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特開2025-11546加工面判定装置、判定プログラム、および加工面判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011546
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】加工面判定装置、判定プログラム、および加工面判定方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/18 20060101AFI20250117BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20250117BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20250117BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20250117BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20250117BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B24B49/18
B24B49/12
B23Q17/24 Z
B23Q17/09 B
G01B11/30 A
G06T1/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113727
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 崇義
(72)【発明者】
【氏名】井村 諒介
(72)【発明者】
【氏名】川下 智幸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 彰浩
【テーマコード(参考)】
2F065
3C029
3C034
5B057
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065BB05
2F065CC10
2F065FF01
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ31
3C029DD10
3C029DD20
3C029EE20
3C034AA01
3C034BB93
3C034CA09
3C034DD18
5B057AA01
5B057BA02
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB12
5B057CB16
5B057DA03
5B057DC33
5B057DC40
(57)【要約】
【課題】工具における劣化異常の発生を短い時間で判定する。
【解決手段】加工面判定装置30は、記憶部56、抽出画像生成部57、および判定部58を有する。記憶部56は、第1時期に砥面を撮像した撮像画像44である基本画像44Bと、第1時期よりも後の第2時期に砥面を撮像した撮像画像44である最新画像44Nと、学習済みの第1学習器61とを記憶する。抽出画像生成部57は、基本画像44B、最新画像44N、および学習済みの第1学習器61を利用して、基本画像44Bと最新画像44Nとの差分を示す差分画像から砥面の突端部分を抽出した画像である判定画像65を生成する。判定部58は、判定画像65における砥面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上であることを条件に、砥石における劣化異常の発生を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具における加工面の状態を判定する加工面判定装置において、
第1時期に判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第1撮像画像、および、前記第1時期よりも後の第2時期に前記判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第2撮像画像、および、工具における加工面の突端部分のみを示す画像である突端画像を学習データとして学習された学習済みの学習器を記憶する記憶部と、
前記第1撮像画像、および、前記第2撮像画像、および、前記学習済みの学習器を利用して、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像との差分を示す差分画像から前記加工面の突端部分を抽出した画像である抽出画像を生成する抽出画像生成部と、
前記抽出画像における前記加工面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、前記判定対象の工具における劣化異常の発生を判定する判定部と、
を備える加工面判定装置。
【請求項2】
前記工具は、研削加工用の砥石である、
請求項1に記載の加工面判定装置。
【請求項3】
前記砥石は、一般砥粒を有する一般砥石であり、
前記抽出画像生成部は、前記抽出画像として、前記第1撮像画像を基準に前記第2撮像画像において前記加工面の突端部分が減少した部分を示す画像を生成するものである、
請求項2に記載の加工面判定装置。
【請求項4】
前記砥石は、超砥粒を有する超砥粒砥石であり、
前記抽出画像生成部は、前記抽出画像として、前記第1撮像画像を基準に前記第2撮像画像において前記加工面の突端部分が増加した部分を示す画像を生成するものである、
請求項2に記載の加工面判定装置。
【請求項5】
前記加工面判定装置は、前記加工面に直交する方向から同加工面を撮像する撮像部と、前記加工面における前記撮像部による撮像対象領域を照明する照明部と、を備え、
前記照明部は、第1発光色を有する第1照明光を前記加工面に直交する方向から前記撮像対象領域に照射する第1照射部と、前記第1発光色とは異なる第2発光色を有する第2照明光を、前記加工面に沿う方向から前記撮像対象領域に照射する第2照射部と、を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の加工面判定装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の加工面判定装置が具備する前記記憶部、および、前記抽出画像生成部、および、前記判定部の処理を、前記加工面判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラム。
【請求項7】
工具における加工面の状態を判定する加工面判定方法であって、
第1時期に判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第1撮像画像と、前記第1時期よりも後の第2時期に前記判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第2撮像画像と、工具における加工面の突端部分のみを示す画像である突端画像を学習データとして学習された学習済みの学習器と、を加工面判定装置の記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記第1撮像画像、および、前記第2撮像画像、および、前記学習済みの学習器を利用して、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像との差分を示す差分画像から前記加工面の突端部分を抽出した画像である抽出画像を生成する抽出画像生成工程と、
前記抽出画像における前記加工面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、前記判定対象の工具における劣化異常の発生を判定する判定工程と、
を備える加工面判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具における加工面の状態を判定する加工面判定装置、同装置で使用される判定プログラム、および工具における加工面の状態を判定する加工面判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削装置における研削加工では、研削工具としての砥石の加工面(いわゆる砥面)の状態によって、ワークの加工面の仕上げ品質が左右される。
従来、砥石の砥面の状態を把握するために、同砥面の状態(具体的には、砥粒の突出量)を測定する測定装置が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の装置では、カメラを装着した金属顕微鏡を用いて砥面が撮像されるとともに、その撮像データをもとに砥面の状態が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-45078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子顕微鏡を使用する装置では、同電子顕微鏡によって砥面の表面性状を緻密に観察することができる。とはいえ、電子顕微鏡は観察範囲がごく狭いため、電子顕微鏡によって砥面の全面にわたって同砥面の状態を測定するのには長い時間を要してしまう。しかも、電子顕微鏡の観察範囲、すなわち上記測定装置による測定範囲毎に、砥面の状態を判定するようにすると、その判定にも長い時間を要してしまう。
