(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001149
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
A45D40/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100584
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】久間 雅博
(72)【発明者】
【氏名】目▲崎▼ 康将
(57)【要約】
【課題】 棒状化粧料をカートリッジ化して、カートリッジのみ廃棄する事により廃棄物を少なくし、カートリッジも金属部材と合成樹脂部材とに分別して廃棄できる棒状化粧料繰り出し容器の提供。
【解決手段】 カートリッジは、スリーブ内壁に突出した係合リブと回転筒外周に刻設した係合凹溝が係合してスリーブと回転筒を回動自在に連結する。回転筒の側壁には、係合凹溝を横切る一対のスリットを軸線方向に長く穿設する。回転筒の残存した摘み部を内方向に撓めてスリーブと回転筒の係合を解除してスリーブと回転筒を分別廃棄する。この回転筒のスリットは、係合凹溝は内方向に撓みやすい幅をしており、係合凹溝の部分には、くびれ部を設けた疑似ひょうたん形形状とし、このくびれ部には、係合凹溝を延長する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料(1)を保持し下端よりネジ棒(21)を垂下し該ネジ棒(21)の外側壁に雄ネジ(211)を螺設した紅筒(2)と、該紅筒(2)のネジ棒(21)が挿入され内壁にネジ棒(21)の雄ネジ(211)と螺合する雌ネジ(313)を螺設し上部外側壁に係合凹溝(331)を刻設した係合受け部(33)を設け下部外側壁に摘み部(34)を設け下端に連結部(36)を設けた回転筒(3)と、前記紅筒(2)を上下摺動自在に回動不能に内装し回転筒(3)の摘み部(34)及び連結部(36)が下端より突出した状態で係合受け部(33)を挿入し下部内側壁に回転筒(3)の係合凹溝(331)と回動自在に係合する係合リブ(431)を周設したスリーブ(4)と、より成るカートリッジ(A)の回転筒(3)の連結部(36)をホルダー(B)に回動不能に着脱可能に連結して成るカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器であり、
前記カートリッジ(A)の紅筒(2)及び回転筒(3)が合成樹脂素材からなり、スリーブ(4)が金属素材からなり、回転筒(3)の外側壁に、係合受け部(33)の係合凹溝(331)を横切るよう、係合凹溝(331)の上方から摘み部(34)下端に達する一対のスリット(37)を、対向した位置に軸線方向に穿設し、回転筒(3)の摘み部(34)を摘まんで内方向に撓ませることにより、スリーブ(4)の係合リブ(431)と回転筒(3)の係合凹溝(331)の係合を解除し、カートリッジ(A)をスリーブ(4)からなる金属製部品と、紅筒(2)及び回転筒(3)からなる合成樹脂製部品群に分離できる構成に於いて、
前記スリット(37)は係合凹溝(331)の部位がくびれた略ひょうたん形状をしており、それぞれのくびれ部(371)に係合凹溝(331)を延長した延長部(334)を設けたことを特徴とする環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項2】
前記スリット(37)のくびれ部(371)間の幅は、前記スリーブ(4)の係合リブ(431)と、回転筒(3)の係合受け部(33)の引っ掛かり量の2倍以上とすることを特徴とする請求項1記載の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項3】
