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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025115513
(43)【公開日】2025-08-07
(54)【発明の名称】ひずみゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20250731BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010001
(22)【出願日】2024-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 育
(72)【発明者】
【氏名】竹中 恒詞
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BD11
2F063CA29
2F063CA30
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063EC03
2F063EC05
2F063EC13
2F063EC14
2F063EC15
2F063EC16
2F063EC20
2F063EC22
(57)【要約】
【課題】経時的に使用した場合であっても電極のはんだ濡れ性に優れるひずみゲージを提供する。
【解決手段】本ひずみゲージは、基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、前記基材上に形成され、前記抵抗体と電気的に接続される電極と、を有し、前記電極は金属層を有し、前記金属層の少なくとも上面は、導電性金属と前記導電性金属よりも耐食性の高い添加金属との合金を有し、前記電極は、その厚み方向について、前記合金における前記添加金属の含有率が異なる部分を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された抵抗体と、
前記基材上に形成され、前記抵抗体と電気的に接続される電極と、を有し、
前記電極は金属層を有し、前記金属層の少なくとも上面は、導電性金属と前記導電性金属よりも耐食性の高い添加金属との合金を有し、
前記電極は、その厚み方向について、前記合金における前記添加金属の含有率が異なる部分を含むことを特徴とするひずみゲージ。
【請求項2】
前記電極の前記合金を有する部分は、基材側から上面側に向かうほど、前記合金における前記添加金属の含有率が高い、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項3】
前記合金を有する部分は、複数の層が積層された構造である、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項4】
前記複数の層は、基材側の層から上面側の層に向かうほど、前記合金における前記添加金属の含有率が高い、請求項3に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
前記添加金属がニッケル又は銀である、請求項1乃至4の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項6】
前記添加金属はニッケルであって、
前記合金における前記添加金属の含有率が、20質量%以上40質量%以下である、請求項5に記載のひずみゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に貼り付けて、測定対象物のひずみを検出するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、基材と、基材上に形成された電極とを備える。基材としては、例えば、絶縁体または絶縁膜などが用いられている。また、電極として、基材側からチタン(Ti)、ニッケル(Ni)及び金(Au)が順次積層された電極なども開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-300649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、経時的に使用した場合であっても電極のはんだ濡れ性に優れるひずみゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本ひずみゲージは、基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、前記基材上に形成され、前記抵抗体と電気的に接続される電極と、を有し、前記電極は金属層を有し、前記金属層の少なくとも上面は、導電性金属と前記導電性金属よりも耐食性の高い添加金属との合金を有し、
前記電極は、その厚み方向について、前記合金における前記添加金属の含有率が異なる部分を含む。
【発明の効果】
【0006】
開示の技術によれば、経時的に使用した場合であっても電極のはんだ濡れ性に優れるひずみゲージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
図3】第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図(その1)である。
図4】第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図(その2)である。
図5】第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図2は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図1及び図2を参照するに、ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、電極40Aとを有している。
【0010】
なお、本実施の形態では、便宜上、図2に示すひずみゲージ1の断面図に示す各部材において、基材10から見て抵抗体30が設けられている側と同じ方向にある側を上側、基材10の抵抗体30が設けられていない側と同じ方向にある側を下側と称することがある。又、各部位の上側の面を上面、下側の面を下面と称することがある。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。
【0011】
本実施の形態において「厚み方向」とは、ひずみゲージ1の基材10が厚みを有している方向と同じ方向のことを意味する。例えば、基材10が平板状の場合、厚み方向とは基材10の上面10aの面法線である。又、平面視とは、ひずみゲージ1全体を上面10a在る側から視ることを指し、平面形状とは対象物を平面視したときの形状を指すものとする。
【0012】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0013】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0014】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0015】
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図1では、便宜上、抵抗体30を梨地模様で示している。
【0016】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Ni-Cu(ニッケル銅)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0017】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0018】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0019】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0020】
電極40Aは、抵抗体30の両端部から延在している。電極40Aの形状は特に限定されないが、例えば、電極40Aは平面視において、抵抗体30よりも拡幅して略矩形状に形成される。電極40Aは、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。抵抗体30は、例えば、電極40Aの一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の電極40Aに電気的に接続されている。図1の例では、このジグザグに折り返している部分が、ひずみゲージ1における受感部であり、そのグリッド方向は平面視においてA-A方向と並行な方向である。また、抵抗体30の両端部は、抵抗体30の受感部と電極40Aを電気的に接続する配線部であるともいえる。