【0005】
なお、こうした実情は、ワイヤソーによる加工やワイヤ放電加工に用いるワイヤ工具の加工面の状態を判定する装置においても概ね共通している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための加工面判定装置は、砥石における砥面の状態を判定する加工面判定装置において、第1時期に判定対象の砥石の砥面を撮像した画像である第1撮像画像、および、前記第1時期よりも後の第2時期に前記判定対象の砥石を撮像した画像である第2撮像画像、および、砥石における砥面の突端部分のみを示す画像である突端画像を学習データとして学習された学習済みの学習器を記憶する記憶部と、前記第1撮像画像、および、前記第2撮像画像、および、前記学習済みの学習器を利用して、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像との差分を示す差分画像から前記砥面の突端部分を抽出した画像である抽出画像を生成する抽出画像生成部と、前記抽出画像における前記砥面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、前記判定対象の砥石における劣化異常の発生を判定する判定部と、を備える。
【0007】
前記課題を解決するための判定プログラムは、上記加工面判定装置が具備する前記記憶部、および、前記抽出画像生成部、および、前記判定部の処理を、前記加工面判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラムである。
【0008】
前記課題を解決するための砥面判定方法は、砥石における砥面の状態を判定する砥面判定方法であって、第1時期に判定対象の砥石の砥面を撮像した画像である第1撮像画像と、前記第1時期よりも後の第2時期に前記判定対象の砥石を撮像した画像である第2撮像画像と、砥石における砥面の突端部分のみを示す画像である突端画像を学習データとして学習された学習済みの学習器と、を加工面判定装置の記憶部に記憶させる記憶工程と、前記第1撮像画像、および、前記第2撮像画像、および、前記学習済みの学習器を利用して、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像との差分を示す差分画像から前記砥面の突端部分を抽出した画像である抽出画像を生成する抽出画像生成工程と、前記抽出画像における前記砥面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、前記判定対象の砥石における劣化異常の発生を判定する判定工程と、を備える。
【0009】
砥石における砥面の状態は、同砥面の全体において均一に変化することが望ましい。このことから、砥面の各部における状態変化量の偏りが大きくなっている場合には、砥面の状態が望ましくないかたちで変化していると云える。
【0010】
上記加工面判定装置、判定プログラム、および砥面判定方法では、ワークの仕上げ品質を左右する部分である砥面の突端部分の状態変化量が、第1撮像画像と第2撮像画像との差分を示す差分画像から砥面の突端部分を抽出した抽出画像に現れる。
【0011】
上記加工面判定装置、判定プログラム、および砥面判定方法によれば、そうした抽出画像における砥面の突端部分の位置や大きさをもとに、砥面の各部における同砥面の突端部分の状態変化量を把握することができる。そのため、抽出画像における砥面の突端部分の分布に偏りが生じていることをもって、砥面の突端部分において状態変化量の偏りが大きくなっていることが分かる。そして、この場合に、砥石の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0012】
しかも、2枚の撮像画像(第1撮像画像および第2撮像画像)と学習済みの学習器とを利用して、砥面の各部における同砥面の突端部分の状態変化量を表す画像である抽出画像を生成することができる。そのため、砥面を細かく区切った領域毎に同砥面の状態を解析して砥面の各部における同砥面の突端部分の状態変化量を把握する場合と比較して、短い時間で容易に砥面の突端部分における状態変化量を把握することができる。したがって、砥石における劣化異常の発生を短い時間で判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工具における劣化異常の発生を短い時間で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の加工面判定装置が適用される自動研削装置の概略構成を示す略図である。
図2】加工面判定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】カメラユニットの構造を示す略図である。
図4】砥面の撮像対象領域を照明部によって照明する様子を示す略図である。
図5】第1学習器の学習データのデータ構造を概念的に示す略図である。
図6】均等脱落砥面に対応する学習データの一例を示す図である。
図7】アンバランス脱落砥面に対応する学習データの一例を示す図である。
図8】切り屑溶着砥面に対応する学習データの一例を示す図である。
図9】判定画像を生成する手順を示すフローチャートである。
図10】判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
図11】他の実施形態にかかる判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
図12】砥石の劣化が進んだときにおける砥石の回転位相と積算値との関係を示すグラフである。
図13】その他の実施形態にかかる判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、加工面判定装置、判定プログラム、および砥面判定方法の一実施形態について、図1図10を参照して説明する。
<自動研削装置>
図1に示すように、本実施形態の加工面判定装置30は、自動研削装置20に適用される。この自動研削装置20は、工具としての砥石21によってワーク(図示略)の表面を研削加工する数値制御(NC)式の平面研削装置である。研削加工用の砥石21は、円柱状の基材の外周面に多数の砥粒が結合剤によって固着された構造をなす。砥石21は、回転可能な状態で砥石支持部22に支持される。砥石21および砥石支持部22は、基台23に対して、上下方向(以下、Y方向)と、水平方向、詳しくは図1における奥行き方向(以下、Z方向)とにおいて移動可能になっている。自動研削装置20では、砥石21を回転駆動しつつワークに接触させることにより、同ワークの表面が研削加工される。
【0016】
自動研削装置20は、ワークを支持する支持台としてのテーブル24を有する。テーブル24は、Z方向およびY方向に対して共に直交する水平方向、詳しくは図1における左右方向(以下、X方向)において移動可能になっている。自動研削装置20では、テーブル24をX方向に移動させることにより、テーブル24上のワークを移動させることができる。これにより、砥石21とワークとのX方向における相対位置を変更することができる。
【0017】
図1および図2に示すように、自動研削装置20は、その作動制御を実行する作動制御部25を有する。作動制御部25は、X軸駆動部26、Y軸駆動部27、Z軸駆動部28、および砥石駆動部29を有する。
【0018】
自動研削装置20は、砥石21をY方向やZ方向に移動させたりテーブル24をX方向に移動させたりすることで、砥石21とワークとのX方向の相対位置、Y方向の相対位置、およびZ方向の相対位置を各別に変更することが可能になっている。X軸駆動部26は、基台23に対してテーブル24をX方向に移動させるための装置である。X軸駆動部26は、図示しないボールねじ機構やサーボモータ等を有する。X軸駆動部26の作動制御を通じて、基台23に対するテーブル24のX方向位置が制御される。Y軸駆動部27は、基台23に対して砥石21および砥石支持部22をY方向に移動させる装置である。Y軸駆動部27は、図示しないボールねじ機構やサーボモータ等を有する。Y軸駆動部27の作動制御を通じて、基台23に対する砥石21のY方向位置が制御される。Z軸駆動部28は、基台23に対して砥石21および砥石支持部22をZ方向に移動させるための装置である。Y軸駆動部27は、図示しないボールねじ機構やサーボモータ等を有する。Y軸駆動部27の作動制御を通じて、基台23に対する砥石21のZ方向位置が制御される。
【0019】
砥石駆動部29は、砥石21の回転軸に連結された電動モータや、同砥石21の回転位相を検出する回転位相センサ等を有する。砥石駆動部29(詳しくは、電動モータ)の作動制御では、基本的に、砥石21が一定速度で回転される。なお、砥石21の回転速度としては、自動研削装置20に入力される加工条件をもとに、同加工条件に見合う速度が設定される。
【0020】
<加工面判定装置>
本実施形態の加工面判定装置30は、判定対象の砥石21の砥面を撮像した撮像画像44と、学習済みの学習器61,62を利用して、判定対象の砥石21における劣化異常の発生を判定する装置である。
【0021】
<カメラユニット>
