(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114302
(43)【公開日】2025-08-05
(54)【発明の名称】コンデンサモジュールおよびコンデンサモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/228 20060101AFI20250729BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20250729BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
H01G4/228 H
H01G2/02 101E
H01G4/228 J
H01G2/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008922
(22)【出願日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】関 公太朗
(72)【発明者】
【氏名】赤上 研太
(72)【発明者】
【氏名】北村 大樹
(57)【要約】
【課題】コンデンサ素子およびバスバーとケースとの位置精度を向上させることのできるコンデンサモジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
本開示のコンデンサモジュールは、端面電極を有するコンデンサ素子と、端面電極に電気的に接続されるバスバーと、を有するコンデンサアセンブリと、コンデンサアセンブリを収容するケースと、ケースに充填される封止樹脂と、を備え、バスバーは、端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、コンデンサ接続部からコンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、基部から延びる先端部と、を含み、基部には、コンデンサアセンブリを保持する治具と係止する係止部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面電極を有するコンデンサ素子と、前記端面電極に電気的に接続されるバスバーと、を有するコンデンサアセンブリと、
前記コンデンサアセンブリを収容するケースと、
前記ケースに充填される封止樹脂と、
を備え、
前記バスバーは、前記端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、前記コンデンサ接続部から前記コンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、前記基部から延びる先端部と、を含み、
前記基部には、前記コンデンサアセンブリを保持する治具と係止する係止部が設けられている、
コンデンサモジュール。
【請求項2】
前記端面電極は、第1端面電極と第2端面電極とを含み、
前記バスバーは、前記第1端面電極に接続され第1基部を有する第1バスバーと、前記第2端面電極に接続され第2基部を有する第2バスバーと、を含み、
前記第1基部には第1係止部が設けられ、
前記第2基部には第2係止部が設けられ、
前記第1バスバーの前記第1基部の少なくとも一部と前記第2バスバーの前記第2基部の少なくとも一部とは、絶縁紙を介して重ねて配置される、
請求項1に記載のコンデンサモジュール。
【請求項3】
前記第1基部に設けられた第1係止部と、前記第2基部に設けられた第2係止部とは、前記絶縁紙の表面方向にずれた位置に配置される、
請求項2に記載のコンデンサモジュール。
【請求項4】
前記絶縁紙は、前記第1係止部と前記第2係止部との両方に重なる、
請求項3に記載のコンデンサモジュール。
【請求項5】
前記絶縁紙の大きさは、前記第1基部と前記第2基部とが重なった部分の面積よりも大きい、
請求項2に記載のコンデンサモジュール。
【請求項6】
前記係止部は、前記基部に設けられた貫通孔、凹部、または突起である、
請求項1に記載のコンデンサモジュール。
【請求項7】
コンデンサモジュールを製造する方法であって、
端面電極を有するコンデンサ素子と、前記端面電極に電気的に接続され、前記端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、前記コンデンサ接続部から前記コンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、前記基部から延びる先端部と、を含み、前記基部には係止部が設けられているバスバーと、を有するコンデンサアセンブリを組み立てるステップと、
