(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011478
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】バイタル情報管理装置、バイタル情報管理システム及びバイタル情報管理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20250117BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113618
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】304037175
【氏名又は名称】メディカル・ケア・プランニング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521122094
【氏名又は名称】株式会社バイタルDX
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴史
(72)【発明者】
【氏名】朴 元浩
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することを課題とする。
【解決手段】内蔵するカメラで使用者の顔動画を撮影したならば(S1)、RPPGにより使用者のバイタルデータを推定する(S2)。例えば、心拍が70回/分であり、血圧が163/98mmHgであると推定する。推定したバイタルデータが標準値から外れていた場合は、医療機器による測定を促す(S3)。例えば、「血圧が標準値から外れています。医療機器で再測定しますか。」と表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の顔画像を撮像する撮像部と、バイタル情報を取得する所定の操作を受け付ける操作受付部とを有するバイタル情報管理装置であって、
前記撮像部により撮像された顔画像に基づいてバイタル情報を推定する推定手段と、
前記撮像部により撮像された顔画像の顔認証を行う顔認証手段と、
前記操作受付部により前記所定の操作を受け付けた場合に、前記推定手段により推定されたバイタル情報を前記顔認証手段で認証された利用者の識別情報に対応付けて記憶する記憶手段と
を備えたことを特徴とするバイタル情報管理装置。
【請求項2】
前記推定手段は、
前記顔画像にリモートフォトプレチスモグラフィーを適用して得られる心拍数から脈拍、血中酸素濃度、血圧及び/又は体温を含むバイタル情報を推定することを特徴とする請求項1に記載のバイタル情報管理装置。
【請求項3】
前記推定手段は、
複数の顔画像にリモートフォトプレチスモグラフィーを適用した心拍数及び正解データを訓練データとして訓練したバイタル情報推定モデルを用いて、前記バイタル情報を推定することを特徴とする請求項2に記載のバイタル情報管理装置。
【請求項4】
前記推定手段により推定されたバイタル情報に基づいて、所定の医療機器を用いた前記利用者のバイタル情報の測定を推奨する推奨情報を所定の表示部に表示制御する第1の表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のバイタル情報管理装置。
【請求項5】
複数の顔画像及び正解データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康度を推定する健康度推定手段をさらに備え、
前記推定手段により推定されたバイタル情報及び前記健康度推定手段により推定された健康度に基づいて、所定の医療機器を用いた前記利用者のバイタル情報の測定を推奨する推奨情報を所定の表示部に表示制御する第2の表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のバイタル情報管理装置。
【請求項6】
複数の顔画像、音声データ及び正解データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康度を推定する健康度推定手段と、
前記利用者の音声情報を収集する音声収集手段と
をさらに備え、
前記推定手段により推定されたバイタル情報及び前記健康度推定手段により推定された健康度に基づいて、所定の医療機器を用いた前記利用者のバイタル情報の測定を推奨する推奨情報を所定の表示部に表示制御する第3の表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のバイタル情報管理装置。
【請求項7】
利用者の顔画像を撮像する撮像部及びバイタル情報を取得する所定の操作を受け付ける操作受付部を備えた端末装置と、前記端末装置と通信可能なサーバ装置とを有するバイタル情報管理システムであって、
前記サーバ装置は、
前記撮像部により撮像された顔画像に基づいてバイタル情報を推定する推定手段と、
前記撮像部により撮像された顔画像の顔認証を行う顔認証手段と、
前記端末装置から前記所定の操作を受け付けた旨の通知を受けた場合に、前記推定手段により推定されたバイタル情報を前記顔認証手段で認証された利用者の識別情報に対応付けて記憶する記憶手段と
