(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011513
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20250117BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113678
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 敦士
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢一
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200JA02
2H200JB07
2H200JB39
2H200JB49
2H200JC04
2H200JC09
2H200LA25
2H200PA12
2H200PA24
2H200PB14
2H200PB15
2H270LA52
2H270LD03
2H270LD04
2H270MC41
2H270MC71
2H270MC78
2H270MD12
2H270MH06
2H270MH09
2H270MH11
2H270MH12
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】画像の形成精度を損なうことなくベルト搬送装置におけるベルトの走行位置を基準位置に戻すことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数のローラーに無端状のベルトを掛け回して走行させるベルト搬送装置と、前記ベルト搬送装置によって搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記ベルト搬送装置における前記ベルトの走行位置を補正するためのベルト位置制御部とを備え、前記ベルト位置制御部は、前記画像形成部による画像形成期間において、予め設定された上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御し、前記画像形成部による非画像形成期間において、前記上限値よりも大きな上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御する画像形成装置である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラーに無端状のベルトを掛け回して走行させるベルト搬送装置と、
前記ベルト搬送装置によって搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記ベルト搬送装置における前記ベルトの走行位置を補正するためのベルト位置制御部とを備え、
前記ベルト位置制御部は、
前記画像形成部による画像形成期間において、予め設定された上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御し、
前記画像形成部による非画像形成期間において、前記上限値よりも大きな上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御量は、前記複数のローラーのうちのステアリングローラーのステアリング量、および前記ベルトの走行速度のうちの少なくとも一方である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルトの走行位置を検知するための位置センサーを備え、
前記ベルト位置制御部は、前記位置センサーから取得した前記ベルトの走行位置に基づく前記制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルト位置制御部は、前記ベルトの走行位置と、前記ベルトの走行位置の変位速度とに基づく前記制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルト位置制御部は、前記ベルトの走行位置が予め設定された範囲となった場合に、前記大きな上限値の範囲の制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルト搬送装置に対して記録媒体を供給する媒体供給装置を備え、
前記ベルト位置制御部は、前記ベルトの走行位置が予め設定された範囲となった場合に、前記ベルト搬送装置に対する前記記録媒体の供給間隔を広くする
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ベルト位置制御部は、前記ベルトの走行位置が予め設定された範囲となった場合、または前記ベルトの走行位置の変位速度が予め設定された閾値に達した場合に、前記大きな上限値の範囲の制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ベルト位置制御部は、前記ベルトの走行位置が予め設定された範囲を超えた場合に、前記ベルト搬送装置の駆動を停止させる