治具を用いて前記コンデンサアセンブリを保持するステップであって、前記治具を前記基部の前記係止部に係止させ、前記治具で前記基部を挟むことにより、前記治具で前記コンデンサアセンブリを保持するステップと、
前記治具で保持した前記コンデンサアセンブリを、ケースに収容するステップと、
前記治具で前記コンデンサアセンブリを保持しつつ、前記ケースに封止樹脂を充填するステップと、
を含む、
コンデンサモジュールの製造方法。
【請求項8】
前記治具は、第1治具と第2治具とを含み、
前記治具でコンデンサアセンブリを保持するステップは、前記第1治具と前記第2治具とで前記基部を挟むことにより、前記治具で前記コンデンサアセンブリを保持することを含む、
請求項7に記載のコンデンサモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンデンサモジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子とバスバーとがケースに収容されて封止樹脂で封止されたコンデンサモジュールが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ケースと、コンデンサ素子と、第1バスバーと、第2バスバーと、充填物と、を備えるコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコンデンサでは、コンデンサ素子およびバスバーとケースとの位置精度を向上させる点で、未だ改善の余地がある。
【0006】
本開示は、コンデンサ素子およびバスバーとケースとの位置精度を向上させることのできるコンデンサモジュールおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかるコンデンサモジュールは、
端面電極を有するコンデンサ素子と、前記端面電極に電気的に接続されるバスバーと、を有するコンデンサアセンブリと、
前記コンデンサアセンブリを収容するケースと、
前記ケースに充填される封止樹脂と、
を備え、
前記バスバーは、前記端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、前記コンデンサ接続部から前記コンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、前記基部から延びる先端部と、を含み、
前記基部には、前記コンデンサアセンブリを保持する治具と係止する係止部が設けられている。
【0008】
本開示の一態様にかかるコンデンサモジュールの製造方法は、
コンデンサモジュールを製造する方法であって、
端面電極を有するコンデンサ素子と、前記端面電極に電気的に接続され、前記端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、前記コンデンサ接続部から前記コンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、前記基部から延びる先端部と、を含み、前記基部には係止部が設けられているバスバーと、を有するコンデンサアセンブリを組み立てるステップと、
治具を用いて前記コンデンサアセンブリを保持するステップであって、前記治具を前記基部の前記係止部に係止させ、前記治具で前記基部を挟むことにより、前記治具で前記コンデンサアセンブリを保持するステップと、
前記治具で保持した前記コンデンサアセンブリを、ケースに収容するステップと、
前記治具で前記コンデンサアセンブリを保持しつつ、前記ケースに封止樹脂を充填するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、コンデンサ素子およびバスバーとケースとの位置精度を向上させたコンデンサモジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかるコンデンサモジュールを示す概略斜視図
【
図2】
図1のコンデンサモジュールのコンデンサアセンブリを示す図
【
図3】
図1のコンデンサモジュールを別の方向から見た図
【
図4】
図3のコンデンサモジュールのコンデンサアセンブリを示す図
【
図7】
図1のコンデンサモジュールの製造方法を説明するためのフローチャート
【
図9】2つの治具によりコンデンサアセンブリを保持している状態を示す図
【
図11】コンデンサアセンブリをケースに収容した状態を示す図
【
図12】治具で保持したコンデンサアセンブリを収容したケースに封止樹脂が充填された状態を示す図
【
図13】実施の形態1の変形例1にかかるコンデンサモジュールのコンデンサアセンブリの一部を示す概略断面図
【
図14】