を備えたことを特徴とするバイタル情報管理システム。
【請求項8】
利用者の顔画像を撮像する撮像部と、バイタル情報を取得する所定の操作を受け付ける操作受付部とを有するバイタル情報管理装置で実行されるバイタル情報管理方法であって、
前記撮像部により撮像された顔画像に基づいてバイタル情報を推定する推定工程と、
前記撮像部により撮像された顔画像の顔認証を行う顔認証工程と、
前記操作受付部により前記所定の操作を受け付けた場合に、前記推定工程により推定されたバイタル情報を前記顔認証工程で認証された利用者の識別情報に対応付けて所定の記憶部に記憶する記憶工程と
を含むことを特徴とするバイタル情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができるバイタル情報管理装置、バイタル情報管理システム及びバイタル情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血流による肌の色の変化を解析することで心拍数を推定するリモートフォトプレチスモグラフィー(以下、「RPPG」と言う)と呼ばれる技術が知られている。例えば、特許文献1には、人の皮膚の種々の領域の輝度の測定値のシーケンスを受信したならば、測定された輝度に対応するフォトプレチスモグラフィ波形の周波数係数を求める技術が開示されている。
【0003】
かかるRPPG技術を用いることにより、人の顔画像を用いて脈拍、血中酸素濃度(以下、「SpO2」と言う)、血圧及び体温などのバイタル情報を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば多数の要介護者が存在する介護現場では、RPPGを用いてバイタル情報を取得した場合に、このバイタル情報と要介護者との紐づけを人手で行わねばないとすると、要介護者に対して他人のバイタル情報を紐付けてしまうおそれがある。
【0006】
また、RPPGにより得られる血圧は、医療機器で実測したものではないため、医療機器でバイタル情報を測定すべき場合があるが、介護現場において医療機器でバイタル情報を測定すべきか否かを判断するのは難しい。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであって、バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができるバイタル情報管理装置、バイタル情報管理システム及びバイタル情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、利用者の顔画像を撮像する撮像部と、バイタル情報を取得する所定の操作を受け付ける操作受付部とを有するバイタル情報管理装置であって、前記撮像部により撮像された顔画像に基づいてバイタル情報を推定する推定手段と、前記撮像部により撮像された顔画像の顔認証を行う顔認証手段と、前記操作受付部により前記所定の操作を受け付けた場合に、前記推定手段により推定されたバイタル情報を前記顔認証手段で認証された利用者の識別情報に対応付けて記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記推定手段は、前記顔画像にリモートフォトプレチスモグラフィーを適用して得られる心拍数から脈拍、血中酸素濃度、血圧及び/又は体温を含むバイタル情報を推定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記推定手段は、複数の顔画像にリモートフォトプレチスモグラフィーを適用した心拍数及び正解データを訓練データとして訓練したバイタル情報推定モデルを用いて、前記バイタル情報を推定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記推定手段により推定されたバイタル情報に基づいて、所定の医療機器を用いた前記利用者のバイタル情報の測定を推奨する推奨情報を所定の表示部に表示制御する第1の表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、複数の顔画像及び正解データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康度を推定する健康度推定手段をさらに備え、前記推定手段により推定されたバイタル情報及び前記健康度推定手段により推定された健康度に基づいて、所定の医療機器を用いた前記利用者のバイタル情報の測定を推奨する推奨情報を所定の表示部に表示制御する第2の表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、複数の顔画像、音声データ及び正解データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康度を推定する健康度推定手段と、前記利用者の音声情報を収集する音声収集手段とをさらに備え、前記推定手段により推定されたバイタル情報及び前記健康度推定手段により推定された健康度に基づいて、所定の医療機器を用いた前記利用者のバイタル情報の測定を推奨する推奨情報