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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025114923
(43)【公開日】2025-08-06
(54)【発明の名称】モータおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20250730BHJP
   H02K 16/00 20060101ALI20250730BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009166
(22)【出願日】2024-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小槇 正朋
(72)【発明者】
【氏名】宮木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 匠馬
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆史
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】ディテントトルクを増大する。
【解決手段】モータは、軸方向に並んだ、複数のマグネットを有する第1ロータと、複数のマグネットを有する第2ロータと、を備え、前記第1ロータに対して前記第2ロータのディテンドトルクは大きく、前記第1ロータの複数のマグネットの数と、前記第2ロータの複数のマグネットの数とは同じである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並んだ、複数のマグネットを有する第1ロータと、複数のマグネットを有する第2ロータと、を備え、
前記第1ロータに対して前記第2ロータのディテンドトルクは大きく、
前記第1ロータの複数のマグネットの数と、前記第2ロータの複数のマグネットの数とは同じである、モータ。
【請求項2】
前記第1ロータの寸法と前記第2ロータの寸法の比は、0.9から1.1の間にある、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1ロータの寸法と前記第2ロータの寸法は同じである、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
軸方向において、前記第1ロータと前記第2ロータとは、所定の距離だけ離れている、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記第1ロータは、
2つの磁極部、環状部、および、当該2つの磁極部と当該環状部とを連結する2つの接続部を有する磁性体と、
周方向において、前記2つの磁極部の間にあるマグネットと、
を備え、
前記2つの磁極部の周方向に延在する側面は連続した曲面である、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記第2ロータは、
2つの磁極部、環状部、および、当該2つの磁極部と当該環状部とを連結する2つの接続部を有する磁性体と、
周方向において、前記2つの磁極部の間にあるマグネットと、
を備え、
前記2つの磁極部の周方向に延在する側面には複数の凹または凸が形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
径方向において、前記第2ロータに対向するステータを備え、
前記ステータは、複数の磁極部を備え、
前記径方向において、前記第2ロータの側面に対向する前記磁極部の側面には、複数の凹または凸が形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記第2ロータの複数の凹または凸の数と、前記ステータの複数の凹または凸の数は同じである、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載のモータと、当該モータを収容する筐体を備える、電子機器。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載のモータと、1又は複数のギアを備える、電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
インナーロータ型のモータにおいて、ロータが、複数の磁石と、薄い板状の金属を積層して形成した磁性体と、を備え、磁性体をスポーク形にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-529054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のモータには、ディテントトルクを増大することに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ディテントトルクを増大することができるモータおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、モータは、軸方向に並んだ、複数のマグネットを有する第1ロータと、複数のマグネットを有する第2ロータと、を備え、前記第1ロータに対して前記第2ロータのディテンドトルクは大きく、前記第1ロータの複数のマグネットの数と、前記第2ロータの複数のマグネットの数とは同じである。
【0007】
一つの側面では、ディテントトルクを増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器が備える駆動装置の分解斜視図である。
図3図3は、図2に示すモータが備えるロータの磁性体およびマグネットの斜視図である。
図4図4は、図3に示す磁性体およびマグネットの正面図である。
図5図5は、図4の一部の拡大図である。
図6図6は、図3に示すロータの断面図である。
図7図7は、図3に示すロータが備える磁性体の斜視図である。
図8図8は、図1に示す電子機器が備える制動装置の分解斜視図である。
図9図9は、図8に示す制動装置が備えるロータの磁性体およびマグネットの斜視図である。
図10図10は、図9に示す磁性体およびマグネットの正面図である。
図11図11は、図10の一部の拡大図である。
図12図12は、ステータおよびロータに形成される磁気回路を示す正面図である。
図13図13は、図9に示すステータおよびロータの断面図である。
図14図14は、変形例のステータの正面図である。
図15図15は、図14の一部の拡大図である。
図16-1】図16-1は、ロータの磁性体(磁極部)とステータのティースとが対向した状態において、ステータに対するロータのマグネットの磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
図16-2】図16-2は、コギングトルクの波形を示す図である。
図16-3】図16-3は、ロータの磁性体(磁極部)とステータのティースとの対向状態から、ロータが回転した非対向状態において、ステータに対するロータのマグネットの磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
図17図17は、第2実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図18図18は、図17に示す電子機器が備える制動装置の分解斜視図である。
図19図19は、図18に示す制動装置が備えるロータの磁性体およびマグネットの斜視図である。
図20図20は、図19に示す磁性体およびマグネットの正面図である。
図21図21は、図20の一部の拡大図である。
図22図22は、図19に示すロータの断面図である。
図23図23は、図19に示すロータが備える磁性体の斜視図である。
図24図24は、図20の一部の拡大図である。
図25図25は、図19に示すモータが備えるステータの磁極部の拡大図である。
図26図26は、ロータにおける磁極部の凹部および凸部、および、ステータにおける磁極部の凹部および凸部の平面図である。
図27図27は、ロータにおける磁極部の凹部および凸部、および、ステータにおける磁極部の凹部および凸部の拡大図である。
図28図28は、駆動装置のロータのマグネットの着磁および制動装置のロータのマグネットの着磁を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下に、実施形態に係るモータ1、および、電子機器300を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
本実施形態におけるモータ1は、例えば、図1に示すような電子機器300に収容される。図1は、実施形態に係る電子機器300の斜視図である。本実施形態に係るモータ1の説明において、方向の理解を容易にするため、シャフト2が延びる方向を軸方向Aと呼び、ロータ4、7が回転する方向を周方向Cと呼び、軸方向Aに対して直交する平面に含まれ、かつ、シャフト2の軸心2oを通過し、周方向Cに対して直交する方向を径方向Rと呼ぶ。
【0011】