図1図3に示すように、加工面判定装置30は、カメラユニット40を有する。カメラユニット40は、砥石21の砥面211を撮像するものである。カメラユニット40は、撮像部としてのカメラ41と、照明部43とを有する。
【0022】
<カメラ>
図1および図3に示すように、カメラ41は砥石21の下方に配置される。カメラ41は、砥石21の砥面211(詳しくは、図3中に一点鎖線で示す砥面211の接平面)に直交する方向から同砥面211を撮像する。本実施形態では、砥石21のドレッシングを実行した直後の第1時期において、カメラ41による砥面211の撮像が実行される。第1時期に撮像された撮像画像44は、基本画像44Bとして、後述する電子制御装置50に記憶される。また本実施形態では、第1時期よりも後の第2時期、具体的には砥石21の使用中における任意のタイミングにおいても、カメラ41による砥面211の撮像が実行される。第2時期に撮像された撮像画像44は、最新画像44Nとして、電子制御装置50に記憶される。なお、砥石21の使用中における任意のタイミングに撮像された撮像画像44のうちの過去に撮像された撮像画像44を、例えば1回前に撮像された撮像画像44を1回前画像として記憶するなど、N(Nは、自然数)回前画像として記憶してもよい。なお本実施形態では、カメラ41による撮像に際して自動研削装置20に取り付けられている砥石21が、判定対象の工具に相当する。また本実施形態では、基本画像44Bが第1撮像画像に相当し、最新画像44NおよびN回前画像が第2撮像画像に相当する。
【0023】
<照明部>
図3に示すように、照明部43は、砥面211の下端部分、すなわちカメラ41によって撮像される領域(以下、撮像対象領域AR)を照明するものである。照明部43は、第1照射部45および第2照射部46を有する。
【0024】
<第1照射部>
第1照射部45は、第1発光色(例えば、青色)を有する第1照明光45Lを、砥面211(詳しくは、図3中に一点鎖線で示す砥面211の接平面)に直交する方向から、同砥面211の上記撮像対象領域ARに照射する。具体的には、第1照射部45は、第1ランプ451および反射透光部材452を有する。第1ランプ451は、発光ダイオードにより構成されている。第1ランプ451は、カメラ41の光軸に直交する方向から同光軸に向けて第1照明光45Lを出射する態様で配置されている。反射透光部材452は、カメラ41の光軸と第1ランプ451の光軸とが交差する部分に配置される。反射透光部材452は、第1照明光45Lを反射するとともに、砥面211で反射した反射光を透過するものである。本実施形態では、第1ランプ451から出射された第1照明光45Lは、反射透光部材452で反射して砥面211に向かうことで、同砥面211における撮像対象領域ARに照射される。また、このようにして砥面211に照射された第1照明光45Lが反射した反射光の一部は、反射透光部材452を透過してカメラ41に入射される。
【0025】
<第2照射部>
第2照射部46は、第1発光色とは異なる第2発光色(例えば、白色)を有する第2照明光46Lを、砥面211(詳しくは、図3中に一点鎖線で示す砥面211の接平面)に対して斜め方向から、同砥面211の撮像対象領域ARに照射する。具体的には、第2照射部46は、照明ドーム461および第2ランプ462を有する。照明ドーム461は、上部が開口するドーム状をなすとともに、砥石21の下面(詳しくは、撮像対象領域AR)を覆うように配置される。第2ランプ462は、発光ダイオードによって構成されている。第2ランプ462は、照明ドーム461の内面において並ぶ態様で複数設けられる。各第2ランプ462は、砥面211の撮像対象領域ARに第2照明光46Lを照射する。第2ランプ462は、砥面211(詳しくは、図3中に一点鎖線で示す砥面211の接平面)に沿う方向、具体的には、砥面211の接平面に対して「5度」をなす方向から、同砥面211の撮像対象領域ARに第2照明光46Lを照射するものを含む。
【0026】
<照明部による作用>
本実施形態では、カメラユニット40は、自動研削装置20に着脱可能になっている。カメラユニット40は、砥面211の状態を判定する際には、判定に用いる撮像画像44を取得するべく、自動研削装置20に取り付けられる。そして、カメラユニット40では、カメラ41による砥面211の撮像を実行する際には、照明部43は砥面211の撮像対象領域ARを照明する。なお本実施形態では、自動研削装置20によって研削加工を実行するときには、カメラユニット40は自動研削装置20から取り外される。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、第1照射部45により砥面211に直交する方向から照射される第1照明光45Lを、砥石21の頂面(砥粒212の頂面を含む)で略正反射させるとともにカメラ41に入射させることが可能になる。これにより、カメラ41によって撮像した撮像画像44における砥石21の頂面にあたる部分の色を第1照明光45Lの第1発光色(例えば、青色)にすることができる。
【0028】
一方、第1照射部45による第1照明光45L、および第2照射部46による第2照明光46Lは、砥石21の頂面以外の部分(具体的には、砥粒212の側面や、結合剤の表面など)で乱反射する。そして、乱反射した第1照明光45Lおよび第2照明光46Lの一部はカメラ41に入射するようになる。これにより、カメラ41によって撮像した撮像画像44における砥石21の頂面以外の部分の色は、第1照明光45Lの第1発光色および第2照明光46Lの第2発光色が混在した色になる。
【0029】
本実施形態によれば、このようにして、撮像画像44における砥石21の頂面の色と頂面以外の部分の色とを異ならせることができるため、砥石21の頂面と頂面以外の部分との境界を明確にすることができる。これにより、撮像画像44からの砥面211の突端部分(詳しくは、砥粒212が切れ刃として機能する部分)の抽出を容易に行うことができる。そのため、砥面211を撮像した画像から砥面211の突端部分を抽出した画像である抽出画像を容易に生成することができる。
【0030】
<電子制御装置>
本実施形態の加工面判定装置30は電子制御装置50を備える。電子制御装置50は砥石21における砥面211の状態を判定するための各種制御を実行する。
【0031】
電子制御装置50は、CPU51、ROM52、RAM53、入力部54、表示部55、および記憶部56を有する。入力部54は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン等の入力デバイスである。
【0032】
入力部54は、加工面判定装置30の各種設定を行う場合や、同加工面判定装置30を作動させる場合に操作される。本実施形態では、入力部54の操作を通じて、判定対象の砥石21にドレッシングを実行した時期(ドレッシング情報)が入力される。
【0033】
表示部55は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置を有する。表示部55は、砥面211の状態の判定結果など、同判定にかかる各種情報を表示する。
記憶部56は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の随時書き込み読み出しが可能な不揮発性メモリによって構成される。記憶部56は、各種の実行プログラム60、学習済みの学習器61,62、学習器61,62の機械学習に利用される学習データ63,64を記憶する。また、記憶部56は、カメラユニット40により撮像された撮像画像44や、砥面211の判定に用いる判定画像65、入力部54の操作を通じて入力されるドレッシング情報を記憶する。
【0034】
実行プログラム60は、学習器61,62の機械学習を実行させるためのプログラム、および、砥面211の状態の判定にかかる各種処理を実行させるための判定プログラムを含む。
【0035】
<第1学習器>
第1学習器61について説明する。
本実施形態では、第1学習器61として、敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network:GAN)、詳しくは「pix2pix」といわれる画像生成モデルが採用されている。
【0036】
第1学習器61は、学習データ63を用いて、機械学習される。学習データ63は、砥石21の砥面211に関する画像から同砥面211の突端部分のみを抽出した画像である抽出画像を生成する能力を獲得するように、第1学習器61の機械学習を行うためのデータである。図5に示すように、学習データ63は、変換前画像63Bと変換後画像63Aとが対をなす画像セットにより構成される。変換前画像63Bは、第1学習器61の入力データとしての利用が想定される画像である。また変換後画像63Aは、第1学習器61の出力データになることが想定される画像である。
【0037】
学習データ63は、以下の手順で生成される。
先ず、砥石21の砥面211を撮像した撮像画像が多数用意される。この撮像画像は、前記第1時期に撮像された第1画像と前記第2時期に撮像された第2画像とを含む。なお、第1画像は前記基本画像44Bに相当する画像であるとともに、第2画像は前記最新画像44Nに相当する画像である。第1画像および第2画像は、例えばカメラユニット40を利用して取得される。第1画像および第2画像は、グレースケールに変換されるとともに、砥面211を砥石21の周方向および回転軸方向において格子状に切断する態様で複数の分割画像に分割される。本実施形態では、これら分割画像が変換前画像63Bとして用いられる。
