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  • 特開-粉末除去装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001143
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】粉末除去装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/88 20210101AFI20241225BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241225BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20241225BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20241225BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20241225BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241225BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20241225BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241225BHJP
   B22F 10/73 20210101ALI20241225BHJP
【FI】
B22F12/88
B29C64/153
B29C64/165
B29C64/35
B29C64/371
B33Y30/00
B33Y40/20
B22F10/28
B22F10/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100575
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】梶田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】所 美鈴
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL03
4F213WL55
4F213WW02
4F213WW38
4K018AA06
4K018AA15
4K018AA33
4K018BA03
4K018BA17
4K018BA20
4K018BB04
(57)【要約】
【課題】積層造形物に付着した粉末を適切に除去できる技術を提供する。
【解決手段】粉末除去装置は、処理室と、処理室に配置され、積層造形物を固定するホルダと、ホルダに固定された積層造形物に振動を与える振動器と、ホルダを支持する回転軸を有し、回転軸を中心にホルダを回転させる回転ユニットと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室に配置され、積層造形物を固定するホルダと、
前記ホルダに固定された前記積層造形物に振動を与える振動器と、
前記ホルダを支持する回転軸を有し、前記回転軸を中心に前記ホルダを回転させる回転ユニットと、
を備える、粉末除去装置。
【請求項2】
前記振動器とは異なる別な振動器をさらに備え、
前記振動器及び前記別な振動器は、互いに異なる方向から前記積層造形物に振動を与える、請求項1に記載の粉末除去装置。
【請求項3】
前記処理室に配置され、前記積層造形物に気体を噴射するノズルをさらに備える、請求項1又は2に記載の粉末除去装置。
【請求項4】
前記処理室に接続された不活性ガスのガス源をさらに備え、
前記積層造形物の原料は金属粉末を含む、請求項1又は2に記載の粉末除去装置。
【請求項5】
前記処理室に接続され、前記処理室の気体に含まれる塵を捕集する集塵機をさらに備え、
前記集塵機の排気口は、前記処理室に接続される、請求項4に記載の粉末除去装置。
【請求項6】
前記処理室は、その下方に粉末を排出する排出口を有し、
