(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114294
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】バッテリ暖気制御方法、及びバッテリ暖気制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20250729BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250729BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250729BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250729BHJP
B60L 53/10 20190101ALI20250729BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L50/60
B60L58/12
B60L15/20 J
B60L53/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008909
(22)【出願日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 貴之
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BA01
5H125BB03
5H125BC08
5H125BC19
5H125CA18
5H125EE25
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】電費の悪化を抑制可能なバッテリ暖気制御方法、及びバッテリ暖気制御装置を提供する。
【解決手段】外部電力の供給により充電可能なバッテリ、バッテリを加熱する暖気部を備えた電動車両のバッテリ暖気制御方法であって、バッテリの充電を行う充電スポットまでの経路情報を取得するスポット情報取得ステップと、暖気部による事前加熱を実施せずに充電スポットに到着した場合に対して、暖気部による事前加熱を実施して充電スポットに到着した場合の充電量の変化を示す充電増加量を算出する充電増加量算出ステップと、暖気部により事前加熱を実施した場合の消費電力量を算出する消費電力算出ステップと、充電増加量が、消費電力量以下である場合にバッテリの事前加熱を実施せず、充電増加量が、消費電力量よりも大きいときに、バッテリの事前加熱を実施する加熱制御ステップと、を実施する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電力の供給により充電可能なバッテリ、前記バッテリを加熱する暖気部を備えた電動車両のバッテリ暖気制御方法であって、
前記バッテリの充電を行う充電スポットまでの経路情報を取得するスポット情報取得ステップと、
前記暖気部による事前加熱を実施せずに前記充電スポットに到着した場合に対して、前記暖気部による前記事前加熱を実施して前記充電スポットに到着した場合の充電量の変化を示す充電増加量を算出する充電増加量算出ステップと、
前記暖気部により前記事前加熱を実施した場合の消費電力量を算出する消費電力算出ステップと、
前記充電増加量が、前記消費電力量以下である場合に前記バッテリの前記事前加熱を実施せず、前記充電増加量が、前記消費電力量よりも大きいときに、前記バッテリの前記事前加熱を実施する加熱制御ステップと、を実施する、
バッテリ暖気制御方法。
【請求項2】
前記充電スポットの前記経路情報に基づいて、前記電動車両が前記充電スポットに到着した時点での前記バッテリの温度を予測する温度予測ステップをさらに実施し、
前記温度予測ステップでは、前記事前加熱を行わない場合の前記バッテリの温度を基準温度として予測し、
前記充電増加量算出ステップにおいて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出する、
請求項1に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項3】
前記バッテリの充電開始時の温度を単位温度変化させた際の、前記バッテリの所定時間内の充電量の変化を前記充電増加量の傾きとし、
前記充電増加量算出ステップにおいて、複数の温度に対する前記充電増加量の傾きを記録した第一マップデータを用いて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出する、
請求項2に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項4】
前記第一マップデータとして、前記バッテリの充電状態に対応した複数の前記第一マップデータを用い、
前記充電増加量算出ステップにおいて、前記充電スポットに到着した時点での前記充電状態を予測し、予測した前記充電状態に対応する前記第一マップデータを用いて前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出する、
請求項3に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項5】
前記スポット情報取得ステップにおいて、前記充電スポットで供給可能な充電出力量をさらに取得し、
前記第一マップデータとして、前記充電出力量に対応した複数の前記第一マップデータを用い、
前記充電増加量算出ステップにおいて、前記スポット情報取得ステップで取得した前記充電出力量に対応する前記第一マップデータを用いて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出する、
請求項3に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項6】
前記スポット情報取得ステップにおいて、前記充電スポットにおける充電器のポート数に係るポート情報をさらに取得し、
前記充電増加量算出ステップにおいて、前記ポート情報に基づいて自車が使用可能な充電出力量を予測し、予測した前記充電出力量に対応する前記第一マップデータを用いて前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出する、
請求項5に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項7】
前記スポット情報取得ステップにおいて、他車による前記充電器の使用を予測する使用予測情報をさらに取得し、
前記ポート情報及び前記使用予測情報に基づいて、前記自車が使用可能な充電出力量を予測する、
請求項6に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項8】
前記充電出力量が、前記バッテリの電析限界の電流密度または電圧より大きい場合、前記電析限界の電流密度または充電電圧未満の前記充電出力量に補正して前記充電増加量を算出する、
請求項5に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項9】
前記充電増加量算出ステップにおいて、
前記バッテリの充電開始時の温度を単位温度変化させた際の、前記バッテリの所定時間内の充電量の変化を前記充電増加量の傾きとし、
前記充電増加量算出ステップにおいて、前記基準温度に対する前記充電増加量の傾きを用いて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出する、
請求項2に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項10】
前記充電スポットの前記経路情報に基づいて、前記電動車両が前記充電スポットに到着した時点での前記バッテリの温度を予測する温度予測ステップをさらに実施し、
前記温度予測ステップでは、前記事前加熱を行わない場合の前記バッテリの温度を基準温度として予測し、
前記消費電力算出ステップにおいて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記消費電力量を算出する、
請求項1に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項11】
前記消費電力算出ステップにおいて、前記バッテリの前記事前加熱の開始から前記バッテリの温度が上昇しない間の消費電力量と、前記バッテリの温度が上昇し始めた後の単位温度変化あたりの消費電力量とを用いて、前記基準温度からの前記事前加熱による昇温量に対する前記消費電力量を算出する、
請求項10に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項12】
前記消費電力算出ステップにおいて、前記暖気部のヒータ出力を検出し、複数の前記ヒータ出力に対応した前記単位温度変化あたりの消費電力量を示す第二マップデータを用いて、検出した前記ヒータ出力に対応する前記単位温度変化あたりの消費電力量を取得して前記消費電力量を算出する、
請求項11に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項13】
前記第二マップデータは、さらに、前記ヒータ出力に対応した前記バッテリの加熱開始から前記バッテリの温度が上昇しない間の消費電力量を含み、
前記消費電力算出ステップにおいて、前記第二マップデータを用いて、検出した前記ヒータ出力に対応する前記バッテリの加熱開始から前記バッテリの温度が上昇しない間の消費電力量を取得して前記消費電力量を算出する、
請求項12に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項14】
前記充電スポットの前記経路情報に基づいて、前記電動車両が前記充電スポットに到着した時点での前記バッテリの温度を予測する温度予測ステップをさらに実施し、
前記温度予測ステップでは、前記事前加熱を行わない場合の前記バッテリの温度を基準温度として予測し、
前記充電増加量算出ステップにおいて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記充電増加量を算出し、
前記消費電力算出ステップにおいて、前記事前加熱による前記基準温度からの昇温量に対する前記消費電力量を算出し、