【0038】
その後、分割画像の各々について、同分割画像から砥面211の突端部分(詳しくは、同砥面211の切れ刃として機能する部分)のみを抽出した抽出画像を作成する。本実施形態では、これら抽出画像が変換後画像63Aとして用いられる。なお、抽出画像を作成する手法としては、以下の手法を採用することができる。先ず、撮像前の砥石21の砥面211をスタンプ台に当てて、砥面211の突端部分にインクを付着させる。その後、砥石21の砥面211を撮像する。そして、この撮像画像(詳しくは、上記分割画像)からインクが付着している着色部分のみを抽出して抽出画像とする。この手法によれば、撮像画像における砥面211の突端部分とそれ以外の部分との境界が明確になるため、分割画像から砥面211の突端部分を容易に抽出することができる。したがって、抽出画像を容易に作成することができる。
【0039】
その後、砥面211の同一箇所にかかる変換前画像63Bと変換後画像63Aとが対をなす画像セット(図5)が多数作成される。本実施形態では、これら画像セットが第1学習器61の学習データ63として用いられる。詳しくは、電子制御装置50により、学習データ63を構成する複数の画像セットの1つを取り出すとともに同画像セットを入力データとして第1学習器61を機械学習させるといった学習処理が、学習データ63を構成する画像セット毎に繰り返し実行される。そして、機械学習の実行を通じて構築された機械学習モデルが、学習済みの第1学習器61として記憶部56に記憶される。なお本実施形態では、学習済みの第1学習器61を記憶部56に記憶させる工程が記憶工程に相当する。
【0040】
このようにして学習された学習済みの第1学習器61は、砥石21の砥面211に関する画像、詳しくは砥面211を撮像した撮像画像44が入力されると、同撮像画像44から砥面211の突端部分のみを抽出した抽出画像を出力する。なお本実施形態では、抽出画像をもとに、砥面211の判定に用いる判定画像65が生成される。
【0041】
<第2学習器>
第2学習器62について説明する。
本実施形態では、第2学習器62として、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)が採用されている。
【0042】
第2学習器62は、学習データ64を用いて、機械学習される。学習データ64は、砥面211の状態を判別する能力を獲得するように、第2学習器62の機械学習を行うためのデータである。学習データ64は、基本的には、以下の手順で生成される。
【0043】
先ず、砥石21の砥面211における同一箇所を撮像した2枚の撮像画像であり、且つ、前記第1時期に撮像された第1画像と前記第2時期に撮像された第2画像とからなる画像セットが用意される。なお第1画像は前記基本画像44Bに相当する画像であるとともに、第2画像は前記最新画像44Nに相当する画像である。第1画像および第2画像は、例えばカメラユニット40を利用して取得される。これら第1画像および第2画像は、グレースケールに変換される。
【0044】
その後、グレースケールの第1画像および第2画像の各々について、同画像から砥面211の突端部分(詳しくは、同砥面211の切れ刃として機能する部分)のみを抽出した抽出画像が作成される。抽出画像を作成する手法としては、前述したスタンプ台を利用して作成する方法や、前記第1学習器61用の学習データ64を構成する変換後画像63Aを利用して作成する方法、第1学習器61を利用して作成する方法を採用することができる。
【0045】
その後、第1画像に対応する抽出画像と第2画像に対応する抽出画像との差分を示す差分画像が生成される。本実施形態では、この差分画像が第2学習器62の学習データ64として用いられる。
【0046】
本実施形態では、学習データ64を構成する上記差分画像として、以下の「均等脱落砥面」、「アンバランス脱落砥面」、および「切り屑溶着砥面」といった3種類の砥面211の状態の各々に対応する画像が多数用意される。
【0047】
「均等脱落砥面」としては、砥面211の各部において砥粒212が均等に脱落しているときにおける砥面211の状態が定められている。均等脱落砥面に対応する学習データ64を生成する際には、均等脱落砥面の砥石21についての第1画像と第2画像とからなる画像セットが多数用意されるとともに、この画像セットをもとに上記差分画像が生成される。この場合には、差分画像としては、第1画像に対応する抽出画像を基準に第2画像に対応する抽出画像において砥面211の突端部分が減少した部分を示す画像が生成される。そして、この差分画像が、均等脱落砥面に対応する学習データ64として用いられる。図6に一例を示すように、均等脱落砥面に対応する学習データ64は、砥面211の突端部分を示す領域RTが学習データ64(詳しくは、上記差分画像)の全面にわたって均等に分布した画像である。
【0048】
「アンバランス脱落砥面」としては、砥面211において砥粒212が脱落した部分が偏在しているときにおける砥面211の状態が定められている。アンバランス脱落砥面に対応する学習データ64を生成する際には、アンバランス脱落砥面の砥石21についての第1画像と第2画像とからなる画像セットが多数用意されるとともに、この画像セットをもとに上記差分画像が生成される。この場合には、差分画像としては、第1画像に対応する抽出画像を基準に第2画像に対応する抽出画像において砥面211の突端部分が減少した部分を示す画像が生成される。そして、この差分画像が、アンバランス脱落砥面に対応する学習データ64として用いられる。図7に一例を示すように、アンバランス脱落砥面に対応する学習データ64は、砥面211の突端部分を示す領域RTが学習データ64(詳しくは、上記差分画像)の一部に偏った状態で分布する画像である。
【0049】
「切り屑溶着砥面」としては、砥面211に切り屑が溶着しているときにおける砥面211の状態が定められている。切り屑溶着砥面に対応する学習データ64を生成する際には、切り屑溶着砥面の砥石21についての第1画像と第2画像とからなる画像セットが多数用意されるとともに、この画像セットをもとに上記差分画像が生成される。この場合には、差分画像としては、第1画像に対応する抽出画像を基準に第2画像に対応する抽出画像において砥面211の突端部分が増加した部分を示す画像が生成される。そして、この差分画像が、切り屑溶着砥面に対応する学習データ64として用いられる。図8に一例を示すように、切り屑溶着砥面に対応する学習データ64は、砥面211の突端部分を示す領域RTが、複数の砥粒212を含む広い範囲にわたって延在する画像である。
【0050】
本実施形態では、学習データ64を構成する複数の画像のうちの1つを取り出すとともに同画像を入力データとして第2学習器62を機械学習させるといった学習処理が、学習データ64を構成する画像毎に繰り返し実行される。そして、機械学習の実行を通じて構築された機械学習モデルが、学習済みの第2学習器62として記憶部56に記憶される。
【0051】
このようにして学習された学習済みの第2学習器62には、砥石21の砥面211に関する画像(後述する判定画像65)が入力される。これにより、第2学習器62は、入力された画像を、均等脱落砥面(クラス1)、アンバランス脱落砥面(クラス2)、および切り屑溶着砥面(クラス3)のいずれかに分類するといった、いわゆるクラス分けを実行する。
【0052】
本実施形態の加工面判定装置30(詳しくは、電子制御装置50)は、機能部として、抽出画像生成部57、および判定部58を有する。
<抽出画像生成部>
抽出画像生成部57は、基本画像44B、最新画像44Nおよび学習済みの第1学習器61を利用して、基本画像44Bと最新画像44Nとの差分を示す差分画像から砥面211の突端部分を抽出した画像である抽出画像(以下、判定画像65)を生成する。
【0053】
図9に、判定画像65を生成する手順を示す。
図9に示すように、先ず、判定対象の砥石21が設けられた自動研削装置20にカメラユニット40が取り付けられるとともに、同カメラユニット40および自動研削装置20の作動制御部25が電子制御装置50に接続される(ステップS11)。そして、電子制御装置50により、カメラユニット40の作動制御、および作動制御部25の作動制御が実行される。詳しくは、照明部43による照明が実行される。これにより、砥面211における撮像対象領域ARが照明される。また、自動研削装置20の各駆動部26,27,28,29の作動制御が実行される。これにより、砥石21が砥面211の撮像に適した速度で回転されるとともに、カメラユニット40と砥石21との相対位置が予め定められた所定パターンで変更される。さらに、回転位相センサの検出信号に基づきカメラ41の作動制御が実行される。これにより、砥面211を撮像した撮像画像44が取得される。本実施形態では、砥面211を砥石21の周方向および回転軸方向において格子状に区切ることで、同砥面211の全体が複数の領域に区画されている。そして、それら領域毎に、カメラ41による砥面211の撮像が実行される。これにより、複数の撮像画像44が取得される。本実施形態では、各撮像画像44として、多数の砥粒212を含む画像が取得される。
