(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114272
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置および電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250729BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20250729BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008871
(22)【出願日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 新也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM12
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770GA03
5H770HA02X
5H770LA02X
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】電力変換装置のスイッチング素子に過電流が流れ続けることを抑制する制御装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子Q1の制御電極に所定の第1制御電圧Vg1の振幅のパルス幅変調電圧を印加し、スイッチング素子Q1の主電極に流れる素子電流Idに基づく動作信号Vcを生成する、スイッチング素子Q1を用いた電力変換装置1の制御方法において、動作信号Vcが第1基準値Vc1に達した場合、振幅を第1制御電圧Vg1よりも小さい第2制御電圧Vg2に制限して素子電流Idを抑制し、第2制御電圧Vg2に制限してから所定の抑制時間ΔT1が経過する前に動作信号Vcが第1基準値Vc1よりも大きい第2基準値Vc2に達した場合、振幅を第2制御電圧Vg2よりも小さい第3制御電圧Vg3に制限して素子電流を更に抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を用いた電力変換装置の制御方法であって、
前記スイッチング素子の制御電極に所定の第1制御電圧の振幅のパルス幅変調電圧を印加し、
前記スイッチング素子の主電極に流れる素子電流に基づく動作信号を生成し、
前記動作信号が第1基準値に達した場合、前記振幅を前記第1制御電圧よりも小さい第2制御電圧に制限して前記素子電流を抑制し、
前記第2制御電圧に制限してから所定の抑制時間が経過する前に前記動作信号が第1基準値よりも大きい第2基準値に達した場合、前記振幅を前記第2制御電圧よりも小さい第3制御電圧に制限して前記素子電流を更に抑制する、
電力変換装置の制御方法。
【請求項2】
前記振幅を前記第2制御電圧に制限してから前記抑制時間が経過しても前記動作信号が第2基準値に達しなかった場合には、前記振幅を前記第2制御電圧から前記第1制御電圧に戻す、請求項1に記載の電力変換装置の制御方法。
【請求項3】
スイッチング素子を用いた電力変換装置の制御装置であって、
前記スイッチング素子の制御電極に所定の第1制御電圧の振幅のパルス幅変調電圧を印加する駆動回路部と、
前記スイッチング素子の主電極に流れる素子電流に基づく動作信号を生成する過電流検出部と、
前記動作信号が第1基準値に達した場合、前記振幅を前記第1制御電圧よりも小さい第2制御電圧に制限する制御電圧抑制部と、
前記第2制御電圧に制限してから所定の抑制時間が経過する前に前記動作信号が前記第1基準値よりも大きい第2基準値に達した場合、前記振幅を前記第2制御電圧よりも小さい第3制御電圧に制限する過電流判定部と、
を備えた電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記制御電圧抑制部は、前記振幅を前記第2制御電圧に制限してから前記抑制時間が経過しても前記動作信号が第2基準値に達しなかった場合には、前記振幅を前記第2制御電圧から前記第1制御電圧に戻す、請求項3に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記制御電圧抑制部は、前記第1基準値を設定する抑制開始判定部と、前記抑制時間を設定する抑制時間調整部と、前記第2制御電圧を設定する抑制電圧生成部とを備える、請求項3また4に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
前記抑制時間調整部は、抵抗とコンデンサにより構成された回路を備え、
前記抑制時間は、前記回路の時定数により設定される、
請求項5に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
前記抑制電圧生成部は、定電圧ダイオードと抵抗の直列回路を備え、
前記第2制御電圧は、前記定電圧ダイオードの定電圧の値により設定される、