前記係合凹溝(331)の延長部(334)には、溝の上側の壁面、溝上壁面(332)を設けないことを特徴とする請求項1、請求項2いずれかの項記載の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、スティックファンデーションなどの棒状化粧料を収容し、この棒状化粧料を繰り出して使用する棒状化粧料繰り出し容器に関する。更に詳しく言えば、棒状化粧料をカートリッジ化して、使い切った棒状化粧料を交換可能にすることにより、容器自体を再使用すると同時に、廃棄物を少なくし、廃棄するカートリッジも金属素材と合成樹脂素材とに分別して廃棄できる、環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅、スティックファンデーションなどの棒状化粧料を収容し、この棒状化粧料を繰り出して塗布する棒状化粧料繰り出し容器を、棒状化粧料及び繰り出し機構を有した構造部と、見栄えの良い加飾を施した外装体に分割し、構造部と外装体を着脱自在に連結して、構造部をカートリッジに、外装体をホルダーにしたカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器が知られている。このカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器は、棒状化粧料を使い切った際、空のカートリッジのみ廃棄し、見栄えの良い加飾を施した高価なホルダーを再利用する。そのため、このカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器は、廃棄物の削減が図れ、環境に配慮した容器と言えた。
【0003】
また、金属素材にも合成樹脂素材にも様々な特性の素材がある。容器を構成する部材には、必要とされる特性に合わせた素材を選択、金属素材及び合成樹脂素材を組み合わせ配置する。金属素材は、強度が高く、金属特有の質感や、光沢、多彩な加飾が施せることから、外装部材に多く利用される。合成樹脂素材は、射出成形により複雑な形状を成形でき、摺動性、耐薬品性、耐食性など多様な特性を有した素材があることから、外部に露出しない機構部材などに多く利用される。金属素材は素材ごとにリサイクルルートが確立され、分別することにより各素材をリサイクルできる。合成樹脂素材は、限られた合成樹脂素材しかリサイクルできず、それ以外はゴミとして廃棄せざるを得ない。
【0004】
このカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に於けるカートリッジは、棒状化粧料及び繰り出し機構を収容しており、外部に露出した部位を薄肉金属製のスリーブで覆っている。この繰り出し機構の部材は、合成樹脂素材から成っているため、カートリッジをそのまま廃棄すればゴミとして処理されてしまう。金属製のスリーブをリサイクルするためには、カートリッジより金属製のスリーブを取り外し、金属製部品とその他の合成樹脂製部品群に分解できる構成が必要となる。この容器より金属製のスリーブを分解して分別廃棄できる構成として、特許文献1及び特許文献2に記載の構成が知られている。
【0005】
この特許文献1に記載の口紅収納容器は、金属製の外筒部材(スリーブ)の内周壁に突出した抜け止め加工が、合成樹脂製の内筒部材の側面外壁に設けた周溝に係合し、外筒部材と内筒部材が回動自在に連結している。この内筒部材には、周溝が変形して外筒部材の抜け止め加工の係合が解除できるよう、周溝を上下に横切るカット溝を軸線方向に刻設する。この容器は、通常の使用状態では、皿部材より垂下した軸棒が内筒部材の背後に位置して、周溝の変形止めとなり、外筒部材が取り外せない。しかし、皿部材を上昇限まで繰り上げると、内筒部材の軸棒の押さえがなくなり、内筒部材の周溝が変形可能となり、外筒部材が無理抜きできる。
【0006】
また、特許文献2に記載の化粧品収納容器は、金属製の外筒部材(スリーブ)の内周壁に突出した係止片が、合成樹脂製の内筒部材の側面外壁に設けた係合溝に係合し、外筒部材と内筒部材が回動自在に連結している。この内筒部材には、係合溝が変形して外筒部材の係止片の係合が解除できるよう、係合溝を軸線方向に上下に横切る切り溝を刻設する。この容器は、通常の使用状態では、挿入部材の撓み防止片が内筒部材の係合溝の変形止めとなり、外筒部材が取り外せない。しかし、皿部材、内筒部材、外筒部材から成る構造部(カートリッジ)を、ハカマ部材、挿入部材(より成る外装体)より抜き取り、構造部単体にすると、挿入部材の撓み防止片の押さえがなくなり、内筒部材の係合溝が変形可能となり、外筒部材が無理抜きできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-127952
