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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011487
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113629
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB14
5H641BB19
5H641GG03
5H641GG04
5H641GG08
5H641HH02
5H641HH05
5H641HH09
5H641JA02
(57)【要約】
【課題】推力の向上と製造コストの低減とを両立させ得る筒型リニアモータを提供する。
【解決手段】筒型リニアモータ1は、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備え、界磁Fは、環状であって軸方向に着磁されて界磁Fの軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石3a,3bと、環状であって軟磁性体で形成されるとともに永久磁石3a,3b間に介装されるヨーク2bとを備え、永久磁石3a,3bは、軸方向に切った断面が電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短い凸形となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の界磁と、
前記界磁の内周或いは外周に配置されて前記界磁に対して軸方向へ移動可能な電機子とを備え、
前記界磁は、
環状であって軸方向に着磁されて前記界磁の軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石と、
環状であって軟磁性体で形成されるとともに前記永久磁石間に介装されるヨークとを有し、
前記永久磁石は、軸方向に切った断面が電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短い凸形である
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
軟磁性体で形成されるとともに前記永久磁石の電機子側に嵌合する円筒部を有するスリーブを備え、
前記スリーブは、前記円筒部と一体に前記ヨークを有しており、
前記ヨークは、前記永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分間と反電機子側の軸方向長さが長い部分間との全体にわたり介装される
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項3】
軟磁性体で形成されるとともに前記永久磁石の電機子側に嵌合する円筒部を有するスリーブを備え、
前記スリーブは、前記円筒部と一体に前記ヨークを有しており、
前記ヨークは、前記永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分間に介装され、
前記ヨークの反電機子側であって前記永久磁石の反電機子側の軸方向長さが長い部分間に磁気的ギャップが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に筒型リニアモータは、N極とS極とが交互に現れるように複数の永久磁石を配して形成される円筒状の界磁と、界磁の内周側或いは外周側に対向して界磁の長手方向に移動可能な電機子とを備えて構成される。
【0003】
このような筒型リニアモータの推力を向上するには、界磁が電機子に作用させる磁界を大きくする必要があるが、磁界を大きくする一つの方法として永久磁石の配列をハルバッハ配列として電機子側へ多くの磁束を集中させる方法が取られている。
【0004】
このように界磁における永久磁石の配列をハルバッハ配列とすると、界磁の電機子側を向く面から少し離れた位置でのギャップ磁束密度分布の波形に含まれる三次および五次の成分を低減させ、当該波形が正弦波に近くなって当該波形の振幅が大きくなるため、筒型リニアモータの推力を向上させ得る(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
ところが、筒型リニアモータでは、界磁を円筒状に形成しなくてはならず、永久磁石の配列をハルバッハ配列とすると、着磁方向が径方向となる高価な永久磁石が必要となるため、製造コストが高くなってしまう。
【0006】
これに対して、軸方向に着磁される永久磁石を用いる筒型リニアモータでは、軸方向に着磁された環状の永久磁石を界磁の軸方向で着磁方向が交互となるように積層して界磁を構成すればよく、軸方向に着磁された安価な永久磁石を利用できるため製造コストを低減できる(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-24379号公報
【特許文献2】特許第6314833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、軸方向に着磁された環状の永久磁石を単に界磁の軸方向で着磁方向が交互となるように積層した筒型リニアモータは、電機子側へ磁束を集中させることができないため、安価ではあるが、ハルバッハ配列を採用した界磁を備える筒型リニアモータと比較すると推力が低下してしまう。
【0009】
他方、ハルバッハ配列を採用した界磁を備える筒型リニアモータでは、推力が大きくなる点で有利であるが、製造コストが嵩む問題がある。このように、従来の筒型リニアモータでは、推力を向上させようとすると高コストとなり、製造コストを安価にしようとすると推力が低下してしまうため、推力の向上とコストの低減を両立させるのが困難である。
【0010】
そこで、本発明は、推力の向上と製造コストの低減を両立し得る筒型リニアモータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、筒状の界磁と、界磁の内周或いは外周に配置されて界磁に対して軸方向へ移動可能な電機子とを備え、界磁は、環状であって軸方向に着磁されて界磁の軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石と、環状であって軟磁性体で形成されるとともに永久磁石間に介装されるヨークとを有し、永久磁石は、軸方向に切った断面が電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短い凸形である。