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ベルト位置制御部は、前記非画像形成期間において、前記画像形成期間よりも大きな制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルト位置制御部は、前記画像形成期間において、前記記録媒体に対する画像形成に影響のないことが確認された範囲の制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成期間は、前記記録媒体に対する画像の転写期間であり、
前記非画像形成期間は、前記記録媒体に対する画像の非転写期間である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
装置内の環境を測定するための環境センサーを備え、
前記ベルト位置制御部は、前記環境センサーから取得した装置内の環境を考慮した前記制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記ベルト位置制御部は、前記複数のローラーの平行度を考慮した前記制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記ベルト搬送装置との間で前記記録媒体をニップする転写ユニットを備え、
前記ベルト位置制御部は、前記記録媒体をニップするニップ部においてのニップ圧力のバラツキを考慮した前記制御量で、前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記ベルトの走行位置は、前記ベルト搬送装置による前記ベルトの走行方向に対して垂直方向の位置である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項16】
複数のローラーに無端状のベルトを掛け回して走行させるベルト搬送装置と、前記ベルト搬送装置によって搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記ベルト搬送装置における前記ベルトの走行位置を補正するためのベルト位置制御部とを備えた画像形成装置による画像形成方法であって、
前記ベルト位置制御部は、
前記画像形成部による画像形成期間において、予め設定された上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御し、
前記画像形成部による非画像形成期間において、前記上限値よりも大きな上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御する
画像形成方法。
【請求項17】
複数のローラーに無端状のベルトを掛け回して走行させるベルト搬送装置と、前記ベルト搬送装置によって搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部とを備えた画像形成装置において、前記ベルト搬送装置におけるベルトの走行位置を補正するための制御をコンピューターに実行させるための画像形成プログラムであって、
前記画像形成部による画像形成期間において、予め設定された上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置を駆動させ、
前記画像形成部による非画像形成期間において、前記上限値よりも大きな上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置を駆動させる
画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、トナー画像を担持する中間転写ベルトや記録媒体を搬送するための二次転写ベルトなどのベルト搬送装置を備えている。ベルト搬送装置は、複数のローラーに無端状のベルトを掛け渡した構成のものである。画像形成装置においては、このようなベルト搬送装置において、無端状のベルトが蛇行して幅方向に片寄ることを防止するための制御が行われており、例えば下記特許文献1に記載の技術が開示されている。この特許文献1には、「ベルト装置は、中間転写ベルトと、従動ローラーと、駆動ローラーと、駆動手段と、中間転写ベルトの幅方向におけるベルトの位置を検出する位置検出手段と、中間転写ベルトの蛇行を補正するローラー位置調整機構と、ローラー位置調整機構を制御する制御部と、を備え、制御部は、位置検出手段で検出された中間転写ベルトの位置が補正範囲内にある通常時には、中間転写ベルトの蛇行を補正するようにローラー位置調整機構を制御し、位置検出手段により検出された中間転写ベルトの位置が補正範囲外且つ許容範囲内にある異常時には、中間転写ベルトの蛇行を補正するようにローラー位置調整機構を制御すると共に、駆動ローラーの回転速度が通常時よりも速くなるように駆動手段を制御する。」