【特許文献2】特開2000-300334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、容器より直接外筒部材(スリーブ)を抜き取る構成であり、廃棄時の分別を考えた場合、容器は外筒部材と残りの部品と分割できるため、外筒部材を取り外しリサイクルした残りの部品に、金属製部品があった場合、この金属製部品は合成樹脂製部品群と共にごみとして廃棄せざるを得ない。
【0009】
特許文献2は、容器を内筒部材、皿部材、及び外筒部材から成る上下移動機構と、ハカマ部材、挿入部材、及びキャップから成る外装体に分割し、上下移動機構を取り外し可能にしてカートリッジ式容器を構成する。この構成の場合、廃棄するのは上下移動機構(カートリッジ)のみであり、外装体(ホルダー)は繰り返し使用するため、外装体の材質には制限がなかった。また、廃棄する上下移動機構は、外筒部材(スリーブ)と、内筒部材及び皿部材に分解可能で、外筒部材を加飾性・強度的に優れた金属素材で、内筒部材・皿部材を成形性に優れた合成樹脂で成形でき、外筒部材と内筒部材及び皿部材とに分別廃棄できた。この外装体に装着したカートリッジ(上下移動機構)の外筒部材が外れないよう、内筒部材の切り溝に外装体の撓み防止片を係合させ、内筒部材と外筒部材の係合部分である係合溝の変形止めとしていた。そして、カートリッジ(上下移動機構)を抜き取ると、切り溝と撓み防止片の係合が解除され、係合溝が変形可能となり、内筒部材を摘まんで外筒部材が抜き取れる。従って、カートリッジ(上下移動機構)を外装体に装着する際には、切り溝と撓み防止片を係合させる必要があり、カートリッジ(上下移動機構)と外装体の間に円周方向の所定位置の位置合せが必要となる。また、内筒部材の切り溝の幅を広くすれば、内筒部材が変形し易くなり、内筒部材を摘まむ力が弱くて済むが、内筒部材の係合溝の長さが短くなることにより、外筒部材の係止片の係合・保持長さが短くなり、外筒部材のガタ付きの要因となっていた。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、カートリッジを構成する紅筒、回転筒、及びスリーブがガタ付きなく組み立てでき、支障なくカートリッジの着脱操作、及び棒状化粧料の繰り上げ下げ操作が行え、廃棄時には簡単にスリーブを分解できて分別廃棄できる、環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
紅筒2は、棒状化粧料1を保持し下端よりネジ棒21を垂下し、ネジ棒21の外側壁に雄ネジ211を螺設する。この紅筒2のネジ棒21が挿入される回転筒3は、内壁にネジ棒21の雄ネジ211と螺合する雌ネジ313を螺設し、上部外側壁に係合凹溝331を刻設した係合受け部33を設け、下部外側壁に摘み部34を設け、下端に連結部36を設ける。スリーブ4は、前記紅筒2を上下摺動自在に回動不能に内装し、回転筒3の摘み部34及び連結部36が下端より突出した状態で係合受け部33を挿入する。このスリーブ4の下部内側壁に回転筒3の係合凹溝331と回動自在に係合する係合リブ431を周設する。この紅筒2、回転筒3、及びスリーブ4よりカートリッジAを構成する。このカートリッジAの回転筒3の連結部36を、ホルダーBに回動不能に着脱可能に係合させてカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器とする。
【0012】
このカートリッジAの紅筒2及び回転筒3は合成樹脂素材からなり、スリーブ4は金属素材からなる。回転筒3の外側壁には、係合受け部33の係合凹溝331を横切るよう、係合凹溝331の上方から摘み部34下端に達する一対のスリット37を、対向した位置に軸線方向に穿設する。この回転筒3の摘み部34を摘まんで内方向に撓ませることにより、スリーブ4の係合リブ431と回転筒3の係合凹溝331の係合を解除し、カートリッジAをスリーブ4からなる金属製部品と、紅筒2及び回転筒3からなる合成樹脂製部品群に分離できる。
【0013】
