(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011423
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電池の冷却方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20250117BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250117BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20250117BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250117BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20250117BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6567
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113529
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真豪
(72)【発明者】
【氏名】小熊 泰正
(72)【発明者】
【氏名】來間 雄介
(72)【発明者】
【氏名】浮田 恵佑
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】電極端子が延出する箇所の接合部において、シールアウトの発生を抑制する。
【解決手段】ラミネート型全固体電池10において、樹脂シート21,22が巻き付けられた負極端子1aおよび正極端子5aは、外装部材(ラミネートフィルム)20に挟み込まれ、外装部材20を熱溶着により接合されている。ラミネート型全固体電池10は、熱伝導シート35を介して、熱交換器30に接している。負極端子1aおよび正極端子5aに設けた温度センサ23で検出した端子部温度Tbが、所定値T1以上のとき、流量制御弁211を全閉、流量制御弁212を全開にする。負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部の冷却量が大きくなり、当該接合部の温度が低下し、樹脂シート21,22の変形が抑制され、封止が解けることを抑制する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池積層体からなる発電要素と、
前記発電要素を収容し、周縁部が熱溶着によって接合されて、前記発電要素を密封するラミネートフィルムからなる外装部材と、を含み、
前記発電要素の電極端子が前記外装部材の接合部から延出する、電池の冷却方法であって、
前記電極端子が延出する前記接合部の温度である端子部温度が、第1所定値より高いとき、前記電極端子が延出する前記接合部を冷却する、電池の冷却方法。
【請求項2】
前記冷却は、熱交換器の流路を熱媒体が流れる液冷方式であり、
前記端子部温度が前記第1所定値より高いとき、前記電極端子が延出する前記接合部に対応する前記流路の熱媒体流量を増大して、前記接合部を冷却し、
前記端子部温度が、前記第1所定値より小さい第2所定値より低くなると、前記熱交換器のすべての流路を流れる前記熱媒体によって、前記電池を冷却する、請求項1に記載の電池の冷却方法。
【請求項3】
前記冷却は、空冷方式であり、
前記端子部温度が前記第1所定値より高いとき、前記電極端子が延出する前記接合部に冷却風を供給する、請求項1に記載の電池の冷却方法。
【請求項4】
前記電極端子が延出する前記接合部おいて、前記電極端子と前記外装部材との間に、熱可塑性の樹脂シートが配置され、
前記樹脂シートを含む前記接合部を冷却する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池の冷却方法。
【請求項5】
前記全固体電池積層体は、硫化物系全固体電池である、請求項4に記載の電池の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質を用いた全固体電池が公知である。たとえば、特開2021-114373号公報(特許文献1)には、熱溶着(熱融着)されたシール部を有するラミネートフィルムを外装部材として用いた、ラミネート型全固体電池が開示されている。この特許文献1では、ラミネート型全固体電池が収容された電池パックの内部水分量とシール部の温度とに基づいて、シール部の水分透過度を算出している。そして、シール部の水分透過度が閾値以上であるとき、シール部を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラミネート型全固体電池では、ラミネートフィルム(外装部材)のシール部(接合部)から電極端子(電極タブ)が延出している。電極端子が延出する箇所のシール部は、ラミネートフィルムが電極端子を挟むように接合され封止されているので、電極端子のシール部(接合部)において、封止が解けやすい。封止が解けることを、シールアウトと称すると、シールアウトした部分から空気が侵入する。侵入した空気に水分が含まれていると、固体電解質等と水分が反応して、ガスが発生する。たとえば、全固体電池が硫黄系全固体電池である場合、硫化水素が発生する。