前記充電増加量と前記消費電力量とが等しくなる損益分岐昇温量を算出する損益分岐算出ステップをさらに実施する、
請求項1に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項15】
前記バッテリを、前記損益分岐昇温量だけ昇温させるための加熱時間を算出する加熱時間算出ステップをさらに実施する、
請求項14に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項16】
前記加熱時間算出ステップにおいて、前記バッテリの前記事前加熱の開始から前記バッテリの温度が上昇しない間の所要時間と、前記バッテリの温度が上昇し始めた後の単位温度変化あたりの所要時間とに基づいて前記加熱時間を算出する、
請求項15に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項17】
前記加熱時間算出ステップにおいて、複数のヒータ出力に対応した、前記バッテリの前記事前加熱の開始から前記バッテリの温度が上昇しない間の所要時間と、前記バッテリの温度が上昇し始めた後の単位温度変化あたりの所要時間とを記録した第三マップデータを用い、前記暖気部の前記ヒータ出力に対応する前記バッテリの前記事前加熱の開始から前記バッテリの温度が上昇しない間の所要時間と、前記バッテリの温度が上昇し始めた後の単位温度変化あたりの所要時間とに基づいて、前記加熱時間を算出する、
請求項16に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項18】
前記加熱制御ステップは、前記経路情報に基づく前記充電スポットまでの移動時間が前記加熱時間よりも大きく、かつ、前記充電増加量が前記消費電力量よりも大きいときに、前記バッテリの前記事前加熱を開始する、
請求項15に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項19】
前記暖気部はヒータ出力を変更可能に構成され、
前記経路情報に基づく前記充電スポットまでの移動時間が前記加熱時間よりも大きくなるように、前記ヒータ出力を変更するヒータ出力変更ステップ、をさらに実施する、
請求項15に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項20】
前記暖気部は複数種設けられ、
前記経路情報に基づく前記充電スポットまでの移動時間が前記加熱時間よりも大きくなるように、前記暖気部を切り替えるヒータ切替ステップ、をさらに実施する、
請求項15に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項21】
前記暖気部は、前記電動車両を駆動させる駆動モータを備えた車両駆動装置を含み、
前記加熱制御ステップにおいて、前記充電増加量が前記消費電力量よりも大きいときに、前記駆動モータに磁束を発生させるためのd軸電流を流すことで発熱した熱を用い、前記バッテリの前記事前加熱を実施する、
請求項1に記載のバッテリ暖気制御方法。
【請求項22】
外部電力の供給により充電可能なバッテリと、前記バッテリを加熱する暖気部とを備えた電動車両のバッテリ暖気制御装置であって、
前記バッテリの充電を行う充電スポットの経路情報を取得するスポット情報取得部と、
前記暖気部による事前加熱を実施せずに前記充電スポットに到着した場合に対して、前記暖気部による前記事前加熱を実施して前記充電スポットに到着した場合の充電量の変化を示す充電増加量を算出する充電増加量算出部と、
前記暖気部により前記事前加熱を実施した場合の消費電力量を算出する消費電力算出部と、
前記充電増加量が、前記消費電力量以下である場合に前記バッテリの前記事前加熱を実施せず、前記充電増加量が、前記消費電力量よりも大きいときに、前記バッテリの前記事前加熱を実施する加熱制御部と、を備える、
バッテリ暖気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両におけるバッテリ暖気制御方法、及びバッテリ暖気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両におけるバッテリの充電制御として、充電前にバッテリを暖気する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の車両用バッテリ調温装置では、ナビゲーションシステムにおいて充電スポットが目的地として指定された場合に、走行中の温度制御によりバッテリを調温する。また、バッテリの温度を監視し、充電温度範囲から外れないようにバッテリを調温する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、バッテリの調温に係る消費電力量と充電スポットでの充電量との収支を考慮していない。このため、トータルのエネルギー収支がマイナスになる場合もあり、電気消費率(以降、電費と略す)が悪化するおそれがある、との課題がある。
【0005】
本発明は、電費の悪化を抑制可能なバッテリ暖気制御方法、及びバッテリ暖気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一態様に係るバッテリ暖気制御方法は、外部電力の供給により充電可能なバッテリ、前記バッテリを加熱する暖気部を備えた電動車両のバッテリ暖気制御方法であって、前記バッテリの充電を行う充電スポットまでの経路情報を取得するスポット情報取得ステップと、前記暖気部による事前加熱を実施せずに前記充電スポットに到着した場合に対して、前記暖気部による前記事前加熱を実施して前記充電スポットに到着した場合の充電量の変化を示す充電増加量を算出する充電増加量算出ステップと、前記暖気部により前記事前加熱を実施した場合の消費電力量を算出する消費電力算出ステップと、前記充電増加量が、前記消費電力量以下である場合に前記バッテリの前記事前加熱を実施せず、前記充電増加量が、前記消費電力量よりも大きいときに、前記バッテリの前記事前加熱を実施する加熱制御ステップと、を実施する。
【0007】
本開示の第二態様に係るバッテリ暖気制御装置は、外部電力の供給により充電可能なバッテリと、前記バッテリを加熱する暖気部とを備えた電動車両のバッテリ暖気制御装置であって、前記バッテリの充電を行う充電スポットの経路情報を取得するスポット情報取得部と、前記暖気部による事前加熱を実施せずに前記充電スポットに到着した場合に対して、前記暖気部による前記事前加熱を実施して前記充電スポットに到着した場合の充電量の変化を示す充電増加量を算出する充電増加量算出部と、前記暖気部により前記事前加熱を実施した場合の消費電力量を算出する消費電力算出部と、前記充電増加量が、前記消費電力量以下である場合に前記バッテリの前記事前加熱を実施せず、前記充電増加量が、前記消費電力量よりも大きいときに、前記バッテリの前記事前加熱を実施する加熱制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、充電増加量が、バッテリの事前加熱による消費電力量よりも大きい場合にのみバッテリの事前加熱を実施し、消費電力量が充電増加量を上回る場合では、バッテリの事前加熱を実施しない。これにより、バッテリの事前加熱による電費の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るバッテリ暖気制御装置を備える電動車両の全体構成を示す概略図。
【
図2】充電開始時のバッテリ温度に対するバッテリの所定時間における充電量の一例を示す図。
【
図3】第一実施形態のコントローラの構成及びプロセッサの機能構成を示すブロック図。
【
図4】バッテリを加熱した場合のバッテリ温度の変化の一例を示す図。
【
図5】バッテリ加熱時間とバッテリ残量との関係の一例を示す図。
【
図6】ヒータ出力毎の消費電力量、及び加熱に係る時間を記録した消費電力加熱時間算出用マップデータの一例を示す図。
【
図7】バッテリ温度区間毎の充電増加量の傾きを記録した充電算出用マップデータ(第一マップデータ)の一例を示す図。
【
図8】第一実施形態の損益分岐昇温量の演算方法を説明するための図。
【
図9】第一実施形態の損益分岐昇温量の演算方法を説明するための他の図。
【
図10】第一実施形態のバッテリ暖気制御方法を示すフローチャート。
【
図11】第一実施形態の充電増加量算出ステップを示すフローチャート。
【
図12】第一実施形態の消費電力量算出ステップを示すフローチャート。
【
図13】第二実施形態のバッテリ暖気制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について説明する。
[電動車両の全体構成]
図1は、本開示のバッテリ暖気制御装置として機能するコントローラ80が搭載された電動車両の概略構成を示す図である。
電動車両1は、
図1に示すように、バッテリ10と、車両駆動装置20と、HVAC30(Heating-Ventilation-Air Conditioning)と、バッテリ調温回路40と、バッテリコントローラ50と、ナビゲーション装置60と、各種センサ(例えば、バッテリサーモセンサ71,位置検出センサ72等)と、コントローラ80と等を備えて構成される。
以下、各構成について説明する。
【0011】
[バッテリ10の構成及び特性]
バッテリ10は、電動車両の車両駆動装置20等の電動車両1の各構成に電力を供給する。バッテリ10は、充電可能な二次電池であり、本開示の電動車両1では、充電スポットに設けられた充電器に接続することで、外部電力が供給されて充電される。このようなバッテリ10は、一般的に、バッテリ10の温度(以降、バッテリ温度と称する)によって充電可能量が異なる。
【0012】
図2は、充電開始時のバッテリ温度に対する所定時間におけるバッテリ10の充電量の一例を示す図である。
例えば、
図2に示すように、バッテリ10は、充電開始時のバッテリ温度が高くなるほど充電量が増加する。
図2に示すバッテリ10では、バッテリ温度の上昇に伴って充電量が増加する。バッテリ温度の変化に対する充電量の変化(
図2における直線の傾き)は、バッテリ温度区間によってそれぞれ異なる。例えば、
図2の例では、バッテリ温度T
1での傾きに対して、バッテリ温度T
2(T
1<T
2)での傾きが小さくなる。
【0013】
[車両駆動装置20の構成]