【0012】
このように構成された筒型リニアモータによれば、永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分と反電機子側の軸方向長さが長い部分の磁束が磁気的に通りやすいヨークを通って電機子側へ向かうようになってヨークと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子の外周におけるギャップ磁束密度分布の波形が正弦波に近くなる。そのため、電機子の外周におけるギャップ磁束密度分布の波形の振幅が大きくなって、スリーブの内周に収容される電機子へ作用させる磁界を大きくし得る。
【0013】
また、筒型リニアモータは、軟磁性体で形成されるとともに永久磁石の電機子側に嵌合する円筒部を有するスリーブを備え、スリーブは、円筒部と一体にヨークを有しており、ヨークは、永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分間と反電機子側の軸方向長さが長い部分間との全体にわたり介装されてもよい。
【0014】
このように構成された筒型リニアモータによれば、永久磁石がヨーク間に全体にわたって介装され、永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分と反電機子側の軸方向長さが長い部分における電機子側の面および軸方向の両側の端面とから出た磁束が磁気的に通りやすいヨークを通って電機子側へ向かうようになって、ヨークと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子の外周におけるギャップ磁束密度分布の波形がより一層正弦波に近くなる。そのため、このように構成された筒型リニアモータによれば、電機子の外周におけるギャップ磁束密度分布の波形の振幅がより一層大きくなって、スリーブの内周に収容される電機子へ作用させる磁界をより一層大きくし得る。
【0015】
さらに、筒型リニアモータは、軟磁性体で形成されるとともに永久磁石の電機子側に嵌合する円筒部を有するスリーブを備え、スリーブは、円筒部と一体にヨークを有しており、ヨークは、永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分間に介装され、ヨークの反電機子側であって永久磁石の反電機子側の軸方向長さが長い部分間に磁気的ギャップが設けられてもよい。
【0016】
このように構成された筒型リニアモータによれば、永久磁石の電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短く、永久磁石の反電機子側の軸方向長さが長い部分間であってヨークの反電機子側に磁気的ギャップが設けられているので、永久磁石の電機子側の軸方向長さが短い部分と反電機子側の軸方向長さが長い部分における電機子側の面および軸方向の両側の端面とから出た磁束が磁気的に通りやすいヨークを通って電機子側へ向かうようになってヨークと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子の外周におけるギャップ磁束密度分布の波形がより一層正弦波に近くなる。そのため、このように構成された筒型リニアモータによれば、電機子の外周におけるギャップ磁束密度分布の波形の振幅がより一層大きくなって、スリーブの内周に収容される電機子へ作用させる磁界をより一層大きくし得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筒型リニアモータによれば、推力の向上と製造コストの低減を両立し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
図2】一実施の形態の筒型リニアモータの界磁の拡大断面である。
図3】一実施の形態の第1変形例における筒型リニアモータの縦断面図である。
図4】一実施の形態の第2変形例における筒型リニアモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備えて構成されている。
【0020】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。本実施の形態では、界磁Fは、円筒状であって、環状であって軸方向に着磁されて界磁Fの軸方向となる図1中左右で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石3a,3bと、環状であって永久磁石3a,3b間に介装される軟磁性体で形成されたヨーク2bとを備えている。なお、各図中で永久磁石3a,3bに付された三角印は、着磁方向を示している。
【0021】
また、本実施の形態では、界磁Fは、円筒状であって外周に永久磁石3a,3bが装着されるスリーブ2を備えている。スリーブ2は、図1および図2に示すように、軟磁性体で形成されており、永久磁石3a,3bの内周に嵌合される円筒部2aと、円筒部2aの外周に周方向に沿うとともに軸方向に間隔を空けて設けられた複数の環状のヨーク2bと、円筒部2aのヨーク2b,2b間のそれぞれに周方向に沿う環状の空隙で形成された複数の環状溝2cとを備えている。
【0022】
本実施の形態では、スリーブ2は、1つの円筒状の軟磁性体の材料の外周に環状溝2cを設ける加工を行うことによって形成されており、円筒部2aと円筒部2aの外周にフランジ状に突出するヨーク2bとを一体不可分に備えている。また、図2に示すように、スリーブ2における環状溝2cの底部の軸方向の両端、つまり、円筒部2aの外周であってヨーク2bの軸方向の両側の根元部分には、フィレット加工が施してあり、ヨーク2bの根元から円筒部2aの外周にかけて湾曲面2dが形成されている。なお、各環状溝2cの軸方向幅は、本実施の形態では全て等しく、ヨーク2bの軸方向幅よりも長い。また、環状溝2cは、スリーブ2の外周に等間隔に設けられている。なお、本実施の形態では、スリーブ2の両端にもヨーク2bを設けているが、スリーブ2の両端の終端を環状溝2cとしてヨーク2bを両端に設けなくてもよい。また、本実施の形態では、スリーブ2が円筒部2aとヨーク2bとを一体に備えているが、円筒部2aとヨーク2bとが別部品で構成されてもよい。