【0005】
特に、電極端子の近傍が高温になると、電極端子が延出する箇所のシール部(接合部)が変形し、シールアウトが発生し易くなる。
【0006】
本開示の目的は、電極端子が延出する箇所の接合部において、シールアウトの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の電池の冷却方法は、全固体電池積層体からなる発電要素と、発電要素を収容し、外周が熱溶着によって接合され発電要素を密封するラミネートフィルムからなる外装部材と、を含み、発電要素の電極端子が外装部材の接合部から延出する電池の冷却方法であって、電極端子が延出する接合部の温度である端子部温度が、第1所定値より高いとき、電極端子が延出する接合部を冷却する。
【0008】
この方法によれば、端子部温度が、第1所定値より高く、電極端子が延出する箇所の接合部においてシールアウトが発生する可能性がある場合、電極端子が延出する接合部を冷却する。これにより、電極端子が延出する箇所の接合部の変形が抑制され、シールアウトの発生を抑制できる。
【0009】
(2)電池の冷却は、熱交換器の流路を熱媒体が流れる液冷方式であってよい。冷却方法は、端子部温度が第1所定値より高いとき、電極端子が延出する接合部に対応する流路の熱媒体流量を増大して、接合部を冷却し、端子部温度が、第1所定値より小さい第2所定値より低くなると、熱交換器のすべての流路を流れる熱媒体によって電池を冷却するようにしてもよい。
【0010】
この方法によれば、電池は、液冷方式で冷却される。端子部温度が、第1所定値より高いとき、電極端子が延出する接合部に対応する流路の熱媒体流量を増大して、接合部を冷却する。これにより、電極端子が延出する箇所の接合部においてシールアウトが発生する可能性がある場合、当該接合部が冷却されるので、電極端子が延出する箇所の接合部の変形が抑制され、シールアウトの発生を抑制できる。
【0011】
端子部温度が、第1所定値より小さい第2所定値より低くなると、熱交換器のすべての流路を流れる熱媒体によって電池を冷却する。これにより、電池を適切に冷却でき、電池の劣化等を抑制できる。
【0012】
(3)電池の冷却は、空冷方式であってよい。冷却方法は、端子部温度が第1所定値より高いとき、電極端子が延出する接合部に冷却風を供給するようにしてよい。
【0013】
この方法によれば、端子部温度が第1所定値より高いとき、電極端子が延出する接合部に、冷却風が供給される。これにより、電極端子が延出する箇所の接合部においてシールアウトが発生する可能性がある場合、当該接合部が冷却風によって冷却されるので、電極端子が延出する箇所の接合部の変形が抑制され、シールアウトの発生を抑制できる。
【0014】
(4)電極端子が延出する接合部おいて、電極端子と外装部材との間に、熱可塑性の樹脂シートが配置されていてよい。冷却方法は、端子部温度が、第1所定値より高いとき、樹脂シートを含む接合部を冷却する。
【0015】
電極端子が延出する接合部おいてシール性(密閉性)を向上するため、電極端子と外装部材との間に熱可塑性の樹脂シートが配置され、外装部材が熱溶着により接合されて封止される。端子部温度が、高温になると、樹脂シートが変形し、封止が解けやすくなる可能性がある。この冷却方法では、端子部温度が第1所定値より高いとき、樹脂シートを含む接合部を冷却する。これにより、電極端子が延出する箇所の接合部においてシールアウトが発生する可能性がある場合、樹脂シートを含む接合部が冷却され、樹脂シートの変形が抑制され、シールアウトの発生を抑制できる。
【0016】
(5)全固体電池積層体は、硫化物系全固体電池であってよい。
【0017】
この方法によれば、シールアウトによる硫化水素の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、電極端子が延出する箇所の接合部において、シールアウトの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に係る電池モジュールを搭載した車両の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】(A)および(B)は、本実施の形態に係るラミネート型全固体電池10の概略構成を説明する図である。
【
図3】熱交換器とラミネート型全固体電池との関係を示す図である。
【
図4】ECUで実行される冷却制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】(A)および(B)は、変形例における電池モジュールの冷却方法を説明する概略図である。
【