前記排出口には篩が設けられる、請求項1又は2に記載の粉末除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、三次元の積層造形物を製造する付加製造方法を開示する。この方法は、三次元物体のモデルデータを二次元断面層データ(スライスデータ)に分割した後、二次元断面層データそれぞれに対応する断面部材(層)を順次造形しつつ、断面部材を順次積層することによって積層造形物を形成する。この方法は、断面部材を順次積層する工程の後に、積層造形物の実体部以外の不要部を除去し、粉末として回収する工程を含む。回収する方法は、例えば、空気などの気体を吹き付ける方法、超音波振動などの振動を付与する方法、または、これらを組み合わせた方法を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-172766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の方法は、積層造形物に付着した粉末をより効果的に除去するという観点から、改善の余地がある。本開示は、積層造形物に付着した粉末を適切に除去できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る粉末除去装置は、処理室と、処理室に配置され、積層造形物を固定するホルダと、ホルダに固定された積層造形物に振動を与える振動器と、ホルダを支持する回転軸を有し、回転軸を中心にホルダを回転させる回転ユニットとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、積層造形物に付着した粉末を適切に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る粉末除去装置が備わる造形システムの一例を模式的に示す概要図である。
図2図2は、粉末除去装置の処理室内部の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3の(A)~(C)は、造形物の一例を示す図である。
図4図4は、造形物の一連の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0009】
[造形システムの概要]
図1は、実施形態に係る粉末除去装置が備わる造形システムの一例を模式的に示す概要図である。図1に示される造形システム100は、造形物M1(積層造形物の一例)を造形し、造形後の造形物M1に付着した粉末M2を除去する設備である。造形物M1は、原料の粉末を焼結、又は、溶融及び凝固させて2次元形状の層を形成することを繰り返して得られる3次元形状の造形物である。原料は、例えば金属を含む。金属は、一例として、ステンレス、アルミシリコン、チタンなどを含む。
【0010】
造形システム100は、粉末除去装置1及び付加製造装置2を含む。付加製造装置2は、例えば3次元のCADデータに基づいて造形物M1を形成する。3次元のCADデータは、一層ごとの断面形状のデータを含む。一例として、付加製造装置2は、板部材であるプレートP上に金属を含む粉末状の原料(金属粉末の一例)の膜をブレードなどで成膜することと、膜にレーザなどを照射して2次元形状の層を形成することとを繰り返して、3次元形状の造形物M1を形成する。造形された造形物M1は、未焼結又は未溶融の原料の粉末M2が付着した状態で、付加製造装置2からプレートPとともに取り出される。
【0011】
粉末除去装置1は、付加製造装置2において造形された造形物M1に付着した粉末M2を除去する。粉末除去装置1はキャビネット3を有する。キャビネット3は、その内部に処理室Sを画成する。キャビネット3には搬入部4が接続される。搬入部4には、ローラコンベアなどの搬送装置4aが配置される。搬送装置4aは、プレートPとともに造形物M1を処理室Sへ搬送する。処理室Sにおいて造形物M1は後述するホルダ5に固定され、種々の姿勢とされた状態で振動が付与される。これにより、粉末M2が造形物M1から分離されて落下する。処理室Sの内部の詳細については後述する。造形物M1は、キャビネット3の搬出口3aから搬出され、ローラコンベアなどの搬送装置6で搬出される。キャビネット3の搬出口3aは図示しない扉によって開閉可能に構成される。
【0012】
キャビネット3の下部には、粉末M2が排出される排出口3bを有する。排出口3bにはホッパ7が接続される。ホッパ7は、落下した粉末M2を回収容器Cに供給する。回収容器Cは、不活性ガスが封入される。これにより粉末M2の酸化が防止される。回収容器Cに収容された粉末M2は、付加製造装置2において造形物M1の原料として再利用される。
【0013】
キャビネット3の排出口3bには篩8が設けられる。篩8は、排出される粉末M2を分級する。付加製造装置2においては、積層造形時に原材となる粉末より大きい粒子(スパッタ)が生成されることがある。原料となる粉末は平均10μm~50μm程度であり、100μmを超える粒子は、溶融しにくく、付加製造装置2の敷膜時にブレードと造形物最上面との間に引っ掛かり、積層造形に影響を与えるおそれがある。篩8は、再利用できないスパッタを除去する。これにより、再利用可能な大きさの粉末が回収される。篩8は、超音波などによって振動する機構を備えてもよい。
【0014】