請求項5に記載の電力変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御装置および電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スイッチング素子を有する電力変換装置において、スイッチング素子に短絡が発生したことを検出してスイッチング素子をオフさせることでスイッチング素子の保護を図る電力変換装置の保護装置が記載されている。特許文献1の電力変換装置の保護回路は、スイッチング素子に過電流が生じるとスイッチング素子のゲート電圧を下げるとともに、スイッチング素子の過電流状態の継続時間をタイマで計測する。そして、電力変換装置の保護回路は、誤判定防止のために、スイッチング素子の過電流状態が一定時間継続した場合を短絡と判断して、スイッチング素子をオフする。一方で、スイッチング素子の過電流状態が一定時間以内に継続しなくなった場合には、電力変換装置の保護回路はゲート電圧を元の値に上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力変換装置の保護装置では、誤判定防止のために、スイッチング素子の過電流状態が一定時間継続した場合に短絡と判断してスイッチング素子をオフするという構成である。このため、一定時間の間にスイッチング素子に過電流が流れ続けてしまうために、スイッチング素子にダメージが発生してしまうおそれがあるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、電力変換装置のスイッチング素子に過電流が流れ続けることを抑制することができる電力変換装置の制御装置および電力変換装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる電力変換装置の制御方法は、スイッチング素子の制御電極に所定の第1制御電圧の振幅のパルス幅変調電圧を印加し、スイッチング素子の主電極に流れる素子電流に基づく動作信号を生成する。動作信号が第1基準値に達した場合、振幅を第1制御電圧よりも小さい第2制御電圧に制限して素子電流を抑制する。第2制御電圧に制限してから所定の抑制時間が経過する前に動作信号が第1基準値よりも大きい第2基準値に達した場合、振幅を第2制御電圧よりも小さい第3制御電圧に制限して素子電流を更に抑制する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電力変換装置の制御装置および電力変換装置の制御方法によれば、電力変換装置のスイッチング素子に過電流が流れ続けることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る制御装置を適応した電力変換装置の一例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置の制御電圧抑制部の一例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御装置の第1の動作を説明するタイムチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る制御装置の第2の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態に係る電力変換装置の保護装置を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1,2を用いて実施形態に係る制御装置を適応した電力変換装置の一例を説明する。
【0011】
電力変換装置1は、例えば、電気自動車に搭載され、直流電源2と交流負荷である三相モータMとの間で電力変換を行うためのものであり、複数のスイッチング素子Q1-Q6を備えた双方向三相インバータ回路を用いた場合を例として説明する。ただし、これには限定されず、電力変換装置1は、例えば、複数のスイッチング素子を備えた単方向の単相インバータであってもよい。交流負荷は、モータに限定されず、任意の交流負荷を用いることができる。スイッチング素子Q1-Q6は、実施形態ではNチャネル型MOSFETを用いているが、これには限定されず、IGBT等のパワー半導体素子を用いることができる。
【0012】
電力変換装置1は、直流電源2から供給された直流電力を交流電力に変換して三相モータMを駆動すると共に、三相モータMから供給された交流電力を直流電力に変換して直流電源2を充電することができる。直流電源2は、例えば、充電可能な2次電池であるリチウムイオン電池を用いることができる。直流電源2から出力される直流電圧V0は、例えば、400Vである。三相モータMの三相交流電圧は、実効値が例えば100Vで、周波数が例えば50Hzの低周波数である。
【0013】