電子機器300は、例えば電動車両またはハイブリッド車両などの車両に搭載される機器である。電子機器300は、例えば、モータ1と、モータ1を収容する筐体301と、第1のギア302と、第2のギア303と、を備える。
【0012】
第1のギア302は、例えばウォームギアであり、モータ1のシャフト2と連動して回転する。第2のギア303は、例えば第1のギア302に噛み合うハスバギアであり、出力軸304と連動して回転する。かかる構成により、モータ1のシャフト2の駆動力が、電子機器300の出力軸304へ伝達される。
【0013】
次に、図1を用いてモータ1について説明する。本実施形態におけるモータ1は、シャフト2と、シャフト2を周方向Cへ回転する駆動装置10と、シャフト2の周方向Cへの回転が停止した状態において、その状態を維持する制動装置50と、を有する。
【0014】
シャフト2は、いわゆる回転軸であって、例えば、金属材料を用いて円柱又は円筒の形状に形成され、軸方向Aに沿って延びている。シャフト2は、軸心2oを有し、かつ、電子機器300に対して軸心2oを中心に周方向Cへ回転可能に設けられる。シャフト2の軸方向Aにおける一方の端部には、第1のギア302が固定される。
【0015】
図2に示す駆動装置10は、ステータ3と、ロータ4と、を備える。図2は、図1に示す電子機器300が備える駆動装置10の分解斜視図である。なお、本実施形態に係るモータ1は、例えばステータ3がロータ4の径方向Rにおける外側に位置する、インナーロータ型のブラシレスモータである。
【0016】
ステータ3は、ロータ4を周方向Cへ回転させるための力を発生させる部分である。ステータ3は、環状部分としてのヨーク31と、磁極部としてのティース32と、コイル33と、インシュレータ34と、を備える。本実施形態に係るステータ3は、電気的に非接続な部材で構成されている。ヨーク31およびティース32は、磁性材料で形成される。
【0017】
ヨーク31は、ステータ3の径方向Rの外側に位置して環状に形成される。ティース32は、ヨーク31の内周面から、径方向Rの内側へ向けて突出する。本実施形態では、ヨーク31及びティース32は、例えば電磁鋼板等の磁性材料(磁性体)で形成された平板状の部材を打ち抜きし、軸方向Aにおいて複数枚の部材を積層することにより形成される。
【0018】
コイル33は、例えば、インシュレータ34を介して、ティース32に巻き回される。また、コイル33は、直流電源に対して電気的に接続される。そして、モータ1の駆動時、直流電源から直流電圧がコイル33に印加されることによって、コイル33に時間の経過と共に変化する磁場が形成され、その磁場と、マグネット42の磁力との相互作用により、ステータ3に対してロータ4が周方向Cへ回転する。
【0019】
次に、ロータ4について説明する。ロータ4は、ステータ3の径方向Rにおける内側に、回転可能に配置される。ロータ4は、少なくとも2つの磁極部411を有する磁性体41と、複数のマグネット42と、一対のカバー43と、を備える。本実施形態に係るロータ4は、例えば、周方向Cにおいて隣接する2つのマグネット42の同じ磁極が磁極部411に向けられ、2つのマグネット42が互いに反発する向きに配置されている。また、複数のマグネット42と、複数のマグネット42を収容した磁性体41とで構成された、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)ロータであり、複数のマグネット42が放射状に配置される。また、本実施形態におけるロータ4の外形の大きさ(外径D0)は、例えば24.5mmである(図4参照)。
【0020】
ロータ4が備える磁性体41についての詳細は後述し、次に、図3図4図5を用いてマグネット42について説明する。図3は、図2に示すモータ1が備えるロータ4の磁性体41およびマグネット42の斜視図である。図4は、図3に示す磁性体41およびマグネット42の正面図である。図5は、図4の一部の拡大図である。複数のマグネット42は、例えば周方向Cにおいて等間隔に配置される。本実施形態におけるマグネット42は、例えば軸方向Aに延在する永久磁石である。また、マグネット42は、例えば焼結磁石である。マグネット42は、周方向Cにおいて、2つの磁極部411の間にある。マグネット42は、軸方向Aから視た場合には略矩形状に形成される。
【0021】
マグネット42は、径方向Rにおける内側の端面(内面)421と、径方向Rにおける外側の端面(外面)422と、周方向Cにおける側面423、424とを備える。実施形態において、図4に示すマグネット42の周方向Cにおける幅W1(図4参照)は、例えば外径2.29mmであり、マグネット42の磁石の長さ(径方向Rにおける長さ)L1(図5参照)は、例えば3.50mmである。
【0022】
本実施形態において、周方向Cにおいて磁極部411を介して隣接する2つのマグネット42は、同一の極が対向するように配置される。例えば、図5に示すように、周方向Cにおいて隣接する2つのマグネット42は、N極が相互に対向するように配置される。
【0023】
次に、図2図6を用いて一対のカバー43について説明する。図6は、図3に示すロータ4の断面図である。本実施形態に係るカバー43は、例えば黄銅等、非磁性の材料、または、磁性体41よりも透磁率の低い材料により形成される。また、カバー43は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のように、磁性体41を構成する電磁鋼板よりも透磁率の低い材料を折り曲げることにより形成してもよい。
【0024】
一対のカバー43のうち一方のカバー43aは、磁性体41に対して軸方向Aにおける一方向側から装着され、一対のカバー43のうち他方のカバー43bは、磁性体41に対して、軸方向Aにおける他方側から装着される。つまり、一対のカバー43は、軸方向Aにおいて、磁性体41を挟持するように配置される。
【0025】
一対のカバー43において、一方のカバー43aの構成と、他方のカバー43bの構成とは同一であるが、異なる構成であってもよく限定されない。そこで、以下において、一方のカバー43aの構成を説明し、他方のカバー43bの構成は、一方のカバー43aと同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
一方のカバー43aは、平板のリング状に形成された本体部431と、径方向Rにおける外周縁において本体部431から軸方向Aへ突出する複数の外周部432と、径方向Rにおける内周縁において本体部431から軸方向Aへ突出する内周部433と、を備える。
【0027】
外周部432のそれぞれは、本体部431の外周縁から軸方向Aにおいて他方のカバー43bの外周部432へ向けて突出する。複数の外周部432は、例えば、周方向Cにおいて所定の間隔(例えば、等間隔)に並んで配置される。その上、外周部432は、図6に示すように、マグネット42の径方向Rにおける外側の端面422に対向する位置に配置される。本実施形態に係るロータ4の径方向Rにおいて、マグネット42の外側の端面422と、外周部432の内面との間にはわずかな隙間が形成されるが、マグネット42の外側の端面422と、外周部432の内面とが接触してもよい。また、本実施形態において、複数の外周部432の数と、マグネット42の数とは同数である。
【0028】
外周部432は、径方向Rにおいて、マグネット42の外側の端面422と接触可能なようにマグネット42の外側に配置される。そのため、図4に示すロータ4において、カバー43のそれぞれは、周方向Cにおいて隣接する他のマグネット42との反発力や、ロータ4の回転により発生する遠心力により、マグネット42が径方向Rにおける外側に移動することを防止する。
【0029】
図2図6に示すように、内周部433は、本体部431の内周縁から軸方向Aにおいて他方のカバー43bの内周部433へ向けて突出する。内周部433は、例えば、筒状に形成される。その上、内周部433は、環状部412の内周面に対向するように配置される。
【0030】
内周部433は、径方向Rにおいて、マグネット42の内側の端面421と接触可能なようにマグネット42の内側に配置される。そのため、図4に示すロータ4において、カバー43のそれぞれは、周方向Cにおいて隣接する他のマグネット42との反発力等により、磁性体41に配置されたマグネット42が、径方向Rにおける内側に移動することを抑止する。
【0031】
その上、一方のカバー43aの本体部431は、マグネット42の軸方向Aにおける一方側の面に対向し(又は接し)、他方のカバー43bの本体部431は、マグネット42に軸方向Aにおける他方側の面に対向する(又は接する)。かかる構成により、マグネット42の軸方向Aにおける移動が抑制される。
【0032】
また、内周部433の外径(大きさ)は、例えば、磁性体41に形成される第2突出部415の内径(大きさ)より僅かに大きい。また、内周部433の内径(大きさ)は、例えば、シャフト2の外径(大きさ)より僅かに小さい。
【0033】