【0023】
永久磁石3a,3bは、それぞれ、環状であって、軸方向に沿って切断した断面において、電機子側となる内周部3a1,3b1の軸方向長さが反電機子側となる外周部3a2,3b2の軸方向長さが長い凸形状の断面を備えている。各永久磁石3a,3bにおける軸方向長さが短い部分である内周部3a1,3b1の軸方向の中央と、軸方向長さが長い部分である外周部3a2,3b2の軸方向の中央とが軸方向で互いに一致しており、各永久磁石3a,3bの断面形状は、軸方向の中央を通る線を中心として線対称となる形状となっている。内周部3a1,3b1と外周部3a2,3b2との径方向の厚みは図示したところでは等しいが異なるように設計変更されてもよい。なお、スリーブ2の軸方向の両端のヨーク2bより端側に末端の永久磁石を設ける場合、末端の永久磁石は、たとえば、永久磁石3a,3bと同じ形状とされてもよいが、界磁Fの終端が階段状になるのを避けいたい場合、外周部3a2,3b2の一方側を径方向に切り落とした形状や永久磁石3a,3bを軸方向の中央で半分にした形状とすればよい。
【0024】
また、各永久磁石3a,3bは、円筒を周方向で複数に分割して得られた形状の磁石ピースを組み合わせることによって環状に形成されている。本実施の形態では、磁石ピースは、軸方向から見て半円筒形状となっていて、2つの磁石ピースの周方向の両端同士を向かい合わせて組み合わせることにより円筒状の永久磁石3a,3bを形成している。このように永久磁石3a,3bが周方向で分割された磁石ピースによって形成されているので、スリーブ2の外周に設けられた環状溝2cに無理なく容易に装着することができる。
【0025】
前述したところでは、永久磁石3a,3bは、複数の磁石ピースを組み合わせることによって環状に形成されているが、円筒部2aとヨーク2bとが別部品で構成されている場合、或いは、円筒部2aを設けない場合、永久磁石3a,3bを円筒状に組み合わされた複数の磁石ピースで形成するのではなく環状の1つの磁石で形成して、永久磁石3a,3bとヨーク2bと交互に積み重ねて界磁Fを組み立ててもよい。また、この場合、永久磁石3a,3bは、周方向に分割されることに代えて或いは周方向に分割されることに加えて、永久磁石3a,3bの軸方向長さが短い部分である内周部3a1,3b1と軸方向長さが長い部分である外周部3a2,3b2とに分割された磁石ピースを組み合わせることによって形成されてもよい。
【0026】
さらに、永久磁石3a,3bは、周方向で半分に分割された磁石ピースを円筒状に組み合わせて形成されるが、周方向で3分割以上に分割された磁石ピースで形成されてもよい。
【0027】
さらに、各永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周は面取りされて傾斜面3a11,3b11が設けられている。また、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1における軸方向長さは、環状溝2cの軸方向長さとほぼ同じであるが僅かに小さく、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1を環状溝2c内に嵌合可能となっている。
【0028】
さらに、永久磁石3a,3bの着磁方向は、軸方向に着磁されており、軸方向の一端がN極となっており、軸方向の他端がS極となっている。永久磁石3a,3bのS極とN極の配置は互いに逆向きとなっており、スリーブ2の環状溝2cに交互に設置される。このように永久磁石3a,3bが界磁Fの軸方向で着磁方向が交互となるように配置される。
【0029】
このように構成された永久磁石3a,3bをスリーブ2の環状溝2c内に交互に装着すると、隣り合う永久磁石3aの内周部3a1と永久磁石3bの内周部3b1とがヨーク2bを挟んでN極同士とS極同士とを対向させるとともに、永久磁石3aにおける外周部3a2と永久磁石3bにおける外周部3b2とが互いに端面同士を僅かな隙間を空けて対向させる。なお、永久磁石3a,3bにおける外周部3a2,3b2の軸方向長さは、内周部3a1,3b1をスリーブ2における環状溝2c内に収容すると、外周部3a2,3b2同士の軸方向端面同士が丁度接触するようにしてもよいが、僅かに隙間を空けて対向するように設定すると、当該隙間によって永久磁石3a,3bの寸法誤差が吸収されるので、永久磁石3a,3bのスリーブ2への組付が容易となる点で有利である。
【0030】
本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3aの軸方向中央からヨーク2bを含んで隣の永久磁石3bの軸方向中央まで1つの磁極を形成しており、N極同士を向かい合わせにしている永久磁石3a,3bのN極とN極同士で挟まれたヨーク2bとが1つのN極として機能し、S極同士を向かい合わせにしている永久磁石3a,3bのS極とS極同士で挟まれたヨーク2bとが1つのS極として機能する。
【0031】
このように構成された界磁Fでは、永久磁石3a,3bの電機子側となる内周部3a1,3b1の軸方向長さが反電機子側となる外周部3a2,3b2の軸方向長さよりも短く、内周部3a1,3b1および外周部3a2,3b2の磁束が磁気的に通りやすいヨーク2bを通って電機子側へ向かうようになってヨーク2bと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、単に、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形が正弦波に近くなり、当該波形の振幅が大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界を大きくし得る。
【0032】
また、環状溝2cの軸方向の両端の底部(円筒部2aの外周)と側壁(ヨーク2bの根元)の角部にフィレット加工によって湾曲面2dが形成されており、永久磁石3a,3bの環状溝2c内に収容される内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周には面取りによって形成された傾斜面3a11,3b11が設けられているので、図2に示すように、環状溝2c内に永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1を装着すると、環状溝2cの湾曲面2dと内周部3a1,3b1とが干渉しないように向き合って両者の間に空隙Gが形成され、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向の端面とヨーク2bの側面とが面接触できる。
