(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025115239
(43)【公開日】2025-08-06
(54)【発明の名称】トランスアクスル
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20250730BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009680
(22)【出願日】2024-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三森 拓
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063BA03
3J063BA11
3J063BB46
3J063BB48
3J063CC13
3J063CC15
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD47
3J063XD72
3J063XD74
(57)【要約】
【課題】油路の構成を簡素化することができるトランスアクスルを得る。
【解決手段】オイルポンプ60は、インプット軸12の軸方向一端側に連結されたオイル圧送用のポンプ作動部を有すると共に、カバーをなすポンプカバー64を有する。ポンプカバー64にはリリーフバルブ70が設けられている。リリーフバルブ70は、インプット軸12の上方側でかつ、MG1軸26の側方側のうちインプット軸12側に配置されている。リリーフバルブ70は、インプット軸12及びMG1軸26へ向けてオイルの吐出が可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力が伝達される第一ギア部を有するインプット軸と、
前記インプット軸の前記第一ギア部と噛み合う第二ギア部を有し、前記インプット軸に対して上方側かつ側方側に設けられる電動機軸と、
潤滑又は冷却が必要な箇所にオイルを供給するための油路に設けられて前記インプット軸の軸方向一端側に連結されたオイル圧送用のポンプ作動部を有すると共に、カバーをなして前記油路の一部を形成するポンプカバーを有するオイルポンプと、
前記ポンプカバーに設けられて前記油路の油圧が所定値を超えた場合に前記油路からオイルを吐出するように構成され、前記インプット軸の上方側でかつ、前記電動機軸の側方側のうち前記インプット軸側に配置されると共に、前記インプット軸及び前記電動機軸へ向けてオイルの吐出が可能なリリーフバルブと、
を備えるトランスアクスル。
【請求項2】
前記リリーフバルブの下方側であってかつ前記インプット軸の軸線方向と同じ方向から見て前記リリーフバルブと前記インプット軸とを通る仮想直線に対して前記電動機軸側とは反対側に、パーキングロック機構を構成するパーキング部材が配置されており、前記リリーフバルブは、前記パーキング部材へ向けてオイルの吐出が可能に構成されている、請求項1に記載のトランスアクスル。
【請求項3】
前記リリーフバルブは、前記インプット軸の直上に配置され、
前記リリーフバルブから前記電動機軸までの距離は、前記リリーフバルブから前記インプット軸までの距離より短く設定されている、請求項1又は請求項2に記載のトランスアクスル。
【請求項4】
前記リリーフバルブは、前記電動機軸の真横に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のトランスアクスル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスアクスルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、オイルポンプから搬送されるオイルの油路を備えるトランスアクスルに関する技術が開示されている。この先行技術では、オイルポンプのカバーをなすと共に油路の一部を形成するポンプカバーと、ポンプカバーに設けられて油路の圧力に応じて油路からオイルを放出するリリーフバルブと、を有している。