図13のコンデンサアセンブリを治具で保持した状態を示す概略断面図
【
図15】実施の形態1の変形例2にかかるコンデンサモジュールのコンデンサアセンブリの一部を示す概略断面図
【
図16】
図15のコンデンサアセンブリを治具で保持した状態を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示に至った経緯)
コンデンサモジュールを製造する際には、コンデンサ素子にバスバーを接続した後、コンデンサ素子およびバスバーをケースに収容して封止樹脂を充填する。封止樹脂を充填する際に、コンデンサ素子およびバスバーがケースに対して適切な位置を保つことができるよう、治具によりコンデンサ素子およびバスバーを保持することがある。この際、ボルト締結用にバスバーに設けられた穴に治具の突起などを挿入して、コンデンサ素子およびバスバーを固定して保持し、ケースに対して位置決めを行うことがある。
【0012】
バスバーに設けられた穴は、従来、コンデンサモジュールを外部装置に接続する際にボルトを挿入する穴として用いられてきた。ボルト用の穴を、コンデンサモジュールの製造時に、封止樹脂を充填する際の治具によりコンデンサ素子およびバスバーを固定するための穴として用いることで、コンデンサ素子およびバスバーのケースに対する位置決めを行っていた。
【0013】
近年、レーザー溶接技術の向上に伴い、コンデンサモジュールと外部装置との電気的接続を、レーザー溶接により行うことが増えてきている。この場合、バスバーにボルト用の穴が形成されないため、治具でコンデンサ素子およびバスバーを確実に位置決めすることができず、対策が求められている。
【0014】
例えば、特許文献1には、ケースが底部及び/又は側壁部から延びて側壁部の内面との間に隙間を形成する突起を有し、第2バスバーがコンデンサ素子の側面に沿ってケースの開口部側に延びる立面部を備えるコンデンサが開示されている。さらに、特許文献1には、立面部には貫通孔が設けられており、突起を貫通孔に挿入することにより、バスバーおよびコンデンサ素子とケースとの位置決めを行うことが開示されている。
【0015】
しかし、特許文献1に記載のコンデンサモジュールでは、コンデンサ素子およびバスバーとケースとの位置決めの精度に改善の余地がある。また、特許文献1に記載のコンデンサモジュールでは、ケースを複雑な形状に形成しなければならず、製造コストが増加してしまうという課題もある。
【0016】
そこで、本発明者らは、これらの課題を克服するためのコンデンサモジュールについて検討し、以下の発明に至った。
【0017】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、実施の形態1にかかるコンデンサモジュール1を示す概略斜視図である。
図2は、
図1のコンデンサモジュール1のコンデンサアセンブリ10を示す図である。
図3は、
図1のコンデンサモジュール1を別の方向から見た図である。
図4は、
図3のコンデンサモジュール1のコンデンサアセンブリ10を示す図である。
図5は、
図1のA-A断面図である。
図6は、
図3のB-B断面図である。なお、図中のX、Y、Z方向はそれぞれ、コンデンサモジュール1の横方向、縦方向、高さ方向を示す。
【0018】
図1~
図6に示すように、コンデンサモジュール1は、コンデンサアセンブリ10と、ケース40と、封止樹脂50と、を備える。コンデンサモジュール1においては、ケース40にコンデンサアセンブリ10の一部が収容され、封止樹脂50で封止されている。コンデンサアセンブリ10のうちバスバー30の一部、すなわちバスバー30の基部31、36と先端部32、37が、封止樹脂50から露出している。バスバー30の先端部32、37を外部装置の端子と接続することにより、コンデンサモジュール1を外部装置に電気的に接続することができる。
【0019】
<コンデンサアセンブリ>
コンデンサアセンブリ10は、
図2および
図4に示すように、コンデンサ素子20と、バスバー30と、を有する。コンデンサアセンブリ10は、コンデンサ素子20の端面電極21、22にバスバー30を電気的に接続して組み立てたものである。本実施の形態では、コンデンサアセンブリ10は、2つのコンデンサ素子20を有する。
【0020】
コンデンサ素子20は、第1端面電極21と第2端面電極22とを含む端面電極を有する。言い換えると、コンデンサ素子20は、一対の端面電極21、22を有する。コンデンサ素子20は、長円形状の断面を有する柱状に形成されている。コンデンサ素子20の形状はこれに限定されず、円柱、または角柱等の任意の形状とすることができる。
【0021】