車両駆動装置20について簡単に説明する。車両駆動装置20は、コントローラ80の制御に基づいて駆動されて電動車両1を走行させる。
車両駆動装置20には、インバータ21、駆動モータ22、減速機23、及び駆動輪24等が含まれる。
インバータ21は、バッテリ10と駆動モータ22との間に設けられ、バッテリ10から入力される直流電流を交流電流に変換して駆動モータ22に出力する。また、駆動モータ22から入力される交流電流を直流電流に変換して、バッテリ10に入力する。インバータ21は、コントローラ80から入力される速度指令に基づいて、駆動モータ22に出力する電流を制御する。
これにより、駆動モータ22が駆動して回転駆動力を発生させ、減速機23を介して駆動輪24に伝達される。また、減速機23は、コントローラ80の制御に基づいた所定のギア比で、駆動モータ22からの回転駆動力を減速して駆動輪24に伝達する。
なお、車両駆動装置20にフロント駆動機構とリア駆動機構がそれぞれ設けられる構成としてもよい。この場合、インバータ21、駆動モータ22、及び減速機23は、それぞれフロント用とリア用とを含み、フロント駆動機構により駆動輪24のうちフロント駆動輪が駆動され、リア駆動機構により駆動輪24のうちリア駆動輪が駆動される構成としてもよい。
【0014】
また、車両駆動装置20では、インバータ21を制御して、駆動モータ22に磁束を発生させるためのd軸電流を流すことで、モータ回転駆動に影響を与えることなく、モータコイルを発熱させることができる(いわゆる、d軸放電)。当該d軸放電により発生する熱を、後述のバッテリ調温回路40からバッテリ10に伝熱させてバッテリ10を加熱してもよい。この場合、車両駆動装置20は、本開示の暖気部のヒータとして機能する。
【0015】
[HVAC30及びバッテリ調温回路40の構成]
HVAC30は、電動車両1の車内の空調制御システムであり、車内の温度を調整する。HVAC30には、例えば車内の空気を冷却するためのエバポレータ、車内の空気を温めるためのコンデンサ、エバポレータ及びコンデンサとして機能する室外熱交換手段、バッテリ調温回路40との間で熱交換を行うチラー等を含むヒートポンプが設けられる。
【0016】
バッテリ調温回路40は、バッテリの温度の調整を行う回路であり、上述したようにチラーによりHVAC30のヒートポンプシステムと熱交換可能となる。バッテリ調温回路40は、チラーを介してHVAC30のヒートポンプから吸熱または放熱することで、バッテリ10の温度を調温する。
【0017】
なお、本実施形態は、HVAC30が、本開示の暖気部の1つとして機能し、バッテリ調温回路40を介してバッテリ10を加熱する例を示すが、これに限定されない。バッテリ10を加熱する暖気部としては、例えば、PTCヒータ等により構成されたバッテリ用ヒータであってもよい。
また、上述したように、車両駆動装置20の駆動モータ22にd軸電流を流して、d軸放電により発生する熱をバッテリ調温回路40からバッテリ10に伝熱させてもよい。
【0018】
[バッテリコントローラ50の構成]
バッテリコントローラ50は、バッテリ10の充電や放電の実施、バッテリ10の状態(SOC)の検出等のバッテリ10に係る各種処理を実施する。また、バッテリ10は、バッテリサーモセンサ71を備えており、バッテリコントローラ50は、バッテリサーモセンサ71から出力されるバッテリ温度に応じたバッテリ温度信号を検出して、コントローラ80に出力する。
【0019】
[ナビゲーション装置60の構成]
ナビゲーション装置60は、車内に設けられたディスプレイ(図示略)に地図を表示させ、当該地図上に電動車両1の現在位置や、目的地までの経路を表示し、電動車両1の走行経路を画面表示や音声出力で案内する。
具体的には、ナビゲーション装置60は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の位置検出センサ72を備え、位置検出センサ72で検出される電動車両1の現在位置を中心とした所定の距離範囲の地図情報、及び施設情報を取得してディスプレイに表示させる。また、ユーザが指定した施設等の所定地点を目的地または経由地と設定し、現在位置から目的地または経由地までの経路を演算して、ディスプレイに表示し、当該経路を案内する。この際、ナビゲーション装置60は、現在位置から目的地または経由地までの移動に係る移動時間t
reachをさらに算出する。
ナビゲーション装置60で表示する地図情報や、地図上の各種施設に関する施設情報は、ナビゲーション装置60に内蔵されたデータ記憶装置に記憶されてもよく、コントローラ80の記憶部81(
図3参照)に記憶されていてもよく、インターネットを介して、所定のデータサーバに記憶された地図情報や施設情報を参照してもよい。
また、施設情報としては、地図上の施設の位置のみならず、当該施設に関する詳細情報が含まれる。例えば、施設情報が、バッテリ10の充電を行う充電スポットである場合、当該充電スポットの充電器で供給可能な充電出力量、充電器におけるポート数等を施設情報として含む。また、インターネットを介して所定のデータサーバから施設情報を取得する場合、充電スポットの混雑度や他のユーザが使用していないポート数を予測した予測使用情報等をさらに取得してもよい。
【0020】
本実施形態では、ユーザの設定入力により、経路充電のフラグを設定することができる。経路充電有のフラグが設定されている場合、ナビゲーション装置60は、コントローラ80からバッテリ10の充電状態(SOC)を取得し、SOCが所定値未満である場合に、ユーザに充電スポットを目的地や経由地に設定するように促してもよい。或いは、経路充電有のフラグが設定され、SOCが所定値未満である場合に、ナビゲーション装置60が自動で最寄りの充電スポットを目的地や経由地に自動設定してもよい。
そして、ナビゲーション装置60は、手動または自動で設定された充電スポットまでの経路情報(移動時間treachを含む)、及び施設情報(充電出力量、ポート数、予測使用情報等を含む)をコントローラ80に出力する。
【0021】
なお、本実施形態では、一例として、電動車両1がナビゲーション装置60を備える構成を例示するが、ナビゲーション装置60の代わりに、現在位置を検出可能なスマートフォンやタブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯端末を用いてもよい。
つまり、現在位置を検出する位置検出センサを有する携帯端末では、ナビゲーション用のアプリケーションソフトウェアプログラムをインストールすることで、ナビゲーション装置60と同様、ディスプレイに地図を表示させ、当該地図上にユーザの現在位置や目的地までの経路を表示、及び案内することができる。電動車両1は、例えばBluetooth(登録商標)や赤外線通信等の近距離通信装置を備え、近距離通信装置により携帯端末を通信することで、携帯端末から、地図情報、地図におけるユーザの現在位置、現在位置から目的地までの経路情報、及び施設情報等を受信してもよい。
【0022】
[各種センサ群の構成]
電動車両1には、各種センサが搭載される。これらのセンサとしては、上述したバッテリサーモセンサ71、電動車両1の現在位置を検出する位置検出センサ72等が含まれる。また、図示は省略するが、各種センサとして、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、車速を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ等が含まれる。また、電動車両1の車内温度を検出する室温センサ、外気温度を検出する外気温度センサ、電動車両1の周囲の物体を検出する物体検出センサ等が搭載されていてもよい。
【0023】
[コントローラ80の構成]
コントローラ80は、電動車両1の走行制御やバッテリの暖気制御等、電動車両1の各種動作を制御するコンピュータである。なお、ここでは、電動車両1に1つのコントローラ80が設けられる例を示すが、走行制御のための駆動制御用コントローラ、バッテリの暖気制御のための暖気制御用コントローラ等がそれぞれ別体として設けられてもよい。
【0024】
図3は、コントローラ80の機能構成及びプロセッサ82の機能構成を示す概略図である。
コントローラ80は、本開示のバッテリ暖気制御装置として機能し、
図3に示すように、各種情報を記憶するメモリ等の記憶部81、及び1つまたは複数のプロセッサ82を備えている。
記憶部81に記憶されるデータとしては、ナビゲーション装置60から受信した経路情報や施設情報、バッテリの充電に係る各種情報、バッテリの暖気制御に係る各種情報等が挙げられる。これらの情報についての詳細な説明は後述する。
また、記憶部81には、バッテリ暖気制御プログラムや、車両の走行に係る各種プログラムが記録されている。
【0025】
プロセッサ82は、記憶部81に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、例えば
図3に示すように、スポット情報取得部821、温度予測部822、消費電力算出部823、充電増加量算出部824、損益分岐算出部825、加熱時間算出部826、加熱制御部827等として機能する。なお、本開示では、バッテリ暖気制御装置に係るプロセッサ82の各機能を説明し、電動車両1の他制御に係る各機能についての記載は省略するが、プロセッサ82が、電動車両1の駆動や制動等の各種制御に関して様々な機能を有してもよい。
【0026】
[スポット情報取得部821の機能]
スポット情報取得部821は、バッテリ10の充電を行う充電スポットの情報を取得する。例えば、経路充電有のフラグが設定され、バッテリ10のSOCが所定値を下回る場合に、スポット情報取得部821は、ナビゲーション装置60から充電スポットまでの経路情報や、充電スポットに係る施設情報を取得する。現在位置から充電スポットまでの経路情報としては、上述したように、現在位置から充電スポットまでの移動に係る移動時間treachも含まれる。なお、上述したように、ナビゲーション装置60の代わりにユーザが所有する携帯端末を用いてもよく、この場合、スポット情報取得部821は、携帯端末と通信し、携帯端末から移動時間を含む経路情報や、充填スポットに係る施設情報を取得すればよい。
【0027】
[温度予測部822の機能]