このような構成によれば、ケーシングの内部にリリーフのための油路を構成する部材を別途設ける必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来技術では、ギア室のギア、軸受へオイルを供給するために別途油路を設けており、油路の構成を簡素化する点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、油路の構成を簡素化することができるトランスアクスルを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のトランスアクスルは、エンジンの出力が伝達される第一ギア部を有するインプット軸と、前記インプット軸の前記第一ギア部と噛み合う第二ギア部を有し、前記インプット軸に対して上方側かつ側方側に設けられる電動機軸と、潤滑又は冷却が必要な箇所にオイルを供給するための油路に設けられて前記インプット軸の軸方向一端側に連結されたオイル圧送用のポンプ作動部を有すると共に、カバーをなして前記油路の一部を形成するポンプカバーを有するオイルポンプと、前記ポンプカバーに設けられて前記油路の油圧が所定値を超えた場合に前記油路からオイルを吐出するように構成され、前記インプット軸の上方側でかつ、前記電動機軸の側方側のうち前記インプット軸側に配置されると共に、前記インプット軸及び前記電動機軸へ向けてオイルの吐出が可能なリリーフバルブと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、エンジンの出力がインプット軸の第一ギア部に伝達される。インプット軸に対して上方側かつ側方側に設けられる電動機軸は、第二ギア部がインプット軸の第一ギア部と噛み合う。また、オイルポンプは、ポンプ作動部と、カバーをなすポンプカバーと、を有し、ポンプ作動部は、潤滑又は冷却が必要な箇所にオイルを供給するための油路に設けられてインプット軸の軸方向一端側に連結されたオイル圧送用となっており、ポンプカバーは油路の一部を形成している。ここで、ポンプカバーに設けられたリリーフバルブは、油路の油圧が所定値を超えた場合に油路からオイルを吐出するように構成され、インプット軸の上方側でかつ、電動機軸の側方側のうちインプット軸側に配置されると共に、インプット軸及び電動機軸へ向けてオイルの吐出が可能になっている。このため、インプット軸及び電動機軸へオイルを供給するための油路を別途設ける必要がない。
【0008】
請求項2に記載する本発明のトランスアクスルは、請求項1に記載の構成において、前記リリーフバルブの下方側であってかつ前記インプット軸の軸線方向と同じ方向から見て前記リリーフバルブと前記インプット軸とを通る仮想直線に対して前記電動機軸側とは反対側に、パーキングロック機構を構成するパーキング部材が配置されており、前記リリーフバルブは、前記パーキング部材へ向けてオイルの吐出が可能に構成されている。
【0009】
上記構成によれば、リリーフバルブの下方側であってかつインプット軸の軸線方向と同じ方向から見てリリーフバルブとインプット軸とを通る仮想直線に対して電動機軸側とは反対側に、パーキング部材が配置されており、リリーフバルブは、パーキング部材へ向けてオイルの吐出が可能になっている。このため、パーキング部材へオイルを供給するための油路を別途設ける必要がない。
【0010】
請求項3に記載する本発明のトランスアクスルは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記リリーフバルブは、前記インプット軸の直上に配置され、前記リリーフバルブから前記電動機軸までの距離は、前記リリーフバルブから前記インプット軸までの距離より短く設定されている。
【0011】
上記構成によれば、リリーフバルブは、インプット軸の直上に配置されているので、リリーフバルブからオイルを落下させることでインプット軸に確実にオイルを供給することができる。一方、電動機軸へのオイルの供給はリリーフバルブからオイルを落下させるだけではできないが、リリーフバルブから電動機軸までの距離は、リリーフバルブからインプット軸までの距離より短く設定されているので、電動機軸へ良好にオイルを供給することができる。
【0012】
請求項4に記載する本発明のトランスアクスルは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記リリーフバルブは、前記電動機軸の真横に配置されている。
【0013】
上記構成によれば、リリーフバルブから電動機軸へのオイルの供給を電動機軸の真横から行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のトランスアクスルによれば、油路の構成を簡素化することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトランスアクスルをエンジン側のケースを剥がした状態で簡略化して示す斜視図である。
【
