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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011479
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ボルト締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
F16B5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113620
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和興
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001HA08
3J001JA03
3J001JA10
3J001KA06
(57)【要約】
【課題】十分な締結力を発揮しつつ、軽量化を図ることができるボルト締結構造を提供すること。
【解決手段】ボルト締結構造1は、ボルト10と、雌ねじ21が形成された螺合部20と、螺合部20に一体または別体に形成され、雌ねじ21に接続された第一ボルト穴31が形成された第一介在部30と、ボルト10および第一介在部30とは別体に形成され、頭部12と第一介在部30との間に挟まれて配置され、第一ボルト穴31に接続された第二ボルト穴41が形成された第二介在部40とを備える。第一ボルト穴31は、雌ねじ21側から頭部12側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成された第一拡径穴31bを備え、第二ボルト穴41は、頭部12側から雌ねじ21側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成される第二拡径穴41bを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじ(11a)が形成された軸部(11)、および、前記軸部の直径よりも大きい直径を有する頭部(12)を有するボルト(10)と、
前記ボルトの前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成された螺合部(20,320,420)と、
前記螺合部に一体または別体に形成され、前記雌ねじに接続された第一ボルト穴(31)が形成された第一介在部(30)と、
前記ボルトおよび前記第一介在部とは別体に形成され、前記頭部と前記第一介在部との間に挟まれて配置され、前記第一ボルト穴に接続された第二ボルト穴(41,541)が形成された第二介在部(40,540)と、
を備え、
前記第一ボルト穴は、前記雌ねじ側から前記頭部側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成された第一拡径穴(31b,131b,231b)を備え、
前記第二ボルト穴は、前記頭部側から前記雌ねじ側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成される第二拡径穴(41b,141b,241b)を備える、ボルト締結構造(1,2,3,4,5,6)。
【請求項2】
前記第一拡径穴の最大穴径(φA)および前記第二拡径穴の最大穴径(φB)は、前記ボルトの前記頭部のうち前記第二介在部側に接触している部分の外縁の直径よりも大きく形成される、請求項1に記載のボルト締結構造(1,2,3,4,5,6)。
【請求項3】
前記第一拡径穴は、前記雄ねじと前記雌ねじとが螺合している部分のうちの前記頭部側の端(P1)から、前記頭部側に向かって45°の角度で拡径した第一仮想線(L1)よりも径方向内側に形成され、
前記第二拡径穴は、前記頭部のうち前記第二介在部側に接触している部分の外縁(P2)から、前記雌ねじ側に向かって45°の角度で拡径した第二仮想線(L2)よりも径方向内側に形成される、請求項1または2に記載のボルト締結構造(1,2,3,4,5,6)。
【請求項4】
前記第一拡径穴および前記第二拡径穴は、テーパ状に形成される、請求項1または2に記載のボルト締結構造(1,4,5,6)。
【請求項5】
前記第一拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度(θA)が前記雌ねじ側から前記頭部側に向かって徐々に小さくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成され、
前記第二拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度(θB)が前記頭部側から前記雌ねじ側に向かって徐々に小さくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成される、請求項1または2に記載のボルト締結構造(2)。
【請求項6】
前記第一拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度(θA)が前記雌ねじ側から前記頭部側に向かって徐々に大きくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成され、
前記第二拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度(θB)が前記頭部側から前記雌ねじ側に向かって徐々に大きくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成される、請求項1または2に記載のボルト締結構造(3)。
【請求項7】
前記第一介在部の前記頭部側の面と前記第二介在部の前記雌ねじ側の面とは、接触し、
前記第一拡径穴の最大穴径(φA)となる開口部、および、前記第二拡径穴の最大穴径(φB)となる開口部は、前記第一介在部と前記第二介在部との接触面上に位置し、
前記第一拡径穴は、前記第一介在部における前記第二介在部との接触面のうち内縁部分に生じる応力が前記第一介在部の降伏応力未満となるように形成され、
前記第二拡径穴は、前記第二介在部における前記第一介在部との接触面のうち内縁部分に生じる応力が前記第二介在部の降伏応力未満となるように形成される、請求項1または2に記載のボルト締結構造(1,2,3,4,5,6)。
【請求項8】
前記第一拡径穴は、前記第一ボルト穴の半分以上の軸方向長さを有し、
