(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114185
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20250729BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008711
(22)【出願日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 悟
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011EE01
3C011EE08
(57)【要約】
【課題】クーラント供給用のポンプの電力消費量を低減する。
【解決手段】工作機械1のクーラント供給装置4は、クーラントCLを圧送するポンプ16と、クーラントCLの供給を制御するバルブ20と、クーラントCLを吐出する吐出部22と、を備える。バルブ20は、吐出部22がクーラントCLを間欠的に吐出するように、吐出部22に対するクーラントCLの供給を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機内にクーラントを供給するクーラント供給装置を備える工作機械において、
前記クーラント供給装置は、前記クーラントを圧送するポンプと、前記クーラントの供給量を制御するバルブと、前記クーラントを吐出する吐出部と、を備え、
前記バルブは、前記吐出部が前記クーラントを間欠的に吐出するように、前記吐出部に対する前記クーラントの供給を制御することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記バルブは、第一バルブと、第二バルブとを含み、
前記吐出部は、前記第一バルブに対応する第一吐出部と、前記第二バルブに対応する第二吐出部と、を含み、
前記第一バルブによる前記第一吐出部への前記クーラントの供給と、前記第二バルブによる前記第二吐出部への前記クーラントの供給と、を交互に行う請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記バルブは、第一バルブと、第二バルブとを含み、
前記吐出部は、前記第一バルブに対応する第一吐出部と、前記第二バルブに対応する第二吐出部と、を含み、
前記第一吐出部と前記第二吐出部とは、前記クーラントの吐出方向が交差するように配置される請求項1又は2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、工作機械に切削液(クーラント)を供給する切削液供給装置を開示している。切削液供給装置は、切削液を貯留する貯留タンクと、工作機械に切削液を圧送する機内洗浄用ポンプと、切削液を吐出する機内洗浄用ノズルと、機内洗浄用ポンプと機内洗浄用ノズルとを接続する供給流路(第3の切削液流路)と、供給流路に設けられるバルブ(第3開閉弁)と、を備える(同文献の段落0022、0028、0038及び
図1参照)。
【0003】
切削液供給装置は、機内洗浄用ポンプを駆動することにより、貯留タンクに貯留された切削液を、供給流路を通じて機内洗浄用ノズルに圧送する。機内洗浄用ノズルは、その先端の吐出口から切削液をワーク及びその周辺のベッド上に向けて吐出する(同文献の段落0047、0049参照)。
【0004】
機内洗浄用ノズルは、工作機械の内部において、複数箇所に設けられる場合がある(特許文献2の段落0024及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-76999号公報
【特許文献2】特開2013-123764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の切削液供給装置では、貯留タンクの切削液を機内洗浄用ノズルから吐出させ続けるために、機内洗浄用ポンプを駆動し続ける必要がある。多数のワークを加工する場合には、ワークの数に比例して機内洗浄用ポンプの駆動時間も長くなり、その電力消費量が増大することになる。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、クーラント供給用のポンプの電力消費量を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、機内にクーラントを供給するクーラント供給装置を備える工作機械において、前記クーラント供給装置は、前記クーラントを圧送するポンプと、前記クーラントの供給量を制御するバルブと、前記クーラントを吐出する吐出部と、を備え、前記バルブは、前記吐出部が前記クーラントを間欠的に吐出するように、前記吐出部に対する前記クーラントの供給を制御することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、クーラント供給装置の吐出部から工作機械の内部(機内)にクーラントを間欠的に供給することで、クーラントを連続的に供給する場合と比較して、加工中の工作機械に供給されるクーラントの総流量を低減させることができる。これにより、クーラント供給用のポンプの電力消費量を低減させることが可能になる。
