特開 2025-11530 圧力タンクユニット

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025011530

(43)【公開日】2025-01-24

(54)【発明の名称】圧力タンクユニット

(51)【国際特許分類】

   F17C 13/00 20060101AFI20250117BHJP

   F17C 1/04 20060101ALI20250117BHJP

【ＦＩ】

F17C13/00 301Z

F17C1/04

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023113703

(22)【出願日】2023-07-11

(71)【出願人】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】308013436

【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000110

【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】藤江 勇宜

(72)【発明者】

【氏名】上田 直樹

(72)【発明者】

【氏名】丹羽 亮介

(72)【発明者】

【氏名】藤井 勇輔

(72)【発明者】

【氏名】安藤 幸司

【テーマコード（参考）】

3E172

【Ｆターム（参考）】

3E172AA02

3E172AA05

3E172AB01

3E172BB05

3E172BC01

3E172BC04

3E172BD03

3E172CA13

3E172DA31

3E172DA36

3E172KA03

3E172KA12

(57)【要約】

【課題】保護部材がタンクから剥離することを防止又は抑制する。
【解決手段】圧力タンクユニットが、圧縮ガスを収容する収容空間を有するタンクと、前記タンクの表面に接合された複数の保護部材とを備えてもよい。この場合、前記タンクは、円筒形状を有する胴体部と、前記胴体部の端部に設けられているとともに半球形状を有するドーム部とを有してもよい。前記複数の保護部材は、前記胴体部と前記ドーム部との境界に沿って、前記タンクの周方向に配列されてよい。前記複数の保護部材の各々は、前記ドーム部を覆う第１部分と、前記胴体部を覆う第２部分とを含んでもよい。前記第２部分の前記胴体部に対向する内面は、前記胴体部に接合材を介して接合された少なくとも一つの接合領域を有してもよい。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

圧縮ガスを収容する収容空間を有するタンクと、
前記タンクの表面に接合された複数の保護部材と、
を備え、
前記タンクは、円筒形状を有する胴体部と、前記胴体部の端部に設けられているとともに半球形状を有するドーム部と、を有し、
前記複数の保護部材は、前記胴体部と前記ドーム部との境界に沿って、前記タンクの周方向に配列されており、
前記複数の保護部材の各々は、前記ドーム部を覆う第１部分と、前記胴体部を覆う第２部分とを含み、
前記第２部分の前記胴体部に対向する内面は、前記胴体部に接合材を介して接合された少なくとも一つの接合領域を有する、
圧力タンクユニット。

【請求項2】

前記少なくとも一つの接合領域は、互いに独立した第１接合領域及び第２接合領域を有する、請求項１に記載の圧力タンクユニット。

【請求項3】

前記第１接合領域及び前記第２接合領域は、前記周方向に沿って並んでいる、請求項２に記載の圧力タンクユニット。

【請求項4】

前記第２部分の前記内面には、前記第１接合領域と前記第２接合領域との間に溝が設けられている、請求項３に記載の圧力タンクユニット。

【請求項5】

前記第１部分の前記ドーム部に対向する内面は、前記ドーム部に向けて突出する突出部を有し、前記突出部において前記ドーム部に接触しているとともに、前記突出部以外の部分で隙間を介して前記ドーム部に対向している、前記請求項１から４のいずれか一項に記載の圧力タンクユニット。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本明細書が開示する技術は、圧縮ガスを貯蔵する圧力タンクユニットに関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、車両に搭載される圧力タンクユニットが記載されている。圧力タンクユニットは、タンクと、タンクの表面に接合された保護部材とを備える。タンクは、円筒形状の胴体部と、その端部に設けられた半球形状のドーム部とを有する。保護部材は、タンクのドーム部を覆うように配置され、外部の衝撃からタンクを保護する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２３－０４４９５９号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上記した圧力タンクユニットでは、保護部材が接合材を介してドームに接合されている。タンクの構造上、ドーム部の表面粗さは、胴体部の表面粗さよりも大きい。従って、ドーム部と保護部材との間の接合領域には、意図せず隙間が生じるおそれがあり、外部の衝撃が保護部材へ負荷されたときに、保護部材がタンクから剥離するおそれがある。本明細書は、保護部材がタンクから剥離することを防止又は抑制し得る技術を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0005】