と記載され、これにより「蛇行したベルトを速やかに目標位置に戻すことができる。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、記録媒体に対して画像の転写中であるか否かにかかからず、ベルトの位置が異常時である場合には駆動ローラーの回転速度が通常時よりも速くなる構成である。このため、記録媒体に対する画像の転写ズレが生じ易く、画像の形成精度を確保することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、画像の形成精度を損なうことなくベルト搬送装置におけるベルトの走行位置を基準位置に戻すことが可能な画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本願は、複数のローラーに無端状のベルトを掛け回して走行させるベルト搬送装置と、前記ベルト搬送装置によって搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記ベルト搬送装置における前記ベルトの走行位置を補正するためのベルト位置制御部とを備え、前記ベルト位置制御部は、前記画像形成部による画像形成期間において、予め設定された上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御し、前記画像形成部による非画像形成期間において、前記上限値よりも大きな上限値内の制御量で前記ベルト搬送装置の駆動を制御する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、画像の形成精度を損なうことなくベルト搬送装置におけるベルトの走行位置を基準位置に戻すことが可能な画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の要部を示す構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画像形成装置の要部を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像形成方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ベルトの走行位置の区分を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るベルト位置制御における制御量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
≪画像形成装置≫
図1は、実施形態に係る画像形成装置1の要部を示す構成図である。また
図2は、実施形態に係る画像形成装置の要部を示す側面図である。これらの図に示す画像形成装置1は、ベルト搬送装置10を有する画像形成装置であって、ここでは一例として電子写真方式のものである。この画像形成装置1は、ベルト搬送装置10、画像形成ユニット20(
図2のみに図示)、中間転写ベルト装置30、媒体供給部40、位置センサー50、環境センサー60、および制御部100(
図1のみに図示)を備える。これらの各部材は、以下のようである。
【0011】
<ベルト搬送装置10>
ベルト搬送装置10は、記録媒体[m]を搬送するためのものである。このベルト搬送装置10は、複数のローラー11に無端状のベルト12を掛け渡した構成のものである。複数のローラー11は、軸方向を平行にして配置されている。これらのローラー11のうちの1つは、ベルト12を所定方向に走行させるための駆動ローラー11aである。駆動ローラー11aの他のローラー11は、従動ローラーである。
【0012】
また複数のローラー11のうちの他の1つは、二次転写ローラー11bであり、以降に説明する中間転写ベルト装置30を構成するローラー31との間で記録媒体[m]をニップする。
【0013】
また複数のローラー11のうちのさらに他の1つは、ステアリングローラー11cであり、ベルト12の走行方向[FD]に対して垂直な幅方向[CD]におけるベルト12の走行位置を調整する。このようなステアリングローラー11cは、ステアリング量を制御することにより、ベルト12の走行位置を調整する。ステアリング量は、ステアリングローラー11cの軸方向と他のローラー11の軸方向とのなす角度の大きさであり、ステアリングローラー11cの軸方向の傾きの大きさである。なお、複数のローラー11は、駆動ローラー11a、二次転写ローラー11b、およびステアリングローラー11cの他にも必要に応じて設けられていてよいが、ここでの図示は省略している。
【0014】
<画像形成ユニット20(
図2)>
画像形成ユニット20は、各色のトナー像を形成するための画像形成部である。