温度予測部822は、電動車両1が充電スポットに到着した時点でのバッテリ温度を算出(予測)する。具体的には、温度予測部822は、バッテリ10を暖気しない場合、つまり事前加熱しない場合の充電スポットに到着した時点でのバッテリ温度を算出する。バッテリ10を事前加熱しない場合における、充電スポットに到着時点でのバッテリ温度は、本開示における基準温度Tbaseとなる。
基準温度Tbaseの算出は、例えば、外気温や、電動車両1の車速等に基づいて算出することができる。例えば、外気温や車速に対して、事前加熱しない場合のバッテリの単位時間あたりの温度変化量をデータマッピングしておき、温度予測マッピングデータとして記憶部81に記憶しておく。これにより、温度予測部822は、経路情報に含まれる移動時間treachと、基準温度予測マッピングデータとにより、基準温度Tbaseを算出することができる。
また、温度予測部822は、所定の関数式と、外気温や車速、及び移動時間treach等のパラメータとを用いて、基準温度Tbaseを算出するようにしてもよい。
【0028】
[消費電力算出部823の機能]
消費電力算出部823は、事前加熱によりバッテリ10を暖気(昇温)した場合の消費電力を算出する。
図4は、バッテリ10を加熱した場合のバッテリ温度の変化の一例を示す図である。
バッテリ10を加熱する場合、
図4に示すように、加熱開始から所定時間の間、バッテリ温度が変化しない期間が存在する。その後、ヒータ出力に応じた傾きで略線形的にバッテリ温度が上昇する。
ここで、加熱開始からバッテリ温度が変化しない期間を以降、無変化期間と称する。また、バッテリ温度が略線形的に上昇する期間を昇温期間と称する。事前加熱による消費電力量は、無変化期間における消費電力量と、昇温期間における消費電力量との合計値になる。
【0029】
ここで、昇温期間における消費電力量、及び無変化期間における消費電力量について説明する。
図5は、バッテリ加熱時間とバッテリ残量との関係の一例を示す図である。
図4において、バッテリ10を加熱してバッテリ温度T
1からバッテリ温度T
2まで昇温させた場合に、昇温期間において時間t
1から時間t
2まで要したものとする。また、
図5において、バッテリ温度T
1からバッテリ温度T
2までの昇温時間t
2-t
1で、バッテリ10のバッテリ残量がE
_heat12だけ減少したとする。また、加熱を行わない場合に、時間t
2-t
1の間にバッテリ残量がE
_without_heat12だけ減少したとする。この場合、事前加熱による昇温時間t
2-t
1での単位温度あたりの消費電力量(つまり、消費電力量の傾き)G
_heat12は、下記式(1)により算出できる。
[数1]
G
_heat12=(E
_heat12-E
_without_heat12)/(T
2―T
1) …(1)
【0030】
また、
図5での図示は省略するが、無変化期間(時間0~t
1)での消費電力量E
_delayも同様にして求めることができる。つまり、無変化期間において、バッテリ残量がE
_heat01だけ減少したとする。また、加熱を行わない場合での同時間でのバッテリ残量がE
_without_heat01だけ減少したとする。この場合、無変化期間での消費電力量E
_delayは、下記式(2)により算出できる。
[数2]
E
_delay=E
_heat01-E
_without_heat01 …(2)
【0031】
また、上記は、単位温度あたりの消費電力量G_heat12や、無変化期間における消費電力量E_delayを用いる例であるが、単位温度あたりのSOCの低下量や、無変化期間におけるSOCの低下量を算出してもよい。
【0032】
本実施形態では、ヒータ出力毎の、無変化期間の消費電力量E
_delayと、昇温期間の消費電力量の傾き(単位温度あたりの消費電力量G
_heat12)とを予めデータマッピングして消費電力加熱時間算出用マップデータ(本開示の第二マップデータ,第三マップデータに相当)として記憶部81に記憶しておく。そして、消費電力算出部823は、ヒータ出力と消費電力加熱時間算出用マップデータとを用いて消費電力量を演算する。
図6は、ヒータ出力毎の消費電力量、及び加熱にかかる時間を記録した消費電力加熱時間算出用マップデータの一例を示す図である。
図6において、ヒータ出力は、暖気部を構成する各ヒータの出力であり、例えば暖気部としてHVAC30を用いる場合、冷媒の加圧圧縮を行うコンプレッサに係る出力電力、駆動モータ22をd軸放電して発熱させる場合のd軸指令値、バッテリ用ヒータとしてPTCヒータを用いる場合は、PTCヒータへの電圧出力値等が例示できる。消費電力加熱時間算出用マップデータには、昇温期間の消費電力量として、各ヒータ出力に対応する、単位温度変化あたりの消費電力量G
_heat、及び、無変化期間の消費電力量が記録される。
なお、バッテリ10を昇温させる暖気部の種類(例えば、HVAC30、d軸放電、バッテリ専用ヒータ等)を選択できる場合では、選択可能な暖気部及び当該暖気部のヒータ出力毎に、単位温度変化あたりの消費電力量G
_heat、及び無変化期間の消費電力量をデータマッピングしておき、消費電力加熱時間算出用マップデータとして保持しておけばよい。
さらに、外気温毎の単位温度変化あたりの消費電力量G
_heat、及び無変化期間の消費電力量をデータマッピングした消費電力加熱時間算出用マップデータを用意してもよい。この場合、外気温の差によるより詳細な消費電力量を算出できる。
さらに、
図6に示すように、ヒータ出力毎の、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t
_unit、及び無変化期間の所要時間t_delayも消費電力加熱時間算出用マップデータとして記録する。これらの、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t
_unit、及び無変化期間の所要時間t_delayは、主に後述する加熱時間t
heatの算出に用いる。また、上記と同様、暖気部の種類を選択できる場合では、複数の暖気部のそれぞれに対応して、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t
_unit、及び無変化期間の所要時間t_delayを記録しておく。また、外気温毎の昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t
_unit、及び無変化期間の所要時間t_delayを記録しておいてもよい。
【0033】
本実施形態の消費電力算出部823は、バッテリ10の加熱に係るヒータ出力を検出し、消費電力加熱時間算出用マップデータから当該ヒータ出力に対応する、単位温度変化あたりの消費電力量G_heatと、無変化期間の消費電力量E_delayと、を読み出す。そして、消費電力算出部823は、基準温度Tbaseからの昇温量Tに対する消費電力量Y_heatを、下記式(3)により算出する。
[数3]
Y_heat=G_heat・T+E_delay …(3)
【0034】
[充電増加量算出部824の機能]
充電増加量算出部824は、事前加熱を行わないで充電スポットに到着した場合のバッテリ温度(基準温度T
base)に対する充電増加量を算出する。
図2に示すように、バッテリ10は、バッテリ温度によって所定時間内で充電可能となる充電量が異なり、昇温により充電量は増加する。また、バッテリ温度区間によって、昇温量に対する充電増加量の変化が異なり、例えば
図2の例では、温度T
2以降の充電増加量の変化は、T
2未満に比べて緩やかになる。
充電増加量算出部824は、基準温度T
baseにおける充電増加量の傾きG
_charge、つまり、単位温度変化あたりの充電量に基づいて、充電増加量Y
_chargeを算出する。
【0035】
また、充電増加量の傾きG_chargeは、上記のようにバッテリ温度の区間によって異なる他、さらに、充電開始時におけるSOC、充電スポットにおける充電器の充電出力量によっても変化する。
例えば、SOCが低い場合では、充電増加量の傾きが大きく、高くなると充電増加量の傾きが小さくなる傾向がある。充電スポットに到着時のSOCは、バッテリコントローラ50により検出されるバッテリ10の現在のSOCと、経路情報に基づいた現在位置から充電スポットまでの移動時間treachに基づいて推算できる。
【0036】
また、充電器の出力によっても、充電増加量が変化し、例えば、充電で出力可能な充電出力量が大きい場合は充電増加量の傾きG_chargeも大きくなる。充電出力量は、充電スポットにおける充電器のポート数によっても変化し、例えば、シングルポートの場合は、出力可能な充電出力量を独占できるため、充電増加量の傾きは大きくなる。
一方、マルチポートの場合では、他車両がポートを使用している場合は、充電増加量の傾きG_chargeも小さくなる。例えば、2ポートの充電器では、他車両が1ポートを使用すると、充電器が供給可能な充電出力量の1/2になるため、その分、充電増加量の傾きG_chargeも半分となる。充電スポットの充電器の充電出力量は、スポット情報取得部821により取得される施設情報から得られ、充電スポット到着時の推定使用ポートが含まれる場合、より詳細に充電出力量を把握できる。
また、マルチポートの充電器であっても、充電器メーカーや充電器の種類によって、個々のポートで供給可能な充電出力量が異なる場合がある。例えば、2ポートの充電器を2台の車両で使用する場合でも、必ずしも充電出力量が1/2になるとは限らず、いずれかのポートが優先される場合もある。このため、施設情報として、さらに、充電スポットに設置される充電器メーカーや充電器の種類に関する充電器詳細情報が含まれていてもよい。この場合、各充電器メーターや充電器の種類に対する充電出力量を予め記憶部81に記憶しておけば、充電器詳細情報により充電スポットに設置された充電器に対応したより詳細な充電出力量を把握することができる。
ただし、バッテリ10の電析限界の電流密度または電圧より大きい充電出力量が供給される充電スポット(充電器)の場合では、充電増加量算出部824は、当該電析限界の電流密度または電圧未満となるように、充電出力量を補正して充電増加量の傾きG_chargeを求める。
【0037】
図7は、バッテリ温度区間毎の充電増加量の傾きG
_chargeを記録した充電算出用マップデータの一例を示す図である。
本実施形態では、
図7に示すようなバッテリ温度区間毎の充電増加量の傾きG