【0054】
その後、電子制御装置50により、以下のステップS12~ステップS17の処理が実行される。
先ず、砥石21のドレッシングを実行した直後の第1時期であるか否かが判断される(ステップS12)。そして、第1時期である場合には(ステップS12:YES)、取得された複数の撮像画像44は、砥面211における位置情報とともに、基本画像44Bとして記憶部56に記憶される(ステップS13)。そして、この場合には、ステップS14~ステップS17の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。
【0055】
一方、第1時期よりも後の前記第2時期である場合には(ステップS12:NO)、上記複数の撮像画像44は、砥面211における位置情報とともに、最新画像44Nとして記憶部56に記憶される(ステップS14)。なお本実施形態では、ステップS13の処理、およびステップS14の処理が記憶工程に相当する。
【0056】
そして、この場合には、複数の最新画像44Nと複数の基本画像44Bとが各別にグレースケールに変換される(ステップS15)。
その後、グレースケールの基本画像44Bを入力データとして、第1学習器61から抽出画像(以下、変換後基本画像)を出力させる処理が実行される(ステップS16)。また、グレースケールの最新画像44Nを入力データとして第1学習器61から抽出画像(以下、変換後最新画像)を出力させる処理が実行される。ステップS16の処理では、詳しくは、複数の基本画像44Bの1つを取り出すとともに同基本画像44Bを入力データとして第1学習器61から変換後基本画像を出力させるといった生成処理が、複数の基本画像44B毎に繰り返し実行される。また、複数の最新画像44Nの1つを取り出すとともに同最新画像44Nを入力データとして第1学習器61から変換後最新画像を出力させるといった生成処理が、複数の最新画像44N毎に繰り返し実行される。
【0057】
その後、砥面211における同一箇所に対応する2枚の画像(変換後基本画像および変換後最新画像)の差分を示す差分画像(以下、判定画像65)が生成される(ステップS17)。判定画像65は、砥面211における撮像位置毎、すなわち前記領域毎に生成される。また判定画像65としては、変換後基本画像を基準に、変換後最新画像において砥面211の突端部分が減少した部分を示す画像と、同突端部分が増加した部分を示す画像とが生成される。ステップS17の処理で生成された判定画像65は記憶部56に記憶される。なお本実施形態では、ステップS16の処理、およびステップS17の処理が抽出画像生成工程に相当する。
【0058】
<判定部>
判定部58は、抽出画像生成部57により生成される複数の判定画像65、および学習済みの第2学習器62を利用して、判定対象の砥石21における劣化異常の発生を判定するものである。
【0059】
ここで、砥石21を使用する際には、砥石21における砥面211の状態は、同砥面211の全体において均一に変化することが望ましい。一般砥粒を有する一般砥石では、砥面211の突端部分の状態変化が、砥粒212が脱落するといったように進む。そして、砥面211の劣化が進むに連れて、砥面211の各部における砥粒212の脱落についての偏りが大きくなる。このことから、一般砥石では、そうした砥粒212の脱落の偏りが大きくなっている場合には、砥面211の状態が望ましくないかたちで変化していると云える。
【0060】
本実施形態では、一般砥粒を有する一般砥石における劣化異常の発生を判定することを想定して加工面判定装置30が構築されている。そして、本実施形態では、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、判定対象の砥石21における劣化異常の発生が判定される。
【0061】
以下、砥石21の劣化異常を判定するための判定処理の実行手順について、図10を参照しつつ説明する。図10は、判定処理の実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、判定処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として、電子制御装置50により実行される。
【0062】
図10に示すように、この処理では先ず、複数の判定画像65と学習済みの第2学習器62とを利用して、各判定画像65の分類(いわゆるクラス分け)が実行される(ステップS21)。詳しくは、複数の判定画像65の1つを取り出すとともに、同判定画像65を入力データとして第2学習器62により判定画像65を分類するといった分類処理が、複数の判定画像65毎に繰り返し実行される。
【0063】
そして、各判定画像65についての分類結果と砥面211における位置情報とに基づいて、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りの度合いRR1が算出される(ステップS22)。ステップS22の処理では、先ず、砥石21の回転位相毎に、ステップS21の処理で均等脱落砥面(クラス1)に分類された部分の占める割合R1が算出される。ここでは、同一回転位相に対応する複数(N1)の判定画像65のうち所定数(N2)の判定画像65が均等脱落砥面(クラス1)に分類された場合には、上記割合R1として、値「N2/N1」が算出される。そして、上記偏りの度合いRR1としては、回転位相毎に算出された上記割合R1における最大値R1maxと最小値R1minとの差ΔR1(=R1max-R1min)が算出される。
【0064】
その後、上記差ΔR1が所定値J1以上であるか否かが判断される(ステップS23)。なお、所定値J1としては、砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値が予め定められている。詳しくは、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値(所定値J1)が求められるとともに、同所定値J1が記憶部56に予め記憶されている。
【0065】
そして、上記差ΔR1が所定値J1未満である場合には(ステップS23:NO)、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル未満であるとして、正常判定がなされる(ステップS24)。一方、上記差ΔR1が所定値J1以上である場合には(ステップS23:YES)、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上であるとして、砥石21の劣化異常が発生していると判定される(ステップS25)。この場合には、砥面211のドレッシングが求められる程度に砥石21が劣化していると判定される。なお本実施形態では、ステップS23の処理およびステップS25の処理が、判定工程に相当する。
【0066】
<作用効果>
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1)加工面判定装置30は、記憶部56、抽出画像生成部57、および判定部58を有する。記憶部56は、砥石21のドレッシングを実行した直後の第1時期に砥面211を撮像した画像である基本画像44Bと、砥石21の使用中における第2時期に砥面211を撮像した画像である最新画像44Nと、学習済みの第1学習器61とを記憶する。抽出画像生成部57は、基本画像44B、最新画像44N、および学習済みの第1学習器61を利用して、基本画像44Bと最新画像44Nとの差分を示す差分画像から砥面211の突端部分を抽出した画像である判定画像65を生成する。判定部58は、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、砥石21における劣化異常の発生を判定する。
【0067】
前述したように、一般砥石である砥石21では、砥面211の各部における砥粒212の脱落についての偏りが大きくなっている場合には、同砥面211の状態が望ましくないかたちで変化していると云える。
【0068】
本実施形態では、判定画像65として、基本画像44Bと最新画像44Nとの差分を示す差分画像から砥面211の突端部分を抽出した画像が生成される。この判定画像65には、ワークの仕上げ品質を左右する部分である砥面211の突端部分の状態変化量が現れる。そのため、判定画像65における砥面211の突端部分の位置や大きさをもとに、砥面211の各部における同砥面211の突端部分の状態変化量を把握することができる。したがって本実施形態によれば、判定画像65における砥面211の突端部分の分布に偏りが生じていることをもって、砥面211の突端部分において状態変化量の偏りが大きくなっていることが分かる。本実施形態では、そうした場合に(図10のステップS23:YES)、砥石21の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0069】
しかも本実施形態によれば、いずれも多数の砥粒212を含む画像である2枚の撮像画像44(基本画像44Bおよび最新画像44N)と学習済みの第1学習器61とを利用して、判定画像65を生成することができる。そのため、ごく少数の砥粒212を含む態様で細かく区切った領域毎に砥面211の状態を解析することで砥面211の各部における上記状態変化量を把握する場合と比較して、短い時間で容易に砥面211の各部における状態変化量を把握することができる。したがって、砥石21における劣化異常の発生を短い時間で判定することができる。