上記構成に於いて、前記スリット37を係合凹溝331の部位がくびれた略ひょうたん形状とする。このスリット37のくびれ部371それぞれに、係合凹溝331を延長した延長部334を設ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように、スリット37は係合受け部33の係合凹溝331上方より、係合凹溝331を横切って摘み部34下端に達している。つまり、ホルダーBと回動不能に着脱可能に連結する連結部36は切り欠かれておらず、必要充分な強度を有している。従って、特許文献2の撓み防止片のような、カートリッジAとホルダーBを確実に連結保持するための特別な構成を必要とせず、連結のための円周方向の所定位置の位置合せを必要とせず、公知のカートリッジAとホルダーBの連結手段を利用して連結保持できる。
【0015】
また、回転筒3のスリット37は、上下端を有しているため、摘み部34が内方向に撓みにくくなっているが、スリット37の幅を広くすることによって、摘み部34の幅が狭くなり、摘み部34の剛性が低下して、摘み部34を容易に、内方向に撓めることができるようになる。しかし、スリット37の幅が広くなると、スリーブ4内壁と回転筒3外壁の周方向の接触面積が少なくなり、スリーブ4と回転筒3間にガタ付きが生じてしまう。この対策として、スリット37の中央部分にくびれ部371を設け、このくびれ部371に、係合凹溝331を延長した延長部334を設けている。この延長部334により、スリーブ4内壁と回転筒3外壁の周方向の接触面積を増加させると同時に、スリーブ4の係合リブ431が係合する係合凹溝331の溝長さが増加し、スリーブ4のガタ付きの発生を防いでいる。
【0016】
また、カートリッジAの摘み部34は、ホルダーBの装着時には、ホルダーB内に収容され、外部に露出していないため、ホルダーBの装着時にカートリッジAの摘み部34の押圧部分341は操作できない。従って、カートリッジAをホルダーBに装着した状態では、不用意なスリーブ4の脱落はない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジをホルダーに装着した状態の正面断面図である。
【
図2】本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジをホルダーに装着して棒状化粧料を繰り上げた状態の正面断面図である。
【
図3】本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジとホルダーを分離した状態の正面図及び正面断面図である。
【
図4】
図2に於けるC矢視部の部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジの組み立て時の説明図である。
【
図8】本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジのスリーブを抜き取り、分別廃棄する際の説明図である。
【
図9】本発明のカートリッジの紅筒の正面図である。
【
図10】本発明のカートリッジの回転筒及び回動抵抗付与手段の正面半断面図である。
【
図11】本発明のカートリッジのスリーブの断面図である。
【
図12】本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の実施例の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の環境に配慮したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の実施形態を図によって説明する。本発明の容器は、棒状化粧料1を収容するカートリッジAをホルダーBに着脱自在に装着したカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器であり、使い切ったカートリッジAを廃棄し、新しいカートリッジAを装着して、ホルダーBを繰り返し再利用する。先ずカートリッジAについて説明する。カートリッジAは、紅筒2、回転筒3、及びスリーブ4より成る。
【0019】
紅筒2は合成樹脂製で、
図9に示すように、上部の保持部22と、保持部22より垂下するネジ棒21より成る。保持部22は、棒状化粧料1の下端を保持するコップ状をしており、外周壁には回動防止片221が突設される。この保持部22の回動防止片221は、外周1か所以上に設けられる。この回動防止片221を複数か所に設ける場合には、保持部22の外周に均等に配置される。