図2においては、1つの画像形成ユニット20のみを図示したが、画像形成ユニット20は、各色に対応して設けられている。各画像形成ユニット20は、それぞれが感光体ドラム21、および露光部22を備え、またここでの図示を省略した帯電部、現像部、およびその他の部品を備えている。
【0015】
このうち感光体ドラム21は、トナー像が形成される像担持体の1つであって、駆動モーターによって回転するドラム状のものであり、ドラム状の側周表面を像担持面としている。また露光部22は、帯電部によって帯電させた感光体ドラム21の像担持面に、露光走査によって静電潜像を形成する。そしてここでの図示を省略した現像部は、静電潜像が形成された感光体ドラム21の像担持面に帯電させたトナーを供給することにより、感光体ドラム21の像担持面に各色のトナー画像を形成する。
【0016】
<中間転写ベルト装置30>
中間転写ベルト装置30は、ベルト搬送装置10との間で記録媒体[m]をニップする転写ユニットである。この中間転写ベルト装置30は、画像形成ユニット20とともに、記録媒体[m]に対して画像を形成する画像形成部を構成する。中間転写ベルト装置30は、画像形成ユニット20と並列して配置されている。この中間転写ベルト装置30は、複数のローラー31に無端状の中間転写ベルト32を掛け渡した構成ものである。複数のローラー31は、軸方向を平行にして配置されている。これらのローラー31のうちの何れか1つは、中間転写ベルト32を所定方向に走行させるための駆動ローラーである。また、これらのローラー31のうちの他の1つは、ベルト搬送装置10の二次転写ローラー11bと対向配置された転写ローラー31aであり、二次転写ローラー11bとの間に記録媒体[m]をニップする。
【0017】
またこの中間転写ベルト装置30は、中間転写ベルト32に内接された複数の一次転写部33を備えている。一次転写部33は、各画像形成ユニット20の感光体ドラム21と対向するそれぞれの位置において、各感光体ドラム21との間に移動する中間転写ベルト32を挟持する状態で配置されている。これらの一次転写部33は、トナーと反対の極性の電圧が印加され、これにより感光体ドラム21上に付着した各色のトナーを中間転写ベルト32上に順次に転写させてカラー画像を形成する。
【0018】
<媒体供給部40>
媒体供給部40は、大量の記録媒体[m]を収容することが可能であり、収容した記録媒体[m]をベルト搬送装置10に対して順次に供給する。媒体供給部40から供給された記録媒体[m]は、ベルト搬送装置10の二次転写ローラー11bと、中間転写ベルト装置30の転写ローラー31aとの間にニップされる。また媒体供給部40から供給された記録媒体[m]は、ベルト搬送装置10によりベルト12の走行方向[FD]である搬送方向に搬送される。これにより、中間転写ベルト32の外周面に形成された画像が、記録媒体[m]に順次に転写される。
【0019】
<位置センサー50>
位置センサー50は、ベルト搬送装置10におけるベルト12の走行位置を測定する。この位置センサー50が測定するベルト12の走行位置は、ベルト12の走行方向[FD]に対して垂直なベルト12の幅方向[CD]におけるベルト12の位置である。
【0020】
位置センサー50は、例えば幅方向[CD]に受光素子を配列した光学センサー51と、アクチュエータ52とで構成されている。アクチュエータ52は、幅方向[CD]におけるベルト端縁12eに追従して移動する測定端を有する。このような位置センサー50は、アクチュエータ52の計測端の位置を、光学センサー51で検出することにより、間接的にベルト端縁12eの位置(すなわちベルト12の走行位置)を測定する。位置センサー50は、測定した走行位置を制御部100に送信する。
【0021】
なお、このような位置センサー50は、ステアリングローラー11cによってベルト12に張力が加えられる部分に配置されることが好ましい。このため一例として、
図2に示すようにステアリングローラー11cと駆動ローラー11aとの間に配置されることが好ましい。
【0022】
<環境センサー60>
環境センサー60は、画像形成装置1の装置内の環境を測定するためのものであり、例えば温度計や湿度計である。このような環境センサー60は、ベルト搬送装置10の近辺に配置され、ベルト搬送装置10の近辺の環境を測定し、測定値を制御部100に送信する。
【0023】
<制御部100(
図1)>
制御部100は、画像形成装置1による画像の形成を制御する。このような制御部100は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアであり、CPU(Central Processing Unit)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部、およびネットワークインターフェースを備えている。制御部100は、記憶部に記憶されているプログラムをCPUが実行することにより、画像形成装置1の各部の動作を制御する。このような制御部100は、画像形成のための制御を実施する画像形成制御部100aととともに、ベルト位置制御部100bを備えている。これらは次のような機能部である。
