(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025115115
(43)【公開日】2025-08-06
(54)【発明の名称】ロータ、制動装置、および、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20250730BHJP
【FI】
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009464
(22)【出願日】2024-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】石 冰潔
(72)【発明者】
【氏名】宮木 淳一
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601DD11
5H601FF02
5H601GA02
5H601GA25
(57)【要約】
【課題】ディテントトルクを増大させることができるロータを提供する。
【解決手段】ロータは、外側のリング、内側のリング、および、当該外側のリングと当該内側のリングとを連結する複数の連結部を有する磁性体と、複数のマグネットと、周方向において、前記複数の連結部のうち、前記マグネットの両側にある2つの連結部と当該マグネットとの間にある2つの空隙と、を備える。前記周方向において、前記連結部の幅は前記空隙の幅に対して小さい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側のリング、内側のリング、および、当該外側のリングと当該内側のリングとを連結する複数の連結部を有する磁性体と、
複数のマグネットと、
周方向において、前記複数の連結部のうち、前記マグネットの両側にある2つの連結部と当該マグネットとの間にある2つの空隙と、
を備え、
前記周方向において、前記連結部の幅は前記空隙の幅に対して小さい、
ロータ。
【請求項2】
径方向における前記外側のリングの幅は、前記周方向における空隙の幅より小さい、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
径方向において、前記内側のリングに連結する前記2つの連結部の部分は、前記マグネットの前記内側のリング側の内面に対して、当該内側のリング側にある、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
径方向において、前記内側のリングは、前記外側のリングに向けて突出する複数の突出部を備え、
前記突出部は前記マグネットに連結している、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項5】
前記内側のリングに連結する前記連結部の部分は、前記突出部の前記外側のリングの端部に対して当該内側のリング側にある、請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
前記空隙としての第1の空隙と、前記径方向において前記第1の空隙の前記径方向の内側にある第2の空隙を有し、
前記周方向において、前記第2の空隙は、前記突出部と前記連結部との間にある、請求項4に記載のロータ。
【請求項7】
請求項1に記載のロータと、
複数の磁極部を有するステータと、
を備える、制動装置。
【請求項8】
径方向において、前記ロータに対向する前記ステータの磁極部の側面は、前記ロータに向けて突出する2つの突出部と、周方向において当該2つの突出部の間に形成された凹部と、を備える、請求項7に記載の制動装置。
【請求項9】
前記ロータの前記マグネットの数と、前記ステータのティースの数とが異なる場合において、前記ロータの前記マグネットの数と、前記ステータのティースの数との最小公倍数をXとした場合、
360度をXで除した角度毎に、前記凹部と前記突出部とを前記ティースの側面に配置する、請求項7に記載の制動装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一つに記載の制動装置と、当該制動装置を収容する筐体を備える、電子機器。
【請求項11】
請求項7~9のいずれか一つに記載の制動装置と、1又は複数のギアを備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、制動装置、および、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
インナーロータ型のモータにおいて、ロータが、複数の磁石と、薄い板状の金属を積層して形成した磁性体と、を備え、磁性体をスポーク形にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロータには、ディテントトルクを増大させることに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ディテントトルクを増大させることができるロータ、制動装置、および、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、ロータは、外側のリング、内側のリング、および、当該外側のリングと当該内側のリングとを連結する複数の連結部を有する磁性体と、複数のマグネットと、周方向において、前記複数の連結部のうち、前記マグネットの両側にある2つの連結部と当該マグネットとの間にある2つの空隙と、を備える。前記周方向において、前記連結部の幅は前記空隙の幅に対して小さい。
