(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011439
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】天井構造物及び当該天井構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20250117BHJP
E04B 9/30 20060101ALI20250117BHJP
E04B 9/06 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
E04B9/18 G
E04B9/30 A
E04B9/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113555
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506396582
【氏名又は名称】株式会社みやちゅう
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨▲高▼ 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡部 和良
(72)【発明者】
【氏名】菊池 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】畠山 正樹
(57)【要約】
【課題】振動低減性能の低下を抑制し、施工性を向上させることが可能な天井構造物、及び当該天井構造物の施工方法を提供する。
【解決手段】天井構造物は、天井の両端に沿って配置される一対の際野縁と、際野縁の長手方向に延在し、一対の際野縁の間に離間して配置される複数の野縁と、一対の際野縁の間において、複数の野縁を跨いで敷設される複数の天井制振材と、際野縁と際野縁に隣接する野縁との間に位置する天井制振材の端部を支持する第1膜材と、隣り合った野縁の間に位置する天井制振材の端部を支持する第2膜材とを含む複数の膜材とを備える。上述の天井構造物の施工方法は、一対の際野縁と際野縁に隣接する野縁との間に位置する天井制振材の端部を第1膜材で支持する工程と、隣り合った野縁の間に位置する天井制振材の端部を第2膜材で支持する工程とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の両端に沿って配置される一対の際野縁と、
前記際野縁の長手方向に延在し、前記一対の際野縁の間に離間して配置される複数の野縁と、
前記一対の際野縁の間において、前記複数の野縁を跨いで敷設される複数の天井制振材と、
前記際野縁と前記際野縁に隣接する前記野縁との間に位置する前記天井制振材の端部を支持する第1膜材と、隣り合った前記野縁の間に位置する前記天井制振材の端部を支持する第2膜材とを含む複数の膜材と
を備える
天井構造物。
【請求項2】
前記複数の膜材は、
前記天井制振材と、前記天井制振材の重心近傍が敷設される前記野縁とを連結する第3膜材
を含む
請求項1に記載の天井構造物。
【請求項3】
前記第1膜材、前記第2膜材、及び前記第3膜材は、折り畳み式テープであり、前記折り畳み式テープは、前記天井制振材に配置されている
請求項2に記載の天井構造物。
【請求項4】
前記複数の膜材は、前記際野縁と前記際野縁に隣接する前記野縁との間、および隣り合った前記野縁の間に連結された薄膜シートである
請求項1に記載の天井構造物。
【請求項5】
天井の両端に沿って配置される一対の際野縁と、前記一対の際野縁の長手方向に延在し、当該一対の際野縁の間に離間して配置される複数の野縁と、当該一対の際野縁の間を一方向に、前記複数の野縁を跨いで順次敷設される複数の天井制振材とを有する天井構造物の施工方法であって、
当該一対の際野縁と前記際野縁に隣接する前記野縁との間に位置する前記天井制振材の端部を第1膜材で支持する工程と、
隣り合った前記野縁の間に位置する前記天井制振材の端部を第2膜材で支持する工程と
を含む
天井構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井制振材を備える天井構造物、及び当該天井構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天井下地材及び天井ボードに天井制振材を敷設した天井構造物が存在する(例えば、特許文献1~3)。天井下地材と天井ボードとを有する天井構造物は、一般的には二重天井と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-148108号公報
【特許文献2】特開2020-070641号公報
【特許文献3】特開2017-227062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的には、天井制振材を備える天井構造物の施工方法としては、以下の2つの施工方法がある。
【0005】
第1の施工方法としては、天井下地材を施工した後、一部の天井ボードを天井下地材に貼付し、貼付した天井ボードの上に天井制振材を敷設し、天井ボードの貼付工程と天井制振材の敷設工程とを反復する方法がある。しかしながら、天井制振材の敷設のたびに天井ボードの施工作業が中断するため、天井制振材を有しない一般的な二重天井と比較して、施工作業の効率が低下するという課題がある。
【0006】
第2の施工方法としては、天井下地材を施工した後、天井下地材の複数の野縁に跨って天井制振材を敷設し、天井制振材をすべての野縁に敷設した後に天井ボードを貼付する方法がある。第2の施工方法は、特許文献1及び特許文献2のように、天井制振材を長尺化することにより実現されるが、一般的な居室寸法に対して1枚の天井制振材を用いることができるように、天井制振材を長尺化することは限界がある。したがって、第2の施工方法においては、特許文献1及び特許文献2のように、複数の野縁に跨って複数の天井制振材を敷設するのが一般的である。第2の施工方法では、天井制振材をすべて敷設した後に天井ボードを貼付するため、第1の施工方法のように、天井制振材の敷設のたびに天井ボードの施工作業が中断するとの課題は生じない。
【0007】
