(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001156
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両用灯具、及び車両用灯具用のハウジング
(51)【国際特許分類】
F21S 45/00 20180101AFI20241225BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F21S45/00
G01S7/03 240
G01S7/03 246
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100595
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山口 実
(72)【発明者】
【氏名】金近 正之
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AF03
5J070AK16
(57)【要約】
【課題】レーダユニットが送信するミリ波の一部がアウターレンズの内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる車両用灯具等提供する。
【解決手段】車両用灯具10であって、ハウジング20と、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングとの間に灯室S0を形成するアウターレンズ30と、前記灯室に配置される灯具ユニットと、前記灯室に配置され、ミリ波を送受するレーダユニット70と、前記ミリ波を減衰させる構造物21と、を備え、前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射される前記ミリ波Ar2が入射する領域に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングとの間に灯室を形成するアウターレンズと、
前記灯室に配置される灯具ユニットと、
前記灯室に配置され、ミリ波を送受するレーダユニットと、
前記ミリ波を減衰させる構造物と、を備え、
前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射される前記ミリ波が入射する領域に形成されている車両用灯具。
【請求項2】
前記アウターレンズは、後方に傾斜した傾斜部を含み、
前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記傾斜部で反射された前記ミリ波が入射する領域に形成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記構造物は、格子状に配置された多角錐形状の複数の個別構造物を含み、
前記個別構造物は、底面側が前記ハウジング側に配置され、頂点側が前記アウターレンズ側に配置されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ミリ波の波長をλとした場合、前記個別構造物の高さは、1/4・λである請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記ハウジングのうち前記構造物が形成された領域は、前記傾斜部に沿うように傾斜している請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ハウジングは、ポリプロピレン製である請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
ハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングとの間に灯室を形成するアウターレンズと、
前記灯室に配置される灯具ユニットと、
前記灯室に配置され、ミリ波を送受するレーダユニットと、
前記ミリ波を拡散反射させる構造物と、を備え、
前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射される前記ミリ波が入射する領域に形成されている車両用灯具。
【請求項8】
前記構造物が形成された領域は、傾斜面または湾曲面である請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記拡散反射させる構造物は、多角錐形状の複数の個別構造物である請求項7又は8に記載の車両用灯具。
【請求項10】
個々の前記個別構造物は、傾斜した状態で前記ミリ波が入射する領域に形成されている請求項9に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記拡散反射させる構造物は、円錐形状の複数の個別構造物である請求項7又は8に記載の車両用灯具。
【請求項12】
アウターレンズが取り付けられ、当該アウターレンズとの間に灯室を形成する車両用灯具用のハウジングであって、
ミリ波を減衰させる構造物を備え、