【0007】
一つの態様によれば、ディテントトルクを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電子機器の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器が備える制動装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す制動装置が備えるロータの磁性体およびマグネットの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す磁性体およびマグネットの正面図である。
【
図6】
図6は、ステータおよびロータに形成される磁気回路を示す正面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示すステータおよびロータの断面図である。
【
図10】
図10は、ロータの磁性体とステータのティースとが対向した状態において、ステータに対するロータのマグネットの磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
【
図12】
図12は、ロータの磁性体とステータのティースとの対向状態から、ロータが回転した非対向状態において、ステータに対するロータのマグネットの磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下に、実施形態に係る制動装置1、ロータ4、および、電子機器300を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
本実施形態における制動装置1は、例えば、
図1に示すような電子機器300に収容される。
図1は、実施形態に係る電子機器300の斜視図である。本実施形態に係る制動装置1の説明において、方向の理解を容易にするため、シャフト2が延びる方向を軸方向Aと呼び、ロータ4が回転する方向を周方向Cと呼び、軸方向Aに対して直交する平面に含まれ、かつ、シャフト2の軸心2oを通過し、周方向Cに対して直交する方向を径方向Rと呼ぶ。
【0011】
電子機器300は、例えば電動車両またはハイブリッド車両などの車両に搭載される機器である。電子機器300は、例えば、制動装置1と、制動装置1を収容する筐体301と、第1のギア302と、第2のギア303と、を備える。
【0012】
第1のギア302は、例えばウォームギアであり、制動装置1のシャフト2と連動して回転する。シャフト2は、例えば駆動用のモータにおけるロータと連動して回転する。第2のギア303は、例えば第1のギア302に噛み合うハスバギアであり、出力軸304と連動して回転する。かかる構成により、駆動用のモータのロータの駆動力がシャフト2を介して電子機器300の出力軸304へ伝達される。
【0013】
次に、
図1、
図2を用いて制動装置1について説明する。
図2は、
図1に示す電子機器300が備える制動装置1の分解斜視図である。本実施形態における制動装置1は、シャフト2と、ステータ3と、ロータ4と、を備える。なお、本実施形態に係る制動装置1は、例えばステータ3がロータ4の径方向Rにおける外側に位置する。
【0014】
シャフト2は、いわゆる回転軸であって、例えば、金属材料を用いて円柱又は円筒の形状に形成され、軸方向Aに沿って延びている。シャフト2は、軸心2oを有し、かつ、電子機器300に対して軸心2oを中心に周方向Cへ回転可能に設けられる。シャフト2の軸方向Aにおける一方の端部には、第1のギア302が固定される。
【0015】
ステータ3は、ロータ4を周方向Cへ回転させるための力を発生させる部分である。ステータ3は、環状の部分としてのヨーク31と、磁極部30としてのティース32と、を備える。本実施形態に係るステータ3は、電気的に非接続な部材で構成されている。ヨーク31およびティース32は、磁性材料で形成される。
【0016】
ヨーク31は、ステータ3の径方向Rの外側に位置して環状に形成される。ティース32は、ヨーク31の内周面から、径方向Rの内側へ向けて突出する。本実施形態では、ティース32には、コイルが設けられていない。複数のティース32は、例えば周方向Cにおいて等間隔に配置される。ヨーク31およびティース32は、例えば電磁鋼板等の磁性材料(磁性体)で形成された平板状の部材を打ち抜きし、軸方向Aにおいて複数枚の部材を積層することにより形成される。
【0017】
次に、ロータ4について説明する。ロータ4は、ステータ3の径方向Rにおける内側に、回転可能に配置される。ロータ4は、磁性体41と、マグネット42と、一対のカバー43と、を有する。
【0018】
本実施形態に係るロータ4は、周方向Cに沿って配置された複数のマグネット42と、複数のマグネット42を収容した磁性体41とで構成された、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)ロータであり、複数のマグネット42が放射状に配置される。また、本実施形態におけるロータ4の外形の大きさ(外径)は、例えば24.5mmである。