かかる構成において、カバー43は、例えば径方向Rにおける磁性体41の第2突出部415に圧入される。その後、シャフト2は、内周部433に圧入される。すなわち、実施形態において、一対のカバー43と磁性体41とシャフト2とは二重の圧入構造となっている。
【0034】
次に、ロータ4が備える磁性体41について、図4図5を用いて説明する。磁性体41は、図4に示すように、少なくとも2つの磁極部411と、環状部412と、少なくとも2つの接続部413と、第1突出部414と、第2突出部415と、を有する。第1突出部414は、磁性体41において環状部412から突出する突出部の一例である。
【0035】
磁極部411は、磁性体41の径方向Rにおける外側に配置され、軸方向Aから視た場合には略扇形状に形成される。より具体的に説明すると、磁極部411は、軸方向Aから視た場合、軸心2oに近接する内周面4111の周方向Cにおける幅の大きさよりも、軸心2oから離れた外周面4112の周方向Cにおける幅の大きさが大きくなるように、径方向Rの外側に行くに従って徐々に末広がりとなる略扇形状に形成される。磁極部411は、磁性体41の外周部を形成している。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の磁極部411を備える。複数の磁極部411は、例えば、周方向Cに並んで所定の間隔(例えば、等間隔)に配置される。
【0036】
磁極部411のそれぞれは、図5に示すように、径方向Rにおいて内側に位置する内周面4111、径方向Rにおいて外側に位置する外周面4112、および、内周面4111と外周面4112とをつなぐ2つの側面4113、4114を有する。
【0037】
内周面4111は、磁極部411から径方向Rの内側へ向けて突出する端部(以下、先端部4111aと称呼する)を有する。先端部4111aは、磁極部411における内周面4111の一部を形成しており、例えば内周面4111に2つ形成される。そして、2つの先端部4111aの間には、磁極部411における内周面4111の一部を形成する凹部4111bが形成されている。
【0038】
外周面4112は、軸方向Aから視た場合には弧状に形成され、周方向Cに沿って延在する曲面である。外周面4112は、磁極部411の周方向に延在する側面の一例である。外周面4112と側面4113、4114との間には、曲面で形成された端部がそれぞれ配置される。
【0039】
図4に示す環状部412は、磁性体41において、磁極部411の径方向Rにおける内側に配置され、軸方向Aから視た場合にはリング状に形成される。環状部412は、磁性体41の内周部を形成している。
【0040】
接続部413は、磁極部411と環状部412とを接続する。接続部413は、径方向Rにおいて、磁極部411と環状部412との間に配置され、径方向Rにおいて直線状に延在するよう形成される。接続部413は、周方向Cにおいて、2つの先端部4111aの間に位置する凹部4111bの間に配置される。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の接続部413を備える。複数の接続部413は、例えば、周方向Cに並んで等間隔に配置される。
【0041】
第1突出部414は、軸方向Aから視た場合、環状部412の外周面から径方向Rの外側に突出する。そして、径方向Rにおいて、マグネット42は第1突出部414に接触している。本実施形態におけるロータ4は、第1突出部414により、マグネット42の内側の端面(内面)421を径方向Rにおける内側から支持する。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の第1突出部414を備える。複数の第1突出部414は、例えば、周方向Cに並んで所定の間隔(例えば、等間隔)に配置される。
【0042】
第2突出部415は、軸方向Aから視た場合、環状部412の内周面から径方向Rの内側に突出する。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の第2突出部415を備える。複数の第2突出部415は、例えば、周方向Cに並んで等間隔に配置される。
【0043】
また、図5に示すように、磁極部411には、磁極部411を軸方向Aへ向けて貫通する孔部としての第1貫通孔411Hが形成され、環状部412には、環状部412を軸方向Aへ向けて貫通する孔部としての第2貫通孔412Hが形成される。
【0044】
次に、磁性体41の製造方法について、図7を用いて説明する。図7は、図3に示すロータ4が備える磁性体41の斜視図である。本実施形態において、磁性体41は、軸方向Aにおいて積み重ねられた複数の磁性部材410によって構成される。複数の磁性部材410は、例えば同形同大に形成される。
【0045】
そして、複数の磁性部材410は、第1貫通孔411Hのそれぞれに挿通された第1ネジN1によって相互に結合され、かつ、第2貫通孔412Hのそれぞれに挿通された第2ネジN2によって相互に結合される。第1ネジN1および第2ネジN2は、例えばステンテス等の磁性体41よりも透磁率の低い材料で形成される。つまり、第1ネジN1および第2ネジN2は、フラックスバリアとして機能する。なお、本実施形態において、締結部材としての第1ネジN1、第2ネジN2と、第1貫通孔411H、第2貫通孔412Hを、第1凸部、第2凸部、第1凹部、第2凹部に代え、第1凸部を第1凹部に収容させて嵌め込み、第2凸部を第2凹部に収容させて嵌め込み、複数の磁性部材どうしを嵌合(カシメ)又は固定させても構わない。
【0046】
より具体的に説明すると、図5に示すように、マグネット42の側面423、424における径方向Rの中央から周方向Cへ向かう磁路M1、M2の途中には、第1貫通孔411Hに挿通された第1ネジN1が位置する。第1ネジN1の透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、第1ネジN1がフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット42の周方向Cにおける側面423、424における径方向Rの中央から周方向Cへ向かう磁束は抑制され、マグネット42の側面423、424から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0047】
加えて、径方向Rにおいてマグネット42の内側の端面421から第1突出部414の径方向Rの内側に向かう磁路M3、M4は、第2ネジN2により狭められる。これにより、磁路M3、M4においては磁気飽和が生じやすくなるので、マグネット42の内側の端面421から径方向Rの内側へ向かう磁束が、磁路M3、M4によって抑制され、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0048】
また、マグネット42の側面423、424における径方向Rの内側からの磁束は、磁極部411の先端部4111aを介して、径方向Rの外側の外周面4112へ向かう。磁極部411は、軸方向Aから視た場合には略扇形状に形成されるため、マグネット42の側面423、424の径方向Rの内側から磁極部411の外側の外周面4112へ向かう磁路M5、M6が径方向Rの外側へ向けて徐々に広くなる。そのため、マグネット42の側面423、424における径方向Rの内側から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0049】
さらに、磁極部411の内周面4111には凹部4111bが形成され、凹部4111bにおける透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、凹部4111bがフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット42の周方向Cにおける側面423、424における径方向Rの内側から磁極部411を介して接続部413へ向かう磁路M5、M6は、凹部4111bにより狭められるので、磁気飽和が生じやすくなる。これにより、マグネット42から、磁極部411及び接続部413を介して、径方向Rにおける内側にある環状部412に磁束が漏れることがより抑制され、マグネット42の側面423、424から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。なお、凹部4111bには空気又は非磁性体(例えば、ステータを形成する電磁鋼板などの磁性体の透磁率より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0050】
さらに、マグネット42の外側の端面422は、磁極部411の外周面4112よりも径方向Rの内側に位置する。そして、マグネット42の外側の端面422の径方向Rの外側であって、周方向Cにおいて隣接する2つの磁極部411の間には空間Uが形成されている。この空間Uには、カバー43の外周部432が配置される。カバー43の透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、外周部432がフラックスバリアとして機能する。このため、マグネット42の側面423、424から外側の外周面4112へ向かう磁路M7、M8において、径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0051】