【0024】
[画像形成制御部100a]
画像形成制御部100aは、記録媒体[m]に画像を形成するための制御を行う。画像形成制御部100aは、ここでの図示を省略した入力部からの入力情報にしたがって、ベルト搬送装置10、画像形成ユニット20(
図2のみに図示)、中間転写ベルト装置30、および媒体供給部40の駆動を制御することにより、画像を形成する。
【0025】
[ベルト位置制御部100b]
ベルト搬送装置10のベルト12が蛇行した場合に、幅方向[CD]の所定の位置にベルト12が保持されるように、ベルト位置制御部100bは、ベルト搬送装置10を制御する。このようなベルト位置制御部100bは、判断部101、制御量演算部102、および駆動制御部103を備える。
【0026】
このうち判断部101は、位置センサー50から取得した情報に基づいて、ベルト位置の補正制御を実施するか、またはベルト搬送装置10の駆動を停止するかを判断する。また補正制御を実施すると判断した場合に、制御量演算部102は、ベルト位置の補正制御のための制御量を算出する。また駆動制御部103は、制御量演算部102で算出した制御量に基づいて、ベルト搬送装置10の駆動を制御する。以上のようなベルト位置制御部100bにおける各部による制御の手順は、以降の画像形成方法において詳細に説明する。
【0027】
≪画像形成方法≫
次に、以上のような画像形成装置1において実施される画像形成方法を説明する。
図3は、実施形態に係る画像形成方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は、
図1に示した画像形成装置1のベルト位置制御部100bが有する画像形成プログラムによって実施される手順であり、画像形成ジョブの実行期間中に繰り返し実施される。以下、
図3に示す手順にしたがって、先の
図1~
図2および他の必要図を参照しつつ、実施形態の画像形成方法を説明する。
【0028】
<ステップS101>
ステップS101において、ベルト位置制御部100bの判断部101は、位置センサー50からベルト搬送装置10におけるベルト12の走行位置を取得する。
【0029】
<ステップS102>
ステップS102において、判断部101は、ステップS101で取得したベルト12の走行位置が、許容範囲であるか否かの判断を実施する。ここで、許容範囲とは、ベルト12およびベルト12の走行による機械的破損が生じることの無い範囲であることとする。
【0030】
図4は、ベルト搬送装置におけるベルトの走行位置の区分を示す図であり、幅方向[CD]におけるベルトの走行位置を領域分けした図である。ベルトの走行位置は、
図1に示したベルト12のベルト端縁12eの位置である。この場合、基準位置[p0]を中心にした通常範囲[A1]は、画像形成に対しての影響が少ない領域である。また通常範囲[A1]の外側の非通常範囲[A2],[A-2]は、画像形成に対しての影響が生じる範囲である。また、非通常範囲[A2],[A-2]を超えた外側の範囲[A3]は、ベルト12の走行位置がこの範囲に入ると、ベルト12の走行による機械的破損の可能性が生じる非許容範囲[A3]である。なお、通常範囲[A1]および非通常範囲[A2],[A-2]は、ベルト12およびベルト12の走行による機械的破損が生じることのない許容範囲[A0]となる。子らの範囲は、予め設定された範囲である。
【0031】
判断部101は、ステップS101で取得したベルト12の走行位置が、許容範囲[A0]である(YES)と判断した場合にはステップS103に進み、許容範囲[A0]ではない(NO)と判断した場合にはステップS103aに進む。ステップS103aに進んだ場合、ベルト12の走行位置は、非許容範囲[A3]である。
【0032】
<ステップS103a>
ステップS103aにおいて、判断部101は、画像形成制御部100aに対して、ジョブの停止を指示する。これにより、画像形成制御部100aは、画像形成装置1の各部の制御によりジョブを停止させ、処理を終了する。
【0033】
<ステップS103>
一方、ステップS103において、判断部101は、ステップS101で取得したベルト12の走行位置は、通常範囲[A1](
図4参照)であるか否かを判断する。判断部101は、通常範囲[A1]である(YES)と判断した場合にはステップS104に進み、通常範囲[A1]ではない(NO)と判断した場合にはステップS105に進む。ステップS105に進んだ場合、ベルト12の走行位置は、非通常範囲[A2],[A-2]である。
【0034】
なお、ここではベルトの走行位置のみに基づく判断としたが、ここでの判断はベルトの走行位置と、ベルトの走行位置の変位速度とによって判断してもよい。変位速度は、位置センサー50から取得されるベルト12の走行位置をモニターすることによって得られる。この場合、ベルトの走行位置が通常範囲[A1]であっても、変位速度が所定の閾値を超えた場合に、判断部101は、ステップS105に進む。