図2】トランスアクスルを
図1の2-2線に相当する切断線に沿って切断した状態を拡大して示す断面図である。
【
図3】トランスアクスルのモータ室側を簡略化して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るトランスアクスルについて
図1~
図3を用いて説明する。
【0017】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係るトランスアクスル10をエンジン側のケース(図示省略)を剥がした状態で簡略化して示す斜視図である。トランスアクスル10は、車両に搭載されている。前記車両には、エンジン(図示省略)及びバッテリ(図示省略)が設けられている。前記車両は、エンジンを動力源として第一電動機20を駆動させ、第一電動機20の駆動により第二電動機30を駆動させて走行可能とされていると共に、エンジンを停止させてバッテリを動力源として駆動させて第二電動機30を駆動させて走行することが可能な所謂シリーズ式ハイブリッド車とされている。
【0018】
なお、図中の矢印UPはトランスアクスル10を車両に搭載した状態における上方側を示す。また、以下の説明では、エンジン(図示省略)からの入力方向(後述するインプット軸12の軸線方向)において、エンジン側からトランスアクスル10を見た場合の手前側を「フロントFr」と、奥側を「リアRr」と記載して説明する場合がある。さらに、
図1等に示される矢印Wは、トランスアクスル10のインプット軸12の軸線方向と同じ方向であるトランスアクスル10の幅方向を示している。
【0019】
図1に示されるトランスアクスル10は、ケーシング40、第一電動機(「MG1」ともいう)20、第二電動機(「MG2」ともいう)30、及びデファレンシャル機構(図示省略)を備えている。また、トランスアクスル10には、オイルポンプ60、ストレーナ68、リリーフバルブ70、及びオイルクーラ80等が設けられている。
【0020】
ケーシング40は、一例として、トランスアクスル10の幅方向Wに連接して配置される三部材で収容体をなしており、
図1には前記三部材のうち幅方向Wの中間部を構成する部材(T/Aケース)が示されている。補足説明すると、ケーシング40において、フロントFr側はケーシング40の幅方向Wの中間部側に開口を有するケース(ハウジングともいう、図示省略)で構成され、リアRr側はケーシング40の幅方向Wの中間部側に開口を有するカバー(図示省略)で構成されている。ケーシング40の内部空間は、
図1に示される区画壁43によりリアRr側のモータ室41(
図3参照)とフロントFr側のギア室42とに仕切られている。第一電動機20及び第二電動機30は、モータ室41(
図3参照)に収容されている。ギア室42には、インプット軸12、後述する電動機軸としてのMG1軸26等が配置されている。
【0021】
ケーシング40内のギア室42の底部側には、オイル貯留部44が形成されている。オイル貯留部44は、後述する油路100を循環するオイルが貯留される部分である。オイル貯留部44にはストレーナ68が配置されている。ストレーナ68は、オイル貯留部44に貯留されているオイルをオイルポンプ60の駆動時に吸い込み、その吸い込んだオイルを濾過するように構成されている。
【0022】
トランスアクスル10には、潤滑又は冷却が必要な箇所にオイルを供給するための油路100が形成されている。
図1には、油路100を通ってオイルクーラ80に至るまでのオイルの流れが矢印A1、A2、A3で示され、
図3には、
図1とは反対側から見た状態でオイルクーラ80を出て油路100を通るオイルの流れが矢印A4、A5、A6で示されている。言い換えると、
図1において油路100は矢印A1、A2、A3のようにオイルを流す通路であり、
図3において油路100は矢印A4、A5、A6のようにオイルを流す通路である。油路100は、
図1等に示されるケーシング40に形成された複数の貫通孔や凹部により形成されている部分と、ストレーナ68等の部材により形成されている部分と、を備える。また、トランスアクスル10においては、オイルによって、各種部材が潤滑又は冷却されるようになっている。
【0023】