【0021】
電極40Aは、抵抗体30の両端部から延在する端子部41と、端子部41の上面に形成された金属層43とを有している。なお、抵抗体30と端子部41とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0022】
電極40Aの金属層43は導電性金属を含有している。また、金属層43の少なくとも上面は、導電性金属と導電性金属よりも耐食性の高い添加金属との合金を有する。例えばひずみゲージ1が図1に示す形状である場合、端子部41の上面に形成される金属層43の上面の少なくとも一部が、前述の合金から成る。ここで、「耐食性」とは、金属の錆びにくさを意味しており、「導電性金属よりも耐食性の高い」とは、導電性金属よりもイオン化傾向が小さいこと、又は、導電性金属よりもイオン化傾向が大きいが酸素と結合することで表面に不動態被膜を形成すること、を意味する。
【0023】
金属層43が導電性金属を含有することで、電極40Aは導電性を有する。また、金属層43の上面の少なくとも一部が前述の合金から成ることで、ひずみゲージ1を経時的に使用した場合であっても、上面の合金の部分は酸化しにくい。したがって、本実施の形態に係るひずみゲージ1は、ひずみゲージ1を経時的に使用した場合であっても電極40Aのはんだ濡れ性が低下しづらく、よってはんだ濡れ性に優れているといえる。
【0024】
導電性金属は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cu、Niなどが挙げられる。金属層43の厚さは、電極40Aへのはんだ付け性を考慮して決定されてよい。金属層43の厚さは、好ましくは1μm以上である。例えば、金属層43の材料としてCu、Cu合金、Ni、又はNi合金を用い、且つ、金属層43の厚さを1μm以上とすることで、電極40Aのはんだ食われが改善される。
【0025】
ここで、はんだ食われとは、電極40Aを構成する材料が、電極40Aに接合されるはんだの中に溶解し、電極40Aの厚みが薄くなったり、なくなったりすることである。はんだ食われが発生すると、電極40Aに接合されるリード線等との接着強度や引張り強度が低下するおそれがあるため、はんだ食われが発生しない(又は、はんだ食われが少ない)ことが好ましい。
【0026】
添加金属は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、添加金属の一例として、Ag、Pt、Au、Fe、Cr、Co、Zn、Snなどが挙げられる。また、導電性金属がCuである場合、添加金属としてNiも好適に用いることができる。
【0027】
第1の実施の形態においては、一例として添加金属は1種類とする。なお、後述の無電解めっき法等の方法で合金の金属層を形成する場合、形成する金属層と他の層との間に添加金属の濃縮膜(所謂、リッチ膜)が形成されることがある。しかしながら、リッチ膜はごく薄い膜であり、本開示に係るひずみゲージの作用及び効果にはほぼ影響しない。したがって、本明細書及び図面では、ひずみゲージにおけるリッチ膜の有無、及びリッチ膜が存在する場合の構成については特段言及しない。また、本開示において「金属層」はリッチ膜を含まない。
【0028】
合金における添加金属の含有率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%以上40質量%以下が好ましい。これにより、上面側では添加金属の含有率が高いためひずみゲージのはんだ濡れ性に優れ、かつ、電極内部では導電性金属の含有率が高いため導電性にも優れる。また、電極の前記合金を有する部分は、基材側から上面側に向かうほど、前記合金における前記添加金属の含有率が高いことが好ましい。
【0029】
電極40Aの金属層43は、その厚み方向について、導電性金属と添加金属との合金における添加金属の含有率が異なる部分を含む。
【0030】
ここで、「添加金属の含有率が異なる部分を含む」とは、例えば、添加金属の含有率が異なる層が複数積層されていたり、添加金属の含有率が、合金中において段階的に異なるグラデーション構造を形成していたりする場合が挙げられる。
【0031】
なお、平面視において、金属層43の周囲に端子部41が露出しているが、端子部41は金属層43と同一の平面形状であっても構わない。
【0032】
また、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し且つ電極40Aを露出するように、カバー層60(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、電極40Aを除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0033】
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0034】
図3及び図4は、第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図であり、図2に対応する断面を示している。ひずみゲージ1を製造するためには、まず、図3(a)に示す工程では、基材10を準備し、基材10の上面10aに抵抗前駆体層300を形成する。抵抗前駆体層300は、最終的にパターニングされて抵抗体30及び端子部41となる層である。従って、抵抗前駆体層300の材料や厚さは、前述の抵抗体30及び端子部41の材料や厚さと同様である。
【0035】
抵抗前駆体層300は、例えば、抵抗前駆体層300を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。抵抗前駆体層300は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0036】
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗前駆体層300を成膜する前に、基材10の上面10aに下地層を成膜してもよい。この下地層は、例えば、膜厚が1nm~100nm程度の機能層であってよい。機能層は、コンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。
【0037】
本開示において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗前駆体層300(抵抗体30等)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗前駆体層300の酸化を防止する機能、及び/又は基材10と抵抗前駆体層300との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0038】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗前駆体層300がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗前駆体層300の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0039】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗前駆体層300(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層の材料として、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0040】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0041】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0042】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0043】
機能層の材料と抵抗前駆体層300の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗前駆体層300としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0044】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗前駆体層300を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗前駆体層300を成膜してもよい。