_chargeを、充電開始時のSOC毎、及び充電スポットでの使用可能な充電出力量毎にデータマッピングしておき、充電算出用マップデータ(第一マップデータ)として記憶部81に記憶しておく。
これにより、充電増加量算出部824は、充電スポットに到着時点でのSOC予測結果と、スポット情報取得部821により取得した施設情報と、温度予測部822により予測される充電スポットに到着時点でのバッテリ温度(基準温度T
base)とに対応した充電増加量の傾きG
_chargeを充電算出用マップデータから取得することができる。
【0038】
[損益分岐算出部825の機能]
損益分岐算出部825は、基準温度T
baseにおける損益分岐昇温量T
beを算出する。
図8及び
図9は、損益分岐昇温量の演算方法を説明するための図であり、基準温度T
baseを基準(原点)として横軸に事前加熱による昇温量を示し、縦軸に充電増加量及び消費電力を示した図である。
図8及び
図9において、線Aは、基準温度T
baseに対して事前加熱によってバッテリ10を昇温した場合の昇温量に対する充電増加量Y
_chargeを示す。線部Bは、事前加熱によって消費される消費電力量Y
_heatを示す。線Aは、傾きがG
_chargeであり、線Bは、切片がE
_delay、傾きがG
_heatとなる。
図8は、基準温度T
baseがT
1の場合の一例を示し、
図9は、基準温度T
baseがT
2(T
2>T
1)である場合の一例を示した図である。
【0039】
損益分岐算出部825は、線Aと線Bとの交点、つまり、充電増加量Y
_chargeと消費電力量Y
_heatとが等しくなる点の昇温量を、損益分岐昇温量T
beとして算出する。この損益分岐昇温量T
beよりも低い昇温量では、消費電力量Y
_heatが充電増加量Y
_chargeを上回る、つまり、エネルギー収支がマイナスになることを示す。一方、
図8において、損益分岐昇温量T
beよりも高い昇温量では、充電増加量Y
_chargeが消費電力量Y
_heatを上回る。この場合、エネルギー収支がプラスになることを示す。
図8のパターンでは、事前加熱によってバッテリ温度が損益分岐昇温量T
beを超えるとエネルギー収支がプラスになる。これに対して、
図9のパターンのように、単位温度変化あたりの消費電力量G
_heatと、単位温度変化あたりの充電増加量(充電増加量の傾きG
_charge)と、が同値となる場合があり、この場合、事前加熱によってバッテリ温度が損益分岐昇温量T
beを超えたとしても、エネルギー収支が0となる。つまり、事前加熱を行ってもエネルギー収支はマイナスにならないものの、プラスにもならないことを示している。
【0040】
[加熱時間算出部826の機能]
加熱時間算出部826は、損益分岐昇温量Tbeに対する加熱時間theatを算出する。つまり、基準温度Tbaseから損益分岐昇温量Tbeだけバッテリ温度を昇温させるために必要な加熱時間theatを算出する。
具体的には、加熱時間算出部826は、昇温に必要な加熱時間theatを、損益分岐昇温量Tbe、無変化期間の所要時間t_delay、ヒータ出力に応じた単位温度変化あたりの所要時間t_unitを用いて下記式(4)により算出する。
[数4]
theat=Tbe・t_unit+t_delay …(4)
【0041】
図6に示すように、各ヒータ出力に対して、無変化期間の所要時間をt
_delay、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t
_unitは、消費電力加熱時間算出用マップデータに記憶されている。したがって、加熱時間算出部826は、消費電力加熱時間算出用マップデータと、上記式(4)と、損益分岐算出部825により算出される損益分岐昇温量T
beにより、加熱時間t
heatを算出する。
【0042】
[加熱制御部827の機能]
加熱制御部827は、充電増加量Y
_chargeが消費電力量Y
_heatを超える場合にバッテリ10の事前加熱を実施し、充電増加量Y
_chargeが消費電力量Y
_heat以下の場合にバッテリ10の事前加熱を実施しないように、バッテリ調温回路40及び暖気部(例えばHVAC30、車両駆動装置20を用いたd軸放電、バッテリ用ヒータ等)を制御する。つまり、加熱制御部827は、加熱時間算出部826により算出される、損益分岐昇温量T
beに達するまでの加熱時間t
heatが、経路情報に含まれる充電スポットまでの移動時間t
reach以下である場合に、バッテリ10の事前加熱を開始する。一方、加熱制御部827は、損益分岐昇温量に達するまでの加熱時間t
heatが、経路情報に含まれる充電スポットまでの移動時間t
reachを超える場合は、バッテリ10の事前加熱を行わない。また、本実施形態では、
図9のパターンのように、損益分岐昇温量T
beを超えてもエネルギー収支が0となる場合も事前加熱を行わない。
【0043】
[電動車両1におけるバッテリ暖気制御方法]
次に、上述したようなバッテリ暖気制御装置を搭載する電動車両1におけるバッテリ暖気制御方法について説明する。
図10は、本実施形態のバッテリ暖気制御方法に係るフローチャートである。
本実施形態の電動車両1では、コントローラ80は、まず、経路充電のフラグが「有」(例えば1)に設定されているか否かを判定する(ステップS1)。
ステップS1においてNOと判定される場合、つまり、経路充電が設定されていない場合は処理を終了する。
ステップS1においてYESと判定された場合、コントローラ80は、ナビゲーション装置60で目的地または経由地として、充電スポットが設定されているかを判定する(ステップS2)。
ステップS2でNOと判定される場合、処理を終了する。或いは、コントローラ80は、ナビゲーション装置60に充電スポットを目的地または経由地に設定する旨を案内し、ユーザに充電スポットへの目的地設定を促してもよく、この場合、ステップS2に戻る。
【0044】
ステップS2でYESと判定される場合、スポット情報取得部821は、ナビゲーション装置60から送信される経路情報及び施設情報を取得する(ステップS3:スポット情報取得ステップ)。
ステップS3で取得される経路情報には、充電スポットまでの移動に係る移動時間treachが含まれる。施設情報には、充電スポットの充電器の充電出力量、ポート数に係るポート情報、及び、充電スポットに到着時点でのポートの使用予測情報が含まれる。
【0045】
この後、充電増加量算出部824は、得られた充電スポットの施設情報のポート数情報から、シングルポートであるか否かを判定する(ステップS4)。
ステップS4でNOと判定される場合、つまり、充電器がマルチポートである場合、充電増加量算出部824は、使用予測情報から他車両の使用予定ポートを推定する(ステップS5)。例えば、電動車両1が充電スポットに到着時点で充電スポットの混雑度が高い場合、使用予定ポートが埋まっており、1ポートのみ使用可能と判断できる。混雑度が低い場合は、複数ポートに充電出力量が分割されずに使用可能と判断できる。
【0046】
ステップS4でYESと判定される場合、及びステップS5の後、充電増加量算出部824は、充電スポットで供給可能な充電出力量を推算する(ステップS6)。
例えば、充電増加量算出部824は、ステップS4でYESと判定される場合(シングルポートである場合)、充電器で供給される充電出力量の全部が利用できるので、(使用可能な充電出力量)=(充電器の充電出力量)とする。
また、ステップS4でNOと判定される場合(マルチポートと判定される場合)、ステップS5で推測される使用可能ポート数に基づいて、(使用可能な充電出力量)=(充電器の充電出力量)/(自車を含む使用可能なポート数)として算出する。
【0047】
次に、温度予測部822は、自車が充電スポットに到着した時点でのバッテリ温度を予測して基準温度Tbaseとする(ステップS7:温度予測ステップ)。つまり、温度予測部822は、事前加熱をしない場合の充電スポットに到着時のバッテリ温度を基準温度Tbaseとして予測する。
なお、本実施形態では、ステップS7で、温度予測部822が、事前加熱をしない場合の充電スポット到着時のバッテリ温度を予測するが、事前加熱をしない場合のバッテリ温度は、バッテリ10の調温を行う場合に比べて十分に小さい。したがって、現在のバッテリ温度を基準温度Tbaseとして設定してもよい。
【0048】
次に、充電増加量算出部824が、基準温度T
baseにおける充電増加量の変化を算出する(ステップS8:充電増加量算出ステップ)。
図11は、ステップS8の充電増加量算出ステップを示すフローチャートである。
ステップS8では、充電増加量算出部824は、ステップS7で予測された基準温度T
baseに対応する充電増加量の傾きG
_chargeを算出する(ステップS21)。
例えば、充電増加量算出部824は、バッテリ10の事前加熱に用いる暖気部のヒータ出力を検出し、充電スポットに到着時のSOCを予測する。そして、充電算出用マップデータから、予測したSOCと、ステップS5で施設情報に基づいて算出される充電出力量と、基準温度T
baseと、に対応する充電増加量の傾きG
_chargeを読み出す。
なお、充電スポットのSOCは、例えば、通常の走行時におけるSOCの単位時間あたりの低下量を予め記憶部81に記憶しておき、経路情報に含まれる移動時間t
reachに基づいて、充電スポットに到着時のSOC減少量を算出することができる。そして、現在のSOCから算出したSOCを減じることで、充電スポットに到着時のSOCを推算することができる。
また、本実施形態では、充電増加量算出部824が充電算出用マップデータを用いて充電増加量の傾きG
_chargeを得る例を示すが、これに限定されず、充電増加量算出部824が、充電スポットの充電出力量、充電スポットに到着時のSOC、基準温度T
base等をパラメータとした所定の関数式を用いて、充電増加量の傾きG
_chargeを算出してもよい。
【0049】
そして、充電増加量算出部824は、基準温度Tbaseを基準として事前加熱による昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する(ステップS22)。
充電増加量算出部824は、昇温量をTとして、下記式(5)により充電増加量Y_chargeを導出する。
[数5]