しかしながら、第2の施工方法の場合、天井制振材をすべて敷設した状態において、各々の天井制振材の両側の端部が野縁の下端を超えて垂れ下がった状態になるため、天井ボードを貼付する際に天井制振材の位置がずれ、天井制振材が偏って敷設される場合がある。天井制振材が偏って敷設されると、天井制振材が天井ボードに対して接触せずに浮いた状態となるため、天井制振材による制振効果が天井ボードに作用しなくなり、天井構造物の振動低減性能が低下する。また、垂れ下がった状態の天井制振材の両側の端部が野縁と天井ボードとの間に挟まった場合、野縁と天井ボードとの間の隙間により天井ボードに段差が生じる。したがって、第2の施工方法においては、天井制振材を有しない一般的な二重天井と比較して、施工性が低下するという課題がある。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、振動低減性能の低下を抑制し、施工性を向上させることが可能な天井構造物、及び当該天井構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の天井構造物は、天井の両端に沿って配置される一対の際野縁と、前記際野縁の長手方向に延在し、前記一対の際野縁の間に離間して配置される複数の野縁と、前記一対の際野縁の間において、前記複数の野縁を跨いで敷設される複数の天井制振材と、前記際野縁と前記際野縁に隣接する前記野縁との間に位置する前記天井制振材の端部を支持する第1膜材と、隣り合った前記野縁の間に位置する前記天井制振材の端部を支持する第2膜材とを含む複数の膜材とを備える。本発明によれば、天井制振材の端部を膜材で支持することにより、天井制振材の端部が、際野縁又は野縁の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできるため、天井ボードを貼付する際に天井制振材が偏って敷設されることを抑制できる。また、天井制振材の端部を膜材で支持することにより、天井制振材の端部が、際野縁又は野縁の下端から下方に垂れ下がらないように天井制振材の端部を位置決めできるため、天井制振材の端部が野縁と天井ボードとの間に挟まることを防止できる。
【0010】
本発明の一態様において、前記複数の膜材は、前記天井制振材と、前記天井制振材の重心近傍が敷設される前記野縁とを連結する第3膜材を含む。本発明の一態様によれば、天井制振材の重心に近い位置が野縁に仮固定されるため、天井制振材が野縁の上に安定して敷設された状態で、天井制振材の位置決めをすることができる。
【0011】
本発明の一態様において、前記第1膜材、前記第2膜材、及び前記第3膜材は、折り畳み式テープであり、前記折り畳み式テープは、前記天井制振材に配置されている。本発明の一態様によれば、現場での仮設テープ等の切り取り作業又は貼付作業を省略できる。
【0012】
本発明の一態様において、前記複数の膜材は、前記際野縁と前記際野縁に隣接する前記野縁との間、および隣り合った前記野縁の間に連結された薄膜シートである。本発明の一態様によれば、天井制振材の端部が、際野縁又は野縁の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできる。
【0013】
また、本発明の天井構造物の施工方法は、天井の両端に沿って配置される一対の際野縁と、前記一対の際野縁の長手方向に延在し、当該一対の際野縁の間に離間して配置される複数の野縁と、当該一対の際野縁の間を一方向に、前記複数の野縁を跨いで順次敷設される複数の天井制振材とを有する天井構造物の施工方法であり、当該一対の際野縁と前記際野縁に隣接する前記野縁との間に位置する前記天井制振材の端部を第1膜材で支持する工程と、隣り合った前記野縁の間に位置する前記天井制振材の端部を第2膜材で支持する工程とを含む。本発明によれば、天井制振材の端部を膜材で支持することにより、天井制振材の端部が、際野縁又は野縁の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできるため、天井ボードを貼付する際に天井制振材が偏って敷設されることを抑制できる。また、天井制振材の端部を膜材で支持することにより、天井制振材の端部が、際野縁又は野縁の下端から下方に垂れ下がらないように天井制振材の端部を位置決めできるため、天井制振材の端部が野縁と天井ボードとの間に挟まることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動低減性能の低下を抑制し、施工性を向上させることが可能な天井構造物、及び当該天井構造物の施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る天井構造物における際野縁及び野縁を例示した概略図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る天井構造物における天井制振材を例示した概略図であり、(a)は、9つの袋体を有する天井制振材の斜視図であり、(b)は、3つの袋体を有する天井制振材の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る天井構造物における膜材の配置例を概略的に示した平面図であり、(a)は、9つの袋体を有する天井制振材における配置例であり、(b)~(d)は、9つの袋体を有する天井制振材における別の配置例である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る天井構造物における膜材の配置例を概略的に示した平面図であり、(a)は、3つの袋体を有する天井制振材における配置例であり、(b)は、3つの袋体を有する天井制振材における別の配置例である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る天井構造物における膜材の一例を示した概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る天井構造物の施工方法の一例を示した概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る天井構造物の施工方法の別の一例を示した概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る天井構造物の変形例を示した概略図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、実施形態に係る天井構造物1について説明する。なお、以下の図面においては、同一の部材若しくは部分又は同一の機能を有する部材若しくは部分には、同一の符号を付すか、あるいは符号を省略している。天井構造物1の各々の構成部材の上下及び側方の位置関係は、原則として、各々の構成部材を使用可能な状態に設置したときの位置関係とする。