【0033】
円筒状の母材の外周を切削して環状溝2cを形成すると、環状溝2cの底部の軸方向の両端の角部を直角に加工するのは難しく、何ら手立てしないと、当該角部に永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の角部が乗り上げてしまって、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1が環状溝2cの底部である円筒部2aの外周から浮き上がったり、ヨーク2bの側壁と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の端面とが面接触できなったりして、環状溝2cに対する永久磁石3a,3bの位置が各環状溝2cで一定しなくなる場合がある。
【0034】
これに対して、前述したように、フィレット加工を行うことで湾曲面2dを形成し、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に面取りを行って湾曲面2dとの干渉を回避するため傾斜面3a11,3b11を設けると、環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの両端の内周部3a1,3b1とに空隙Gが形成されて、環状溝2c内に永久磁石3a,3bを装着すると、環状溝2cの側壁となるヨーク2bによって永久磁石3a,3bを位置決めできる。環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁とに空隙Gが形成されると、ヨーク2bの側壁と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1との端面とが面接触できるので、電機子Eの駆動時に受ける軸方向の荷重によって永久磁石3a,3bの一部に応力が集中するのを回避できる。また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bを環状溝2cに接着剤を利用して定着させるようにしており、上記のように環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁とに空隙Gが形成されると、余分な接着剤が前記空隙Gに逃げて収容されるため、永久磁石3a,3bが接着剤の存在によって環状溝2c内で適正な位置に配置されなくなるのを防止できる。ただし、環状溝2cの底部の両端のフィレット加工、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁の面取り加工は、不要であれば省略してもよい。
【0035】
なお、環状溝2cの軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に空隙Gを設けるには、環状溝2cの底部の軸方向の両端となる円筒部2aのヨーク2bに近接する部分を全周に亘って削って溝を設ける加工を行ってもよく、この場合、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に面取りを設けなくてもよい。また、環状溝2cの軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に空隙Gを設ける場合、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に面取りによって傾斜面3a11,3b11或いは湾曲面を設けることにより、環状溝2cの底部の軸方向の両端の角部についてフィレット加工を設けなくても、環状溝2cの軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に空隙Gが形成されて永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁とヨーク2bの側面とが面接触できる場合には、前記フィレット加工を省略してもよい。
【0036】
このように構成された界磁Fは、非磁性体で形成された筒状のバレル5内に収容される。バレル5および界磁Fの図1中左端はキャップ6によって閉塞されており、バレル5および界磁Fの図1中右端は環状のヘッドキャップ7によって閉塞されている。なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁Fが非磁性体のバレル5によって覆われており、スリーブ2の外周に装着された永久磁石3a,3bの保護と永久磁石3a,3bのスリーブ2からの飛散を防止できるとともに、外部の鉄分を含んだ塵等が界磁Fによって吸引されるのをバレル5によって抑制できる。
【0037】
つづいて、電機子Eは、筒状のコア8と、コア8に装着される巻線9と、スリーブ2の内周面に摺接するガイド10とを備えて構成されて、界磁F内に軸方向に移動自在に挿入されている。つまり、本実施の形態では、電機子Eは、界磁Fの内周側に配置されており、界磁Fに対して軸方向に相対移動できる。
【0038】
コア8は、本実施の形態では、円筒状のヨーク8aと、環状であってヨーク8aの界磁側となる外周に周方向に沿ってかつ軸方向に間隔を空けて設けられる軸方向の断面が矩形状の複数のティース8bと、ティース8b,8b間の空隙で形成されて巻線9が装着されるスロット8cとを備えて構成されている。
【0039】
ヨーク8aは、前述の通り円筒状であって、その横断面積はティース8bにおける磁路断面積以上となるように肉厚が確保されている。本実施の形態では、図1および図2に示すように、ヨーク8aの外周に7個のティース8bが軸方向に等間隔に並べて設けられており、コア8の界磁F側となる外周側であって、ティース8b,8b間に巻線9が装着される環状溝でなるスロット8cが形成されている。なお、本実施の形態では、ティース8bの断面形状は、矩形となっているが、基端側の磁路断面積を大きく確保できるように外周となる先端側の幅よりも内周となる基端側の幅を大きくした台形となっていてもよい。
【0040】
本実施の形態では、図1中で隣り合うティース8b,8b同士の間には、環状溝でなるスロット8cが合計で6個設けられている。スロット8cは、コア8の周方向に沿って設けられており、コア8の外周に軸方向に等ピッチで並べて設けられている。