図9では、回動防止片221を4か所均等に配置している。この保持部22の下端より垂下したネジ棒21は、中空のパイプ状で、外側壁に雄ネジ211を螺設する。このネジ棒21の下端側壁には、逆U字状に切り欠き、上端が内方向に撓み可能な舌片状の一対のストッパー片212を成形する。このストッパー片212は、対向した位置に設けられ、上方に行くにつれ徐々に外側に突出して上端が最大突出部位213となるくさび形状をしている。
【0020】
回転筒3は合成樹脂製で、
図10に示すように、貫通穴31が上下に開口した筒状をしている。この回転筒3の貫通穴31上端には、紅筒2のネジ棒21が挿入されている。この貫通穴31は、ネジ棒21が余裕をもって上下動できる内径となっている。この貫通穴31の上部には、内径が窄まった狭窄部311を設ける。この狭窄部311の内周壁には、前記ネジ棒21の雄ネジ211と螺合する雌ネジ313を螺設する。また、狭窄部311下端の段差部分は、当接部312になっている。この貫通穴31の当接部312には、
図2に示すように、ネジ棒21のストッパー片212の上端が当接して、紅筒2のそれ以上の上昇を規制している(紅筒2の上昇限)。また、回転筒3の上面には、
図1に示すように、前記紅筒2の保持部22の下面が当接して、紅筒2のそれ以上の降下を規制している(紅筒2の下降限)。つまりこの回転筒3の貫通穴31の当接部312及び回転筒3の上面は、紅筒2が当接して紅筒2の上下摺動範囲を決定している。なお、このネジ棒21のストッパー片212の最大外径部位213の外接円径は、少なくとも貫通穴31内の雌ネジ313の内径よりも大径であればよいが、紅筒2の脱落防止性の観点からは、
図2のように雌ネジ313の谷径よりも大径であることが望ましい。
【0021】
また、
図5に示すように、回転筒3の上部外側壁には、前記紅筒2の保持部22の回動防止片221の外接円径φEとほぼ同径の支持部32を設ける。この支持部32の下方は、外径が僅かに拡大した係合受け部33となり、支持部32とは緩やかな斜面の当接段部333で連続する。この係合受け部33の下端には、鍔状の鍔部35を突設する。この鍔部35の下方には、係合受け部33の外径φGとほぼ同径の摘み部34を設ける。この摘み部34の下方、すなわち回転筒3の下部外側壁には、前記鍔部35の外径とほぼ同径に外径が拡大した連結部36を設ける。この摘み部34と連結部36の接続部位は、段差状の連結段部361となっている。なお、鍔部35及び連結部36の外径は、後述するスリーブ4の外径とほぼ同径である。
【0022】
この回転筒3の支持部32の上部外周壁には、支持凹溝321を刻設する。この支持凹溝321には、NBR、エラストマーなど弾性を有する素材より成形されたOリング5を、外周が支持部32の外周壁より突出した状態で枢着する。回転筒3の係合受け部33の上部外周壁には、係合凹溝331を刻設する。この係合凹溝331の上側の壁面(溝上壁面332)の角部は、角Rの小さいシャープな形状に成形する。回転筒3の連結部36の外周壁には、軸線と平行に複数条の凹凸の回り止めローレット362を刻設する。
【0023】
更に、回転筒3の側壁には、支持部32の支持凹溝321下方より摘み部34下部に達する一対のスリット37を軸線方向に長く、対向した位置に穿設する。このスリット37は、ほぼ中央で係合受け部33の係合凹溝331、及び鍔部35を横切っている。このスリット37の、係合受け部33の係合凹溝331、及び鍔部35に位置した部分には、幅が狭くなったくびれ部371を設け、略ひょうたん形状をしている。このくびれ部371には、係合凹溝331、及び鍔部35を延長して設ける。また、分断した摘み部34の側壁には、一対の押圧部分341を設ける。
【0024】
このくびれ部371には、係合凹溝331が延長した延長部334を設けている。この係合凹溝331の延長部334は、溝の上側の壁面、溝上壁面332がなく、不完全な溝となっている。なお、スリット37のくびれ部371間の幅は、スリーブ4の係合リブ431と、回転筒3の係合凹溝331の引っ掛かり量の2倍以上とする。
【0025】
この紅筒2の保持部22及び回転筒3の鍔部35より上方を、
図7に示すように、スリーブ4の下端より挿入する。このスリーブ4の下端からは、回転筒3の鍔部35、摘み部34及び連結部36が突出する。このスリーブ4は、
図11に示すように、アルミニウムなどの金属製で、外径が回転筒3の鍔部35及び連結部36の外径とほぼ同径となっている。
【0026】
