(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011524
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ハイブリッド車の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20250117BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250117BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20250117BHJP
【FI】
B60W20/00
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113695
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 研也
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB05
3D202BB12
3D202CC43
3D202DD05
3D202DD06
3D202DD10
3D202DD16
3D202DD22
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車においてエンジンの未完全暖機を回避又は抑制する。
【解決手段】制御装置は、エンジンの暖機が完了する前に前記ハイブリッド車が起動停止された回数を、未完全暖機回数としてカウントとする処理を実行する。加えて、前記ハイブリッド車が起動されたときに、前記エンジンに対する始動閾値と停止閾値との少なくとも一方を、前記カウントされた未完全暖機回数に応じて設定する処理を実行する。加えて、前記エンジンに対する要求出力が前記設定された始動閾値を上回るときに前記エンジンを始動させ、前記要求出力が前記設定された停止閾値を下回るときに前記エンジンを停止させる処理を実行する。前記ハイブリッド車が起動されたまま、前記エンジンの暖機が完了してから所定の時間が経過したときに、前記カウントされた未完全暖機回数を減算又はクリアする処理を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車の制御装置であって、
エンジンの暖機が完了する前に前記ハイブリッド車が起動停止された回数を、未完全暖機回数としてカウントとする処理と、
前記ハイブリッド車が起動されたときに、前記エンジンに対する始動閾値と停止閾値との少なくとも一方を、前記カウントされた未完全暖機回数に応じて設定する処理と、
前記エンジンに対する要求出力が前記設定された始動閾値を上回るときに前記エンジンを始動させ、前記要求出力が前記設定された停止閾値を下回るときに前記エンジンを停止させる処理と、
前記ハイブリッド車が起動されたまま、前記エンジンの暖機が完了してから所定の時間が経過したときに、前記カウントされた未完全暖機回数を減算又はクリアする処理と、
を実行可能な制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ハイブリッド車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両に搭載されたエンジンの暖機に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車の場合、エンジンに対する要求出力に応じて、エンジンの始動と停止が繰り返される。従って、エンジンの暖機に要する時間は比較的に長くなり、エンジンの暖機が完了する前に、ハイブリッド車の使用が終了されることもある。このような未完全暖機は、エンジン等(オイルや燃料を含む)に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
上記を鑑みて、本明細書は、ハイブリッド車においてエンジンの未完全暖機を回避又は抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、ハイブリッド車の制御装置に具現化される。前記制御装置は、エンジンの暖機が完了する前に前記ハイブリッド車が起動停止(レディオフとも称する)された回数を、未完全暖機回数としてカウントとする処理を実行する。加えて、前記ハイブリッド車が起動されたときに、前記エンジンに対する始動閾値と停止閾値との少なくとも一方を、前記カウントされた未完全暖機回数に応じて設定する処理を実行する。加えて、前記エンジンに対する要求出力が前記設定された始動閾値を上回るときに前記エンジンを始動させ、前記要求出力が前記設定された停止閾値を下回るときに前記エンジンを停止させる処理を実行する。前記ハイブリッド車が起動されたまま、前記エンジンの暖機が完了してから所定の時間が経過したときに、前記カウントされた未完全暖機回数を減算又はクリアする処理を実行する。
【0007】
上記した構成では、制御装置は、未完全暖機回数に応じて、エンジンの始動/停止に係る条件(即ち、始動閾値及び/又は停止閾値)を変更することができる。例えば、未完全暖機回数が多い場合、制御装置は、エンジンに対する始動閾値を引き下げる、又は、エンジンに対する停止閾値を引き上げるように、各閾値を調整することができる。これにより、エンジンの起動回数及び起動時間を増大させて、エンジンの暖機を促進することができる。その一方で、例えばユーザによるハイブリッド車の使用態様が変更された場合、これまでの使用態様に応じて調整された始動閾値及び/又は停止閾値が、新しい使用態様に対しては過剰となることも想定される。そこで、制御装置は、エンジンの暖機が完了した後、ハイブリッド車の使用が所定の時間に亘って継続されたときは、カウントされた未完全暖機回数を減算又はクリアするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ハイブリッド車の構成を示すブロック図である。