【0041】
そして、このスロット8cには、巻線9が巻き回されて装着されている。巻線9は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。各相の巻線9は、6個のスロット8cに界磁Fの磁極配置に応じて適した配置となるように装着される。
【0042】
このように構成された電機子Eは、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着され、ロッド11とともに界磁F内に移動自在に挿入される。
【0043】
ロッド11は、界磁Fの図1中右端に取り付けられたヘッドキャップ7内を通して筒型リニアモータ1外へ突出している。また、ロッド11のコア8の図1中左右には界磁Fにおけるスリーブ2の内周面に摺接する環状のウェアリング10aを外周に備えた環状のガイド10,10が装着されている。
【0044】
このようにコア8は、軸方向の両側からガイド10,10によって挟持されてロッド11に固定されている。電機子Eは、ガイド10,10を備えており、スリーブ2の内周面にガイド10,10が摺動自在に挿入されているので、界磁Fに対して軸ぶれせず、界磁Fに干渉することなく軸方向に移動できる。このように、電機子Eは、スリーブ2によって、界磁Fに対する軸方向への移動が案内される。
【0045】
また、軟磁性体で形成されたスリーブ2は、電機子Eとの間の磁気的なギャップを小さくして界磁Fが電機子Eへ作用させる磁界を大きくでき、ガイド10,10と協働してコア8の軸方向移動を案内する役割を果たしている。また、コア8の外径は、スリーブ2の円筒部2aの内径よりも小さく、スリーブ2に干渉することはなく、筒型リニアモータ1は円滑に伸縮できる。
【0046】
なお、ロッド11は、図示はしないが、筒状とされており、ロッド11内に通される図外の電線を通じて筒型リニアモータ1の外方に設置される外部電源から巻線9へ電力供給できる。
【0047】
そして、たとえば、巻線9の界磁Fに対する電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線9の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と電機子Eの移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子Eと界磁Fとを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線9への通電、あるいは、巻線9に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
【0048】
以上、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備え、界磁Fは、環状であって軸方向に着磁されて界磁Fの軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石3a,3bと、環状であって軟磁性体で形成されるとともに永久磁石3a,3b間に介装されるヨーク2bとを備え、永久磁石3a,3bは、軸方向に切った断面が電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短い凸形となっている。
【0049】
このように構成された筒型リニアモータ1によれば、永久磁石3a,3bの電機子側となる内周部3a1,3b1の軸方向長さが反電機子側となる外周部3a2,3b2の軸方向長さよりも短く、内周部3a1,3b1だけでなく、外周部3a2,3b2の軸方向の端面から磁束も磁気的に通りやすいヨーク2bを通って電機子側へ向かうようになってヨーク2bと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形が正弦波に近くなる。そのため、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形の振幅が大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界を大きくし得る。
【0050】
このように本実施の形態における筒型リニアモータ1では、安価な軸方向着磁の永久磁石3a,3bを利用しつつも、電機子Eへ作用させる磁界を大きくできるので、推力の向上と製造コストの低減とを両立させ得る。
【0051】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、軟磁性体で形成されるとともに永久磁石3a,3bの電機子側に嵌合する円筒部2aを有するスリーブ2を備え、スリーブ2は、円筒部2aと一体にヨーク2bを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1では、スリーブ2の外周に形成されたヨーク2b,2b間に形成の環状溝2cに永久磁石3a,3bが装着されるので、スリーブ2の環状溝2cの位置と寸法とを精度よく管理しておけば、永久磁石3a,3bの軸方向長さに寸法誤差があっても、永久磁石3a,3bの寸法誤差がスリーブ2の軸方向で積算されることが無く、個々の永久磁石3a,3bのスリーブ2に対する設置誤差は環状溝2cの軸方向の範囲で収まる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、スリーブ2に対する永久磁石3a,3bの設置位置の設計値に対する軸方向のずれが低減されるので、電機子Eの駆動時のコギング推力を低減できる。また、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、スリーブ2の内周面に摺接するガイド10を電機子Eが備えているので、電機子Eがスリーブ2に対して径方向へ偏心することが無く、永久磁石3a,3bと電機子Eとの径方向の相対位置が安定して、安定した推力を発生できる。以上より、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、コギング推力を低減しつつ安定した推力の発揮が可能となる。