図6】変形例において、ECUで実行される冷却制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、本開実施の形態に係る電池モジュール50を搭載した車両Vの全体構成を概略的に示す図である。車両Vは、走行用の電力を蓄電する電池モジュール50を備える。車両Vは、電池モジュール50に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。本実施の形態において、車両Vは、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)であってよく、エンジンを備えたハイブリッド車両(HEV)、あるいは、プラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。
【0022】
車両Vは、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)300を備える。ECU300は、電池モジュール50の充電制御、放電制御、および冷却制御を行なうように構成される。ECU300は、プロセッサ301、メモリ302を含んで構成される。メモリ302に記憶されているプログラムをプロセッサ301が実行することで、ECU300における各種制御が実行される。
【0023】
車両Vは、図示しない、PCU(Power Control Unit)とMG(Motor Generator)とを含む走行駆動部を備え、電池モジュール50に蓄えられた電力を用いてMGを駆動し、車両Vを走行させるように構成される。MGは回生発電を行ない、発電した電力を電池モジュール50に供給するように構成される。また、電池モジュール50は、図示しない充電回路によって、外部電源を用いた外部充電が可能に構成されている。
【0024】
電池モジュール50は、ラミネート型全固体電池10を電気的に直列に接続した組電池である。
図2は、本実施の形態に係るラミネート型全固体電池10の概略構成を説明する図である。
図2(A)は、ラミネート型全固体電池10の上面視(
図1におけるA視)である。ラミネート型全固体電池10は、外装部材20としてラミネートフィルムを用いた全固体電池であり、外装部材20から、負極端子(負極タブ)1aおよび正極端子(正極タブ)5aが延出している。負極端子1a、正極端子5aは、本開示の「電極端子」である。ラミネートフィルムは、たとえば、アルミラミネートフィルム製のパウチであってよく、樹脂フィルムの間にアルミ箔を挟んだ3層構造のフィルムであってよい。樹脂フィルムは、たとえば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)等を含んでよい。
【0025】
図2(B)は、外装部材20に収納される全固体電池積層体15であり、
図2(A)のB-B断面を示している。全固体電池積層体15は、負極集電体層1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、および正極集電体層5がこの順に積層された全固体電池要素8が、負極集電体層1及び正極集電体層5を共有し、積層順を逆方向として3個積層されている。負極集電体層1は負極端子1aに接続され、正極集電体層5は正極端子5aに接続される。なお、全固体電池積層体15に含まれる全固体電池要素8の数は、1個であってもよく、4個以上であってもよい。絶縁フィルム7は、全固体電池積層体15と外装部材(ラミネートフィルム)20との間を絶縁する。全固体電池積層体15あるいは全固体電池要素8が、本開示の「発電要素」の一例に相当する。
【0026】
ラミネート型全固体電池10は、硫化物系全固体電池である。本開示において、硫化物系全固体電池とは、正極活物質層4の材料、あるいは、固体電解質層3の材料の少なくとも一方に、硫黄成分を含有するものである。本実施の形態では、固体電解質層3は、硫化物系固体電解質を含み、たとえば、硫化物系固体電解質は、5硫化リン(P2S5)、硫化リチウム(Li2S)、を出発原料としたものであってよい。この場合、正極活物質層4は、たとえば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、等を含んでよい。固体電解質層3が酸化物系固体電解質から構成される場合、正極活物質層4は、硫黄系正極活物質が用いられる。硫黄系正極活物質としては、有機硫黄化合物あるいは無機硫黄化合物であってよい。なお、固体電解質層3および正極活物質層4の両方が、硫黄成分を含んでもよい。
【0027】
外装部材(ラミネートフィルム)20に、全固体電池積層体15を収容したあと、外装部材20の外周(周縁部)を熱溶着(熱融着)により接合して、全固体電池積層体15を密封する。これにより、接合部(シール部)20aが形成される。負極端子1aおよび正極端子5aと外装部材20との間のシール性を向上するため、負極端子1aおよび正極端子5aの表裏の両面を覆う樹脂シート21,22が設けられている。樹脂シート21,22は、たとえば、PPやPE(ポリエチレン)等の樹脂材料によって帯状に形成され、負極端子1a、正極端子5aに巻き付けられる。そして、樹脂シート21,22を巻き付けた負極端子1a、正極端子5aを外装部材20に挟み込んで、外装部材20を熱溶着により接合する。なお、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部は、ホーンを用いた超音波溶着による熱溶着によって接合されてよく、他の接合部は、ヒートバーを用いた熱溶着によって接合されてよい。