電力変換装置1は、それぞれ直流電源2に並列に接続されている、平滑コンデンサC0と、第1上下アームS1と、第2上下アームS2と、第3上下アームS3とを備える。第1上下アームS1は、直列接続された上アーム素子としてのスイッチング素子Q1と下アーム素子としてのスイッチング素子Q2を備え、スイッチング素子Q1、Q2の接続点が三相交流のU相電極Uとなる。第2上下アームS2は、直列接続された上アーム素子としてのスイッチング素子Q3と下アーム素子としてのスイッチング素子Q4を備え、スイッチング素子Q3、Q4の接続点が三相交流のV相電極Vとなる。第3上下アームS3は、直列接続された上アーム素子としてのスイッチング素子Q5と下アーム素子としてのスイッチング素子Q6を備え、スイッチング素子Q5、Q6の接続点が三相交流のW相電極Wとなる。三相交流のU相電極UとV相電極VとW相電極Wには、交流負荷である三相モータMの電源端子が接続されている。
【0014】
各々のスイッチング素子Q1-Q6の制御電極であるゲート電極Gには、スイッチング素子Q1-Q6を制御するための制御装置4が接続されている。なお、
図1では、回路図の煩雑化をさけるために、スイッチング素子Q1のゲート電極Gのみに制御装置4が接続されている状態を図示し、スイッチング素子Q2-Q6についての構成は省略している。また、以下では、制御装置4がスイッチング素子Q1を制御する場合を例に説明するが、スイッチング素子Q2-Q6についても同様に構成されている。
【0015】
制御装置4は、駆動回路部5と、過電流検出部6と、制御電圧抑制部7と、過電流判定部8とを備える。駆動回路部5は、例えば、数百kHzの高周波のキャリア電圧に基づき生成された、所定の第1制御電圧Vg1の振幅の高周波のパルス幅変調電圧をスイッチング素子Q1のゲート電極Gに制御電圧としてのゲート電圧Vgとして印加する。所定の第1制御電圧Vg1は、スイッチング素子Q1を完全にオンするのに十分な値であり、例えば、18.0Vである。これにより、スイッチング素子Q1は、直流電源2から三相モータMまたは三相モータMから直流電源2に電力を供給するための直流電力―交流電力変換に適した動作を行うことができる。複数のスイッチング素子Q1-Q6を備えた双方向三相インバータ回路の基本動作は、既知のものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0016】
過電流検出部6は、スイッチング素子Q1の第1主電極であるドレイン電極Dに流れる素子電流であるドレイン電流Idに基づく動作信号Vcを生成する。動作信号Vcは、制御電圧抑制部7と過電流判定部8の入力に伝送される。
【0017】
制御電圧抑制部7は、動作信号Vcが第1基準値Vc1に達するとオンとなり、スイッチング素子Q1のゲート電極に印加されるパルス幅変調電圧の振幅を第1制御電圧Vg1よりも小さい第2制御電圧Vg2に所定の抑制時間ΔT1の期間だけ制限する。第2制御電圧Vg2は、スイッチング素子Q1が完全にオフにはならない範囲に調整される。第1制御電圧Vg1よりも小さい第2制御電圧Vg2に制限することにより、スイッチング素子Q1のドレイン電流Idの上昇が抑制され、スイッチング素子Q1の発熱も抑制される。抑制時間ΔT1の期間に動作信号Vcが第1基準値Vc1よりも大きい第2基準値Vc2に達しなかった場合は、制御電圧抑制部7がオフとなり、駆動回路部5がスイッチング素子Q1のゲート電極に印加するパルス幅変調電圧の振幅が第1制御電圧Vg1に戻る。
【0018】
過電流判定部8は、抑制時間ΔT1の期間内に動作信号Vcが第2基準値Vc2に達すると、過電流が発生していると判定し、スイッチング素子Q1のゲート電極に印加されるパルス幅変調電圧の振幅を第2制御電圧Vg2より小さい第3制御電圧Vg3に制限する。例えば、過電流判定部8が、駆動回路部5によりスイッチング素子Q1のゲート電極に印加されるパルス幅変調電圧の振幅を第3制御電圧Vg3=0にすれば、スイッチング素子Q1の動作がオフとなり、ドレイン電流Idが0となる。また、例えば、動作信号Vcが第1基準値Vc1よりも小さくなったときに、過電流判定部8がオフとなり、駆動回路部5がスイッチング素子Q1のゲート電極に印加するパルス幅変調電圧の振幅が第1制御電圧Vg1に戻る。
【0019】
次に、実施形態に係る制御装置4における過電流検出部6の構成をより詳細に説明する。過電流検出部6は、ダイオードD1と、抵抗R1と、コンデンサC1と、定電流源10とを備える。
【0020】
ダイオードD1のカソードは、スイッチング素子Q1の第1主電極であるドレイン電極に接続されている。抵抗R1は、第1端がダイオードD1のアノードに接続され、第2端が制御電圧抑制部7および過電流判定部8の入力に接続されている。コンデンサC1は、抵抗R1の第2端と制御電圧抑制部7および過電流判定部8の入力の接続点とグランド電位との間に接続されている。定電流源10は、抵抗R1の第2端と制御電圧抑制部7および過電流判定部8の入力の接続点とグランド電位との間に接続され、直流電流I1を出力する。
【0021】