Y_charge=G_charge・T …(5)
【0050】
図10に戻り、消費電力算出部823が、事前加熱を行った場合の消費電力を算出する(ステップS9:消費電力算出ステップ)。なお、ステップS8とステップS9の順番は入れ替わってもよい。
図12は、消費電力算出ステップを示すフローチャートである。
ステップS9において、消費電力算出部823は、バッテリ10に用いる暖気部のヒータ出力に対応する単位温度変化あたりの消費電力量G
_heatを算出する(ステップS31)。
例えば、暖気部のヒータ出力として、予めデフォルトのヒータ出力を設定しておいてもよい。また、上述のように、HVAC30や、車両駆動装置20におけるd軸放電等の暖気部の種類を選択できる場合も、予めデフォルトの暖気部とデフォルトのヒータ出力を設定しておけばよい。これらのデフォルトの暖気部やヒータ出力としては、特に限定されず、例えば、消費電力量が最も小さい暖気部やヒータ出力を設定できる。
そして、消費電力算出部823は、消費電力加熱時間算出用マップデータからヒータ出力に対応する事前加熱による単位温度変化あたりの消費電力量G
_heatを読み出す。また、上述したように、外気温に応じて消費電力加熱時間算出用マップデータを切り替えるようにしてもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、消費電力算出部823が消費電力加熱時間算出用マップデータを用いて消費電力量G_heatを得る例を示すが、これに限定されず、消費電力算出部823が、ヒータ出力、及び外気温等をパラメータとした所定の関数式を用いて、事前加熱による単位温度変化あたりの消費電力量G_heatを算出してもよい。
【0052】
次に、消費電力算出部823は、ヒータ出力に対応する無変化期間の消費電力量E_delayを算出する(ステップS32)。
ステップS32では、ステップS31と同様、消費電力算出部823は、消費電力加熱時間算出用マップデータからヒータ出力に対応する無変化期間の消費電力量E_delayを読み出す。
なお、ステップS32においても、消費電力算出部823が、ヒータ出力、及び外気温等をパラメータとした所定の関数式を用いて、無変化期間における消費電力量E_delayを算出してもよい。
【0053】
そして、消費電力算出部823は、事前加熱による昇温量Tに対する消費電力量Y_heatを上述した式(3)により算出する(ステップS33)。
【0054】
図10に戻り、ステップS8及びステップS9の後、損益分岐算出部825は、損益分岐昇温量T
beを算出する(ステップS10:損益分岐算出ステップ)。
つまり、消費電力算出部823は、ステップS22で求めた充電増加量Y
_chargeと、ステップS33で求めた消費電力量Y
_heatとが等しくなる昇温量Tを損益分岐昇温量T
beとして算出する。
【0055】
次に、加熱時間算出部826は、消費電力加熱時間算出用マップデータから無変化期間の所要時間t_delay、ヒータ出力に応じた単位温度変化あたりの所要時間t_unitを読み出し、上記式(4)を用いて加熱時間theatを算出する(ステップS11:加熱時間算出ステップ)。
【0056】
この後、加熱制御部827は、ステップS3で取得した経路情報の移動時間treachが、ステップS11で求めた加熱時間theatより大きいか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12において、YESと判定される場合、損益分岐昇温量Tbe以降の温度で、エネルギー収支がプラスとなるか否かを判定する(ステップS13)。
ステップS12及びステップS13の双方でプラスとなる場合、加熱制御部827は、バッテリ10の加熱を開始する(ステップS14)。
一方、ステップS12またはステップS13のいずれかでNOと判定される場合、加熱制御部827は、バッテリ10の事前加熱は実施せず、処理を終了させる。この場合、事前加熱なしで充電スポットに移動してバッテリ10が充電されることになる。ステップS12からステップS14は、本開示の加熱制御ステップに相当する。
【0057】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の電動車両1は、外部電力の供給により充電可能なバッテリ10と、バッテリ10を加熱する暖気部(例えばHVAC30、車両駆動装置(d軸放電)、PTCヒータ等に構成されたバッテリ用ヒータ等)とを備える。そして、電動車両1のコントローラ80は、バッテリ暖気制御装置として機能し、コントローラ80のプロセッサ82は、記憶部81に記憶されたプログラムを適宜読み込み実行することで、スポット情報取得部821、充電増加量算出部824、消費電力算出部823、及び加熱制御部827等として機能する。スポット情報取得部821は、バッテリ10の充電を行う充電スポットの経路情報(移動時間treach)を取得するスポット情報取得ステップ(ステップS3)を実施する。充電増加量算出部824は、暖気部による事前加熱を実施せずに充電スポットに到着した場合に対して、暖気部による事前加熱を実施して充電スポットに到着した場合の充電量の変化を示す充電増加量Y_chargeを算出する充電増加量算出ステップ(ステップS8)を実施する。消費電力算出部823は、暖気部により事前加熱を実施した場合の消費電力量Y_heatを算出する消費電力算出ステップ(ステップS9)を実施する。そして、加熱制御部827は、充電増加量Y_chargeが、消費電力量Y_heat以下である場合にバッテリの暖気を実施せず、充電増加量Y_chargeが、消費電力量Y_heatよりも大きいときに、バッテリ10の事前加熱を実施する加熱制御ステップ(ステップS12~ステップS14)を実施する。
【0058】
これにより、充電増加量Y_chargeが、消費電力量Y_heatよりも大きい場合、つまり、エネルギー収支がプラスになると予想される場合にバッテリ10の事前加熱が実施され、充電増加量Y_chargeが、消費電力量Y_heat以下の場合、つまり、エネルギー収支がマイナスになると予想される場合にはバッテリ10の事前加熱を実施しない。このように、エネルギー収支がプラスとなる場合のみバッテリの事前加熱を行うことで、電費の改善を図ることができる。
【0059】
本実施形態のコントローラ80は、温度予測部822として機能する。この温度予測部822は、充電スポットの経路情報に基づいて、電動車両1が充電スポットに到着した時点でのバッテリ10の温度を予測する温度予測ステップ(ステップS7)を実施し、当該事前加熱を行わない場合のバッテリ10の温度を基準温度Tbaseとして予測する。そして、ステップS8の充電増加量算出ステップにおいて、充電増加量算出部824は、事前加熱をした場合の基準温度Tbaseからの昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する。
このように、充電スポットに到着した時点でのバッテリ温度を基準とすることで、充電スポットに到着した時点を基準とした充電増加量Y_chargeを算出することができる。つまり、充電スポットに未到着時点でのバッテリ温度を基準とする場合に比べて、より正確にエネルギー収支の判定を行うことができ、電費の向上を図ることができる。
【0060】
本実施形態では、ステップS8の充電増加量算出ステップにおいて、充電増加量算出部824は、充電開始時のバッテリ10の温度に対する充電増加量の傾きG_chargeを記録した充電算出用マップデータを用いて、事前加熱による昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する。
本実施形態では、バッテリ温度区分に対してそれぞれ充電増加量の傾きG_charge(単位温度あたりの充電量増加量)を充電算出用マップデータに記録しておくことで、基準温度Tbaseに対する充電増加量の傾きG_chargeを容易に取得でき、当該充電増加量の傾きG_chargeを用いて、式(5)に示すように、基準温度Tbaseから事前加熱によって昇温した場合の充電増加量Y_chargeを算出することができる。
【0061】
本実施形態では、バッテリの充電状態(SOC)毎の充電算出用マップデータを用意する。そして、ステップS8の充電増加量算出ステップにおいて、充電増加量算出部824は、バッテリの充電状態(SOC)を取得し、当該SOCに対応する充電算出用マップデータを用いて、事前加熱による昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する。
このように、SOCに対応した充電算出用マップデータを用意しておくことで、充電スポットに到着時点でのSOCと、基準温度Tbaseとに対応した充電増加量の傾きG_chargeを得ることができ、SOCの違いを考慮したより精度の高い充電増加量Y_chargeを算出することができる。
【0062】
本実施形態では、ステップS3のスポット情報取得ステップにおいて、スポット情報取得部821は、施設情報として充電スポットで供給可能な充電出力量をさらに取得する。充電増加量算出部824は、ステップS5で、施設情報に基づいた充電器の充電出力量を算出する。また、充電スポットでの供給される充電出力量毎の充電算出用マップデータを用意する。そして、ステップS8の充電増加量算出ステップにおいて、充電増加量算出部824は、ステップS5で算出した充電出力量に対応する充電算出用マップデータを用いて、事前加熱による昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する。
このように、充電スポットの充電出力量に対応した充電算出用マップデータを用意しておくことで、充電スポットで供給可能な充電出力量と、基準温度Tbaseとに対応した充電増加量の傾きG_chargeを容易に得ることができ、充電出力量の違いを考慮したより精度の高い充電増加量Y_chargeを算出することができる。
【0063】
本実施形態では、ステップS3のスポット情報取得ステップにおいて、スポット情報取得部821は、施設情報として充電スポットにおける充電器のポート数に係るポート情報をさらに取得する。充電増加量算出部824は、ステップS5で、ポート情報に基づいて自車が使用可能な充電出力量を予測し、予測した充電出力量に対応する充電算出用マップデータを用いて事前加熱による昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する。