を所定の表示部に表示制御する第3の表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、利用者の顔画像を撮像する撮像部及びバイタル情報を取得する所定の操作を受け付ける操作受付部を備えた端末装置と、前記端末装置と通信可能なサーバ装置とを有するバイタル情報管理システムであって、前記サーバ装置は、前記撮像部により撮像された顔画像に基づいてバイタル情報を推定する推定手段と、前記撮像部により撮像された顔画像の顔認証を行う顔認証手段と、前記端末装置から前記所定の操作を受け付けた旨の通知を受けた場合に、前記推定手段により推定されたバイタル情報を前記顔認証手段で認証された利用者の識別情報に対応付けて記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、利用者の顔画像を撮像する撮像部と、バイタル情報を取得する所定の操作を受け付ける操作受付部とを有するバイタル情報管理装置で実行されるバイタル情報管理方法であって、前記撮像部により撮像された顔画像に基づいてバイタル情報を推定する推定工程と、前記撮像部により撮像された顔画像の顔認証を行う顔認証工程と、前記操作受付部により前記所定の操作を受け付けた場合に、前記推定工程により推定されたバイタル情報を前記顔認証工程で認証された利用者の識別情報に対応付けて所定の記憶部に記憶する記憶工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るバイタル情報管理装置の概要の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したバイタル情報管理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した認証データ、標準データ及びバイタルデータの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る光電脈波法の概要の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るバイタル情報管理装置における表示の一例を示す図(その1)である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るバイタル情報管理装置における表示の一例を示す図(その2)である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るバイタル情報管理装置おける処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態2に係るバイタル情報管理装置の概要の説明図である。
【
図9】
図9は、
図8に示したバイタル情報管理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る健康状態推定モデル生成の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態3に係るバイタル情報管理システムの概要の説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態4に係るバイタル情報管理システムの概要の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態1]
以下に、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置、バイタル情報管理システム及びバイタル情報管理方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<実施形態1に係るバイタル情報管理装置10の概要>
まず、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10の概要について説明する。
図1は、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10の概要を説明するための説明図である。本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10は、内蔵するカメラで使用者の顔動画を撮影したならば(S1)、RPPGにより使用者のバイタルデータを推定する(S2)。例えば、心拍が70回/分であり、血圧が163/98mmHgであると推定する。
【0020】
推定したバイタルデータが標準値から外れていた場合は、医療機器による測定を促す(S3)。例えば、「血圧が標準値から外れています。医療機器で再測定しますか。」と表示する。
【0021】
このように、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置では、撮影した顔の動画を用いて推定したバイタルデータが標準値から外れていた場合、医療機器での測定を促すよう構成したので、バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができる。
【0022】
<バイタル情報管理装置10の構成>