スイッチング素子Q1にドレイン電流Idが流れていないときには、定電流源10の直流電流I1は、抵抗R1とダイオードD1を経て、スイッチング素子Q1のドレイン電極に流れていく。このため、制御電圧抑制部7と過電流判定部8の入力の電位である動作信号Vcは0となる。抵抗R1とダイオードD1の接続点の電位V1は、直流電流I1と抵抗R1の抵抗値R1の積であるI1・R1になっている。スイッチング素子Q1がオンとなり、ドレイン電流Idが流れると、ドレイン電位Vdが発生する。そして、ドレイン電位Vdが抵抗R1とダイオードD1の接続点の電位V1以上になると、定電流源10の直流電流I1がダイオードD1を超えて流れなくなるため、コンデンサC1が直流電流I1により充電される。このため、直流電流I1とコンデンサC1の静電容量C1の値に応じて、動作信号Vcが時間の経過とともに上昇する。また、ドレイン電流Idの減少に応じて、ドレイン電位Vdが抵抗R1とダイオードD1の接続点の電位V1よりも小さくなると、直流電流I1が抵抗R1とダイオードD1を経てスイッチング素子Q1のドレイン電極に流れていく。このため、動作信号Vcが再びゼロとなる。このような構成の過電流検出部6では、動作信号Vcが第2基準値Vc2に達する時間ΔT2は直流電流I1とコンデンサC1の静電容量C1の値に応じて設定される。この時間ΔT2は、抑制時間ΔT1よりも短い時間で、かつスイッチング素子Q1が過電流によりダメージを受けない時間に設定すればよい。
【0022】
なお、過電流検出部6の構成は、これには限定されない。例えば、定電流源10を定電圧源に置き換えても、同様に動作することができる。また、例えば、スイッチング素子Q1のドレイン電流Id、ドレイン電位Vd、ドレイン-ソース間電圧Vdsのいずれかを測定し、それに比例する電圧を動作信号Vcとして出力するようにしてもよい。
【0023】
次に、実施形態に係る制御装置4における制御電圧抑制部7の構成をより詳細に説明する。制御電圧抑制部7は、抑制開始判定部11と抑制時間調整部12と抑制電圧生成部13とを備える。
【0024】
抑制開始判定部11は、コンパレータCPと、直流電位Veとスイッチング素子Q1の第2主電極であるソース電極Sの間に接続された抵抗Raと抵抗Rbの直列回路とを備える。コンパレータCPの正入力端子+は、制御電圧抑制部7の入力となっており、動作信号Vcが入力される。コンパレータCPの負入力端子-は、抵抗Raと抵抗Rbの接続点に接続され、直流電位Veと抵抗Raの抵抗値Raと抵抗Rbの抵抗値Rbにより設定される第1基準値Vc1が入力される。コンパレータCPの出力は、動作信号Vcが第1基準値Vc1よりも小さいときにはL信号(例えば0V)となり、動作信号Vcが第1基準値Vc1以上のときはH信号(例えば、18V)となる。コンパレータCPの出力は、抑制時間調整部12の入力に接続されている。
【0025】
抑制時間調整部12は、コンデンサC2と抵抗R2とにより構成された回路を備える。コンデンサC2は、コンパレータCPの出力と抑制電圧生成部13の入力との間に接続される。抵抗R2は、コンデンサC2と抑制電圧生成部13の入力の接続点とスイッチング素子Q1のソース電極の間に接続されている。抑制時間調整部12は、コンデンサC2と抵抗R2とにより構成された回路の時定数により所定の抑制時間ΔT1を設定する。なお、抑制時間調整部12は、汎用ICやタイマ回路を用いた回路としてもよいが、
図2のように、コンデンサC2と抵抗R2のみを用いることにより、汎用ICやタイマ回路を用いるよりも回路規模を抑えることができる。
【0026】
抑制電圧生成部13は、定電圧ダイオードDzと抵抗R3とスイッチング素子Q7との直列回路を備える。スイッチング素子Q7は、実施形態ではNチャネル型MOSFETを用いているが、これには限定されず、IGBT等のパワー半導体素子を用いることができる。定電圧ダイオードDzのカソードは、駆動回路部5の出力とスイッチング素子Q1のゲート電極Gの接続点に接続されている。抵抗R3は、定電圧ダイオードDzのアノードとスイッチング素子Q7のドレイン電極に接続されている。スイッチング素子Q7のソース電極は、スイッチング素子Q1のソース電極Sに接続されている。スイッチング素子Q7のゲート電極が抑制電圧生成部13の入力となっている。定電圧ダイオードDzの定電圧Vzにより、第2制御電圧Vg2を設定する。抵抗R3は、低抵抗のものを用いることで、スイッチング素子Q1のゲート-ソース間にたまった電荷を高速で放電することができ、少ない回路規模で急峻にスイッチング素子Q1のゲート電圧Vgを第1制御電圧Vg1から第2制御電圧Vg2に制限可能である。スイッチング素子Q7のゲート電極に入力されるゲート電圧がL信号からH信号に切り替わると、スイッチング素子Q7がオンとなって導通する。すると、スイッチング素子Q1のゲート電極に接続されている駆動回路部5の出力パルス電圧の振幅が第1制御電圧Vg1から高速で下がり定電圧ダイオードDzにより設定された第2制御電圧Vg2に制限される。
【0027】