本明細書が開示する技術は、圧力タンクユニットに具現化される。第１の態様では、圧力タンクユニットが、圧縮ガスを収容する収容空間を有するタンクと、前記タンクの表面に接合された複数の保護部材とを備えてもよい。この場合、前記タンクは、円筒形状を有する胴体部と、前記胴体部の端部に設けられているとともに半球形状を有するドーム部とを有してもよい。前記複数の保護部材は、前記胴体部と前記ドーム部との境界に沿って、前記タンクの周方向に配列されてよい。前記複数の保護部材の各々は、前記ドーム部を覆う第１部分と、前記胴体部を覆う第２部分とを含んでもよい。前記第２部分の前記胴体部に対向する内面は、前記胴体部に接合材を介して接合された少なくとも一つの接合領域を有してもよい。

【0006】

上記した圧力タンクユニットでは、複数の保護部材が、周方向に沿って配列された構造を有する。このような構成によると、各々の保護部材を、ドーム部だけでなく、胴体部まで覆う形状とすることができる。これにより、各々の保護部材は、ドーム部に加えて、又は代えて、胴体部に接合されることができる。前述したように、胴体部の表面粗さは、ドーム部の表面粗さよりも小さい。従って、各々の保護部材は、タンクに対して強固に接合され、タンクから剥離することが防止又は抑制される。

【0007】

第２の態様では、上記の第１の態様に加えて、前記少なくとも一つの接合領域は、互いに独立した第１接合領域及び第２接合領域を有してもよい。各々の保護部材が、二以上の独立した接合領域でタンクに接合された構造であると、タンクの表面に湾曲や凹凸が存在する場合でも、各々の保護部材がタンクの表面に対して強固に接合される。

【0008】

第３の態様では、上記の第２の態様に加えて、前記第１接合領域及び前記第２接合領域は、前記周方向に沿って並んでもよい。タンクの胴体部の表面は、主に周方向に沿って湾曲している。従って、二以上の接合領域が周方向に沿って並んでいると、各々の保護部材は、周方向に沿って湾曲する胴体部の表面に対して強固に接合される。

【0009】

第４の態様では、上記の第３の態様に加えて、前記第２部分の前記内面には、前記第１接合領域と前記第２接合領域との間に溝が設けられてもよい。このような構成によると、周方向における保護部材の柔軟性を高めることができ、各々の保護部材は、周方向に沿って湾曲する胴体部の表面に対してより強固に接合される。

【0010】

第５の態様では、上記の第１の態様から第４の態様のいずれかにおいて、前記第１部分の前記ドーム部に対向する内面は、前記ドーム部に向けて突出する突出部を有してもよい。この場合、前記第１部分の前記内面は、前記突出部において前記ドーム部に接触しているとともに、前記突出部以外の部分では、隙間を介して前記ドーム部に対向してもよい。このような構成によると、ドーム部の寸法誤差を許容することができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】圧力タンクユニットの構成を示す平面図である。

【図2】圧力タンクユニットの構成を示す斜視図である。

【図3】圧力タンクユニットをタンクの中心軸を通過する平面で切断したときの部分断面図である。

【図4】第１保護部材の構成を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【実施例0012】

図面を参照して、実施例の圧力タンクユニット１０について説明する。図１、図２に示すように、圧力タンクユニット１０は、タンク１２と、複数の第１保護部材１８と、複数の第２保護部材２０とを備える。図３に示すように、タンク１２は、収容空間Ｓを有する。収容空間Ｓには、圧縮ガスが収容される。圧縮ガスは、例えば高圧に圧縮された水素ガスである。圧力タンクユニット１０は、例えば燃料電池車等の車両に搭載される。

【0013】

タンク１２は、胴体部１２ｂと、第１ドーム部１２ｄ及び第２ドーム部１２ｅとを有する。胴体部１２ｂは、中心軸ＣＡに沿って延びる円筒形状を有する。第１ドーム部１２ｄは、胴体部１２ｂの一方側の端部に設けられている。第１ドーム部１２ｄは、胴体部１２ｂから中心軸ＣＡに沿って外側へ半球形状を有する。第２ドーム部１２ｅは、胴体部１２ｂの他方側の端部に設けられている。第２ドーム部１２ｅも、胴体部１２ｂから中心軸ＣＡに沿って外側へ膨らんだ半球形状を有する。

