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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025115132
(43)【公開日】2025-08-06
(54)【発明の名称】ロータ、モータ、および、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20250730BHJP
【FI】
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009495
(22)【出願日】2024-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 冰潔
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】宮木 淳一
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601DD11
5H601GA13
(57)【要約】
【課題】ディテントトルクを増大させることができるロータを提供する。
【解決手段】ロータは、2つの磁極部、環状部、および、当該2つの磁極部と当該環状部とを連結する2つの接続部を有する磁性体と、周方向において、前記2つの磁極部の間にあるマグネットと、を備える。前記2つの磁極部の前記周方向に延在する側面には1又は複数の凹または1又は複数の凸が形成されている。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの磁極部、環状部、および、当該2つの磁極部と当該環状部とを連結する2つの接続部を有する磁性体と、
周方向において、前記2つの磁極部の間にあるマグネットと、
を備え、
前記2つの磁極部の前記周方向に延在する側面には1又は複数の凹または1又は複数の凸が形成されている、ロータ。
【請求項2】
前記磁性体は、前記環状部から突出した突出部を備え、
径方向において、前記マグネットは前記突出部に接触している、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記突出部は、前記環状部に向けて分岐した複数の部分を備え、
前記分岐した複数の部分は前記環状部に接続しており、
周方向において、前記分岐した複数の部分の間には空隙が形成されている、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のロータと、
ステータと、
を備え、
前記ステータは、複数の磁極部を備え、
径方向において、前記ロータの側面に対向する前記磁極部の側面には1又は複数の凹または1又は複数の凸が形成されている、モータ。
【請求項5】
前記ロータの複数の凹または凸の数と、前記ステータの複数の凹または凸の数は同じである、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記ロータの前記マグネットの数と、前記ステータのスロットの数とが異なる場合であって、前記ロータの前記マグネットの数と、前記ステータのスロットの数との最小公倍数をXとした場合、
360度をXで除した角度毎に、少なくとも前記凹および前記凸を前記ロータの側面および前記ティースの側面にそれぞれ配置する、請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
請求項4に記載のモータと、当該モータを収容する筐体を備える、電子機器。
【請求項8】
請求項6に記載のモータと、1又は複数のギアを備える、電子機器。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、モータ、および、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
インナーロータ型のモータにおいて、ロータが、複数の磁石と、薄い板状の金属を積層して形成した磁性体と、を備え、磁性体をスポーク形に形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-529054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロータには、ディテントトルクを増大させることに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ディテントトルクを増大させることができるロータ、モータ、および、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、ロータは、2つの磁極部、環状部、および、当該2つの磁極部と当該環状部とを連結する2つの接続部を有する磁性体と、周方向において、前記2つの磁極部の間にあるマグネットと、を備え、前記2つの磁極部の前記周方向に延在する側面には1又は複数の凹または1又は複数の凸が形成されている。
【0007】
一つの態様によれば、ディテントトルクを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器が備えるモータの分解斜視図である。
図3図3は、図2に示すモータが備えるロータの磁性体およびマグネットの斜視図である。
図4図4は、図3に示す磁性体およびマグネットの正面図である。
図5図5は、図4の一部の拡大図である。
図6図6は、図3に示すロータの断面図である。
図7図7は、図3に示すロータが備える磁性体の斜視図である。
図8図8は、図4の一部の拡大図である。
図9図9は、図3に示すモータが備えるステータの磁極部の拡大図である。
図10図10は、ロータにおける磁極部の凹部および凸部、および、ステータにおける磁極部の凹部および凸部の平面図である。
図11図11は、ロータにおける磁極部の凹部および凸部、および、ステータにおける磁極部の凹部および凸部の拡大図である。
図12図12は、ロータの磁性体とステータのティースとが対向した状態において、ステータに対するロータのマグネットの磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
図13図13は、図12に示す状態のコギングトルクの波形を示す図である。
図14図14は、ロータの磁性体とステータのティースとが対向した状態から、ロータが周方向へわずかに回転した非対向状態において、ステータに対するロータのマグネットの磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。
