(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114211
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】施策策定方法及び施策策定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20250729BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008759
(22)【出願日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 昌雄
(72)【発明者】
【氏名】鍬本 賢志
(72)【発明者】
【氏名】小田倉 史麿
(57)【要約】
【課題】公共空間の地域住民のニーズをより正確に把握した上で、より多様な施策を迅速かつ効率的に策定する。
【解決手段】現実空間を模した仮想空間を用いて該現実空間のスペースの利用に関する施策を評価する施策策定システムが実行する施策策定方法は、ユーザによる入力に基づいて施策の目標及び制約を生成AIを用いて生成する。そして目標及び制約に基づいて、生成AIを用いて、施策に対して人の流れをシミュレーションする人流シミュレーションを実行するためのシミュレーションタスクを生成する。そしてシミュレーションタスクを仮想空間上で実行して人流シミュレーションを実行し、人流シミュレーションの実行結果を表示画面に表示する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間を模した仮想空間を用いて該現実空間のスペースの利用に関する施策を評価する施策策定システムが実行する施策策定方法であって、
前記施策策定システムは、
前記現実空間の地域住民を含む利用者の前記スペースに対するニーズを含む地域住民情報と、前記スペースの属性に関するスペース情報と、を管理するデータ管理部を有し、
ユーザによる入力に基づいて前記施策の目標及び制約を生成AI(Artificial Intelligence)を用いて生成する目標・制約入力ステップと、
前記目標・制約入力ステップによって生成された前記目標及び前記制約と、前記地域住民情報と、前記スペース情報と、に基づいて生成された前記施策に対して、前記生成AIを用いて、該目標及び該制約に基づいて人の流れをシミュレーションする人流シミュレーションを実行するためのシミュレーションタスクを生成するタスク生成ステップと、
前記タスク生成ステップによって生成された前記シミュレーションタスクを前記仮想空間上で実行して前記人流シミュレーションを実行し、該人流シミュレーションの実行結果を表示画面に表示するシミュレーション実行・評価ステップと
を有することを特徴とする施策策定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記タスク生成ステップでは、
前記目標・制約入力ステップによって生成された前記目標及び前記制約と、前記地域住民情報と、前記スペース情報と、に基づいて、前記生成AIを用いて前記施策を生成する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記シミュレーション実行・評価ステップでは、
前記生成AIを用いて、前記シミュレーションの実行結果を前記ユーザが解釈可能に示す解釈情報を生成し、該解釈情報を含む該実行結果の評価を前記表示画面に表示する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記目標・制約入力ステップでは、
前記ユーザによる入力が前記目標及び前記制約の生成に必要な情報量を充足するか否かを判定し、該必要な情報量が充足されない場合に、所定のユーザプロンプトを介して該ユーザからの追加情報の入力を受付ける、又は、前記生成AIに問合せて該追加情報を取得し、該ユーザによる入力及び該追加情報に基づいて前記施策の目標及び制約を前記生成AIを用いて生成する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項5】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記生成AIは、前記人流シミュレーションを実行するシミュレータの使用方法を学習した学習モデルを有し、
前記タスク生成ステップでは、
前記学習モデルが学習している前記シミュレータの使用方法に基づいて前記シミュレーションタスクを生成する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の施策策定方法であって、
前記タスク生成ステップでは、
前記生成AIを用いて、前記シミュレータで用いられるデータファイルを任意の自然言語情報をデータ変換して生成する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項7】
請求項5に記載の施策策定方法であって、
前記生成AIは、前記シミュレータの更新を検出し、更新があった場合に前記学習モデルをアップデートする
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項8】
請求項5に記載の施策策定方法であって、
前記学習モデルは、複数の前記シミュレータの使用方法を学習しており、
前記タスク生成ステップでは、
前記目標及び前記制約に応じて、複数の前記シミュレータから選択した1以上の前記シミュレータの使用方法に基づいて前記シミュレーションタスクを生成する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項9】
請求項5に記載の施策策定方法であって、
前記生成AIは、外部情報を参照して前記施策及び前記シミュレーションタスクを生成する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項10】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記データ管理部は、
CAD(Computer Aided Design)データ、点群データ、及びメッシュデータの少なくとも何れかを含む空間計測データを用いて前記仮想空間を構築する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項11】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記シミュレーション実行・評価ステップでは、