【0070】
また本実施形態によれば、カメラユニット40を取り付ける作業と判定画像65を生成する処理と判定処理とを定期的に実行することで、砥面211の状態を適宜のタイミングで確認しながら、自動研削装置20によるワークの研削加工を実行することができる。
【0071】
(2)加工面判定装置30は、一般砥粒を有する一般砥石における劣化異常の発生を判定することを想定して構築されている。抽出画像生成部57は、判定画像65として、基本画像44B(詳しくは、変換後基本画像)を基準に最新画像44N(詳しくは、変換後最新画像)において砥面211の突端部分が減少した部分を示す画像を生成する。
【0072】
本実施形態では、そうした判定画像65に、第1時期から第2時期までの期間における砥面211各部の砥粒脱落量が現れる。そのため、判定画像65における砥面211の突端部分の位置や大きさによって、砥面211の各部における砥粒脱落量を把握することができる。したがって本実施形態によれば、判定画像65における砥面211の突端部分の分布に偏りが生じていることをもって、砥面211の突端部分において、砥粒212の脱落の偏りが大きくなっていることが分かる。本実施形態では、そうした場合に(図10のステップS23:YES)、砥石21の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0073】
(3)加工面判定装置30は、砥面211に直交する方向から同砥面211を撮像するカメラ41と、砥面211における撮像対象領域ARを照明する照明部43とを備える。照明部43は、第1照射部45および第2照射部46を有する。第1照射部45は、第1発光色を有する第1照明光45Lを、砥面211に直交する方向から撮像対象領域ARに照射する。第2照射部46は、第1発光色とは異なる第2発光色を有する第2照明光46Lを、砥面211に沿う方向から撮像対象領域ARに照射する。
【0074】
本実施形態によれば、カメラ41によって撮像される撮像画像44における砥石21の頂面の色と頂面以外の部分の色とを異ならせることができるため、砥石21の頂面と頂面以外の部分との境界を明確にすることができる。これにより、撮像画像44からの砥面211の突端部分の抽出を容易に行うことができるため、判定画像65を容易に生成することができる。
【0075】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0076】
・判定画像65の生成に際して、複数の最新画像44Nと複数の基本画像44Bとを各別にグレースケールに変換する処理(図9のステップS15の処理)を省略することができる。この場合には、第1学習器61の学習データ63の作成に際して第1画像および第2画像をグレースケールに変換する処理を省略することができる。また、第2学習器62の学習データ64の作成に際して、第1画像および第2画像をグレースケールに変換する処理を省略することができる。
【0077】
・第1学習器61の学習データ63の作成に際して、第1画像および第2画像を複数の分割画像に分割する手順を省略することができる。この場合には、砥面211を撮像した撮像画像44と同撮像画像44から砥面211の突端部分を抽出した抽出画像とが対をなす画像セットを多数用意するとともに、それら画像セットを学習データ63として用いるようにすればよい。なお、上記実施形態の加工面判定装置30のように、第1画像および第2画像を複数の分割画像に分割したうえで学習データ63の作成に利用することにより、比較的処理能力の低い電子制御装置50を用いて、学習データ63を作成することが可能になる。
【0078】
・判定処理(図10参照)の実行態様は、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に判定対象の砥石21における劣化異常の発生を判定することができるのであれば、任意に変更可能である。
【0079】
判定処理は、例えば、以下の判定処理A、判定処理B、および判定処理Cのように実行することができる。
<判定処理A>
判定処理Aは、判定対象の砥石21が一般砥石である場合に、以下のように実行することができる。
【0080】
図11に示すように、判定処理Aでは先ず、複数の判定画像65の各々をビットマップ画像に変換することで、複数の変換判定画像が生成される(ステップS31)。なお、ステップS31の処理では、判定画像65として、変換後基本画像を基準に変換後最新画像において砥面211の突端部分が減少した部分を示す画像が利用される。
【0081】
その後、複数の変換判定画像をもとに、砥石21の回転位相毎に、砥面211の突端部分であることを示す画素(以下、特定画素)の数を積算した積算値PP2が算出される(ステップS32)。
【0082】
そして、回転位相毎に算出された積算値PP2に基づいて、変換判定画像(詳しくは、複数の変換判定画像からなる砥面211の全体を示す1枚の画像)における砥面211の突端部分の分布の偏りの度合いRR2が算出される(ステップS33)。ステップS33の処理では、上記偏りの度合いRR2として、回転位相毎に算出される積算値PP2の平均値PP2aveと最大値PP2maxとの差ΔPP2(=PP2max-PP2ave)が算出される。
【0083】
その後、上記差ΔPP2が所定値J2以上であるか否かが判断される(ステップS34)。なお、所定値J2としては、砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値が予め定められている。詳しくは、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値(所定値J2)が求められるとともに、同所定値J2が記憶部56に予め記憶される。
【0084】
そして、上記差ΔPP2が所定値J2未満である場合には(ステップS34:NO)、変換判定画像における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル未満であるとして、正常判定がなされる(ステップS35)。一方、上記差ΔPP2が所定値J2以上である場合には(ステップS34:YES)、変換判定画像における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上であるとして、砥石21の劣化異常が発生していると判定される(ステップS36)。なお上記構成では、ステップS34の処理およびステップS36の処理が、判定工程に相当する。
【0085】
上記構成において、砥石21から砥粒212が脱落した場合には、その事実が変換判定画像における砥粒212の脱落部分に対応する画素(上記特定画素)の表示に現れるようになる。そのため、変換判定画像における特定画素の位置や範囲をもとに、砥面211の各部における砥粒212の脱落態様を把握することができる。
【0086】
上記構成では、砥石21の劣化が進むと、砥面211全体における砥粒212の脱落部分(すなわち、特定画素)の分布の偏りが大きくなる。この場合には、図12に一例を示すように、回転位相毎に算出される積算値PP2のばらつきが大きくなる。なお図12において、実線は積算値PP2を示しており、破線は積算値PP2の平均値PP2aveを示している。
【0087】
上記構成によれば、積算値PP2の平均値PP2aveと最大値PP2maxとの差ΔPP2が大きいことをもって、砥面211の突端部分において砥粒212の脱落量の偏りが大きくなっていることが分かる。上記構成では、そうした場合に(図11のステップS34:YES)、砥石21の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0088】
<判定処理B>
判定処理Bは、判定対象の砥石21が超砥粒を有する超砥粒砥石である場合に、以下のように実行することができる。判定処理Bは、超砥粒を有する超砥粒砥石における劣化異常の発生を判定することを想定して構築されている。
【0089】
図13に示すように、判定処理Bでは先ず、複数の判定画像65と学習済みの第2学習器62とを利用して、各判定画像65の分類が実行される(ステップS41)。詳しくは、複数の判定画像65の1つを取り出すとともに、同判定画像65を入力データとして第2学習器62により判定画像65を分類するといった分類処理が、複数の判定画像65毎に繰り返し実行される。
【0090】
そして、各判定画像65についての分類結果と砥面211における位置情報とに基づいて、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りの度合いRR3が算出される(ステップS42)。ステップS42の処理では、先ず、砥石21の回転位相毎に、ステップS41の処理で切り屑溶着砥面(クラス3)に分類された部分の占める割合R3が算出される。ここでは、同一回転位相に対応する複数(N3)の判定画像65のうち所定数(N4)の判定画像65が切り屑溶着砥面(クラス3)に分類された場合には、上記割合R3としては値「N4/N3」が算出される。そして、上記偏りの度合いRR3としては、回転位相毎に求められた割合R3における最大値R3maxと最小値R3minとの差ΔR3(=R3max-R3min)が算出される。
