(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011492
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】材料の分離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/24 20060101AFI20250117BHJP
B65H 3/56 20060101ALI20250117BHJP
B65H 1/04 20060101ALI20250117BHJP
B21D 43/24 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B65H3/24 A
B65H3/56 330S
B65H1/04 326A
B21D43/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113639
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】592103327
【氏名又は名称】伊達 興代
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】伊達 興代
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA10
3F343FB17
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC03
3F343GD01
3F343HA21
3F343JC09
3F343KA06
3F343KB04
3F343KB05
3F343LA03
3F343LA13
3F343MA02
3F343MA09
3F343MA23
(57)【要約】
【課題】材料が非磁性体であるか磁性体であるかに関係なく、材料を分離することができる材料の分離装置を提供する。
【解決手段】互いが重なっている複数枚の薄い平板状の材料3から、1枚の材料3Aを残して他の材料3Bを分離する材料の分離装置1であって、平面状の上面9と上面9から凹んでおり底部に載置部13が形成されている凹部11とが設けられており材料3が凹部11に入り込んで設置されたときに材料3の上面が上面9と同じ平面内に存在するように構成されている材料設置部5と、材料設置部5の上面に接して、第1の位置P1から第2の位置P2まで、凹部11を通って移動する移動体7とを有する材料の分離装置1である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向で互いが重なっている複数枚の薄い平板状の材料から、1枚の材料を残して他の材料を分離する材料の分離装置であって、
平面状の上面と、この上面に設けられ前記上面から凹んでおり底部に載置部が形成されている凹部とを備えて構成されており、前記材料が前記凹部に入り込んで設置されたときに、前記材料の上面が前記平面状の上面と同じ平面内に存在するように構成されている材料設置部と、
前記材料設置部の上面に接するか、もしくは、前記材料設置部の上面から僅かに離れて、前記材料設置部の上面の展開方向のうちの所定の一方向で、前記凹部から離れている第1の位置から、前記凹部を間にして前記第1の位置とは反対側にある第2の位置まで、前記凹部を通って移動する移動体と、
を有する材料の分離装置。
【請求項2】
前記移動体は移動体支持体によって支持されており、
前記移動体支持体は、前記材料設置部の上面に対して直交する方向で弾性を備えている請求項1に記載の材料の分離装置。
【請求項3】
厚さ方向で互いに重なっている複数枚の前記材料のうちの最も下側に位置している1枚の材料が、前記材料設置部の凹部に入り込むようにして、複数枚の前記材料が前記材料設置部に設置された状態で、前記移動体が前記第1の位置から前記第2の位置まで移動することで、前記移動体とともに前記最も下側に位置している1枚の材料から離れて移動した残りの前記材料を落下させるためのシュータを備えて構成されており、
前記シュータの下端部には、前記残りの材料の厚さ方向が上下方向になるようにして、もしくは、前記残りの材料の厚さ方向が上下方向に対して小さい交差角度で交差する方向になるようにして、前記残りの材料を前記シュータから落下させるための切り欠きが設けられている請求項1に記載の材料の分離装置。
【請求項4】
前記材料設置部は、平板状に形成され厚さ方向が上下方向になっていることで平面状の上面を備えているベース体と、薄い平板状に形成され厚さ方向が上下方向になっており前記材料設置部の凹部を形成する貫通孔が形成されている凹部形成体とを備えて構成されており、
前記凹部形成体の平面状の下面が前記ベース体の平面状の上面に接するようにして前記凹部形成体が前記ベース体に設置されており、
前記凹部形成体が、前記ベース体に対して着脱できるように構成されており、
前記移動体支持体は、厚さ方向が上下方向になっている薄い平板状の第1の支持部材と、厚さ方向が上下方向になっている薄い平板状の第2の支持部材とを備えて構成されており、