【0052】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bと電機子Eとの間に軟磁性体のスリーブ2の円筒部2aが配置されるとともに、コア8をスリーブ2の至近に配置してもガイド10,10によってコア8がスリーブ2に干渉するのを防止できるから、永久磁石3a,3bが発生する磁界を効率よく電機子Eに作用させ得るとともに永久磁石3a,3bとコア8との間のギャップを極小さくできるので、電機子Eに大きな磁界を作用させ得る。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、界磁Fの内側の電機子Eに大きな磁界を作用させるとともに、電機子Eと界磁Fとの間の径方向の磁気的なエアギャップをより一層狭くできるので推力を大きくでき、その結果、質量推力密度を向上できる。
【0053】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁Fのスリーブ2に電機子Eのガイド10を摺接させて、電機子Eの軸方向への移動を案内するので、電機子Eの軸方向への移動の案内に別途ガイドする機構を設けずに済む。
【0054】
なお、ガイド10が対向しない範囲であれば、スリーブ2の軸方向の両側或いは片側に軟磁性体で形成される円筒状であって外周に永久磁石が装着される環状溝を備えて界磁の一部を構成する補助界磁を設けてもよい。
【0055】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、スリーブ2における環状溝2cの底部における軸方向の両端と、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向の両端の内周縁との間に空隙Gが設けられている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、環状溝2cの底部における軸方向の両端の角部と永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向両端の内周縁に空隙Gが形成されるので、環状溝2cの側壁となるヨーク2bと永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の軸方向の端部とが面接触できるようになり、永久磁石3a,3bを環状溝2c内でヨーク2bを利用して位置決めできる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、永久磁石3a,3bを環状溝2c内で狙った位置に位置決めできるので、スリーブ2に対して永久磁石3a,3bを適正な位置に配置でき、電機子Eの駆動時のコギング推力をより一層低減できる。さらに、このように構成された筒型リニアモータ1では、ヨーク2bの側壁と永久磁石3a,3bの端面とが面接触できるので、電機子Eの駆動時に受ける軸方向の荷重によって永久磁石3a,3bの一部に応力が集中するのを回避できる。加えて、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bを環状溝2cに接着剤を利用して定着させる場合、余分な接着剤が前記空隙Gに逃げて収容されるため、永久磁石3a,3bが接着剤の存在によって環状溝2c内で適正な位置に配置されなくなるのを防止できる。
【0056】
また、前述した一実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bの外周部3a2,3b2の軸方向の端面同士を接触させるか僅かな隙間を空けて対向させていたが、図3に示した第1変形例の筒型リニアモータ1Aのように、スリーブ2におけるヨーク2eの軸方向に切った断面形状を外周に凸部を備えた凸形状として、ヨーク2e,2e間の永久磁石3a,3bを装着してもよい。
【0057】
第1変形例の筒型リニアモータ1Aにおけるスリーブ2は、軟磁性体で形成されており、永久磁石3a,3bの内周に嵌合される円筒部2aと、円筒部2aの外周に周方向に沿うとともに軸方向に間隔を空けて設けられた複数の環状のヨーク2eと、円筒部2aのヨーク2e,2e間のそれぞれに周方向に沿う環状の空隙で形成された複数の環状溝2fとを備えており、円筒部2aの外周にフランジ状に突出するヨーク2eを一体不可分に備えている。なお、円筒部2aとヨーク2eとが別部品で構成されてもよい。
【0058】
ヨーク2eは、図3に示すように、環状であって、円筒部側となる内周側部分2e1の軸方向長さが長く、反円筒部側となる外周側部分2e2の軸方向が短くなっており、軸方向に切った断面が外周側に凸部を備えた凸形状となっている。ヨーク2eにおける内周側部分2e1の径方向の厚みは、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1の径方向の厚みと略等しく、外周側部分2e2の径方向の厚みは、永久磁石3a,3bの外周部3a2,3b2の径方向の厚みと略等しい。
【0059】
よって、ヨーク2e,2e間の環状溝2fは、ヨーク2eとは逆に、円筒部側となる内周側の軸方向長さが短く、反円筒部側となる外周側の軸方向長さが長く、軸方向に切った断面形状が永久磁石3a,3bの軸方向に切った断面形状に符合して内方に永久磁石3a,3bを収容可能となっている。
【0060】
なお、詳しくは図示しないが、スリーブ2における環状溝2fの内周側の部分の底部と外周側の部分の底部の軸方向の両端、つまり、円筒部2aの外周であってヨーク2eの軸方向の両側の根元部分とヨーク2eの段部の軸方向の両側の角部には、一実施の形態の筒型リニアモータ1のスリーブ2と同様に、永久磁石3a,3bの軸方向の両端の角部との干渉を避けるためにフィレット加工或いは溝を設ける加工が施されるとよい。
【0061】
環状溝2fの断面形状は、本実施の形態では全て等しく、環状溝2fは、それぞれスリーブ2の外周に等間隔に設けられている。よって、ヨーク2eもそれぞれスリーブ2の外周に等間隔に設けられている。なお、本実施の形態では、スリーブ2の両端に設けられた末端ヨーク2g,2gは、ヨーク2eを軸方向の中央で半分に切断した形状となっている。なお、スリーブ2の両端の終端を環状溝として末端ヨーク2g,2gを両端に設けなくてもよい。
【0062】