このスリーブ4の上部は、棒状化粧料1及び紅筒2の保持部22が収容される収納部41となっている。この収納部41の下方は、回転筒3の支持部32と相対した摺接部42となっている。この摺接部42の下方、スリーブ4の下端は、回転筒3の係合受け部33と相対した係合部43となっている。このスリーブ4の収納部41の内径は、前記紅筒2の保持部22の外径よりも僅かに大径とする。摺接部42の内径は、回転筒3の支持部32の外径よりも僅かに大径とする。係合部43の内径φIは、回転筒3の係合受け部33の外径φGよりも僅かに大径とする。その結果、このスリーブ4の内径が、収納部41より摺接部42、摺接部42より係合部43と、下方の部位ほど大径となっている。
【0027】
前記スリーブ4の収納部41の内側壁には、紅筒2の回動防止片221が係合して、紅筒2を回動不能に上下摺動自在に案内する案内溝411を、軸線方向に長く刻設する。この案内溝411の谷径φHは、摺接部42の内径と同径か、僅かに小径とし、案内溝411の下端は、摺接部42の上端に達している。この案内溝411は、紅筒2の回動防止片221の数の2倍以上の条数が、内周に均等に配置されている。これにより、紅筒2の回動防止片221は、スリーブ4の下方より、位置合せの意識なく案内溝411に係合できる。この案内溝411の条数は、強度や成形性等の条件の許す範囲で多いほど、組立時における案内溝411と紅筒2の回動防止片221との位置合わせが容易になる。本発明実施形態に於いては、紅皿2の回動防止片221が、4か所に均等に配置され(
図9参照)、スリーブ4の案内溝411が、8か所に均等に配置されている(
図11参照)。
【0028】
前記回転筒3の支持部32の支持凹溝321に枢着したOリング5は、支持部32の外周壁より突出し、スリーブ4の摺接部42の内周壁に弾性を有して摺接し、スリーブ4と回転筒3の相対回転時に摺動抵抗が生じる回動抵抗付与手段10となる。この回動抵抗付与手段10の外径φFは、スリーブ4の摺接部42の内径よりも僅かに大径となる。
【0029】
前記スリーブ4の係合部43の内周壁には、係合リブ431を突設する。
図7に示すように、この係合リブ431の内径φDは、回転筒3の係合受け部33の外径φGよりも小径で、紅筒2の回動防止片221の外接円径φEよりも大径で、かつ回転筒3の回動抵抗付与手段10の外径φFより大径とする。これにより、スリーブ4に紅筒2及び回転筒3を挿入した際、スリーブ4の係合リブ431は、干渉なく回転筒3の係合受け部33に達し、係合受け部33を乗り越え、係合凹溝331に回動自在に係合する。この係合リブ431は、スリーブ4の単体時に、ロール加工等により外周から圧力を加え、内周方向に突出させて成形する。つまり係合リブ431は、スリーブ4を内面と外面の両側から金型で挟み込むことで成形するため、金型どおりの形状に成形できる。この係合リブ431の軸線方向の断面形状は、
図4に示すように、上側を角Rの小さなエッジ部432に、下側をスロープ状の斜面433にした非対称の形状に成形している。
【0030】
次に、前述したカートリッジAを着脱自在に装着するホルダーBについて図により説明する。ホルダーBは、ハカマ筒6、中筒7、及びキャップ8より成り、すべての部材が金属素材より成っている。
【0031】
中筒7には、上部に嵌合部71、下部に挿嵌部73、中間に止着部72を設ける。この中筒7を、有底筒状のハカマ筒6の上端より挿入し、止着部72を脱落不能に止着する。中筒7の嵌合部71は、ハカマ筒6の上端より突出し、キャップ8が着脱自在に嵌合している。この嵌合部71の上端面には、前記スリーブ4及び回転筒3の連結部36の外径よりも僅かに大径の装着口711が開口し、装着口711よりカートリッジAを抜き差しできる。
【0032】
中筒7下部の挿嵌部73は、内径が回転筒3の連結部36の外径よりも僅かに大径で、中筒7の装着口711の内径とほぼ同径で、カートリッジAの摘み部34及び連結部36が挿入される。この挿嵌部73は、止着部72より窄まり、挿嵌部73の外側壁とハカマ筒6の内側壁との間に隙間が生じるため、挿嵌部73は外側に変形が可能となる。この挿嵌部73の内側壁には、連結突部731を周方向に長く突設する。この連結突部731の下方内側壁には、回り止めリブ732を突設する。この連結突部731及び回り止めリブ732は、挿嵌部73の内周壁に均等に配置する。この連結突部731及び回り止めリブ732の内接円径は、カートリッジAの摘み部34の外径よりも大径で、連結部36の外径よりも小径とする。なお、