処理室Sには集塵機9が接続される。集塵機9は、処理室S内の気体に含まれる塵を捕集する。集塵機9は、塵を除去するフィルタ9aを有する。フィルタ9aを通過した気体は排気口9bから排気される。集塵機9の動作は、処理室S内の粉塵状況に応じて実行されてもよい。例えば処理室S内に粉塵センサを設け、粉塵センサの検出値が閾値を超えた場合に集塵機9が動作するようにしてもよい。これにより、集塵機9が過度に動作することが低減される。
【0015】
処理室Sの内部は、造形物M1に付着した粉末M2が飛散するため、粉塵爆発の可能性を低下させる必要がある。このため、処理室Sには、不活性ガスのガス源10が接続される。不活性ガスは一例として窒素ガス、アルゴンガスなどである。不活性ガスは、ガス導入口11,12から処理室Sへ導入される。これにより、処理室Sは不活性ガスの雰囲気となる。ガス導入口11,12には、ニードルバルブなどの流量調整バルブが設けられてもよい。処理室Sの雰囲気が酸素濃度10%以下となった場合には、金属の粉末が飛散し、かつ、着火源が存在したとしても粉塵爆発が起こりにくい。このため、流量調整バルブなどによって、処理室Sの雰囲気は、酸素濃度10%以下に設定される。処理室Sの雰囲気は、酸素濃度5%以下に設定されてもよい。なお、酸素濃度を10%以下とすることにより、粉末M2が処理室S内で酸化して再利用できなくなることも回避される。また、処理室Sを不活性ガス雰囲気とすることにより、回収容器Cに不活性ガスを封入するための別途の封入処理が省略される。
【0016】
集塵機9の排気口9bは、配管9cによって処理室Sに接続される。このように、集塵機9は処理室S内の気体(空気又は不活性ガス)を循環させる。これにより、処理室Sの雰囲気(酸素濃度10%以下)を保つために供給される不活性ガスの量を抑えることができる。
【0017】
処理室Sには、造形物M1に気体を噴射するノズル13が配置される。ノズル13は、ガス源10に接続され、造形物M1に不活性ガスを噴射する。ノズル13の気流によって、造形物M1の表面の粉末を吹き飛ばして落下させることができる。
【0018】
粉末除去装置1は、上述した構成要素を動作させる制御部14を備える。制御部14は、制御部14は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部14は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、粉末除去装置1の動作を自動化できる。
【0019】
[粉末除去装置の詳細]
図2は、粉末除去装置の処理室内部の一例を模式的に示す斜視図である。図2に示されるように、処理室Sには、造形物M1を固定するホルダ5が配置される。ホルダ5は、搬送装置50及び固定部材51,52,53を備える。搬送装置50は、ローラコンベアであり、本体部50a及びローラ50bを備える。本体部50aは、例えば2つの板状部材を対向させた枠体であり、2つの板状部材でローラ50bの両端を回転可能に支持する。固定部材51,52,53は、搬送装置50の本体部50aに設けられる。固定部材51,52,53は、一例としてクランプである。固定部材51,52は、例えば、ローラ50bの両端を挟むように配置される。固定部材53は、ローラ50bの搬送方向に重なるように配置される。固定部材51,52,53は、ローラ50b上に配置されたプレートPを挟み込むことによってローラ50b上に配置されたプレートPを固定する。これにより、造形物M1がホルダ5に固定される。本体部50aには、固定位置を位置決めする部材が設けられてもよい。
【0020】
ホルダ5には、ホルダ5に固定された造形物M1に振動を与える第1振動器60(振動器の一例)及び第2振動器61(別な振動器の一例)が設けられる。第1振動器60及び第2振動器61は、一例として、超音波で振動する装置、ボールバイブレータ、リレーノッカー、振動モータ、又は、ピストンバイブレータである。第1振動器60及び第2振動器61は、互いに異なる方向から造形物M1に振動を与える。例えば、第1振動器60は、プレートPの側方下部を支持する本体部50aに設けられ、プレートPの側方下部に振動を与える。例えば、第2振動器61は、プレートPの上方端部を固定する固定部材53に設けられてもよい。プレートPの異なる表面から振動が与えられることによって造形物M1には任意の方向から振動が与えられるため、粉末除去の効率が向上する。
【0021】
ホルダ5は、回転ユニット30によって支持される。回転ユニット30は、回転軸31及びフレーム32を備える。フレーム32は、ホルダ5を抱えるようにホルダ5を支持する部材である。フレーム32は、ホルダ5の底部に固定される支持部と、支持部の両端からそれぞれ立設された端部を有する。回転軸31は、処理室Sの側壁に水平方向に延びるように回転可能に固定され、フレーム32の両端部を支持する。このように、ホルダ5は、回転軸31によって支持され、回転軸31の延在方向を中心として回転可能となる。回転軸31は、図示しない駆動源によって駆動する。
【0022】