次に、バイタル情報管理装置10の構成について説明する。
図2は、
図1に示したバイタル情報管理装置10の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、バイタル情報管理装置10は、表示操作部11、カメラ12、スピーカ13、通信部14、記憶部15及び制御部16を有する。
【0023】
表示操作部11は、タッチパネルディスプレイ等の入出力デバイスである。カメラ12は、使用者の顔の動画を撮影するための入力デバイスである。スピーカ13は、使用者に注意喚起するための音声を発生する出力デバイスである。通信部14は、インターネットとデータ通信するためのインタフェース部である。
【0024】
記憶部15は、不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、認証データ15a、標準データ15b、顔動画データ15c及びバイタルデータ15dを記憶する。
【0025】
認証データ15aは、使用者の認証に使用するデータである。標準データ15bは、バイタルデータの標準値を示すデータである。顔動画データ15cは、使用者の顔を撮影した動画データである。バイタルデータ15dは、顔動画データ15cを用いて推定したバイタルデータを示すデータである。
【0026】
制御部16は、バイタル情報管理装置10の全体制御を行う制御部であり、認証登録部16a、設定部16b、認証部16c、顔動画取得部16d、バイタルデータ推定部16e、判定部16f及びバイタルデータ取得部16gを有する。実際には、これらのプログラムをCPU(Central Processing Unit)にロードして実行することにより、認証登録部16a、設定部16b、認証部16c、顔動画取得部16d、バイタルデータ推定部16e、判定部16f及びバイタルデータ取得部16gにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0027】
認証登録部16aは、認証データ15aを管理する処理部である。認証登録部16aは、カメラ12から認証データである顔画像を受け付け、続けて表示操作部11から氏名データを受け付けたならば、一意の識別IDを生成し、この識別IDと受け付けた各データを対応付けて認証データ15aに記憶する。
【0028】
設定部16bは、標準データ15bを管理する処理部である。設定部16bは、表示操作部11からバイタルデータの標準値データを受け付けたならば、受け付けたデータを標準データ15bに記憶する。
【0029】
認証部16cは、認証処理を行う処理部である。認証部16cは、表示操作部11から認証操作を受け付けたならば、カメラ12により使用者の顔画像の撮影を行い、撮影した画像データ及び認証データ15aを用いて認証を行う。そして、認証が成功したならば、認証データ15aから認証した画像データに対応する識別IDを特定するとともに、表示操作部11にRPPG受付画面を表示する。
【0030】
顔動画取得部16dは、顔動画を取得し、顔動画データ15cを管理する処理部である。顔動画取得部16dは、表示操作部11に表示したRPPG受付画面においてRPPG計測操作を受け付けたならば、カメラ12により使用者の顔の動画撮影を行い、この動画を顔動画データ15cに記憶する。なお、顔動画を撮影中は、表示操作部11に顔動画撮影中画面を表示する。
【0031】
バイタルデータ推定部16eは、バイタルデータを推定し、バイタルデータ15dを管理する処理部である。バイタルデータ推定部16eは、顔動画取得部16dにより顔動画データ15cが生成されたならば、この顔動画データ15cを用いてRPPGによりバイタルデータを推定する。そして、推定したデータをバイタルデータ表示画面に表示するとともに、認証部16cにおいて特定した識別IDに対応付けてバイタルデータ15dに記憶する。この際、計測区分を「RPPG」として記憶する。なお、使用者の認証を行う機能部は、クラウド上に構成してもよい。
【0032】
判定部16fは、バイタルデータ15dが標準値に含まれるか否かを判定する処理部である。判定部16fは、バイタルデータ推定部16eによりバイタルデータ15dが生成されたならば、この生成データと標準データ15bとを比較する。そして、生成データが標準データ15bに含まれない場合には、医療機器での測定を促す内容をバイタルデータ表示画面に表示する。
【0033】
バイタルデータ取得部16gは、バイタルデータの入力を受け付ける処理部である。バイタルデータ取得部16gは、表示操作部11に表示したバイタルデータ表示画面において医療機器での計測を受け付けたならば、バイタルデータ入力画面を表示する。そして、このバイタルデータ入力画面においてバイタルデータの入力を受け付けたならば、受け付けたデータを認証部16cにおいて特定した識別IDに対応付けてバイタルデータ15dに記憶する。この際、計測区分を「医療機器」として記憶する。
【0034】
次に、
図2に示したバイタル情報管理装置10の記憶部15が記憶するデータの具体例について説明する。
図3は、
図2に示した認証データ15a、標準データ15b及びバイタルデータ15dの一例を示す図である。