【0014】

ここで、本明細書が開示する技術において、「胴体部」は、タンク１２の外径が、略一定である範囲を示し、「ドーム部」は、タンク１２の外径が、胴体部１２ｂから離れるにつれて、小さくなる範囲を示す。なお、「略一定」とは、外径の変位が約１０％以内であることを示す。

【0015】

図２、図３に示すように、タンク１２は、ライナ１４と、補強層１６と、二つの口金２２、２４と、を有する。ライナ１４は、圧縮ガスの収容空間Ｓを内部に画定する。ライナ１４は、例えばポリアミド樹脂といった、ガスバリア性の高い材料で構成されている。これにより、圧縮ガスの外部への透過が防止される。

【0016】

二つの口金２２、２４は、タンク１２の両端に位置している。即ち、一方の口金２２は、第１ドーム部１２ｄに位置しており、他方の口金２４は、第２ドーム部１２ｅに位置している。第１ドーム部１２ｄの口金２２は、貫通孔２２ｈを有する。貫通孔２２ｈは、タンク１２内の収容空間Ｓに接続されている。第１ドーム部１２ｄの口金２２には、貫通孔２２ｈを開閉するためのバルブユニット（図示省略）が取り付けられる。二つの口金２２、２４は、タンク１２の中心軸ＣＡ上に位置する。

【0017】

補強層１６は、ライナ１４の外表面１４ａを覆っている。補強層１６は、例えば炭素繊維強化プラスチック（ＣＦＲＰ）といった、繊維強化プラスチックで構成されている。補強層１６は、フィラメントワインディング法によって成形される。知られているように、フィラメントワインディング法では、熱硬化性の樹脂を含浸させた繊維束がライナ１４の表面１４ａに巻き付けられ、その後、加熱処理によって樹脂が硬化される。タンク１２のドーム部１２ｄ、１２ｅでは、補強層１６がヘリカル巻きで成形されている。一方、タンク１２の胴体部１２ｂでは、補強層１６がフープ巻きで成形されている。これらの巻き方に関係して、ドーム部１２ｄ、１２ｅの表面粗さは、胴体部１２ｂの表面粗さよりも大きくなる。なお、補強層１６は上記した構成に限定されない。補強層１６は、ＣＦＲＰの層に加えて、表面保護のためのガラス繊維強化プラスチック（ＧＦＲＰ）の層をさらに含んでいてもよい。

【0018】

複数の第１保護部材１８及び複数の第２保護部材２０は、外部の衝撃からタンク１２を保護する部材である。複数の第１保護部材１８及び複数の第２保護部材２０は、タンク１２の外表面１２ａ（即ち補強層１６の表面１６ａ）に接合されている。複数の第１保護部材１８は、タンク１２の第１ドーム部１２ｄ側に配置されている。複数の第１保護部材１８は、胴体部１２ｂとドーム部１２ｄとの間の境界に沿って、タンク１２の周方向に配列されている。複数の第１保護部材１８は、タンク１２のドーム部１２ｄと胴体部１２ｂの一部とを覆っている。複数の第１保護部材１８は、口金２２から所定の間隔を空けて、口金２２の周囲を一巡して取り囲んでいる。

【0019】

各々の第１保護部材１８は、衝撃エネルギーを吸収する構造を有する。例えば、各々の第１保護部材１８は、発泡ポリウレタン樹脂で構成された多孔質構造を有してもよい。あるいは、各々の第１保護部材１８は、その外面上又は内面上に設けられた複数のリブを有し、その複数のリブによって画定された複数の空間を有する構造を有してもよい。

【0020】

図３、図４に示されるように、各々の第１保護部材１８は、ドーム部１２ｄを覆う第１部分１８ａと、胴体部１２ｂを覆う第２部分１８ｂとを含む。第１部分１８ａのドーム部１２ｄに対向する内面は、ドーム部１２ｄに向けて突出する突出部１８ｐを有する。突出部１８ｐは、ドーム部１２ｄに接触している。第１部分１８ａのドーム部１２ｄに対向する内面は、突出部１８ｐ以外の部分では、隙間ＣＬを介してドーム部１２ｄに対向する。このような構成によると、ドーム部１２ｄの寸法誤差を許容することができる。変形例では、第１部分１８ａのドーム部１２ｄに対向する内面は、突出部１８ｐにおいて、ドーム部１２ｄに接合材を介して接合される接合領域を有してもよい。別の変形例では、第１部分１８ａのドーム部１２ｄに対向する内面は、突出部１８ｐを有していなくてもよい。