前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記灯室内に配置されるレーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射されるミリ波が入射する領域に形成されている車両用灯具用のハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具、及び車両用灯具用のハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングとこのハウジングに取り付けられたアウターレンズとの間に形成された灯室内に配置されたレーダユニットを備えた車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。レーダユニットは、ミリ波をアウターレンズを介して車両周辺に送信し、送信範囲内に存在する対象物からの反射波をアウターレンズを介して受信することにより、対象物を検出するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、上記のように送信されるミリ波の一部が、アウターレンズの内面で反射され、ハウジングを透過して車両用灯具後方に配置された車両側構造物(例えば、車体フレーム)で反射され、再度ハウジングを透過してアウターレンズの内面で反射され、レーダユニットで受信される場合がある。この場合、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるという課題がある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、レーダユニットが送信するミリ波の一部がアウターレンズの内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる車両用灯具、及び車両用灯具用のハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる車両用灯具は、ハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングとの間に灯室を形成するアウターレンズと、前記灯室に配置される灯具ユニットと、前記灯室に配置され、ミリ波を送受するレーダユニットと、前記ミリ波を減衰させる構造物と、を備え、前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射される前記ミリ波が入射する領域に形成されている。
【0007】
このような構成により、レーダユニットが送信するミリ波の一部がアウターレンズの内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる。
【0008】
これは、ハウジングのうちレーダユニットから送信されアウターレンズの内面で反射されたミリ波が入射する領域に、ミリ波を減衰させる構造物を形成したことによるものである。
【0009】
また、上記車両用灯具においては、前記アウターレンズは、後方に傾斜した傾斜部を含み、前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記傾斜部で反射された前記ミリ波が入射する領域に形成されていてもよい。
【0010】
また、上記車両用灯具においては、前記構造物は、格子状に配置された多角錐形状の複数の個別構造物を含み、前記個別構造物は、底面側が前記ハウジング側に配置され、頂点側が前記アウターレンズ側に配置されていてもよい。
【0011】
また、上記車両用灯具においては、前記ミリ波の波長をλとした場合、前記個別構造物の高さは、1/4・λであってもよい。
【0012】
また、上記車両用灯具においては、前記ハウジングのうち前記構造物が形成された領域は、前記傾斜部に沿うように傾斜していてもよい。
【0013】
また、上記車両用灯具においては、前記ハウジングは、ポリプロピレン製であってもよい。
【0014】
本開示にかかる別の車両用灯具は、ハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングとの間に灯室を形成するアウターレンズと、前記灯室に配置される灯具ユニットと、前記灯室に配置され、ミリ波を送受するレーダユニットと、前記ミリ波を拡散反射させる構造物と、を備え、前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記レーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射される前記ミリ波が入射する領域に形成されている。
【0015】
このような構成により、レーダユニットが送信するミリ波の一部がアウターレンズの内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる。
【0016】
これは、ハウジングのうちレーダユニットから送信されアウターレンズの内面で反射されたミリ波が入射する領域に、ミリ波を拡散反射させる構造物を形成したことによるものである。
【0017】
また、上記車両用灯具においては、前記構造物が形成された領域は、傾斜面または湾曲面であってよい。
【0018】
また、上記車両用灯具においては、前記拡散反射させる構造物は、多角錐形状の複数の個別構造物であってよい。
【0019】
また、上記車両用灯具においては、個々の前記個別構造物は、傾斜した状態で前記ミリ波が入射する領域に形成されていてもよい。
【0020】
また、上記車両用灯具においては、前記拡散反射させる構造物は、円錐形状の複数の個別構造物であってよい。
【0021】
本開示にかかる車両用灯具用のハウジングは、アウターレンズが取り付けられ、当該アウターレンズとの間に灯室を形成する車両用灯具用のハウジングであって、ミリ波を減衰させる構造物を備え、前記構造物は、前記ハウジングのうち、前記灯室内に配置されるレーダユニットから送信され前記アウターレンズで反射されるミリ波が入射する領域に形成されている。
【0022】
このような構成により、レーダユニットが送信するミリ波の一部がアウターレンズの内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる。
【0023】
これは、ハウジングのうちレーダユニットから送信されアウターレンズの内面で反射されたミリ波が入射する領域に、ミリ波を減衰させる構造物を形成したことによるものである。
【発明の効果】
【0024】