【0017】
図1に示すように、天井構造物1は、一対の際野縁2と、一対の際野縁2の間に配置された野縁3とを備える。一対の際野縁2及び野縁3は、天井の意匠面を形成する天井ボード(図示せず)が貼付される棒状の部材である。図示しないが、際野縁2及び野縁3は、際野縁2及び野縁3の上面が野縁受けによって支持され、吊り木又は吊りボルトによって直接的に、あるいは、吊り木又は吊りボルトによって野縁受けを介して間接的に、天井の梁等に吊り下げられる。際野縁2及び野縁3、野縁受け、並びに吊り木又は吊りボルトは、天井構造物1の天井下地材を形成する。なお、際野縁2及び野縁3は、際野縁2及び野縁3の長手方向の両端部が壁に設けられたライナ(図示せず)に嵌合されることにより、支持される場合がある。この場合、野縁受け及び吊り木又は吊りボルトは、省略してもよい。
【0018】
際野縁2は、天井の両端、すなわち建物の壁に沿って配置される。一対の際野縁2は、同一方向に延在している。野縁3は、前記一対の際野縁2の長手方向に延在し、一対の際野縁2の間に離間して配置される。野縁3の本数は、
図1のように複数とすることができ、室内寸法等の現場の建物の状況によって任意の数とすることができる。一対の際野縁2及び野縁3は、相互に略平行に配置することができる。なお、本発明では、天井の両端に沿って最外側に配置された一対の野縁を、他の野縁と区別して「際野縁」と称する。
【0019】
際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間、及び隣り合った野縁3の間の取り付けピッチは、天井ボードの種類、室内寸法、又は天井内の設備配置等の現場の建物の状況によって任意の間隔にできる。例えば、天井ボードを石膏ボードとする場合、取り付けピッチは、一般的な石膏ボードの長手寸法である1820mmとの関係を考慮して、303mm、364mm、455mmにすることができる。なお、各々の取り付けピッチは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
なお、際野縁2及び野縁3の材質は限定されるものではなく、アカマツ等の木材であってもよいし、ステンレス鋼等の鋼材であってもよい。また、際野縁2及び野縁3の断面形状は、
図1(a)のような略正方形の矩形形状に限定されるものではなく、木材の場合は扁平な矩形形状であってもよいし、鋼材の場合はH字型、L字型、I字型、U字型等の断面形状であってもよい。
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る天井構造物1における天井制振材4について、
図2及び
図3を用いて説明する。後述するように、天井制振材4は、
図1で示した複数の野縁3に跨って、複数敷設される。
【0022】
図2に示すように、天井制振材4は複数の袋体40を有している。複数の袋体40は、複数の屈曲部41を介して帯状に連結されている。天井制振材4は、複数の屈曲部41を有することにより、天井制振材4の屈曲性を確保できるため、天井制振材4の施工性を向上させることができる。
【0023】
屈曲部41を介して帯状に連結された複数の袋体40の周囲には耳部42が形成されている。屈曲部41及び耳部42は、第1シート4a及び第2シート4bを接着剤等で張り合わせることにより形成される。袋体40の内部は、第1シート4a、第2シート4b、屈曲部41、及び耳部42に包囲された空間に形成される。
【0024】
なお、第1シート4a及び第2シート4bの材質は、同一のものであっても異なるものであってもよい。第1シート4a及び第2シート4bの材質を同一とする場合は、限定しないが、第1シート4a及び第2シート4bは、ポリエチレン等の樹脂として形成できる。また、第1シート4a及び第2シート4bの材質を異なるものとする場合は、限定しないが、第1シート4aはポリエステル製の不織布として形成し、第2シート4bは、ポリエステル等の樹脂として形成できる。第1シート4aを不織布として形成することにより、天井制振材4の通気性を向上させることができる。第1シート4aが不織布として形成された場合、袋体40に吸湿性及び脱臭性を有する材料を封入し、第1シート4aが天井の上側に向くように天井制振材4を敷設することにより、湿気及び臭気による天井の環境劣化を防ぐことができる。
【0025】
各々の袋体40の内部空間には遮音材又は吸音材が封入されている。遮音材又は吸音材の材料は、天井制振材4が設置される環境に応じて任意の材料を選択できる。遮音材又は吸音材の材料は、限定しないが、ゼオライト、パーライト、木炭、砂、天然ガラス発泡体、又はそれらの2以上の混合物とすることができる。遮音材又は吸音材の形状は、袋体40の屈曲性を確保可能であり、かつ袋体40から漏出しないことを条件に、任意の形状を選択できる。例えば、遮音材の形状は、球状、柱状、ペレット状、シート状、フレーク状、粒状、粉状等であってもよい。また、遮音材は、上述した遮音材の集合体を任意の大きさに破砕して形成してもよい。
【0026】
各々の袋体40の好適な封入物は、例えばゼオライトの粒状体である。ゼオライトは、多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩を含む不燃性材料である。ゼオライトは、多孔性材料であり、高い吸湿特性及び脱臭特性を有している。袋体40に封入されたゼオライトの粒状体は、音が透過するまでに反射を繰り返すことで音が減衰する吸音性を有し、特に細かい粒状体では、吸音性が高まる。したがって、ゼオライトを遮音材又は吸音材として採用することにより、天井の耐震性能を向上させるとともに、湿気及び臭気による天井の環境劣化を防ぐことができる。また、ゼオライトは、不燃性であることから火気からの安全性を確保できる。また、ゼオライトを粒状体とすることにより、袋体40の屈曲性を確保できる。
【0027】
なお、
図2(a)では9つの袋体40を有する天井制振材4とし、
図2(b)では3つの袋体40を有する天井制振材4としたが、室内寸法、又は天井内の設備配置等の現場の建物の状況に応じて、袋体40の数量は任意の数とすることができる。また、袋体40の屈曲性を確保可能であれば袋体40の数量は1つであってもよい。
【0028】
図3及び
図4に示すように、天井制振材4には複数の膜材5が配置されている。複数の膜材5は、複数の野縁3(
図1参照)に跨って敷設された天井制振材4を支持するための支持部材である。複数の膜材5は、