図3に示すように、連結突部731と回り止めリブ732は、それぞれを別個に設けるのはもちろん、連結突部731と回り止めリブ732を結合してT字状、逆L字状にしても良い。
【0033】
以上が本発明実施形態のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器である。ここで、ホルダーBのキャップ8を抜脱し、カートリッジAのスリーブ4とホルダーBのハカマ筒6を相対回転させると、ホルダーBの中筒7の挿嵌部73に回動不能に抜脱可能に連結部36が係合した回転筒3もホルダーBと共に回転する。スリーブ4内に回動不能に上下摺動自在に内装された紅筒2は、ネジ棒21の雄ネジ211が、回転筒3の雌ネジ313と螺合しているため、螺合作用によりスリーブ4内で紅筒2が上下摺動する。この紅筒2に保持された棒状化粧料1は、スリーブ4先端より出没する。
【0034】
次に、本発明実施形態のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジAの組み立て方法を説明する。回転筒3の支持部32の支持凹溝321にOリング5を枢着する。紅筒2のネジ棒21下端を回転筒3の貫通穴31の狭窄部311に差し込んで、紅筒2と回転筒3を組み合わせる。この際、ネジ棒21下端のストッパー片212の上端の最大突出部位213の外接円径は、回転筒3の狭窄部311の内径よりも大径であるが、ストッパー片212の形状がクサビ状をしており、内方向に変形可能なため、無理入れできる。ネジ棒21の雄ネジ211が狭窄部311の雌ネジ313に到達した時点で、雄ネジ211と雌ネジ313とが螺合する。これ以降は、紅筒2を回転することで、自然にネジ棒21を貫通穴31に挿入できる。紅筒2のストッパー片212の上端が回転筒3の狭窄部311を通過すると、貫通穴31の内径は、無負荷の状態のストッパー片212の最大突出部位213の外接円径よりも大径のため、ストッパー片212が復元する。この状態になると、紅筒2を抜け方向に回転、摺動させても、ストッパー片212の上端が狭窄部311下端の当接部312に当接するため、紅筒2が抜き取り不能となる。
【0035】
この紅筒2の保持部22、回転筒3の支持部32及び係合受け部33を
図7のように、スリーブ4の後端より挿入する。この際、紅筒2の回動防止片221の外接円径φE、及び回転筒3の回動抵抗付与手段10の外径φFが、スリーブ4の係合リブ431の内径φDよりも小径のため、支障なく挿入できる。そして、紅筒2の保持部22の回動防止片221を、スリーブ4の収納部41下端に貫通した案内溝411に係合させ、紅筒2の保持部22をスリーブ4の収納部41内に上下摺動自在に収容する。回転筒3の係合受け部33の外径φGがスリーブ4の係合リブ431の内径φDよりも大径のため、回転筒3の係合受け部33の端部の当接段部333にスリーブ4の係合リブ431が当接する。この回転筒3の係合受け部33の当接段部333は、支持部32とゆるやかな傾斜で連続している。また、スリーブ4の係合リブ431の下側は、スロープ状の斜面433となっている。回転筒3には、上下に伸びるスリット37を穿設しているため、回転筒3の係合受け部33の当接段部333にスリーブ4の係合リブ431が当接した状態で、さらに回転筒3を押し込むと、係合受け部33が容易に内方向に撓み、係合リブ431が係合受け部33を乗り越える。そして、係合リブ431が係合凹溝331に係合することで、スリーブ4と回転筒3とが回動自在に連結する。
【0036】
なお、本実施形態では、スリーブ4の係合リブ431が、
図4に示すように、下側がスロープ状の斜面433となっている。また、回転筒3の係合受け部33も、
図5に示すように、端部の当接段部333が緩やかな斜面となっている。この係合リブ431若しくは係合受け部33の端部は、どちらか一方だけを斜面に形成することもできる。この場合、実施形態と同様に、係合リブ431と係合受け部33の端部が当接することにより、一方の斜面により係合受け部33を内側に撓ませ、容易に係合リブ431を係合凹溝331に係合できる。
【0037】