また、本実施形態において、接続部413は、分岐した複数の枝(以下、分岐部413a、413bと称呼する)を備える。接続部413は、径方向Rにおいて、分岐部413a、413bを介して環状部412に接続する。すなわち、接続部413は、環状部412に向けて分岐した複数の部分である分岐部413a、413bを備える。分岐部413a、413bは、環状部412に接続している。
【0052】
この場合において、接続部413の分岐部413a、413bと、環状部412とに囲まれた部分には、空隙413Hが形成される。空隙413Hは、径方向Rにおいて、第2突出部415の外側に配置され、環状部412と空隙413Hとが径方向Rにおいて隣接する。すなわち、周方向Cにおいて、分岐部413a、413bの間には空隙413Hが形成されている。
【0053】
かかる空隙413Hもフラックスバリアとして機能するので、接続部413から環状部412に向かう分岐部413a、413bを通る磁路M9、M10も狭められる。かかる構成においても、マグネット42の側面423、424において径方向Rの内側から外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。なお、空隙413Hには空気又は非磁性体(例えば、ステータを形成する電磁鋼板などの磁性体の透磁率より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0054】
そして、上述した種々の構成に基づいて、径方向Rにおいて磁極部411の外周面4112へ向かう磁束を増大することで、外周面4112から径方向Rの外側に位置するステータ3のティース32へ向かう磁束を増大することができ、モータ1の駆動時において、ロータ4によるシャフト2を回転させる力を増大することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、第2突出部415と、磁極部411とは、径方向Rにおいて、空隙413H及び接続部413を介して対向する。この場合において、シャフト2が圧入されることにより、径方向Rにおいて第2突出部415に加わる応力は、空隙413Hがあることで緩和される。すなわち、シャフト2を圧入した際に、磁性体41が変形し、真円度が悪化することが抑制される。
【0056】
本実施形態におけるモータ1は、高雰囲気温度下、例えば120℃~150℃の雰囲気温度において、高トルクを発揮することが求められる場合がある。その場合、熱による減磁に加えて、コイル33のアンペアターンに伴う反磁界により、トルクが抑制されるおそれがある。
【0057】
減磁を抑制するために、ディスプロシウム(Dy)の含有量が高い磁石を用いることが知られているが、磁石に占めるディスプロシウムの割合を増やすと、製造コストの増加や、残留磁束密度(Br)の低下につながる。
【0058】
そこで、実施形態においては、図4に示すように、マグネット42を、ロータ4の径方向Rにおける内側に配置する。例えば、マグネット42の外側の端面422の外径D1は22.86mmである。かかる構成によれば、径方向Rにおいて外側に位置するステータ3のコイル33とマグネット42の外側の端面422との間の距離を確保することにより、熱やアンペアターンによるマグネット42の減磁率を低く、例えば減磁率を2%程度に収めることができる。これにより、高ストールトルクを実現できる。また、例えばHcj=1500~1600KA/mのものなど、ディスプロシウムの含有割合が少ない磁石をマグネット42に用いることができる。
【0059】
また、スポーク型のIPMにおいて、着磁された複数のマグネット42を磁性体41に挿入する場合(いわゆる先着磁)であれば、複数のマグネットの間で反力が発生し、複数のマグネット42を磁性体41に挿入するなどの組立が難しくなる場合がある。そこで、複数のマグネット42を磁性体41に挿入後に着磁を行うこと(着磁後装着)が望ましい。
【0060】
一方、マグネット42の外側の端面422が、径方向Rにおいて、環状部412に近づき過ぎると、着磁ができなくなる場合がある。また、マグネット42の径方向Rにおける長さが大きくなると、着磁の際に磁界をマグネット42全体に作用させることが難しくなる場合があるため、径方向Rにおけるマグネット42の長さを短くする場合がある。
【0061】
そこで、実施形態においては、図4に示す、マグネット42の径方向Rにおける長さ(以下、磁石長と称呼する)L1を短くする。例えば、磁石長L1を、ロータ4の外径D×比率(例えば外形より小さい所定の数値(例えば3.5)/外形D(例えば、24.5mm)とすることにより、着磁率を90%以上とすることができ、マグネット42の全体にわたって着磁をすることができる。
【0062】
また、IPMロータを備えたモータ1においては、磁極部411に接触するマグネット42の表面積を増加させた方がトルクが高くなることが知られている。しかし、マグネット42を径方向Rにおいて環状部412近くまで延長した場合、マグネット42から環状部412までの磁気抵抗の大きさが比較的小さくなるため、マグネット42の磁束のうち、環状部412に向かう磁束の大きさがステータ3に向かう磁束よりも大きくなってしまい、磁極部411に接触するマグネット42の表面積とトルクの大きさとが比例しなくなる場合がある。特に、本実施形態のように、磁性体41に、マグネット42の内側の端面421を径方向Rにおける内側から支持する第1突出部414を形成する場合において、マグネット42を径方向Rにおいて環状部412近くまで延長すれば、マグネット42と第1突出部414との接触部を介して磁束が環状部412へ向かいやすくなる。
【0063】
本実施形態においては、マグネット42の磁石長L1を短くすることに伴い、マグネット42が径方向Rにおいて環状部412から所定の距離だけ離れるように配置される。例えば、マグネット42の内側の端面421の内径D2は、ロータ4の外径D0の1/2以上であり、好ましくは2/3以上である。言い換えれば、マグネット42の内側の端面から環状部412までの距離が、ロータ4の外径(外形の大きさ)D0の1/2以上、好ましくは2/3以上である。
【0064】
また、実施形態におけるモータ1は、例えばロータ4の直径が24.5mm以下の小径のモータ1である。ロータ4の外径(大きさ)が小さい場合、凹部4111bの細かな形状を製造することが難しい場合がある。例えば、凹部4111bの周方向Cにおける幅を0.25mm以下とすることが難しい場合がある。
【0065】
実施形態における磁性体41は、凹部4111bを形成することにより、マグネット42を径方向Rにおいて環状部412にまで延在させることなく、磁極部411とマグネット42との接触面積を所定の大きさだけ確保することができる。また、凹部4111bを大きくすることにより、磁極部411を軽量化できるので、回転体であるロータ4のイナーシャを低減することができる。つまり、本実施形態に係るロータ4によれば、ロータ4の慣性モーメントの増加を抑制することができる。換言すると、本実施形態に係るロータ4によれば、ロータ4のGD2(ジーディスクエア)の増加を抑制することができる。
【0066】
次に、図8を用いて制動装置50について説明する。図8は、図1に示す電子機器300が備える制動装置50の分解斜視図である。本実施形態における制動装置50は、シャフト2と、ステータ6と、ロータ7と、を備える。なお、本実施形態に係る制動装置50は、例えばステータ6がロータ7の径方向Rにおける外側に位置する。
【0067】
ステータ6は、環状の部分としてのヨーク61と、磁極部60としてのティース62と、を備える。本実施形態におけるステータ6は、電気的に非接続の部材で構成されている。ヨーク61およびティース62は、磁性材料で形成される。そして、ステータ6には、ヨーク61と、ティース62とによって磁極部60が構成される。
【0068】
ヨーク61は、ステータ6の径方向Rの外側に位置して環状に形成される。ティース62は、ヨーク61の内周面から、径方向Rの内側へ向けて突出する。本実施形態では、ティース62には、コイルが設けられていない。複数のティース62は、例えば周方向Cにおいて等間隔に配置される。ヨーク61およびティース62は、例えば電磁鋼板等の磁性材料(磁性体)で形成された平板状の部材を打ち抜きし、軸方向Aにおいて複数枚の部材を積層することにより形成される。
【0069】
次に、ロータ7について説明する。ロータ7は、ステータ6の径方向Rにおける内側に、回転可能に挿通される。ロータ7は、磁性体71と、マグネット72と、一対のカバー73と、を有する。
【0070】
本実施形態に係るロータ7は、複数のマグネット72と、複数のマグネット72を収容した磁性体71とで構成された、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)ロータであり、複数のマグネット72が放射状に配置される。また、本実施形態におけるロータ7の外形の大きさ(外径)は、例えば24.5mmである。