前記現実空間における利用者のGPS(Global Positioning System)情報、該利用者のIC(Integrated Circuit)乗車券の履歴情報、及び該利用者までの距離を計測したLiDAR(Light Detection And Ranging)計測データを含む人流計測データ、又は、該人流計測データに基づいて作成された行動モデルを用いて前記人流シミュレーションを実行する
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項12】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記スペースは、
広告を掲出する広告スペース及びテナントを設置するための部屋又は区画であるテナントスペースである
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項13】
請求項1に記載の施策策定方法であって、
前記施策は、
前記スペースの利用方法、該スペースの販売価格、及び該スペースの販売相手の候補の何れかを含む
ことを特徴とする施策策定方法。
【請求項14】
現実空間を模した仮想空間を用いて該現実空間のスペースの利用に関する施策を評価する施策策定システムであって、
前記現実空間の地域住民を含む利用者の前記スペースに対するニーズを含む地域住民情報と、前記スペースの属性に関するスペース情報と、を管理するデータ管理部と、
ユーザによる入力に基づいて前記施策の目標及び制約を生成AI(Artificial Intelligence)を用いて生成する目標・制約入力部と、
前記目標・制約入力部によって生成された前記目標及び前記制約と、前記地域住民情報と、前記スペース情報と、に基づいて生成された前記施策に対して、前記生成AIを用いて、該目標及び該制約に基づいて人の流れをシミュレーションする人流シミュレーションを実行するためのシミュレーションタスクを生成するタスク生成部と、
前記タスク生成部によって生成された前記シミュレーションタスクを前記仮想空間上で実行して前記人流シミュレーションを実行し、該人流シミュレーションの実行結果を表示画面に表示するシミュレーション実行・評価部と
を有することを特徴とする施策策定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施策策定方法及び施策策定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駅ナカといった公共空間の空きスペースは、効率的な活用がなされないと、公共空間を提供又は利用する事業者の機会損失となる。公共空間の効率的な活用には、公共空間の利用者のニーズの把握や、ニーズに合わせた施策の策定及び検証が重要である。
【0003】
そこで例えば特許文献1には、来訪者等の移動体の満足度を最大化する街作りのための事業者の誘致の施策を策定する際に、人流パターンと業種間類似度スコアによって誘致効果を評価し、誘致店舗を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述の従来技術では、人の経路情報と業種から誘致効果を評価しており、地域住民のニーズをくみ取るまでの仕組みを提供するものではない。また誘致店舗の業種を決定するのみとなっている。
【0006】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、公共空間の地域住民のニーズをより正確に把握した上で、より多様な施策を迅速かつ効率的に策定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、現実空間を模した仮想空間を用いて該現実空間のスペースの利用に関する施策を評価する施策策定システムが実行する施策策定方法であって、前記施策策定システムは、前記現実空間の地域住民を含む利用者の前記スペースに対するニーズを含む地域住民情報と、前記スペースの属性に関するスペース情報と、を管理するデータ管理部を有し、ユーザによる入力に基づいて前記施策の目標及び制約を生成AI(Artificial Intelligence)を用いて生成する目標・制約入力ステップと、前記目標・制約入力ステップによって生成された前記目標及び前記制約と、前記地域住民情報と、前記スペース情報と、に基づいて生成された前記施策に対して、前記生成AIを用いて、該目標及び該制約に基づいて人の流れをシミュレーションする人流シミュレーションを実行するためのシミュレーションタスクを生成するタスク生成ステップと、前記タスク生成ステップによって生成された前記シミュレーションタスクを前記仮想空間上で実行して前記人流シミュレーションを実行し、該人流シミュレーションの実行結果を表示画面に表示するシミュレーション実行・評価ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、公共空間の地域住民のニーズをより正確に把握した上で、より多様な施策を迅速かつ効率的に策定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る施策策定システムの構成を示す図。
【
図3】実施形態に係る3次元空間情報の構成を示す図。
【
図4】実施形態に係る地域住民情報の構成を示す図。
【
図5】実施形態に係るスペース情報の構成を示す図。
【
図6】実施形態に係る目標・制約情報の構成を示す図。
【
図7】実施形態に係るシミュレータで検証可能なシミュレーション項目とKPIの一覧を示す図。
【
図8】実施形態に係るシミュレータで設定可能な制約一覧を示す図。
【
図10】実施形態に係る学習モデル管理テーブルを示す図。
【
図11】実施形態に係るデータ管理処理を示すフローチャート。
【
図12】実施形態に係る目標・制約入力処理を示すフローチャート。
【
図13】実施形態に係るタスク生成処理を示すフローチャート。
【
図14】実施形態に係るシミュレーション実行・評価処理を示すフローチャート。
【
図15】実施形態に係る空きスペース管理画面を示す図。
【
図17】実施形態に係る生成AI操作ログ画面を示す図。
【
図18】実施形態に係る施策案及び評価結果画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。なお、以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本発明が実施形態に制限されることは無く、本発明の思想に合致するあらゆる応用例が本発明の技術的範囲に含まれる。本発明は、当業者であれば本発明の範囲内で様々な追加や変更等を行うことができる。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は複数でも単数でも構わない。
【0011】
以下の説明では、「CPU(Central Processing Unit)」は、一つ以上のプロセッサデバイスの一例である。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPUに限らず、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。