【0091】
その後、上記差ΔR3が所定値J3以上であるか否かが判断される(ステップS43)。なお、所定値J3としては、砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値が予め定められている。詳しくは、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値(所定値J3)が求められるとともに、同所定値J3が記憶部56に予め記憶されている。
【0092】
そして、上記差ΔR3が所定値J3未満である場合には(ステップS43:NO)、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル未満であるとして、正常判定がなされる(ステップS44)。一方、上記差ΔR3が所定値J3以上である場合には(ステップS43:YES)、判定画像65における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上であるとして、砥石21の劣化異常が発生していると判定される(ステップS45)。この場合には、砥面211のドレッシングが求められる程度に砥石21が劣化していると判定される。なお上記構成では、ステップS43の処理およびステップS45の処理が、判定工程に相当する。
【0093】
超砥粒砥石では、砥面211の突端部分の状態変化が、同砥面211に切り粉等の異物が付着するといったように進む。このことから、砥面211の各部における異物付着の偏りが大きくなっている場合には、砥面211の状態が望ましくないかたちで変化していると云える。
【0094】
上記構成では、判定画像65(詳しくは、変換後基本画像を基準に、変換後最新画像において砥面211の突端部分が増加した部分を示す画像)に、第1時期から第2時期までの期間における砥面211各部の異物付着量が現れる。そのため、判定画像65における砥面211の突端部分の位置や大きさによって、砥面211の各部における異物付着量を把握することができる。したがって上記構成によれば、判定画像65における砥面211の突端部分の分布に偏りが生じていることをもって、砥面211の突端部分において異物付着の偏りが大きくなっていることが分かる。本実施形態では、そうした場合に(図13のステップS43:YES)、砥石21の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0095】
<判定処理C>
判定処理Cは、判定対象の砥石21が超砥粒を有する超砥粒砥石である場合に、以下のように実行することができる。判定処理Cは、超砥粒を有する超砥粒砥石における劣化異常の発生を判定することを想定して構築されている。
【0096】
判定処理Cでは先ず、複数の判定画像65の各々をビットマップ画像に変換することで、複数の変換判定画像が作成される。なお本例では、判定画像65として、変換後基本画像を基準に変換後最新画像において砥面211の突端部分が増加した部分を示す画像が利用される。
【0097】
その後、複数の変換判定画像をもとに、砥石21の回転位相毎に、砥面211の突端部分であることを示す画素(以下、特定画素)の数を積算した積算値PP4が算出される。
そして、回転位相毎に算出された積算値PP4に基づいて、変換判定画像(詳しくは、複数の変換判定画像からなる砥面211の全体を示す1枚の画像)における砥面211の突端部分の分布の偏りの度合いRR4が算出される。この処理では、上記偏りの度合いRR4として、回転位相毎に算出される積算値PP4の平均値PP4aveと最大値PP4maxとの差ΔPP4(=PP4max-PP4ave)が算出される。
【0098】
その後、上記差ΔPP4が所定値J4以上であるか否かが判断される。なお、所定値J4としては、砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値が予め定められている。詳しくは、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに砥石21の劣化異常の発生を適正に判定することの可能な値(所定値J4)が求められるとともに、同所定値J4が記憶部56に予め記憶される。
【0099】
そして、上記差ΔPP4が所定値J4未満である場合には、変換判定画像における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル未満であるとして、正常判定がなされる。一方、上記差ΔPP4が所定値J4以上である場合には、変換判定画像における砥面211の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上であるとして、砥石21の劣化異常が発生していると判定される。
【0100】
上記構成において、砥面211に異物が付着した場合には、その事実が変換判定画像における異物付着部分に対応する画素(上記特定画素)の表示に現れるようになる。そのため、変換判定画像における特定画素の位置や範囲をもとに、砥面211の各部における異物の付着態様を把握することができる。
【0101】
上記構成では、砥石21の劣化が進むと、砥面211全体における異物付着部分(すなわち、特定画素)の分布の偏りが大きくなる。この場合には、回転位相毎に算出される積算値PP4のばらつきが大きくなる。
【0102】
上記構成によれば、積算値PP4の平均値PP4aveと最大値PP4maxとの差ΔPP4が大きいことをもって、砥面211の突端部分において異物付着量の偏りが大きくなっていることが分かる。上記構成では、そうした場合に、砥石21の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0103】
・判定処理として、フラクタル解析の手法を用いて砥面211の状態を判定する処理を実行することができる。
・判定画像65を生成する手順としては、以下の手順を採用することができる。先ず、基本画像44Bと最新画像44Nとの差分を示す差分画像を生成する。その後、差分画像をグレースケールに変換する。その後、グレースケールの差分画像と、同差分画像から砥面211の突端部分を抽出した抽出画像を出力するように学習された学習済みの学習器とを利用して、当該抽出画像を生成する。この抽出画像を判定画像65とする。
【0104】
・第2学習器62の学習データ64を作成する手法として、以下の手法を採用することができる。先ず、第1画像と第2画像との差分を示す差分画像を生成する。その後、差分画像をグレースケールに変換する。その後、グレースケールの差分画像から砥面211の突端部分を抽出した抽出画像を生成する。この抽出画像を第2学習器62の学習データ64とする。
【0105】
・判定画像65を構成する差分画像として、変換後基本画像と変換後最新画像との差分を示す差分画像を採用することの他、前記N回前画像(例えば1回前画像)に対応する抽出画像と変換後最新画像との差分を示す差分画像を採用することができる。なお上記構成では、N回前に砥面211を撮像したタイミングが第1時期に相当し、N回前画像が第1撮像画像に相当する。
【0106】
上記構成によれば、判定画像65における砥面211の突端部分の分布に偏りが生じていることをもって、第1時期から第2時期までの期間において砥面211の突端部分についての状態変化量の偏りが大きくなっていることが分かる。上記構成では、そうした場合に、砥石21の劣化異常が発生していると判定することができる。
【0107】
・照明部43の構造は、任意に変更可能である。
例えば第2ランプ462の一部を、砥面211に対して「5度」をなす方向から第2照明光46Lを照射するものにすることに代えて、砥面211に対して「10度」をなす方向から第2照明光46Lを照射するものにしてもよい。その他、第2ランプ462の一部を、砥面211に対して「0度」をなす方向、すなわち砥面211の接平面と平行な方向から第2照明光46Lを照射するものにすることもできる。なお、撮像画像44における砥石21の頂面と頂面以外の部分との境界を明確にするうえでは、第2ランプ462の一部の光軸と砥面211の撮像対象領域ARにおける接平面とのなす角度が、所定の角度範囲(0度≦角度≦10度)に設定されることが好ましい。
【0108】
第2照射部46を、砥面211に沿う方向から同砥面211の撮像対象領域ARに第2照明光46Lを照射する第2ランプ462のみによって構成してもよい。
第2照射部46を、砥面211の接平面と平行な方向から同砥面211の撮像対象領域ARに第2照明光46Lを照射する第2ランプ462のみによって構成することが可能である。
【0109】
第1照射部45および第2照射部46の一方を省略してもよい。
第1照射部45における第1照明光45Lの第1発光色や、第2照射部46における第2照明光46Lの第2発光色は、任意に変更することができる。撮像画像44における砥石21の頂面と頂面以外の部分との境界を明確にするうえでは、第1発光色と第2発光色とは異なる色が定められることが好ましい。
【0110】
・カメラユニット40を、砥石21の側方に配置したり、砥石21の上方に配置したりしてもよい。この場合には、カメラ41を、砥石21の砥面211に直交する方向から同砥面211を撮像するように配置すればよい。また、照明部43は、砥面211の側端部分または上端部分、すなわちカメラ41によって撮像される領域を照明するように配置すればよい。