前記第二拡径穴は、前記第二ボルト穴の半分以上の軸方向長さを有する、請求項1または2に記載のボルト締結構造(1,2,3,4,5,6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト締結構造において、ボルト穴径は、JIS B 1001-1985(ISO 237-1979)に規定されている。このボルト穴径は、複数の等級に区分されており、ボルト呼び径に応じて規定されている。ボルト穴は、面取りおよびざぐりを除いた主要部分は、円筒内周面形状に形成されている。
【0003】
特許文献1には、ボルトを用いて複数の接合部材を締結するボルト締結構造において、ボルトに螺合する雌ねじ部を有する第1接合部材と、第1接合部材と接する第2接合部材との少なくとも一方の接合面において、ボルトが挿通する部分に凹部を形成することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、レッチェルの影響円錐について記載されている。レッチェルの影響円錐の考え方によれば、ボルトの頭部と当接している部分の外縁上に位置する点から45°の角度で広がる円錐内の範囲に締結による応力が作用するとされている。
【0005】
また、特許文献3の図6には、ボルト穴が、基準穴部と、基準穴部からボルトの頭部側に向かって徐々に穴径が拡大するテーパ穴部とにより構成されることが記載されている。特許文献3の図7には、ボルト穴が、基準穴部と、基準穴部から雌ねじ側に向かって徐々に穴径が拡大するテーパ穴部とにより構成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-2828号公報
【特許文献2】特開2020-23948号公報
【特許文献3】特開2017-219052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ボルト締結構造において軽量化することが求められている。軽量化を目的として、ボルト径を小さくすることがある。しかしながら、ボルト径を小さくすることに合わせて、ボルト穴径を小さくしてしまうと、ボルト質量が小さくなったとしても、相手部材の質量が大きくなってしまう。従って、ボルト径を小さくしたとしても、ボルト締結構造全体の軽量化を図ることができない。
【0008】
特許文献3の図6図7に記載のボルト締結構造によれば、軽量化を図ることができると考えられるが、十分な締結力を発揮できているかが問題となる。また、さらなる軽量化を図るための改善の余地もある。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、十分な締結力を発揮しつつ、軽量化を図ることができるボルト締結構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、雄ねじが形成された軸部、および、前記軸部の直径よりも大きい直径を有する頭部を有するボルトと、
前記ボルトの前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成された螺合部と、
前記螺合部に一体または別体に形成され、前記雌ねじに接続された第一ボルト穴が形成された第一介在部と、
前記ボルトおよび前記第一介在部とは別体に形成され、前記頭部と前記第一介在部との間に挟まれて配置され、前記第一ボルト穴に接続された第二ボルト穴が形成された第二介在部と、
を備え、
前記第一ボルト穴は、前記雌ねじ側から前記頭部側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成された第一拡径穴を備え、
前記第二ボルト穴は、前記頭部側から前記雌ねじ側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成される第二拡径穴を備える、ボルト締結構造にある。
【発明の効果】
【0011】
ボルトによる締結によって、第一介在部および第二介在部には、軸方向の圧縮力が発生する。特に、雄ねじと雌ねじとが螺合している部分、および、ボルトの頭部のうち第二介在部側に接触している部分が、それぞれ圧縮力の起点となる。レッチェルの影響円錐の考え方によれば、第一介在部においては、雄ねじと雌ねじとが螺合している部分付近を起点として、45°の角度で拡径した円錐内の範囲に、締結による圧縮応力が作用すると考えられる。一方、第二介在部においては、ボルトの頭部のうち第二介在部側に接触している部分付近を起点として、45°の角度で拡径した円錐内の範囲に、締結による圧縮応力が作用すると考えられる。
【0012】
そこで、上記態様のように、雌ねじ側に位置する第一介在部における第一ボルト穴の第一拡径穴は、雌ねじ側から頭部側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成し、ボルトの頭部側に位置する第二介在部における第二ボルト穴の第二拡径穴は、頭部側から雌ねじ側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成している。
【0013】
このように、第一ボルト穴および第二ボルト穴のそれぞれをレッチェルの影響円錐を考慮した形状とすることによって、第一介在部および第二介在部に締結による十分な圧縮応力が作用するようにできる。結果として、十分な締結力を発揮することができる。さらに、第一ボルト穴は第一拡径穴を有し、第二ボルト穴は第二拡径穴を有することで、軽量化を図ることができる。
【0014】
以上のごとく、上記態様によれば、十分な締結力を発揮しつつ、軽量化を図ることができるボルト締結構造を提供することができる。
【0015】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1における、ボルト締結構造を示す軸方向断面図。
図2図1の雌ねじ一体部材(螺合部および第一介在部を含む)を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるIIb-IIb断面図。
図3図1の第二介在部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるIIIb-IIIb断面図。
図4】応力解析条件を説明する図。
図5】応力解析結果を示す図。
図6】実施形態2における、ボルト締結構造を示す軸方向断面図。
図7】実施形態3における、ボルト締結構造を示す軸方向断面図。
図8】実施形態4における、ボルト締結構造を示す軸方向断面図。
図9】実施形態5における、ボルト締結構造を示す軸方向断面図。
図10】実施形態6における、ボルト締結構造を示す軸方向断面図。