【0045】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0046】
なお、抵抗前駆体層300がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗前駆体層300の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗前駆体層300の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗前駆体層300との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0047】
このように、抵抗前駆体層300の下層に機能層を設けることにより、抵抗前駆体層300の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗前駆体層300を作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗前駆体層300に拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上することができる。
【0048】
次に、図3(b)に示す工程では、抵抗前駆体層300の上面の全面に感光性のレジスト800を形成し、露光及び現像して金属層43を形成する領域を露出する開口部800xを形成する。レジスト800としては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0049】
次に、図3(c)に示す工程では、例えば、無電解めっき法により、開口部800x内に露出する抵抗前駆体層300上に金属層43を形成する。なお、無電解めっき法によって金属層43を形成する際には、1つのめっき浴内で、めっき液中の導電性金属と添加金属の濃度比率を変えながら無電解めっきを行う。これにより、形成後の電極は、その厚み方向について、導電性金属と添加金属との合金における添加金属の含有率が異なる部分を含む構成となる。
【0050】
次に、図4(a)に示す工程では、図3(c)に示すレジスト800を除去する。レジスト800は、例えば、レジスト800の材料を溶解可能な溶液に浸漬することで除去できる。
【0051】
次に、図4(b)に示す工程では、抵抗前駆体層300の上面の全面に感光性のレジスト810を形成し、露光及び現像して、図1の抵抗体30及び端子部41と同様の平面形状にパターニングする。レジスト810としては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0052】
次に、図4(c)に示す工程では、レジスト810をエッチングマスクとし、レジスト810から露出する抵抗前駆体層300を除去し、図1の平面形状の抵抗体30及び端子部41を形成する。例えば、ウェットエッチングにより、抵抗前駆体層300の不要な部分を除去できる。抵抗前駆体層300の下層に機能層が形成されている場合には、エッチングによって機能層は抵抗体30及び端子部41と同様に図1に示す平面形状にパターニングされる。なお、この時点では、抵抗体30上にシード層420が形成されている。
【0053】
図4(c)に示す工程により、ひずみゲージ1が完成する。なお、図4(c)に示す工程の後、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し電極40Aを露出するカバー層60を設けてもよい。ひずみゲージ1が完成する。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し電極40Aを露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、これを加熱して硬化させることで作製することができる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し電極40Aを露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、これを加熱して硬化させることで作製してもよい。
【0054】
このように、端子部41上に導電性金属と添加金属との合金の厚膜(1μm以上)を有する金属層43を形成することで、電極40Aのはんだ食われを防止できると共に、はんだ濡れ性を向上できる。
【0055】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態とは層構造の異なる電極の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0056】
図5は、第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図2に対応する断面を示している。図5を参照するに、ひずみゲージ1Aは、電極40Aが電極40Bに置換された点がひずみゲージ1(図2等参照)と相違する。なお、カバー層60は、電極40Bを除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0057】
電極40Bは、複数の金属層が積層された積層構造である。具体的には、電極40Bは、抵抗体30の両端部から延在する端子部41と、端子部41の上面に形成された金属層43と、金属層43の上面に形成された金属層44とを有している。
【0058】
なお、図5では、複数の金属層として、金属層43及び金属層44の2層構造とされているが、金属層の層数は全体として2層以上であれば特に制限はなく目的に応じて適宜定めることができる。
【0059】
金属層44の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、金属層44の材料として、金属層43と同じ材料を用いることができる。金属層44の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、金属層44の厚さは、1μm~2μm程度とすることができる。
【0060】
金属層43及び金属層44は、図3(c)に示す工程で、例えば、無電解めっき法により形成することができる。
【0061】
なお、無電解めっき法によって金属層43及び金属層44を形成する際には、複数の無電解めっき浴を順次用いて無電解めっきを行う。例えば、導電性金属と添加金属が任意の濃度比率である第1のめっき浴中で無電解めっきを行って金属層43を形成した後に、上記濃度比率とは異なる第2のめっき浴中で無電解めっきを行って金属層44を形成することができる。これにより、形成後の電極は、その厚み方向について、導電性金属と添加金属との合金における添加金属の含有率が異なる複数の層を含む構成となる。
【0062】
なお、合金を有する部分は、3つ以上のめっき浴を用いて無電解めっきを行うことで、3層以上の層が積層された構造とすることができる。
【0063】
複数の金属層(金属層43、金属層44等)は、基材側の層から上面側の層に向かうほど前記合金における前記添加金属の含有率が高いことが好ましい。これにより、上面側の層は基材側の層と比較して添加金属の含有率が多いため、ひずみゲージのはんだ濡れ性に優れるという性質を持つ。一方、基材側の層は上面側の層と比較して導電性金属の含有率が高いため、導電性に優れるという性質を持つ。
【0064】
複数の金属層のそれぞれの膜厚は、特に制限はなく目的に応じて適宜定めることができる。例えば、電極の抵抗値を低くして導電性を向上させる観点から膜厚を定める場合、電極40Aの最上面の金属層44は、最上面ではない他の金属層よりも薄い方が好ましい。
【0065】
以上、実施の形態及び変形例について詳説した。しかしながら、本開示に係るひずみゲージの構成は、上述した実施の形態及び変形例に制限されない。本開示に係るひずみゲージは、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えて実現することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B ひずみゲージ、10 基材、10a 上面、30 抵抗体、41 端子部、40A、40B 電極、43、44 金属層、60 カバー層
図1
図2
図3
図4
図5