図2で示した第1シート4a及び第2シート4bのうち、複数の野縁3と接触するシートに配置される。天井制振材4の施工前に複数の膜材5を天井制振材4に配置すれば、現場での仮設テープ等の切り取り作業又は貼付作業を省略できるため、天井制振材4の施工性を向上させることができる。また、支持部材を膜材5とすることにより、野縁3の材質が木材か鋼材かを問わず、あるいは、野縁3の断面形状を問わず、天井制振材4を支持することができるため、現場の建物の状況への適合性を向上させることができる。特に、支持部材及び野縁3がともに金属製の従来の天井構造物の場合は、振動等による支持部材と野縁3との接触又は摩擦により、メタルタッチと称される衝突音が発生する可能性があった。しかしながら、支持部材を膜材5とすれば、野縁3の材質が木材か鋼材かを問わず、野縁3との接触又は摩擦による衝突音は発生しないため、天井からの騒音の発生を防ぐことができる。
【0029】
天井制振材4には、膜材5として第1膜材50が配置されている。第1膜材50は、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間(
図1参照)に位置する、天井制振材4の端部42aを支持する。ここで、天井制振材4の端部42aは、天井制振材4の耳部42のうち屈曲部41の長手方向と同一方向を向く辺縁部を含めた一対の領域として規定される。
【0030】
天井制振材4の端部42aを第1膜材50で支持することにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端(
図1参照)から下に垂れ下がらないように位置決めできるため、天井ボード(図示せず)を貼付する際に天井制振材4が偏って敷設されることを抑制できる。したがって、天井制振材4の端部42aを第1膜材50で支持することにより、天井構造物1の振動低減性能の低下を抑制できる。
【0031】
また、天井制振材4の端部42aを第1膜材50で支持することにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3(
図1参照)の下端から下に垂れ下がらないように天井制振材4の端部42aを位置決めできるため、天井制振材4の端部42aが野縁3と天井ボード(図示せず)との間に挟まることを防止できる。したがって、天井制振材4の端部42aを第1膜材50で支持することにより、天井構造物1の施工性を向上させることができる。
【0032】
図3及び
図4の天井制振材4においては、第1膜材50は、第1テープ50aとして形成されている。第1テープ50aは、天井制振材4と際野縁2(
図1参照)とを連結する施工補助用テープである。第1テープ50aは、天井制振材4に配置され、天井制振材4の一対の端部42aのうちの一方に延びるように形成される。天井制振材4における第1テープ50aの配置位置50a1は、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間(
図1参照)の間隔、及び天井制振材4の袋体40の形状等を考慮して決定される。第1テープ50aは、第1テープ50aの配置位置50a1等を考慮して、際野縁2と天井制振材4に隣接する野縁3とを少なくとも跨ぐことが可能な有効長さとなるように形成される。第1テープ50aを有効長さとすることにより、天井制振材4の端部42aが際野縁2及び野縁3の下端から下方に垂れ下がらないように、天井制振材4の端部42aを第1テープ50aで支持できる。したがって、第1テープ50aを有効長さとすることにより、天井制振材4に天井ボード(図示せず)を確実に接触させることができるため、天井制振材4による振動低減性能を維持できる。
【0033】
なお、
図3及び
図4においては、1つ又は2つの第1テープ50aが配置された天井制振材4が示されているが、天井制振材4の寸法、又は袋体40の数量等に応じて、第1テープ50aの数量は任意の数とすることができる。例えば、屈曲部41の長手方向における天井制振材4の寸法が
図3及び
図4よりも大きい場合は、第1テープ50aの数量を3つ以上としてもよい。また、第1テープ50aは、天井制振材4及び際野縁2(
図1参照)に貼付できればよいため、第1テープ50aが延びる方向の両端の位置に粘着剤を有していれば、その他の位置については粘着剤を有していなくてもよい。
【0034】
天井制振材4には、膜材5として第2膜材51を配置できる。第2膜材51は、
図1に示した隣り合った野縁3の間(
図1参照)に位置する、天井制振材4の端部42aを支持する。
【0035】
天井制振材4の端部42aを第2膜材51で支持することにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端(
図1参照)から下方に垂れ下がらないように位置決めできるため、天井ボード(図示せず)を貼付する際に天井制振材4が偏って敷設されることを抑制できる。したがって、天井制振材4の端部42aを第2膜材51で支持することにより、天井構造物1の振動低減性能の低下を抑制できる。
【0036】
また、天井制振材4の端部42aを第2膜材51で支持することにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端(
図1参照)から下方に垂れ下がらないように天井制振材4の端部42aを位置決めできるため、天井制振材4の端部42aが野縁3と天井ボード(図示せず)との間に挟まることを防止できる。天井制振材4の端部42aを第2膜材51で支持することにより、天井構造物1の施工性を向上させることができる。
【0037】
図3及び
図4の天井制振材4においては、第2膜材51は、第2テープ51aとして形成されている。第2テープ51aは、天井制振材4の端部42aと、隣接する別の天井制振材4の端部42aとを連結して継ぎ目を形成する連結用テープである。第2テープ51aは、天井制振材4に配置され、第1テープ50aの延びる方向と逆方向に、天井制振材4の一対の端部42aのうちの他の一方に向けて延びるように形成される。天井制振材4における第2テープ51aの配置位置51a1は、隣り合った野縁3の間の間隔(
図1参照)、及び天井制振材4の袋体40の形状等を考慮して決定される。第2テープ51aは、第2テープ51aの配置位置51a1等を考慮して、隣り合った天井制振材4の端部42aを連結可能な長さとなるように形成される。第2テープ51aを用いることにより、連結された複数の天井制振材4を一つの天井制振材4と同様に扱って天井制振材4の位置調整を行うことができるため、天井制振材4に天井ボード(図示せず)を確実に接触させることができる。したがって、第2テープ51aを用いることにより、天井制振材4の施工性を向上させることができ、天井制振材4による振動低減性能を維持できる。