【0019】
ロータ4が備える磁性体41についての詳細は後述し、次に、
図3、
図4、
図5を用いてマグネット42について説明する。
図3は、
図2に示す制動装置1が備えるロータ4の磁性体41およびマグネット42の斜視図である。
図4は、
図3に示す磁性体41およびマグネット42の正面図である。
図5は、
図4の一部の拡大図である。
図6は、ステータ3およびロータ4に形成される磁気回路MCを示す正面図である。
【0020】
複数のマグネット42は、例えば周方向Cにおいて等間隔に配置される。本実施形態におけるマグネット42は、例えば軸方向Aに延在する永久磁石である。また、マグネット42は、例えば焼結磁石である。マグネット42は、周方向Cにおいて、2つの連結部413の間にある。より詳細に説明すると、マグネット42は、周方向Cにおいて、2つの空隙41Hを介在させた状態で、2つの連結部413の間にある。マグネット42は、軸方向Aから視た場合には略矩形状に形成される。
【0021】
マグネット42は、径方向Rにおける内側の端面(内面)421と、径方向Rにおける外側の端面(外面)422と、周方向Cにおける側面423、424とを備える。実施形態において、
図4に示すマグネット42の周方向Cにおける幅W1(
図4参照)は、例えば2.29mmであり、マグネット42の磁石長(径方向Rにおける長さ)L1(
図4参照)は、例えば3.50mmである。
【0022】
本実施形態に係るロータ4は、例えば
図6に示すように、複数のマグネット42のうち、ある1つのマグネット42は、径方向Rの内側にS極が配置され、かつ、径方向Rの外側にN極が配置される。そして、そのマグネット42に対して周方向Cに隣接する別のマグネット42は、径方向Rの外側にS極が配置され、かつ、径方向Rの内側にN極が配置される。つまり、複数のマグネット42は、周方向Cの内側において、一方の磁極と他方の磁極とが交互になるよう配置され、かつ、周方向Cの外側において、一方の磁極と他方の磁極とが交互になるよう配置される。
【0023】
次に、
図2、
図7を用いて一対のカバー43について説明する。
図7は、
図3に示すステータ3およびロータ4の断面図である。本実施形態に係るカバー43は、例えば黄銅等、非磁性の材料、または、磁性体41よりも透磁率の低い材料により形成される。また、カバー43は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のように、磁性体41を構成する電磁鋼板よりも透磁率の低い材料を折り曲げることにより形成してもよい。
【0024】
一対のカバー43のうち一方のカバー43aは、磁性体41に対して軸方向Aにおける一方向側から装着され、一対のカバー43のうち他方のカバー43bは、磁性体41に対して、軸方向Aにおける他方側から装着される。つまり、一対のカバー43は、軸方向Aにおいて、磁性体41を挟持する。
【0025】
一対のカバー43において、一方のカバー43aの構成と、他方のカバー43bの構成とは同一であるが、異なる構成であってもよく限定されない。そこで、以下において、一方のカバー43aの構成を説明し、他方のカバー43bの構成は、一方のカバー43aと同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
一方のカバー43aは、平板のリング状に形成された本体部431と、径方向Rにおける内周縁において本体部431から軸方向Aへ突出する内周部432と、を備える。
【0027】
図2、
図7に示すように、一方のカバー43aの内周部432は、本体部431の内周縁から軸方向Aにおいて他方のカバー43bの内周部432へ向けて突出する。内周部432は、例えば、筒状に形成される。その上、内周部432は、磁性体41の内側のリング412の内周面に対向し、かつ、内側のリング412に接触するように配置される。
【0028】
一方のカバー43aの本体部431は、マグネット42の軸方向Aにおける一方側の面に対向し(又は接し)、他方のカバー43bの本体部431は、マグネット42に軸方向Aにおける他方側の面に対向する(又は接する)。かかる構成により、マグネット42の軸方向Aにおける移動が抑制される。
【0029】
次に、ロータ4が備える磁性体41について、
図4、
図5を用いて説明する。磁性体41は、
図4に示すように、外側のリング411、内側のリング412、および、外側のリング411と内側のリング412とを連結する複数の連結部413を有する。なお、実施形態に係るロータ4において、磁性体41は磁極部を構成する。
【0030】
外側のリング411は、軸方向Aから視た場合、環状に形成される。そして、外側のリング411は、径方向Rにおいて、内側のリング412の外側に配置される。また、外側のリング411は、径方向Rにおいて、マグネット42の外側に配置され、かつ、マグネット42の外側の端面422に接触する。このため、ロータ4を回転した際、マグネット42が径方向Rの外側に移動することを防止することができる。
【0031】