そして、このように構成されたスリーブ2のヨーク2e,2e間の環状溝2fに永久磁石3a,3bが着磁方向が交互になるように装着される。すると、永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1間にヨーク2eの内周側部分2e1が介装されて軸方向で内周部3a1,3b1の軸方向の端面がヨーク2eの内周側部分2e1の軸方向の端面に対向し、永久磁石3a,3bの外周部3a2,3b2間にヨーク2eの内周側部分2e1が介装されて軸方向で外周部3a2,3b2の軸方向の端面がヨーク2eの外周側部分2e2の軸方向の端面に対向する。このように、永久磁石3a,3bは、ヨーク2e,2e間の全体にわたって介装されており、軸方向から見てヨーク2e,2e間の環状溝2f内に全体が収容される。
【0063】
なお、図示はしないが、各永久磁石3a,3bの内周部3a1,3b1と外周部3a2,3b2の軸方向両端の内周に面取りされており、永久磁石3a,3bをヨーク2e,2e間の環状溝2f内に収容しても、永久磁石3a,3bの円筒部2aの外周からの浮き上がりが防止される。
【0064】
本実施の形態の筒型リニアモータ1Aも筒型リニアモータ1と同様に、永久磁石3aの軸方向中央からヨーク2eを含んで隣の永久磁石3bの軸方向中央まで1つの磁極を形成しており、N極同士を向かい合わせにしている永久磁石3a,3bのN極とN極同士で挟まれたヨーク2eとが1つのN極として機能し、S極同士を向かい合わせにしている永久磁石3a,3bのS極とS極同士で挟まれたヨーク2eとが1つのS極として機能する。
【0065】
このように構成された界磁Fでは、永久磁石3a,3bの電機子側となる内周部3a1,3b1の軸方向長さが反電機子側となる外周部3a2,3b2の軸方向長さよりも短く、内周部3a1,3b1および外周部3a2,3b2の磁束が磁気的に通りやすいヨーク2eを通って電機子側へ向かうようになってヨーク2eと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、単に、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形が正弦波に近くなり、当該波形の振幅が大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界を大きくし得る。また、第1変形例の筒型リニアモータ1Aでは、永久磁石3a,3bの軸方向の長さが長い部分である外周部3a2,3b2とでヨーク2eの外周側部分2e2を挟み込んでいるため、外周部3a2,3b2の電機子側の内周面のみならず軸方向の端面から出た磁束もヨーク2eの内周側部分2e1へ向かうようになる。そのため、本実施の形態の筒型リニアモータ1Aでは、筒型リニアモータ1以上に磁束をヨーク2eの内周側部分2e1と径方向で対向する範囲に集中できるようになり、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形がより一層正弦波に近くなり、当該波形の振幅が大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界をより一層大きくし得る。
【0066】
以上、本実施の形態の第1変形例における筒型リニアモータ1Aは、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備え、界磁Fは、環状であって軸方向に着磁されて界磁Fの軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石3a,3bと、永久磁石3a,3bの電機子側に嵌合する円筒部2aと環状であって円筒部2aと一体とされて永久磁石3a,3b間に介装されるヨーク2eとを有して軟磁性体で形成されるスリーブ2とを備え、永久磁石3a,3bは、軸方向に切った断面が電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短い凸形となっており、ヨーク2eは、永久磁石3a,3bの電機子側の軸方向長さが短い内周部(部分)3a1,3b1間と反電機子側の軸方向長さが長い外周部(部分)3a2,3b2間との全体にわたり介装されている。
【0067】
このように構成された筒型リニアモータ1Aによれば、永久磁石3a,3bの電機子側となる内周部3a1,3b1の軸方向長さが反電機子側となる外周部3a2,3b2の軸方向長さよりも短く、永久磁石3a,3bがヨーク2e,2e間に全体にわたって介装されるので、内周部3a1,3b1と外周部3a2,3b2の電機子側の面および軸方向の両側の端面とから出た磁束が磁気的に通りやすいヨーク2eを通って電機子側へ向かうようになってヨーク2eと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形がより一層正弦波に近くなる。そのため、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形の振幅がより一層大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界をより一層大きくし得る。
【0068】
このように本実施の形態における筒型リニアモータ1Aでは、安価な軸方向着磁の永久磁石3a,3bを利用しつつも、電機子Eへ作用させる磁界をより一層大きくできるので、推力のより一層向上させつつ、製造コストを低減できる。
【0069】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1Aでは、軟磁性体で形成されるとともに永久磁石3a,3bの電機子側に嵌合する円筒部2aを有するスリーブ2を備え、スリーブ2は、円筒部2aと一体にヨーク2eを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1Aでは、スリーブ2の外周に形成されたヨーク2e,2eに形成の環状溝2fに永久磁石3a,3bが装着されるので、スリーブ2の環状溝2cの位置と寸法とを精度よく管理しておけば、永久磁石3a,3bの軸方向長さに寸法誤差があっても、永久磁石3a,3bの寸法誤差がスリーブ2の軸方向で積算されることが無く、個々の永久磁石3a,3bのスリーブ2に対する設置誤差は環状溝2fの軸方向の範囲で収まる。また、筒型リニアモータ1Aでは、軸方向で永久磁石3a,3b間の全体にヨーク2eが配置されるので永久磁石3a,3b同士が直接干渉することがないので、永久磁石3a,3bの寸法誤差の影響を受けづらくなり、より一層永久磁石3a,3bをスリーブ2にして適切な位置に配置できるようになる。
【0070】