図15図15は、図14に示す状態のコギングトルクの波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下に、実施形態に係るモータ1、ロータ4、および、電子機器300を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
本実施形態におけるモータ1は、例えば、図1に示すような電子機器300に収容される。図1は、実施形態に係る電子機器300の斜視図である。本実施形態に係るモータ1の説明において、方向の理解を容易にするため、シャフト2が延びる方向を軸方向Aと呼び、ロータ4が回転する方向を周方向Cと呼び、軸方向Aに対して直交する平面に含まれ、かつ、シャフト2の軸心2oを通過し、周方向Cに対して直交する方向を径方向Rと呼ぶ。
【0011】
電子機器300は、例えば電動車両またはハイブリッド車両などの車両に搭載される機器である。電子機器300は、例えば、モータ1と、モータ1を収容する筐体301と、第1のギア302と、第2のギア303と、を備える。
【0012】
第1のギア302は、例えばウォームギアであり、モータ1のシャフト2と連動して回転する。第2のギア303は、例えば第1のギア302に噛み合うハスバギアであり、出力軸304と連動して回転する。かかる構成により、モータ1のシャフト2の駆動力が、電子機器300の出力軸304へ伝達される。
【0013】
次に、図1図2を用いてモータ1について説明する。図2は、図1に示す電子機器300が備えるモータ1の分解斜視図である。本実施形態におけるモータ1は、シャフト2と、ステータ3と、ロータ4と、を備える。なお、本実施形態に係るモータ1は、例えばステータ3がロータ4の径方向Rにおける外側に位置する、インナーロータ型のブラシレスモータである。
【0014】
シャフト2は、いわゆる回転軸であって、例えば、金属材料を用いて円柱又は円筒の形状に形成され、軸方向Aに沿って延びている。シャフト2は、軸心2oを有し、かつ、電子機器300に対して軸心2oを中心に周方向Cへ回転可能に設けられる。シャフト2の軸方向Aにおける一方の端部には、第1のギア302が固定される。
【0015】
ステータ3は、ロータ4を周方向Cへ回転させるための力を発生させる部分である。ステータ3は、環状部分としてのヨーク31と、磁極部30としてのティース32と、コイル33と、インシュレータ34と、を備える。本実施形態に係るステータ3は、電気的に非接続な部材で構成されている。ヨーク31およびティース32は、磁性材料で形成される(図9参照)。
【0016】
ヨーク31は、ステータ3の径方向Rの外側に位置して環状に形成される。ティース32は、ヨーク31の内周面から、径方向Rの内側へ向けて突出する。ヨーク31及びティース32は、例えば電磁鋼板等の磁性材料(磁性体)で形成された平板状の部材を打ち抜きし、軸方向Aにおいて複数枚の部材を積層することにより形成される。コイル33は、例えば、インシュレータ34を介して、ティース32に巻き回される。
【0017】
次に、ロータ4について説明する。ロータ4は、ステータ3の径方向Rにおける内側に、回転可能に配置される。ロータ4は、少なくとも2つの磁極部411を有する磁性体41と、複数のマグネット42と、一対のカバー43と、を備える。本実施形態に係るロータ4は、例えば、周方向Cにおいて隣接する2つのマグネット42が反発するように配置された複数のマグネット42と、複数のマグネット42を収容した磁性体41で構成された、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)ロータであり、複数のマグネット42が放射状に配置される。また、本実施形態におけるロータ4の外形の大きさ(外径D0)は、例えば24.5mmである(図4参照)。
【0018】
ロータ4が備える磁性体41についての詳細は後述し、次に、図3図4図5を用いてマグネット42について説明する。図3は、図2に示すモータ1が備えるロータ4の磁性体41およびマグネット42の斜視図である。図4は、図3に示す磁性体41およびマグネット42の正面図である。図5は、図4の一部の拡大図である。複数のマグネット42は、例えば周方向Cにおいて等間隔に配置される。本実施形態におけるマグネット42は、例えば軸方向Aに延在する永久磁石である。また、マグネット42は、例えば焼結磁石である。マグネット42は、周方向Cにおいて、2つの磁極部411の間にある。マグネット42は、軸方向Aから視た場合には略矩形状に形成される。
【0019】
マグネット42は、径方向Rにおける内側の端面(内面)421と、径方向Rにおける外側の端面(外面)422と、周方向Cにおける側面423、424とを備える。実施形態において、図4に示すマグネット42の周方向Cにおける幅W1(図4参照)は、例えば外径は2.29mmであり、マグネット42の磁石長(径方向Rにおける長さ)L1(図4参照)は、例えば3.50mmである。
【0020】
本実施形態において、周方向Cにおいて磁極部411を介して隣接する2つのマグネット42は、同一の極が対向するように配置される。例えば、図5に示すように、周方向Cにおいて隣接する2つのマグネット42は、N極が相互に対向するように配置される。
【0021】
次に、図2図6を用いて一対のカバー43について説明する。図6は、図3に示すロータ4の断面図である。本実施形態に係るカバー43は、例えば黄銅等、非磁性の材料、または、磁性体41よりも透磁率の低い材料により形成される。また、カバー43は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のように、磁性体41を構成する電磁鋼板よりも透磁率の低い材料を折り曲げることにより形成してもよい。
【0022】
一対のカバー43のうち一方のカバー43aは、磁性体41に対して軸方向Aにおける一方向側から装着され、一対のカバー43のうち他方のカバー43bは、磁性体41に対して、軸方向Aにおける他方側から装着される。つまり、一対のカバー43は、軸方向Aにおいて、磁性体41を挟持するように配置される。
【0023】
一対のカバー43において、一方のカバー43aの構成と、他方のカバー43bの構成とは同一であるが、異なる構成であってもよく限定されない。そこで、以下において、一方のカバー43aの構成を説明し、他方のカバー43bの構成は、一方のカバー43aと同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