【
図2】制御装置が実行する一連の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施例のハイブリッド車10の制御装置30について説明する。ハイブリッド車とは、エンジンと走行用モータの動力で車輪を駆動する車両のことを指す。一例ではあるが、本実施例の制御装置30は、ハイブリッド車10に搭載される。但し、他の実施形態として、制御装置30は、ハイブリッド車10に搭載されるものでなくてもよく、ハイブリッド車10の外部に配置され、ハイブリッド車10に対して遠隔から制御するものであってもよい。
【0010】
図1に示すように、ハイブリッド車10(以下、単に車両10と称する)は、上記した制御装置30に加え、車体12と、複数の車輪14、16と、エンジン18と、第1モータ20と、第2モータ22と、動力分割機構24と、ギヤユニット26と、バッテリ28と、温度センサ32を備える。複数の車輪14、16は、車体12の前部に設けられた一対の前輪14と、車体12の後部に設けられた一対の後輪16とを含む。なお、車体12の具体的な構成や、車両10が備える車輪の数は特に限定されない。
【0011】
エンジン18は、燃料を燃焼して動力を発生する熱機関であり、特に限定されないが、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が挙げられる。エンジン18の近傍には、温度センサ32が配置されている。温度センサ32は、エンジン18の温度を監視するためのセンサであり、具体的には、エンジン18を冷却するための冷却水の温度を検知する。冷却水は、エンジン18と、ラジエータ(図示省略)とを通過する冷却経路を循環している。
【0012】
動力分割機構24は、エンジン18に機械的に接続されている。動力分割機構24は、第1モータ20及び第2モータ22に機械的に接続されている。動力分割機構24は、エンジン18の動力を第1モータ20と第2モータ22(即ち、一対の前輪14)とに分配する。
【0013】
第1モータ20は、エンジン18と動力分割機構24を介して機械的に接続されており、発電機として機能する。即ち、ハイブリッド車10は、エンジン18によって第1モータ20を駆動することで、第1モータ20による発電を行うことができる。第1モータ20は、バッテリ28と電気的に接続されており、第1モータ20による発電電力は、バッテリ28へ供給されてバッテリ28を充電する。エンジン18は、動力分割機構24を介して第2モータ22に機械的に接続されている。
【0014】
第2モータ22は、エンジン18と動力分割機構24を介して機械的に接続されている。第2モータ22は、バッテリ28と電気的に接続されており、バッテリ28から電力供給を受けて動作する。第2モータ22は、ギヤユニット26を介して、前輪14と機械的に接続されており、前輪14を駆動する原動機として機能する。即ち、第2モータ22が出力する回転運動(即ち、トルク)は、ギヤユニット26を介して一対の前輪14に分配される。また、第2モータ22は、原動機だけでなく、前輪14を回生制動するための発電機としても機能することができる。即ち、車両10は、減速する必要があるときに、第2モータ22を発電機として機能させることで、前輪14の回生制動を行うことができる。なお、第2モータ22は、前輪14に代えて、後輪16を駆動輪として駆動してもよい。
【0015】
バッテリ28は、第1モータ20と、第2モータ22とに接続されている。バッテリ28は、第2モータ22のための電源装置であって、第2モータ22へ駆動電力を供給する。バッテリ28は、複数の二次電池セルを有しており、繰り返し充放電可能に構成されている。ここでいう二次電池セルは、特に限定されないが、例えばリチウムイオン電池セル又はニッケル水素電池セルであってよい。図示省略するが、バッテリ28と第1モータ20との間、及び、バッテリ28と第2モータ22との間には、それぞれ必要に応じて電力変換装置が設けられてもよい。
【0016】
制御装置30は、コンピュータ装置を用いて構成されており、プロセッサやメモリ等を有する。制御装置30は、エンジン18、バッテリ28、ギヤユニット26に電気的に接続されており、これらの動作を制御可能に構成されている。制御装置30は、さらに、温度センサ32と通信可能に接続されている。制御装置30には、例えばユーザによる操作情報や、車両の状態を示す車両情報が入力される。操作情報には、ユーザによるエンジン18に対しての要求出力情報が含まれており、例えば、アクセルペダルの操作量や、ブレーキ操作量等が挙げられる。車両情報には、例えば温度センサ32による検知温度等のエンジン18の状態を示す情報や、車両10のパワースイッチ(レディスイッチ又はイグニッションスイッチとも称する)のON/OFFの情報等が含まれる。
【0017】
制御装置30は、エンジン18の暖機が完了する前に車両10が起動停止(レディオフとも称する)されたときに、その回数を未完全暖機回数として累積的にカウントする。ここで、エンジン18の暖機が完了する前とは、例えば温度センサ32の検知温度が第1の所定温度未満であることを指す。第1の所定温度は、例えば80℃であってよい。
【0018】
加えて、制御装置30は、上記未完全暖機回数のうち、温度センサ32の検知温度が第2所定温度未満であるときに、第2の未完全暖機回数としてカウントする。第2の所定温度は、第1の所定温度よりも低く、例えば50℃であってよい。即ち、第2の未完全暖機回数は、未完全暖機回数のうち、特に車両10の暖機が進行することなく車両10が早期に起動停止された回数を意味する。制御装置30は、入力された操作情報、車両情報、及び未完全暖機回数等に応じて、上述した車両10の各部の動作を制御する。