図3に示されるように、油路100の一部としてオイルクーラ80に接続された上側油路100Aは、第一電動機20及び第二電動機30よりも上方側の位置で第一電動機20と第二電動機30とが並ぶ方向に沿って延在している。第一電動機20の直上には、上側油路100Aに接続されてリアRr側に突出する第一パイプ101が設けられ、第二電動機30の直上には、上側油路100Aに接続されてリアRr側に突出する第二パイプ102が設けられている。すなわち、第一パイプ101から噴出するオイルが第一電動機20にかかるように構成され、第二パイプ102から噴出するオイルが第二電動機30にかかるように構成されている。なお、第一パイプ101及び第二パイプ102にそれぞれ形成されるオイル噴出孔の位置は適宜設定可能である。第一電動機20及び第二電動機30の冷却等に用いられたオイルを再びオイル貯留部44(
図1参照)に戻すために、モータ室41と
図1に示されるギア室42との間には通路(図示省略)が貫通形成されている。
【0024】
図3に示される第一電動機20は、モータジェネレータからなる。第一電動機20には、インバータ等を内蔵する発電機コントローラが接続されている。第一電動機20から出力される交流電力は、発電機コントローラにより直流電力に変換され、当該直流電力がバッテリに供給されることにより、バッテリが充電される。第一電動機20は、エンジン(図示省略)の駆動により回転動力が伝達されて駆動するように構成されている。
【0025】
第二電動機30は、モータジェネレータからなる。第二電動機30には、インバータ等を内蔵するモータコントローラが接続されている。モータコントローラには、バッテリが接続されている。バッテリから出力される直流電力は、モータコントローラに供給されて、モータコントローラにより交流電力に変換され、更に当該交流電力が第二電動機30に供給されることにより、第二電動機30が駆動されるように構成されている。
【0026】
図2には、トランスアクスル10を
図1の2-2線に相当する切断線に沿って切断した状態が拡大されて示されている。なお、
図2では、インプット軸12、MG1軸26、後述する軸受16A、16B、18及び後述するポンプ作動部62の各切断面についてはハッチングを付すが、その他の部分の切断面については便宜上ハッチングを省略している。
【0027】
図2に示されるインプット軸12は、車両幅方向に沿うように配置され、軸受16A、16Bに回転可能に支持されている。なお、インプット軸12は、エンジン軸として把握可能な要素である。インプット軸12には、その外周側に第一ギア部14が形成されている。第一ギア部14にはエンジンの出力が伝達される。この第一ギア部14は、第一電動機20(
図3参照)の一部を構成するMG1軸26の第二ギア部28と噛み合っている。MG1軸26は、車両幅方向に沿うように配置され、軸受18に回転可能に支持されており、第二ギア部28は、MG1軸26の外周側に形成されている。
図1に示されるように、MG1軸26は、インプット軸12に対して上方側かつ側方側に設けられている。
【0028】
オイルポンプ60は、オイル貯留部44に貯留されたオイルの圧送用とされる。
図2に示されるように、オイルポンプ60は、インプット軸12の軸方向一端側に連結されたオイル圧送用のポンプ作動部62を有する。ポンプ作動部62は、油路100(
図1参照、
図1では矢印A1、A2、A3のようにオイルを流す通路)に設けられている。ポンプ作動部62は、ポンプギアとされ、エンジン(図示省略)の回転駆動によって回転し、オイルを圧送するように構成されている。
【0029】
図1に示されるように、オイルポンプ60は、カバーをなすポンプカバー64を有する。ポンプカバー64は、その外周部がケーシング40にボルト等の締結部材を用いて取り付けられると共に下部がストレーナ68に接続されている。ポンプカバー64は、トランスアクスル10の幅方向Wから見て(フロントFr側から見て)インプット軸12の直上側の部分を含んでオイルクーラ80側へ延びており、ポンプカバー64の上端部はトランスアクスル10の幅方向Wから見て(フロントFr側から見て)一例としてMG1軸26の直上側に配置されてケーシング40の天井部40Aに達している。
【0030】
ポンプカバー64においてリアRr側(
図1の紙面奥側)を向く面には、溝状の凹部64Aが形成されている。この凹部64Aは、油路100の一部を形成している。図示を省略するが、ポンプカバー64の凹部64Aの内部空間とオイルクーラ80の内部空間とは、図示しない連結路(油路100の一部)を介して通じている。オイルクーラ80は、油路100に設けられてオイルを冷却する熱交換器であり、その全体がMG1軸26よりも上方側の位置に配置されてケーシング40に取り付けられている。
【0031】