【0028】
図1を参照して、複数のラミネート型全固体電池10が積層されるとともに電気的に直列に接続され(バスバーの図示は省略している)、電池モジュール50が構成される。電池モジュール50は、熱伝導シート35を介して、熱交換器(冷却板)30に接している。本実施の形態において、電池モジュール50は、冷却装置100によって冷却可能とされている。冷却装置100は、冷凍サイクル150と、チラー160と、冷却回路200とから構成される。冷凍サイクル150は、車両Vの空調用の冷凍サイクルであり、コンプレッサ151と、コンデンサ152と、電気式膨張弁153と、エバポレータ154と、蒸発圧力調整弁(EPR:Evaporative Pressure Regulator)155と、電気式膨張弁156とを含む。チラー160は、冷凍サイクル150と冷却回路200とに接続され、冷凍サイクル150の冷媒と冷却回路200の熱媒体との間で、熱交換を行う。熱媒体は、たとえば、絶縁性の不凍液であってよい。冷却回路200は、ポンプ210を含み、熱媒体通路201を通って熱交換器(冷却板)30に流入する熱媒体を、冷却回路200内で循環する。冷凍サイクル150(コンプレッサ151および各種弁を含む)およびポンプ210は、ECU300によって制御される。
【0029】
熱交換器(冷却板)30は、電池モジュール50と熱交換を行い、熱媒体によって電池モジュール50を冷却する。本実施の形態において、熱交換器30は、複数の熱媒体流路Chが形成された多穴管31と複数のヘッダ(マニホルド)204~207とから構成され、多穴管31は、たとえば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなり、押し出し成形を用いて製造されている。
【0030】
チラー160から吐出された熱媒体は、熱媒体通路201を流れ、熱媒体通路202と熱媒体通路203に分岐する。熱媒体通路202には、流量制御弁211が設けられ、熱媒体通路203には、流量制御弁212が設けられる。流量制御弁211を通過した熱媒体は、ヘッダ204へ流入し、多穴管31の熱媒体流路Chを流れ、電池モジュール50と熱交換を行い、ヘッダ205へ流入する。流量制御弁212を通過した熱媒体は、ヘッダ206へ流入し、多穴管31の熱媒体流路Chを流れ、電池モジュール50と熱根幹を行い、ヘッダ207へ流入する。ヘッダ205,207へ流入した熱媒体は、熱媒体通路208によって、ポンプ210に戻る。
【0031】
図3は、熱交換器(冷却板)30とラミネート型全固体電池10(電池モジュール50)との関係を示す図である。この
図3は、
図1におけるA視図である。流量制御弁212を通過し、ヘッダ206へ流入した熱媒体は、負極端子1a、正極端子5a、および樹脂シート21,22の図示下方に位置する熱媒体流路Chを流れる。負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部は、ヘッダ206へ流入した熱媒体によって冷却される。また、流量制御弁211を通過し、ヘッダ204に流入した熱媒体は、負極端子1a、正極端子5a、および樹脂シート21,22の図示下方を除く位置の熱媒体流路Chを流れる。
【0032】
図1を参照して、監視ユニット40は、電池モジュール50の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU300へ出力する。また、
図2および
図3に示すように、ラミネート型全固体電池10の負極端子1aおよび正極端子5aには(より詳細には、樹脂シート21,22には)、温度センサ23が設けられている。温度センサ23は、負極端子1aおよび正極端子5aの温度である端子部温度Tbを検出し、その検出結果をECU300へ出力する。
【0033】
ラミネート型全固体電池10において、たとえば、外装部材20(ラミネートフィルム)の封止箇所(接合部)から空気が侵入する懸念がある。侵入した空気に水分が含まれていると、固体電解質層3、あるいは、正極活物質層4に含まれる硫黄成分と水分が反応して硫化水素が発生し放出される可能性がある。特に、ラミネート型全固体電池10では、外装部材20のシール部(接合部)から負極端子1a、正極端子5a(電極タブ)が延出し、外装部材(ラミネートフィルム)20が、負極端子1aおよび正極端子5aを挟むように接合され封止されている。このため、高温になると、当該シール部(接合部)が変形し封止が解け易くなり、シールアウトが発生する懸念がある。
【0034】
また、本実施の形態では、負極端子1aおよび正極端子5aと外装部材20との間のシール性を向上するため、負極端子1aおよび正極端子5aに樹脂シート21,22を巻き付け、外装部材20に挟み込んで、外装部材20を熱溶着によりしている。このため、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部が高温になると、樹脂シート21,22が変形し、封止が解けやすくなる可能性がある。
【0035】
本実施の形態では、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部が高温になり、封止が解ける可能性があるとき、当該接合部を冷却することにより、シールアウトの発生を抑制する。