【0019】
図2及び
図3を参照して、制御装置30が実行するエンジン18の暖機に係る一連の処理について説明する。制御装置30は、車両10が起動(レディオンとも称する)されたときに、
図2に示す一連の処理を実行するように構成されている。
【0020】
ステップS12において、制御装置30は、カウントした未完全暖機回数を読み取る。
【0021】
ステップS14において、制御装置30は、ステップS12の未完全暖機回数から、始動閾値を算出する。始動閾値は、エンジン18に対する要求出力に応じて、エンジン18を始動するための閾値である。即ち、制御装置30は、エンジン18に対する要求出力が始動閾値を上回るときに、エンジン18を始動させる。
図3の実線Aに示すように、本実施例の制御装置30は、エンジン18の暖機が完了するまでの間、未完全暖機回数に応じて設定する始動閾値を変化させる。具体的には、未完全暖機回数が多くなるにつれて、始動閾値は小さな値に設定される。即ち、エンジン18に対する要求出力に対して、エンジン18は始動されやすくなる。一方、
図3に示す破線Bは、通常制御処理における始動閾値を示す。通常制御処理における始動閾値は、未完全暖機回数に関わらず一定である。
【0022】
なお、ステップS14では、制御装置30は、未完全暖機回数に応じて始動閾値を設定しているが、それに代えて、又は加えて、エンジン18を停止させるための停止閾値を算出してもよい。即ち、制御装置30は、エンジン18に対する要求出力が停止閾値を下回るときに、エンジン18を停止させる。従って、未完全暖機回数が多くなるにつれて、停止閾値が大きな値に設定されると、エンジン18に対する要求出力に対して、エンジン18は停止され難くなる。
【0023】
ステップS16において、制御装置30は、カウントした第2の未完全暖機回数を読み取る。
【0024】
ステップS18において、制御装置30は、第2の未完全暖機回数が、所定値以上であるか否かを判断する。第2の未完全暖機回数が所定回数以上である場合(S18でYES)、制御装置30は、ステップS20の処理に進む。そうでなければ(S18でNO)、制御装置30は、ステップS20の処理をスキップして、ステップS22の処理に進む。
【0025】
ステップS20において、制御装置30は、暖機促進制御処理を実行する。暖機促進制御処理では、エンジン18の暖機を促進させるようにエンジン18の運転状態が制御される。例えば、エンジン18の回転数を高める等の、エンジン18の燃費効率を低減させる制御を行うことにより、エンジン18の暖機がより促進される。
【0026】
ステップS22において、制御装置30は、エンジン18の暖機が完了したのか否かを判断する。制御装置30は、例えば温度センサ32による検知温度が第1の所定温度(例えば80℃)以上である場合に、暖機が完了したと判断する。暖気が完了している場合(ステップS22のYES)、暖機促進制御処理を終了し、ステップS24の処理に進む。そうでなければ(ステップS22のNO)、制御装置30は、暖機が完了するまで、ステップS22の処理を継続する。
【0027】
なお、図示されていないが、エンジン18の暖機が完了する前に、パワースイッチがOFF状態にされたこと(即ちレディオフ)を検知した場合、制御装置30は、未完全暖機回数及び第2の未完全暖機回数のカウント数に加算し、一連の処理を終了する、あるいは、ステップS12の処理に戻る。
【0028】
ステップS24において、制御装置30は、通常制御処理を実行する。前述したように、通常制御処理では、未完全暖機回数に関わらず、始動閾値に一定の値が設定される。即ち、制御装置30は、始動閾値を
図3の破線Bに基づいて設定する。
【0029】
ステップS26において、制御装置30は、エンジン18の暖気時間が所定時間以上であったのか否かを判断する。制御装置30は、例えば温度センサ32による検出温度が、例えば80℃以上で約30分間維持された場合に、暖機時間が所定時間以上であったと判断する。暖機時間が所定時間以上であった場合(S26でYES)、制御装置30は、ステップS28の処理に進む。そうでなければ(S26でNO)、制御装置30は、ステップS24の処理に戻って、通常制御処理を継続する。
【0030】
ステップS28において、制御装置30は、未完全暖機回数及び第2の未完全暖機回数を減算又はクリアする。例えばユーザによる車両10の使用態様(例えばユーザの主要の運転経路)が変更された場合、これまでの使用態様に応じて調整された始動閾値及び/又は停止閾値が、新しい使用態様に対して過剰となることを防止することができる。
【0031】
以上により、制御装置30は、一連のステップS12-S28を実行する処理を終了する、又は繰り返す。上述したように、制御装置30は、未完全暖機回数に応じて、エンジン18の始動/停止に係る条件(即ち、始動閾値及び/又は停止閾値)を変更することができる。例えば、未完全暖機回数が多い場合、制御装置30は、エンジン18に対する始動閾値を引き下げる、又は、エンジン18に対する停止閾値を引き上げるように、各閾値を調整することができる。これにより、エンジン18の起動回数及び起動時間を増大させて、エンジンの暖機を促進することができる。
【0032】
なお、上記に説明した一連のステップS12-S28を実行する処理は一例である。制御装置30は、例えばステップS16-S24の処理を実行しなくてもよい。即ち、第2の未完全暖機回数に基づく暖機促進制御処理は、任意の付加的な処理である。
【符号の説明】
【0033】
10:ハイブリッド車(車両)、18:エンジン、30:制御装置