【0021】

第２部分１８ｂは、第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２を有する。第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２は、タンク１２の胴体部１２ｂに接合材２６を介して接合されている。一例ではあるが、接合材２６は、シート状のものが採用されている。一例ではあるが、第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２は、互いに独立している。第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２は、周方向に並んでいる。第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２の各々は、概して矩形状を有し、タンク１２の中心軸ＣＡに平行な方向に沿って長く延びている。

【0022】

各第１保護部材１８には、第２部分１８ｂの第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２との間に溝１８ｇが設けられている。このような構成によると、周方向における第１保護部材１８の柔軟性を高めることができ、各々の第１保護部材１８は、周方向に沿って湾曲する胴体部１２ｂの表面に対してより強固に接合される。溝１８ｇの具体的な構成は特に限定されない。溝１８ｇは、第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２との間の全体に亘って延びている。溝１８ｇは、第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２との間から第１部分１８ａまで延びている。

【0023】

複数の第２保護部材２０は、タンク１２の第２ドーム部１２ｅ側に配置されている。複数の第２保護部材２０は、複数の第１保護部材１８と同様の構成を有してもよい。

【0024】

本実施例の圧力タンクユニット１０では、複数の保護部材１８、２０が、周方向に沿って配列された構造を有する。このような構成によると、各々の保護部材１８、２０を、ドーム部１２ｄ、１２ｅだけでなく、胴体部１２ｂまで覆う形状とすることができる。これにより、各々の保護部材１８、２０は、ドーム部１２ｄ、１２ｅに加えて、又は代えて、胴体部１２ｂに接合されることができる。前述したように、タンク１２の構造上、胴体部１２ｂの表面粗さは、ドーム部１２ｄ、１２ｅの表面粗さよりも小さい。従って、第１接合領域Ａ１及び第２接合領域Ａ２において、複数の保護部材１８、２０とタンク１２の表面１２ａとの間に、隙間が生じることが防止される。各々の保護部材１８、２０は、タンク１２に対して強固に接合され、タンク１２から剥離することが防止又は抑制される。

【0025】

また、各々の保護部材１８、２０は、互いに独立した二つの接合領域Ａ１、Ａ２を有している。即ち、各々の保護部材１８、２０が、二以上の独立した接合領域Ａ１、Ａ２のそれぞれで、タンク１２の表面１２ａに接合されている。このような構成によると、タンク１２の表面１２ａに湾曲や凹凸が存在する場合でも、各々の保護部材１８、２０がタンク１２の表面１２ａに対して強固に接合される。

【0026】

上記した二つの接合領域Ａ１、Ａ２は、タンク１２の周方向に沿って並んでいる。タンク１２の胴体部１２ｂの表面は、主に周方向に沿って湾曲している。従って、二以上の接合領域Ａ１、Ａ２が、タンク１２の周方向に沿って並んでいると、各々の保護部材１８、２０は、周方向に沿って湾曲する胴体部１２ｂの表面に対して強固に接合される。

【0027】

但し、各々の保護部材１８、２０における接合領域Ａ１、Ａ２の構成は、本実施例で説明した具体的な構成に限定されない。二以上の接合領域Ａ１、Ａ２は、タンク１２の周方向に沿って並んでいなくてもよく、タンク１２の中心軸ＣＡに平行な方向に沿って並んでいてもよい。この場合、接合領域Ａ１、Ａ２の面積を大きくするために、各々の接合領域Ａ１、Ａ２は、タンク１２の周方向に長く延びていてもよい。また、各々の保護部材１８、２０において、接合領域Ａ１、Ａ２の数は二つに限定されない。各々の保護部材１８、２０は、少なくとも一つの接合領域を有していればよい。

【符号の説明】

【0028】

１０：圧力タンクユニット、 １２：タンク、 １２ｂ：胴体部、 １２ｄ、１２ｅ：ドーム部、 １８、２０：保護部材、 １８ａ：第１部分、 １８ｂ：第２部分、 １８ｐ：突出部、 Ａ１、Ａ２：接合領域、 ＣＡ：中心軸、 ＣＬ：隙間、 Ｓ：収容空間

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】