図4は、ECU300で実行される冷却制御の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、車両VのパワースイッチがONのとき、および、電池モジュール50の外部充電中に、所定期間毎に繰り返し処理される。
【0036】
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、ラミネート型全固体電池10(電池モジュール50)に設けた各々の温度センサ23の検出信号から、端子部温度Tbを取得し、取得した端子部温度Tbのうち、最も温度の高い最大温度MAX[Tb]を算出する。
【0037】
続くS11では、最大温度MAX[Tb]が、所定値T1以上か否かを判断する。所定値T1は、予め実験等で設定される値であり、端子部温度Tbが、所定時間の間、所定値T1を超えると、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部の封止が解ける可能性がある値である。所定値T1は、本開示の「第1所定値」に相当する。最大温度MAX[Tb]が所定値T1以上であると(MAX[Tb]≧T1)、肯定判定されS12へ進み、最大温度MAX[Tb]が所定値T1未満であると(MAX[Tb]<T1)、否定判定されS13へ進む。
【0038】
S12では、端子強化冷却を実行し、今回のルーチンを終了する。冷却制御におけるデフォルト(初期設定)は、後述する通常冷却である。現在実行している冷却制御が通常冷却である場合は、端子強化冷却に切り替えられる。現在実行している冷却制御が端子強化冷却である場合、端子強化冷却が継続される。端子強化冷却では、流量制御弁211が全閉とされ、流量制御弁212が全開となる。これにより、チラー160から吐出された熱媒体の全量が、ヘッダ206に流入し、負極端子1a、正極端子5a、および樹脂シート21,22の図示下方に位置する熱媒体流路Chを流れる(
図3参照)。これによって、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部の冷却量(熱交換量)が大きくなり、当該接合部の温度が低下し、樹脂シート21,22の変形が抑制され、封止が解けることを抑制できる。
【0039】
S13では、最大温度MAX[Tb]が、所定値T2以下か否かを判断する。所定値T2は、予め実験等で設定される値であり、端子部温度Tbが、所定値T2以下であれば、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部、および、樹脂シート21,22が変形することなく、封止を維持できる値である。所定値T2は、所定値T1より小さな値である。所定値T2は、本開示の「第2所定値」に相当する。最大温度MAX[Tb]が所定値T2以下であると(MAX[Tb]≦T2)、肯定判定されS14へ進む。最大温度MAX[Tb]が所定値T2より高いと(MAX[Tb]>T2)、今回のルーチンを終了する(現在の冷却制御の形態(端子強化冷却/通常冷却)が継続される)。
【0040】
S14では、通常冷却を実行し、今回のルーチンを終了する。現在実行している冷却制御が端子強化冷却である場合は、通常冷却に切り替えられる。現在実行している冷却制御が通常冷却である場合、通常冷却が継続される。通常冷却では、監視ユニット40で検出した電池モジュール50(ラミネート型全固体電池10)の温度が、設定範囲内に収まるよう、流量制御弁211,212の開度が制御される。これにより、熱交換器30(多穴管31)のすべての熱媒体流路Chを流れる熱媒体によって、電池モジュール50の温度を適切な温度に維持できる。
【0041】
本実施の形態によれば、最大温度MAX[Tb]が所定値T1以上のとき、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部の冷却量(熱交換量)が大きくして、当該接合部を冷却するので、当該接合部の変形が抑制され、シールアウトの発生を抑制できる。これにより、硫化物系固体電池であるラミネート型全固体電池10から、硫化水素が放出されることを抑制できる。
【0042】
本実施の形態では、最大温度MAX[Tb]が所定値T2以下のとき、熱交換器30(多穴管31)のすべての熱媒体流路Chを流れる熱媒体によって電池モジュール50(ラミネート型全固体電池10)を冷却する。これにより、ラミネート型全固体電池10を適切に冷却でき、電池の劣化等を抑制できる。
【0043】
(変形例)
図5は、変形例における電池モジュール50の冷却方法を説明する概略図である。変形例では、電池モジュール50(ラミネート型全固体電池10)の冷却を空冷で行う。変形例では、
図5(A)に示すように、複数のラミネート型全固体電池10が、図示上下方向に積層され、電気的に直列に接続されて、電池モジュール50が構成されている。
図5では、バスバーの図示を省略しており、また、
図5(A)では、ラミネート型全固体電池10の断面図を用いている。なお、
図5(B)は、電池モジュール50の上面視である。
【0044】
変形例では、各々のラミネート型全固体電池10の負極端子1a、正極端子5a、および樹脂シート21,22と対向する位置に、分岐冷却風通路510が配置されている。