[造形物の一例]
図3の(A)~(C)は、造形物の一例を示す図である。積層造形では、その特徴ある作製方法を活かして内部に空間をもつ形状を作ることによって部材の軽量化を図ることが多い。図3の(A)に示される造形物は、表面に微細な孔が形成されている。図3の(B)に示される造形物は、6方向から形成された複数の穴を有する。図3の(C)に示される造形物は、複雑な内部構造を有する。図3の(A)~(C)に示される造形物は、従来の粉末除去方法、例えば気体を吹き付ける方法では十分に粉末を除去できないおそれがある。例えば、造形物(A)は、貫通した孔形状ではない(止まり孔)ため、気体を吹き付ける方法では十分に粉末を除去することが難しい。粉末除去装置1は、造形物を任意の姿勢にした上で振動を与えることができるので、図3の(A)~(C)に示される造形物であっても適切に粉末を除去できる。
【0023】
[造形物の製造工程]
図4は、造形物の一連の製造工程を示すフローチャートである。図4に示されるように、ステップS10として、造形物M1が付加製造装置2からプレートPとともに取り出される。
【0024】
続いて、ステップS12として、造形物M1に付着している粉末M2が除去される。まず、造形物M1が粉末除去装置1にプレートPとともに搬入される。そして、処理室Sの扉が開とされ、造形物M1が処理室S内のホルダ5の位置まで搬送されると、固定部材51,52,53によってプレートPがホルダ5に固定される。そして、処理室Sの扉が閉とされ、ガス源10から不活性ガスが処理室Sに供給される。これにより、処理室Sは、酸素濃度が10%以下の不活性ガス雰囲気となる。続いて、回転ユニット30によってホルダ5の姿勢が変更されるとともに第1振動器60及び第2振動器61によって造形物M1に振動が与えられる。一例として、ホルダ5は反転姿勢となり、その状態で第1振動器60及び第2振動器61によって造形物M1に振動が与えられる。ホルダ5は複数の異なる姿勢で第1振動器60及び第2振動器61によって造形物M1に振動が与えられる。粉末M2が未だ付着している場合には、ノズル13から不活性ガスを噴射して粉末M2を除去する。このとき、分離された粉末M2は篩8を介して回収容器Cに回収される。続いて、処理室Sに大気を導入し、処理室Sの扉を開とし、固定部材51,52,53を解除して、造形物M1が粉末除去装置1からプレートPとともに取り出される。
【0025】
続いて、ステップS14として形状検査が行われる。形状検査は、造形物M1の形状が設計通りとなっているか否かを検査する工程である。例えば三次元スキャナ装置によって造形物M1の形状が検出され、設計値と比較される。
【0026】
続いて、ステップS16として造形物M1からプレートPが切断される。例えばワイヤカットによってプレートPが切断される。
【0027】
続いて、ステップS18として最終検査が行われる。例えば、プレートPの切断面の良否を含めた造形物M1の形状が検査される。一例として三次元スキャナ装置が用いられる。ステップS18が終了すると、図4に示されるフローチャートは終了する。そして、造形物M1は梱包され、出荷される。
【0028】
[実施形態のまとめ]
粉末除去装置1では、造形物M1が処理室Sに配置されたホルダ5に固定される。ホルダ5に固定された造形物M1は、回転ユニット30によって回転軸31を中心に回転する。また、ホルダ5に固定された造形物M1には、第1振動器60及び第2振動器61によって振動が与えられる。このように、造形物M1は、反転などの様々な姿勢にされ、振動が与えられる。このため、粉末除去装置1は、造形物M1を粉末M2が落ち易い姿勢にして粉末M2をふるい落とすことができる。よって、粉末除去装置1は、図3の(A)~(C)に示されるような表面又は内部に複雑な構造を持つ造形物であっても、造形物に付着した粉末を適切に除去できる。
【0029】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。例えば、上記の例示的実施形態においては、ホルダ5がプレートPを固定することによって、造形物M1とプレートPとを合わせた物体をホルダ5が固定する場合を例示したが、ホルダ5は造形物M1を直接固定してもよい。つまり、ホルダ5は、直接的または間接的に造形物M1を固定すればよい。また、粉末除去装置1は、第1振動器60及び第2振動器61の何れか一方の振動器のみを備えてもよいし、3以上の振動器を備えてもよい。
【0030】