【0035】
図3(a)に示す認証データ15aは、識別ID「SD0001」に対して、氏名が「特許太郎」であり、登録画像が「SD0001003.jpg」である状態を対応付け、識別ID「SD0015」に対して、氏名が「発明花子」であり、登録画像が「SD0015002.jpg」である状態を対応付けている。
【0036】
図3(b)に示す標準データ15bは、心拍が「65~75回/分」であり、SpO2が「96~99%」であり、血圧が「139mmHg以下/89mmHg以下」であり、体温が「36.9度以下」である状態を示している。
【0037】
図3(c)に示すバイタルデータ15dは、日時「2023/08/06 8:10」に対して、識別IDが「SD0015」であり、測定区分が「RPPG」であり、心拍が「75」回/分であり、SpO2が「96」%であり、血圧が「130/80」mmHgであり、体温が「36.2」度である状態を対応付けている。
【0038】
また、バイタルデータ15dは、日時「2023/08/06 8:15」に対して、識別IDが「SD0001」であり、測定区分が「RPPG」であり、心拍が「70」回/分であり、SpO2が「98」%であり、血圧が「145/95」mmHgであり、体温が「36.6」度である状態を対応付けている。
【0039】
また、バイタルデータ15dは、日時「2023/08/06 8:30」に対して、識別IDが「SD0001」であり、測定区分が「医療機器」であり、心拍が「-」であり、SpO2が「-」であり、血圧が「138/89」mmHgであり、体温が「-」である状態を対応付けている。
【0040】
<実施形態1に係る光電脈波法の概要>
次に、本実施形態1においてバイタルデータを推定する際に使用する光電脈波法の概要について説明する。
図4は、本実施形態1に係る光電脈波法の概要の説明図である。
【0041】
図4に示すように、光電脈波法(PPG)は、光を使って心拍数や血流量など生体内の情報を得る手法であり、光源からの光が皮膚の表面により鏡面反射し、これをカメラが捉える。また、皮膚の中に入った光がさまざまに反射して皮膚の外に出てくる光が拡散反射であり、これを同様にカメラが捉える。カメラが捉えた皮膚からの鏡面反射及び拡散反射の光の変化及び明暗差等を測定することにより、バイタルデータを推定する。
【0042】
本実施形態1においては、光源及びカメラが撮影対象(皮膚)から数10cm離れた非接触式の光電脈波法(RPPG)を用いているが、光源及びカメラが撮影対象(皮膚)に近接する接触式の光電脈波法(PPG)と、原理的には同様の手法である。
【0043】
<実施形態1に係るバイタル情報管理装置10における表示の一例>
次に、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10における表示の一例について説明する。
図5及び
図6は、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10における表示の一例を示す図である。
【0044】
図5に示すように、バイタルデータを推定するために顔の動画を撮影する際には顔動画撮影中画面を表示し、この中でカメラからの距離などの注意事項を表示する。具体的には、「マスクを外して、端末から20~5cmの間隔をとり、顔全体が測定枠に収まるように撮影してください。撮影中は10秒間程度、できるだけ動かないようにしてください。」と表示する。
【0045】
なお、撮影中には、音声を用いた注意喚起を合わせて行う。具体的には、「あと〇秒」、「もう少しで終わりです」、「動かないようお願いします」と、スピーカ13から音声で報知する。
【0046】
また、
図6に示すように、バイタルデータ表示画面において、バイタルデータの推定結果として、心拍、SpO2、血圧及び体温を表示する。例えば、「心拍 70回/分」、「SpO2 98%」、「血圧 163/98mmHg」、「体温 36.2度」と表示する。
【0047】
この際、推定したバイタルデータが標準値から外れていた場合には、医療機器での測定を促す表示を行う。例えば、「血圧が標準値から外れています。医療機器で再測定しますか。」と表示する。
【0048】
<実施形態1に係るバイタル情報管理装置10おける処理手順>
次に、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10おける処理手順について説明する。
図7は、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置10おける処理手順を示すフローチャートである。
【0049】
バイタル情報管理装置10は、顔認証の処理が成功したならば(ステップS101;Yes)、顔の動画撮影を行う。カメラ12から、顔動画を取得したならば(ステップS102;Yes)、取得した顔動画を用いてバイタルデータを推定する(ステップS103)。
【0050】
推定したバイタルデータが標準値内であるならば(ステップS104;Yes)、そのまま処理を終了する。推定したバイタルデータが標準値から外れているならば(ステップS104;No)、医療機器による測定を促す表示を行う(ステップS105)。