図5に示すように、分岐冷却風通路510は、冷却風通路500から分岐して、各ラミネート型全固体電池10の負極端子1a、正極端子5a、および樹脂シート21,22と対向する位置に延びている。冷却ファン600が駆動されると、冷却風が、冷却風通路500を介して、分岐冷却風通路510に導入される。
【0045】
分岐冷却風通路510には、各々のラミネート型全固体電池10の負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部に向けて、冷却風を供給する吹き出し孔511が設けられる。これにより、吹き出し孔511から冷却風が当該接合部に供給されると(吹き付けられると)、当該接合部が冷却され、当該接合部の温度が低下する。
【0046】
図6は、変形例において、ECUで実行される冷却制御の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートも、車両VのパワースイッチがONのとき、および、電池モジュール50の外部充電中に、所定期間毎に繰り返し処理される。
図6において、S10,S11,S13は、
図5のフローチャートと同一の処理である。
【0047】
最大温度MAX[Tb]が所定値T1以上であり、S11で肯定判定されると、S21において、冷却ファン600が駆動され、吹き出し孔511から冷却風が供給される。吹き出し孔511から供給された冷却風は、各々のラミネート型全固体電池10の負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部を冷却する。なお、変形例における冷却制御のデフォルト(初期設定)は、冷却ファン600が停止状態である。現在、冷却ファン600が停止しているときは、冷却ファン600を駆動し、今回のルーチンを終了する。現在、冷却ファン600が駆動されているときは、冷却ファン600の駆動を継続して、今回のルーチンを終了する。
【0048】
最大温度MAX[Tb]が所定値T2以下であり、S13で肯定判定されると、S21において、冷却ファン600の駆動を停止し、今回のルーチンを終了する。最大温度MAX[Tb]が所定値T2より高く、S13で否定判定されると、現在の冷却ファン600の形態(冷却ファン600の駆動/停止)が継続され、今回のルーチンを終了する。
【0049】
この変形例によれば、最大温度MAX[Tb]が所定値T1以上のとき、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部に冷却風を供給して、当該接合部を冷却するので、当該接合部の変形が抑制され、シールアウトが発生を抑制できる。また、最大温度MAX[Tb]が所定値T2以下になると、冷却風の供給が停止されるので、当該接合部が過冷却になることも、抑制できる。
【0050】
上記実施の形態では、最大温度MAX[Tb]を、所定値T1,T2と比較している。ECU300は、各々の温度センサ23で検出した端子部温度Tbの平均値を算出し、この平均値と所定値T1,T2と比較するようにしてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、温度センサ23で検出した端子部温度Tbを用いているが、他の手段によって、負極端子1aおよび正極端子5aが延出する接合部の温度を取得(推定)してもよい。たとえば、監視ユニット40によって、ラミネート型全固体電池10の内部抵抗を求める。そして、ラミネート型全固体電池10の入出力電流値と内部抵抗に基づいて、当該接合部の温度を推定するようにしてもよい。この場合、監視ユニット40で検出した、電池モジュール50(ラミネート型全固体電池10)の温度を加味して、当該接合部の温度を推定するようにしてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、電池モジュール50が車両Vに搭載された例を説明した。電池モジュール50は、定置用の蓄電装置であってもよい。
【0053】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 負極集電体層、1a 負極端子、2 負極活物質層、3 固体電解質層、4 正極活物質層、5 正極集電体層、5a 正極端子、7 絶縁フィルム、8 全固体電池要素、10 ラミネート型全固体電池、15 全固体電池積層体、 20 外装部材(ラミネートフィルム)、20a 接合部(シール部)、21,22 樹脂シート、23 温度センサ、30 熱交換器、31 多穴管,35 熱伝導シート、40 監視ユニット、50 電池モジュール、100 冷却装置、150 冷凍サイクル、151 コンプレッサ、152 コンデンサ、153,156 電気式膨張弁、154 エバポレータ、155 EPR、160 チラー、200 冷却回路、201,202,203,208 熱媒体通路、204,205,206,207 ヘッダ、210 ポンプ、211,212 流量制御弁、300 ECU、301 プロセッサ、302 メモリ、500 冷却風通路、510 分岐冷却風通路、511 吹き出し孔、600 冷却ファン、Ch 熱媒体流路、V 車両。