【0010】
上記構成の工作機械において、前記バルブは、第一バルブと、第二バルブとを含み、前記吐出部は、前記第一バルブに対応する第一吐出部と、前記第二バルブに対応する第二吐出部と、を含み、前記第一バルブによる前記第一吐出部への前記クーラントの供給と、前記第二バルブによる前記第二吐出部への前記クーラントの供給と、を交互に行ってもよい。
【0011】
上記構成の工作機械において、前記バルブは、第一バルブと、第二バルブとを含み、前記吐出部は、前記第一バルブに対応する第一吐出部と、前記第二バルブに対応する第二吐出部と、を含み、前記第一吐出部と前記第二吐出部とは、前記クーラントの吐出方向が交差するように配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クーラント供給用のポンプの電力消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】クーラント供給装置の吐出部の例を示す側面図である。
【
図3】クーラント供給装置の吐出部におけるクーラントの吐出方向を示す側面図である。
【
図4】クーラント供給装置の吐出部の例を示す平面図である。
【
図5】クーラント供給装置の吐出部におけるクーラントの吐出方向を示す平面図である。
【
図6】クーラントの供給方法を示すフローチャートである。
【
図7】クーラント供給装置の第一バルブに係るクーラントの流量と時間との関係を示すグラフである。
【
図8】クーラント供給装置の第二バルブに係るクーラントの流量と時間との関係を示すグラフである。
【
図9】従来のクーラント供給装置の第一バルブに係るクーラントの流量と時間との関係を示すグラフである。
【
図10】従来のクーラント供給装置の第二バルブに係るクーラントの流量と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図8は、本発明に係る工作機械の一実施形態を示す。
【0015】
図1に示すように、工作機械1は、ベッド2と、ワークWを支持する治具3と、クーラント供給装置4と、カバー5と、制御装置6と、を備える。工作機械1は、機内に配備された工具7をベッド2に対して相対的に移動させることで、治具3に保持されたワークWに各種の加工を施すことができる。
【0016】
ベッド2は、治具3を支持する支持面8と、ワークWの加工により生じた切粉を排出する排出流路9とを有する。支持面8は、ベッド2の上部に設けられている。排出流路9は、ベッド2の上部に形成される第一開口部10と、ベッド2の内部に形成される傾斜面11と、ベッド2の側部に形成される第二開口部12とを有する。加工中にワークWから落下する切粉は、第一開口部10から排出流路9に収容され、傾斜面11を通じて第二開口部12からベッド2外へと排出される。
【0017】
図1及び
図2に示すように、治具3は、ワークWの下面を支持する支持部材13と、ワークWを押さえる押圧部材14と、を備える。支持部材13は、ワークWに接触する支持面13aを有する。支持面13aは、ワークWの位置決めを行う基準面として構成される。押圧部材14は、支持部材13とともにワークWを挟持するように、ワークWの上面に対して接触する。
【0018】
クーラント供給装置4は、クーラントCLを貯留する貯留タンク15と、貯留タンク15に貯留されるクーラントCLを圧送するポンプ16と、クーラントCLの供給流路17~19と、クーラントCLを機内に吐出する吐出部22~24と、を備える。
【0019】
ポンプ16は、例えば遠心渦巻ポンプにより構成されるが、ポンプ16の種別は本実施形態に限定されない。
【0020】
供給流路17~19は、ポンプ16に接続される主供給流路17と、主供給流路17から分岐する、第一供給流路18及び第二供給流路19と、を含む。
【0021】
第一供給流路18は、その中途部に第一バルブ(流量制御弁)20を有する。第二供給流路19は、その中途部に第二バルブ(流量制御弁)21を有する。各バルブ20,21は、例えば電磁制御弁により構成されており、各吐出部22~24がクーラントCLを間欠的に吐出するように、各吐出部22~24に対するクーラントCLの供給を制御する。
【0022】
第一供給流路18は、複数に分岐する分岐流路18a~18dを有する。第二供給流路19は、複数に分岐する分岐流路19a,19bを有する。
【0023】
なお、図示していないが、クーラント供給装置4は、貯留タンク15のクーラントCLを工具7に供給する工具用供給流路を個別に有している。工具用供給流路は、ポンプ16に接続されている。
【0024】
図1に示すように、吐出部22~24は、治具3にクーラントCLを供給する治具用吐出部22と、ベッド2にクーラントCLを供給するベッド用吐出部23と、工作機械1の筐体を構成するカバー5の壁部にクーラントCLを供給する壁部用吐出部24と、を含む。各吐出部22~24は、クーラントCLを噴射可能な一個以上のノズルを有する。
【0025】
治具用吐出部22は、第一供給流路18に接続されており、第一バルブ20を介してクーラントCLの供給を受ける第一吐出部である。ベッド用吐出部23及び壁部用吐出部24は、第二供給流路19に接続されており、第二バルブ21を介してクーラントCLの供給を受ける第二吐出部である。
