置する第1型61と、パーティングラインPLを挟んで他方側に位置する第2型62との2つの型で鋳造型6を構成することができる。そして、複数のフック4の一部を第1型61で成形し、残りのフック4を第2型62で成形することができる。このように、本実施形態によれば、より少ない型を有する鋳造型6を用いて、複数のフック4を有する減速機ハウジング100を鋳造で成形することが可能となる。
【0047】
フック4は、鍵フックである。鍵フックは、Y方向から見てU字状の切り欠き4cが設けられる位置規制部4bを備える。切り欠き4cの開口4eから挿入されるセンサーハーネス911が切り欠き4cで位置規制される。第1鍵フック41における切り欠き4cの開口4eは、Z1側(第3方向の一方側)を向く。第2鍵フック42における切り欠き4cの開口4eは、Z2側(第3方向の他方側)を向く。第3鍵フック43における切り欠き4cの開口4eは、Z1側を向く。
【0048】
第1鍵フック41から第3鍵フック43に向かうに従って開口4eがZ方向で同じ向きに配置される態様では、センサーハーネス911に張力が生じにくくなるため、開口4eが向く方向からセンサーハーネス911が抜ける可能性がある。しかし、本実施形態では、鍵フックの開口4eの向きが、第1鍵フック41から第3鍵フック43に向かうに従ってZ方向で互い違いに配置されるため、センサーハーネス911が略S字状に湾曲して張力が生じる。従って、本実施形態の方が、複数の鍵フックからセンサーハーネス911が抜けにくくなる。
【0049】
X方向から見て、パーティングラインPL1(PL)は、第1鍵フック41に対してZ2側に位置し、第2鍵フック42に対してZ1側に位置し、第3鍵フック43に対してZ2側に位置する。
【0050】
センサーハーネス911は切り欠き4cに挿入および位置規制されるため、切り欠き4cの周縁部にバリ等が生じると、センサーハーネス911に損傷が生じる可能性がある。しかし、本実施形態では、X方向から見て、パーティングラインPL1が切り欠き4cと非重畳であるため、切り欠き4cの周縁部にバリ等が生じることが抑制される。
【0051】
[第1実施形態の変形例1]
次に、第1実施形態の変形例1について説明する。図8は、第1実施形態の変形例1に係る操舵力アシスト機構の側面図である。図9は、第1実施形態の変形例1に係るフックの斜視図である。
【0052】
第1実施形態の変形例1に係る操舵力アシスト機構83Aにおいては、3つの鍵フック4Aの高さが相違する。図8および図9に示すように、第1鍵フック41AにおけるX方向に沿った高さを第1高さH1とする。第2鍵フック42AにおけるX方向に沿った高さを第2高さH2とする。第3鍵フック43AにおけるX方向に沿った高さを第3高さH3とする。第1高さH1は、第3高さH3と同じである。第1高さH1および第3高さH3は、第2高さH2よりも低い。ただし、本発明では、第1高さH1および第3高さH3が、第2高さH2よりも高い態様でもよい。なお、当該変形例1においては、第1鍵フック41Aと第2鍵フック42AとのY方向距離は、第2鍵フック42Aと第3鍵フック43AとのY方向距離と同じである。
【0053】
以上説明したように、第1鍵フック41Aの第1高さH1は、第2鍵フック42Aの第2高さH2と異なり且つ第3鍵フック43Aの第3高さH3と同じである。
【0054】
従って、Z方向から見た場合に、第1鍵フック41A、第2鍵フック42Aおよび第3鍵フック43Aで位置規制されるセンサーハーネス911が緩やかなU字形状となる。これに対して、第1高さH1、第2高さH2および第3高さH3が全て同じ態様の場合は、Z方向から見た場合に、センサーハーネス911が直線状となる。従って、本実施形態によれば、第1鍵フック41A、第2鍵フック42Aおよび第3鍵フック43Aによるセンサーハーネス911の曲がり度合いが大きくなって張力がより大きくなり、鍵フック4Aによるセンサーハーネス911の位置規制力がより高くなる。
【0055】
[第1実施形態の変形例2]
次に、第1実施形態の変形例2について説明する。図10は、第1実施形態の変形例2に係る操舵力アシスト機構の正面図である。
【0056】
第1実施形態の変形例2においては、3つの鍵フック4BのY方向距離が相違する。図10に示すように、第1鍵フック41Bと第2鍵フック42BとのY方向に沿った距離は、第1距離L1である。第2鍵フック42Bと第3鍵フック43BとのY方向に沿った距離は、第2距離L2である。第1距離L1は、第2距離L2よりも大きい。ただし、本発明では、第1距離L1は、第2距離L2よりも小さい態様も含む。なお、当該変形例2においては、第1鍵フック41B、第2鍵フック42Bおよび第3鍵フック43BのX方向の高さが同じである。