【0012】
少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路でもよい。回路とは、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)といった広義のプロセッサデバイスである。
【0013】
以下の説明では、プログラムがCPUによって実行されることで「XXX部」という処理機能を実現し、処理の実行主体となる。処理機能は、1つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、1つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。
【0014】
プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインタフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能部を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。
【0015】
プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が1つの機能にまとめられたり、1つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0016】
また以下の説明では、各種情報をテーブル形式で説明する場合がある。「YYYテーブル」を「YYY情報」と呼ぶことができる。情報のデータ形式はテーブル形式以外の形式(例えばCSV(Comma Separated Values)形式等)でもよい。また各種情報は、テーブルとして記憶部に格納されてもよいし、プログラム中にロジックとして埋め込まれてもよい。
【0017】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号のうちの共通符号を使用し、同種の要素を区別して説明する場合には、参照符号を使用することがある。
【0018】
以下の実施形態では、施策策定対象の現実空間を駅の公共空間(いわゆる「駅ナカ」)、現実空間を模擬した仮想空間を駅ナカのデジタルツインとする。そして生成AI(Artificial Intelligence)を用いて駅ナカの空きスペースを有効活用する施策案を自動生成し、仮想空間内の人流シミュレーションによって施策案の効果を評価する。
【0019】
(実施形態の概要)
図1は、実施形態の概要の説明図である。本実施形態では、現実空間1のスペース情報2(広告枠、サイネージの表示スペース、テナントの出店スペース、ギャラリーの展示スペース等のスペース)を管理できるスペース管理2Aの仕組みを、仮想空間1A(駅ナカのデジタルツイン空間)上に構築する。
【0020】
先ずステップS1では、生成AI4(AIエージェント)は、スペース情報2(各スペース)のニーズを逐次学習する。スペース情報2のニーズの逐次学習は、スペース情報2の更新の都度、以後のステップと並行して継続される。次にステップS2では、生成AI4は、仮想空間1Aにおけるシミュレータ15のシミュレーション仕様(シミュレーションの手順、シミュレーションのタスク、シミュレーション結果の解釈方法等)が学習され学習モデルMが生成される。
【0021】
ステップS1及びS2では、具体的には、大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)をLangChain(登録商標)やLoraモデルの活用などによってファインチューニングすることで、シミュレーションで実行できること、実行手順などを学習して学習モデルMを生成し、LLMがシミュレータ15を扱えるようにする。なお生成AI4は、シミュレータ15の更新を検出し、更新があった場合に学習モデルMも更新する。
【0022】
学習モデルMは、複数のシミュレータ15の使用方法を学習しており、後述のシミュレーションタスクの生成の際には、目標及び制約に応じて、複数のシミュレータ15から選択した1以上のシミュレータの使用方法に基づいてシミュレーションタスクが生成される。また生成AI4は、インターネット等の外部情報を参照して施策及びシミュレーションタスクを生成する。
【0023】
次にステップS3では、生成AI4は、施策検証者5(ユーザ)から目的・制約の入力を受付ける。次にステップS4では、生成AI4は、ステップS1及びS2で生成された学習モデルMに基づいて、ステップS3で入力された目的・制約に沿った施策案及びこの施策案のシミュレーションタスクを生成する。次にステップS5では、生成AI4は、ステップS4で生成したシミュレーションタスクを仮想空間1Aへ送信する。
【0024】
次にステップS6では、シミュレータ15は、仮想空間1Aにおいて、スペース管理2Aによって管理されるスペースと、人の行動モデル、交通流モデル、施設モデル、評価モデル等のモデルを用いて、施策案の定量評価のシミュレーションタスクを実行する。
【0025】
次にステップS7では、生成AI4は、仮想空間1Aにおける施策の評価シミュレーションの実行結果(施策効果の予測値)を取得する。次にステップS8では、生成AI4は、ステップS4で策定した施策案とその施策効果の予測値を施策検証者5に対して出力する。
【0026】
(実施形態に係る施策策定システムSの構成)
図2は、実施形態に係る施策策定システムSの構成を示す図である。施策策定システムSは、ネットワークNを介して外部システム200及び外部サーバ300と通信可能に接続される。
【0027】
外部システム200は、各駅ナカを管理し、各駅ナカに関する各種データを取得して3次元空間情報171、地域住民情報172、及びスペース情報173を生成及び更新し、施策策定システムSへ送信するシステムである。
【0028】
外部サーバ300は、生成AI4(AIエージェント)が稼働するサーバである。生成AI4は、施策策定システムS等の外部のシステムからユーザ入力された自然言語で記述された駅ナカの利用に関する施策の問合せに対して、駅ナカの利用に関する施策を生成して出力する機能を有する。生成AI4には、周知技術が用いられる。生成AI4は、外部サーバ300に限らず、施策策定システムSが備えていてもよい。
【0029】
施策策定システムSは、CPU11、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、ネットワークインタフェースである通信装置14、シミュレータ15、メモリ等の主記憶装置16、及びストレージ等の補助記憶装置17を含んで構成される。なおシミュレータ15は、施策策定システムSの外部に備えられ、ネットワークNを介して施策策定システムSと連携するとしてもよい。