厚さ方向が上下方向になるようにして、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に設けられており、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とに対して着脱できるようになっているスペーサを有する請求項2または請求項3に記載の材料の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の分離装置に係り、特に、重なっている板状の材料を分離するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の板材(材料)を磁化しながら持ち上げることで板材を分離する板材分離装置(材料の分離装置)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の材料の分離装置では、材料が非磁性体である場合、材料の分離をすることができない。本発明は、厚さ方向で互いが重なっている複数枚の薄い平板状の材料から、1枚の材料を残して他の材料を分離する材料の分離装置であって、材料が非磁性体であるか磁性体であるかに関係なく、材料を分離することができる材料の分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様に係る材料の分離装置は、厚さ方向で互いが重なっている複数枚の薄い平板状の材料から、1枚の材料を残して他の材料を分離する材料の分離装置であって、平面状の上面と、この上面に設けられ前記上面から凹んでおり底部に載置部が形成されている凹部とを備えて構成されており、前記材料が前記凹部に入り込んで設置されたときに、前記材料の上面が前記平面状の上面と同じ平面内に存在するように構成されている材料設置部と、前記材料設置部の上面に接するか、もしくは、前記材料設置部の上面から僅かに離れて、前記材料設置部の上面の展開方向のうちの所定の一方向で、前記凹部から離れている第1の位置から、前記凹部を間にして前記第1の位置とは反対側にある第2の位置まで、前記凹部を通って移動する移動体とを有する材料の分離装置である。
【0006】
また、本発明の態様に係る材料の分離装置では、前記移動体が移動体支持体によって支持されており、前記移動体支持体が、前記材料設置部の上面に対して直交する方向で弾性を備えている。
【0007】
また、本発明の態様に係る材料の分離装置は、厚さ方向で互いに重なっている複数枚の前記材料のうちの最も下側に位置している1枚の材料が、前記材料設置部の凹部に入り込むようにして、複数枚の前記材料が前記材料設置部に設置された状態で、前記移動体が前記第1の位置から前記第2の位置まで移動することで、前記移動体とともに前記最も下側に位置している1枚の材料から離れて移動した残りの前記材料を落下させるためのシュータを備えて構成されており、前記シュータの下端部には、前記残りの材料の厚さ方向が上下方向になるようにして、もしくは、前記残りの材料の厚さ方向が上下方向に対して小さい交差角度で交差する方向になるようにして、前記残りの材料を前記シュータから落下させるための切り欠が設けられている材料の分離装置である。
【0008】
また、本発明の態様に係る材料の分離装置は、前記材料設置部が、平板状に形成され厚さ方向が上下方向になっていることで平面状の上面を備えているベース体と、薄い平板状に形成され厚さ方向が上下方向になっており前記材料設置部の凹部を形成する貫通孔が形成されている凹部形成体とを備えて構成されており、前記凹部形成体の平面状の下面が前記ベース体の平面状の上面に接するようにして前記凹部形成体が前記ベース体に設置されており、前記凹部形成体が、前記ベース体に対して着脱できるように構成されており、前記移動体支持体は、厚さ方向が上下方向になっている薄い平板状の第1の支持部材と、厚さ方向が上下方向になっている薄い平板状の第2の支持部材とを備えて構成されており、厚さ方向が上下方向になるようにして、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に設けられており、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とに対して着脱できるようになっているスペーサを有する材料の分離装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、材料が非磁性体であるか磁性体であるかに関係なく、材料を分離することができる材料の分離装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る材料の分離装置の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る材料の分離装置の動作を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る材料の分離装置のシュータを示す図であり、(b)は(a)におけるVB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る材料の分離装置(材料分離装置)1について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。
図4(b)で示すように、材料分離装置1は、厚さ方向で互いが重なっている複数枚(たとえば2枚)の薄い平板状の材料3(3A、3B)から、1枚の材料3Aを残して他の材料3Bを分離する装置である。
【0012】
ここで説明の便宜のために、水平な所定の一方向をX方向(前後方向)とし、水平な所定の他の一方向であってX方向に対して直交する方向をY方向(横方向)とし、X方向とY方向とに対して直交する方向をZ方向(上下方向)とする。なお、X方向、Y方向、Z方向が、水平方向、上下方向に対して斜めになっている方向であってもよい。
【0013】
複数枚の材料(ワーク)3は、互いの形状が一致している。すなわち、複数枚の材料3は、厚さ寸法tの値が互いにほぼ一致しており、外径寸法dの値が互いにほぼ一致している。