図11図10におけるXI-XI断面図。
図12図10の第二介在部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるXIIb-XIIb断面図、(b)は(a)におけるXIIc-XIIc断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ボルト締結構造は、ボルトと、螺合部と、第一介在部と、第二介在部と、を備え、第一ボルト穴は、雌ねじ側から頭部側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成された第一拡径穴を備え、第二ボルト穴は、頭部側から雌ねじ側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成される第二拡径穴を備える。
【0018】
ボルト締結構造において、第一拡径穴の最大穴径および第二拡径穴の最大穴径は、ボルトの頭部のうち第二介在部側に接触している部分の外縁の直径よりも大きく形成されるようにしても良い。これにより、より軽量化を図ることができる。
【0019】
また、第一拡径穴は、雄ねじと雌ねじとが螺合している部分のうちの頭部側の端から、頭部側に向かって45°の角度で拡径した第一仮想線よりも径方向内側に形成され、第二拡径穴は、頭部のうち第二介在部側に接触している部分の外縁から、雌ねじ側に向かって45°の角度で拡径した第二仮想線よりも径方向内側に形成されるようにしても良い。つまり、第一ボルト穴および第二ボルト穴のそれぞれが、レッチェルの影響円錐よりも径方向内側に位置することにより、第一介在部および第二介在部に締結による十分な圧縮応力が作用するようにできる。その結果、十分な締結力を発揮することができる。
【0020】
また、第一拡径穴および第二拡径穴は、テーパ状に形成されるようにしても良い。第一拡径穴および第二拡径穴は、テーパ状の他に、以下のようにしても良い。第一として、第一拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度が雌ねじ側から頭部側に向かって徐々に小さくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成され、第二拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度が頭部側から雌ねじ側に向かって徐々に小さくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成されるようにしても良い。
【0021】
第二として、第一拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度が雌ねじ側から頭部側に向かって徐々に大きくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成され、第二拡径穴は、中心軸線に対する傾斜角度が頭部側から雌ねじ側に向かって徐々に大きくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成されるようにしても良い。
【0022】
また、第一介在部の頭部側の面と第二介在部の雌ねじ側の面とは、接触し、第一拡径穴の最大穴径となる開口部、および、第二拡径穴の最大穴径となる開口部は、第一介在部と第二介在部との接触面上に位置し、第一拡径穴は、第一介在部における第二介在部との接触面のうち内縁部分に生じる応力が第一介在部の降伏応力未満となるように形成され、第二拡径穴は、第二介在部における第一介在部との接触面のうち内縁部分に生じる応力が第二介在部の降伏応力未満となるように形成されるようにしても良い。これにより、ボルト締結構造としての耐久性を確保することができる。
【0023】
また、第一拡径穴は、第一ボルト穴の半分以上の軸方向長さを有し、第二拡径穴は、第二ボルト穴の半分以上の軸方向長さを有するようにしても良い。これにより、確実に軽量化を図ることができる。
【0024】
(実施形態1)
1.ボルト締結構造1の構成
実施形態1におけるボルト締結構造1について、図1図3を参照して説明する。ボルト締結構造1は、ボルト10を用いて、複数の部材を締結する構造である。締結する複数の部材の厚みは、例えば、3mm以上、好ましくは5mm以上の板材である。ボルト10のねじ径(呼び径)は、例えば、10mm~14mmを適用する。ただし、締結する複数の部材の厚み、および、ボルト10のねじ径は、上記に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態におけるボルト締結構造1は、図1に示すように、ボルト10、螺合部20、第一介在部30、および、第二介在部40を備える。螺合部20と第一介在部30とは、一体に形成された雌ねじ一体部材50を構成する。つまり、ボルト締結構造1は、ボルト10を用いて、螺合部20と第一介在部30とにより構成された雌ねじ一体部材50と、第二介在部40により構成される部材とを締結する。
【0026】
ボルト10は、図1に示すように、雄ねじ11aが形成された軸部11、および、軸部11の直径よりも大きい直径を有する頭部12を有する。軸部11の雄ねじ11aは、図1に示すように、軸部11の先端側のみに形成されるようにしても良いし、図示しないが軸部11の全長に亘って形成されるようにしても良い。
【0027】
図1においては、ボルト10は、フランジ付きボルトを例にあげる。この場合、頭部12は、フランジ付き頭部を示し、六角頭部を構成する。つまり、頭部12は、頭部本体12aとフランジ部12bとを備える。ただし、頭部12は、フランジを有さない頭部としても良いし、六角形以外の形状としても良いし、穴付頭部を構成しても良い。本実施形態においては、頭部12のフランジ部12bの直径が、軸部11の直径よりも大きい。また、頭部12の頭部本体12aの二面幅(頭部本体12aの内接円の直径)が、軸部11の直径よりも大きい。
【0028】
また、ボルト10は、植込みボルトとナットとによる構成とすることもできる。この場合、ボルト10の軸部11は、植込みボルトの部分に相当し、ボルト10の頭部12は、ナットの部分に相当する。この場合のナットは、フランジ付きナットとしても良いし、フランジ無しナットとしても良い。
【0029】
螺合部20には、図1および図2に示すように、少なくとも、ボルト10の雄ねじ11aに螺合する雌ねじ21が形成されている。本実施形態においては、螺合部20は、ボルト10により締結される複数の部材のうちの1つを構成する。本実施形態においては、螺合部20に形成される雌ねじ21は、穴底を有する止まり穴を構成する。