【0071】
ロータ7が備える磁性体71についての詳細は後述し、次に、図9図10図11図12を用いてマグネット72について説明する。図9は、図8に示す制動装置50が備えるロータ7の磁性体71およびマグネット72の斜視図である。図10は、図9に示す磁性体71およびマグネット72の正面図である。図11は、図10の一部の拡大図である。図12は、ステータ6およびロータ7に形成される磁気回路MC2を示す正面図である。
【0072】
複数のマグネット72は、例えば周方向Cにおいて等間隔に配置される。本実施形態におけるマグネット72は、例えば軸方向Aに延在する永久磁石である。また、マグネット72は、例えば焼結磁石である。マグネット72は、周方向Cにおいて、2つの連結部713の間にある。より詳細に説明すると、マグネット72は、周方向Cにおいて、2つの空隙71Hを介在させた状態で、2つの連結部713の間にある。マグネット72は、軸方向Aから視た場合には略矩形状に形成される。
【0073】
マグネット72は、径方向Rにおける内側の端面(内面)721と、径方向Rにおける外側の端面(外面)722と、周方向Cにおける側面723、724とを備える。実施形態において、図10に示すマグネット72の周方向Cにおける幅W11(図10参照)は、例えば3.5mmであり、マグネット72の磁石長(径方向Rにおける長さ)L11(図10参照)は、例えば2.29mmである。
【0074】
本実施形態に係るロータ7は、例えば図12に示すように、複数のマグネット72のうち、ある1つのマグネット72は、径方向Rの内側にS極が配置され、かつ、径方向Rの外側にN極が配置される。そして、そのマグネット72に対して周方向Cに隣接する別のマグネット72は、径方向Rの外側にS極が配置され、かつ、径方向Rの内側にN極が配置される。つまり、複数のマグネット72は、周方向Cの内側において、一方の磁極と他方の磁極とが交互になるよう配置され、かつ、周方向Cの外側において、一方の磁極と他方の磁極とが交互になるよう配置される。
【0075】
次に、図8図13を用いて一対のカバー73について説明する。図13は、図9に示すステータ6およびロータ7の断面図である。本実施形態に係るカバー73は、例えば黄銅等、非磁性の材料、または、磁性体71よりも透磁率の低い材料により形成される。また、カバー73は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のように、磁性体71を構成する電磁鋼板よりも透磁率の低い材料を折り曲げることにより形成してもよい。
【0076】
一対のカバー73のうち一方のカバー73aは、磁性体71に対して軸方向Aにおける一方向側から装着され、一対のカバー73のうち他方のカバー73bは、磁性体71に対して、軸方向Aにおける他方側から装着される。つまり、一対のカバー73は、軸方向Aにおいて、磁性体71を挟持する。
【0077】
一対のカバー73において、一方のカバー73aの構成と、他方のカバー73bの構成とは同一である。そこで、以下において、一方のカバー73aの構成を説明し、他方のカバー73bの構成は、一方のカバー73aと同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
一方のカバー73aは、平板のリング状に形成された本体部731と、径方向Rの内周縁において本体部731から軸方向Aへ突出する内周部732と、を備える。
【0079】
図8図13に示すように、内周部732は、本体部731の内周縁から軸方向Aにおいて他方のカバー73bの内周部732へ向けて突出する。内周部732は、例えば、筒状に形成される。その上、内周部732は、磁性体71の内側のリング712の内周面に対向し、かつ、内側のリング712に接触するように配置される。
【0080】
一方のカバー73aの本体部731は、マグネット72の軸方向Aにおける一方側の面に対向し(又は接し)、他方のカバー73bの本体部731は、マグネット72に軸方向Aにおける他方側の面に対向する(又は接する)。かかる構成により、マグネット72の軸方向Aにおける移動が抑制される。
【0081】
次に、ロータ7が備える磁性体71について、図10図11を用いて説明する。磁性体71は、図10に示すように、外側のリング711、内側のリング712、および、外側のリング711と内側のリング712とを連結する複数の連結部713を有する。なお、実施形態に係るロータ7において、磁性体71は磁極部を構成する。
【0082】
外側のリング711は、軸方向Aから視た場合、環状に形成される。そして、外側のリング711は、径方向Rにおいて、内側のリング712の外側に配置される。また、外側のリング711は、径方向Rにおいて、マグネット72の外側に配置され、かつ、マグネット72の外側の端面722に接触する。このため、ロータ7を回転した際、マグネット72が径方向Rの外側に移動することを防止することができる。
【0083】
内側のリング712は、軸方向Aから視た場合、環状に形成される。そして、内側のリング712は、径方向Rにおいて、外側のリング711の内側に配置される。また、内側のリング712は、径方向Rにおいて、マグネット72の内側に配置され、かつ、マグネット72の内側の端面721に接触する。このため、マグネット72が径方向Rの内側に移動することを防止することができる。また、内側のリング712は、環状の部分712aと、径方向Rにおいて環状の部分712aから外側のリング711に向けて突出する複数の突出部712bを備える。
【0084】
環状の部分712aの径方向Rの内側には、シャフト2が配置される(図8参照)。突出部712bのそれぞれは、マグネット72に連結している。複数の突出部712bは、例えば周方向Cにおいて、所定の間隔(例えば、等間隔)に配置される。本実施形態における内側のリング712は、例えば12個の突出部712bを備える。
【0085】
突出部712bは、マグネット72を内側のリング712に係合しており、周方向Cにおいて離れた一対の凸部712b1、712b2と、周方向Cにおいて一対の凸部712b1、712b2の間に位置する凹部712b3と、を有する。本実施形態において、凹部712b3の底部は、径方向Rにおける外側に位置する突出部712bの端部の一例である。
【0086】
連結部713は、外側のリング711と内側のリング712とを連結する。複数の連結部713は、例えば周方向Cにおいて、等間隔に配置される。本実施形態における磁性体71は、例えば12個の連結部713を備える。
【0087】
連結部713は、図11に示すように、径方向Rの内側に位置する端部(部分713a)と、径方向Rの外側に位置する端部(部分713b)と、を有する。連結部713は、端部(部分713a)によって内側のリング712に連結され、かつ、端部(部分713b)によって外側のリング711に連結される。
【0088】
また、磁性体71は、周方向Cにおいて、複数の連結部713のうち、マグネット72の両側にある2つの連結部713とマグネット72との間にある2つの空隙71Hを有する。
【0089】
空隙71Hのそれぞれは、径方向Rの外側に位置する第1の空隙71H1と、径方向Rの内側に位置する第2の空隙71H2と、を有する。周方向Cにおいて、第1の空隙71H1は、マグネット72と連結部713との間にある。また、周方向Cにおいて、第2の空隙71H2は、突出部712bと連結部713との間にある。本実施形態に係る制動装置50の周方向Cにおいて、第1空隙の幅W13は、第2の空隙41Hの幅よりも大きく、ティース62の幅W12(図8参照)や突出部712bの幅に対して小さい。
【0090】
内側のリング712に連結する連結部713の部分713aは、突出部712bの外側のリング711の端部(凹部712b3の底部)に対して内側のリング712側にある。
【0091】
次に、本実施形態に係る制動装置50を、車両のモータ1に用いる場合について説明する。上述したシャフト2には駆動装置10のロータ4が固定され、かつ、シャフト2は、例えば、第1のギア302、第2のギア303、および、出力軸304を介して車両の駆動系に連結されている。車両の駆動系には、デファレンシャルギヤが含まれており、駆動用のモータの動力は、デファレンシャルギヤに伝達されて、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪に分配されて伝達される。これにより、モータの駆動時には左右の駆動輪が回転し、車両が前進または後進する。
【0092】
このようなモータでは、車両のエンジンおよびモータの非駆動時、駆動装置10のステータ3に対してロータ4が停止することにより、駆動輪が回転しないことが望まれる。例えば、車両を急坂に停車した場合においても駆動輪が回転しないことが望まれる。換言すれば、このようなモータ1には、非駆動時において、ディテントトルク(コギングトルク)を増大することが望まれる。そこで、本実施形態に係る制動装置50は、以下に記載する構成を採用することにより、ディテントトルク(駆動装置10のコイル33の非励磁状態において、マグネット72と磁極部60と磁性体71との間で作用する磁気吸引トルク)を増大することができる。