粉末M2は金属を含んでなくてもよい。例えば、粉末M2は樹脂粉であってもよい。粉末除去装置1は、配管9cを備えていなくてもよい。この場合、集塵機9は、装置外に排気すればよい。粉末除去装置1は、一つの振動器だけ備える場合であってもよい。粉末除去装置1は、集塵機9、ガス源10、及び、ノズル13を備えなくてもよいし、キャビネット3の排出口3bが設けられてなくてもよい。粉末除去装置1の動作の一部又は全部は、制御部14によって実行されてもよいし、作業員などによって実行されてもよい。処理室Sに酸素センサが配置され、粉末除去装置1は、酸素センサの検出値に応じて動作を停止させてもよい。これにより、粉末除去装置1は、大気吸引時などの異常時に粉末除去処理を停止できるため、より安全に処理が可能になる。着火源があっても粉塵爆発を起こさない物性を有する粉末M2を用いる場合には、処理室Sに供給される気体は、不活性ガスに限定されず、コンプレッサなどによって供給される圧縮空気でもよい。回転ユニット30の回転軸31は、水平方向に延在することに限定されず、水平方向から傾いた状態で処理室Sの側壁に設けられてもよいし、垂直方向に延在するように処理室Sの底部に設けられてもよい。
【0031】
造形物M1の一連の製造工程は、図4に示されるフローチャートに限定されない。例えば、付加製造装置2から取り出す前後で刷毛又は吸引器で粉末が除去されてもよい。また、ステップS14の形状検査とステップS16のプレート切断との間に熱処理を実行してもよい。あるいは、ステップS16のプレート切断とステップS18の最終検査との間に手作業によるサポート除去、仕上げ、作業確認のための検査、などの工程が含まれてもよい。
【実施例0032】
以下、本開示の効果を確認すべく本発明者が実施した実施例及び比較例について説明される。
【0033】
[実施例1]造形物M1は、図3の(A)に示される造形物とした。粉末M2の材料はステンレスであり、粉末M2の粒径は平均10μmであった。粉末除去装置1を用いて造形物M1に付着する粉末M2を除去した。第1振動器60及び第2振動器61はボールバイブレータとした。粉末M2を除去するまでの時間は1分であった。
【0034】
[実施例2]第1振動器60及び第2振動器61は超音波振動装置とした。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は10分であった。
【0035】
[実施例3]第1振動器60及び第2振動器61はエア式のリレーノッカーとした。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は3分であった。
【0036】
[実施例4]造形物M1は、図3の(B)に示される造形物とした。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は1分であった。
【0037】
[実施例5]造形物M1は、図3の(C)に示される造形物とした。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は1分であった。
【0038】
[実施例6]粉末M2の材料はアルミシリコンであり、粉末M2の粒径は平均30μmであった。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は1分であった。
【0039】
[実施例7]粉末M2の材料はチタンであり、粉末M2の粒径は平均40μmであった。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は1分であった。
【0040】
[比較例1]粉末除去装置1を用いること無く、エアブローで造形物M1に付着する粉末M2を除去した。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は35分であった。
【0041】
[比較例2]粉末除去装置1を用いること無く、超音波洗浄機で造形物M1に付着する粉末M2を除去した。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は15分であった。
【0042】
[比較例3]造形物M1は、図3の(B)に示される造形物とした。粉末除去装置1を用いること無く、エアブローで造形物M1に付着する粉末M2を除去した。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は5分であった。
【0043】
[比較例4]造形物M1は、図3の(C)に示される造形物とした。粉末除去装置1を用いること無く、エアブローで造形物M1に付着する粉末M2を除去した。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は13分であった。
【0044】
[比較例5]粉末M2の材料はアルミシリコンであり、粉末M2の粒径は平均30μmであった。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は10分であった。
【0045】
[比較例6]粉末M2の材料はチタンであり、粉末M2の粒径は平均40μmであった。その他は実施例1と同一である。粉末M2を除去するまでの時間は7分であった。