【0030】
本実施形態においては、螺合部20は、雌ねじ21の開口に連続するボルト導入穴22を備える。ただし、螺合部20は、ボルト導入穴22を備えない構成としても良い。ボルト導入穴22は、雌ねじ21の開口を起点として、ボルト10の頭部12側に向かって拡径する。ボルト導入穴22は、雄ねじ11aと雌ねじ21とが螺合している部分のうちの頭部12側の端P1から、頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第一仮想線L1よりも径方向内側に形成されている。
【0031】
第一介在部30は、図1および図2に示すように、螺合部20に一体に形成されている。従って、第一介在部30は、螺合部20と同様に、ボルト10により締結される複数の部材のうちの1つを構成する。本実施形態においては、螺合部20と第一介在部30との境界は、ボルト導入穴22の開口の輪郭線を含む面とする。ただし、螺合部20と第一介在部30との境界は、雌ねじ21の開口の輪郭線を含む面としても良い。
【0032】
第一介在部30は、螺合部20の雌ねじ21に接続され、ボルト10の軸部11が挿通可能な第一ボルト穴31が形成されている。第一ボルト穴31は、螺合部20側から順に、円筒基準穴31a、第一拡径穴31bを備える。
【0033】
円筒基準穴31aは、ボルト導入穴22に連続して形成される部位であって、円筒内周面形状に形成されている。つまり、円筒基準穴31aは、第一ボルト穴31において雌ねじ21側の端部を構成する。円筒基準穴31aの内径は、螺合部20の雌ねじ21の内径よりも大きく形成される。円筒基準穴31aの内径は、例えば、JIS B 1001-1985(ISO 237-1979)に規定されているボルト10の呼び径に応じたボルト穴径としても良い。また、円筒基準穴31aの内径は、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分、すなわちフランジ部12bの直径よりも小さく形成されている。
【0034】
ここで、ボルト導入穴22は、雌ねじ21にボルト10の軸部11を挿入するために適した傾斜角度(テーパ角度)に形成される。そして、ボルト導入穴22を所望の傾斜角度に形成するために、円筒基準穴31aを設けることは効果的である。円筒基準穴31aは、例えば、ボルト10のねじ径が10~14mmの場合には、1~2mmとすると良い。特に、ボルト導入穴22の傾斜角度が、後述する第一拡径穴31bの傾斜角度θAと異なる場合には、円筒基準穴31aを形成することが好ましい。ただし、円筒基準穴31aは形成されなくても良い。つまり、第一介在部30は、少なくとも第一拡径穴31bを備えていればよく、円筒基準穴31aを備えない構成としても良い。
【0035】
第一拡径穴31bは、円筒基準穴31aに連続して形成される部位である。第一拡径穴31bは、螺合部20の雌ねじ21側からボルト10の頭部12側に向かって、穴径が徐々に拡径するように形成されている。さらに、第一拡径穴31bは、周方向全周に亘って、穴径が徐々に拡径するように形成されている。
【0036】
本実施形態においては、第一拡径穴31bは、第一ボルト穴31において雌ねじ21とは反対側の端部を構成する。つまり、第一ボルト穴31のうちボルト10の頭部12側の開口は、第一拡径穴31bの最大穴径φAとなる開口部により構成される。ただし、図示しないが、第一ボルト穴31は、第一拡径穴31bの最大穴径φAの部分から、例えば、円筒穴が連続して形成されるようにしても良い。
【0037】
上述したように、例えば、ボルト10のねじ径が10~14mmの場合には、円筒基準穴31aは1~2mmとすると良い。この場合に、第一ボルト穴31の軸方向長さを5mmとすると、第一拡径穴31bは、3~4mmの範囲となる。このように、第一拡径穴31bは、第一ボルト穴31の半分以上の軸方向長さを有する。例えば、第一ボルト穴31の軸方向長さが5mmの場合には、第一拡径穴31bの軸方向長さは2.5mm以上となる。このことは、他のねじ径においても同様である。なお、円筒基準穴31aが形成されない場合には、第一拡径穴31bは、第一ボルト穴31の全てを構成することになる。
【0038】
さらに、図2に示すように、第一拡径穴31bは、テーパ状に形成されている。本実施形態においては、第一拡径穴31bは、中心軸線に対する傾斜角度θAが一定となるテーパ状に形成されている。つまり、第一拡径穴31bにおいて、中心軸線に直交する断面形状が同心円となる。従って、第一拡径穴31bは、逆円錐状に形成されている。また、第一拡径穴31bの傾斜角度θAは、例えば、5°~40°の範囲、好ましくは10°~30°の範囲である。特に、第一介在部30の板厚が薄い場合、相対的にボルト10の強度が高く軸力が大きい場合、または、相対的に第一介在部30の強度が低い場合には、10°~20°の範囲が好適である。
【0039】
ここで、本実施形態においては、第一拡径穴31bが逆円錐状であるため、第一拡径穴31bにおいて中心軸線に直交する断面形状の中心点を結ぶ線が、直線状となる。ただし、第一拡径穴31bにおいて中心軸線に直交する断面形状の中心点を結ぶ線が、直線状でなくても良い。また、第一拡径穴31bの傾斜角度θAは、周方向位置に応じて異なるようにしても良い。この場合、第一拡径穴31bにおいて、中心軸線に直交する断面形状が円ではない形状となる。
【0040】
さらに、第一拡径穴31bは、雄ねじ11aと雌ねじ21とが螺合している部分のうちの頭部12側の端P1から、頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第一仮想線L1よりも径方向内側に形成されている。なお、本実施形態においては、第一拡径穴31bのみならず、第一ボルト穴31全体が、第一仮想線L1よりも径方向内側に形成されている。
【0041】
また、図1に示すように、第一拡径穴31bの最大穴径φAは、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分よりも大きく形成されている。詳細には、第一拡径穴31bの最大穴径φAは、ボルト10の頭部12の頭部本体12aの内接円直径よりも大きく形成されている。さらには、第一拡径穴31bの最大穴径φAは、ボルト10の頭部12のフランジ部12bの直径よりも大きく形成されている。
【0042】
また、図1においては、第一拡径穴31bの穴径は、連続的に徐々に拡径しているが、断続的に徐々に拡径するようにしても良い。第一拡径穴31bの穴径が断続的に徐々に拡径する場合には、第一拡径穴31bは階段状に形成されることになる。