内側のリング412は、軸方向Aから視た場合、環状に形成される。そして、内側のリング412は、径方向Rにおいて、外側のリング411の内側に配置される。また、内側のリング412は、径方向Rにおいて、マグネット42の内側に配置され、かつ、マグネット42の内側の端面421に接触する。このため、マグネット42が径方向Rの内側に移動することを防止することができる。また、内側のリング412は、環状の部分412aと、径方向Rにおいて環状の部分412aから外側のリング411に向けて突出する複数の突出部412bを備える。
【0032】
環状の部分412aの径方向Rの内側には、シャフト2が配置される(
図2参照)。突出部412bのそれぞれは、マグネット42に連結している。複数の突出部412bは、例えば周方向Cにおいて、所定の間隔(例えば、等間隔)に配置される。本実施形態における内側のリング412は、例えば12個の突出部412bを備える。
【0033】
突出部412bは、マグネット42を内側のリング412に係合しており、周方向Cにおいて離れた一対の凸部412b1、412b2と、周方向Cにおいて一対の凸部412b1、412b2の間に位置する凹部412b3と、を有する。本実施形態において、凹部412b3の底部は、径方向Rにおける外側に位置する突出部412bの端部の一例である。
【0034】
連結部413は、外側のリング411と内側のリング412とを連結する。複数の連結部413は、例えば周方向Cにおいて、等間隔に配置される。本実施形態における磁性体41は、例えば12個の連結部413を備える。
【0035】
連結部413は、
図5に示すように、径方向Rの内側に位置する端部(部分413a)と、径方向Rの外側に位置する端部(部分413b)と、を有する。連結部413は、端部(部分413a)によって内側のリング412に連結され、かつ、端部(部分413b)によって外側のリング411に連結される。
【0036】
また、磁性体41は、周方向Cにおいて、複数の連結部413のうち、マグネット42の両側にある2つの連結部413とマグネット42との間にある2つの空隙41Hを有する。
【0037】
空隙41Hのそれぞれは、径方向Rの外側に位置する第1の空隙41H1と、径方向Rの内側に位置する第2の空隙41H2と、を有する。周方向Cにおいて、第1の空隙41H1は、マグネット42と連結部413との間にある。また、周方向Cにおいて、第2の空隙41H2は、突出部412bと連結部413との間にある。本実施形態に係る制動装置1の周方向Cにおいて、第1空隙の幅W3は、第2の空隙41H2の幅よりも大きく、ティース32の幅W2(
図2参照)や突出部412bの幅に対して小さい。
【0038】
内側のリング412に連結する連結部413の部分413aは、突出部412bの外側のリング411の端部(凹部412b3の底部)に対して内側のリング412側にある。
【0039】
次に、本実施形態に係る制動装置1を、車両の制動装置として用いる場合について説明する。上述した制動装置1のシャフト2には駆動用のモータのロータが固定され、かつ、シャフト2は、例えば、第1のギア302、第2のギア303、および、出力軸304を介して車両の駆動系に連結されている。車両の駆動系には、デファレンシャルギヤが含まれており、駆動用のモータの動力は、デファレンシャルギヤに伝達されて、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪に分配されて伝達される。これにより、モータの駆動時には左右の駆動輪が回転し、車両が前進または後進する。
【0040】
このようなモータでは、車両のエンジンおよびモータの非駆動時、駆動用のモータのステータに対してロータが停止することにより、駆動輪が回転しないことが望まれる。例えば、車両を急坂に停車した場合においても駆動輪が回転しないことが望まれる。換言すれば、このようなモータには、非駆動時において、ディテントトルク(コギングトルク)を増大することが望まれる。そこで、本実施形態に係る制動装置1は、以下に記載する構成を採用することにより、ディテントトルクを増大することができる。
【0041】
本実施形態に係る制動装置1では、
図6に示すように、ステータ3に対してロータ4を停止している状態において、ロータ4の磁性体(磁極部)41およびステータ3の磁極部30には、ロータ4のマグネット42によって、磁気回路MCが形成されると共に、ディテントトルク(コギングトルク)が発生し、ステータ3に対してロータ4が周方向Cへ回転することが抑制される。
【0042】
本実施形態に係るロータ4は、周方向Cにおいて、
図5に示すマグネット42の側面423、424に隣接して空隙41Hを配置してある。空隙41Hにおける透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、空隙41Hの空気がフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット42の側面423、424から周方向Cへ向かう磁束は抑制される一方、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。なお、空隙41Hには空気又は非磁性体(例えば、ステータ3を形成する電磁鋼板などの磁性体41の透磁率より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0043】