【0035】
<ステップS104>
ステップ104において、制御量演算部102は、通常範囲[A1]に対して適用される上限値[max]の範囲内で、制御量を算出する。ここで算出する制御量は、ステアリングローラー11cのステアリング量であるが、ベルトの走行速度も制御量の一つとして算出してもよい。ステアリング量および走行速度には、それぞれに対して上限値[max]が設定されている。これらの上限値[max]は、試験的に実施した画像形成によって転写不良が発生しないことが確認されている値である。
【0036】
制御量演算部102は、位置センサー50から取得したベルト12の走行位置に基づいて、これらの上限値[max]の範囲で、制御性良好に走行位置を通常範囲[A1]内の基準位置[p0]に戻すことができる制御量を算出する。ここで算出される制御量は、ステアリング量であれば、ベルト12の走行位置が基準位置[p0]から離れるほど大きな値となる。同様に、走行速度であれば、ベルト12の走行位置が基準位置[p0]から離れるほど速い値となる。
【0037】
なお、制御量演算部102は、通常範囲[A1]を複数に分割した各分割範囲[A11],[A12],…毎に、予め上限値[max]の範囲で設定された制御量を登録したデータテーブルを保持していてもよい。この場合、制御量演算部102は、位置センサー50から取得したベルト12の走行位置が、どの分割領域に位置するかによって、最適な制御量をデータテーブルから抽出すればよい。
【0038】
また、制御量演算部102は、ベルト12の走行位置とともに、ベルト12の走行位置の変位速度に基づいて、制御量を算出する構成であってもよい。この場合、走行位置の変位速度が速いほど、ステアリング量は大きな値となり、走行速度は速い値となる。変位速度も考慮した制御量とすることにより、ベルト12の走行位置を、より早く基準位置[p0]に近づけることが可能であり、例えば補正制御が手遅れになることを防止できる。
【0039】
このほかにも、制御量演算部102は、ベルト12の走行位置とともに、この画像形成装置1のベルト搬送装置10に特有の歪みを考慮して、制御量を算出する構成であってもよい。この歪みは、ベルト搬送装置10を構成するローラー11同士の平行度や、二次転写ローラー11b-転写ローラー31a間のニップ部圧力の幅方向[CD]のバラツキなどの各装置に固有の情報である。このような歪みは、例えば幅方向[CD]における、ステアリング量に対するベルト12の移動量(感度)に影響を与える場合がある。そこで制御量演算部102は、装置の出荷時に取得した歪み情報に基づく感度のバラツキを考慮してステアリング量を算出する。一例として、制御量演算部102は、幅方向[CD]の手前側の方が奥側よりも感度が高ければ、奥側よりも手前側で大きくなるように、ベルト12の走行位置に対するステアリング量を算出する。
【0040】
さらに制御量演算部102は、ベルト12の走行位置とともに、環境センサー60で取得した装置内の環境情報を考慮して、制御量を算出する構成であってもよい。例えば、装置内温度が低い場合いは、ベルト12が硬くなるため、ステアリングに対する応答性が低下する。このため、装置内温度が低いほど、大きな値となるようにステアリング量を算出する。
【0041】
<ステップS105>
一方、ステップS105において、判断部101は、画像形成制御部100aからの情報に基づいて、現在のジョブステータスが記録媒体[m]への画像の非転写期間[T1]であるか否かの判断を実施する。非転写期間[T1]とは、ベルト搬送装置10の二次転写ローラー11bと、中間転写ベルト装置30の転写ローラー31aとのニップ部に記録媒体[m]が配置されていない期間である。このような非転写期間[T1]は、記録媒体[m]に対する非画像形成期間である。
【0042】
判断部101は、非転写期間[T1]である(YES)と判断した場合には、ステップS106に進み、非転写期間[T1]ではない(NO)と判断した場合には、ステップS104に進む。
【0043】
ここで、非転写期間[T1]ではない(NO)とは、ベルト搬送装置10の二次転写ローラー11bと、中間転写ベルト装置30の転写ローラー31aとのニップ部に記録媒体[m]が配置されている転写期間[T]である。転写期間[T]は、記録媒体[m]に対する画像形成期間である。本ステップS105において非転写期間[T1]ではない(NO)と判断して進んだステップS104においては、先に説明したように、転写不良が発生しない値に設定されている上限値[max]の範囲内で、制御量が算出される。
【0044】
<ステップS106>
ステップS106において、制御量演算部102は、非転写期間[T1]に対して設定されている上限値[max1](>[max])の範囲内で、制御量を算出する。ここで算出する制御量は、ステップS105で算出する制御量と同様であり、上限値[max1]が異なる。