一方のカバー43aは、平板のリング状に形成された本体部431と、径方向Rにおける外周縁において本体部431から軸方向Aへ突出する複数の外周部432と、径方向Rにおける内周縁において本体部431から軸方向Aへ突出する内周部433と、を備える。
【0025】
外周部432のそれぞれは、本体部431の外周縁から軸方向Aにおいて他方のカバー43bの外周部432へ向けて突出する。複数の外周部432は、例えば、周方向Cにおいて所定の間隔(例えば、等間隔)に並んで配置される。その上、外周部432は、図6に示すように、マグネット42の径方向Rにおける外側の端面422に対向する位置に配置される。本実施形態に係るロータ4の径方向Rにおいて、マグネット42の外側の端面422と、外周部432の内面との間にはわずかな隙間が形成されるが、マグネット42の外側の端面422と、外周部432の内面とが接触してもよい。また、本実施形態において、複数の外周部432の数と、マグネット42の数とは同数である。
【0026】
外周部432は、径方向Rにおいて、マグネット42の外側の端面422と接触可能なようにマグネット42の外側に配置される。そのため、図4に示すロータ4において、カバー43のそれぞれは、周方向Cにおいて隣接する他のマグネット42との反発力や、ロータ4の回転により発生する遠心力により、マグネット42が径方向Rにおける外側に移動することを防止する。
【0027】
図2図6に示すように、一方のカバー43aの内周部433は、本体部431の内周縁から軸方向Aにおいて他方のカバー43bの内周部433へ向けて突出する。内周部433は、例えば、筒状に形成される。その上、内周部433は、環状部412の内周面に対向するように配置される。
【0028】
内周部433は、径方向Rにおいて、マグネット42の内側の端面421と接触可能なようにマグネット42の内側に配置される。そのため、図4に示すロータ4において、カバー43のそれぞれは、周方向Cにおいて隣接する他のマグネット42との反発力等により、磁性体41に配置されたマグネット42が、径方向Rにおける内側に移動することを防止する。
【0029】
その上、一方のカバー43aの本体部431は、マグネット42の軸方向Aにおける一方側において対向し(又は接し)、他方のカバー43bの本体部431は、マグネット42に軸方向Aにおける他方側において対向する(又は接する)。かかる構成により、マグネット42の軸方向Aにおける移動が抑制される。
【0030】
また、内周部433の外径(大きさ)は、例えば、磁性体41に形成される第2突出部415の内径(大きさ)より僅かに大きい。また、内周部433の内径(大きさ)は、例えば、シャフト2の外径(大きさ)より僅かに小さい。
【0031】
かかる構成において、カバー43は、例えば径方向Rにおける磁性体41の第2突出部415に圧入される。その後、シャフト2は、内周部433に圧入される。すなわち、実施形態において、一対のカバー43と磁性体41とシャフト2とは二重の圧入構造となっている。
【0032】
次に、ロータ4が備える磁性体41について、図4図5を用いて説明する。磁性体41は、図4に示すように、少なくとも2つの磁極部411と、環状部412と、少なくとも2つの接続部413と、第1突出部414と、第2突出部415と、を有する。第1突出部414は、磁性体41において環状部412から突出する突出部の一例である。
【0033】
磁極部411は、磁性体41の径方向Rにおける外側に配置され、軸方向Aから視た場合には略扇形状に形成される。より具体的に説明すると、磁極部411は、軸方向Aから視た場合、軸心2oに近接する内周面4111(の最も内側にある2つの部分を通過する)弧の長さよりも、軸心2oから離れた外周面4112(の最も外側にある2つの部分を通過する)弧の長さが長くなるように、径方向Rの外側に行くに従って徐々に末広がりとなる略扇形状に形成される。磁極部411は、磁性体41の外周部を形成している。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の磁極部411を備える。複数の磁極部411は、例えば、周方向Cに並んで所定の間隔(例えば、等間隔)に配置される。
【0034】
磁極部411のそれぞれは、図5に示すように、径方向Rにおいて内側に位置する内周面4111、径方向Rにおいて外側に位置する外周面4112、および、内周面4111と外周面4112とをつなぐ2つの側面4113、4114を有する。
【0035】
内周面4111は、磁極部411から径方向Rの内側へ向けて突出する端部(以下、先端部4111aと称呼する)を有する。先端部4111aは、磁極部411における内周面4111の一部を形成しており、例えば内周面4111に2つ形成される。そして、2つの先端部4111aの間には、磁極部411における内周面4111の一部を形成する凹部4111bが形成されている。
【0036】
外周面4112についての詳細は後述する。外周面4112と側面4113、4114との間には、曲面で形成された端部がそれぞれ配置される。
【0037】
図4に示す環状部412は、磁性体41において、磁極部411の径方向Rにおける内側に配置され、軸方向Aから視た場合にはリング状に形成される。環状部412は、磁性体41の内周部を形成している。
【0038】
接続部413は、磁極部411と環状部412とを接続する。接続部413は、径方向Rにおいて、磁極部411と環状部412との間に配置され、径方向Rにおいて直線状に延在するよう形成される。接続部413は、周方向Cにおいて、2つの先端部4111aの間に位置する凹部4111bの間に配置される。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の接続部413を備える。複数の接続部413は、例えば、周方向Cに並んで等間隔に配置される。
【0039】
第1突出部414は、軸方向Aから視た場合、環状部412の外周面から径方向Rの外側に突出する。そして、径方向Rにおいて、マグネット42は第1突出部414に接触している。本実施形態におけるロータ4は、第1突出部414により、マグネット42の内側の端面(内面)421を径方向Rにおける内側から支持する。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の第1突出部414を備える。複数の第1突出部414は、例えば、周方向Cに並んで所定の間隔(例えば、等間隔)に配置される。
【0040】