その上、本実施形態に係るロータ4の周方向Cにおいて、連結部413の幅W4は、空隙41H(第1の空隙41H1)の幅W3に対して小さく、かつ、径方向Rにおける外側のリング411の幅W5は、周方向Cにおける第1の空隙41H1の幅W3より小さい。それらのため、マグネット42から周方向Cへ向かう磁束は、外側のリング411および連結部413を通過することになるが、上記の構成によって、マグネット42の磁束が磁気回路MCを通過する際の磁気抵抗よりも、マグネット42の磁束が外側のリング411および連結部413を通過する際の磁気抵抗が大きくなる。この結果、本実施形態に係るロータ4では、マグネット42から外側のリング411を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0044】
本実施形態に係るロータ4の径方向Rにおいて、内側のリング412に連結する2つの連結部413の部分413aは、マグネット42の内側のリング412側の内面(つまり、マグネット42の内側の端面421)に対して、内側のリング412側にある。そのため、連結部413の径方向Rの長さを長くすることによって、マグネット42の磁束が外側のリング411および連結部413を通過する際の磁気抵抗をより大きくすることができる。詳細には、径方向Rにおいて、連結部413の長さは、マグネット42の長さより大きく形成されている。従って、本実施形態に係るロータ4では、マグネット42から外側のリング411を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0045】
本実施形態に係るロータ4の径方向Rにおいて、内側のリング412は、外側のリング411に向けて突出する複数の突出部412bを備え、突出部412bは、マグネット42に連結している。それらのため、径方向Rにおいて外側のリング411と内側のリング412との距離を、突出部412bの径方向Rの長さだけ大きくすることができ、それにより、連結部413の径方向Rの長さを長くすることができる。その結果、マグネット42の磁束が外側のリング411および連結部413を通過する際の磁気抵抗をより大きくすることができる。従って、本実施形態に係るロータ4では、マグネット42から外側のリング411を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0046】
本実施形態に係るロータ4において、内側のリング412に連結する連結部413の部分413aは、突出部412bの外側のリング411側の端部(凹部412b3の底部)に対して、内側のリング412側にある。換言すると、内側のリング412に連結する連結部413の部分413aは、径方向Rにおいて、突出部412bの外側のリング411側の端部(凹部412b3の底部)よりも径方向Rの内側に位置する。そのため、連結部413の径方向Rの長さを長くすることができる。その結果、マグネット42の磁束が外側のリング411および連結部413を通過する際の磁気抵抗をより大きくすることができる。従って、本実施形態に係るロータ4では、マグネット42から外側のリング411を通じた周方向Cに向かう磁束は抑制される一方、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。
【0047】
本実施形態に係るロータ4の周方向Cにおいて、第2の空隙41H2は、突出部412bと連結部413との間にある。第2の空隙41H2の透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、第2の空隙41H2がフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット42の側面423、424から周方向Cへ向かう磁束は抑制される一方、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側へ向かう磁束は増大される。なお、空隙41Hには空気又は非磁性体(例えば、ステータ3を形成する電磁鋼板などの磁性体41の透磁率より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0048】
そして、上述した種々の構成に基づき、径方向Rの外側へ向かう磁束を増大することによって、磁性体41の外周面41oから径方向Rの外側に位置するステータ3のティース32へ向かう磁束を増大することができ、ディテントトルクを増大することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態におけるロータ4は、外側のリング411、内側のリング412、および、外側のリング411と内側のリング412とを連結する複数の連結部413を有する磁性体41と、複数のマグネット42と、周方向Cにおいて、複数の連結部413のうち、マグネット42の両側にある2つの連結部413とマグネット42との間にある2つの空隙41Hと、を備え、周方向Cにおいて、連結部413の幅W4は空隙41H(第1の空隙41H1)の幅W3に対して小さい。
【0050】