コンデンサ素子20は、例えば、誘電体フィルムの積層体により構成されるフィルムコンデンサである。コンデンサ素子20は、表面に金属蒸着膜を形成した誘電体フィルムを積み重ねた後、巻回することにより形成される。本実施の形態では、誘電体フィルムの巻回体を扁平形状にプレスすることにより、コンデンサ素子20が長円の断面を有する柱状に形成されている。コンデンサ素子20の両端面には端面電極21、22が設けられている。端面電極21、22は、例えば、Zn等の導電性を有する材料を誘電体フィルムの巻回体の端面に溶射することにより形成することができる。
【0022】
バスバー30は、コンデンサ素子20の端面電極21、22に電気的に接続され、コンデンサ素子20と図示省略の外部装置とを電気的に接続するための部材である。本実施の形態では、コンデンサ素子20が第1端面電極21と第2端面電極22とを含む2つの端面電極を有するため、バスバー30は、第1端面電極21に接続される第1バスバー30aと第2端面電極22に接続される第2バスバー30bとの2つのバスバーを含む。
【0023】
バスバー30はそれぞれ、端面電極に接続されるコンデンサ接続部33、38と、コンデンサ接続部33、38からコンデンサ素子20と離れる方向に延びる基部31、36と、基部31、36から延びる先端部32、37と、を有する。バスバー30の基部31、36には、コンデンサアセンブリ10を保持する治具(図示省略)と係止する係止部60が設けられている。
【0024】
第1バスバー30aは、
図2および
図4に示すように、第1端面電極21に接続される第1コンデンサ接続部33と、第1基部31と、第1先端部32と、を有する。本実施の形態では、第1コンデンサ接続部33がコンデンサ素子20の第1端面電極21に沿って配置されている。第1コンデンサ接続部33と第1端面電極21とは、例えば半田により接続することができる。
【0025】
第1基部31は、コンデンサ素子20の端部で屈曲してコンデンサ素子20の側面に沿って配置される第1部分31aと、第1部分31aからコンデンサ素子20と離れる方向に延びる第2部分31bとを有する。第1基部31の第2部分31bの一部から、第1先端部32が延びて形成されている。より具体的には、第1基部31の第2部分31bの一部が面方向に突出して突出部31cが形成され、突出部31cからさらに面方向に第1先端部32が延びて形成されている。本実施の形態では、第1基部31の突出部31の先端が屈曲または湾曲して形成されており、第1先端部32は、屈曲または湾曲している部分を境界としてそれより先端部分を指す。また、本実施の形態では、第1先端部32は、絶縁紙70が配置されていない部分を指す。第1先端部32は、溶接に用いられる部分であるため、穴または凹部等は設けられておらず、平板状に形成されている。
【0026】
第1基部31の第2部分31bには、第1係止部61が設けられている。本実施の形態では、
図2に示すように、第1基部31の突出部31cに第1係止部61が設けられている。本実施の形態では、第1係止部61は、バスバー30の第1基部31に設けられた貫通孔である。
【0027】
第2バスバー30bは、第1バスバー30aと同様の構成である。
図3および
図5に示すように、第2端面電極22に接続される第2コンデンサ接続部38と、第2基部36と、第2先端部37と、を有する。本実施の形態では、第2コンデンサ接続部38がコンデンサ素子20の第2端面電極22に沿って配置されている。第2コンデンサ接続部38と第2端面電極22とは、例えば半田により接続することができる。
【0028】
第2基部36は、コンデンサ素子20の端部で屈曲してコンデンサ素子20の側面に沿って配置される第3部分36aと、第3部分36aからコンデンサ素子20と離れる方向に延びる第4部分36bとを有する。第2基部36の第4部分36bの一部から、第2先端部37が延びて形成されている。より具体的には、第2基部36の第4部分36bの一部が面方向に突出して突出部36cが形成され、突出部36cからさらに面方向に第2先端部37が延びて形成されている。本実施の形態では、第2先端部37は、絶縁紙70が配置されていない部分を指す。第2先端部37は、溶接に用いられる部分であるため、穴または凹部等は設けられておらず、平板状に形成されている。
【0029】
第2基部36の第4部分36bには、第2係止部66が設けられている。本実施の形態では、
図4に示すように、第2基部36の突出部36cに第2係止部66が設けられている。本実施の形態では、第2係止部66は、バスバー30の第2基部36に設けられた貫通孔である。
【0030】
本実施の形態では、第1先端部32の延びる面が、第1基部31の延びる面に対してずれて位置している。このような構成により、第1先端部32と第2先端部37とを同じ平面に配置することができる。