第2突出部415は、軸方向Aから視た場合、環状部412の内周面から径方向Rの内側に突出する。本実施形態における磁性体41は、例えば10個の第2突出部415を備える。複数の第2突出部415は、例えば、周方向Cに並んで等間隔に配置される。
【0041】
また、図5に示すように、磁極部411には、当該磁極部411を軸方向Aへ向けて貫通する第1貫通孔(孔部)411Hが形成され、環状部412には、当該環状部412を軸方向Aへ向けて貫通する第2貫通孔(孔部)412Hが形成される。
【0042】
次に、磁性体41の製造方法について、図7を用いて説明する。図7は、図3に示すロータ4が備える磁性体41の斜視図である。本実施形態において、磁性体41は、軸方向Aにおいて積み重ねられた複数の磁性部材410によって構成される。複数の磁性部材410は、例えば同形同大に形成される。
【0043】
そして、複数の磁性部材410は、第1貫通孔411Hのそれぞれに挿通された第1ネジN1によって相互に結合され、かつ、第2貫通孔412Hのそれぞれに挿通された第2ネジN2によって相互に結合される。第1ネジN1および第2ネジN2は、例えばステンテス等の磁性体41よりも透磁率の低い材料で形成される。つまり、第1ネジN1および第2ネジN2は、フラックスバリアとして機能する。
【0044】
より具体的に説明すると、図5に示すように、マグネット42の側面423、424における径方向Rの中央から周方向Cへ向かう磁路M1、M2の途中には、第1貫通孔411Hに挿通された第1ネジN1が位置する。第1ネジN1の透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、第1ネジN1がフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット42の周方向Cにおける側面423、424における径方向Rの中央から周方向Cへ向かう磁束は抑制され、マグネット42の側面423、424から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0045】
加えて、径方向Rにおいてマグネット42の内側の端面421から第1突出部414の径方向Rの内側に向かう磁路M3、M4は、第2ネジN2により狭められる。これにより、磁路M3、M4においては磁気飽和が生じやすくなるので、マグネット42の内側の端面421から径方向Rの内側へ向かう磁束が、磁路M3、M4によって抑制され、マグネット42の外側の端面422から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0046】
また、マグネット42の側面423、424における径方向Rの内側からの磁束は、磁極部411の先端部4111aを介して、径方向Rの外側の外周面4112へ向かう。磁極部411は、軸方向Aから視た場合には略扇形状に形成されるため、マグネット42の側面423、424の径方向Rの内側から磁極部411の外側の外周面4112へ向かう磁路M5、M6が径方向Rの外側へ向けて徐々に広くなる。そのため、マグネット42の側面423、424における径方向Rの内側から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0047】
さらに、磁極部411の内周面4111には凹部4111bが形成され、凹部4111bにおける透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、凹部4111bの空気がフラックスバリアとして機能する。そのため、マグネット42の周方向Cにおける側面423、424における径方向Rの内側から磁極部411を介して接続部413へ向かう磁路M5、M6は、凹部4111bにより狭められるので、磁気飽和が生じやすくなる。これにより、マグネット42から、磁極部411及び接続部413を介して、径方向Rにおける内側にある環状部412に磁束が漏れることがより抑制され、マグネット42の側面423、424から径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。なお、凹部4111bには空気又は非磁性体(例えば、ステータ3を形成する電磁鋼板などの磁性体より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0048】
さらに、マグネット42の外側の端面422は、磁極部411の外周面4112よりも径方向Rの内側に位置する。そして、マグネット42の外側の端面422の径方向Rの外側であって、周方向Cにおいて隣接する2つの磁極部411の間には空間Uが形成されている。この空間Uには、カバー43の外周部432が配置される。カバー43の透磁率は、磁性体41の透磁率よりも低いため、外周部432がフラックスバリアとして機能する。このため、マグネット42の側面423、424から外側の外周面4112へ向かう磁路M7、M8において、径方向Rの外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。
【0049】
また、本実施形態において、接続部413は、分岐した複数の枝(以下、分岐部413a、413bと称呼する)を備える。接続部413は、径方向Rにおいて、分岐部413a、413bを介して環状部412に接続する。すなわち、接続部413は、環状部412に向けて分岐した複数の部分である分岐部413a、413bを備える。分岐部413a、413bは、環状部412に接続している。
【0050】
この場合において、接続部413の分岐部413a、413bと、環状部412とに囲まれた部分には、空隙413Hが形成される。空隙413Hは、径方向Rにおいて、第2突出部415の外側に配置され、環状部412と空隙413Hとが径方向Rにおいて隣接する。すなわち、周方向Cにおいて、分岐部413a、413bの間には空隙413Hが形成されている。
【0051】
かかる空隙413Hもフラックスバリアとして機能するので、接続部413から環状部412に向かう分岐部413a、413bを通る磁路M9、M10も狭められる。かかる構成においても、マグネット42の側面423、424において径方向Rの内側から外側の外周面4112へ向かう磁束が増大される。なお、空隙413Hには空気又は非磁性体(例えば、ステータ3を形成する電磁鋼板などの磁性体より低い透磁率を有する樹脂など)が存在していても構わない。
【0052】