本開示により、レーダユニットが送信するミリ波の一部がアウターレンズの内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる車両用灯具、及び車両用灯具用のハウジングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】車両に搭載された車両用灯具10近傍の正面図である。
【
図3】実際には存在しない対象物V0(ゴーストターゲット)が検出される原因を説明するための図である。
【
図4】構造物21(個別構造物21a)の拡大部分断面図である。
【
図5】構造物21に入射し個別構造物21aの基端部側(谷間側)で再帰反射するミリ波E1と構造物21に入射し個別構造物21aの先端部側で再帰反射するミリ波E2が相殺される様子を表す図である。
【
図6】個別構造物21aの高さH1と傾斜面の角度設定の条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態である車両用灯具について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0027】
本実施形態の車両用灯具10は、ヘッドランプとして機能する車両用灯具で、自動車等の車両(図示せず)の前端部の左右両側にそれぞれ搭載される。左右両側に搭載される車両用灯具10は左右対称の構成であるため、以下、代表して、車両の前端部の左側(車両前方に向かって左側)に搭載される車両用灯具10について説明する。
【0028】
図1は車両に搭載された車両用灯具10の正面図、
図2は
図1のA-A断面図である。
【0029】
図1、
図2に示すように、車両用灯具10は、ハウジング20、アウターレンズ30、第1灯具ユニット40、第2灯具ユニット50A、50B、リフレックスリフレクタ60、レーダユニット70を備える。
【0030】
ハウジング20は、例えば、ポリプロピレン製である。なお、ハウジング20は、ポリプロピレン以外の合成樹脂製であってよい。また、ハウジング20は、ポリプロピレン以外の成分(例えば、カーボン)を含んでいてもよい。
【0031】
アウターレンズ30は、例えば、ポリカーボネイト製である。なお、アウターレンズ30は、ポリカーボネイト以外の透明樹脂製であってよい。アウターレンズ30は、ハウジング20に取り付けられて当該ハウジング20との間に灯室S0(
図2参照)を形成する。
図1、
図2に示すように、アウターレンズ30は、その車幅方向外側に湾曲部C1を介して車両後方側に傾斜した傾斜部31を含む。
【0032】
第1灯具ユニット40、第2灯具ユニット50A、50B、リフレックスリフレクタ60、レーダユニット70は、灯室S0内に配置されている。
【0033】
第1灯具ユニット40は、正面視で、車幅方向内側に配置されている(
図1参照)。第1灯具ユニット40は、ヘッドランプとして機能する灯具ユニットである。第1灯具ユニット40は、ヘッドランプとして機能する灯具ユニットであればどのような構成でもよい。第1灯具ユニット40が発光した光はアウターレンズ30を透過して照射される。
【0034】
リフレックスリフレクタ60(以下、RR60と記載する)は、正面視で、車幅方向外側に配置されている(
図1参照)。RR60は、他車から照射される光をその照射方向に反射(再帰反射)する反射器で、他車に自車の存在を知らせる標識として機能する。
【0035】
レーダユニット70(レーダ装置)は、正面視で、第1灯具ユニット40とRR60との間に配置されている(
図1参照)。レーダユニット70は、ケース、このケース内に収容される送信アンテナ、受信アンテナ(いずれも図示せず)等を有する。レーダユニット70は、送信アンテナから電磁波(ミリ波)を送信するミリ波レーダユニットである。電磁波(ミリ波)は、アウターレンズ30を透過して、水平方向の広がり角θ
H(
図2参照)、垂直方向の広がり角θ
V(図示せず)の範囲に送信される。広がり角θ
Hは例えば75度、広がり角θ
Vは例えば10度である。
図2中矢印Ar1、Ar2は、水平方向の広がり角θ
Hの範囲に送信されるミリ波の一例である。そして、レーダユニット70は、その送信範囲内に存在する対象物によって反射されアウターレンズ30を透過した反射波を受信アンテナによって受信する。受信された信号は制御装置、例えば、図示しないECU(Electronic Control Unit)によって信号処理が行われ、対象物(対象物との間の距離、角度、速度)が検出される。レーダユニット70においては、例えば76-81GHz帯のミリ波、特に79GHz帯のミリ波が用いられるが、この周波数帯に限定されない。
【0036】
なお、レーダユニット70のレーダ方式は、パルス方式、CW(Continuous Wave)方式のいずれであってもよいし、その他の方式であってもよい。また、レーダユニット70のアンテナ方式は、機械走査方式、ビーム切り替え方式、フェーズドアレー方式、ディジタルフォーミング方式のいずれであってもよいし、その他の方式であってもよい。
【0037】
第2灯具ユニット50Aは、第1灯具ユニット40及びレーダユニット70の上方に配置されている(
図1参照)。第2灯具ユニット50Aは、例えば、ターンランプ、ポジションランプとして機能する灯具ユニットである。第2灯具ユニット50Aは、ターンランプ、ポジションランプとして機能する灯具ユニットであればどのような構成でもよい。第2灯具ユニット50Aが発光した光はアウターレンズ30を透過して照射される。
【0038】
第2灯具ユニット50Bは、第1灯具ユニット40及びレーダユニット70の下方に配置されている(
図1参照)。第2灯具ユニット50Bは、例えば、DRLランプとして機能する灯具ユニットである。第2灯具ユニット50Bは、DRLランプとして機能する灯具ユニットであればどのような構成でもよい。第2灯具ユニット50Bが発光した光はアウターレンズ30を透過して照射される。
【0039】
上記のように第1灯具ユニット40、RR60及びレーダユニット70を灯室S0内に配置することにより、