【0030】
主記憶装置16は、所定のプログラムを実行することで実現されるデータ管理部161、目標・制約入力部162、タスク生成部163、及びシミュレーション実行・評価部164を有する。補助記憶装置17は、3次元空間情報171、地域住民情報172、スペース情報173、目標・制約情報174、施策案データ175、学習モデル管理テーブル176、シミュレーション手順177、及びシミュレーション結果178を格納する。
【0031】
データ管理部161は、後述する3次元空間情報171、地域住民情報172、及びスペース情報173の新規データを受付け、更新するデータ管理処理を実行する。データ管理処理の詳細は、
図11を参照して後述する。
【0032】
目標・制約入力部162は、ユーザ入力に応じて目標・制約(目標・制約情報174)の設定又は施策案(施策案データ175)の生成を行う目標・制約入力処理を実行する。目標・制約入力処理の詳細は、
図12を参照して後述する。
【0033】
タスク生成部163は、目標・制約入力部162によって設定された目標・制約に基づいて生成AIを用いて施策案の評価のためのシミュレーション手順177を作成するタスク生成処理を実行する。タスク生成処理の詳細は、
図13を参照して後述する。
【0034】
シミュレーション実行・評価部164は、3次元空間情報171、地域住民情報172、スペース情報173、及び施策案データ175を基にシミュレータ15を実行し、施策案の評価を含むシミュレーション結果178を取得する。
【0035】
(実施形態に係る3次元空間情報171)
図3は、実施形態に係る3次元空間情報171の構成を示す図である。3次元空間情報171は、点群データ1711及びCAD(Computer Aided Design)データ1712の空間計測データを含む。3次元空間情報171は、空間計測データとしてメッシュデータを含んでいてもよい。
【0036】
点群データ1711は、空間内の物体を含む施策策定対象の各駅ナカを表現する点群であり、駅ナカの3次元空間内の各座標に色データを対応付けたデータである。CADデータ1712は、施策策定対象の各駅ナカの空間内に存在する物体の名称、CADデータの種別、及びCADのファイル名を対応付けて管理する。CADデータ1712によって、所定の記憶領域に格納されている施策策定対象の各駅ナカの空間やこの空間内に存在する物体の構造を表すCADファイルが管理される。
【0037】
(実施形態に係る地域住民情報172)
図4は、実施形態に係る地域住民情報172の構成を示す図である。地域住民情報172は、POS(Point Of Sale)データ1721、駅データ1722、乗車区間データ1723、及びアンケート結果1724を含む。
【0038】
POSデータ1721は、施策策定対象の各駅ナカが所属するエリア、各エリアの最寄り駅、販売形式、販売物の種別、販売数/日、年代毎の購入者数、及び性別毎の購入者数を含む。例えばPOSデータ1721の一行目は、エリアXの最寄り駅はA、A駅の駅ナカの物販スペースでの弁当の1日あたりの販売数は500個、10代の購入者数は50人、・・・、男性の購入者数は300人であることを示す。
【0039】
駅データ1722は、施策策定対象の各駅ナカが所属するエリア、各エリアの最寄り駅、入場者数/日、利用形態毎の入場者数、年代毎の入場者数、及び性別毎の入場者数を含む。例えば駅データ1722の一行目は、エリアXの最寄り駅はA、A駅の1日あたりの入場数は1000人、通勤(定期)の入場者は200人、10代の入場者数は50人、・・・、男性の入場者数は500人であることを示す。
【0040】
乗車区間データ1723は、各旅客の入場駅と出場駅の乗車区間毎の各入場時間帯の入場者数、利用形態毎の入場者数、年代毎の入場者数、及び性別毎の入場者数を含む。例えば乗車区間データ1723の一行目は、入場駅A・出場駅Bの乗車区間の5時台の入場数は10人、通勤(定期)の入場者は5人、10代の入場者数は1人、・・・、男性の入場者数は5人であることを示す。
【0041】
アンケート結果1724は、施策策定対象の各駅ナカが所属するエリア、各エリアの最寄り駅、質問内容、質問に対する回答、回答者の属性、及び回答者の性別を含む。例えばアンケート結果1724の一行目は、エリアXの最寄り駅はA、質問内容は“A駅周辺で欲しい店舗は?”、回答は“美味しいパン屋が欲しい”、回答者の属性は“(A駅周辺の)在勤者”、回答者の性別は女性であることを示す。
【0042】
(実施形態に係るスペース情報173)
図5は、実施形態に係るスペース情報173の構成を示す図である。スペース情報173は、スペースIDで識別される各スペースの場所、スペースのタイプ、地域住民情報172に示す何れのエリアに位置するかの情報を含む。またスペース情報173は、現実空間1における位置を示す座標、仮想空間1Aにおける位置を示す座標、スペースのサイズ、スペースの価格、スペースの利用状況の情報を含む。すなわちスペースは、広告を掲出する広告スペース及びテナントを設置するための部屋又は区画であるテナントスペースを含む。
【0043】
例えばスペース情報173の一行目は、スペースIDが1のスペースは、物販スペースであり、エリアXに位置することを示す。またスペースIDが1のスペースは、現実空間の座標は(x1,x2,x3)、仮想空間の座標は(x5,x5,x5)、スペースのサイズは5×3×3m、価格は5万円/日、利用状況は“空き”であることを示す。
【0044】
(実施形態に係る目標・制約情報174)
図6は、実施形態に係る目標・制約情報174の構成を示す図である。目標・制約情報174は、目標制約ID、ユーザ要求(目標)、シミュレーション項目、KPI(Key Performance Indicator)、及び制約を含む。目標制約IDは、各レコードの目標・制約情報を識別する情報である。ユーザ要求(目標)は、施策検証者5(ユーザ)が施策策定対象の各駅ナカに対して要求する内容(目標や条件等)を自然言語で記述したものである。シミュレーション項目は、シミュレーションタスクの実行時に、実行するシミュレータ15に対してシミュレーションの種別を指定するための情報を含む。KPIは、策定された施策を評価するための指標である。制約は、KPIを算出する際の制約条件である。
【0045】
図7は、実施形態に係るシミュレータ15で検証可能なシミュレーション項目とKPIの一覧174aを示す図である。一覧174aは、
図6に示す目標・制約情報174のシミュレーション項目の候補と、対応するKPIを示す。例えば一覧174aの第一行目は、シミュレーション項目として“広告の効果測定”が選択される場合に、KPIは“GRP(Gross Rating Point)”、“OTS(Opportunity to See Base)”、“OOH(Out Of Home)”が採用されることを示す。