次にホルダーBへのカートリッジAの装着について、図により手順および原理を説明する。ホルダーBの装着口711にカートリッジAの下部を差し込み、カートリッジAのスリーブ4下端より突出した回転筒3の摘み部34及び連結部36を、ホルダーBの挿嵌部73内に挿入する。カートリッジAの回転筒3の連結部36がホルダーBの挿嵌部73の連結突部731に当接した後、カートリッジAを更に差し込むと、カートリッジAの連結部36がホルダーBの挿嵌部73を押し広げ、連結突部731がカートリッジAの連結部36を乗り越え、連結段部361に係合してカートリッジAとホルダーBが連結する。同時に、カートリッジAの連結部36の回り止めローレット362とホルダーBの挿嵌部73の回り止めリブ732とが係合し、カートリッジAの回転筒3とホルダーBが回動不能に係合する。ここで、カートリッジAのスリーブ4とホルダーBを相対回転すると、ホルダーBと回動不能に係合した回転筒3も従動する。このカートリッジAのスリーブ4と回転筒3の相対回転により、スリーブ4内の棒状化粧料1が上下摺動する。
【0038】
なお、カートリッジAの回転筒3の側壁に設けたスリット37は、連結部36上方で終わっているため、連結部36自体にスリット37の影響はない。従って、カートリッジAの抜き差し及びカートリッジAの係合保持等に充分に耐えられる。
【0039】
次に、ホルダーBに対するカートリッジAの抜脱について説明する。ホルダーBのハカマ筒6を保持してカートリッジAのスリーブ4を引っ張ると、カートリッジAの連結部3の連結段部361と、ホルダーBの挿嵌部73の連結突部731間の係合が解除され、ホルダーBよりカートリッジAが抜き取ることができる。
【0040】
なお、スリーブ4の係合リブ431がカートリッジAの抜脱時に引っ掛かる回転筒3の係合凹溝331の溝上壁面332は、回転筒3の係合凹溝331にのみ設けられ、くびれ部371の延長部334には設けられていない。つまり、溝上壁面332の長さは、回転筒3の係合凹溝331と延長部334を合わせた長さよりも短くなっている。しかし、溝上壁面332の角部をRの小さいシャープな形状に成形し、溝上壁面332に引っ掛かるスリーブ4の係合リブ431の上側も、角Rの小さいシャープなエッジ部432としているため、溝上壁面332とエッジ部432の引っ掛かり量が増大し、引っ掛かりがより強固になっている。従って、カートリッジAの抜脱時に、スリーブ4と回転筒3の係合が外れ、スリーブ4が脱落してしまうようなことはない。
【0041】
次に、カートリッジAの分別廃棄方法について
図8により説明する。ホルダーBよりカートリッジAを抜き取り、カートリッジAのスリーブ4を保持して、スリーブ4下端より突出している回転筒3の押圧部分341を摘まんで、スリット37により切り欠かれた支持部32、係合受け部33、摘み部34を内方向に屈曲させる。その結果、係合受け部33の係合凹溝331も内方向に移動し、スリーブ4の係合リブ431のエッジ部432と引っ掛かっていた係合凹溝331の溝上壁面332も内方向に移動し、スリーブ4の係合リブ431と回転筒3の係合凹溝331の係合凹溝331の係合が外れ、スリーブ4と回転筒3及び紅筒2に分離できる。そして、スリーブ4の金属製素材と、紅筒2及び回転筒3の合成樹脂製素材に分別して廃棄できる。
【0042】
回転筒3のスリット37には略ひょうたん形状にくびれたくびれ部371があり、支持部32、係合受け部33、及び摘み部34が内方向に撓んだ時のストッパーの役割を果たす。このスリット37のくびれ部371間の幅を、スリーブ4の係合リブ431と回転筒3の係合凹溝331の引っ掛かりの2倍強とする。その結果、スリーブ4の係合リブ431と回転筒3の係合凹溝331の係合が解除した後、くびれ部371同士が当接し、回転筒3の支持部32、係合受け部33、摘み部34の必要以上の変形を防ぐ。加えて、溝上壁面332が係合受け部33の残存部分にのみ設けられているため、溝上壁面332を係合凹溝331と同じ長さとした場合に比べて、係合凹溝331と係合リブ431の係合を解除するために必要な摘み部34の押圧部分341の押圧量を少なくできる。
【符号の説明】
【0043】
1 棒状化粧料
2 紅筒
3 回転筒
4 スリーブ
21 ネジ棒
33 係合受け部
34 摘み部
36 連結部
37 スリット
211 雄ネジ
313 雌ネジ
331 係合凹溝
332 溝上壁面
334 延長部
371 くびれ部
431 係合リブ
A カートリッジ
B ホルダー