制御電圧抑制部7は、動作信号Vcが第1基準値Vc1に達すると、スイッチング素子Q1のゲート電極に印加される振幅を第1制御電圧Vg1よりも小さい第2制御電圧Vg2に高速に下げ、所定の抑制時間ΔT1の期間だけ制限することができる。
【0028】
次に、
図3を用いて、制御装置4の第1の動作を説明する。
【0029】
駆動回路部5の出力により、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが時刻0で0Vから第1制御電圧Vg1に切り替わる。すると、スイッチング素子Q1にドレイン電流Idが流れ始める。そして、時刻t1でドレイン電流Idが所定値Id1に達すると、過電流検出部6がオンとなり、動作信号Vcが生成される。時刻t2で動作信号Vcが第1基準値Vc1に達すると、制御電圧抑制部7がオンとなり、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが第1制御電圧Vg1から第2制御電圧Vg2に制限されて、ドレイン電流Idの値が減少する。更に、時刻t2から所定の抑制時間ΔT1が経過する前に、時刻t3で動作信号Vcが第2基準値Vc2に達すると、過電流判定部8がオンとなることにより、駆動回路部5の出力が第2制御電圧Vg2よりも小さい第3制御電圧Vg3=0Vに切り替わる。すると、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが第3制御電圧Vg3=0Vになることにより、スイッチング素子Q1がオフとなり、ドレイン電流Idが0Aとなることで、スイッチング素子Q1が過電流による素子ダメージから保護される。このとき、時刻t4で動作信号Vcが第1基準値Vc1以下となることにより、定電流源10の直流電流I1は、抵抗R1とダイオードD1を経て、スイッチング素子Q1のドレイン電極に流れるようになって、過電流検出部6がオフとなり動作信号Vcが0となる。
【0030】
このように、制御装置4の第1の動作では、動作信号Vcが第1基準値Vc1に達すると、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが第1制御電圧Vg1から第2制御電圧Vg2に制限されることで、ドレイン電流Idが抑制される。更に、抑制時間ΔT1が経過する前に動作信号Vcが第1基準値Vc1から第2基準値Vc2に達すると、スイッチング素子Q1がオフとなり、ドレイン電流Idが0となる。このような構成により、電力変換装置1のスイッチング素子Q1に過電流が流れ続けることを抑制し、スイッチング素子Q1が過電流による素子ダメージから保護される。
【0031】
次に、
図4を用いて、制御装置4の第2の動作を説明する。
【0032】
制御装置4の第2の動作では、駆動回路部5の出力により、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが時刻0で0Vから第1制御電圧Vg1に切り替わる。すると、スイッチング素子Q1にドレイン電流Idが流れ始めるが、ドレイン電流Idが所定値Id1に達しないため、過電流検出部6の出力である動作信号Vcは0のままである。しかし、過電流検出部6の出力である動作信号Vcにノイズが流入しているため、時刻t5で動作信号Vcのノイズレベルが第1基準値Vc1に達してしまう。すると、制御電圧抑制部7が動作することにより、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが第1制御電圧Vg1から第2制御電圧Vg2に制限されることにより、ドレイン電流Idの値が減少する。そして、ドレイン電流Idが所定値Id1に達しないままなので、時刻t5から所定の抑制時間ΔT1だけ経過した時刻t6になっても、動作信号Vcが第2基準値Vc2に達しない。このため、制御電圧抑制部7がオフとなり、スイッチング素子Q1のゲート電圧Vgが第2制御電圧Vg2から第1制御電圧Vg1に復帰する。
【0033】
制御電圧抑制部7の第1基準値Vc1よりも過電流判定部8の第2基準値Vc2を大きくしておくことで、過電流検出部6の出力である動作信号Vcにノイズが断続的に流入しても、ノイズによる誤判定でスイッチング素子Q1がオフとなることを抑制できる。
【0034】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0035】
1 電力変換装置
2 直流電源
4 制御装置
5 駆動回路部
6 過電流検出部
7 制御電圧抑制部
8 過電流判定部
10 定電流源
11 抑制開始判定部
12 抑制時間調整部
13 抑制電圧生成部
C0 平滑コンデンサ
Id 素子電流(ドレイン電流)
M 三相モータ
Q1-Q6 スイッチング素子
S1 第1上下アーム
S2 第2上下アーム
S3 第3上下アーム
Vc 動作信号
Vc1 第1基準値
Vc2 第2基準値
Vd ドレイン電位
Vg 制御電圧(ゲート電圧)
Vg1 第1制御電圧
Vg2 第2制御電圧
Vg3 第3制御電圧
ΔT1 抑制時間