【0031】
ここで、第1係止部61および第2係止部66を含む係止部は、コンデンサアセンブリ10を保持するための治具(図示省略)の一部を係止させる部分である。治具に設けられた係止部61、66の貫通孔の形状に合致する突起を係止部61、66に挿入することで、係止部61、66と突起とが嵌合し、治具で第1バスバー30aおよび第2バスバー30bを保持することができる。係止部61、66の貫通孔に突起が挿入されることで、治具から第1バスバー30aおよび第2バスバー30bが脱落することを抑制することができる。治具については、詳細を後述する。
【0032】
図2および
図4に示すように、本実施の形態では、第1バスバー30aの第1基部31の少なくとも一部と第2バスバー30bの第2基部36の少なくとも一部とが、絶縁紙70を介して重ねて配置されている。本実施の形態は、第1基部31の第2部分31bと第2基部の第4部分36bとが絶縁紙70を介して重ねて配置されている。第1基部31の第2部分31bと第2基部36の第4部分36bとを絶縁紙70を介して重ねることにより、第1バスバー30aと第2バスバー30bとの短絡を抑制することができる。また、第1バスバー30aと第2バスバー30bとには逆向きの電流が流れるため、第1バスバー30aの一部と第2バスバー30bの一部とを重ねることで、それぞれを流れる電流により生じる磁界を打ち消し合って、コンデンサモジュール1のインダクタンスを低減することができる。
【0033】
本実施の形態では、絶縁紙70は、第1基部31の第2部分31bおよび突出部31cと、第2基部36の第4部分36bおよび突出部36cと重なるように配置されている。なお、本明細書において、バスバー30の基部31、36とは、コンデンサ接続部33、38から延びて絶縁紙70と重なっている部分までのことを指す。
【0034】
図1~
図4に示すように、第1バスバー30aに設けられた第1係止部61と、第2バスバー30bに設けられた第2係止部66とは、絶縁紙70の延びる方向、すなわち、YZ平面に平行な方向において、ずれた位置に配置されている。第1係止部61と第2係止部66とが、YZ平面に平行な方向においてずれた位置に配置されることで、治具でコンデンサアセンブリ10を安定して保持することができる。
【0035】
図1~
図4に示すように、絶縁紙70は、第1基部31および第2基部36のそれぞれの突出部31c、36cを覆うように配置されている。言い換えると、絶縁紙70は、第1係止部61および第2係止部66の両方と重なるように配置されている。絶縁紙70が、第1係止部61と第2係止部66との両方に重なるように配置されることで、第1バスバー30aと第2バスバー30bとの沿面距離を確保することができる。
【0036】
また、絶縁紙70は、第1基部31の第2部分31bおよび第2基部36の第4部分36bを覆うように配置されている。さらに、絶縁紙70は、第1基部31の突出部31cおよび第2基部36の突出部36cを覆うように配置されている。ここで、絶縁紙70が第1基部31または第2基部36の一部を覆うとは、絶縁紙70と第1基部31または第2基部36の一部がX方向に重なっていることを示す。また、絶縁紙70は、第1基部31と第2基部36とが重なった部分、すなわち、第1基部31の突出部31cおよび第2基部36の突出部36cの面積よりも大きい面積に形成されている。絶縁紙70の面積が第1基部31と第2基部36とが重なった部分の面積よりも大きいことにより、第1バスバー30aと第2バスバー30bとの沿面距離を長くすることができる。
【0037】
<ケース>
ケース40は、コンデンサアセンブリ10を収容するための部材である。本実施の形態では、ケース40は、底面41と底面41の対向する位置に開口42とを有する。本実施の形態では、ケース40は、外観が直方体状の箱型に形成されている。ケース40の形状はこれに限定されず、コンデンサアセンブリ10を収容して封止樹脂50で封止することのできる形状であればよい。ケース40は、例えば合成樹脂等により形成することができる。
【0038】
<封止樹脂>
封止樹脂50は、ケース40に充填された、ケース40に収容されたコンデンサアセンブリ10を封止する。封止樹脂50は、例えば、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂により構成することができる。
【0039】
[製造方法]
図7および
図8~
図12を参照して、コンデンサモジュール1の製造方法について説明する。
図7は、
図1のコンデンサモジュール1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図8~