【0046】
図8は、実施形態に係るシミュレータ15で設定可能な制約の一覧174bを示す図である。一覧174bは、
図6に示す目標・制約情報174の制約の候補を示す。例えば一覧174bの第一行目は、制約として“時間帯の範囲指定”が設定可能であることを示す。
【0047】
上述の「シミュレータで検証可能な項目一覧とKPI」「シミュレータで設定可能な制約」は、シミュレータ15の入力である。例えばこの入出力の変化がシミュレータ15の更新に該当するため、生成AI4の学習モデルMの更新の契機となる。
【0048】
(実施形態に係る施策案データ175)
図9は、実施形態に係る施策案データ175を示す図である。施策案データ175は、生成AI4によって生成された施策案と、シミュレータ15によるシミュレーションを実行するか否かを示すシミュレーション実行フラグを管理する。施策案データ175は、施策案ID、目標制約ID、スペースID、タイプ、場所、施策案、施策案詳細、シミュレーション実行フラグのカラムを有する。
【0049】
施策案IDは、各レコードの施策案を識別する情報である。目標制約IDは、該当レコードの施策案の前提である目標及び制約の目標・制約情報174における識別情報である。スペースIDは、該当レコードの施策案の対象であるスペースのスペース情報173における識別情報である。タイプ及び場所は、該当レコードの施策案の対象であるスペースのスペース情報173におけるタイプ及び場所と同様である。施策案は、該当レコードの目標制約ID及びスペースIDの組合せに対して生成AI4によって生成された施策である。施策案詳細は、該当レコードの施策案の詳細情報である。施策案(施策)には、スペースの利用方法、スペースの販売価格、及びスペースの販売相手の候補の何れかが含まれてもよい。シミュレーション実行フラグは、該当レコードの施策案のシミュレーションをシミュレータ15にて実行するか否かを示す情報である。
【0050】
(実施形態に係る学習モデル管理テーブル176)
図10は、実施形態に係る学習モデル管理テーブル176を示す図である。学習モデル管理テーブル176は、ステップS1及びS2(
図1)で学習されたシミュレータ15のシミュレーション仕様の学習モデルMを管理する。学習モデル管理テーブル176によって、所定の記憶領域に格納されている学習モデルMが管理される。例えば学習モデル管理テーブル176の第一行目は、“シミュレーションの手順学習”を“Lora”を用いて学習した学習モデルMは、モデル名が“model1.ggml”であることを示す。また学習モデル管理テーブル176の第二行目は、“シミュレーションの手順学習”を“LangChain(登録商標)”を用いて学習した学習モデルMは、モデル名が“model2.ggml”であることを示す。
【0051】
(実施形態に係るデータ管理処理)
図11は、実施形態に係るデータ管理処理を示すフローチャートである。データ管理処理は、新規データを外部システム200から受信する都度実行される。
【0052】
先ずステップS11では、データ管理部161は、スペース情報173、地域住民情報172、及び3次元空間情報171の新規データを受付ける。次にステップS12では、データ管理部161は、スペース情報173を新規データで更新する。次にステップS13では、データ管理部161は、地域住民情報172を新規データで更新する。次にステップS14では、データ管理部161は、3次元空間情報171を新規データで更新する。
【0053】
次にステップS15では、データ管理部161は、スペース情報173と3次元空間情報171をシミュレータ15上に展開し、仮想空間1A(
図1)を構築する。
【0054】
(実施形態に係る目標・制約入力処理)
図12は、実施形態に係る目標・制約入力処理を示すフローチャートである。目標・制約入力処理は、生成AI4にスペースを有効活用するための目標・制約の入力又は施策案生成の依頼が入力される都度実行される。
【0055】
先ずステップS21では、目標・制約入力部162は、施策検証者5(ユーザ)からの入力を受付ける。ステップS21では、目標・制約入力部162は、施策策定及びシミュレーション対象を絞り込むための情報をユーザ入力から取得する。
【0056】
次にステップS22では、目標・制約入力部162は、ステップS21で受付けたユーザ入力は目標・制約設定及び施策案生成依頼の何れかを判定する。目標・制約入力部162は、ユーザ入力が目標・制約設定である場合にステップS23へ処理を移し、ユーザ入力が施策案生成依頼である場合にステップS26へ処理を移す。
【0057】
ステップS23では、目標・制約入力部162は、目標・制約情報の問合わせのためのプロンプトを作成する。目標・制約入力部162は、生成AIを用い、チャット等のユーザとの対話の中でユーザが行いたい内容を聞き出す。この時、特定の終了条件を満たすために必要な目標・制約情報を得られた場合、会話を終了とするようなプロンプトを設定する。例えば目標・制約情報の表を埋められるようにユーザに問いかけを行い、ユーザが会話を終了することを要求するか、表が埋まるまでは会話を継続する等の指示を出しておく。一例として終了条件をあげると、対象とするエリア、駅、スペース等の情報を特定、行いたい施策の内容と目的を特定、シミュレータで設定できる制約が入力されている、を全て満たす場合である。
【0058】
次にステップS24では、目標・制約入力部162は、ステップS23で作成されたプロンプトを用いてユーザとの対話を行い、生成AIによる文章理解によって、目標・制約情報174を得る。より具体的には目標・制約入力部162は、ユーザが入力したテキスト情報から対象としたいスペースやエリア情報を抽出し、そのデータがデータ管理部161によって登録されているスペースやエリア情報と合致することを確認する。また目標・制約入力部162は、ユーザが入力したテキスト情報から行いたい施策の内容を抽出し、シミュレータで検証可能な項目一覧と合致する内容であることを確認する。また目標・制約入力部162は、ユーザが入力したテキスト情報から制約に関するカテゴリと数値を抽出し、そのカテゴリと数値がシミュレータで設定可能であるかを確認する。
【0059】
なおステップS24では、目標・制約入力部162は、ユーザによる入力が目標及び制約の生成に必要な情報量を充足するか否かを判定し、必要な情報量が充足されない場合に、ユーザプロンプトを介してユーザからの追加情報の入力を受付けてもよい。または目標・制約入力部162は、必要な情報量が充足されない場合に、生成AI4に問合せて必要な情報量を充足するような追加情報を取得してもよい。そして目標・制約入力部162は、ユーザによる入力及び追加情報に基づいて、生成AIを用いて、目標・制約情報174を得てもよい。