本実施形態に係るロータ4において、径方向Rにおける外側のリング411の幅W5は、周方向Cにおける空隙41H(第1の空隙41H1)の幅W3より小さい。
【0051】
本実施形態に係るロータ4において、径方向Rにおいて、内側のリング412に連結する2つの連結部413の部分413aは、マグネット42の内側のリング412側の内面に対して、内側のリング412側にある。
【0052】
本実施形態に係るロータ4において、径方向Rにおいて、内側のリング412は、外側のリング411に向けて突出する複数の突出部412bを備え、突出部412bはマグネット42に連結している。
【0053】
本実施形態に係るロータ4において、内側のリング412に連結する連結部413の部分413aは、突出部412bの外側のリング411の端部(凹部412b3の底部)に対して内側のリング412側にある。
【0054】
本実施形態に係るロータ4は、空隙41Hとしての第1の空隙41H1と、径方向Rの内側にある第2の空隙41H2を有し、周方向Cにおいて、第2の空隙41H2は、突出部412bと連結部413との間にある。
【0055】
本実施形態に係るロータ4は、径方向Rにおいて、外側のリング411と内側のリング412とによってマグネット42を挟持するため、接着剤を用いることなしにマグネット42を磁性体41に保持することができる。そのため、本実施形態に係るロータ4は、残留磁束密度(Br)の強い焼結磁石をマグネット42に使用することができるため、マグネット42に他の磁石を使用し、かつ、径方向Rの大きさが同一のロータと比較した場合、ディテントトルクを増大することができる。
【0056】
本実施形態に係る電子機器300は、制動装置1と、制動装置1を収容する筐体301を備える。
【0057】
本実施形態に係る電子機器300は、制動装置1と、1又は複数のギア302、303を備える。
【0058】
[変形例]
次に、本実施形態の制動装置1において、変形例のステータ3Aを
図8、
図9、
図10を用いて説明する。
図8は、変形例のステータ3Aの正面図である。
図9は、
図8の一部の拡大図である。
図10は、ディテントトルクが最大となるティース32Aの位置を示す正面図である。なお、以下に変形例に係るステータ3Aの構成において、実施形態に係るステータ3とは異なる構成を説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
ステータ3Aのティース32Aは、ヨーク31の内周面から径方向Rに延在する本体部320と、本体部320の径方向Rの内側に設けられた突出部32a、32bおよび凹部32cと、を備える。換言すると、径方向Rにおいて、ロータ4に対向するステータ3Aの磁極部30の内周面(側面)30fは、ロータ4に向けて突出する2つの突出部32a、32bと、周方向Cにおいて2つの突出部32a、32bの間に形成された凹部32cと、を備える。
【0060】
一対の突出部32a、32bは、周方向Cにおいて互いに離れるように突出するため、軸方向Aから視た場合、本体部320の側面320fから周方向Cに(隣り合う他の本体部320に向けて)突出する。
【0061】
本変形例に係る制動装置1の径方向Rにおいて、ロータ4に対向するステータ3Aの磁極部30の内周面(側面)30fは、ロータ4に向けて突出する2つの突出部32a、32bと、周方向Cにおいて2つの突出部32a、32bの間に形成された凹部32cと、を備える。1つのティース32Aに2つの突出部32a、32bがあることで、磁極部30となる2つの突出部32a、32bが存在し、2つの突出部32a、32bを有さないティース32より磁極部30の数が多くなる。そのため、本変形例に係る制動装置1は、よりディテントトルクを増大することができる。
【0062】
なお、本変形例に係る制動装置1において、ロータ4の外周面41oに、ステータ3Aのティース32Aの内周面30fに設けられた凹部32cおよび突出部32a、32bと同数の凹部および突出部を設けてもよい。
【0063】
次に、コギングトルクの大小について
図10~
図12を用いて説明する。
図10は、ロータ4の磁性体(磁極部)41とステータ3Aのティース32Aとが対向した状態において、ステータ3Aに対するロータ4のマグネット42の磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
図11は、コギングトルクの波形を示す図である。
図12は、ロータ4の磁性体(磁極部)41とステータ3Aのティース32Aとの対向状態から、ロータ4が回転した非対向状態において、ステータ3Aに対するロータ4のマグネット42の磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
【0064】
図10、
図11から分かるように、ロータ4の磁性体(磁極部)41と、ステータ3の磁極部であるティース32とが対向している状態では、磁束はおもに径方向Rに向かっており、周方向Cへのトルクに寄与する磁束の成分が小さい。
【0065】
一方、
図11、
図12から分かるように、ロータ4の磁性体(磁極部)41と、ステータ3の磁極部であるティース32との対向状態からロータ4が回転した非対向状態では、磁束はおもに周方向Cに向かっており、トルクに寄与する磁束の成分が大きくなっている。なお、