ポンプカバー64にはリリーフバルブ70が設けられており、リリーフバルブ70の内部空間とポンプカバー64の凹部64Aの内部空間とは通じている。リリーフバルブ70は、油路100の油圧が過大となることを抑制するために設けられ、油路100の油圧が所定値を超えた場合に油路100からオイルを吐出するように構成されている。
【0032】
リリーフバルブ70は、インプット軸12の上方側でかつ、MG1軸26の側方側のうちインプット軸12側に配置されている。この点について、詳細に説明する。本実施形態では、リリーフバルブ70は、インプット軸12の直上に配置されている。また、リリーフバルブ70は、MG1軸26の真横に配置されており、トランスアクスル10の幅方向Wから見て(フロントFr側から見て)MG1軸26に対して左右方向(車両前後方向)においてインプット軸12側(ここでは車両後方側)に配置されている。リリーフバルブ70からMG1軸26までの距離は、リリーフバルブ70からインプット軸12までの距離より短く設定されている。
【0033】
また、リリーフバルブ70の下方側であってかつトランスアクスル10の幅方向Wから見て(フロントFr側から見て)リリーフバルブ70とインプット軸12とを通る仮想直線(図示省略)に対してMG1軸26側とは反対側には、パーキングロック機構を構成するパーキング部材(「パーキング部品」と称されることもある)90が配置されている。
【0034】
リリーフバルブ70は、筒状部72と、筒状部72に貫通形成されたリリーフ孔74と、筒状部72内をその中心軸方向に摺動可能とされてリリーフ孔74を開閉可能な開閉体76と、を含んで構成されている。オイルの圧力に応じて開閉体76の位置をコントロールする機構については、例えばバネ機構等の公知機構を適用できるため、詳細説明は省略する。
【0035】
リリーフ孔74は、一例として、インプット軸12、MG1軸26及びパーキング部材90の各位置を向くように、計三個形成されている。すなわち、リリーフバルブ70は、インプット軸12、MG1軸26及びパーキング部材90へ向けてオイルの吐出が可能に構成されている。なお、インプット軸12、MG1軸26及びパーキング部材90にそれぞれ設けられるギア部(具体的には第一ギア部14、第二ギア部28等)、並びにインプット軸12、MG1軸26及びパーキング部材90をそれぞれ回転可能に支持する軸受(具体的には
図2に示される軸受16A、16B、18等)は、オイルによる潤滑の対象となる部分である。また、インプット軸12、MG1軸26及びパーキング部材90は、リリーフバルブ70がオイルを吐出した場合にオイルがかかる範囲内に位置している。
【0036】
(実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
本実施形態では、エンジン(図示省略)の回転駆動によって
図2に示されるオイルポンプ60のポンプ作動部62が回転すると、オイルが圧送される。このとき、
図1に示されるオイル貯留部44に貯留されたオイルは、ストレーナ68によって吸い込まれ、油路100を矢印A1、矢印A2、矢印A3に示されるように流れてオイルクーラ80に達し、オイルクーラ80で冷却される。さらに、
図3に示されるオイルクーラ80を通過したオイルは、油路100を矢印A4、矢印A5、矢印A6に示されるように流れ、第一パイプ101から第一電動機20にかかるよう噴出され、さらに第二パイプ102から第二電動機30にかかるように噴出される。これにより、第一電動機20及び第二電動機30が冷却される。第一電動機20及び第二電動機30の冷却等に用いられたオイルは、モータ室41とギア室42(
図1参照)とを貫通する通路(図示省略)を通って
図3に示されるモータ室41から
図1に示されるギア室42に入り、オイル貯留部44に戻る。
【0038】
また、油路100の油圧が所定値を超えた場合には、ポンプカバー64に設けられたリリーフバルブ70が開弁し、オイルがギア室42に吐出される。ここで、本実施形態では、リリーフバルブ70は、インプット軸12の上方側でかつ、MG1軸26の側方側のうちインプット軸12側に配置され、インプット軸12及びMG1軸26へ向けてオイルの吐出が可能になっている。このため、リリーフバルブ70が開弁されるとリリーフバルブ70からインプット軸12及びMG1軸26へ向けてオイルが吐出される(吹きかけられる)。このため、インプット軸12及びMG1軸26へオイルを供給するための油路を別途設ける必要がない。
【0039】