【0057】
以上説明したように、操舵力アシスト機構83Bにおいては、第1鍵フック41Bと第2鍵フック42BとのY方向に沿った第1距離L1は、第2鍵フック42Bと第3鍵フック43BとのY方向に沿った第2距離L2と相違する。
【0058】
従って、例えば第2距離L2が第1距離L1よりも小さい場合、第2鍵フック42Bと第3鍵フック43Bとの間に位置するセンサーハーネス911の部位の方が、第1鍵フック41Bと第2鍵フック42Bとの間に位置するセンサーハーネス911の部位の方よりも、X方向から見たときのセンサーハーネス911の曲がり度合いが大きくなり、張力も大きくなる。
【0059】
従って、第1鍵フック41B、第2鍵フック42Bおよび第3鍵フック43BがY方向に等間隔で並ぶ態様と比較して、鍵フック4Bによるセンサーハーネス911の位置規制力がより高くなる。
【0060】
[第1実施形態の変形例3]
次に、第1実施形態の変形例3について説明する。図11は、第1実施形態の変形例3に係るフックの斜視図である。
【0061】
第1実施形態の変形例3においては、3つの鍵フック4Cの高さが相違し且つY方向距離が相違する。図11に示すように、第1鍵フック41Cと第2鍵フック42CとのY方向に沿った第1距離L1は、第2鍵フック42Cと第3鍵フック43CとのY方向に沿った第2距離L2よりも大きい。ただし、本発明では、第1距離L1は、第2距離L2よりも小さい態様も含む。さらに、第1鍵フック41Cの第1高さH1および第3鍵フック43Cの第3高さH3は、第2鍵フック42Cの第2高さH2よりも低い。ただし、本発明では、第1高さH1および第3高さH3が、第2高さH2よりも高い態様でもよい。このように、変形例3では、変形例1と変形例2とを組み合わせた態様である。
【0062】
以上説明したように、第1鍵フック41Cと第2鍵フック42Cとの第1距離L1は、第2鍵フック42Cと第3鍵フック43Cとの第2距離L2と相違する。これによれば、第1距離L1が第2距離L2と相違し、且つ、第1高さH1が第2高さH2と相違し第3高さH3と同じになるため、鍵フック4Cで位置規制されるセンサーハーネス911の曲がり度合いがさらに大きくなって張力が大きくなり、鍵フック4Cによるセンサーハーネス911の位置規制力がさらに高くなる。
【0063】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図12は、第2実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。図13は、第2実施形態に係るフックの斜視図である。図14は、第2実施形態に係るフックの斜視図である。第1実施形態ではパーティングラインPL1が非直線状である態様を示したが、第2実施形態はパーティングラインPL2が直線状である態様を示す。
【0064】
図12に示すように、X方向から見て、パーティングラインPL2はY方向に延びる直線状である。X方向から見て、第2実施形態に係る鍵フック4Dに含まれる第1鍵フック41Dは、パーティングラインPL2に対してZ1側に位置する。第2鍵フック42Dは、パーティングラインPL2に対してZ2側に位置する。第3鍵フック43Dは、パーティングラインPL2に対してZ1側に位置する。具体的には、図13および図14に示すように、パーティングラインPL2は、第1鍵フック41D、第2鍵フック42Dおよび第3鍵フック43Dにおける位置規制部4bの背面4dを通るように配置される。換言すると、X方向から見て、パーティングラインPL2は、鍵フック4Dの切り欠き4cに対して非重畳である。
【0065】
以上説明したように、操舵力アシスト機構83Dにおいては、パーティングラインPL2は、X方向から見て、直線状である。これによれば、鋳造型6の合わせ部分が平坦面になる。即ち、第1型61の縁611および第2型62の縁621がX方向から見て直線状になるため、鋳造型6の製造が容易になる。また、鋳造型6の合わせ部分が平坦面になるため、鋳造型6の合わせ部分の密閉性がより高くなるというメリットもある。