【0026】
図1乃至
図4に示すように、治具用吐出部22は、第一治具用吐出部22aと、第二治具用吐出部22bと、第三治具用吐出部22cと、第四治具用吐出部22dと、を含む。
図4に示すように、各治具用吐出部22a~22dは、所定の間隔をおいて並設される二個のノズルを含む。各治具用吐出部22a~22dは、第一供給流路18の各分岐流路18a~18dに接続されている。治具用吐出部22a~22dにおけるノズルの数は、本実施形態に限定されない。
【0027】
図1乃至
図4に示すように、第一治具用吐出部22aと第二治具用吐出部22bとは、一定の間隔をおいて離間されている。また、第一治具用吐出部22aと第二治具用吐出部22bとは、その間にワークW及び治具3が位置するように、対向して配置されている。この構成により、
図3に示すように、第一治具用吐出部22a及び第二治具用吐出部22bは、側面視においてクーラントCLの吐出方向D1,D2が交差するように配置されている。
【0028】
図4に示すように、第三治具用吐出部22cと第四治具用吐出部22dとは、一定の間隔をおいて離間されている。また、第三治具用吐出部22cと第四治具用吐出部22dとは、その間にワークW及び治具3が位置するように、対向して配置されている。これにより、第三治具用吐出部22cと第四治具用吐出部22dとは、側面視においてクーラントCLの吐出方向が交差するように配置されている(図示省略)。
【0029】
図4及び
図5に示すように、第一治具用吐出部22aと、第三治具用吐出部22cとは、クーラントCLの吐出方向D1,D3が平面視において交差するように配置されている。本実施形態では、第一治具用吐出部22aにおけるクーラントCLの吐出方向D1と、第三治具用吐出部22cにおけるクーラントCLの吐出方向D3との交差角度は、90°であるが、本実施形態に限定されない。同様に、図示は省略するが、第一治具用吐出部22aと第四治具用吐出部22dとは、平面視におけるクーラントCLの吐出方向が交差(直交)するように配置されている。第二治具用吐出部22bと第三治具用吐出部22c、第二治具用吐出部22bと第四治具用吐出部22dの配置についても同じである。
【0030】
図1に示すように、ベッド用吐出部23は、ベッド2の排出流路9にクーラントCLを供給するように、排出流路9の中途部に配置されている。ベッド用吐出部23は、第二供給流路19における一方の分岐流路19aに接続されている。壁部用吐出部24は、カバー5の壁部に対向するように配置されている。壁部用吐出部24は、第二供給流路19における他方の分岐流路19bに接続されている。本実施形態では、一個のベッド用吐出部及び一個の壁部用吐出部24を例示するが、これに限らず、二個以上の各吐出部23,24が機内に配置されてもよい。
【0031】
制御装置6は、ポンプ16の駆動制御及びバルブ20,21の開閉制御を実行する。制御装置6は、第一バルブ20による第一吐出部としての治具用吐出部22へのクーラントCLの供給と、第二バルブ21による第二吐出部としてのベッド用吐出部23及び壁部用吐出部24へのクーラントCLの供給と、を交互に行う。制御装置6は、タイマーを内蔵しており、タイマーで設定される所定時間に基づいて、第一バルブ20及び第二バルブ21の開閉制御の切り替えを実行する。
【0032】
以下、上記構成の工作機械1によるワークWの加工方法について説明する。本方法では、まず、工作機械1の機内にワークWを設置する。ワークWをベッド2上で治具3に支持させると、工具7によってワークWに所定の加工が施される。クーラント供給装置4は、ポンプ16を駆動し、供給流路17~19を通じて各吐出部22~24にクーラントCLを圧送する。各吐出部22~24は、機内の所定位置に向かってクーラントCLを吐出する。
【0033】
図6を参照し、クーラント供給装置4によるクーラントCLの供給方法について詳細に説明する。工作機械1による加工が開始されると、制御装置6は、ポンプ16を駆動するとともに、第一バルブ20と第二バルブ21の開閉制御を実行する。
【0034】
制御装置6は、内蔵するタイマーを始動させ、タイマーに設定される時間(n秒)に基づいて、第一バルブ20と第二バルブ21とを交互に開閉させることで、各吐出部22~24に対してクーラントCLを間欠的に供給する。
【0035】
図6に示すステップS1において、制御装置6は、タイマーを始動させ(ON)、第一バルブ20を開状態(ON)とし、第二バルブ21を閉状態(OFF)とする。これにより、第一バルブ20に接続される第一吐出部としての治具用吐出部22は、治具3に向かってクーラントCLを吐出する。ベッド用吐出部23から吐出されたクーラントCLによって、加工中に生じた切粉を、治具3に付着することなくベッド2の排出流路9に流すことができる。一方、閉状態の第二バルブ21に接続される第二吐出部としてのベッド用吐出部23及び壁部用吐出部24は、クーラントCLを吐出しない。
【0036】