【0014】
材料3には、たとえば、プレス加工等の塑性加工が施されるようになっている。材料3は、アルミニウム、アルミニウム合金等の非磁性の金属、もしくは、鋼等の磁性金属で構成されている。互いに重なっている複数枚の材料3をこれらの厚さ方向で見ると、材料3はたとえば円形状に形成されており、材料3の外周の全周が互いにほぼ重なっている。たとえば、重なっている2枚の材料3(3A、3B)をこれらの厚さ方向で見ると、1枚目の材料のほぼ総てに2枚目の材料のほぼ総てが重なっている。
【0015】
材料分離装置1は、材料設置部5と移動体(プッシャーピース)7とを備えて構成されている。材料設置部5には、平面状の上面(たとえば水平方向に展開している上面;Z方向に対して直交している上面)9と、この上面9内に設けられ上面9から下側に凹んでいる凹部11とが設けられている。凹部11の底部には、載置部13が設けられている。載置部13に載置されている平板状の材料3は厚さ方向がZ方向になっている。1枚の材料3が凹部11に入り込んで材料設置部5に設置されたときには、材料3の上面が平面状の上面9と同じ平面内に存在するようになっている。なお、材料3が凹部11に入り込んで材料設置部5に設置されたときに材料3を真空吸着等することで保持してもよい。すなわち、材料3の下面を平面13に吸着させて保持してもよい。
【0016】
さらに説明すると、載置部13は、たとえば、上面9と平行な平面13で形成されている。凹部11の深さ寸法hの値(上面9と底部の平面13との間の寸法hの値)は、1枚の材料3の厚さ寸法tの値と等しくなっている。なお、凹部11の深さ寸法hの値と、1枚の材料3の厚さ寸法tの値とが完全に等しくなることはほとんど無い。そこで、凹部11の深さ寸法hの値と1枚の材料3の厚さ寸法tの値との差が、0.3mm以内であれば、凹部11の深さ寸法hの値と1枚の材料3の厚さ寸法tの値とが等しくなっているものとする。
【0017】
凹部11の内径寸法iの値は、材料3の外径寸法dの値の値よりも僅かに大きくなっている。たとえば、凹部11の内径寸法iの値は、材料3の外径寸法dの値よりも1mm~10mm程度大きくなっている。さらに、凹部11の内径寸法iの値が、材料3の外径寸法dの値よりも、材料3の外径寸法dの値の1/100~1/10程度大きくなっていてもよい。
【0018】
材料3は、この厚さ方向が凹部11の深さ方向と一致するようにして、また、複数枚の材料3が重なっている場合は最も下側の1枚の材料3Aが凹部11に入り込むようにして、材料設置部5に設置されるようになっている。また、材料3が重なっている場合は、最も下側の1枚の材料3Aの上に材料3Bが載っている。
【0019】
さらに説明すると、材料設置部5に1枚の材料3が入り込んで設置された状態(1枚の材料設置状態)では、材料3の厚さ方向が、たとえば、上下方向になっている。1枚の材料設置状態で材料3の下面が凹部11の底部の平面13に接していることで、1枚の材料3が凹部11の底部の平面13上に載置されている。また、1枚の材料設置状態では、材料3の上面と材料設置部5の上面9とがほぼ1つの平面内に位置している。
【0020】
厚さ方向で互いに重なっている2枚の材料3(3A、3B)が、材料設置部5に設置された状態(2枚の材料設置状態)について説明する。2枚の材料設置状態では、下側の1枚の材料3Aは、上述した1枚の材料設置状態になっている。2枚の材料設置状態では、上側の1枚の材料3Bは、下側の1枚の材料3Aの上に載っており、材料設置部5の上面9よりも上側に位置している。また、2枚の材料設置状態では、下側の1枚の材料3Aの上面と材料設置部5の上面9と上側の1枚の材料3Bの下面とが1つの平面内に位置している。
【0021】
厚さ方向で互いに重なっている3枚以上の複数枚の材料3の場合も、最も下側の1枚の材料3Aが、上述した1枚の材料設置状態になっている。下から2番目の材料3Bは、2枚の材料設置状態における上述した上側の1枚の材料3Bの状態になっている。下から3番目以降の材料3は、下から2番目の材料3Bの上に載っている。
【0022】
移動体7は、材料設置部5の上側に位置している。移動体7は、材料設置部5の上面9に接するか、もしくは、材料設置部5の上面9から僅かに離れている。移動体7が、材料設置部5の上面9から僅かに離れている態様では、材料3の厚さ寸法tの値より小さい値だけ、移動体7が材料設置部5の上面9から離れている。たとえば、移動体7が材料設置部5の上面9から0.01mm~0.5mm程度離れている。
【0023】
移動体7は、材料設置部5の上面9の展開方向のうちの所定の一方向(たとえば、X方向)で、第1の位置(後側の位置)P1から第2の位置(前側の位置)P2まで、凹部11を通って(Z方向で見て凹部11を通って)直線的に移動するようになっている。
【0024】
第1の位置P1は、凹部11よりも後側に位置しており凹部11から所定の距離だけ離れている位置である。第2の位置P2は、凹部11よりも前側に位置しており凹部11から所定の距離だけ離れている位置であり、凹部11を間にして第1の位置P1とは反対側にある位置である。
【0025】
1枚の材料設置状態で、移動体7が第1の位置P1から第2の位置P2まで移動しても、材料3には特に何も起こらないようになっている。2枚の材料設置状態で、移動体7が第1の位置P1から第2の位置P2まで移動する。すると、材料設置部5の凹部11に差し掛かったときに移動体7が上側の1枚の材料3Bに当接するようになっている。移動体7がさらに移動すると、凹部11に入り込んでいる下側の1枚の材料3Aは移動せず凹部11内に留まるが、上側の1枚の材料3Bが移動体7とともに移動し、上側の1枚の材料3Bが下側の1枚の材料3Aから分離されるようになっている。厚さ方向で互いに重なっている3枚以上の複数枚の材料3の場合も、最も下側の1枚の材料3Aを残して、他の残りの材料3が移動体7とともに移動するようになっている。