そして、上述した種々の構成に基づいて、径方向Rにおいて磁極部411の外周面4112へ向かう磁束を増大することで、外周面4112から径方向Rの外側に位置するステータ3のティース32へ向かう磁束を増大することができ、ディテントトルクを増大することができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、第2突出部415と、磁極部411とは、径方向Rにおいて、空隙413H及び接続部413を介して対向する。この場合において、シャフト2が圧入されることにより、径方向Rにおいて第2突出部415に加わる応力は、空隙413Hがあることで緩和される。すなわち、シャフト2を圧入した際に、磁性体41が変形し、真円度が悪化することが抑制される。
【0054】
本実施形態におけるモータ1は、高雰囲気温度下、例えば120℃~150℃の雰囲気温度において、高トルクを発揮することが求められる場合がある。その場合、熱による減磁に加えて、コイル33のアンペアターンに伴う反磁界により、トルクが抑制されるおそれがある。
【0055】
減磁を抑制するために、ディスプロシウム(Dy)の含有量が高い磁石を用いることが知られているが、磁石に占めるディスプロシウムの割合を増やすと、製造コストの増加や、残留磁束密度(Br)の低下につながる。
【0056】
そこで、実施形態においては、図4に示すように、マグネット42を、ロータ4の径方向Rにおける内側に配置する。例えば、マグネット42の外側の端面422の外径D1は22.6mmである。かかる構成によれば、径方向Rにおいて外側に位置するステータ3のコイル33とマグネット42の外側の端面422との間の距離を確保することにより、熱やアンペアターンによるマグネット42の減磁率を低く、例えば減磁率を最高でも2%程度に収めることができる。これにより、高ストールトルクを実現できる。また、例えばHcj=1500~1600KA/mのものなど、ディスプロシウムの含有割合が少ない磁石をマグネット42に用いることができる。
【0057】
また、スポーク型のIPMにおいて、着磁された複数のマグネット42を磁性体41に挿入する場合(いわゆる先着磁)であれば、複数のマグネット42の間で反力が発生し、
複数のマグネット42を磁性体41に挿入するなどの組立が難しくなる場合がある。そこで、複数のマグネット42を磁性体41に挿入後に着磁を行うこと(着磁後装着)が望ましい。
【0058】
一方、マグネット42の外側の端面422が、径方向Rにおいて、環状部412に近づき過ぎると、着磁ができなくなる場合がある。また、マグネット42の径方向Rにおける長さが大きくなると、着磁の際に磁界をマグネット42全体に作用させることが難しくなる場合があるため、径方向Rにおけるマグネット42の長さを短くする場合がある。
【0059】
そこで、実施形態においては、図4に示す、マグネット42の径方向Rにおける長さ(以下、磁石長と称呼する)L1を短くする。例えば、磁石長L1を、ロータ4の外径D×
比率(例えば、外形より小さい所定の数値(例えば3.5)/外形D(例えば24.5mm)とすることにより、着磁率を90%以上とすることができ、マグネット42の全体にわたって着磁をすることができる。
【0060】
また、IPMロータを備えたモータ1においては、磁極部411に接触するマグネット42の表面積を増加させた方がトルクが高くなることが知られている。しかし、マグネット42を径方向Rにおいて環状部412近くまで延長した場合、マグネット42から環状部412までの磁気抵抗の大きさが比較的小さくなるため、マグネット42の磁束のうち、環状部412に向かう磁束の大きさがステータ3に向かう磁束よりも大きくなってしまい、磁極部411に接触するマグネット42の表面積とトルクの大きさとが比例しなくなる場合がある。特に、本実施形態のように、磁性体41に、マグネット42の内側の端面421を径方向Rにおける内側から支持する第1突出部414を形成する場合において、マグネット42を径方向Rにおいて環状部412近くまで延長すれば、マグネット42と第1突出部414との接触部を介して磁束が環状部412へ向かいやすくなる。
【0061】
本実施形態においては、マグネット42の磁石長L1を短くすることに伴い、マグネット42が径方向Rにおいて環状部412から所定の距離だけ離れるように配置される。例えば、マグネット42の内側の端面421の内径D2は、ロータ4の外径(外形の大きさ)D0の1/2以上であり、好ましくは2/3以上である。言い換えれば、マグネット42の内側の端面から環状部412までの距離が、ロータ4の外径(外形の大きさ)D0の1/2以上、好ましくは2/3以上である。
【0062】
また、実施形態におけるモータ1は、例えばロータ4の直径が24.5mm以下の小径のモータ1である。ロータ4の外径(大きさ)が小さい場合、凹部4111bの細かな形状を製造することが難しい場合がある。例えば、凹部4111bの周方向Cにおける幅を0.25mm以下とすることが難しい場合がある。
【0063】
実施形態における磁性体41は、凹部4111bを形成することにより、マグネット42を径方向Rにおいて環状部412にまで延在させることなく、磁極部411とマグネット42との接触面積を所定の大きさだけ確保することができる。また、凹部4111bを大きくすることにより、磁極部411を軽量化できるので、回転体であるロータ4のイナーシャを低減することができる。つまり、本実施形態に係るロータ4によれば、ロータ4の慣性モーメントの増加を抑制することができる。換言すると、本実施形態に係るロータ4によれば、ロータ4のGD2(ジーディスクエア)の増加を抑制することができる。
【0064】
次に、本実施形態に係るモータ1を、車両の駆動用のモータ1として用いる場合について説明する。上述したモータ1のシャフト2は、例えば、第1のギア302、第2のギア303、および、出力軸304を介して車両の駆動系に連結されている。車両の駆動系には、デファレンシャルギヤが含まれており、モータ1の動力は、デファレンシャルギヤに伝達されて、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪に分配されて伝達される。これにより、モータ1の駆動時には左右の駆動輪が回転し、車両が前進または後進する。
【0065】
このようなモータ1では、車両のエンジンおよびモータ1の非駆動時、ステータ3に対してロータ4が停止することにより、駆動輪が回転しないことが望まれる。例えば、車両を急坂に停車した場合においても駆動輪が回転しないことが望まれる。換言すれば、このようなモータ1には、非駆動時において、ディテントトルク(コギングトルク)を増大することが望まれる。そこで、本実施形態に係るモータ1は、以下に説明する凹および凸を設けることにより、ディテントトルク(コイル33の非励磁状態において、マグネット42と磁極部30、411との間で作用する磁気吸引トルク)を増大することができる。