【0051】
医療機器による測定を行わないならば(ステップS106;No)、そのまま処理を終了する。医療機器による測定を行うならば(ステップS106;Yes)、測定結果を受け付けて記憶し(ステップS107)、処理を終了する。
【0052】
上述してきたように、本実施形態1に係るバイタル情報管理装置では、撮影した顔の動画を用いて推定したバイタルデータが標準値から外れていた場合、医療機器での測定を促すよう構成したので、バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができる。
【0053】
なお、上記の実施形態1では、医療機器によって計測したバイタルデータを手入力によってバイタル情報管理装置に入力する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。医療機器とバイタル情報管理装置をBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によって通信可能に接続することにより、医療機器で計測したバイタルデータを自動的にバイタル情報管理装置に送信するよう構成することもできる。
【0054】
また、上記の実施形態1では、撮影した顔の動画を用いてバイタルデータを推定する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。撮影した顔の動画を用いて推定したバイタルデータを蓄積し、この蓄積したバイタルデータを訓練データとして訓練したバイタル情報推定モデルを用いて、バイタル情報を推定するよう構成することもできる。
【0055】
[実施形態2]
ところで、上記の実施形態1では、撮影した顔の動画を用いてバイタルデータを推定する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。撮影した顔の動画を蓄積し、この蓄積した動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態を推定し、この推定結果を用いて対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することもできる。本実施形態2では、撮影した顔の動画を蓄積し、この蓄積した動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態を推定し、この推定結果を用いて対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨するバイタル情報管理装置について説明する。
【0056】
<実施形態2に係るバイタル情報管理装置20の概要>
本実施形態2に係るバイタル情報管理装置20の概要について説明する。
図8は、本実施形態2に係るバイタル情報管理装置20の概要の説明図である。
【0057】
図8に示すように、本実施形態2に係るバイタル情報管理装置20では、使用者の顔動画を撮影する(S11)。そして、撮影した顔動画及び健康状態推定モデルを用いて、使用者の健康状態を推定する(S12)。健康状態推定モデルは、事前に撮影した使用者の顔動画を蓄積し、この蓄積した動画データを訓練データとして訓練することにより生成する。
【0058】
推定した健康状態が所定の健康状態から外れていた場合には、医療機器による測定を促す(S13)。例えば、「健康状態が優れていないようです。医療機器で再測定しますか。」と表示する。
【0059】
このように、本実施形態2に係るバイタル情報管理装置20では、撮影した顔の動画を蓄積し、この蓄積した動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態を推定し、この推定結果を用いて対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができる。
【0060】
<バイタル情報管理装置20の構成>
次に、バイタル情報管理装置20の構成について説明する。
図9は、
図8に示したバイタル情報管理装置20の構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、バイタル情報管理装置20は、表示操作部11、カメラ12、スピーカ13、通信部14、記憶部25及び制御部26を有する。
なお、
図2に示したバイタル情報管理装置10と同様の機能部についての説明は省略する。
【0061】
記憶部25は、不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、認証データ15a、標準データ15b、顔動画データ15c、バイタルデータ15d及び訓練データ25aを記憶する。訓練データ25aは、顔動画データ15cを蓄積したデータであり、健康状態推定モデルの訓練のために使用する。
【0062】