【0038】
なお、
図3及び
図4においては、2つの第2テープ51aが配置された天井制振材4が示されているが、天井制振材4の寸法、又は袋体40の数量等に応じて、第2テープ51aの数量は任意の数とすることができる。例えば、屈曲部41の長手方向における天井制振材4の寸法が
図3及び
図4よりも大きい場合は、第1テープ50aの数量を3つ以上としてもよいし、当該寸法が
図3及び
図4よりも小さい場合は1つのみとしてもよい。また、第2テープ51aは、隣り合った各々の天井制振材4に貼付できればよいため、第2テープ51aが延びる方向の両端の位置に粘着剤を有していれば、その他の位置については粘着剤を有していなくてもよい。
【0039】
天井制振材4には、膜材5として第3膜材52を配置できる。
図3(a)及び
図3(b)の天井制振材4においては、第3膜材52は、第3テープ52aとして形成されている。第3テープ52aは、天井制振材4と、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3(
図1参照)とを連結する仮固定用テープである。第3テープ52aは、天井制振材4に配置され、天井制振材4の重心近傍に延びるように形成される。ここで、天井制振材4の重心近傍とは、
図1に示した複数の野縁3の整列方向における天井制振材4の重心位置のみではなく、当該重心位置に最も近い位置にある野縁3の上部の天井制振材4の位置を含むものとする。第1テープ50aで天井制振材4と、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3とを連結することにより、天井制振材4の重心に近い位置が野縁3に仮固定される。したがって、天井制振材4が野縁3の上に安定して敷設された状態で、天井制振材4の位置決めをすることができるため、天井制振材4の施工性を向上させることができる。
【0040】
天井制振材4における第3テープ52aの配置位置52a1は、第1テープ50a及び第2テープ51aの配置位置、天井制振材4の重心位置、並びに天井制振材4の袋体40の形状等を考慮して決定される。第3テープ52aの延びる方向は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように第1テープ50aの延びる方向と略同一としてもよいし、第2テープ51aの延びる方向と略同一としてもよい。第3テープ52aは、第3テープ52aの配置位置52a1等を考慮して、天井制振材4と天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3(
図1参照)とを連結することが可能な長さとなるように形成される。
【0041】
なお、
図3(a)及び
図3(b)においては、1つ又は2つの第3テープ52aが配置された天井制振材4が示されているが、天井制振材4の寸法、又は袋体40の数量に応じて、第3テープ52aの数量は任意の数とすることができる。例えば、屈曲部41の長手方向における天井制振材4の寸法が
図3(a)及び
図3(b)より大きい場合は、第3テープ52aの数量を3つ以上としてもよい。また、
図3(c)、
図3(d)、
図4(a)、及び
図4(b)に示すように、第3テープ52aは省略できる。また、第3テープ52aは、天井制振材4及び野縁3に貼付できればよいため、第3テープ52aが延びる方向の両端の位置に粘着剤を有していれば、その他の位置については粘着剤を有していなくてもよい。
【0042】
第1テープ50a、第2テープ51a、及び第3テープ52aとしては、株式会社ニトムズ製のニトフォールド(登録商標)等の折り畳み式のスケーラブルテープを採用することができる。次に、
図5において、折り畳み式テープ54の構造の一例について説明する。
【0043】
折り畳み式テープ54は、図示しないが、例えば、テープロールの形状で提供される。テープロールがミシン目を有している場合、折り畳み式テープ54は、ミシン目で切断し、テープロールから剥離することによって得られる。なお、折り畳み式テープ54は、テープロールとして提供されるものに限られず、複数の折り畳み式テープ54が剥離紙又は剥離フィルムに剥離可能に貼付されたシール形式のものであってもよい。
【0044】
折り畳み式テープ54は、
図5の点線矢印に示す方向に、基材部54aが複数回折り畳まれた状態で形成されている。また、基材部54aには、第1貼付部54b及び第2貼付部54cが設けられている。第1貼付部54b及び第2貼付部54cは、基材部54aが延伸した状態において、基材部54aの両端にそれぞれ配置されている。第1貼付部54b及び第2貼付部54cは、粘着剤を含んでいる。折り畳み式テープ54は、基材部54aが折り畳まれた状態において、第1貼付部54bを介して、
図3及び
図4で示した配置位置50a1、51a1、52a1に貼付される。
【0045】
基材部54aが折り畳まれた状態では、第2貼付部54cは、基材部54aの第1部分54a1に剥離可能に貼付した状態で維持される。したがって、折り畳み式テープ54は、天井制振材4(
図3及び
図4参照)の施工前に天井制振材4に配置するのに好適である。天井制振材4の施工前に、折り畳み式テープ54を天井制振材4に配置すれば、現場での仮設テープ等の切り取り作業又は貼付作業を省略できるため、天井制振材4の施工性を向上させることができる。
【0046】
基材部54aの材質としては、限定しないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、又は塩化ビニル等が用いられる。
【0047】
粘着剤の種類は限定しないが、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、又はウレタン系の粘着剤とすることができる。
【0048】
また、折り畳まれた状態において第2貼付部54cと対向する基材部54aの第1部分54a1には、剥離処理剤が塗布されている。剥離処理剤の種類は限定しないが、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン系の剥離処理剤とすることができる。基材部54aの第1部分54a1に剥離処理剤を塗布することにより、未使用時には基材部54aを折り畳んだ状態で維持でき、使用時には、第1貼付部54bを基材部54aから容易に剥離し、基材部54aを延伸することができる。また、剥離処理剤を塗布した第1部分54a1には、粘着剤が残らないため、天井制振材4(