図12は、
図1のコンデンサモジュール1の製造工程を示す図である。
【0040】
まず、
図7のステップS1において、コンデンサアセンブリ10を組み立てる。コンデンサアセンブリ10は、コンデンサ素子20の第1端面電極21および第2端面電極22のそれぞれに、第1バスバー30aおよび第2バスバー30bを電気的に接続することにより形成することができる。具体的には、コンデンサ素子20の第1端面電極21に、第1バスバー30aのコンデンサ接続部33を電気的に接続し、コンデンサ素子20の第2端面電極22に、第2バスバー30bのコンデンサ接続部38を電気的に接続する。端面電極21、22とコンデンサ接続部33、38との電気的接続は、例えば、半田または溶接等により行うことができる。また、上述したように、第1バスバー30aと第2バスバー30bとが重なる部分には、絶縁紙70を配置する。
【0041】
次に、ステップS2において、組み立てたコンデンサアセンブリ10を治具80で保持する。
図8は、治具80の一例を示す概略図である。
図8に示すように、治具80は、例えば板状の本体部81に突起82が形成された部材である。本実施の形態では、
図8に示す治具80を2つ向かい合わせにして用いることにより、第1バスバー30aおよび第2バスバー30bを挟むようにして、コンデンサアセンブリ10を保持する。なお、本実施の形態では、2つの治具80は同じ形状に構成されているが、治具80のそれぞれの形状は、コンデンサアセンブリ10を保持することのできる形状であればよい。
【0042】
図9は、2つの治具80によりコンデンサアセンブリ10を保持している状態を示す図である。
図10は、
図9の一部を示す断面図である。
図9に示すように、第1治具80aと第2治具80bとを含む2つの治具80で、第1バスバー30aの第1基部31および第1先端部32と第2バスバー30bの第2基部36および第2先端部37を挟むことにより、コンデンサアセンブリ10を保持することができる。このとき、
図10に示すように、治具80の突起82は、それぞれ第1係止部61および第2係止部66に挿入される。すなわち、第1治具80aの突起82が第1係止部61に挿入され、第2治具80bの突起82が第2係止部66に挿入される。治具80を第1係止部61および第2係止部66に係止させることにより、治具80でコンデンサアセンブリ10を安定して保持することができる。
【0043】
次に、ステップS3において、治具80でコンデンサアセンブリ10を保持しつつ、コンデンサアセンブリ10をケース40に収容する。
図11は、コンデンサアセンブリ10をケース40に収容した状態を示す図である。
図11に示すように、治具80でコンデンサアセンブリ10を保持した状態で、コンデンサアセンブリ10をケース40に挿入する。コンデンサアセンブリ10をケース40に挿入した後、ケース40および治具80は、図示省略の別の製造装置により固定される。
【0044】
最後に、ステップS4において、ケース40に封止樹脂50を充填し、封止樹脂50を硬化させてコンデンサモジュール1が完成する。
図12は、治具80で保持したコンデンサアセンブリ10を収容したケース40に封止樹脂50が充填された状態を示す図である。
図1に示すように、ケース40に封止樹脂50を充填する際に、治具80でコンデンサアセンブリ10を保持している。治具80でコンデンサアセンブリ10を保持する際に、第1バスバー30aおよび第2バスバー30bに設けられた係止部61、66を治具80と係止させることで、コンデンサアセンブリ10がケース40内で動かないように治具80で保持することができる。このため、封止樹脂50をケース40に充填する際の封止樹脂50の圧力によるコンデンサアセンブリ10の位置ずれを抑制することができる。
【0045】
[効果]
上述した実施の形態によると、以下の効果を奏することができる。
【0046】
コンデンサモジュール1は、コンデンサアセンブリ10と、ケース40と、封止樹脂50と、を備える。コンデンサアセンブリ10は、端面電極21、22を有するコンデンサ素子20と、端面電極21、22に電気的に接続されるバスバー30と、を有する。ケース40は、コンデンサアセンブリ10を収容する。封止樹脂50は、ケース40に充填される。バスバー30は、端面電極21、22の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部33、38と、コンデンサ接続部33、38からコンデンサ素子20と離れる方向に延びる基部31、36と、基部31、36から延びる先端部32、37と、を含む。基部31、36には、コンデンサアセンブリ10を保持する治具と係止する係止部61、66が設けられている。