【0046】
以上、図3の(A)に示される造形物においては、実施例1、実施例2、実施例3において処理時間が1分、10分、3分であったのに対して、比較例1、比較例2において処理時間が35分、15分であった。このように、図3の(A)に示される造形物において、実施例1-3の方が比較例1,2よりも短い時間で粉末M2を除去できることが確認された。なお、比較例2については合格基準値を満たす除去をすることができなかった。
【0047】
図3の(B)に示される造形物においては、実施例4において処理時間が1分であったのに対して、比較例3において処理時間が5分であった。このように、図3の(B)に示される造形物において、実施例4の方が比較例3よりも短い時間で粉末M2を除去できることが確認された。
【0048】
図3の(C)に示される造形物においては、実施例5において処理時間が1分であったのに対して、比較例4において処理時間が13分であった。このように、図3の(C)に示される造形物において、実施例5の方が比較例4よりも短い時間で粉末M2を除去できることが確認された。
【0049】
粉末M2の材料がアルミシリコンの場合、実施例6において処理時間が1分であったのに対して、比較例5において処理時間が10分であった。このように、粉末M2の材料がアルミシリコンの場合において、実施例6の方が比較例5よりも短い時間で粉末M2を除去できることが確認された。
【0050】
粉末M2の材料がチタンの場合、実施例7において処理時間が1分であったのに対して、比較例5において処理時間が10分であった。このように、粉末M2の材料がアルミシリコンの場合において、実施例6の方が比較例5よりも短い時間で粉末M2を除去できることが確認された。
【0051】
[本開示に含まれる形態]
本開示は、以下条項に記載の形態を含む。
【0052】
(条項1)
本開示に係る粉末除去装置は、処理室と、前記処理室に配置され、積層造形物を固定するホルダと、前記ホルダに固定された前記積層造形物に振動を与える振動器と、前記ホルダを支持する回転軸を有し、前記回転軸を中心に前記ホルダを回転させる回転ユニットと、を備える。この装置では、積層造形物が処理室に配置されたホルダに固定される。ホルダに固定された積層造形物は、回転ユニットによって回転軸を中心に回転する。また、ホルダに固定された積層造形物には、振動器によって振動が与えられる。このように、積層造形物は、反転などの様々な姿勢にされ、振動が与えられる。このため、この装置は、積層造形物を粉末が落ち易い姿勢にして粉末をふるい落とすことができる。よって、この装置は、内部に複雑な構造を持つ積層造形物であっても、積層造形物に付着した粉末を適切に除去できる。
【0053】
(条項2)
条項1に記載の粉末除去装置は、前記振動器とは異なる別な振動器をさらに備え、前記振動器及び前記別な振動器は、互いに異なる方向から前記積層造形物に振動を与えてもよい。この粉末除去装置は、任意の振動方向によって効果的に粉末をふるい落とすことができる。
【0054】
(条項3)
条項1又は2に記載の粉末除去装置は、前記処理室に配置され、前記積層造形物に気体を噴射するノズルをさらに備えてもよい。この粉末除去装置は、ノズルから噴射される気体によって積層造形物の表面に付着する粉末を吹き落とすことができる。
【0055】
(条項4)
条項1~3の何れか一項に記載の粉末除去装置は、前記処理室に接続された不活性ガスのガス源をさらに備え、前記積層造形物の原料は金属粉末を含んでもよい。積層造形物の原料が金属粉末を含む場合には、粉塵爆発の可能性が高い。この粉末除去装置は、処理室内を不活性ガス雰囲気とすることにより、仮に粉末が飛散した状態で静電気などの着火源が発生しても粉塵爆発の可能性を低減できる。また、この粉末除去装置は、金属粉末の酸化を抑制できるので、回収した原料を付加製造装置の原料として再利用できる。
【0056】
(条項5)
条項4に記載の粉末除去装置は、前記処理室に接続され、前記処理室の気体に含まれる塵を捕集する集塵機をさらに備え、前記集塵機の排気口は、前記処理室に接続されてもよい。この粉末除去装置は、集塵機を介した気体を循環させることで、集塵機を介した気体を排気する場合と比べて、不活性ガスの消費量を抑えることができる。
【0057】
(条項6)
条項1~5の何れか一項に記載の粉末除去装置において、前記処理室は、その下方に粉末を排出する排出口を有し、前記排出口には篩が設けられてもよい。この粉末除去装置は、積層造形中に生成する大粒の粉末を篩で除去できるので、回収した原料を付加製造装置の原料として再利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…粉末除去装置、5…ホルダ、30…回転ユニット、60…第1振動器(振動器の一例)、61…第2振動器(振動器の一例)、S…処理室。
図1
図2
図3
図4