【0066】
そこで、図8を用いてロータ4の磁極部411の凹および凸について説明する。図8は、図4の一部の拡大図である。本実施形態に係るロータ4において、周方向Cに延在する外周面4112には、径方向Rの内側へ向けて凹む複数の凹(以下、凹部DE1と称呼する)と、径方向Rの外側へ向けて突出する複数の凸(以下、凸部PR1と称呼する)と、が形成される。磁極部411の周方向Cに延在する外周面4112は、磁極部411の周方向Cに延在する側面の一例である。
【0067】
凹部DE1は、例えば、1つの磁極部411に3つ(第1凹部DE1a、第2凹部DE1b、第3凹部DE1c)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線CL1に対して、第2凹部DE1bと第3凹部DE1cとが線対称に配置される。
【0068】
凸部PR1は、例えば、1つの磁極部411に4つ(第1凸部PR1a、第2凸部PR1b、第3凸部PR1c、第4凸部PR1d)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線CL1に対して、第1凸部PR1aと第2凸部PR1bとが線対称に配置され、かつ、第3凸部PR1cと第4凸部PR1dとが線対称に配置される。
【0069】
次に、ステータ3の磁極部411の凹および凸について、図9を用いて説明する。図9は、図3に示すモータ1が備えるステータ3の磁極部30の拡大図である。ステータ3の磁極部30は、ヨーク31とティース32とで構成される。本実施形態に係るモータ1の径方向Rにおいて、ロータ4の磁極部411の外周面(側面)4112には、ステータ3のティース32の内周面(側面)321が対向する(図10参照)。そして、ティース32の周方向Cに延在する内周面321には、径方向Rの外側へ向けて凹む複数の凹(以下、凹部DE2と称呼する)と、径方向Rの内側へ向けて突出する複数の凸(以下、凸部PR2と称呼する)と、が形成される。
【0070】
凹部DE2は、例えば、1つの磁極部411に3つ(第1凹部DE2a、第2凹部DE2b、第3凹部DE2c)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線CL2に対して、第2凹部DE2bと第3凹部DE2cとが線対称に配置される。
【0071】
凸部PR2は、例えば、1つの磁極部411に4つ(第1凸部PR2a、第2凸部PR2b、第3凸部PR2c、第4凸部PR2d)設けられる。また、1つの磁極部411における周方向Cの中央に位置する仮想中心線2CLに対して、第1凸部PR2aと第2凸部PR2bとが線対称に配置され、かつ、第3凸部PR2cと第4凸部PR2dとが線対称に配置される。
【0072】
次に、ロータ4における磁極部411の凹部DE1および凸部PR1と、ステータ3における磁極部30の凹部DE2および凸部PR2との関係について図10図11を用いて説明する。図10は、ロータ4における磁極部411の凹部DE1および凸部PR1、および、ステータ3における磁極部30の凹部DE2および凸部PR2の平面図である。図11は、ロータ4における磁極部411の凹部DE1および凸部PR1、および、ステータ3における磁極部30の凹部DE2および凸部PR2の拡大図である。
【0073】
上述したように、ロータ4における1つの磁極部411には、3つの凹部DE1が形成され、かつ、4つの凸部PR1が形成される。一方、ステータ3における1つの磁極部30には、3つの凹部DE2が形成され、かつ、4つの凸部PR1が形成される。つまり、ロータ4における1つの磁極部411の凹部DE1または凸部PR1の数と、ステータ3における1つの磁極部30の凹部DE2または凸部PR2の数は、同じである。
【0074】
また、車両のエンジンおよびモータ1の非駆動時の径方向Rにおいて、ロータ4の凹部DE1とステータ3の凹部DE2とが対向し、かつ、ロータ4の凸部PR1とステータ3の凸部PR2とが対向する。
【0075】
例えば図11に示すように、径方向Rにおいて、ロータ4の第1凹部DE1aとステータ3の第1凹部DE2aとが対向し、ロータ4の第2凹部DE1bとステータ3の第2凹部DE2bとが対向し、かつ、ロータ4の第3凹部DE1cとステータ3の第3凹部DE2cとが対向する。
【0076】
その上、径方向Rにおいて、ロータ4の第1凸部PR1aとステータ3の第1凸部PR2aとが対向し、ロータ4の第2凸部PR1bとステータ3の第2凸部PR2bとが対向し、ロータ4の第3凸部PR1cとステータ3の第3凸部PR2cとが対向し、かつ、ロータ4の第4凸部PR1dとステータ3の第4凸部PR2dとが対向する。
【0077】
また、図10に示すように、径方向Rにおいて、ロータ4の1つの磁極部411における4つの凸部PR1と、ステータ3の1つの磁極部30における4つの凸部PR2とが対向する状態において、当該磁極部411に対して周方向Cに隣接する磁極部411では、径方向Rにおいて、ロータ4の3つの凸部PR1と、ステータ3の3つの凸部PR2とが対向する。
【0078】
その上、本実施形態に係るモータ1では、径方向Rにおいて、ロータ4における1つの磁極部411の4つの凸部PR1と、ステータ3における1つの磁極部411の4つの凸部PR2とが対向した状態では、残りのロータ4の1つの磁極部411とステータ3の1つの磁極部30との間でも、径方向Rにおいて、少なくとも、ロータ4の2つの凸部PR1と、ステータ3の2つの凸部PR2とが対向する。そして、図11に示すように、径方向Rにおいて対向するロータ4の凸部PR1と、ステータ3の凸部PR2とによって、これらロータ4の磁極部411の凸部PR1と、ステータ3の磁極部30の凸部PR2とを通過し、かつ、凸部PR1を有するロータ4の磁極部411と、凸部PR2を有するステータ3の磁極部30とを通過する磁気回路MC(図11参照)が、ロータ4のマグネット42の磁力に基づいて形成される。
【0079】
これらのため、車両のエンジンおよびモータ1の非駆動時において、ロータ4の磁極部411およびステータ3の磁極部30には、ロータ4のマグネット42によって、ロータ4の凸部PR1およびステータ3の凸部PR2を通過する磁気回路MCが形成されると共に、ステータ3に対してロータ4が周方向Cへ回転することを防止するディテントトルク(コギングトルク)が発生する。
【0080】