【0047】
このような構成により、コンデンサ素子およびバスバーとケースとの位置精度を向上させることのできるコンデンサモジュールを提供することができる。
【0048】
端面電極は、第1端面電極21と第2端面電極22とを含む。バスバー30は、第1端面電極21に接続され第1基部31を有する第1バスバー30aと、第2端面電極22に接続され第2基部36を有する第2バスバー30bと、を含む。第1基部31には第1係止部61が設けられている第2基部36には第2係止部66が設けられている。第1バスバー30aの第1基部31の少なくとも一部と第2バスバー30bの第2基部36の少なくとも一部とは、絶縁紙70を介して重ねて配置される。
【0049】
このような構成により、コンデンサモジュール1のインダクタンスを低減することができる。
【0050】
第1基部31に設けられた第1係止部61と、第2基部36に設けられた第2係止部66とは、絶縁紙70の表面方向にずれた位置に配置される。
【0051】
このような構成により、コンデンサアセンブリ10を治具で保持した際の安定性を向上させることができる。
【0052】
絶縁紙70は、第1係止部61と第2係止部66との両方に重なる。
【0053】
第1バスバー30aと第2バスバー30bとの沿面距離を確保することができる。
【0054】
絶縁紙70の大きさは、第1基部31と第2基部36とが重なった部分の面積よりも大きい。
【0055】
このような構成により、第1バスバー30aと第2バスバー30bとの間の沿面距離をより大きくすることができる。
【0056】
係止部61、66は、貫通孔である。
【0057】
コンデンサモジュール1の製造方法は、コンデンサ素子20とバスバー30とを有するコンデンサアセンブリ10を組み立てるステップと、治具80でコンデンサアセンブリ10を保持するステップと、コンデンサアセンブリ10をケース40に収容するステップと、ケース40に封止樹脂50を充填するステップと、を含む。
【0058】
このような方法により、ケース40に封止樹脂50を充填する際の、コンデンサアセンブリ10のケース40に対する位置ずれを抑制することができる。
【0059】
治具80は、第1治具と第2治具とを含む。治具80でコンデンサアセンブリ10を保持するステップにおいて、第1治具と第2治具とで基部31、36を挟むことにより、コンデンサアセンブリ10を保持する。
【0060】
このような方法により、コンデンサアセンブリ10をより安定して保持することができるため、封止樹脂50の充填の際のコンデンサアセンブリ10の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0061】
[変形例]
なお、上述した実施の形態では、コンデンサアセンブリ10が2つのコンデンサ素子20を有する例について説明したが、これに限定されない。コンデンサアセンブリ10は、1つまたは3つ以上のコンデンサ素子20を有していてもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、第1バスバー30aおよび第2バスバー30bのそれぞれに係止部61、66が設けられている例について説明したが、これに限定されない。係止部は、第1バスバー30aまたは第2バスバー30bのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、第1基部31および第2基部36が突出部31c、36cを有する例について説明したが、これに限定されない。第1基部31および第2基部36には突出部が設けられておらず、第1基部31と第2基部36とが重なる部分に係止部61、66が設けられていてもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態では、第1治具80aおよび第2治具80bの2つの治具を用いてコンデンサアセンブリ10を保持する例について説明したが、これに限定されない。1つの治具でコンデンサアセンブリ10を保持してもよいし、複数の治具でコンデンサアセンブリ10を保持してもよい。
【0065】
図13は、実施の形態1の変形例1にかかるコンデンサモジュールのコンデンサアセンブリ110の一部を示す概略断面図である。
図14は、
図13のコンデンサアセンブリ110を治具180で保持した状態を示す概略断面図である。
【0066】
図13および
図14に示すように、係止部161が、第1基部131に設けられた凹部であってもよい。この場合、治具180の本体部181に設けられた突起182の高さh1は、係止部161の深さh2よりも小さく形成される。なお、図示省略されているが、第2基部136にも同様に凹部が設けられていてもよい。