これにより、本実施形態では、充電スポットの充電器がシングルポートである場合や、マルチポートである場合に対応して、使用可能な充電出力量を補正でき、補正した充電出力量と、基準温度Tbaseとに対応した充電増加量の傾きG_chargeを得ることができる。このため、充電出力量の違いを考慮したより精度の高い充電増加量Y_chargeを算出することができる。
【0064】
さらに、ステップS3のスポット情報取得ステップにおいて、スポット情報取得部821は、他車による充電器の使用を予測する使用予測情報を取得する。そして、充電増加量算出部824は、ステップS5で、ポート情報及び使用予測情報に基づいて、自車が使用可能な充電出力量を予測する。
これにより、充電スポットにおける他車の使用状況に応じたより詳細な充電出力量を求めることができる。
【0065】
本実施形態では、充電増加量算出部824は、ステップS5で、算出した充電出力量が、バッテリ10の電析限界の電流密度または充電電圧より大きい場合、電析限界の電流密度または充電電圧未満の充電出力量に補正して使用可能な充電増加量を算出する。
これにより、電動車両1のバッテリ10の仕様に応じた充電出力量に補正することができ、バッテリ10の劣化を抑制した充電出力量に対応した充電増加量Y_chargeを算出することができる。
【0066】
本実施形態では、充電増加量算出部824は、ステップS8の充電増加量算出ステップにおいて、バッテリ10の充電開始時の温度を変化させた場合の、バッテリ10の所定時間内の充電量の変化を充電増加量の傾きG_chargeとして、基準温度Tbaseに対する充電増加量の傾きG_chargeを用いて、基準温度Tbaseからの昇温量に対する充電増加量Y_chargeを算出する。
バッテリ温度区分によってバッテリ10を充電した場合の所定時間内における充電量は異なるが、本実施形態では、基準温度Tbaseに対する充電増加量の傾きG_chargeを用いることで、基準温度Tbaseからの昇温量に対応した充電増加量Y_chargeを算出することができる。
【0067】
本実施形態では、消費電力算出部823は、ステップS9の消費電力算出ステップにおいて、バッテリ10の事前加熱の開始からバッテリ10の温度が上昇しない間(無変化期間)の消費電力量E_delayと、バッテリ10の温度が上昇し始めた後(昇温期間)の単位温度変化あたりの消費電力量G_heatとを用いて、基準温度Tbaseからの事前加熱による昇温量に対する消費電力量Y_heatを算出する。
バッテリ10を事前加熱する場合、バッテリ温度が上昇しない無変化期間と、バッテリ温度が上昇する昇温期間とがあるが、本実施形態では、無変化期間と昇温期間とのそれぞれの消費電力量に基づいて、事前加熱による昇温量に対する消費電力を算出する。また、昇温期間の消費電力量として、単位温度変化あたりの消費電力量G_heatを用いることで、昇温量に対してどのように消費電力量が変化するかが分かり、昇温期間での消費電力量も正確に算出できる。これにより、例えば、無変化期間の消費電力を参照しない場合や、ヒータ出力のみによって昇温期間の消費電力を算出する場合に比べて正確な消費電力量Y_heatを算出できる。
【0068】
本実施形態では、ステップS9の消費電力算出ステップにおいて、消費電力算出部823は、暖気部のヒータ出力を検出し、複数のヒータ出力に対応した単位温度変化あたりの消費電力量を示す消費電力加熱時間算出用マップデータを用いて、検出したヒータ出力に対応する単位温度変化あたりの消費電力量G_heatを取得して消費電力量Y_heatを算出する。
ヒータ出力によって、基準温度Tbaseから事前加熱で所定の昇温量まで加熱した場合の消費電力量Y_heatは変化する。これに対して、本実施形態では、ヒータ出力に応じた単位温度変化あたりの消費電力量G_heatを消費電力加熱時間算出用マップデータから取得して、消費電力量Y_heatを算出するので、ヒータ出力に対応した正確な消費電力量Y_heatが得られる。
【0069】
本実施形態では、消費電力加熱時間算出用マップデータは、ヒータ出力に対応した無変化期間の消費電力量E_delayを含み、ステップS9の消費電力算出ステップにおいて、消費電力算出部823は、消費電力加熱時間算出用マップデータを用いて、検出したヒータ出力に対応する無変化期間の消費電力量E_delayを取得して消費電力量Y_heatを算出する。
無変化期間で消費される消費電力量E_delayもヒータ出力によって変化する。本実施形態では、ヒータ出力に応じた無変化期間の消費電力量E_delayを消費電力加熱時間算出用マップデータから取得して、消費電力量Y_heatを算出するので、ヒータ出力に対応した正確な消費電力量Y_heatが得られる。
【0070】
本実施形態では、コントローラ80は損益分岐算出部825としても機能し、損益分岐算出部825は、ステップS10の損益分岐算出ステップにおいて、充電増加量Y_chargeと消費電力量Y_heatとに基づいて損益分岐昇温量Tbeを算出する。
これにより、事前加熱によりエネルギー収支がマイナスからプラスに転換する損益分岐昇温量Tbeを把握することができる。
【0071】
本実施形態では、コントローラ80は加熱時間算出部826としても機能し、加熱時間算出部826は、ステップS11の加熱時間算出ステップにおいて、バッテリ10を損益分岐昇温量Tbeだけ昇温させるための加熱時間theatを算出する。
このように、基準温度Tbaseから損益分岐昇温量Tbeまで昇温するための加熱時間theatを算出することで、エネルギー収支がマイナスからプラスに転換させるために必要な時間、つまり、電費を向上させるために必要な事前加熱の時間を把握できる。
【0072】
本実施形態では、加熱時間算出部826は、ステップS11の加熱時間算出ステップにおいて、無変化期間の所要時間t_delayと、昇温期間の単位温度変化あたりの所要時間t_unitとに基づいて加熱時間theatを算出する。
上述したようにバッテリ10を事前加熱する場合、無変化期間と昇温期間とがあり、これら無変化期間の所要時間t_delayと、昇温期間の単位温度変化あたりの所要時間t_unitとを用いることで、加熱時間theatの正確な時間を算出できる。
【0073】
本実施形態では、消費電力加熱時間算出用マップデータは、第三マップデータとして機能し、複数のヒータ出力に対応した、無変化期間の所要時間t_delayと、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t_unitとを記録する。そして、加熱時間算出部826は、ステップS11の加熱時間算出ステップにおいて、消費電力加熱時間算出用マップデータを用いて、暖気部のヒータ出力に対応した無変化期間の所要時間t_delayと、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t_unitとを読み出して、加熱時間theatを算出する。
これにより、消費電力加熱時間算出用マップデータから容易にヒータ出力に対応する時間t_delay,t_unitを取得でき、加熱時間theatを算出できる。
【0074】
本実施形態では、ステップS12からステップS14の加熱制御ステップにおいて、加熱制御部827は、経路情報に基づく充電スポットまでの移動時間treachが加熱時間theatよりも大きく、かつ、充電増加量Y_chargeが消費電力量Y_heatよりも大きいときに、バッテリ10の事前加熱を開始する。
これにより、充電スポットまでの移動時間treachに余裕があり、充電時の充電増加量Y_chargeが事前加熱の消費電力量Y_heatを上回ってエネルギー収支がプラスとなる場合にのみバッテリ10の事前加熱を開始することができる。エネルギー収支がマイナスとなる場合には、バッテリ10の加熱を行わないことで、無駄な加熱によるエネルギー消費をなくすことができる。
【0075】
また、本実施形態では、暖気部として、電動車両1を駆動させる駆動モータ22を備えた車両駆動装置20を含み、駆動モータ22に磁束を発生させるためのd軸電流を流すことで発熱した熱をバッテリ10に伝熱させてもよい(d軸放電)。この場合、加熱制御ステップにおいて、加熱制御部827は、ステップS12及びステップS13でYESと判定される場合に、ステップS14で駆動モータ22に磁束を発生させるためのd軸電流を流すことで発熱した熱を用い、バッテリ10の事前加熱を実施する。
このようなd軸放電を用いたバッテリ10の加熱では、他のヒータ(HVAC30や、PCTヒータ等で構成されるバッテリ用ヒータ)を用いる必要がなく、バッテリ10の加熱を行うことができる。
【0076】
[第二実施形態]
上記第一実施形態では、複数のヒータ出力に対応した消費電力加熱時間算出用マップデータを用いるが、デフォルトで設定されたヒータ出力に対応する、単位温度あたりの消費電力量G_heat、無変化期間の消費電力量E_delay、所要時間t_unit、及び無変化期間の所要時間t_delayを用いて、バッテリ暖気制御方法を実施する例を示した。
これに対して、ステップS11により算出される加熱時間theatと、経路情報に含まれる移動時間treachとに基づいて、ヒータ出力や使用する暖気部を変更するように構成されてもよい。
なお、以降の説明において、既に説明した構成やステップについては同符号を付し、その説明を省略、または簡略化する。
【0077】
本実施形態の記憶部81は、第一実施形態と同様、充電算出用マップデータ(第一マップデータ)、及び消費電力加熱時間算出用マップデータ(第二マップデータ、第三マップデータ)を記憶する。消費電力加熱時間算出用マップデータは、暖気部の種類毎(例えば、HVAC30、車両駆動装置20を用いたd軸放電、バッテリ用ヒータ等)、ヒータ出力毎の、単位温度変化あたりの消費電力量G_heat、無変化期間の消費電力量E_delay、昇温期間における単位温度変化あたりの所要時間t_unit、及び無変化期間の所要時間t_delayを記録する。
【0078】
また、本実施形態では、プロセッサ82は、第一実施形態と同様、スポット情報取得部821、温度予測部822、消費電力算出部823、充電増加量算出部824、損益分岐算出部825、加熱時間算出部826、及び加熱制御部827として機能する。