【0026】
移動体7は移動体支持体(プッシャーピース取付けプレート)15によって支持されている。移動体7は、移動体支持体15に一体的に設けられている。ここで、移動体7が材料設置部5の上面9に接したまま移動体支持体15とともに移動するように構成されていることとする。移動体支持体15は、材料設置部5の上面9に対して直交する方向(Z方向)で弾性を備えている。
【0027】
移動体支持体15が上述した弾性を備えており、移動体支持体15が弾性変形すると、この弾性変形に応じて、移動体7がZ方向で僅かに移動するようになっている。
【0028】
さらに詳しく説明する。移動体7が材料設置部5の上面9に接しており、1枚の材料3の厚さ寸法tの値が凹部11の深さ寸法hの値よりも僅かに大きなっている2枚の材料設置状態を想定する。
【0029】
このような2枚の材料設置状態では、下側の1枚の材料3Aの上面と上側の1枚の材料3Bの下面とは、材料設置部5の上面9よりも僅かに上側に位置している。この状態で、移動体7が第1の位置P1から第2の位置P2への移動をし始めて、材料3(材料設置部5の凹部11)のところに至る。すると、移動体7の側面が上側の1枚の材料3Aの縁(側面)に当接するとともに、移動体7の材料設置部5の上面9に接していた底面(底面の一部)が下側の1枚の材料3Aの上面に当接する。そして、移動体7が下側の1枚の材料3Aから上方向の力を受けて、移動体支持体15が上側に僅かに撓む(弾性変形する)とともに、移動体7が僅かに上側に移動するようになっている。
【0030】
移動体7が、第2の位置P2側にさらに移動する。すると、下側の1枚の材料3Aは材料設置部5の凹部11内に留まっているが、移動体7が下側の1枚の材料3Aの上面に接触しつつ上側の1枚の材料3Bともに移動する。そして、移動体7が下側の1枚の材料3A(材料設置部5の凹部11)のところから離れると移動体支持体15が復元し、移動体7が材料設置部5の上面9に再び接するようになっている。このような移動体7の上側への僅かな移動や復元は、1枚の材料設置状態(厚さ寸法t>深さ寸法h)でも発生するようになっている。
【0031】
上側の1枚の材料3Bは、移動体7に当接し続け、移動体7とともに、下側の1枚の材料3Aの上面、材料設置部5の上面9に接触し滑りつつ、下側の1枚の材料3Aや材料設置部5の上で移動するようになっている。
【0032】
次に、移動体7が材料設置部5の上面9に接しており、1枚の材料3の厚さ寸法tの値が凹部11の深さ寸法hの値よりも僅かに小さくなっている2枚の材料設置状態を想定する。
【0033】
このような2枚の材料設置状態では、下側の1枚の材料3Aの上面と上側の1枚の材料3Bの下面とは、材料設置部5の上面9よりも僅かに下側に位置している。この状態で、移動体7が、第1の位置P1から第2の位置P2への移動をし始めて、材料3(材料設置部5の凹部11)のところに至る。すると、移動体7の側面が上側の1枚の材料3Bの縁(側面)に当接するとともに、移動体7の材料設置部5の上面9に接していた底面は、この一部が移動体7の材料設置部5の上面9に接し続ける。移動体7の底面は、下側の材料3Aから僅かに離れている。
【0034】
移動体7が、第2の位置P2側にさらに移動する。すると、下側の1枚の材料3Aは材料設置部5の凹部11内に留まっているが、移動体7が材料設置部5の上面9に接触しつつ上側の1枚の材料3Bとともに移動する。なお、移動体7によって上側の1枚の材料3Bが押されると、1枚の材料3の厚さ寸法tの値が凹部11の深さ寸法hの値よりも僅かに小さくなっていることで、上側の1枚の材料3Bの縁(側面)の下端が、凹部11に引っ掛かると思われる。しかし、凹部11の深さ寸法hの値と1枚の材料3の厚さ寸法tの値との差が僅かであるので、上側の1枚の材料3Bが、凹部11の縁を容易に乗り越え、上記引っ掛かりが発生することは無い。
【0035】
また、材料分離装置1には、シュータ17が設けられている。シュータ17は残りの材料3(3B)を自由落下させるために設けられている。残りの材料3(3B)について説明する。厚さ方向で互いに重なっている複数枚の材料3のうちの最も下側に位置している1枚の材料3Aが、材料設置部5の凹部11に入り込むようにして、複数枚の材料3が材料設置部5に設置された状態を想定する。この状態で、残りの材料3(3B)とは、移動体7が第1の位置P1から第2の位置P2まで移動することで、移動体7とともに最も下側に位置している1枚の材料3Aから離れて移動した材料である。
【0036】
シュータ17の下端部には、残りの材料3(3B)の厚さ方向が極力上下方向になるようにして残りの材料3(3B)をシュータ17から落下させるための切り欠き19が設けられている。すなわち、切り欠き19は、残りの材料3(3B)の厚さ方向が上下方向になるようにして残りの材料3(3B)を落下させるために設けられている。もしくは、切り欠き19は、残りの材料3(3B)の厚さ方向が上下方向に対して小さい交差角度で交差する方向になるようにして残りの材料3(3B)を落下させるために設けられている。さらに説明すると、切り欠き19は、残りの材料3(3B)の厚さ方向が上下方向に対して30°以下(好ましくは20°以下、さらに好ましくは15°以下)になるようにして残りの材料3(3B)を落下させるために設けられている。