その上、本実施形態に係るモータ1では、ロータ4の磁極部411の外周面4112に複数の凸部PR1を設け、かつ、ステータ3の磁極部30の内周面321に複数の凸部PR2を設けることによって、ディテントトルクを増大する。そのため、シャフト2に、駆動用のモータ1のロータ4とは異なる別の制動装置のロータを設ける必要がないため、電子機器300が大型化することを抑制することができると共に使用するマグネットの数が増えることを抑制することができる。
【0081】
本実施形態に係るモータ1において、ロータ4のマグネット42の個数MAは10個であり、ステータ3のスロット(コイル33を収容する空間)の個数SLは12個(12スロット)である。そのため、本実施形態に係るモータ1は、周方向Cにおいて、360度のうち、10個と12スロットの最小公倍数である60個の位置でコギングトルク(ディテントトルク)が大きくなる、いわゆるコギングリップル(波)が発生する。そして、コギングリップルにおいて、360度を60個で除した6(度/1個)が、1つの波の周期となる。
【0082】
換言すると、ロータ4のマグネット42の個数をMAとし、ステータ3のスロット(コイル33)の数をSLとし、かつ、MAとSLの最小公倍数をXとした場合、360(度)をXで除したY(度/1個)が、コギングリップルの周期となる。そして、本発明者が行った鋭意の検討に基づく知見によると、コギングリップルの周期(1つの波)に対応して、凸部PR1および凹部DE1を配置することによって、コギングトルクが増大することができた。例えば、本実施形態に係るモータ1では、コギングリップルの周期(1つの波)に対応して、2つの凸部PR1と2つの凹部DE1とをそれぞれ配置することによって、コギングトルクを増大することができた。つまり、本実施形態に係るモータ1では、個数MAと個数SLの最小公倍数をXとした場合、360度をXで除した角度毎に、コギングリップルの周期に対応するように少なくとも1つの凹部DE1、DE2および1つの凸部PR1、PR2をロータ4の外周面(側面)4112およびティース32の内周面(側面)321にそれぞれ配置してある。
【0083】
本実施形態に係るモータ1において、ロータ4の外形の大きさ(外径)がφ24.5mmであるため、ロータ4の円周の長さは、24.5mm×π=76.93mmである。そして、MAとSLの最小公倍数Xが60であるため、76.93mm÷60=1.28mmが、コギングリップルの周期(1つの波)、つまり、凹部DE1と凸部PR1との周期である。
【0084】
本実施形態に係るモータ1において、コギングリップルの周期に対応して、以下のように凹部DE1および凸部PR1を交互に配置することでコギングトルクを大きくすることができる。すなわち、ロータ4の磁極部411の外周面4112ロータ4の外周面の略1.28mmに、例えば、2つの凹部DE1および2つの凸部PR1を交互に配置する形状にすることで、コギングリップルの形状に合わせて凹部DE1と凸部PR1とを配置することができる。このように凹部DE1と凸部PR1とを配置すれば、1.5度ごとに凹部DE1および凸部PR1を配置することになる。
【0085】
また、ステータ3のティース32の内周面321にも、ロータ4の凹部DE1の数および凸部PR1の数に対応して、凹部DEおよび凸部PR1を交互に配置することが、コギングトルクを向上する上で好ましい。
【0086】
なお、1個のマグネット42の周方向Cの長さは、2.29mmである。そのため、1個のマグネット42の周方向Cの長さを合算すると、2.29mm×10=22.9mmとなる。そして、22.9mmが、マグネット42が占める周方向Cの長さであるため、電磁鋼板である磁性体41の周方向Cの長さ(外周)は、76.93mm-22.9=56.48mmとなる。
【0087】
コギングリップルの周期をなす凹凸のペアの個数は、53.48mm÷1.28mm≒42となり、マグネット42の磁極数10個に対して12極で40個程度あればよい。
【0088】
以上をまとめると、スロットコンビネーション(10個のマグネット42を有するロータ4と、12個のコイル33を収容する空間を有するステータ3との組み合わせ)によって形成されるコギングリップルの波形と、ステータ3の磁極部30であるティース32の内周面(側面)321の形状とを対応させることで、コギングトルクを向上させることができる。その上、スロットコンビネーションによって形成されるコギングリップルの波形と、ロータ4の磁極部411の外周面(側面)4112の形状とを対応させることで、コギングトルクを向上させることができる。
【0089】
本実施形態に係るロータ4の磁極部411は、図8に示すように、径方向Rの外側において、2つの角部4COと、2つの角部4COの間にある周方向Cに延在する部分(外周面4112)と、を備えている。このため、ロータ4の磁極部411の角部4COと、ステータ3の磁極部30であるティース32との間に、周方向Cに向く磁束が多くなるため、トルクへの寄与は大きくなる。よって、ロータ4の磁極部411の角部4COと、ステータ3の磁極部30であるティース32との間に、周方向Cの磁気随伴力が発生する。
【0090】
一方、ロータ4の磁極部411の周方向Cに延在する部分(外周面4112)と、ステータ3の磁極部30であるティース32との間には径方向Rに磁束が向いているため、トルクへの寄与は小さくなる。従って、ロータ4の磁極部411の周方向Cに延在する部分(外周面4112)と、ステータ3の磁極部30であるティース32との間に、周方向Cの磁気随伴力は発生せず、発生したとしても、ロータ4の磁極部411の角部4COと、ステータ3の磁極部30であるティース32との間に発生する、周方向Cへの磁気随伴力よりも小さい。
【0091】
次に、凹部DE1、DE2および凸部PR1、PR2の有無について図12図15を用いて説明する。図12は、ロータ4の磁性体41とステータ3のティース32とが対向した状態において、ステータ3に対するロータ4のマグネット42の磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。図13は、図12に示す状態のコギングトルクの波形を示す図である。図14は、図12に示すロータ4の磁性体41とステータ3のティース32とが対向した状態からロータ4が周方向Cへわずかに回転した非対向状態において、ステータ3に対するロータ4のマグネット42の磁束の流れと、磁束密度の大きさとを示す図である。図15は、図14に示す状態のコギングトルクの波形を示す図である。
【0092】