【0093】
本実施形態に係る制動装置50では、図12に示すように、ステータ6に対してロータ7を停止している状態において、ロータ7の磁性体(磁極部)71およびステータ6の磁極部60には、ロータ7のマグネット72によって、磁気回路MC2が形成されると共に、ステータ6に対してロータ7が周方向Cへ回転することを防止するディテントトルク(コギングトルク)が発生し、ステータ6に対してロータ4が周方向Cへ回転することが抑制される。
【0094】
本実施形態に係るロータ7は、周方向Cにおいて、図11に示すマグネット72の側面723、724に隣接して空隙71Hを配置してある。空隙71Hにおける透磁率は、磁性体71の透磁率よりも低いため、空隙71Hがフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット72の側面723、724から周方向Cへ向かう磁束は抑制される一方、マグネット72の外側の端面722から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。なお、空隙71Hには空気又は非磁性体(例えば、ステータ6を形成する電磁鋼板などの磁性体の透磁率より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0095】
その上、本実施形態に係るロータ7の周方向Cにおいて、連結部713の幅W14は、空隙71H(第1の空隙71H1)の幅W13に対して小さく、かつ、径方向Rにおける外側のリング711の幅W15は、周方向Cにおける第1の空隙71H1の幅W13より小さい。それらのため、マグネット72から周方向Cへ向かう磁束は、外側のリング711および連結部713を通過することになるが、上記の構成によって、マグネット72の磁束が磁気回路MC2を通過する際の磁気抵抗よりも、マグネット72の磁束が外側のリング711および連結部713を通過する際の磁気抵抗が大きくなる。この結果、本実施形態に係るロータ7では、マグネット72から外側のリング711を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット72の外側の端面722から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0096】
本実施形態に係るロータ7の径方向Rにおいて、内側のリング712に連結する2つの連結部713の部分713aは、マグネット72の内側のリング712側の内面(つまり、マグネット72の内側の端面721)に対して、内側のリング712側にある。そのため、連結部713の径方向Rの長さを長くすることによって、マグネット72の磁束が外側のリング711および連結部713を通過する際の磁気抵抗をより大きくすることができる。詳細には、径方向Rにおいて、連結部713の長さは、マグネット72の長さより大きく形成されている。従って、本実施形態に係るロータ7では、マグネット72から外側のリング711を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット72の外側の端面722から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0097】
本実施形態に係るロータ7の径方向Rにおいて、内側のリング712は、外側のリング711に向けて突出する複数の突出部712bを備え、突出部712bは、マグネット72に連結している。それらのため、径方向Rにおいて外側のリング711と内側のリング712との距離を、突出部712bの径方向Rの長さだけ大きくすることができ、それにより、連結部713の径方向Rの長さを長くすることができる。その結果、マグネット72の磁束が外側のリング711および連結部713を通過する際の磁気抵抗をより大きくすることができる。従って、本実施形態に係るロータ7では、マグネット72から外側のリング711を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット72の外側の端面722から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0098】
本実施形態に係るロータ7において、内側のリング712に連結する連結部713の部分713aは、突出部712bの外側のリング711側の端部(凹部712b3の底部)に対して、内側のリング712側にある。換言すると、内側のリング712に連結する連結部713の部分713aは、径方向Rにおいて、突出部712bの外側のリング711側の端部(凹部712b3の底部)よりも径方向Rの内側に位置する。そのため、連結部713の径方向Rの長さを長くすることができる。その結果、マグネット72の磁束が外側のリング711および連結部713を通過する際の磁気抵抗をより大きくすることができる。従って、本実施形態に係るロータ7では、マグネット72から外側のリング711を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット72の外側の端面722から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0099】
本実施形態に係るロータ7の周方向Cにおいて、第2の空隙71H2は、突出部712bと連結部713との間にある。第2の空隙71H2の透磁率は、磁性体71の透磁率よりも低いため、第2の空隙71H2がフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット72の側面723、724から周方向Cへ向かう磁束は抑制される一方、マグネット72の外側の端面722から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。なお、空隙71H2には空気又は非磁性体(例えば、ステータ6を形成する電磁鋼板などの磁性体の透磁率より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0100】
そして、上述した種々の構成に基づき、径方向Rの外側へ向かう磁束を増大することによって、磁性体71の外周面から径方向Rの外側に位置するステータ6のティース62へ向かう磁束を増大することができ、ディテントトルクを増大することができる。
【0101】
本実施形態に係るモータ1では、第1ロータである駆動装置10のロータ4のディテントトルクに対して第2ロータである制動装置50のロータ7のディテントトルクが大きい。また、マグネット42の磁力とマグネット72の磁力とが実質的に相互に作用しないように、軸方向Aにおいて、ロータ4とロータ7とは、所定の距離だけ離れている。
【0102】
なお、上述した本実施形態に係るモータ1は、第1ロータであるロータ4における径方向Rの寸法と、第2ロータであるロータ7における径方向Rの寸法とが同じであるものを説明した。しかしながら、本実施形態に係るモータ1は、それに限られない。例えば、第1ロータであるロータ4における径方向Rの寸法と、第2ロータであるロータ7における径方向Rの寸法との比が0.9から1.1の間でもよい。
【0103】
以上説明したように、本実施形態におけるモータ1は、駆動装置10のロータ(第1ロータ)4と、制動装置50のロータ(第2ロータ)7と、を備えるため、ディテントトルクを向上することができる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態におけるモータ1において、軸方向Aに並んだ、複数のマグネット42を有するロータ(第1ロータ)4と、複数のマグネット72を有するロータ(第2ロータ)7と、を備え、ロータ4のディテントトルクに対してロータ7のディテンドトルクは大きく、ロータ4の複数のマグネット42の数と、ロータ7の複数のマグネット72の数とは同じであり、ロータ4の径方向Rの寸法とロータ7の径方向Rの寸法の比は、0.9から1.1の間にある。
【0105】
本実施形態に係るモータ1において、径方向Rにおいて、ロータ4の寸法とロータ7の寸法は同じである。
【0106】
本実施形態に係るモータ1の軸方向Aにおいて、ロータ4とロータ7とは、所定の距離だけ離れている。
【0107】
本実施形態に係るモータ1において、ロータ4は、2つの磁極部411、環状部412、および、2つの磁極部411と環状部412とを連結する2つの接続部413を有する磁性体41と、周方向Cにおいて、2つの磁極部411の間にあるマグネット42と、を備え、2つの磁極部411の周方向Cに延在する外周面(側面)4112は連続した曲面である。
【0108】
本実施形態に係る電子機器300は、上述したモータ1と、モータ1を収容する筐体301と、を備える。
【0109】
本実施形態に係る電子機器300は、上述したモータ1と、1又は複数のギア302、303と、を備える。
【0110】
[第1実施形態の変形例]