【0060】
次にステップS25では、目標・制約入力部162は、ステップS25で得られた目標・制約情報174を補助記憶装置17へ格納する。
【0061】
一方ステップS26では、目標・制約入力部162は、補助記憶装置17から、目標・制約情報174、スペース情報173、及び地域住民情報172を取得する。
【0062】
次にステップS27では、目標・制約入力部162は、ユーザ入力、ユーザ入力を解釈した解釈情報と、ステップS26で取得した目標・制約情報174、スペース情報173、及び地域住民情報172等の中で解釈情報に関連する情報と、を生成AI4へ受渡す。生成AI4は、プロンプトを与えることで情報を入力し、施策案を生成して出力する。なお本実施形態では、ステップS27で生成AI4により施策案を生成するとしているが、これに限らず、施策案はユーザの人手によって生成及び決定されてもよい。
【0063】
例えばプロンプトは、「A駅で効果が高いと思われる広告を考えて下さい。A駅の利用者及びニーズは“XXX(ステップS26で取得した情報を入力)”です。多数を占める“(利用者属性を入力)”は、現在どのような事に関心が高いか、インターネットを検索して教えて下さい。そして検索結果を踏まえて、A駅で出稿すると広告効果がより高い業界とその広告の種類や内容を、上位3つ教えて下さい。」というものである。また「A駅に不動産業界の広告を提示することを考えています。A駅の利用者及びニーズは“YYY(ステップS26で取得した情報を入力)”です。利用者属性やニーズを考慮して、どのような不動産広告を提示したら関心が得られるかを教えて下さい。」といったものである。
【0064】
目標・制約入力部162は、ステップS27で生成AI4によって生成された施策案データ175を補助記憶装置17へ格納する。
【0065】
次にステップS28では、目標・制約入力部162は、ユーザとの対話や施策案を基にシミュレーションを実行するか否かを判定する。目標・制約入力部162は、生成AIを用い、ユーザとの対話の中でユーザが施策案を採用候補と考えているか等を聞き出し、施策案のシミュレーションを実行するかを判定する。目標・制約入力部162は、施策案のシミュレーションを実行すると判定した施策について施策案データ175にシミュレーション実行フラグを記録する。
【0066】
(実施形態に係るタスク生成処理)
図13は、実施形態に係るタスク生成処理を示すフローチャートである。タスク生成処理では、生成AI4によって、目標・制約情報174、施策案データ175、及び学習モデル管理テーブル176に基づいてシミュレーションタスクが生成される。ここでシミュレーションタスクが生成されるのは、目標・制約入力処理(
図12)のステップS28でシミュレーションを実行すると判定された施策案である。タスク生成処理は、所定周期又は目標・制約入力処理の終了後に引続いて実行される。
【0067】
先ずステップS31では、タスク生成部163は、補助記憶装置17から目標・制約情報174及び施策案データ175を取得する。次にステップS32では、タスク生成部163は、シミュレータ15の扱い方等を学習した学習モデルMを有する生成AI4を用い、タスク生成対象の施策案について施策案データ175に基づいてシミュレーションタスクを生成する。具体的には、タスク生成部163は、「制約はAAAとBBBです。広告効果評価のためのシミュレーションタスクを出力して下さい。」のようなプロンプトを大規模言語モデルに入力し、テキストベースのシミュレーションタスクを取得する。すなわち生成AI4は、人流シミュレーションを実行するシミュレータ15の使用方法を学習した学習モデルMを有し、学習モデルMが学習しているシミュレータ15の使用方法に基づいてシミュレーションタスクが生成される。タスク生成部163は、シミュレーションタスクの生成の際、生成AI4を用いて、シミュレータ15で用いられるデータファイルを、任意の自然言語情報をデータ変換して生成する。
【0068】
次にステップS33では、タスク生成部163は、生成AIを用いて各タスクのシミュレーションの実行手順を作成する。具体的には、タスク生成部163は、「各タスクに対する手順も出力を出力して下さい」というプロンプトを入力し、大規模言語モデルに入力し、テキストベースのシミュレーション手順を取得する。タスク生成部163は、大規模言語モデルによって生成されたシミュレーション手順177を補助記憶装置17へ格納する。
【0069】
ステップS33では、例えば「タスク:A駅構内のスペースXにα広告を配置し、広告効果をシミュレーションする」「タスク:A駅構内のスペースXにβ広告を配置し、広告効果をシミュレーションする」といったタスクに対しては、次の手順が生成される。すなわち「手順:A駅構内をシミュレーション対象に設定、A駅構内の歩行者データ(行き先、嗜好、行動モデルを含む)を生成、スペースXにα広告(β広告)を配置、ビューカウンタを設定、1日分のシミュレーションを実行、ビュー数をカウントする」である。
【0070】
(実施形態に係るシミュレーション実行・評価処理)
図14は、実施形態に係るシミュレーション実行・評価処理を示すフローチャートである。シミュレーション実行・評価処理では、施策案のシミュレーションタスクを仮想空間1A上でシミュレータ15によって実行することで、施策案を評価する。シミュレーション実行・評価処理は、所定周期又はタスク生成処理(
図13)の終了後に引続いて実行される。
【0071】
先ずステップS41では、シミュレーション実行・評価部164は、補助記憶装置17からシミュレーション手順177を取得する。
【0072】
次にステップS42では、シミュレーション実行・評価部164は、シミュレーション設定ファイルを生成し、シミュレーション環境構築(仮想空間1A)を構築する。具体的には、ステップS42では、シミュレーション実行・評価部164は、手順に対してシミュレーション設定ファイル生成として、シミュレータ15へのインプットデータを生成する。例えば手順は、「手順:A駅構内をシミュレーション対象に設定、A駅構内の歩行者データ(行き先、嗜好、行動モデルを含む)を生成、スペースXにA広告を配置、ビューカウンタを設定、1日分のシミュレーションを実行、ビュー数をカウント」である。インプットデータは、例えばJSONファイルの形式である。JSONファイルは、生成AI4やその他の方法で作成される。このJSONファイルを基にシミュレーション環境がセットアップされる。生成AI4は、シミュレーション環境の正しいセットアップ方法を学習しているものとする。
【0073】
シミュレータ15へのインプットデータとなるJSONファイルは、例えば次のようなものである。