【0111】
・カメラユニット40を、自動研削装置20に着脱不能な態様で、一体に設けるようにしてもよい。
同構成によれば、砥面211を撮像する作業や撮像画像44を電子制御装置50に記憶する作業を、自動研削装置20にカメラユニット40を着脱することなく、自動研削装置20に砥石21を取り付けた状態のままで容易に行うことができる。また、砥面211の状態の判定にかかる制御や、自動研削装置20によるワークの研削加工にかかる制御、同自動研削装置20による砥石21のドレッシングにかかる制御を、組み合わせられた一連の自動制御として実行することが可能になる。そのため、判定画像65を生成する処理および判定処理を定期的に実行することで、砥面211の状態を適宜のタイミングで確認しながら、自動研削装置20によるワークの研削加工や砥石21のドレッシングを実行することができる。
【0112】
上記構成を採用する場合には、カメラユニット40と砥石21との間を開閉するシャッター部が設けられることが好ましい。同構成によれば、自動研削装置20による研削加工を行うときには、シャッター部を閉じることで、カメラユニット40と砥石21との間が仕切られた閉状態にすることができる。これにより、カメラユニット40への異物(切り粉やオイル等)の付着を抑えることができる。一方、カメラユニット40による砥面211の撮像を実行するときには、シャッター部を開くことで、カメラユニット40と砥石21との間が仕切られない開状態にすることができる。これにより、カメラユニット40による砥面211の撮像が可能な状態にすることができる。
【0113】
・学習済みの学習器61,62を電子制御装置50に記憶させるための作業は、以下の(作業A)~(作業C)のように、任意の態様で実行することができる。
(作業A)判定対象の砥石21が設けられる自動研削装置20を利用して、学習データ63,64を取得するとともに、同学習データ63,64によって学習器61,62を機械学習させる。
【0114】
(作業B)実際に使用する砥石21に対応する学習データ63,64を、自動研削装置20の製造メーカー、あるいは砥石21の製造メーカーに提供してもらう。そして、学習データ63,64をユーザーが使用する加工面判定装置30の電子制御装置50に記憶させることで、学習器61,62を機械学習させる。
【0115】
(作業C)加工面判定装置30の製造時において、学習済みの学習器61,62を電子制御装置50に記憶させる。
・第1学習器61としては、例えば「cycleGAN」や「CGAN」を採用するなど、「pix2pix」以外の種類の敵対的生成ネットワークを採用することができる。また、第1学習器61としては、変分オートエンコーダ(Variational Autoencoder:VAE)を採用するなど、敵対的生成ネットワーク(GAN)以外の画像生成モデルを採用することができる。要は、砥石21の砥面211に関する画像から同砥面211の突端部分のみを抽出した画像である抽出画像を生成することのできる画像生成モデルであれば、第1学習器61として採用することができる。
【0116】
・第2学習器62としては、YOLO(You Only Look Once)といわれる物体検出モデルを採用することができる。その他、第2学習器62としては、多層構造を有する一般的な順伝播型ニューラルネットワークや、サポートベクターマシンなどを採用することができる。要は、砥面211の状態を判別することのできる物体検出モデルであれば、第2学習器62として採用することができる。
【0117】
・上記実施形態にかかる加工面判定装置は、円柱状の基材の底面に多数の砥粒が結合剤によって固着された構造をなす砥石にも適用することができる。
・上記実施形態にかかる加工面判定装置、判定プログラム、および加工面判定方法は、研削加工用の砥石に適用することの他、ワイヤソー用の工具であるソーワイヤ、ワイヤ放電加工用の工具であるワイヤ電極線などにも適用することができる。なお、上記実施形態にかかる加工面判定装置、判定プログラム、および加工面判定方法を上記ワイヤ電極線に適用する場合には、ワイヤ電極線の表面が「加工面」に相当し、同表面においてひび割れや欠けが生じていない部分が「加工面の突端部分」に相当する。
【0118】
<付記>
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]工具における加工面の状態を判定する加工面判定装置において、第1時期に判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第1撮像画像、および、前記第1時期よりも後の第2時期に前記判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第2撮像画像、および、工具における加工面の突端部分のみを示す画像である突端画像を学習データとして学習された学習済みの学習器を記憶する記憶部と、前記第1撮像画像、および、前記第2撮像画像、および、前記学習済みの学習器を利用して、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像との差分を示す差分画像から前記加工面の突端部分を抽出した画像である抽出画像を生成する抽出画像生成部と、前記抽出画像における前記加工面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、前記判定対象の工具における劣化異常の発生を判定する判定部と、を備える加工面判定装置。
【0119】
[付記2]前記工具は、研削加工用の砥石である、[付記1]に記載の加工面判定装置。
[付記3]前記砥石は、一般砥粒を有する一般砥石であり、前記抽出画像生成部は、前記抽出画像として、前記第1撮像画像を基準に前記第2撮像画像において前記加工面の突端部分が減少した部分を示す画像を生成するものである、[付記2]に記載の加工面判定装置。
【0120】
[付記4]前記砥石は、超砥粒を有する超砥粒砥石であり、前記抽出画像生成部は、前記抽出画像として、前記第1撮像画像を基準に前記第2撮像画像において前記加工面の突端部分が増加した部分を示す画像を生成するものである、[付記2]に記載の加工面判定装置。
【0121】
[付記5]前記加工面判定装置は、前記加工面に直交する方向から同加工面を撮像する撮像部と、前記加工面における前記撮像部による撮像対象領域を照明する照明部と、を備え、前記照明部は、第1発光色を有する第1照明光を前記加工面に直交する方向から前記撮像対象領域に照射する第1照射部と、前記第1発光色とは異なる第2発光色を有する第2照明光を、前記加工面に沿う方向から前記撮像対象領域に照射する第2照射部と、を有する、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載の加工面判定装置。
【0122】
[付記6][付記1]~[付記5]のいずれか一つに記載の加工面判定装置が具備する前記記憶部、および、前記抽出画像生成部、および、前記判定部の処理を、前記加工面判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラム。
【0123】
[付記7]工具における加工面の状態を判定する加工面判定方法であって、第1時期に判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第1撮像画像と、前記第1時期よりも後の第2時期に前記判定対象の工具の加工面を撮像した画像である第2撮像画像と、工具における加工面の突端部分のみを示す画像である突端画像を学習データとして学習された学習済みの学習器と、を加工面判定装置の記憶部に記憶させる記憶工程と、前記第1撮像画像、および、前記第2撮像画像、および、前記学習済みの学習器を利用して、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像との差分を示す差分画像から前記加工面の突端部分を抽出した画像である抽出画像を生成する抽出画像生成工程と、前記抽出画像における前記加工面の突端部分の分布の偏りが所定レベル以上である場合に、前記判定対象の工具における劣化異常の発生を判定する判定工程と、を備える加工面判定方法。
【符号の説明】
【0124】
20…自動研削装置
21…砥石
211…砥面
212…砥粒
22…砥石支持部
23…基台
24…テーブル
25…作動制御部
26…X軸駆動部
27…Y軸駆動部
28…Z軸駆動部
29…砥石駆動部
30…加工面判定装置
40…カメラユニット
41…カメラ
43…照明部
44…撮像画像
44B…基本画像
44N…最新画像
45…第1照射部
451…第1ランプ
452…反射透光部材
45L…第1照明光
46…第2照射部
461…照明ドーム
462…第2ランプ
46L…第2照明光
50…電子制御装置
51…CPU
52…ROM
53…RAM
54…入力部
55…表示部
56…記憶部
57…抽出画像生成部
58…判定部
60…実行プログラム
61…第1学習器
62…第2学習器
63…学習データ
63B…変換前画像
63A…変換後画像
64…学習データ
65…判定画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13