【0037】
さらに説明すると、シュータ17は、第1の傾斜面21と第2の傾斜面23とを備えて構成されている。切り欠き19は、第2の傾斜面23の下端部に設けられている。第1の傾斜面21は、材料設置部5の上面9からわずかに離れており、材料設置部5の上面9の下側に位置している。第2の傾斜面23は、第1の傾斜面21の下側に位置しており第1の傾斜面21につながっており傾斜角度が第1の傾斜面21よりも緩やかになっている。
【0038】
材料設置部5は、ベース体25と凹部形成体27とを備えて構成されている。ベース体25は、平板状に形成されており、厚さ方向が上下方向になっている。ベース体25は、水平方向に展開している平面状の上面29を備えている。凹部形成体27は、薄い平板状に形成されており厚さ方向が上下方向になっている。凹部形成体27には、材料設置部5の凹部11を形成する貫通孔31が形成されている。凹部形成体27の貫通孔31は、たとえば凹部形成体27の中央部に設けられており、凹部形成体27の厚さ方向で凹部形成体27を貫通している。
【0039】
凹部形成体27の平面状の下面がベース体25の平面状の上面29に接するようにして凹部形成体27がベース体25に一体的に設置されている。凹部形成体27は、ベース体25に対して着脱できるように構成されている。
【0040】
さらに説明すると、凹部形成体27は、ボルト等の締結具によってベース体25に固定されていることで、ベース体25に対して容易に着脱できるようになっている。すなわち、凹部形成体27がベース体25に固定されている状態でボルトを緩め凹部形成体27とベース体25とからボルトを取り外すことで、凹部形成体27をベース体25から取り外すことができるようになっている。また、凹部形成体27がベース体25から取り外されている状態で凹部形成体27をベース体25上の適宜の位置に置く。そして、ボルトを凹部形成体27とベース体25とに係合させてボルトを締め付けることで、凹部形成体27をベース体25に固定することができるようになっている。
【0041】
移動体支持体15は、厚さ方向が上下方向になっている薄い平板状の第1の支持部材33と、厚さ方向が上下方向になっている薄い平板状の第2の支持部材35と厚さ方向が上下方向になっている平板状のスペーサ37とを備えて構成されている。スペーサ37は、第1の支持部材33と第2の支持部材35との間に設けられており、第1の支持部材33と第2の支持部材35とに対して着脱できるようになっている。
【0042】
さらに説明すると、第1の支持部材33と第2の支持部材35とスペーサ37とは、ボルト等の締結具によって互いが固定されている。これにより、スペーサ37が第1の支持部材33と第2の支持部材35とに対して容易に着脱できるようになっている。
【0043】
すなわち、第1の支持部材33とスペーサ37とが第2の支持部材35に固定されている状態でボルトを緩め第1の支持部材33とスペーサ37と第2の支持部材35とからボルトを取り外す。これにより、第1の支持部材33とスペーサ37とを第2の支持部材35から取り外すことができるようになっている。また、第1の支持部材33とスペーサ37とが第2の支持部材35から取り外されている状態で第1の支持部材33とスペーサ37と第2の支持部材35の適宜の位置に置く。そして、ボルトを第1の支持部材33とスペーサ37とを第2の支持部材35とに係合させてボルトを締め付けることで、第1の支持部材33とスペーサ37とを第2の支持部材35に固定することができるようになっている。
【0044】
材料分離装置1についてさらに詳しく説明する。材料分離装置1は、架台39と矩形な平板状のベース体支持体(基板)41とを備えて構成されている。矩形な平板状のベース体支持体41はこの厚さ方向が上下方向になるようにして、スタッドボルト43等を介して架台39に一体的に設けられている。ベース体支持体41は、架台39の上側で、架台39の上端から離れている。
【0045】
ベース体25は矩形な平板状に形成されており、ベース体支持体41の上側でボルト等の締結具によってベース体支持体41に一体的に設けられている。Z方向で見ると、ベース体25はベース体支持体41の中央部に配置されている。また、ベース体支持体41の前端部には、上述した残りの材料3Bを落下させるための矩形状の切り欠き45が設けられている。切り欠き45は、ベース体支持体41をこの厚さ方向で貫通している。切り欠き45は、Y方向(横方向)ではベース体支持体41の中央部に位置しており、X方向では、ベース体支持体41の前端からベース体25の前端にわたって設けられている。
【0046】
凹部形成体27は矩形な薄い平板状に形成されてベース体25の上側でベース体25に一体的に設けられている。Z方向で見ると、凹部形成体27の貫通孔31は、材料3に形状に合わせて円形状に形成されており、凹部形成体27の中央部に配置されている。Z方向で見ると、ベース体25の外周の総てと凹部形成体27の外周の総てとが互いに重なっている。なお、ベース体25の中央部には、凹部47が設けられており、この凹部47内に材料3を検出するためのセンサー49が設けられている。
【0047】
移動体7は、たとえば、合成樹脂等の材料で円柱状に形成されており、円柱の中心軸がZ方向になるようにして、移動体支持体15に一体的に設けられている。なお、移動体7以外のもの(移動体支持体15、シュータ17、ベース体25、凹部形成体27等)は、鋼等の金属で構成されている。
【0048】