図3及び
図4参照)の施工作業時において、天井制振材4又は施工作業員の手が基材部54aの第1部分54a1に粘着し、施工性が低下することを回避できる。
【0049】
また、折り畳まれた状態において、第2貼付部54cを有しない基材部54a同士が対向する基材部54aの第2部分54a2には、一方又は双方に仮着剤が塗布されている。仮着剤の種類は限定しないが、ポリオレフィン系、又はスチレン系の仮着剤とすることができる。基材部54aの第2部分54a2に仮着剤を塗布することにより、未使用時には基材部54aを折り畳んだ状態で維持でき、使用時には、仮着した基材部54aの第2部分を容易に剥離し、基材部54aを延伸することができる。また、仮着剤を塗布した第2部分54a2には、粘着剤がないため、天井制振材4(
図3及び
図4参照)の施工作業時において、施工作業員の手が基材部54aの第2部分54a2に粘着し、施工性が低下することを回避できる。
【0050】
以上のことから、第1テープ50a、第2テープ51a、及び第3テープ52aとして、折り畳み式テープ54を採用することにより、天井制振材4(
図3及び
図4参照)の施工性を向上させることができる。
【0051】
なお、
図5においては、基材部54aの折り畳みの回数を3回としているが、これに限定されない。基材部54aの折り畳みの回数を奇数回とすると、折り畳まれた状態において第2貼付部54cが基材部54aの第1部分54a1と対向するため、第2貼付部54cのための剥離紙が不要となる。したがって、基材部54aの折り畳みの回数は奇数回とすることが好ましく、奇数回とした場合には、現場で剥離紙の廃棄物が発生しないため、廃棄物の削減に寄与することができる。
【0052】
また、
図5においては図示しないが、第2貼付部54cが設けられた基材部54aの端部には、粘着剤が塗布されていない把持部を設けてもよい。基材部54aに把持部を設けることにより、基材部54aを手作業で延伸させる際に、粘着剤が手に付着することなく容易に延伸させることができるため、天井制振材4(
図3及び
図4参照)の施工性を向上させることができる。
【0053】
次に、実施形態に係る天井構造物1の施工方法について、
図6を用いて説明する。
図6においては、9つの袋体40を有する天井制振材4を複数敷設する例が示されている。
【0054】
図6に示すように、天井制振材4は、一対の際野縁2の間を一方向に、複数の野縁3を跨いで順次敷設される。また、天井制振材4は、天井制振材4の屈曲部41が、野縁3の長手方向と略平行となるように敷設される。
【0055】
工程(a)においては、天井制振材4が複数の野縁3を跨いで敷設され、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3と連結される。工程(a)は、天井制振材4に配置された第3テープ52aが延伸され、第3テープ52aの先端が、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3に貼付されることにより実現される。工程(a)により、天井制振材4が、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3に仮固定され、天井制振材4の基準位置を決定することができる。
【0056】
例えば、第3テープ52aが天井制振材4に配置されていない場合、施工作業員が現場で仮固定を行うこととなる。現場が広い居室等であり、複数の施工作業員が天井制振材4の敷設作業を行う場合、施工作業員が現場で仮固定を行うと、施工作業員の意向又は現場の状況等によって、天井制振材4の基準位置が一定に決定されない可能性がある。工程(a)においては、第3テープ52aが、天井制振材4の施工前に天井制振材4に配置されているため、配置位置を基準に天井制振材4の基準位置に近い野縁3の位置を容易に位置決めできる。したがって、工程(a)によれば、第3テープ52aの先端を、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3に容易に仮固定でき、天井制振材4を安定して敷設することができる。なお、工程(a)は、省略可能である。工程(a)が省略可能な場合としては、例えば、
図6で示すよりも野縁3の間の取り付けピッチが狭い場合、又は4つ以上の野縁3に跨って天井制振材4を安定して敷設することができる場合が挙げられる。
【0057】
工程(b)においては、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に位置する天井制振材4の端部42aが、第1テープ50aの上面に支持される。工程(b)は、天井制振材4に配置された第1テープ50aが延伸され、第1テープ50aの先端が、際野縁2に貼付されることにより実現される。
【0058】
第1テープ50aは、際野縁2に隣接する野縁3の下端と際野縁2の下端とに接触した状態で天井制振材4から延伸して、際野縁2に連結される。第1テープ50aが際野縁2に連結されると、天井制振材4の端部42aは、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間において、第1テープ50aによって支持される。第1テープ50aによって支持された天井制振材4の端部42aは、際野縁2に隣接する野縁3の下端、及び際野縁2の下端の位置に位置決めされる。したがって、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下に垂れ下がらないように位置決めできるため、天井ボード(図示せず)を貼付する際に天井制振材4が偏って敷設されることを抑制できる。したがって、天井制振材4の端部42aを第1膜材50で支持することにより、天井構造物1の振動低減性能の低下を抑制できる。
【0059】
また、天井制振材4の端部42aを第1テープ50aで支持することにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下に垂れ下がらないように天井制振材4の端部42aを位置決めできるため、天井制振材4の端部42aが野縁3と天井ボード(図示せず)との間に挟まることを防止できる。したがって、天井制振材4の端部42aを第1膜材50で支持することにより、天井構造物1の施工性を向上させることができる。
【0060】