【0066】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図15は、第3実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。図16は、第3実施形態に係るフックの斜視図である。図17は、第3実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。図18は、第3実施形態に係るフックの斜視図である。図19は、第3実施形態に係るフックの斜視図である。第1および第2実施形態では、フックの例として鍵フックの態様を説明したが、第3実施形態では、柱状フックの態様を説明する。
【0067】
図15から図19に示すように、柱状フック4Eは、外面2aからX1側に突出する。柱状フック4Eは、基部4hと、小径部4fと、大径部4gと、を備える。基部4hは、外面2aに設けられる。小径部4fは、基部4hに対してX1側に設けられる円柱部材である。大径部4gは、小径部4fに対してX1側に設けられる。大径部4gは、小径部4fよりも径が大きい円柱部材である。小径部4fでセンサーハーネス911が位置規制される。図17に示すように、X方向から見て、第1柱状フック41E、第2柱状フック42Eおよび第3柱状フック43Eは、Y方向に沿って直線状に配置される。パーティングラインPL3は、直線状である。パーティングラインPL3は、第1柱状フック41E、第2柱状フック42Eおよび第3柱状フック43EにおけるZ方向の中央を通る。なお、第3実施形態では、第1柱状フック41E、第2柱状フック42Eおよび第3柱状フック43Eは、Y方向に沿って等間隔に配置される。
【0068】
以上説明したように、操舵力アシスト機構83Eにおいては、柱状フック4Eは、円柱状の小径部4fと、大径部4gと、を備える。
【0069】
このように、円柱状の小径部4fにセンサーハーネス911が位置規制されるため、センサーハーネス911を小径部4fの右側に当接させてもよいし、小径部4fの左側に当接させてもよい。従って、センサーハーネス911を柱状フック4Eで位置規制する作業が容易になる。
【0070】
また、X方向から見て、複数の柱状フック4Eは直線状に配置され、パーティングラインPL3は、直線状であり、且つ、複数の柱状フック4EのZ方向の中央を通る。これによれば、鋳造型6を開くときに、第1型61および第2型62が柱状フック4Eに引っ掛かりにくくなり、減速機ハウジング100の成形作業が容易になる。
【0071】
[第3実施形態の変形例1]
次に、第3実施形態の変形例1について説明する。図20は、第3実施形態の変形例1に係る操舵力アシスト機構の正面図である。
【0072】
図20に示すように、第3実施形態の変形例1に係る柱状フック4Fは、第1柱状フック41F、第2柱状フック42Fおよび第3柱状フック43Fを有する。第1柱状フック41Fと第2柱状フック42FとのY方向に沿った第1距離L1は、第2柱状フック42Fと第3柱状フック43FとのY方向に沿った第2距離L2よりも大きい。なお、本発明では、第1距離L1が第2距離L2よりも小さくてもよい。
【0073】
以上説明したように、複数の柱状フック4Fは、第1柱状フック41F、第2柱状フック42Fおよび第3柱状フック43Fを有する。第1柱状フック41Fと第2柱状フック42FとのY方向に沿った第1距離L1は、第2柱状フック42Fと第3柱状フック43Fとの第2距離L2と相違する。
【0074】
従って、本実施形態に係る操舵力アシスト機構83Fにおいては、第1柱状フック41F、第2柱状フック42Fおよび第3柱状フック43Fによるセンサーハーネス911の曲がり度合いが大きくなって張力が大きくなり、柱状フック4Fによるセンサーハーネス911の位置規制力がより高くなる。
【0075】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。図21は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の側面図である。図22は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。図23は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。図24は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。図25は、第4実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。