【0043】
なお、円筒基準穴31aが形成されない場合には、第一拡径穴31bは、ボルト導入穴22に連続して形成される部位となる。また、円筒基準穴31aおよびボルト導入穴22が形成されず、第一拡径穴31bが、雌ねじ21の開口から形成されるようにしても良い。
【0044】
第二介在部40は、図1および図3に示すように、ボルト10および第一介在部30とは別体に形成され、ボルト10の頭部12と第一介在部30との間に挟まれて配置される。従って、第二介在部40は、ボルト10により締結される複数の部材のうちの他の1つを構成する。
【0045】
第二介在部40は、第一ボルト穴31に接続され、かつ、ボルト10の軸部11が挿通可能な第二ボルト穴41が形成されている。従って、第二介在部40の一方側の面(図1の上側の面)は、ボルト10の頭部12が接触する面を構成する。一方、第二介在部40の他方側の面(図1の下側の面)は、第一介在部30と接触する面を構成する。従って、第一介在部30の頭部12側の面(図1の上側の面)と第二介在部40の雌ねじ21側の面(図1の下側の面)とは接触する。
【0046】
第二ボルト穴41は、ボルト10の頭部12側から順に、円筒基準穴41a、第二拡径穴41bを備える。円筒基準穴41aは、円筒内周面形状に形成されており、第二ボルト穴41において頭部12側の端部を構成する。円筒基準穴31aの内径は、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分、すなわちフランジ部12bの直径よりも小さく形成されている。円筒基準穴41aの内径は、例えば、JIS B 1001-1985(ISO 237-1979)に規定されているボルト10の呼び径に応じたボルト穴径としても良い。
【0047】
ここで、円筒基準穴41aを形成しない場合には、第二拡径穴41bの鋭角部分が第二ボルト穴41の開口を構成することになる。円筒基準穴41aを設けることにより、第二ボルト穴41の開口が鋭角状になることを防止することができる。円筒基準穴41aは、例えば、ボルト10のねじ径が10~14mmの場合には、1~2mmとすると良い。ただし、第二拡径穴41bの傾斜角度θB(後述する)が小さい場合には、円筒基準穴41aが形成されなくても良い。つまり、第二介在部40は、少なくとも第二拡径穴41bを備えていればよく、円筒基準穴41aを備えない構成としても良い。
【0048】
第二拡径穴41bは、円筒基準穴41aに連続して形成される部位である。第二拡径穴41bは、ボルト10の頭部12側から螺合部20の雌ねじ21側に向かって、穴径が徐々に拡径するように形成されている。さらに、第二拡径穴41bは、周方向全周に亘って、穴径が徐々に拡径するように形成されている。
【0049】
本実施形態においては、第二拡径穴41bは、第二ボルト穴41において雌ねじ21側の端部を構成する。つまり、第二ボルト穴41のうち雌ねじ21側の開口は、第二拡径穴41bの最大穴径φBとなる開口部により構成される。ただし、図示しないが、第二ボルト穴41は、第二拡径穴41bの最大穴径φBの部分から、例えば、円筒穴が連続して形成されるようにしても良い。
【0050】
上述したように、例えば、ボルト10のねじ径が10~14mmの場合には、円筒基準穴31aは1~2mmとすると良い。この場合に、第二ボルト穴41の軸方向長さを5mmとすると、第二拡径穴41bは、3~4mmの範囲となる。このように、第二拡径穴41bは、第二ボルト穴41の半分以上の軸方向長さを有する。例えば、第二ボルト穴41の軸方向長さが5mmの場合には、第二拡径穴41bの軸方向長さは2.5mm以上となる。このことは、他のねじ径においても同様である。なお、円筒基準穴41aが形成されない場合には、第二拡径穴41bは、第二ボルト穴41の全てを構成することになる。
【0051】
さらに、図3に示すように、第二拡径穴41bは、テーパ状に形成されている。本実施形態においては、第二拡径穴41bは、中心軸線に対する傾斜角度θBが一定となるテーパ状に形成されている。つまり、第二拡径穴41bにおいて、中心軸線に直交する断面形状が同心円となる。従って、第二拡径穴41bは、円錐状に形成されている。また、第二拡径穴41bの傾斜角度θBは、例えば、5°~40°の範囲、好ましくは10°~30°の範囲である。特に、第二介在部40の板厚が薄い場合、相対的にボルト10の強度が高く軸力が大きい場合、または、相対的に第二介在部40の強度が低い場合には、10°~20°の範囲が好適である。
【0052】
ここで、本実施形態においては、第二拡径穴41bが円錐状であるため、第二拡径穴41bにおいて中心軸線に直交する断面形状の中心点を結ぶ線が、直線状となる。ただし、第二拡径穴41bにおいて中心軸線に直交する断面形状の中心点を結ぶ線が、直線状でなくても良い。また、第二拡径穴41bの傾斜角度θBは、周方向位置に応じて異なるようにしても良い。この場合、第二拡径穴41bにおいて、中心軸線に直交する断面形状が円ではない形状となる。
【0053】
さらに、第二拡径穴41bは、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分の外縁である点P2から、雌ねじ21側に向かって45°の角度で拡径した第二仮想線L2よりも径方向内側に形成されている。本実施形態においては、第二拡径穴41bのみならず、第二ボルト穴41全体が、第二仮想線L2よりも径方向内側に形成されている。
【0054】
さらには、本実施形態においては、第二拡径穴41bは、ボルト10の頭部12の頭部本体12aの内接円部分(二面幅に対応する部分)の延長線と、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分との交点である点P3から、雌ねじ21側に向かって45°の角度で拡径した第三仮想線L3よりも径方向内側に形成されている。本実施形態においては、第二拡径穴41bのみならず、第二ボルト穴41全体が、第三仮想線L3よりも径方向内側に形成されている。
【0055】
また、図1に示すように、第二拡径穴41bの最大穴径φBは、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分よりも大きく形成されている。詳細には、第二拡径穴41bの最大穴径φBは、ボルト10の頭部12の頭部本体12aの内接円直径よりも大きく形成されている。さらには、第二拡径穴41bの最大穴径φBは、ボルト10の頭部12のフランジ部12bの直径よりも大きく形成されている。