移動体支持体15の第1の支持部材33は、矩形な薄い板状に形成されており、厚さ方向がZ方向になっている。また、移動体支持体15にはZ方向で見て弓形状に見える切り欠き51が設けられている。切り欠き51はZ方向では第1の支持部材33を貫通している。切り欠き51はY方向では、第1の支持部材33の中央部に位置しており、X方向では、第1の支持部材33の前端部に位置している。切り欠き51の弓形の円弧の曲率半径の値は、凹部形成体27の貫通孔31の半径の値とほぼ等しくなっている。Z方向で見ると、凹部形成体27の貫通孔31の中心のY方向での位置と、切り欠き51の中心のY方向での位置とは互いに一致している。
【0049】
移動体7は、一対で設けられており、第1の支持部材33にボルト等の締結部材で固定されている。これにより、移動体7を容易に交換することができるようになっている。移動体7は、Z方向では、第1の支持部材33の下面から下側に突出している。Z方向で見ると、一対の移動体7は、第1の支持部材33(切り欠き51)の中心を通りX方向に延びている直線に対して対称に配置されている。
【0050】
これにより、一対の移動体7の間に材料3を位置させ、一対の移動体7を同時に材料3に当接させて、材料3のY方向での移動を阻止して、材料3を安定した状態でX方向に移動させることができる。なお、移動体7が3つ以上の複数個設けられていてもよい。移動体7が3つ設けられている場合、3つ目の移動体7は、Y方向で第1の支持部材33の中央に設けられており、移動体支持体15がX方向で移動したときに、3つ移動体7がほぼ同時に材料3に当接するようになっている。
【0051】
移動体7や第1の支持部材33等をZ方向で見ると、一対の移動体7はX方向では第1の支持部材33の前端の近傍に位置しており、一対の移動体7はY方向では第1の支持部材33の切り欠き51の外側に位置している。Z方向で見ると、移動体7の外径寸法の値は、材料設置部5の凹部11の内径寸法の値に比べて、十分に小さくなっている。さらに、Z方向で見ると、Y方向で、一対の移動体7のうちの一方の移動体7の中心は、材料設置部5の凹部11の一方の端のところに位置しており、一対の移動体7のうちの他方の移動体7中心は、材料設置部5の凹部11の他方の端のところに位置している。
【0052】
ベース体支持体41の上面には、一対のリニアガイドベアリング53と、たとえば空気圧シリンダ55で構成されたアクチュエータとが設けられている。なお、アクチュエータとしてサーボモータ等の他のものが採用されていてもよい。一対のリニアガイドベアリング53のレール57のそれぞれは、X方向に長く延びており、Y方向では材料設置部5の外側に配置されている。空気圧シリンダ55も、材料設置部5の外側に配置されている。
【0053】
移動体支持体15の第2の支持部材35は、Y方向に細長い矩形な薄い板状に形成されえている。第2の支持部材の長手方向の一方の端部は、一方のリニアガイドベアリング53のベアリング59に固定されている。第2の支持部材の長手方向の他方の端部は、他方のリニアガイドベアリング53のベアリング59と空気圧シリンダ55に固定されている。そして、空気圧シリンダ55によって、移動体7と第1の支持部材33と第2の支持部材35とが、X方向で移動するようなっている。
【0054】
なお、スペーサ37は、矩形な平板状に形成されており、Y方向では、第1の支持部材33ともに、第2の支持部材35の中央部に配置されている。また、第1の支持部材33は、第2の支持部材35からX方向前側に突出している。スペーサ37は、Z方向で、第1の支持部材33と第2の支持部材35とに挟まれて第1の支持部材33と第2の支持部材35との間に配置されている。また、Z方向では、第1の支持部材33が第2の支持部材35よりも上側に位置している。なお、
図2、
図3ではスペーサ37の表示が省略されている。
【0055】
シュータ17は、第1の傾斜面21を形成する第1の傾斜面形成材61と、第2の傾斜面23を形成する第2の傾斜面形成材63とを備えて構成されている。第1の傾斜面形成材61は矩形な薄い平板状に形成されており、第2の傾斜面形成材63も矩形な薄い平板状に形成されている。
【0056】
シュータ17の切り欠き19は、第2の傾斜面形成材63に設けられている。第2の傾斜面形成材63の厚さ方向で見ると、切り欠き19は半円状に形成されている。切り欠き19は、第2の傾斜面形成材63をこの厚さ方向で貫通している。切り欠き19は、第2の傾斜面形成材63の下端部に設けられている。切り欠き19は、Y方向では、第2の傾斜面形成材63の中央部に位置している。切り欠き19の半円の半径の値は、凹部形成体27の貫通孔31の半径の値とほぼ等しくなっている。Z方向で見ると、切り欠き19のY方向での中心の位置と、凹部形成体27の貫通孔31のY方向での中心の位置とは互いに一致している。
【0057】
シュータ17によって落下してきた材料3は、切り欠き19を通って、シュータ17から落下するようになっている。さらに説明すると、
図5(b)に参照符号M1で示すところに位置している材料3は、この大部分が第2の傾斜面形成材63に載っている。材料3は重力の作用によって、参照符号M2で示す位置を通って、参照符号M3で示すところに位置するようになっている。参照符号M3で示すところに位置している材料3は、切り欠き19を通って、シュータ17から落下するようになっている。
【0058】
位置M3に到達する直前の状態である参照符号M2で示す位置では、材料3の半円円弧状の縁部が、第2の傾斜面形成材63に載っており、材料3の重心Gが、第2の傾斜面形成材63の端65よりも、後側に位置している。これにより、材料3が第2の傾斜面形成材63に載っており、第2の傾斜面形成材63から落下しないようになっている。