よって、このように構成された第1変形例における筒型リニアモータ1Aによれば、スリーブ2に対する永久磁石3a,3bの設置位置の設計値に対する軸方向のずれがより一層低減されるので、電機子Eの駆動時のコギング推力をより一層低減できる。
【0071】
さらに、前述した一実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石3a,3bの外周部3a2,3b2の軸方向の端面同士を接触させるか僅かな隙間を空けて対向させていたが、図4に示した第2変形例の筒型リニアモータ1Bのように、スリーブ2におけるヨーク2bの軸方向幅を長くして、ヨーク2b,2b間の環状溝2cに装着された永久磁石3a,3bの外周部3a2,3b2間に隙間を積極的に設けて、外周部3a2,3b2間であってヨーク2bの外周側に磁気的ギャップ20を形成するようにしてもよい。
【0072】
このように構成された界磁Fでは、永久磁石3a,3bの軸方向長さが長い部分である外周部3a2,3b2間に磁気的ギャップ20が設けられているので、外周部3a2,3b2の軸方向の端部から出た磁束も内周側に設けられたヨーク2bへ向かうようになって永久磁石3a,3bの反電機子側となる外周側を通過しにくくなり、その分、電機子側となる内周側に向かう磁束が多くなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界を大きくし得る。また、第2変形例の筒型リニアモータ1Bでは、永久磁石3a,3bの軸方向の長さが長い部分である外周部3a2,3b2間であって、ヨーク2bの反電機子側に磁気的ギャップ20が設けられているため、外周部3a2,3b2の電機子側の内周面から出た磁束とともに、外周部3a2,3b2の軸方向の端面から出た磁束の多くがヨーク2bの内周側部分2e1へ向かうようになる。そのため、本実施の形態の筒型リニアモータ1Bでは、筒型リニアモータ1以上に磁束をヨーク2bと径方向で対向する範囲に集中できるようになり、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形がより一層正弦波に近くなり、当該波形の振幅が大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界をより一層大きくし得る。
【0073】
以上、本実施の形態の第1変形例における筒型リニアモータ1Bは、筒状の界磁Fと、界磁Fの内周に配置されて界磁Fに対して軸方向へ移動可能な電機子Eとを備え、界磁Fは、環状であって軸方向に着磁されて界磁Fの軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石3a,3bと、永久磁石3a,3bの電機子側に嵌合する円筒部2aと環状であって円筒部2aと一体とされて永久磁石3a,3b間に介装されるヨーク2bとを有して軟磁性体で形成されるスリーブ2とを備え、永久磁石3a,3bは、軸方向に切った断面が電機子側の軸方向長さが反電機子側の軸方向長さよりも短い凸形となっており、ヨーク2bは、永久磁石3a,3bの電機子側の軸方向長さが短い内周部(部分)3a1,3b1間に介装され、ヨーク2bの反電機子側であって永久磁石3a,3bの反電機子側の軸方向長さが長い外周部(部分)3a2,3b2間に磁気的ギャップ20が設けられている。
【0074】
このように構成された筒型リニアモータ1Bによれば、永久磁石3a,3bの電機子側となる内周部3a1,3b1の軸方向長さが反電機子側となる外周部3a2,3b2の軸方向長さよりも短く、永久磁石3a,3bの外周部3a2,3b2間であってヨーク2bの反電機子側に磁気的ギャップ20が設けられているので、内周部3a1,3b1と外周部3a2,3b2の電機子側の内周面および軸方向の端面とから出たの磁束が磁気的に通りやすいヨーク2bを通って電機子側へ向かうようになってヨーク2bと径方向で対向する範囲の磁束密度が高くなるため、断面矩形の軸方向着磁の円環状の永久磁石を着磁方向が交互となるように積層して構成される界磁と比較して、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形がより一層正弦波に近くなる。そのため、電機子Eの外周におけるギャップ磁束密度分布の波形の振幅がより一層大きくなって、スリーブ2の内周に収容される電機子Eへ作用させる磁界をより一層大きくし得る。
【0075】
このように本実施の形態における筒型リニアモータ1Bでは、安価な軸方向着磁の永久磁石3a,3bを利用しつつも、電機子Eへ作用させる磁界をより一層大きくできるので、推力のより一層向上させつつ、製造コストを低減できる。
【0076】
なお、本実施の形態では、界磁Fの内周側に電機子Eが挿入されているが、界磁Fの外周に筒状の電機子Eを配置してもよい。このように、界磁Fの外周側に電機子Eを配置する場合、界磁Fは、環状であって軸方向に着磁されて界磁Fの軸方向で着磁方向が交互となるように配列される複数の永久磁石の外周側の部分の軸方向長さを内周側の部分の軸方向長さより短くすればよい。
【0077】
また、実施の形態の筒型リニアモータ1,1A,1Bでは、スリーブ2が円筒部2aと円筒部2aの外周にヨーク2bを一体に備える構造を採用しているが、軟磁性体で形成されてはいても磁気抵抗があるため、円筒部2aの径方向の肉厚が薄ければ薄いほど電機子Eへ大きな磁界を作用させ得る。その一方で、円筒部2aの肉厚を薄くすればするほどスリーブ2の強度が低下して界磁Fを保持する部材としての利用が難しくなる。そこで、円筒部2aの外周に軸方向に沿ってヨーク2bと交差するリブを設けて、円筒部2aの径方向の肉厚を薄肉化して電機子Eへ作用させる磁界を大きくしつつも、円筒部2aの強度の低下を抑制するようにしてもよい。電機子Eが界磁Fの外周に配置される場合、スリーブ2の円筒部2aの外周にリブを設ければよい。なお、リブの設置数および断面形状は、円筒部2aの強度を確保できる限りにおいて任意に設定でき、リブを設ける場合、永久磁石3a,3bがリブを避け得るように永久磁石3a,3bを周方向で分割して構成すればよい。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1,1A,1B・・・筒型リニアモータ、2b,2e・・・ヨーク、3a,3b・・・永久磁石、3a1,3b1・・・内周部(永久磁石における軸方向長さが短い部分)、3a2,3b2・・・外周部(永久磁石における軸方向長さが長い部分)、20・・・磁気的ギャップ、E・・・電機子、F・・・界磁
図1
図2
図3
図4