制御部26は、バイタル情報管理装置20の全体制御を行う制御部であり、認証登録部16a、設定部16b、認証部16c、顔動画取得部16d、バイタルデータ推定部16e、訓練データ収集部26a、モデル訓練部26b、健康状態推定部26c、判定部26d及びバイタルデータ取得部16gを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、認証登録部16a、設定部16b、認証部16c、顔動画取得部16d、バイタルデータ推定部16e、訓練データ収集部26a、モデル訓練部26b、健康状態推定部26c、判定部26d及びバイタルデータ取得部16gにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0063】
訓練データ収集部26aは、訓練データ25aを管理する処理部である。訓練データ収集部26aは、顔動画データ15cが更新されたならば、この顔動画データ15cを訓練データ25aに追加して更新する。
【0064】
モデル訓練部26bは、健康状態推定モデルを生成する処理部である。モデル訓練部26bは、表示操作部11から訓練開始操作を受け付けたならば、訓練データ25aを用いて訓練を行い、健康状態推定モデルを生成する。
【0065】
健康状態推定部26cは、健康状態推定モデルを用いて健康状態を推定する処理部である。健康状態推定部26cは、顔動画データ15cが更新されたならば、この顔動画データ15c及び健康状態推定モデルを用いて、健康状態を推定する。そして、推定した健康状態を示すアイコンを表示操作部11に表示する。健康状態推定モデルでは、例えば、健康、やや健康、やや不健康、不健康の区分で健康状態を推定する。
【0066】
判定部26dは、推定したバイタルデータ及び健康状態が所定の範囲に含まれるか否かを判定する処理部である。判定部26dは、バイタルデータ推定部16eによりバイタルデータ15dが生成されたならば、この生成データと標準データ15bとを比較する。そして、生成データが標準データ15bに含まれない場合には、医療機器での測定を促す内容をバイタルデータ表示画面に表示する。また、健康状態推定モデルにより推定した健康状態が所定の健康状態(例えば、健康又はやや健康)でなかった場合には、医療機器での測定を促す内容をバイタルデータ表示画面に表示する。
【0067】
<実施形態2に係る健康状態推定モデル生成の処理手順>
次に、本実施形態2に係る健康状態推定モデル生成の処理手順について説明する。
図10は、本実施形態2に係る健康状態推定モデル生成の処理手順を示すフローチャートである。
【0068】
バイタル情報管理装置20は、顔動画データを取得したならば(ステップS201)、取得した顔動画データを訓練データ25aに追加して更新する(ステップS202)。
【0069】
訓練を行わない場合は(ステップS203;No)、ステップS201に移行する。訓練を行う場合は(ステップS203;Yes)、訓練データ25aを用いて訓練を行い、健康状態推定モデルを生成し(ステップS204)、処理を終了する。
【0070】
上述してきたように、本実施形態2に係るバイタル情報管理装置では、撮影した顔の動画を蓄積し、この蓄積した動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態を推定し、この推定結果を用いて対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨することができる。
【0071】
なお、上記の実施形態2では、撮影した顔動画を蓄積して訓練データとし、この訓練データを用いて健康状態推定モデルを生成する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。撮影した顔動画及び音声データを蓄積して訓練データとし、この訓練データを用いて健康状態推定モデルを生成するよう構成することもできる。
【0072】
[実施形態3]
ところで、上記の実施形態1では、携帯端末等のバイタル情報管理装置において、撮影した顔の動画を用いたバイタルデータの推定を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。クラウドやネットワーク上のサーバにおいて、撮影した顔の動画を用いたバイタルデータの推定を行い、このバイタルデータをバイタル情報管理装置において表示するよう構成することもできる。本実施形態3では、クラウドやネットワーク上のサーバにおいて、撮影した顔の動画を用いたバイタルデータの推定を行い、このバイタルデータをバイタル情報管理装置において表示するバイタル情報管理システムについて説明する。
【0073】
<実施形態3に係るバイタル情報管理システムの概要>
本実施形態3に係るバイタル情報管理システムの概要について説明する。
図11は、本実施形態3に係るバイタル情報管理システムの概要の説明図である。
【0074】
図11に示すように、本実施形態3に係るバイタル情報管理システムでは、バイタル情報管理装置100で使用者の顔動画を撮影する(S21)。そして、撮影した顔動画をサーバ200に送信する(S22)。
【0075】
サーバ200は、受信した顔動画を用いてバイタルデータを推定し(S23)、このバイタルデータをバイタル情報管理装置100に送信する(S24)。バイタル情報管理装置100は、受信したバイタルデータを表示する(S25)。この際、バイタルデータが標準値から外れていた場合は、医療機器による測定を促す。