次に、本実施形態の制動装置50において、変形例のステータ6αを図14図15を用いて説明する。図14は、変形例のステータ6αの正面図である。図15は、図14の一部の拡大図である。なお、以下に変形例に係るステータ6αの構成において、実施形態に係るステータ6とは異なる構成を説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
ステータ6αのティース62αは、ヨーク61の内周面から径方向Rに延在する本体部620と、本体部620の径方向Rの内側に設けられた突出部62a、62bおよび凹部62cと、を備える。換言すると、径方向Rにおいて、ロータ7に対向するステータ6αの磁極部60の内周面(側面)60fは、ロータ7に向けて突出する2つの突出部62a、62bと、周方向Cにおいて2つの突出部62a、62bの間に形成された凹部62cと、を備える。
【0112】
一対の突出部62a、62bは、周方向Cにおいて互いに離れるように突出するため、軸方向Aから視た場合、本体部620の側面620fから周方向Cの外側に(隣り合う他の本体部620に向けて)突出する。
【0113】
本変形例に係る制動装置50αの径方向Rにおいて、ロータ7に対向するステータ6αの磁極部60の内周面(側面)60fは、ロータ7に向けて突出する2つの突出部62a、62bと、周方向Cにおいて2つの突出部62a、62bの間に形成された凹部62cと、を備える。1つのティース62αに2つの突出部62a、62bがあることで磁極部60となる2つの突出部62a、62bが存在し、2つの突出部62a、62bを有さないティースより磁極部の数が多くなる。そのため、本変形例に係る制動装置50は、よりディテントトルクを増大することができる。
【0114】
次に、コギングトルクの大小について図16-1~図16-3を用いて説明する。図16-1は、ロータ7の磁性体(磁極部)71とステータ6αのティース62αとが対向した状態において、ステータ6αに対するロータ7のマグネット72の磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。図16-2は、コギングトルクの波形を示す図である。図16-3は、ロータ7の磁性体(磁極部)71とステータ6αのティース62αとの対向状態から、ロータ7が回転した非対向状態において、ステータ6αに対するロータ7のマグネット72の磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
【0115】
図16-1、図16-2から分かるように、ロータ7の磁性体(磁極部)71と、ステータ6αの磁極部であるティース62αとが対向している状態では、磁束はおもに径方向Rに向かっており、周方向Cへのトルクに寄与する磁束の成分が小さい。
【0116】
一方、図16-2、図16-3から分かるように、ロータ7の磁性体(磁極部)71と、ステータ6αの磁極部であるティース62αとの対向状態からロータ7が回転した非対向状態では、磁束はおもに周方向Cに向かっており、トルクに寄与する磁束の成分が大きくなっている。なお、図16-2に示すように、図16-3に示す状態において、トルクが最も大きくなる。
【0117】
[第2実施形態]
次に、本実施形態に係るモータ1Aの第2実施形態について、図17を用いて説明する。図17は、第2実施形態に係る電子機器300Aの斜視図である。本実施形態に係るモータ1Aは、シャフト2と、駆動装置10と、制動装置50Aと、を備える。なお、以下に本実施形態に係るモータ1Aの構成において、第1実施形態に係るモータ1とは異なる構成を説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
制動装置50Aは、ステータ6Aと、ロータ7Aと、を備える。次に、図18図24を用いてロータ7Aについて説明する。図18は、図17に示す電子機器300Aが備える制動装置50Aの分解斜視図である。図19は、図18に示す制動装置50Aが備えるロータ7Aの磁性体41およびマグネット42の斜視図である。図20は、図19に示す磁性体41およびマグネット42の正面図である。図21は、図20の一部の拡大図である。図22は、図19に示すロータ7Aの断面図である。図23は、図19に示すロータ7Aが備える磁性体41の斜視図である。図24は、図20の一部の拡大図である。
【0119】
ロータ7Aは、少なくとも2つの磁極部411を有する磁性体41と、複数のマグネット42と、一対のカバー43と、を備える。本実施形態に係るロータ7Aの構成は、磁極部411の外周面4112Aに、以下に説明する凹および凸を設けたことを除いて、第1実施形態のロータ4と同一である。そして、本実施形態に係る制動装置50Aは、凹および凸を設けることにより、ディテントトルクを増大することができる。
【0120】
本実施形態に係るロータ7Aにおいて、周方向Cに延在する外周面4112Aには、径方向Rの内側へ向けて凹む1又は複数の凹(以下、凹部DE1と称呼する)と、径方向Rの外側へ向けて突出する1又は複数の凸(以下、凸部PR1と称呼する)と、が形成される。磁極部411の周方向Cに延在する外周面4112Aは、磁極部411の周方向Cに延在する側面の一例である。
【0121】
凹部DE1は、例えば、1つの磁極部411に3つ(第1凹部DE1a、第2凹部DE1b、第3凹部DE1c)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線CL1に対して、第2凹部DE1bと第3凹部DE1cとが線対称に配置される。
【0122】
凸部PR1は、例えば、1つの磁極部411に4つ(第1凸部PR1a、第2凸部PR1b、第3凸部PR1c、第4凸部PR1d)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線CL1に対して、第1凸部PR1aと第2凸部PR1bとが線対称に配置され、かつ、第3凸部PR1cと第4凸部PR1dとが線対称に配置される。
【0123】
次に、ステータ6Aの磁極部30Aの凹および凸について、図25を用いて説明する。図25は、図19に示すモータ1Aが備えるステータ6Aの磁極部30Aの拡大図である。また、本実施形態に係るステータ6Aの構成は、ティース32の内周面321Aに、以下に説明する凹および凸を設けたことを除いて、第1実施形態のステータ3と同一である。そして、本実施形態に係る制動装置50Aは、凹および凸を設けることにより、ディテントトルクを増大することができる。また、ステータ6Aは、環状の部分としてのヨーク31と、磁極部30Aとしてのティース32と、で構成される。本実施形態に係るモータ1Aの径方向Rにおいて、ロータ7Aの磁極部411の外周面(側面)4112Aには、ステータ6Aのティース32の内周面(側面)321Aが対向する(図26参照)。そして、ティース32の周方向Cに延在する内周面321Aには、径方向Rの外側へ向けて凹む1又は複数の凹(以下、凹部DE2と称呼する)と、径方向Rの内側へ向けて突出する1又は複数の凸(以下、凸部PR2と称呼する)と、が形成される。
【0124】
凹部DE2は、例えば、1つの磁極部411に3つ(第1凹部DE2a、第2凹部DE2b、第3凹部DE2c)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線CL2に対して、第2凹部DE2bと第3凹部DE2cとが線対称に配置される。
【0125】
凸部PR2は、例えば、1つの磁極部411に4つ(第1凸部PR2a、第2凸部PR2b、第3凸部PR2c、第4凸部PR2d)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線2CLに対して、第1凸部PR2aと第2凸部PR2bとが線対称に配置され、かつ、第3凸部PR2cと第4凸部PR2dとが線対称に配置される。
【0126】
次に、ロータ4における磁極部411の凹部DE1および凸部PR1と、ステータ3における磁極部30の凹部DE2および凸部PR2との関係について図26図27を用いて説明する。図26は、ロータ7Aにおける磁極部411Aの凹部DE1および凸部PR1、および、ステータ6Aにおける磁極部30Aの凹部DE2および凸部PR2の平面図である。図27は、ロータ7Aにおける磁極部411Aの凹部DE1および凸部PR1、および、ステータ6Aにおける磁極部30Aの凹部DE2および凸部PR2の拡大図である。
【0127】
上述したように、ロータ7Aにおける1つの磁極部411Aには、3つの凹部DE1が形成され、かつ、4つの凸部PR1が形成される。一方、ステータ6Aにおける1つの磁極部30Aには、3つの凹部DE2が形成され、かつ、4つの凸部PR1が形成される。つまり、ロータ7Aにおける1つの磁極部411の凹部DE1または凸部PR1の数と、ステータ6Aにおける1つの磁極部30の凹部DE2または凸部PR2の数は、同じである。
【0128】
また、車両のエンジンおよびモータ1Aの非駆動時の径方向Rにおいて、ロータ7Aの凹部DE1とステータ6Aの凹部DE2とが対向し、かつ、ロータ7Aの凸部PR1とステータ6Aの凸部PR2とが対向する。
【0129】