ここで、本実施形態の加熱制御部827は、充電スポットまでの移動時間treachが加熱時間theatよりも大きくなるように、暖気部の種類やそのヒータ出力を変更して、バッテリ10を加熱する。
例えば、加熱制御部827は、充電スポットまでの移動時間treachが加熱時間theatよりも大きくなり、かつ、プラスのエネルギー収支が最大となる暖気部の種類、及びヒータ出力を選択して、バッテリ10の加熱を開始する。
【0079】
次に、第二実施形態のバッテリ暖気制御方法について説明する。
図13は、第二実施形態のバッテリ暖気制御方法を示すフローチャートである。
本実施形態は、第一実施形態のバッテリ暖気制御方法と略同様の手法にて、バッテリ暖気制御を実施する。すなわち、コントローラ80は、ステップS1からステップS8の処理を実施し、ナビゲーション装置60から経路情報及び施設情報を取得し、充電出力量を算出し、及び基準温度T
baseを算出し、充電増加量Y
_chargeを算出する。
【0080】
そして、本実施形態では、ステップS9において、消費電力算出部823は、暖気部毎、及びヒータ出力毎の消費電力量Y_heatをそれぞれ算出する。つまり、第一実施形態では、デフォルトの、或いは、ユーザにより設定されたヒータ出力に対する消費電力量Y_heatを算出したが、本実施形態では、切り替え可能な暖気部の種類や、出力可能なヒータ出力のそれぞれに対応して消費電力量Y_heatを算出する。
【0081】
また、ステップS10において、損益分岐算出部825は、ステップS9で算出された各消費電力量Y_heatに対して、それぞれ損益分岐昇温量Tbeを算出する。同様に、ステップS11において、加熱時間算出部826は、ステップS10で算出された各損益分岐昇温量Tbeに対して、それぞれ加熱時間theatを算出する。
【0082】
この後、本実施形態では、ステップS12の代わりに、加熱制御部827は、移動時間treachよりも加熱時間theatが大きくなる暖気部の種類とヒータ出力との組み合わせがあるか否かを判定し(ステップS12A)、かつ、その組み合わせを抽出する。
ステップS12AでYESと判定される場合、抽出された暖気部の種類と、ヒータ出力の組み合わせから、エネルギー収支がプラス、かつ最大となる暖気部の種類及びそのヒータ出力を選択する(ステップS13A)。このステップS12A及びステップS13Aは、本開示のヒータ出力変更ステップ及びヒータ切替ステップに相当する。
この後、ステップS14において、ステップS13Aで選択された暖気部と、選択されたヒータ出力とを用いて、バッテリ10の事前加熱を開始する。
【0083】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、暖気部(例えば、HVAC30、車両駆動装置20を用いたd軸放電、PTCヒータ等のバッテリ用ヒータ)のヒータ出力が変更可能であり、加熱制御部827は、移動時間treachが加熱時間theatよりも大きくなるようにヒータ出力を変更する。つまり、複数のヒータ出力のうち、移動時間treachよりも加熱時間theatが大きくなるヒータ出力を抽出し、エネルギー収支が最大となるヒータ出力を選択して、バッテリ10を加熱する。
これにより、最もエネルギー収支が大きくなるようにバッテリ10の事前加熱が実施され、電費のさらなる改善を図れる。
【0084】
これに加え、本実施形態では、暖気部の複数の種類(例えば、HVAC30、車両駆動装置20を用いたd軸放電、PTCヒータ等のバッテリ用ヒータ)を備え、加熱制御部827は、移動時間treachが加熱時間theatよりも大きくなるように暖気部を変更する。つまり、複数種の暖気部と各暖気部で出力可能なヒータ出力のうち、移動時間treachよりも加熱時間theatが大きくなる暖気部とヒータ出力の組み合わせを抽出し、エネルギー収支が最大となる暖気部とヒータ出力との組み合わせを選択して、バッテリ10を加熱する。
これにより、暖気部とヒータ出力との組み合わせから、よりエネルギー収支が最大となる組み合わせを選択でき、電費のさらなる改善を図れる。
【0085】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で、以下に示される変形をも含むものである。
【0086】
[変形例1]
第一実施形態において、加熱制御部827は、ステップS12でYESと判定され(移動時間t
reachが加熱時間t
heatよりも大きく)、かつ、ステップS13でYESと判定される(損益分岐昇温量T
be以上でエネルギー収支がプラスになる)場合に、バッテリ10の加熱を開始した。これに対して、ステップS12がYESの条件のみ、つまり、移動時間t
reachが加熱時間t
heatと判定されることで、加熱制御部827がバッテリ10の加熱を開始するようにしてもよい。
この場合、
図9の例のように、充電増加量Y
_chargeと、消費電力量Y
_heatとが同一となる場合に、エネルギー収支としてプラスにはならないが、エネルギー収支がマイナスとなることもない。また、バッテリ10の温度が上がることで、
図2に示すように、単位時間あたりで充電可能な充電量も増大するとの効果を奏することができる。
【0087】
[変形例2]
上記各実施形態において、本開示の第二マップデータ及び第三マップデータとして機能する消費電力加熱時間算出用マップデータを用いたが、消費電力量Y_heatを算出するための第二マップデータと、加熱時間theatを算出するための第三マップデータとをそれぞれ別データとして記憶部81に記憶してもよい。
また、消費電力量Y_heatの算出では、消費電力加熱時間算出用マップデータを用い、加熱時間theatの算出では、マップデータを用いずに所定の関数式を用いて算出してもよい。或いは、消費電力量Y_heatの算出では、マップデータを用いずに所定の関数式を用い、加熱時間theatの算出では、消費電力加熱時間算出用マップデータを用いて演算するようにしてもよい。
【0088】
[変形例3]
上記各実施形態において、ナビゲーション装置60(または携帯端末)から移動時間treachを含む経路情報を取得する例を示したが、これに限定されない。例えば、ナビゲーション装置60から、経路情報と、移動時間treachとをそれぞれ別データとして取得してもよい。また、コントローラ80は、現在位置から充電スポットまでの経路に関する経路情報のみを取得し、コントローラ80が、取得した経路情報から移動時間treachを算出してもよい。
【0089】
[変形例4]
第一実施形態では、経路充電のフラグが経路充電有に設定され、かつ、目的地や経由地として充電スポットが設定されていることを前提として、バッテリ10の暖気制御に係る判断を実施する例であるが、これに限定されない。
例えば、経路充電フラグがオフの場合、または、経由地や目的地として充電スポットが指定されていない場合であっても、現在のSOCから充電スポットに立ち寄ることを予測してバッテリ10の暖気制御に係る判断を実施してもよい。
すなわち、現在のSOCが予め設定された所定値未満である場合に、急速受電を実施する必要がある。この場合、スポット情報取得部821が、現在位置から最寄りの充電スポットをナビゲーション装置60に検索させて経路情報及び施設情報を取得してもよい。或いは、現在のSOCが予め設定された所定値未満であり、既に設定されている経路の目的地や経由地に充電スポットが含まれていない場合に、スポット情報取得部821は、経路上、又は、経路に近い充電スポットをナビゲーション装置60に検索させて経路情報及び施設情報を取得してもよい。コントローラ80は、上記のようにして得られた経路情報及び施設情報に基づいて、上記実施形態と同様に、バッテリ10の暖気制御を行う。
【0090】
[変形例5]
第一実施形態では、損益分岐昇温量Tbeに対する加熱時間theatを算出して、移動時間treachが加熱時間theatより大きい場合に、バッテリ10を加熱するとしたが、これに限定されない。
例えば、損益分岐算出部825は、充電増加量Y_chargeが、消費電力量Y_heatよりも所定値以上大きくなる昇温量Tを、判定用昇温量として求め、加熱時間算出部826は、判定用昇温量に対応した判定用加熱時間を算出する。そして、加熱制御部827は、移動時間treachが判定用加熱時間より大きい場合に、バッテリ10を加熱する。
或いは、加熱制御部827は、移動時間treachが、損益分岐昇温量Tbeに対応する加熱時間theatに対して、所定時間以上長い場合にバッテリ10を加熱してもよい。
これらの場合、エネルギー収支が所定値以上プラスとなる場合にのみ、バッテリ10の事前加熱が実施されることになり、電費の更なる向上を図れる。
【0091】
[変形例6]
上記実施形態では、消費電力算出部823は、無変化期間の消費電力量E_delayと、昇温期間の単位温度変化あたりの消費電力量G_heatとを用いて、昇温量Tにおける消費電力量Y_heatを算出した。これに対し、無変化期間の消費電力量E_delayを考慮せず、単位温度変化あたりの消費電力量G_heatのみで昇温量Tにおける消費電力量Y_heatを算出してもよい。
【0092】
加熱時間算出部826においても同様であり、無変化期間の所要時間t_delayを考慮せず、単位温度変化あたりの所要時間t_unitのみで損益分岐昇温量Tbeに対する加熱時間theatを算出してもよい。
【0093】
[変形例7]
上記第一実施形態において、暖気部としてHVAC30、車両駆動装置20、バッテリ用ヒータを一例として示したが、その他の加熱手段を用いてもよい。
また、バッテリ10を加熱するためのヒータとして、いずれか1つのみを用いてもよい。例えば、車両駆動装置20の駆動モータを用いたd軸放電を使用してバッテリ10を加熱する場合、HVAC30の熱をバッテリ10に伝熱させるバッテリ調温回路40や、バッテリ用ヒータを不要にできる。
【符号の説明】
【0094】
1…電動車両、10…バッテリ、30…HVAC(暖気部)、40…バッテリ調温回路、50…バッテリコントローラ、60…ナビゲーション装置、71…バッテリサーモセンサ、72…位置検出センサ、80…コントローラ、81…記憶部、82…プロセッサ、821…スポット情報取得部、822…温度予測部、823…消費電力算出部、824…充電増加量算出部、825…損益分岐算出部、826…加熱時間算出部、827…加熱制御部。