【0056】
また、本実施形態においては、第二拡径穴41bの最大穴径はφB、第一拡径穴31bの最大穴径φAと同一となるように形成されている。ただし、第一拡径穴31bの最大穴径φAと第二拡径穴41bの最大穴径φBとは、僅かに異なるようにしても良い。また、図1においては、第二拡径穴41bの穴径は、連続的に徐々に拡径しているが、断続的に徐々に拡径するようにしても良い。第二拡径穴41bの穴径が断続的に徐々に拡径する場合には、第二拡径穴41bは階段状に形成されることになる。
【0057】
図1に示すように、第一介在部30の頭部12側の面(図1の下側の面)と第二介在部40の雌ねじ21側の面(図1の下側の面)とが、接触する。そして、第一拡径穴31bの最大穴径φAとなる開口部、および、第二拡径穴41bの最大穴径φBとなる開口部は、第一介在部30と第二介在部40との接触面上に位置する。第一ボルト穴31と第二ボルト穴41とが同心状に位置する場合には、第一ボルト穴31の最大穴径φAとなる開口部と第二ボルト穴41の最大穴径φBとなる開口部とが一致する状態となる。
【0058】
さらに、第一介在部30と第二介在部40との接触面に生じる応力に着目する。まずは、第一介在部30に着目する。第一拡径穴31bは、第一介在部30における第二介在部40との接触面のうち第一仮想線L1よりも内側の領域に生じる平均応力が第一介在部30の降伏応力未満となるように形成されている。ここで、第一介在部30における第二介在部40との接触面において、最も内側に位置する部位、すなわち、当該接触面のうち内縁部分に生じる応力が最も大きくなる。そこで、より好ましくは、第一拡径穴31bは、第一介在部30における第二介在部40との接触面のうち内縁部分(最も内側部分)に生じる応力が第一介在部30の降伏応力未満となるように形成されている。
【0059】
次に、第二介在部40に着目する。第二拡径穴41bは、第二介在部40における第一介在部30との接触面のうち第二仮想線L2または第三仮想線L3よりも内側の領域に生じる平均応力が第二介在部40の降伏応力未満となるように形成されている。ここで、第二介在部40における第一介在部30との接触面において、最も内側に位置する部位、すなわち、当該接触面のうち内縁部分に生じる応力が最も大きくなる。そこで、より好ましくは、第二拡径穴41bは、第二介在部40における第一介在部30との接触面のうち内縁部分(最も内側部分)に生じる応力が第二介在部40の降伏応力未満となるように形成されている。
【0060】
このように、第一介在部30および第二介在部40に生じる平均応力を降伏応力未満とすることで、ボルト締結構造1としての耐久性を確保することができる。特に、第一介在部30および第二介在部40に生じる最大応力を降伏応力未満とすることで、ボルト締結構造1としての耐久性をより十分に確保することができる。
【0061】
2.ボルト締結構造1の解析
ボルト締結構造1に関する解析について、図4および図5を参照して説明する。解析は、本実施形態に対応する図4(a)に示す解析モデルと、比較例としての図4(b)に示す解析モデルとについて行った。図5(a)(b)に解析結果を示す。
【0062】
本実施形態に対応する図4(a)に示す解析モデルは、ボルト10と第二介在部40とを含み、ボルト10の軸方向断面における平面モデルである。ただし、ボルト10の軸方向断面は、ボルト10の中心線を基準に線対称であるため、対象とする平面モデルは、ボルト10の中心線から一方の部分のみとする。
【0063】
本実施形態に対応する図4(a)に示す解析モデルは、第二介在部40(図4中の四角形の部材)の第二拡径穴41bの傾斜角度θBが15°である場合とする。また、第二介在部40の下面、すなわち第一介在部30と接触する面を拘束する。つまり、第二介在部40は、第一介在部30に対して固定支持とする。さらに、ボルト10と第二介在部40との接触条件を付与する。この状態において、ボルト10の先端(図4の下端)となる線に対して所定荷重を下方に向けて付与したとき、第二介在部40の下面に生じる応力を取得する。なお、ボルト10に付与する所定荷重は、ボルト10を締結する際に付与されるトルクに基づいて算出される値である。本解析においては、第二介在部40の材質はS45Cとし、ボルト10に付与する所定荷重は8388Nとする。また、比較例としての図4(b)に示す解析モデルは、第二介在部40に対応する部材のボルト穴が円筒形状であること以外は、本実施形態に対応する図4(a)に示す解析モデルと同様に行った。
【0064】
本実施形態に対応する図4(a)の解析モデルの場合には、図5(a)に示すように、第二介在部40の下面に生じる応力は、-18.9MPa~+1.3MPaの範囲となった。ここで、応力において、マイナス値は、圧縮応力を示し、プラス値は、引張応力を示す。一方、比較例としての図5(b)に示す解析モデルの場合には、第二介在部40に相当する部材の下面に生じる応力は、-7.8MPa~+0.8MPaの範囲となった。
【0065】
本実施形態および比較例のいずれも、第二介在部40の下面に生じる圧縮応力において、第二拡径穴41b側に生じる圧縮応力が最も大きくなる。また、比較例に比べて、本実施形態においては、第二介在部40の下面に生じる圧縮応力が大きくなる。ここで、S45Cの降伏応力は、約400MPaである。従って、本実施形態において、第二介在部40の下面に生じる圧縮応力は、降伏応力に対して十分に小さい。このことから、本実施形態において、第二介在部40に生じる応力は十分に小さく、本実施形態におけるボルト締結構造1は十分な耐久性を確保することができる。
【0066】
3.作用効果
本実施形態におけるボルト締結構造1によれば、ボルト10による締結によって、第一介在部30および第二介在部40には、軸方向の圧縮力が発生する。特に、雄ねじ11aと雌ねじ21とが螺合している部分、および、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分が、それぞれ圧縮力の起点となる。レッチェルの影響円錐の考え方によれば、第一介在部30においては、雄ねじ11aと雌ねじ21とが螺合している部分付近(点P1)を起点として、45°の角度で拡径した円錐内の範囲に、締結による圧縮応力が作用すると考えられる。一方、第二介在部40においては、ボルト10の頭部12のうち第二介在部40側に接触している部分付近(点P2または点P3)を起点として、45°の角度で拡径した円錐内の範囲に、締結による圧縮応力が作用すると考えられる。
【0067】