{”station”:”A”, “passenger”:2000, “OD”:”matrix A”, “behavior”:”model A“, “set_ad”:”area_X”,”view_count”:”area_X”, “time”:”04:00-23:00”, “KPI”:”GRP”}
【0074】
次にステップS43では、シミュレーション実行・評価部164は、ステップS42でセットアップしたシミュレーション環境でシミュレーションを実行する。シミュレーションの実行は、ステップS42で生成したシミュレーション設定ファイルに基づきシミュレータ15を動作させることで行う。例えば、シミュレーション設定ファイルに基づいて、3次元空間情報171から3Dデータを読み込んで対象エリアをシミュレーション環境上に展開し、シミュレータ15を起動する。シミュレーション設定ファイルは、シミュレータ15に含まれる歩行者モデル、行動モデルといった複数のモデルの中の何れのモデルを用いるかを指定できる。
【0075】
例えばステップS43では、駅ナカや鉄道の各利用者のGPS(Global Positioning System)情報、各利用者のIC(Integrated Circuit)乗車券の履歴情報、及び各利用者までの距離を計測したLiDAR(Light Detection And Ranging)計測データを含む人流計測データを用いて人流シミュレーションが実行されてもよい。または、この人流計測データに基づいて作成された行動モデルを用いて人流シミュレーションが実行されてもよい。
【0076】
次にステップS44では、シミュレーション実行・評価部164は、ステップS43で実行したシミュレーションによる施策案を評価する。シミュレータ15は、仮想空間1A内の人の行動を再現することができるため、例えば広告を配置した場合、どれくらいの人が広告を見るかを測定できる。また嗜好のモデルによってどれくらいの関心度を持たれるかを測定することができる。嗜好のモデルとは、アンケート結果1724(
図4)によって把握できる属性毎の嗜好性であり、例えばどのような食べ物が好きか、現在の関心事は何か等である。エリア内の在勤者、観光客といったアンケートの回答者の属性毎に広告に関する関心度を評価してもよい。シミュレーション実行・評価部164は、売上の変化、混雑度の変化、顧客満足度の変化等を評価してもよい。
【0077】
また施策がどれくらいの効果が得られるかについては、設定されたKPIに基づいて評価することができる。例えばGRPは、どれくらいの割合の人が広告を見たかの視聴率であり、仮想空間1A内の人物の目線を検知し、広告に視線が合わせられると1をカウントし、総人数に対する広告の視聴者の割合を算出したものである。
【0078】
次にステップS45では、シミュレーション実行・評価部164は、ステップS44でのシミュレーションによる施策案の評価結果を、テキストベースのレポート形式でシミュレータ15から出力する。
【0079】
次にステップS46では、シミュレーション実行・評価部164は、生成AI4を用いて、ステップS45で出力された施策案の評価結果の解釈情報を作成する。既述のように、生成AI4は、シミュレーション結果(施策案の評価結果)の解釈方法を学習しているため、この学習結果に基づいて、施策案の評価結果の解釈情報を出力することができる。次にステップS47では、シミュレーション実行・評価部164は、施策案及び評価結果をユーザに対して画面出力する。画面出力は、例えば後述の施策案及び評価結果画面D4(
図18)のようになる。
【0080】
(実施形態に係る空きスペース管理画面D1)
図15は、実施形態に係る空きスペース管理画面D1を示す図である。空きスペース管理画面D1は、出力装置13の表示画面に表示される。空きスペース管理画面D1は、入力装置12を介して操作されるGUI(Graphical User Interface)要素として、エリア選択メニューD11、エリア外観表示D12、スペースリストD13、新規施策案生成ボタンD14、及び価格変更ボタンD15を有する。
【0081】
エリア選択メニューD11は、エリアの候補を列挙するドロップダウンリストから、ユーザ操作に応じたエリアの選択を受付ける。空きスペース管理画面D1は、エリアが選択されると、スペース情報173において該当するエリアとエリア内のスペースをエリア外観表示D12に表示する。
【0082】
スペースリストD13は、エリア外観表示D12に表示する該当エリア内のスペースについて、スペース情報173に基づく情報と、施策案データ175に基づく施策案を対応付けて表示する。スペースリストD13の施策案における“詳細”表示をクリックすると、施策案データ175から対応する“施策案詳細”の情報が読み出されて表示される。
【0083】
スペースリストD13においてスペースのレコードが1つ選択された状態で新規施策案生成ボタンD14が押下されると、該当のスペースに対する施策案及び総裁情報が生成される。またスペースリストD13においてスペースのレコードが1つ選択された状態で価格変更ボタンD15が押下されると、該当のスペースの価格の編集が受付けられる。
【0084】
(実施形態に係る施策案生成画面D2)
図16は、実施形態に係る施策案生成画面D2を示す図である。施策案生成画面D2は、空きスペース管理画面D1において新規施策案生成ボタンD14が押下されると、出力装置13の表示画面において画面遷移して表示されるチャット画面である。施策案生成画面D2の表示の際には、目標・制約入力処理(
図12)が起動される。
【0085】
施策案生成画面D2は、入力装置12を介して操作されるGUI要素として、チャット入力エリアD21、送信ボタンD22、自己チャット表示領域D23、相手側チャット表示領域D24、及びプロンプト抽出ボタンD25を有する。
【0086】
施策検証者5(ユーザ)は、スペースの有効活用の施策案に係る問合せD231をチャット入力エリアD21へ入力して送信ボタンD22を押下する。ユーザによって入力された問合せD231は、自己チャット表示領域D23に表示されると共に、外部サーバ300の生成AI4へ送信される。生成AI4は、ユーザからの問合せD231に対して、必要に応じて追加質問D241を送信する。追加質問D241は、相手側チャット表示領域D24に表示される。
【0087】
追加質問D241のリンク表示D2411から何れかのスペースに関係するハイパーリンクが選択され、“メタバース空間上で詳細を確認”ボタンD2412が押下される。すると、
図15に示すように、仮想空間1A(メタバース空間)上で該当のスペースの概要を確認できる。
【0088】
ユーザは、追加質問D241に対する回答D232をチャット入力エリアD21へ入力して送信ボタンD22を押下する。ユーザによって入力された回答D232は、自己チャット表示領域D23に表示されると共に、生成AI4へ送信される。生成AI4は、ユーザからの回答D232に対してさらに追加質問D242を送信する。追加質問D242は、相手側チャット表示領域D24に表示される。