【0076】
医療機器による測定を行ったならば、測定結果をバイタル情報管理装置100に入力する。この際、計測者や被験者のコメント等を記録するため、テキスト、写真、音声(計測者、被験者の肉声)等をバイタル情報管理装置100に保存蓄積できるようしてもよい。
【0077】
このように、本実施形態3に係るバイタル情報管理システムでは、クラウドやネットワーク上のサーバにおいて、撮影した顔の動画を用いたバイタルデータの推定を行い、このバイタルデータをバイタル情報管理装置において表示することができる。
【0078】
ここでは、バイタル情報の推定を中心に説明したが、サーバ200は、顔動画に基づいてバイタル情報を推定するとともに、顔動画に含まれる顔画像の顔認証を行い、バイタル情報管理装置100から所定の操作を受け付けた旨の通知を受けた場合に、推定されたバイタル情報を顔認証された利用者の識別情報に対応付けて記憶部に記憶するよう構成することもできる。
【0079】
[実施形態4]
ところで、上記の実施形態2では、携帯端末等のバイタル情報管理装置において、撮影した顔の動画を蓄積し、この蓄積した動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態の推定を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。クラウドやネットワーク上のサーバにおいて、蓄積した顔の動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態の推定を行い、この推定した健康状態情報をバイタル情報管理装置において表示するよう構成することもできる。本実施形態4では、クラウドやネットワーク上のサーバにおいて、蓄積した顔の動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態の推定を行い、この推定した健康状態情報をバイタル情報管理装置において表示するバイタル情報管理システムについて説明する。
【0080】
<実施形態4に係るバイタル情報管理システムの概要>
本実施形態4に係るバイタル情報管理システムの概要について説明する。
図12は、本実施形態4に係るバイタル情報管理システムの概要の説明図である。
【0081】
図12に示すように、本実施形態4に係るバイタル情報管理システムでは、バイタル情報管理装置300で使用者の顔動画を撮影する(S31)。そして、撮影した顔動画をサーバ400に送信する(S32)。
【0082】
サーバ400は、受信した顔動画を用いて健康状態を推定し(S33)、この健康状態情報をバイタル情報管理装置300に送信する(S34)。バイタル情報管理装置300は、受信した健康状態情報を表示する(S35)。この際、推定した健康状態が所定の健康状態から外れていた場合には、医療機器による測定を促す。
【0083】
医療機器による測定を行ったならば、測定結果をバイタル情報管理装置300に入力する。この際、計測者や被験者のコメント等を記録するため、テキスト、写真、音声(計測者、被験者の肉声)等をバイタル情報管理装置300又はサーバ400に保存蓄積できるようしてもよい。
【0084】
このように、本実施形態4に係るバイタル情報管理システムでは、クラウドやネットワーク上のサーバにおいて、蓄積した顔の動画データを訓練データとして訓練した健康状態推定モデルを用いて健康状態の推定を行い、この推定した健康状態情報をバイタル情報管理装置において表示することができる。
【0085】
ここでは、健康状態情報の推定を中心に説明したが、サーバ400は、顔動画に基づいて健康状態情報を推定するとともに、顔動画に含まれる顔画像の顔認証を行い、バイタル情報管理装置300から所定の操作を受け付けた旨の通知を受けた場合に、推定された健康状態情報を顔認証された利用者の識別情報に対応付けて記憶部に記憶するよう構成することもできる。
【0086】
なお、上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係るバイタル情報管理装置、バイタル情報管理システム及びバイタル情報管理方法は、バイタル情報の推定値と利用者の紐づけを効率良く行うとともに、対象者のバイタル情報を医療機器で測定すべきか否かを推奨する場合に適している。
【符号の説明】
【0088】
10 バイタル情報管理装置
11 表示操作部
12 カメラ
13 スピーカ
14 通信部
15 記憶部
15a 認証データ
15b 標準データ
15c 顔動画データ
15d バイタルデータ
16 制御部
16a 認証登録部
16b 設定部
16c 認証部
16d 顔動画取得部
16e バイタルデータ推定部
16f 判定部
16g バイタルデータ取得部
20 バイタル情報管理装置
25 記憶部
25a 訓練データ
26 制御部
26a 訓練データ収集部
26b モデル訓練部
26c 健康状態推定部
26d 判定部
100 バイタル情報管理装置
200 サーバ
300 バイタル情報管理装置
400 サーバ