【0059】
材料3が、参照符号M2で示す位置から僅かに前側に移動すると、材料3の重心Gが、第2の傾斜面形成材63の端65よりも、前側に位置し、材料3が切り欠き19を通って、シュータ17から落下するようになっている。材料3が第2の傾斜面形成材63での載置がされなくなるときには、参照符号M2で示す位置にある材料3の三日月状の縁部が、ほぼ一斉に第2の傾斜面形成材63から離れる。これにより、材料3の厚さ方向が上下方向になるようにして材料3がシュータ17から落下するようになっている。
【0060】
次に、材料分離装置1の動作を説明する。材料3は、図示しない材料供給部から、たとえば真空吸着を用いた材料搬送装置67で材料分離装置1に供給され材料分離装置1の材料設置部5に設置される。なお、材料供給部には、厚さ方向で互いが重なっている多数枚(たとえば50枚~100枚程度)薄い平板状の材料3が収容されている。材料搬送装置67は、材料供給部で重なっている材料3のうちの最も上側にある材料3を吸着して、搬送するようになっている。
【0061】
材料3が材料設置部5に供給された後、移動体7が第1の位置P1から第2の位置P2移動までする。このとき、材料設置部5に2枚以上の材料3が供給されていたならば、上側の材料3Bが、最も下側の材料3Aから分離され、シュータ17から厚さ方向がほぼ上下方向になっている状態で落下し、材料収容体(ワークボックス)69内に収容される。材料収容体69内に収容されている材料3は、厚さ方向が上下方向になっている。
【0062】
続いて、移動体7が第2の位置P2から第1の位置P1移動までする。この後、材料設置部5に存在している1枚の材料3Aを、材料搬送装置71で搬送し、図示しないプレス機械に挿入する。続いて、次の材料3を材料分離装置1に供給する動作を繰り返す。
【0063】
材料分離装置1は、平面状の上面9とこの上面9内に設けられている凹部11とが設けられている材料設置部5と、第1の位置P1から第2の位置P2まで凹部11を通って移動する移動体7とを備えて構成されている。重なっている2枚の材料3が材料設置部5に設置されている状態で移動体7が移動する。すると、下側の1枚の材料3Aは移動しないが、上側の1枚の材料3Bが移動体7とともに移動し、上側の1枚の材料3Bが下側の1枚の材料3Aから分離されるようになっている。
【0064】
これにより、材料3が非磁性体であるか磁性体であるかに関係なく、材料3を確実に分離することができる。さらに、材料3にバリがあったり、材料3が油で濡れていることで、材料3が互いに貼りつくようにして重なっていても、材料3を分難なく離すことができる。
【0065】
材料分離装置1では、移動体7が移動体支持体15によって支持されており、移動体支持体15が材料設置部5の上面9に対して直交する方向(Z方向)で弾性を備えている。これにより、凹部11の深さ寸法hの値に対する1枚の材料3の厚さ寸法tの値が僅かに異なっていても、材料3を確実に分離することができる。
【0066】
また、材料分離装置1には、シュータ17が設けられており、シュータ17の下端部には、切り欠き19が設けられている。切り欠き19は、最も下側にある1枚の材料3Aから分離された材料(残りの材料)3Bの厚さ方向が極力上下方向になるようにして、分離された材料3Bをシュータ17から落下させるために設けられている。これにより、シュータ17から落下した残りの材料3Bの傷付きが防止され、落下した材料3を無駄にすることなく加工のために使用することができる。
【0067】
また、材料分離装置1では、凹部形成体27がベース体25に対して着脱できるように構成されており、移動体支持体15が、第1の支持部材と33第2の支持部材35とを備えて構成されている。また、スペーサ37が第1の支持部材33と第2の支持部材35との間に設けられており、スペーサ37が第1の支持部材33と第2の支持部材35とに対して容易に着脱できるようになっている。
【0068】
これにより、凹部形成体27の厚さおよびスペーサ37の厚さを適宜変えることで、様々な厚さの材料3を分離することができる。たとえば、材料3の厚さが1mmの場合、凹部形成体27の厚さ、スペーサ37の厚さを1mmとすることで、1mmの厚さの材料3を分離することができる。また、材料3の厚さが1.2mmの場合、凹部形成体27の厚さ、スペーサ37の厚さを1.2mmとすることで、1.2mmの厚さの材料3を分離することができる。
【0069】
なお、所定の厚さの材料3の分離をする場合に、凹部形成体27の厚さとスペーサ37の厚さとが互いに異なっていてもよい。たとえば1mmの厚さの材料3の分離をする場合、凹部形成体27の厚さを1mmとし、スペーサ37の厚さを10mmとしてもよい。また、1.2mmの厚さの材料3の分離をする場合、凹部形成体27の厚さを1.2mmとし、スペーサ37の厚さを10.2mmとしてもよい。
【0070】
また、凹部形成体27の貫通孔31の大きさ、形状(厚さ方向で見たときに形状)を変えることで、様々な形状の材料3の分離をすることができる。たとえば、
図1等では、材料3として薄い円板状の材料3が示されており、凹部形成体27の貫通孔31も材料3の形状に応じて円形状になっている。ここで、材料3の外径の値が変わった場合、材料3の外径に応じて凹部形成体27の貫通孔31の内径も変えることになる。また、材料3が円板以外の形状(たとえば矩形な平板状)になったときには、凹部形成体27の貫通孔31も矩形な形状になる。
【0071】
また、材料3の外径の値や材料3の形状(厚さ方向で見たときの形状)が変わったことに応じて、移動体支持体15での移動体7の設置位置を必要に応じて変えてもよいし、移動体7のストロークを変えてもよい。