制御装置6は、タイマーで設定された時間(n秒)が経過するまで、上記の状態を維持する。タイマーの設定時間が経過すると(ステップS2においてYes)、制御装置6は、バルブ切替工程(ステップS3)を実行する。
【0037】
具体的には、開状態(ON)の第一バルブ20を閉状態(OFF)にするとともに、閉状態(OFF)の第二バルブ21を開状態(ON)に切り替える。さらに制御装置6は、タイマーの設定時間(n秒)を再設定する。このバルブ切替工程後において、加工が終了していない場合(ステップS4においてNo)には、制御装置6は、タイマーの設定時間(n秒)が経過するまで、上記のクーラントCLの供給状態を維持する。
【0038】
タイマーの設定時間が経過すると(ステップS2においてYes)、制御装置6は、再びバルブ切替工程(ステップS3)を実行する。すなわち、制御装置6は、閉状態(OFF)の第一バルブ20を開状態(ON)にするとともに、開状態(ON)の第二バルブ21を閉状態(OFF)に切り替える。制御装置6は、工作機械1による加工が終了するまで、上記の制御(ステップS2、ステップS3)を繰り返し実行する。
【0039】
ワークWの加工が終了すると、制御装置6は、ポンプ16及びタイマーを停止し、第一バルブ20及び第二バルブ21を閉状態(OFF)に切り替え(ステップS5)、クーラントCLの供給を終了する。
【0040】
図7は、第一バルブ20によるクーラントCLの流量制御の態様を示すグラフである。
図8は、第二バルブ21によるクーラントCLの流量制御の態様を示すグラフである。
図7及び
図8では、横軸が時間T(s)を示し、縦軸が単位時間(1秒)当たりのクーラントCLの流量Q(第一吐出部又は第二吐出部から吐出されるクーラントCLの流量:L/s)を示している。
【0041】
図7及び
図8に示すように、第一バルブ20及び第二バルブ21は、第一吐出部としての治具用吐出部22、第二吐出部としてのベッド用吐出部23及び壁部用吐出部24が一定量のクーラントCLを間欠的に吐出するように、クーラントCLの流量Qを制御する。さらに、第一バルブ20と第二バルブ21は、対応する第一吐出部及び第二吐出部が、交互にクーラントCLを吐出するように、その流量Qを制御する。
【0042】
具体的には、
図7に示すように、第一バルブ20は、加工開始時TSから時間T1までの間に開状態となって一定流量L1のクーラントCLを供給する。その後、第一バルブ20は、時間T1から時間T2までの間に閉状態となってクーラントCLの供給量を行わない。その後、第一バルブ20は、時間T2から時間T3までの間に開状態となってクーラントCLを供給し、時間T3から時間T4までの間に閉状態となってクーラントCLの供給を行わない。第一バルブ20は、このような間欠的なクーラントCLの供給を、その後も時間T5から加工終了時TEまで繰り返す。
【0043】
既述のように、第二バルブ21は、第一バルブ20がクーラントCLの供給を行っているときには、閉状態となり、第一バルブ20がクーラントCLの供給を行っていないときには、開状態となる。
【0044】
具体的には、
図8に示すように、第二バルブ21は、加工開始時TSから時間T1までの間に閉状態となってクーラントCLの供給を行わない。その後、第二バルブ21は、時間T1から時間T2までの間に開状態となって一定流量L1のクーラントCLを供給し、時間T2から時間T3までの間に閉状態となってクーラントCLの供給を行わない。第二バルブ21は、このような間欠的なクーラントCLの供給を、その後も時間T4から加工終了時TEまで繰り返す。
【0045】
図9及び
図10は、従来のクーラントCLの供給方法を示すグラフであり、
図7及び
図8に示すクーラントCLの流量制御の態様と比較するためのものである。
図9は、第一バルブ20によるクーラントCLの流量制御を行わずに、加工開始時TSから加工終了時TEまで一定の流量L1でクーラントCLを連続的に供給した場合を示す。同様に、
図10は、第二バルブ21による流量制御を行わずに、クーラントCLを一定の流量L1で連続的に供給した場合を示す。
【0046】
図7と
図9とを比較し、
図8と
図10とを比較すると、本実施形態の工作機械1によるクーラントCLの供給方法は、従来の供給方法と比較して、加工開始時TSから加工終了時TEまでに機内に供給されるクーラントCLの総流量(Q×T)を低減させることができる。ポンプ16の電力消費量は、ポンプ16によるクーラントCLの供給量、すなわち各吐出部22~24が吐出するクーラントCLの総流量により変動する。本実施形態では、上記のようにクーラントCLの総流量を低減させることで、ポンプ16の電力消費量を従来よりも低減させることができる。これにより、工作機械1によって加工されるワークWの製造コストを可及的に抑制することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の工作機械1によるクーラントCLの供給方法では、第一バルブ20の開閉動作と第二バルブ21の開閉動作を交互に行うことにより、クーラント供給装置4におけるウォータハンマの発生を防止することができる。本実施形態では、上記の実施態様に限らず、ウォータハンマに対する防止策を別途講じることにより、例えば、第一バルブ20の閉状態と、第二バルブ21の閉状態とが同時に生じるように、各バルブ20,21の間欠的な開閉制御を行うことができる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、各吐出部22~24によるクーラントCLの供給を間欠的に行うことで、吐出部22~24から吐出(噴射)されたクーラントCLに緩急のある流れを発生させることができる。このような緩急のあるクーラントCLの流れにより、加工によりワークWから発生した切粉を効果的に押し流すことができる。