例えば図27に示すように、径方向Rにおいて、ロータ7Aの第1凹部DE1aとステータ6Aの第1凹部DE2aとが対向し、ロータ7Aの第2凹部DE1bとステータ6Aの第2凹部DE2bとが対向し、かつ、ロータ7Aの第3凹部DE1cとステータ6Aの第3凹部DE2cとが対向する。
【0130】
その上、径方向Rにおいて、ロータ7Aの第1凸部PR1aとステータ6Aの第1凸部PR2aとが対向し、ロータ7Aの第2凸部PR1bとステータ6Aの第2凸部PR2bとが対向し、ロータ7Aの第3凸部PR1cとステータ6Aの第3凸部PR2cとが対向し、かつ、ロータ7Aの第4凸部PR1dとステータ6Aの第4凸部PR2dとが対向する。
【0131】
また、図26に示すように、径方向Rにおいて、ロータ7Aの1つの磁極部411Aにおける4つの凸部PR1と、ステータ6Aの1つの磁極部30Aにおける4つの凸部PR2とが対向する状態において、その磁極部411Aに対して周方向Cに隣接する磁極部411Aでは、径方向Rにおいて、ロータ7Aの3つの凸部PR1と、ステータ6Aの3つの凸部PR2とが対向する。
【0132】
その上、本実施形態に係るモータ1Aでは、径方向Rにおいて、ロータ7Aにおける1つの磁極部411Aの4つの凸部PR1と、ステータ6Aにおける1つの磁極部411Aの4つの凸部PR2とが対向した状態では、残りのロータ7Aの1つの磁極部411Aとステータ6Aの1つの磁極部30Aとの間でも、径方向Rにおいて、少なくとも、ロータ7Aの2つの凸部PR1と、ステータ6Aの2つの凸部PR2とが対向する。そして、図27に示すように、径方向Rにおいて対向するロータ7Aの凸部PR1と、ステータ6Aの凸部PR2とによって、これらロータ7Aの磁極部411Aの凸部PR1と、ステータ6Aの磁極部30Aの凸部PR2とを通過し、かつ、凸部PR1を有するロータ7Aの磁極部411Aと、凸部PR2を有するステータ6Aの磁極部30Aとを通過する磁気回路MC3(図27参照)が、ロータ7Aのマグネット42の磁力に基づいて形成される。
【0133】
これらのため、車両のエンジンおよびモータ1Aの非駆動時において、ロータ7Aの磁極部411Aおよびステータ6Aの磁極部30Aには、ロータ7Aのマグネット42によって、ロータ7Aの凸部PR1およびステータ6Aの凸部PR2を通過する磁気回路MC3が形成されると共に、ステータ6Aに対してロータ7Aが周方向Cへ回転することを防止するディテントトルク(コギングトルク)が発生する。
【0134】
次に、駆動装置10Aのロータ(第1ロータ)4のマグネット42の着磁および制動装置50Aのロータ(第2ロータ)7Aのマグネット72の着磁について図28を用いて説明する。図28は、駆動装置10Aのロータ4のマグネット42の着磁および制動装置50Aのロータ7Aのマグネット72の着磁を示す模式図である。上述したように、ロータ4の径方向Rの寸法と、ロータ7Aの径方向Rの寸法とは同じである。その上、ロータ4の複数のマグネット42の数と、ロータ7Aの複数のマグネット42の数とは同じである。さらに、ロータ4の複数のマグネット42の極数と、ロータ7Aの複数のマグネット42の極数とは同じである。
【0135】
そして、例えばシャフト2にロータ4、7Aを固定した後、軸方向Aにおいて、ロータ4のマグネット42のそれぞれの位置と、ロータ7Aのマグネット42のそれぞれの位置と、を合わせる。その際、ロータ4と、ロータ7Aとを、軸方向Aにおいて、所定の距離L3だけ離して配置する。
【0136】
その後、ロータ4の径方向の外側に着磁装置200を配置する。着磁装置200は、軸方向Aから視た場合、リング状(環状)に形成され、かつ、径方向Rの内周の寸法が、駆動装置10のロータ4の外周の寸法よりもわずかに大きく、かつ、制動装置50のロータ7Aの外周の寸法よりもわずかに大きい。そして、着磁装置は、不図示のコイルを有する着磁ヨーク201と、そのコイルに対して電気的に接続された電源と、を有する。そして、着磁装置200は、電源から電圧を印加することでコイルに磁場を形成し、その形成した磁場によって、ロータ4のマグネット42の着磁を行うと共に、ロータ7Aのマグネット42の着磁を行う。
【0137】
従って、本実施形態に係るモータ1Aの軸方向A、径方向R、および、周方向Cにおいて、駆動装置10のロータ4に形成されるマグネット42のS極およびN極の位置と、制動装置50Aのロータ7Aに形成されるマグネット42のS極およびN極の位置と、が同一になる。そのため、本実施形態に係るモータ1Aでは、駆動装置10のロータ4マグネット42と、制動装置50Aのロータ7Aのマグネット42とをまとめて1つの着磁ヨーク201で着磁することができる。
【0138】
その結果、本実施形態に係るモータ1Aにおいて、駆動装置10のロータ4のマグネット42と、制動装置50Aのロータ7Aのマグネット42とを同時に着磁することができるため、作業工数を減少することができる。そのため、作業工数を減少することによって、本実施形態に係るモータ1Aでは、駆動装置10のロータ4のマグネット42に付着する異物を減少することができると共に、制動装置50Aのロータ7Aのマグネット42に付着する異物を減少することができる。また、着磁装置200の着磁ヨーク201を1つにすることができる。さらに、本実施形態に係るモータ1Aでは、駆動装置10のロータ4のマグネット42と、制動装置50Aのロータ7Aのマグネット42とにおいて、着磁の際における相互の干渉を抑制することができると共に、マグネット42の極性を間違えることを抑止することができる。
【0139】
本実施形態に係るモータ1Aでは、第1ロータである駆動装置10のロータ4のディテントトルクに対して第2ロータである制動装置50Aのロータ7Aのディテントトルクが大きい。また、駆動装置10のロータ4のマグネット42の磁力と、制動装置50Aのロータ7Aのマグネット72の磁力とが実質的に相互に作用しないように、軸方向Aにおいて、ロータ4とロータ7Aとは、所定の距離だけ離れている。
【0140】
なお、上述した本実施形態に係るモータ1Aは、第1ロータであるロータ4における径方向Rの寸法と、第2ロータであるロータ7Aにおける径方向Rの寸法とが同じであるものを説明した。しかしながら、本実施形態に係るモータ1Aは、それに限られない。例えば、第1ロータであるロータ4における径方向Rの寸法と、第2ロータであるロータ7Aにおける径方向Rの寸法との比が0.9から1.1の間でもよい。
【0141】
本実施形態に係るロータ(第2ロータ)7Aは、2つの磁極部411A、環状部412、および、2つの磁極部411Aと環状部412とを連結する2つの接続部413を有する磁性体41Aと、周方向Cにおいて、2つの磁極部411Aの間にあるマグネット42と、を備え、2つの磁極部411Aの周方向に延在する外周面(側面)4112Aには複数の凹部(凹)DE1または凸部(凸)PR1が形成されている。
【0142】
本実施形態に係る制動装置50Aは、径方向Rにおいて、ロータ(第2ロータ)7Aに対向するステータ(第2ステータ)6Aを備え、ステータ6Aは、複数の磁極部30Aを備え、径方向Rにおいて、ロータ7Aの外周面(側面)4112Aに対向する磁極部30Aの内周面(側面)321Aには、複数の凹部(凹)DE2または凸部(凸)PR2が形成されている。
【0143】
本実施形態に係る制動装置50Aにおいて、ロータ7Aの複数の凹部DE1または凸部PR1の数と、ステータ6Aの複数の凹部DE2または凸部PR2の数は同じである。
【0144】
なお、上述したモータ1、1Aにおいて、ロータ4、7、7Aは例示であり、駆動装置10のロータ4における径方向Rの寸法と、制動装置50、50Aのロータ7、7Aにおける径方向Rの寸法との比が0.9から1.1の間であり、かつ、駆動装置10のステータ3に対するロータ4のディテントトルクに対して、制動装置50、50Aのステータ6、6Aに対するロータ7、7Aのディテントトルクが大きければよく、他の形態のロータまたはステータを適用することができる。
【0145】
また、上述した第1実施形態、第1実施形態の変形例、および、第2実施形態には、車両に適用されるモータ1、1Aを説明した。しかし、本発明に係るモータ1、1Aは、それに限られず他の機器・装置に用いることができる。
【0146】
以上、本発明を第1実施形態、第1実施形態の変形例、および、第2実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0147】
1、1A モータ、 3、6A ステータ、 30A 磁極部、 321A 内周面、 4 ロータ(第1ロータ)、 41、41A 磁性体、 411、411A 磁極部、 4112、4112A 外周面、 412 環状部、 413 接続部、 42 マグネット、 7、7A ロータ(第2ロータ)、 72 マグネット、 300 電子機器、 301 筐体、 302、303 ギア、 A 軸方向、 C 周方向、 DE1 凹部(凹)、 DE2 凹部(凹)、 R 径方向、 PR1 凸部(凸)、 PR2 凸部(凸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
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図28