【0076】
第1から第3実施形態では、フックを設ける部位をウォームシャフトハウジング2に設定したが、第4実施形態では、図21から図25に示すように、ウォームホイールハウジング3に鍵フック(フック)4Gを設ける態様を説明する。
【0077】
具体的には、第4実施形態では、第1実施形態に係る鍵フックと同じ形状の鍵フック4Gを3つパーティングラインPL4に沿って配置している。即ち、第1鍵フック41Gの形状は第1鍵フック41と同じであり、第2鍵フック42Gの形状は第2鍵フック42と同じであり、第3鍵フック43Gの形状は第3鍵フック43と同じである。なお、図22に示すように、ウォームホイールハウジング3には突出部3aが設けられ、突出部3aの内部にトルクセンサ91が収容されている。突出部3aの下部には、トルクセンサ91と電気的に接続されたコネクタCNが設けられる。センサーハーネス(ハーネス)912の一端はコネクタCNに接続され、他端は、ウォームシャフトハウジング2におけるモータ側の端部2bに挿入されている。なお、本発明において、ハーネスは、センサーハーネスに限定されず、例えば電源ハーネス等のハーネスにも適用可能である。
【0078】
図23に示すように、ウォームホイールハウジング3は、本体部31とカバー32とを備える。本体部31は、側面部31aと、周面部31bとを有する。側面部31aは、図21に示すように、円板部材である。周面部31bは、側面部31aの外周縁から中心軸AX2の軸方向に沿って延びる。周面部31bは、図23に示すように、中心軸AX2の軸回りの周方向に沿って延びる円筒形状を有する。従って、第1鍵フック41G、第2鍵フック42および第3鍵フック43Gは、中心軸AX2を中心とする径方向の外側(x1側)に突出する。第1鍵フック41G、第2鍵フック42Gおよび第3鍵フック43Gは、周面部31bに設けられ且つ周方向(y方向)に沿って等間隔に配置される。図25に示すように、パーティングラインPL4は、ウォームホイール921の径方向(x方向)から見て、周面部31bの周方向に沿って非直線状である。パーティングラインPL4は、第1鍵フック41Gに対してz2側に位置し、第2鍵フック42Gに対してz1側に位置し、第3鍵フック43Gに対してz2側に位置する。図24に示すように、第1鍵フック41Gにおける切り欠き4cの開口4eは、z1側を向く。第2鍵フック42Gにおける切り欠き4cの開口4eは、z2側を向く。第3鍵フック43Gにおける切り欠き4cの開口4eは、z1側を向く。なお、図24に示すように、カバー32は、周面部31bに対してボルトBLを介して締結される。フランジ33は、ボルトBLを介してカバー32に締結されている。
【0079】
以上説明したように、操舵力アシスト機構83Gにおいては、ウォームホイールハウジング3に鍵フック4Gを設ける態様でも、前述した実施形態と同様の効果を有する。即ち、例えば、例えば、パーティングラインPL4を挟んで一方側に位置する第1型61と、パーティングラインPL4を挟んで他方側に位置する第2型62との2つの型で鋳造型6を構成することができる。そして、複数の鍵フック4Gの一部を第1型61で成形し、残りの鍵フック4Gを第2型62で成形することができる。このように、本実施形態によれば、より少ない型を有する鋳造型6を用いて、鍵フック4Gを有する減速機ハウジング100を鋳造で成形することが可能となる。
【0080】
また、パーティングラインPL4は、第1鍵フック41Gに対してz2側に位置し、第2鍵フック42Gに対してz1側に位置し、第3鍵フック43Gに対してz2側に位置するため、x方向から見て、パーティングラインPL4が切り欠き4cと非重畳となり、切り欠き4cの周縁部にバリ等が生じることが抑制される。
【0081】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。図26は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の側面図である。図27は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。図28は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の正面図である。図29は、第5実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。図30は、第5実施形態に係るフックの斜視図である。図31は、第5実施形態に係るフックの斜視図である。