本実施形態においては、雌ねじ21側に位置する第一介在部30における第一ボルト穴31の第一拡径穴31bは、雌ねじ21側から頭部12側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成し、ボルト10の頭部12側に位置する第二介在部40における第二ボルト穴41の第二拡径穴41bは、頭部12側から雌ねじ21側に向かって穴径が徐々に拡径するように形成している。
【0068】
このように、第一ボルト穴31および第二ボルト穴41のそれぞれをレッチェルの影響円錐を考慮した形状とすることによって、第一介在部30および第二介在部40に締結による十分な圧縮応力が作用するようにできる。結果として、十分な締結力を発揮することができる。さらに、第一ボルト穴31は第一拡径穴31bを有し、第二ボルト穴41は第二拡径穴41bを有することで、軽量化を図ることができる。従って、本実施形態におけるボルト締結構造1によれば、十分な締結力を発揮しつつ、軽量化を図ることができる。
【0069】
(実施形態1の変形態様)
実施形態1におけるボルト締結構造1においては、ボルト10の頭部12が第二介在部40に直接接触する構成とした。この他に、ボルト10の頭部12と第二介在部40との間に、座金を介在する構成とすることもできる。この場合、第二仮想線L2の起点となる点P2は、ボルト10の頭部12のうち座金に接触している部分の外縁となる。同様に、第三仮想線L3の起点となる点P3は、ボルト10の頭部12の頭部本体12aの内接円部分(二面幅に対応する部分)の延長線と、ボルト10の頭部12のうち座金に接触している部分との交点となる。
【0070】
(実施形態2)
実施形態2におけるボルト締結構造2について、図6を参照して説明する。なお、実施形態2において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0071】
図6に示すように、本実施形態におけるボルト締結構造2は、実施形態1におけるボルト締結構造1に対して、第一介在部30の第一拡径穴131bおよび第二介在部40の第二拡径穴141bが異なる。他の構成は、同様である。
【0072】
第一拡径穴131bは、中心軸線に対する傾斜角度θAが雌ねじ21側から頭部12側に向かって徐々に小さくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成されている。第二拡径穴141bは、中心軸線に対する傾斜角度θBが頭部12側から雌ねじ21側に向かって徐々に小さくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成されている。
【0073】
本実施形態においては、第一拡径穴131bの最大穴径φA(図2に対応する部分を示す)と第二拡径穴141bの最大穴径φB(図3に対応する部分を示す)とは同一となるように形成されている。ただし、第一拡径穴131bの最大穴径φAと第二拡径穴141bの最大穴径φBとは、僅かに異なるようにしても良い。第一ボルト穴31と第二ボルト穴41とが同心状に位置する場合には、第一ボルト穴31の最大穴径φAとなる開口部と第二ボルト穴41の最大穴径φBとなる開口部とが一致する状態となる。さらに、第一ボルト穴31の第一拡径穴131bと第二ボルト穴41の第二拡径穴141bとが、連続した面を構成するようにしても良い。
【0074】
本実施形態におけるボルト締結構造2は、実施形態1におけるボルト締結構造1と同様の効果を奏する。
【0075】
(実施形態3)
実施形態3におけるボルト締結構造3について、図7を参照して説明する。なお、実施形態3において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0076】
図7に示すように、本実施形態におけるボルト締結構造3は、実施形態1におけるボルト締結構造1に対して、第一介在部30の第一拡径穴231bおよび第二介在部40の第二拡径穴241bが異なる。他の構成は、同様である。
【0077】
第一拡径穴231bは、中心軸線に対する傾斜角度θAが雌ねじ21側から頭部12側に向かって徐々に大きくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成されている。第二拡径穴241bは、中心軸線に対する傾斜角度θBが頭部12側から雌ねじ21側に向かって徐々に大きくなるように、軸方向断面において湾曲した形状に形成されている。
【0078】
本実施形態においては、第一拡径穴231bの最大穴径φA(図2に対応する部分を示す)と第二拡径穴241bの最大穴径φB(図3に対応する部分を示す)とは同一となるように形成されている。ただし、第一拡径穴231bの最大穴径φAと第二拡径穴241bの最大穴径φBとは、僅かに異なるようにしても良い。第一ボルト穴31と第二ボルト穴41とが同心状に位置する場合には、第一ボルト穴31の最大穴径φAとなる開口部と第二ボルト穴41の最大穴径φBとなる開口部とが一致する状態となる。
【0079】
本実施形態におけるボルト締結構造3は、実施形態1におけるボルト締結構造1と同様の効果を奏する。
【0080】
(実施形態4)
実施形態4におけるボルト締結構造4について、図8を参照して説明する。なお、実施形態4において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0081】
図8に示すように、本実施形態におけるボルト締結構造4は、実施形態1におけるボルト締結構造1に対して、第一介在部330が螺合部320に対して別体に形成されている点、螺合部320がボルト導入穴22に連通する円筒穴323を有する点が異なる。他の構成は、同様である。
【0082】
第一介在部330と螺合部320とが別体に形成されているため、ボルト10の頭部12と螺合部320との間に、第一介在部330と第二介在部40とが重ねられた状態で挟まれている。
【0083】
第一介在部330の第一拡径穴31bは、実施形態1と同様に、雄ねじ11aと雌ねじ21とが螺合している部分のうちの頭部12側の端P1から、頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第一仮想線L1よりも径方向内側に形成されている。
【0084】
さらに、第一介在部330の第一拡径穴31bは、第一介在部330の第一ボルト穴31における螺合部320側の端P4から、頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第四仮想線L4よりも径方向内側に形成されている。なお、本実施形態においては、第一拡径穴31bのみならず、第一ボルト穴31全体が、第四仮想線L4よりも径方向内側に形成されている。