また、現場での作業において、施工作業員がテープを貼付した場合、貼付位置にばらつきが生じやすくなるため、天井制振材4と天井ボード(図示せず)との接触具合にもばらつきが生じ、振動低減性能にも影響を及ぼす可能性がある。工程(b)においては、第1テープ50aは、天井制振材4の施工前に天井制振材4に配置されているため、天井制振材4の製造工場において、第1テープ50aの位置を厳密に管理して貼付することが可能となる。したがって、天井制振材4の施工前に第1テープ50aを天井制振材4に配置することにより、安定的な振動低減性能を実現することができる。
【0061】
なお、工程(b)においては、天井制振材4の端部42aは際野縁2に敷設されない位置で第1テープ50aによって支持されるが、際野縁2の近傍は、壁等の他の構造物が近いため、野縁3の近傍と比較すると大きな振動が生じにくい。したがって、天井制振材4の端部42aは、際野縁2に敷設されていても、敷設されていなくてもよい。
【0062】
次に、工程(c)においては、新たな天井制振材4が、敷設済みの天井制振材4に隣接する位置で、複数の野縁3に敷設される。
【0063】
次に、工程(d)においては、隣り合った野縁3の間に位置する天井制振材4の端部42aが第2テープ51aによって支持される。工程(d)は、際野縁2側の天井制振材4に配置された第2テープ51aが延伸され、工程(c)において敷設された天井制振材4に第2テープ51aの先端が貼付されることにより実現される。
【0064】
工程(d)においては、隣接する天井制振材4同士が、第2テープ51aにより連結されるため、連結された複数の天井制振材4を一つの天井制振材4と同様に扱って天井制振材4の位置調整を行うことができる。天井制振材4の位置調整を行うことにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできる。したがって、天井ボード(図示せず)を貼付する際に天井制振材4が偏って敷設されることを抑制でき、天井構造物1の振動低減性能の低下を抑制できる。
【0065】
また、工程(d)においては、天井制振材4の端部42aが、野縁3の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできる。したがって、天井制振材4の端部42aが野縁3と天井ボード(図示せず)との間に挟まることを防止でき、天井構造物1の施工性を向上させることができる。
【0066】
また、工程(d)においては、第2テープ51aは、天井制振材4の施工前に天井制振材4に配置されているため、現場での第2テープ51aの切り取り作業又は貼付作業を省略できるため、天井制振材4の施工性を向上させることができる。
【0067】
以降、天井制振材4がすべての野縁3に敷設されるまで、上述した工程(c)及び工程(d)が反復される。なお、必要に応じて、工程(c)と工程(d)の間、又は工程(d)の後に、工程(a)を行い、第3テープ52aにより、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3と、天井制振材4とを連結するようにしてもよい。
【0068】
また、図示しないが、天井制振材4がすべての野縁3に敷設された後、工程(b)が最後に再度行われ、天井制振材4に配置された第1テープ50aが延伸され、第1テープ50aの先端が、際野縁2に貼付される。これにより、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に位置する天井制振材4の端部42aが、第1テープ50aの上面に支持されるため、最初の工程(b)と同様の効果が得られる。
【0069】
次に、実施形態に係る天井構造物1の施工方法の別の一例について、
図7を用いて説明する。
図7においては、3つの袋体40を有する天井制振材4を複数敷設する例が示されている。
図7の施工方法は、
図7の工程(a)において、
図6の工程(a)のように、第3テープ52aにより、天井制振材4の重心近傍が敷設される野縁3と、天井制振材4とを連結しないことを除けば、
図6の施工方法と同一であるので、重複する部分は説明を省略する。
【0070】
工程(a)においては、天井制振材4が野縁3を跨いで敷設される。次に、工程(b)においては、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に位置する天井制振材4の端部42aが、第1テープ50aの上面に支持される。工程(b)においては、第1テープ50aは、際野縁2に隣接する野縁3の下端と際野縁2の下端に接触した状態で天井制振材4から延伸して、際野縁2に連結される。第1テープ50aが際野縁2に連結されると、天井制振材4の端部42aが際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間において、第1テープ50aによって支持されるとともに、天井制振材4の重心近傍の位置が野縁3に敷設されるように調整される。したがって、
図7の施工方法においては、袋体40の数量が少数であり、第1テープ50aが際野縁2に連結されると、天井制振材4の重心近傍の位置が際野縁2に隣接する野縁3に敷設されるように調整されるため、
図6における第3テープ52aを省略することができる。
【0071】
工程(c)においては、新たな天井制振材4が、敷設済みの天井制振材4に隣接する位置で、複数の野縁3に敷設される。工程(d)においては、隣り合った野縁3の間に位置する天井制振材4の端部42aが、第2テープ51aによって支持される。以降、天井制振材4がすべての野縁3に敷設されるまで、上述した工程(c)及び工程(d)が反復される。図示しないが、天井制振材4がすべての野縁に敷設された後、最後に、工程(b)が再度行われる。
【0072】
図7の施工方法によれば、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできるため、
図6の施工方法と同様の効果が得られる。
【0073】
なお、
図6及び
図7の例と各々の袋体40の数量が異なる天井制振材4を用いた場合も、上述と同様の施工方法で、天井制振材4を施工可能である。また、上述の施工方法においては、必要に応じて、
図2に示した屈曲部41において、天井制振材4をカットして、袋体40の数量を減らすことにより、天井制振材4の長さを調整することも可能である。
【0074】
また、上述した施工方法を複数回反復することにより、天井制振材4を、野縁3の長手方向において複数敷設することも可能である。
【0075】
また、
図6及び