リリーフバルブ70からインプット軸12及びMG1軸26へのオイルの供給について更に詳細に説明する。本実施形態では、リリーフバルブ70は、インプット軸12の直上に配置されているので、リリーフバルブ70からオイルを落下させることでインプット軸12に確実にオイルを供給することができる。一方、MG1軸26へのオイルの供給はリリーフバルブ70からオイルを落下させるだけではできないが、リリーフバルブ70からMG1軸26までの距離は、リリーフバルブ70からインプット軸12までの距離より短く設定されているので、MG1軸26へ良好にオイルを供給することができる。また、本実施形態では、リリーフバルブ70は、一例として、MG1軸26の真横に配置されている。このため、リリーフバルブ70からMG1軸26へのオイルの供給をMG1軸26の真横から行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、リリーフバルブ70の下方側であってかつトランスアクスル10の幅方向Wから見てリリーフバルブ70とインプット軸12とを通る仮想直線(図示省略)に対してMG1軸26側とは反対側に、パーキング部材90が配置され、リリーフバルブ70は、パーキング部材90へ向けてオイルの吐出が可能になっている。よって、リリーフバルブ70が開弁されるとリリーフバルブ70からパーキング部材90へ向けてもオイルが吐出される。このため、パーキング部材90へオイルを供給するための油路を別途設ける必要がない。
【0041】
また、本実施形態では、オイルクーラ80がMG1軸26よりも上方側の位置に配置され、油路100の一部を形成するポンプカバー64がトランスアクスル10の幅方向Wから見てインプット軸12の直上側の部分を含んでオイルクーラ80側へ延びてケーシング40の天井部40Aに達している。このため、第一電動機20及び第二電動機30(いずれも
図3参照)を冷却するために上部に設ける油路を簡素化することができると共にオイルポンプ60で加圧されたオイルをオイルクーラ80に回すための油路を簡素化することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のトランスアクスル10によれば、油路100の構成を簡素化することができる。その結果、低コスト化を図ることができる。また、リリーフバルブ70から吐出されるオイルを潤滑用として有効利用することによって、オイルポンプ60の仕事量の低減を図ることができ、低燃費化が可能となる。
【0043】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、リリーフバルブ70は、パーキング部材90へ向けてオイルの吐出が可能に構成されており、そのような構成が好ましいが、上記実施形態の変形例として、リリーフバルブは、パーキング部材(90)へ向けてオイルの吐出が可能でない、という構成も採り得る。
【0044】
また、上記実施形態では、リリーフバルブ70は、インプット軸12の直上に配置されており、このような構成が好ましいが、上記実施形態の変形例として、リリーフバルブが、インプット軸(12)の斜め上方に配置されている、という構成も採り得る。
【0045】
また、上記実施形態では、リリーフバルブ70は、トランスアクスル10の幅方向Wから見て、MG1軸26の真横に配置されているが、上記実施形態の変形例として、リリーフバルブは、トランスアクスル(10)の幅方向(W)から見て、MG1軸(26)の側方斜め上方に配置されている、という構成も採り得る。
【0046】
また、上記実施形態では、リリーフバルブ70からMG1軸26までの距離は、リリーフバルブ70からインプット軸12までの距離より短く設定されており、そのような構成が好ましいが、上記実施形態の変形例として、リリーフバルブ(70)からMG1軸(26)までの距離がリリーフバルブ(70)からインプット軸(12)までの距離以上に設定されている、という構成も採り得る。
【0047】
また、上記実施形態のトランスアクスル10は、シリーズ式ハイブリッド車に適用されているが、本発明のトランスアクスルは、パラレル式ハイブリッド車に適用されてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0049】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 トランスアクスル
12 インプット軸
14 第一ギア部
26 MG1軸(電動機軸)
28 第二ギア部
60 オイルポンプ
62 ポンプ作動部
64 ポンプカバー
70 リリーフバルブ
90 パーキング部材
100 油路