【0085】
また、螺合部320は、少なくとも雌ねじ21を備えていれば良く、ボルト導入穴22および円筒穴323は備えない構成としても良い。
【0086】
本実施形態におけるボルト締結構造4は、実施形態1におけるボルト締結構造1と同様の効果を奏する。
【0087】
(実施形態5)
実施形態5におけるボルト締結構造5について、図9を参照して説明する。なお、実施形態5において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0088】
本実施形態におけるボルト締結構造5は、図9に示すように、ボルト10、ナットである螺合部420、第一介在部330、および、第二介在部40を備える。ナットである螺合部420は、フランジ付きナットを例にあげる。螺合部420は、螺合部本体420aと、フランジ部420bとを備える。螺合部本体420aの外周は、六角形に形成されている。螺合部本体420aは、内周面に、雌ねじ21を備える。また、ナットである螺合部420は、フランジ部420bを備えない、フランジ無しナットとしても良い。
【0089】
第一介在部330の第一拡径穴31bは、実施形態4と同様に、雄ねじ11aと雌ねじ21とが螺合している部分のうちの頭部12側の端P1から、頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第一仮想線L1よりも径方向内側に形成されている。
【0090】
さらに、第一介在部330の第一拡径穴31bは、ナットである螺合部420のうち第一介在部330側に接触している部分の外縁である点P5から、ボルト10の頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第五仮想線L5よりも径方向内側に形成されている。本実施形態においては、第一拡径穴31bのみならず、第一ボルト穴31全体が、第五仮想線L5よりも径方向内側に形成されている。
【0091】
さらには、第一介在部330の第一拡径穴31bは、ナットである螺合部420の螺合部本体420aの内接円部分(二面幅に対応する部分)の延長線と、螺合部420のうち第一介在部330側に接触している部分との交点である点P6から、ボルト10の頭部12側に向かって45°の角度で拡径した第六仮想線L6よりも径方向内側に形成されている。
【0092】
また、第一拡径穴31bの最大穴径φA(図2に対応する部分を示す)は、ナットである螺合部420のうち第一介在部330側に接触している部分よりも大きく形成されている。詳細には、第一拡径穴31bの最大穴径φAは、ナットである螺合部420の螺合部本体420aの内接円直径よりも大きく形成されている。さらには、第一拡径穴31bの最大穴径φAは、ナットである螺合部420のフランジ部420bの直径よりも大きく形成されている。
【0093】
また、第二拡径穴41bの最大穴径φB(図3に対応する部分を示す)は、ナットである螺合部420のうち第二介在部40側に接触している部分よりも大きく形成されている。詳細には、第二拡径穴41bの最大穴径φBは、ナットである螺合部420の螺合部本体420aの内接円直径よりも大きく形成されている。さらには、第二拡径穴41bの最大穴径φBは、ナットである螺合部420のフランジ部420bの直径よりも大きく形成されている。
【0094】
本実施形態におけるボルト締結構造5は、実施形態4におけるボルト締結構造4と同様の効果を奏する。
【0095】
(実施形態5の変形態様)
実施形態5におけるボルト締結構造5においては、ナットである螺合部420が第一介在部330に直接接触する構成とした。この他に、ナットである螺合部420と第一介在部330との間に、座金を介在する構成とすることもできる。この場合、第五仮想線L5の起点となる点P5は、ナットである螺合部420のうち座金側に接触している部分の外縁となる。同様に、第六仮想線L6の起点となる点P6は、ナットである螺合部420の螺合部本体420aの内接円部分(二面幅に対応する部分)の延長線と、ナットである螺合部420のうち座金側に接触している部分との交点となる。
【0096】
(実施形態6)
実施形態6におけるボルト締結構造5について、図10図12を参照して説明する。なお、実施形態6において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0097】
図10図12に示すように、本実施形態におけるボルト締結構造6は、実施形態1におけるボルト締結構造1に対して、第二介在部540が異なる。他の構成は同様である。
【0098】
第二介在部540の第二ボルト穴541は、図10図12に示すように、ボルト10の頭部12側から順に、長円基準穴541a、第二拡径穴41bを備える。長円基準穴541aは、ボルト10の軸部11を挿通した状態で、ボルト10と第二介在部540との相対位置を変更することができるように長円形に形成されている。長円基準穴541aの短幅は、実施形態1における円筒基準穴41aの内径と同一である。
【0099】
本実施形態におけるボルト締結構造6は、実施形態1におけるボルト締結構造1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0100】
1,2,3,4,5,6:ボルト締結構造、 10:ボルト、 11:軸部、 11a:雄ねじ、 12:頭部、 12a:頭部本体、 12b:フランジ部、 20,320,420:螺合部、 21:雌ねじ、 22:ボルト導入穴、 30,330:第一介在部、 31:第一ボルト穴、 31a:円筒基準穴、 31b,131b,231b:第一拡径穴、 40,540:第二介在部、 41,541:第二ボルト穴、 41a:円筒基準穴、 41b,141b,241b:第二拡径穴、 50:雌ねじ一体部材、 323:円筒穴、 420a:螺合部本体、 420b:フランジ部、 541a:長円基準穴、 L1:第一仮想線、 L2:第二仮想線、 L3:第三仮想線、 L4:第四仮想線、 L5:第五仮想線、 L6:第六仮想線、 P1:第一仮想線の起点、 P2:第二仮想線の起点、 P3:第三仮想線の起点、 P4:第四仮想線の起点、 P5:第五仮想線の起点、 P6:第六仮想線の起点、 θA:第一拡径穴の傾斜角度、 θB:第二拡径穴の傾斜角度、 φA:第一拡径穴の最大穴径、 φB:第二拡径穴の最大穴径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12