図11に示すように、
図12に示す状態において、トルクが最も大きくなる。
【0066】
また、本変形例に係る制動装置1において、ロータ4のマグネット42の個数MAは12個であり、ステータ3Aのティース32Aの個数TEは12個である。つまり、本変形例に係る制動装置1では、ロータ4のマグネット42の個数MAと、ステータ3Aのティース32Aの個数とが同数であるが、仮に、いずれか一方を10個とし、他方を12個とした場合には、最小公倍数は60となる。その場合、本変形例に係る制動装置1は、周方向Cにおいて、360度のうち、マグネット42の個数MAと、ティース32Aの個数TEとの最小公倍数である60個の位置でコギングトルク(ディテントトルク)が大きくなる、いわゆるコギングリップル(波)が発生する。そして、コギングリップルにおいて、360度を60個で除した6(度/1個)が、1つの波の周期となる。
【0067】
換言すると、ロータ4のマグネット42の個数をMAとし、ステータ3Aのティース32Aの数をTEとし、かつ、MAとTEの最小公倍数をXとした場合、360(度)をXで除したY(度/1個)が、コギングリップルの周期となる。そして、本発明者が行った鋭意の検討に基づく知見によると、コギングリップルの周期(1つの波)に対応して、少なくとも1つの凹部32cおよび2つの突出部32a、32bを配置することによって、コギングトルクを増大することができた。例えば、本変形例に係る制動装置1では、コギングリップルの周期(1つの波)に対応して、2つの突出部32a、32bと1つの凹部32cとをそれぞれ配置することによって、コギングトルクを増大することができた。つまり、本変形例に係る制動装置1では、個数MAと個数TEの最小公倍数をXとした場合、360度をXで除した角度毎に、コギングリップルの周期に対応するように少なくとも1つの凹部32cおよび2つの突出部32a、32bをティース32の内周面(側面)30fに配置してあり、同様の凹部および突出部をロータ4の外周面(側面)に設けることが好ましい。
【0068】
本変形例に係る制動装置1において、ロータ4の外形の大きさ(外径)がφ24.5mmである場合、ロータ4に対向するステータ3の磁極部30であるティース32の内周面(側面)30fに1つの凹部32c、および、2つの突出部32a、32bを交互に配置する形状にすることで、コギングリップルの形状に合わせて凹部32cと突出部32a、32bとを配置することができる。その上、ステータ3に対向するロータ4の磁性体(磁極部)41の外周面(側面)41oに1つの凹部と2つの突出部とを交互に配置することが好ましい。このように凹部と突出部とを配置すれば、ロータ4の外周面41oに、コギングリップルの形状に合わせて、ロータ4にも凹部および突出部を配置して、さらにコギングトルクを向上することができる。
【0069】
換言すれば、ティースコンビネーションによって形成されるコギングリップルの波形と、ステータ3Aの磁極部30であるティース32Aの内周面(側面)30fの形状(1つの凹部32cおよび2つの突出部32a、32b)とを対応させることで、コギングトルクを向上させることができる。その上、ティースコンビネーションによって形成されるコギングリップルの波形に対応して、ロータ4の外周面41oに、凹部と突出部とを形成することが、コギングトルクを向上させる点において好ましい。
【0070】
つまり、本変形例に係る制動装置1では、ロータ4のマグネット42の数MAと、ステータ3Aのティース32Aの数とが異なる場合において、ロータ4のマグネット42の数MAと、ステータ3のティース32Aの数TEとの最小公倍数をXとした場合、360度をXで除した角度毎に、少なくとも1つの凹部32cおよび1つの突出部32a、32bをティース32の内周面(側面)30fにそれぞれ配置する。
【0071】
なお、上述した実施形態および変形例には、同一のシャフト2に、制動装置1のロータ4が固定され、かつ、駆動用のモータのロータが固定されるものを説明した。しかし、本実施形態に係る発明はそれに限られず、制動装置1のロータ4が固定されるシャフト2と、駆動用のモータのロータが固定されるシャフトとを個別に設けてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態および変形例には、車両に適用される制動装置1を説明した。しかし、本発明に係る制動装置1は、それに限られず他の機器・装置に用いることができる。
【0073】
以上、本発明を実施形態及び変形例に基づき説明したが、本発明は実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0074】
1 制動装置、 3、3A ステータ、 30 磁極部、32A ティース、32a、32b 突出部、 32c 凹部、 4 ロータ、 41 磁性体、 411 外側のリング、 412 内側のリング、 413 連結部、 41H 空隙、 41H1 第1の空隙、 41H2 第2の空隙、 42 マグネット、 300 電子機器、 301 筐体、 302、303 ギア、 A 軸方向、 C 周方向、 R 径方向、 W3 第1の空隙の幅、 W4 連結部の幅、 W5 外側のリングの幅