【0072】
材料分離装置1等についてさらに説明する。本発明による2枚分離装置(材料分離装置)1は、金属加工用プレスに取り付けた金型に加工素材のブランク材を1枚ずつ確実に分離し、金型に供給することを目的にした発明である。
【0073】
プレス加工用としてのブランク材料は、コイル状に巻回されているので巻き癖がある。矯正のため、ロールレベラー等を用いてブランク材を平坦にしてからプレス金型でパンチし、製造する。
【0074】
プレスで打ち抜かれたブランク材(材料3)同士が重なり固着し、分離が困難となる対象の板厚は薄板寸法のものが多い。
【0075】
実施例のブランク材の厚みは、0.3mmから4mm程度の薄板サイズのものが多い。実施例では、ブランク材のサイズは、外径寸法φ30mmからφ150mm位のサイズのものを対象にした。
【0076】
外径形状は丸形状の外、変形形状でもよい。ブランク材を積層状態で保管すると、積層された最下段になるほどブランク材の自重が増加し、加重圧力が大きくなり、ブランク間の隙間を消失減少させ、密着する。ブランク材には、更に防錆や加工オイルが塗布されている場合が多い。
【0077】
更に長期に亘り積載保管、経時条件が密着条件に加わると、互いのブランク材を離間させることは更に密着が強固となり分離は困難となる。
【0078】
経時条件が密着条件に加わると、上下のブランク材は表裏一体となり、2枚または複数枚のブランク材を互いに離間させることは更に困難となる。
【0079】
ストックするときは、横置き状に積層したり、斜め横置き状に保管したりしてワークプレート間の自重による圧力を小さくして経時によるワークプレート間の密着或いは斜め横置きに分離直前に斜めに積み直したり積み上げたりして分離しやすくしたりする。
【0080】
磁性体の金属材質の場合等は、磁石の性質を応用した分離機が市販されているので応用するのもよい。しかし、残留磁気を嫌う部品もあるので、その場合は本機の分離方式で解決できる。
【0081】
非磁性体のステンレスやアルミ材質の場合は、磁力を利用できない。磁力に代わる2枚分離の技術的対応は、長年未解決の侭の隘路であった。
【0082】
本発明は上記問題を解決した発明である。以下、構造を説明記す。
【0083】
予め作業者が人為的にワーク材の密着を2枚から3枚程度までばらばらになるようにほぐしてから、ディスタッカーマガジンに150mm程度の高さ迄積載する。
【0084】
ディスタッカーマガジンに積載されている、一番上にあるワークプレートをバキューム吸盤カップ等で吸着し、エアーシリンダー等で動作するアームによって2枚分離装置の予め決められた所定位置の1枚分の厚みに相当する深さの凹状のガイト位置に1枚目のワークプレートを搬送すると共に、凹状穴に沈み込ませ位置決めをして、真空破壊する。
【0085】
複数枚(2枚以上密着している)の材料3が同時に一緒に搬送された場合は、1枚分の凹穴の沈み込み深さより凸出した状態になる(複数枚(2枚以上)密着している)。
【0086】
2枚以上ワークプレートがディスタックマガジンから運ばれた場合、ワークプレート同士が密着していることがある(分離対象ワークプレートである)。
【0087】
2枚分離装置は搬送されたブランク材の最下位置にある1枚目のブランク材のみ沈み込ませ、半固定的に拘束し、位置決めして残置する。2枚目以上のワークプレートはプッシャー等で1枚目を沈み込ませてあるブランク上平面に沿って押し出され、1枚目の上面以上の高さにあるワーク材を押し出し、密着を破壊して分離する。
【0088】
ワークプレート最下段の1枚のみ残置し、2枚目以上のワークを分離するために予め1枚の板厚と同じ寸法の深さに合わせた凹穴を設け、搬送し、沈み込ませる。
【0089】
なお、本分離装置(材料分離装置)1に関しては、正常動作も含め、以下の4つの状況が想定される。
【0090】
その1;ワークプレートが搬送されない場合
トラプル(異常)。搬送装置が原点に戻って再度ワークプレートの搬送動作を行う。これが数回連続した場合は、本機が異常と判断する。
【0091】
その2;ワークプレートが1枚のみの搬送となる場合
正常状態。2枚目以上のワークがない(固着していない)ため、分離不要。ワークプレートが1枚のみのため、プッシャーは2枚目以上のワークプレートを押し出すことはない。
【0092】
その3;本装置の目的通り、2枚目以上(複数枚)のワークプレートが搬送される場合
正常な分離動作。凹穴に半固定の1枚目のワークプレートのみを残置し、2枚目以上(1枚目の上面以上)のワークプレートをプッシャーが離間し、押し出して排除。
【0093】
その4;複数枚のワークプレートが搬送されたが固着が強固でプッシャーで2枚目以上が押し出しされない場合
正常押し出し時よりプッシャー押し出し時間が長く、正常なサイクルから遅延する(タイムオーバー)ので、本機がそれを感知する。この場合、搬送装置が対象ワークを排出する動作をする。(吸い上げて排除する。)
【0094】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 材料の分離装置
3、3A、3B 材料
5 材料設置部
7 移動体
9 上面(材料設置部の上面)
11 凹部
13 載置部(平面)
15 移動体支持体
17 シュータ
19 切り欠き(シュータの切り欠き)
25 ベース体
27 凹部形成体
29 上面(ベース体の上面)
31 貫通孔(凹部形成体の貫通孔)
33 第1の支持部材
35 第2の支持部材
37 スペーサ
P1 第1の位置
P2 第2の位置