図7の施工方法において用いられない、第1テープ50a、第2テープ51a、及び第3テープ52aについては、天井制振材4に配置したままでもよいし、必要に応じて剥離してもよい。なお、際野縁2に連結されない第1テープ50aは、
図7の工程(d)において破線で示したように、第2テープ51aの機能を補助すべく、隣接する天井制振材4同士を連結するために用いてもよい。
【0076】
次に、実施形態に係る天井構造物1の変形例について
図8を用いて説明する。なお、以降の説明においては、膜材5以外の構成は、前述した天井構造物1の構成と同一であるため、説明を省略する。
【0077】
前述の実施形態においては、天井制振材4の施工前に複数の膜材5を天井制振材4に配置する構成とした。しかしながら、天井制振材4の第1シート4a又は第2シート4b(
図2参照)の強度が低い等の理由により、複数の膜材5を天井制振材4に直接配置できない場合、又は配置が困難な場合がある。本変形例によれば、複数の膜材5を天井制振材4に直接配置できない場合、又は配置が困難な場合であっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
図8の天井構造物1においては、膜材5として、薄膜シート55を含む。薄膜シート55は、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に連結され、天井制振材4の端部42aを支持する。薄膜シート55は、隣り合った野縁3との間に連結され、天井制振材4の端部42aを支持する。
図8においては、薄膜シート55の長手方向の幅は、2つの天井制振材4の端部42aをすべて覆う長さとなっているが、これに限定されず、天井制振材4の端部42aを支持可能な範囲内で任意の幅とすることができる。薄膜シート55の厚さは、限定しないが、例えば15~75μmにできる。薄膜シート55の材質は、制振性能に影響を及ぼさないものであればよく、表面強度、耐寒性、耐衝撃性、突き刺し強度等を考慮して選択される。薄膜シート55の材質は、限定しないが、ポリエチレン樹脂、又はポリエチレンテレフタレート(PET)とナイロン6(ポリアミド6:PA6)とポリエチレンとの複合ナイロンフィルムとすることができる。
【0079】
なお、薄膜シート55は、際野縁2の下端と際野縁2に隣接する野縁3の下端に粘着剤を用いて固定される。また、薄膜シート55は、隣り合った野縁3の下端に粘着剤を用いて固定される。粘着剤の種類は限定しないが、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、又はウレタン系の粘着剤とすることができる。
【0080】
本変形例のように、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間、及び隣り合った野縁3との間に薄膜シート55を連結すれば、複数の野縁3に敷設されるすべての天井制振材4の端部42aは、薄膜シート55により支持される。天井制振材4の端部42aが薄膜シート55で支持されることにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下に垂れ下がらないように位置決めできるため、天井ボード(図示せず)を貼付する際に天井制振材4が偏って敷設されることを抑制できる。
【0081】
また、天井制振材4の端部42aが薄膜シート55で支持されることにより、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下に垂れ下がらないように天井制振材4の端部42aを位置決めできるため、天井制振材4の端部42aが野縁3と天井ボード(図示せず)との間に挟まることを防止できる。
【0082】
したがって、本変形例によっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
次に、本変形例における薄膜シート55を用いた天井構造物1の施工方法を説明する。前述の実施形態と同様に、本変形例においても、天井制振材4は、一対の際野縁2の間を一方向に、複数の野縁3を跨いで順次敷設される。なお、以降においては、前述の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0084】
最初に、天井制振材4が、1以上の野縁3に跨いで敷設され、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に薄膜シート55が連結され、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に位置する天井制振材4の端部42aが、薄膜シート55で支持される。
【0085】
次いで、新たな天井制振材4が、敷設済みの天井制振材4に隣接する位置で、複数の野縁3に敷設され、隣り合った野縁3の間に薄膜シート55が連結され、隣り合った野縁3の間に位置する2つの天井制振材4の端部42aが、薄膜シート55によって支持される。以降、天井制振材4がすべての野縁3に敷設されるまで、当該工程が反復される。
【0086】
天井制振材4がすべての野縁3に敷設された後、最後に、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に薄膜シート55が連結され、際野縁2と際野縁2に隣接する野縁3との間に位置する天井制振材4の端部42aが薄膜シート55で支持される。
【0087】
なお、本変形例の施工方法を複数回反復することにより、天井制振材4を、野縁3の長手方向において複数敷設することも可能である。
【0088】
本変形例の施工方法によれば、天井制振材4の端部42aが、際野縁2又は野縁3の下端から下方に垂れ下がらないように位置決めできるため、上述した実施形態の施工方法と同様の効果が得られる。また、野縁3の長手方向における薄膜シート55の幅を大きくすることにより、複数の天井制振材4を野縁3の長手方向に並べて敷設できるため、施工効率を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 天井構造物、2 際野縁、3 野縁、4 天井制振材、4a 第1シート、4b 第2シート、5 膜材、40 袋体、41 屈曲部、42 耳部、42a 端部、50 第1膜材、50a 第1テープ、50a1 配置位置、51 第2膜材、51a 第2テープ、51a1 配置位置、52 第3膜材、52a 第3テープ、52a1 配置位置、54 折り畳み式テープ、54a 基材部、54a1 第1部分、54a2 第2部分、54b 第1貼付部、54c 第2貼付部、55 薄膜シート。