【0089】
ユーザは、追加質問D242に対する回答D233をチャット入力エリアD21へ入力して送信ボタンD22を押下する。ユーザによって入力された回答D233は、自己チャット表示領域D23に表示されると共に、生成AI4へ送信される。生成AI4は、ユーザからの回答D233に対して施策案を作成する旨の通知D243を送信する。通知D243は、相手側チャット表示領域D24に表示される。そして最後に生成AI4は、施策案D244を作成・送信し、相手側チャット表示領域D24に表示させる。
【0090】
(実施形態に係る生成AI操作ログ画面D3)
図17は、実施形態に係る生成AI操作ログ画面D3を示す図である。生成AI操作ログ画面D3は、施策案生成画面D2の内部的なプロンプトの操作ログを表示する画面である。生成AI操作ログ画面D3は、施策案生成画面D2のプロンプト抽出ボタンD25が押下されると、出力装置13の表示画面において施策案生成画面D2のポップアップ画面として表示される画面である。生成AI操作ログ画面D3は、入力装置12を介して操作されるGUI要素として、操作ログ表示エリアD31及び閉じるボタンD32を有する。
【0091】
操作ログ表示エリアD31には、ログD311及びログD312が表示されている。ログD311は、施策案生成画面D2の問合せD231を受信するための内部的なプロンプトの操作ログである。ログD312は、問合せD231を受信するための内部的なプロンプトによって呼出されたプロンプトの操作ログである。ユーザは、操作ログの確認を終了する場合に閉じるボタンD32を押下する。
【0092】
(実施形態に係る施策案及び評価結果画面D4)
図18は、実施形態に係る施策案及び評価結果画面D4を示す図である。施策案及び評価結果画面D4は、シミュレーション実行・評価処理(
図14)のステップS47の実行時に、出力装置13の表示画面に表示される。施策案及び評価結果画面D4は、入力装置12を介して操作されるGUI要素として、タイトル表示エリアD41、施策案表示エリアD42、施策案の根拠及び解釈表示エリアD43を有する。また施策案及び評価結果画面D4は、入力装置12を介して操作されるGUI要素として、売上予測結果表示エリアD44、住民情報表示エリアD45、及びシミュレーション結果表示エリアD46を有する。
【0093】
タイトル表示エリアD41は、施策案の人流シミュレーションの実行対象のエリア及びスペースの情報を表示する。施策案表示エリアD42は、施策案を表示する。施策案の根拠及び解釈表示エリアD43は、生成AI4が目標・制約入力処理(
図12)のステップS27で施策案と共に生成した施策案の根拠の表示を含む。また施策案の根拠及び解釈表示エリアD43は、生成AI4がシミュレーション実行・評価処理(
図14)のステップS46で生成した施策案の解釈の表示を含む。
【0094】
売上予測結果表示エリアD44は、施策案の人流シミュレーションの実行により予測されたエリアXの物販スペース1での1日あたりのパンの売上を、パンの種別や、購入者の年齢、購入者の性別等の属性毎に表示する。
【0095】
住民情報表示エリアD45は、地域住民情報172(駅データ1722及び乗車区間データ1723、アンケート結果(ニーズ))(
図4)を表示する。
【0096】
シミュレーション結果表示エリアD46は、仮想空間1A上に対象のエリアa(エリアX)及びスペースs(物販スペース1)と共に人hを配置して実行した施策案の人流シミュレーションの実行結果を動画で表示する。シミュレーション結果表示エリアD46は、再生ボタンD461、停止ボタン462、タイムスライダーバーD463、及び動画表示D464を含む。ユーザは、再生ボタンD461、停止ボタン462、及びタイムスライダーバーD463を操作して所望の時刻の動画を再生し、施策案の人流シミュレーションの実行結果を確認する。
【0097】
(実施形態の効果)
上述の実施形態では、生成AIと現実空間を模した仮想空間上のシミュレーションを用いることで、最小限のユーザ入力から地域住民の属性やニーズをより正確に把握した上で、様々な施策を迅速かつ効率的に生成・評価できる。
【0098】
具体的には、仮想空間(例えば、駅ナカのデジタルツイン空間)上に、現実空間でのスペース情報(広告スペース、展示スペース、テナントなど)を管理できる仕組みを構築する。そしてそれらのスペースに対し、生成AIを活用して効果的な施策およびタスクをユーザからの目的や制約の入力に合わせて作成し、自動生成されたシミュレーションタスクをベースにシミュレーションを実行する。よって施策の効果を容易かつ定量的に検証することができる。
【0099】
またシミュレータの実行方法や分析方法を知らないユーザであってもシミュレータを実行して施策の分析及び評価ができる。
【0100】
また複数のシミュレータの中から、目標・制約に適合するシミュレータを選択・組合わせて実行するので、従来にない新たなシミュレーション結果を得ることが期待できる。
【0101】
以上、本願開示に係る実施形態について詳述したが、本願開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上述の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0102】
また上述の各構成、機能部や処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また上述の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやHDD、SSD等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0103】
また上述の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。例えば、実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0104】
また上述した各処理機能及びデータの配置形態は一例に過ぎない。各処理機能及びデータの配置形態は、ハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態へ変更し得る。
【符号の説明】
【0105】
S:施策策定システム、M:学習モデル、1:現実空間、1A:仮想空間、11:CPU、15:シミュレータ、16:主記憶装置、161:データ管理部、162:目標・制約入力部、163:タスク生成部、164:シミュレーション実行・評価部、171:3次元空間情報、172:地域住民情報、173:スペース情報、174:制約情報、175:施策案データ、176:学習モデル管理テーブル、177:シミュレーション手順、178:シミュレーション結果。