【0082】
第5実施形態では、図26から図31に示すように、3つの鍵フック(フック)4Hを、カバー32と周面部31bと分けて取り付けている。3つの鍵フック4Hは、第1鍵フック41H、第2鍵フック42Hおよび第3鍵フック43Hである。図27に示すように、第1鍵フック41Hおよび第3鍵フック43Hは、周面部31bに設けている。第2鍵フック42Hは、カバー32に設けている。第1鍵フック41Hにおける開口4eは、z2側を向く。第2鍵フック42Hにおける開口4eは、z1側を向く。第3鍵フック43Hにおける開口4eは、z2側を向く。図28に示すように、パーティングラインPL5は、ウォームホイール921の径方向から見て、周面部31bの周方向に沿って直線状である。パーティングラインPL5は、ウォームホイールハウジング3の本体部31とカバー32との合わせ面である。パーティングラインPL5は、第1鍵フック41Hに対してz1側に位置し、第2鍵フック42Hに対してz2側に位置し、第3鍵フック43Hに対してz1側に位置する。
【0083】
以上説明したように、操舵力アシスト機構83Hにおいては、3つの鍵フック(フック)4Hを、カバー32と周面部31bとに分けて取り付け、カバー32と周面部31bとを突き合せる態様であり、当該態様によっても、前述した実施形態と同様の作用効果を有することができる。
【符号の説明】
【0084】
2 ウォームシャフトハウジング
2a 外面
2b 端部
21 モータ取付けフランジ
3 ウォームホイールハウジング
3a 突出部
31 本体部
31a 側面部
31b 周面部
32 カバー
33 フランジ
34 車体取付部
4 フック
4a 基部
4b 位置規制部
4c 切り欠き
4d 背面
4e 開口
4f 小径部
4g 大径部
4h 基部
41 第1鍵フック
42 第2鍵フック
43 第3鍵フック
4A 鍵フック(フック)
41A 第1鍵フック
42A 第2鍵フック
43A 第3鍵フック
4B 鍵フック(フック)
41B 第1鍵フック
42B 第2鍵フック
43B 第3鍵フック
4C 鍵フック(フック)
41C 第1鍵フック
42C 第2鍵フック
43C 第3鍵フック
4D 鍵フック(フック)
41D 第1鍵フック
42D 第2鍵フック
43D 第3鍵フック
4E 柱状フック(フック)
41E 第1柱状フック
42E 第2柱状フック
43E 第3柱状フック
4F 柱状フック(フック)
41F 第1柱状フック
42F 第2柱状フック
43F 第3柱状フック
4G 鍵フック(フック)
41G 第1鍵フック
42G 第2鍵フック
43G 第3鍵フック
4H 鍵フック(フック)
41H 第1鍵フック
42H 第2鍵フック
43H 第3鍵フック
6 鋳造型
61 第1型
611 縁
62 第2型
621 縁
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
83A 操舵力アシスト機構
83B 操舵力アシスト機構
83D 操舵力アシスト機構
83E 操舵力アシスト機構
83F 操舵力アシスト機構
83G 操舵力アシスト機構
83H 操舵力アシスト機構
84 ユニバーサルジョイント
85 中間シャフト
86 ユニバーサルジョイント
87 ピニオンシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
91 トルクセンサ
910 突出部
911 センサーハーネス(ハーネス)
912 センサーハーネス(ハーネス)
92 減速装置
921 ウォームホイール
922 ウォームシャフト
93 モータ
93b フランジ
93d 出力軸
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
100 減速機ハウジング
AX1 中心軸
AX2 中心軸
BL ボルト
CN コネクタ
D1 第1方向
D2 第2方向
H1 高さ
H2 高さ
L1 第1距離
L2 第2距離
PL パーティングライン
PL1 パーティングライン
PL2 パーティングライン
PL3 パーティングライン
PL4 パーティングライン
PL5 パーティングライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31