【0067】
図15は、実施の形態1の変形例2にかかるコンデンサモジュールのコンデンサアセンブリ210の一部を示す概略断面図である。
図16は、
図15のコンデンサアセンブリ210を治具280で保持した状態を示す概略断面図である。
【0068】
図15および
図16に示すように、係止部261が、第1基部231に設けられた突起であってもよい。この場合、治具280の本体部281には、凹部282が設けられている。なお、図示省略されているが、第2基部236にも同様に突起が設けられていてもよい。
【0069】
(実施の形態の概要)
(1)本開示の一態様にかかるコンデンサモジュールは、端面電極を有するコンデンサ素子と、端面電極に電気的に接続されるバスバーと、を有するコンデンサアセンブリと、コンデンサアセンブリを収容するケースと、ケースに充填される封止樹脂と、を備え、バスバーは、端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、コンデンサ接続部からコンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、基部から延びる先端部と、を含み、基部には、コンデンサアセンブリを保持する治具と係止する係止部が設けられている。
【0070】
(2)(1)のコンデンサモジュールにおいて、端面電極は、第1端面電極と第2端面電極とを含み、バスバーは、第1端面電極に接続され第1基部を有する第1バスバーと、第2端面電極に接続され第2基部を有する第2バスバーと、を含み、第1基部には第1係止部が設けられ、第2基部には第2係止部が設けられ、第1バスバーは、第1基部と第1係止部とを含み、第2バスバーは、第2基部と第2係止部とを含み、第1バスバーの第1基部の少なくとも一部と第2バスバーの第2基部の少なくとも一部とは、絶縁紙を介して重ねて配置されてもよい。
【0071】
(3)(2)のコンデンサモジュールにおいて、第1基部に設けられた第1係止部と、第2基部に設けられた第2係止部とは、絶縁紙の表面方向にずれた位置に配置されてもよい。
【0072】
(4)(2)または(3)のコンデンサモジュールにおいて、絶縁紙は、第1係止部と第2係止部との両方に重なってもよい。
【0073】
(5)(2)から(4)のいずれか1つのコンデンサモジュールにおいて、絶縁紙の大きさは、第1基部と第2基部とが重なった部分の面積よりも大きくてもよい。
【0074】
(6)(1)から(5)のいずれか1つのコンデンサモジュールにおいて、係止部は、基部に設けられた貫通孔、凹部、または突起であってもよい。
【0075】
(7)本開示の一態様にかかるコンデンサモジュールの製造方法は、コンデンサモジュールを製造する方法であって、端面電極を有するコンデンサ素子と、端面電極に電気的に接続され、端面電極の延びる面に沿って配置されるコンデンサ接続部と、コンデンサ接続部からコンデンサ素子と離れる方向に延びる基部と、基部から延びる先端部と、を含み、基部には係止部が設けられているバスバーと、を有するコンデンサアセンブリを組み立てるステップと、治具を用いてコンデンサアセンブリを保持するステップであって、治具を基部の係止部に係止させ、治具で基部を挟むことにより、治具でコンデンサアセンブリを保持するステップと、治具で保持したコンデンサアセンブリを、ケースに収容するステップと、治具でコンデンサアセンブリを保持しつつ、ケースに封止樹脂を充填するステップと、を含む。
【0076】
(8)(7)のコンデンサモジュールの製造方法において、治具は、第1治具と第2治具とを含み、治具でコンデンサアセンブリを保持するステップは、第1治具と第2治具とで基部を挟むことにより、治具で前記コンデンサアセンブリを保持することを含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、各種電子機器、電気機器、産業機器、車両装置等に使用されるコンデンサモジュールおよびその製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 コンデンサモジュール
10、110、210 コンデンサアセンブリ
20 コンデンサ素子
21 第1端面電極
22 第2端面電極
30 バスバー
30a 第1バスバー
30b 第2バスバー
31、131、231 第1基部
32 第1先端部
33 第1コンデンサ接続部
36、136、236 第2基部
37 第2先端部
38 第2コンデンサ接続部
40 ケース
50 封止樹脂
60、161、261 係止部
61 第1係止部
66 第2係止部
70 絶縁紙
80、180、280 治具
80a 第1治具
80b 第2治具