図13から分かるように、ロータ4の磁極部411、および、ステータ3の磁極部30であるティース32およびロータ4の磁極部411に、凹部DE1、DE2がなく、かつ、凸部PR1、PR2がない場合には、磁束はおもに径方向Rに向かっており、周方向Cへのトルクに寄与する磁束の成分が小さい。
【0093】
一方、図13図15から分かるように、ロータ4の磁極部411、および、ステータ3の磁極部30であるティース32およびロータ4の磁極部411に、凹部DE1、DE2があり、かつ、凸部PR1、PR2がある場合には、磁束はおもに周方向Cに向かっており、トルクに寄与する磁束の成分が大きくなっている。
【0094】
以上説明したように、本実施形態におけるロータ4は、2つの磁極部411、環状部412、および、当該2つの磁極部411と当該環状部412とを連結する2つの接続部413を有する磁性体41と、周方向Cにおいて、2つの磁極部411の間にあるマグネット42と、を備え、2つの磁極部411の周方向Cに延在する外周面(側面)4112には1又は複数の凹部(凹)DE1または1又は複数の凸部(凸部)PR1が形成されている。
【0095】
本実施形態に係るロータ4において、磁性体41は、環状部412から突出した第1突出部(突出部)414を備え、径方向Rにおいて、マグネット42は第1突出部(突出部)414に接触している。
【0096】
本実施形態に係るロータ4において、第1突出部(突出部)414は、環状部412に向けて分岐した複数の分岐部(部分)413a、413bを備え、分岐した複数の分岐部(部分)413a、413bは環状部412に接続しており、周方向Cにおいて、分岐した複数の分岐部(部分)413a、413bの間には空隙413Hが形成されている。
【0097】
本実施形態に係るモータ1は、ロータ4と、ステータ3と、を備え、ステータ3は、複数の磁極部30を備え、径方向Rにおいて、ロータ4の外周面(側面)4112に対向する磁極部30の内周面(側面)321には1又は複数の凹部(凹)DE20または1又は複数の凸部(凸)PR20が形成されている。
【0098】
本実施形態に係るモータ1において、ロータ4の複数の凹部(凹)DE1または凸部(凸)PR1の数と、ステータ3の複数の凹部(凹)DE2または凸部(凸)PR2の数は同じである。
【0099】
本実施形態に係るモータ1において、ロータ4のマグネット42の数MAと、ステータ3のスロット(ティース)の数SLとが異なる場合であって、ロータ4のマグネット42の数MAと、ステータ3のスロット(ティース)の数SLとの最小公倍数をXとした場合、360度をXで除した角度毎に、少なくとも1つの凹部DE1、DE2および1つの凸部PR1、PR2をロータ4の外周面(側面)4112およびティース32の内周面(側面)321にそれぞれ配置する。
【0100】
本実施形態に係る電子機器300は、モータ1と、当該モータ1を収容する筐体301を備える。
【0101】
本実施形態に係る電子機器300は、モータ1と、1又は複数のギア302、303を備える。
【0102】
なお、上述したロータ4およびステータ3において、1つの磁極部411には、3つの凹部DE1、DE2が形成され、かつ、4つの凸部PR1、PR2が形成されるものを説明した。しかし、本発明に係るロータ4およびステータ3に形成される凹部DE1、DE2の数、およびかつ、凸部PR1、PR2の数は、必要に応じて適正な数に増減することができる。
【0103】
また、上述したロータ4には、第1貫通孔411Hに第1ネジN1が挿通され、かつ、第2貫通孔412Hに第1ネジN2が挿通されることによって、複数の磁性部材410が係合されるものを説明した。しかし、本発明に係るロータ4は、それに限られず、例えば、2つの貫通孔411H、412Hのいずれか一方にのみネジN1、N2を挿通させることによって、複数の磁性部材410を係合してもよい。もちろん、複数の磁性部材410の係合は、ネジN1、N2によるものに限られず、他の方法によって係合してもよい。
【0104】
さらに、上述したロータ4において、磁性体41が備える磁極部411の数および接続部413の数は、10個に限られず、9個以下の複数でもよく、11個以上の複数でもよい。
【0105】
また、上述したモータ1には、ロータ4における1つの磁極部411の凹部DE1または凸部PR1の数と、ステータ3における1つの磁極部30の凹部DE2または凸部PR2の数は、同じものを説明した。しかし、本発明に係るモータ1は、これに限られず、ロータ4における1つの磁極部411の凹部DE1または凸部PR1の数と、ステータ3における1つの磁極部30の凹部DE2または凸部PR2の数とが異なってもよい。
【0106】
さらに、上述したモータ1には、ロータ4の磁極部411に凹部DE1および凸部PR1を設け、かつ、ステータ3の磁極部30に凹部DE2および凸部PR2を設けるものを説明した。しかし、本発明に係るモータ1は、それに限られず、ロータ4の磁極部411およびステータ3の磁極部30のいずれか一方にのみ、凹部DE1、DE2および凸部PR1、PR2を設けてもよい。
【0107】
また、上述したモータ1には、ロータ4の1つの磁極部411に、仮想中心線CL1を基準として複数の凹部DE1を配置すると共に複数の凸部PR1を配置するものを説明した。しかし、本発明に係る凹部DE1および凸部PR1は、これに限られない。例えば、凹部DE1および凸部PR1を周方向Cに沿って等間隔に配置してもよい。
【0108】
さらに、上述したモータ1には、ステータ3の1つの磁極部30に、仮想中心線CL2を基準として複数の凹部DE2を配置すると共に複数の凸部PR2を配置するものを説明した。しかし、本発明に係る凹部DE2および凸部PR2は、これに限られない。例えば、凹部DE2および凸部PR2を周方向Cに沿って等間隔に配置してもよい。
【0109】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0110】
1 モータ、3 ステータ、 30 磁極部、 321 内周面(側面)、 4 ロータ、 41 磁性体、 411 磁極部、 4112 外周面(側面)、 412 環状部、 413 接続部、 413a,413b 分岐部(分岐した部分)、 413H 空隙、 414 第1突出部(突出部)、 42 マグネット、 300 電子機器、 301 筐体、 302、303 ギア、 A 軸方向、 C 周方向、 DE1 凹部、 DE2 凹部、 PR1 凸部、 PR2 凸部

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