【0045】
図5は、実施形態に係るベルト位置制御における制御量を示すグラフである。非転写期間[T1]に対して設定されている制御量の上限値[max1]は、転写期間[T]に対して設定されている制御量の上限値[max]よりも大きい。非転写期間[T1]は、記録媒体[m]に対して転写による画像形成が行われていない期間であるため、転写不良を考慮する必要がない。このため、非転写期間[T1]に対応する上限値[max1]は、転写期間[T]に対応する通常制御の上限値[max]よりも大きく設定することができる。このような大きな上限値[max1]は、例えばステアリング量や走行速度を正確に制御可能な範囲で設定すればよい。
【0046】
制御量演算部102による制御量の算出は、ステップS104で説明した手順と同様に実施される。なお、制御量は、ベルト12の走行位置が基準位置[p0]から離れるほど大きな値となる。このため、本ステップS106において上限値[max1](>[max])の範囲で算出される算出される制御量は、ステップS104で算出される制御量よりも大きな値となる。
【0047】
また、制御量として、ステアリング量および走行速度の両方を算出する場合、制御量演算部102は、ステアリング量および走行速度のうちの少なくとも一方を、上限値<max1>の範囲で算出すればよい。これにより、本ステップS106においては、ステアリング量と走行速度の少なくとも一方が、ステップS104で算出される値よりも大きな値となる。
【0048】
<ステップS107>
ステップS107において、駆動制御部103は、記録媒体[m]の供給間隔を、通常間隔よりも広い所定間隔とするように媒体供給部40に指示する。これにより、媒体供給部40は、記録媒体[m]の供給間隔を通常間隔よりも広い所定間隔に広げる。なお、本ステップS107は、必ずしも実施する必要はなく、実施することにより非転写期間[T1]内において、ベルト12の走行位置をより位置[p0]に近づけることが可能となる。また、本ステップS107において所定間隔に広げられた供給間隔は、次に繰り返されるフローのステップS103で、ベルトの走行位置が通常範囲[A1]である(YES)と判断された場合に通常間隔に戻される。
【0049】
<ステップS108>
ステップS108において、駆動制御部103は、ステップS104またはステップS106で算出した制御量となるように、ステアリングローラー11cのステアリング量を制御する。また制御量としてベルト12の走行速度を算出した場合であれば、駆動制御部103は、算出した走行速度となるように、駆動ローラー11aを制御する。
【0050】
<実施形態の効果>
以上説明した実施形態によれば、転写期間[T1]においては、転写ずれが発生しない範囲でベルト12の走行位置が制御され、非転写期間[T1]において転写期間[T]よりも大きな制御量でベルト12の走行位置が制御される。これにより、転写ずれの発生による画像の形成精度を損なうことなく、ベルト搬送装置10におけるベルト12の走行位置を速やかに基準位置[p0]に戻すことが可能なである。
【0051】
また、ベルト12の走行位置が非通常範囲[A2],[A-2]となった場合に、ベルト搬送装置10を停止させることなく、非転写期間[T1]において大きな制御量で走行位置が補正される。このため、ベルト搬送装置10を停止することによる画像形成の中断がなく、画像形成における生産性の向上を図ることが可能である。さらに、転写ずれの発生を防止できることから、画像形成のロスの発生を防止でき、これによっても画像形成における生産性の向上を図ることが可能である。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに様々な変形例を含む。例えば、本発明は、以上説明した実施形態におけるステップS103を実施しなくてもよい。この場合、ステップS102においてベルトの走行位置が許容範囲[A0]である(YES)と判断された場合にステップS105に進む構成とする。これにより、ステップS105において、非転写期間[T1]であるか否かによってのみ、制御量の上限値が選択される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…画像形成装置
10…ベルト搬送装置
11…ローラー
11a…駆動ローラー
11b…二次転写ローラー
11c…ステアリングローラー
12…ベルト
20…画像形成ユニット(画像形成部)
30…中間転写ベルト装置(転写ユニット,画像形成部)
40…媒体供給装置
50…位置センサー
60…環境センサー
100b…ベルト位置制御部
[A2],[A-2]…非通常範囲(予め設定された範囲)
[m]…記録媒体
[max]…上限値
[max1]…大きな上限値
[T]…転写期間(画像形成期間)
[T1]…非転写期間(非画像形成期間)