【0049】
加えて、複数の治具用吐出部22(22a~22d)に係るクーラントCLの吐出方向D1~D3を交差させることで、治具3に対して異なる複数の方向からクーラントCLを供給することができる。このように、複数の異なる方向から緩急のあるクーラントCLの流れを発生させることで、治具3に対する洗浄効果を高めることができる。
【0050】
上記の他、クーラント供給装置4は、工具用供給流路を通じて、加工中の工具7に対し、クーラントCLを供給することができる。工具7に対するクーラントCLの供給は、連続的に行うことが可能である。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記の実施形態では、第一バルブ20と第二バルブ21の二個のバルブによって、機内にクーラントCLを間欠的に供給する例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、クーラントCLの供給流路に一個のバルブを設け、このバルブから供給されるクーラントCLを、一個以上の吐出部によって機内に間欠的に吐出させてもよい。
【0053】
また、三個以上のバルブを使用して、クーラントCLの間欠的な供給を行うことも可能である。例えば、第一バルブ20によって治具用吐出部22によるクーラントCLの吐出量を制御し、第二バルブ21によってベッド用吐出部23によるクーラントCLの吐出量を制御し、第三バルブによって壁部用吐出部24によるクーラントCLの吐出量を制御してもよい。この場合、二つのバルブが開状態となっている場合に、残りの一つのバルブが閉状態となるように、各バルブの開閉制御を行えばよい。すなわち、三個以上のバルブによりクーラントの供給を行う場合には、少なくとも一つのバルブが閉状態となり、残りのバルブが開状態となるように、各バルブの制御を行うことが可能である。
【0054】
上記の実施形態では、側面視において第一治具用吐出部22aと第二治具用吐出部22bとをクーラントCLの吐出方向D1,D2が交差するように配置した例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、二個以上のベッド用吐出部23を工作機械1に設け、そのうちの二個のベッド用吐出部23をクーラントCLの吐出方向が交差するように配置してもよい。また、治具用吐出部22とベッド用吐出部23とをクーラントCLの吐出方向が交差するように配置してもよく、治具用吐出部22と壁部用吐出部24、ベッド用吐出部23と壁部用吐出部24とをクーラントCLの吐出方向が交差するように配置してもよい。
【0055】
上記の実施形態では、治具用吐出部22における各治具用吐出部22a~24に関して、平面視におけるクーラントCLの吐出方向が交差するように配置した例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。治具用吐出部22とベッド用吐出部23、治具用吐出部22と壁部用吐出部24、ベッド用吐出部23と壁部用吐出部24についても、同様に配置することができる。
【0056】
上記の実施形態では、工作機械1のカバー5の壁部にクーラントCLを噴射する壁部用吐出部24を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。壁部用吐出部24は、例えば機内において多種の工具を収容する工具マガジンのシャッタに対してクーラントCLを吐出してもよい。
【0057】
上記の実施形態では、各バルブ20,21の開状態の時間と閉状態の時間とが等しく設定されていたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、各バルブ20,21の開状態の時間と、閉状態の時間とは、異なっていてもよい。第一バルブ20の開状態の時間と、第二バルブ21の開状態の時間とは、異なっていてもよい。第一バルブ20の閉状態の時間と、第二バルブ21の閉状態の時間とは、異なっていてもよい。
【0058】
制御装置6は、加工に使用される工具7の種別に応じて、各バルブ20,21の開閉に係る適切な時間を設定することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 工作機械
4 クーラント供給装置
16 ポンプ
20 第一バルブ
21 第二バルブ
22 治具用吐出部
22a 第一吐出部
22b 第二吐出部
23 ベッド用吐出部
24 壁部用吐出部
CL クーラント
D1 第一治具用吐出部におけるクーラントの吐出方向
D2 第二治具用吐出部におけるクーラントの吐出方向
D3 第三治具用吐出部におけるクーラントの吐出方向