図1に示すように、正面視で、第1灯具ユニット40の車幅方向内側の第1スペースS1、第1灯具ユニット40とレーダユニット70との間の第2スペースS2、レーダユニット70とRR60との間の第3スペースS3が形成されている。これらスペースS1~S3は灯室S0の一部である。なお、これらスペースS1~S3を覆うエクステンション(図示せず)を灯室S0内に配置してもよい。
【0040】
図3は、実際には存在しない対象物V0(ゴーストターゲット)が検出される原因を説明するための図である。
【0041】
図3に示すように、上記のように送信されるミリ波の一部(
図3中矢印Ar2参照)は、アウターレンズ30(特に、傾斜部31)の内面で反射され、ハウジング20を透過して車両用灯具10後方に配置された車両側構造物80(例えば、車体フレーム)で反射され、再度ハウジング20を透過してアウターレンズ30の内面で反射され、レーダユニット70で受信される場合がある。この場合、実際には存在しない対象物V0(ゴーストターゲット)が検出されるという課題がある。
【0042】
この課題を解決するため、
図2に示すように、ハウジング20にはミリ波を減衰させる構造物21が形成されている。構造物21は、ハウジング20のうちレーダユニット70から送信されアウターレンズ30(特に、傾斜部31)の内面で反射されたミリ波が入射する領域に形成されている。この領域は、ハウジング20のうち、例えば、正面視で、スペースS1、S2、S3(
図1参照)に対応する領域である。
【0043】
構造物21は、格子状に配置された(
図2中円C内の拡大部分斜視図参照)四角錐形状の複数の個別構造物21aを含む。各々の個別構造物21aは、底面側がハウジング20側に配置され、頂点側がアウターレンズ30側に配置されている。
図4に示すように、個別構造物21aの高さはH1、頂点と頂点の間隔はL1である。高さH1及び間隔L1は、1/4・λである。但し、λは、ミリ波の波長である。
図4は、構造物21(個別構造物21a)の拡大部分断面図である。
【0044】
図5は、構造物21に入射し個別構造物21aの基端部側(谷間側)で再帰反射するミリ波E1と構造物21に入射し個別構造物21aの先端部側で再帰反射するミリ波E2が相殺される様子を表す図である。
図5中符号E1は、レーダユニット70から送信されアウターレンズ30(特に、傾斜部31)の内面で反射され構造物21に入射し個別構造物21aの基端部側(谷間側)で再帰反射するミリ波(反射波)を表す。一方、符号E2は、レーダユニット70から送信されアウターレンズ30(特に、傾斜部31)の内面で反射され構造物21に入射し個別構造物21aの先端部側で再帰反射するミリ波を表す。
【0045】
上記のように、構造物21を構成及び配置することにより、構造物21に入射し再帰反射するミリ波E1の位相は、最大1/2・λずれる。このミリ波E1及びミリ波E2は、互いに干渉することにより相殺される。
【0046】
なお、個別構造物21aの高さH1は、個別構造物21aの基端部側で反射されるミリ波E1と個別構造物21aの先端部側で反射されるミリ波E1とが互いに逆位相となる高さに設定するのが望ましい。例えば、個別構造物21aの高さH1と傾斜面の角度設定は、A-(2×B+C)≒λ/2になるように設定するのが望ましい。但し、Aは、
図6に示すように、互いに隣接する個別構造物21aの頂点側の任意の点p1間の距離を表す。一方、Bは、
図6に示すように、互いに隣接する個別構造物21aの基端部側(谷間側)の任意の点p2間の距離を表す。また、Cは、点p1と点p2間の距離を表す。
図6は、個別構造物21aの高さH1と傾斜面の角度設定の条件を説明するための図である。このようにすれば、個別構造物21aの基端部側で反射されるミリ波E1及び個別構造物21aの先端部側で反射されるミリ波E2は、互いに逆位相で重ね合うこととなるため、互いに干渉することにより相殺される。すなわち、角錐の傾斜面の設定と角錐の底面から頂点の高さの設定により、谷間付近で再帰反射したミリ波E1と傾斜面で再帰反射したミリ波E2(別のミリ波)がほぼλ/2の反射位相を持つため効率よく相殺される。
【0047】
上記相殺が効率よく発生するように(再帰反射するミリ波E1が増加するように)、ハウジング20のうち構造物21が形成された領域A1は、
図5に示すように、アウターレンズ30(傾斜部31)に沿うように傾斜させるのが望ましい。
【0048】
以上のようにミリ波E1(反射波)が相殺されることにより、ハウジング20を透過するミリ波が減少する。これにより、車両側構造物80(例えば、車体フレーム)で反射され、再度ハウジング20を透過してアウターレンズ30の内面で反射され、レーダユニット70で受信されるミリ波が減少する。その結果、実際には存在しない対象物の検出が防止される。
【0049】
なお、構造物21に入射するミリ波E1が様々な方向に反射(拡散反射)されるように、ハウジング20の構造物21(複数の個別構造物21a)が形成された領域A1は、傾斜面としてもよい。又は、構造物21に入射するミリ波E1が様々な方向に反射(拡散反射)されるように、ハウジング20の構造物21(複数の個別構造物21a)が形成された領域A1は、湾曲面としてもよい。又は、構造物21に入射するミリ波E1が様々な方向に反射(拡散反射)されるように、個々の個別構造物21a(例えば、側面又は頂点の方向)を傾斜させてもよい。例えば、個々の個別構造物21a(例えば、側面又は頂点の方向)を、基準となる四角錐形状(例えば、正四角錐形状)に対して傾斜させてもよい。その際、個々の個別構造物21aは、同一方向に傾斜していてもよいし、互いに異なる方向に傾斜していてもよい。また、個々の個別構造物21aは、四角錐形状に限らず、構造物21に入射するミリ波E1が様々な方向に反射(拡散反射)されるように、円錐形状であってもよい。また、領域A1は、上記傾斜面、上記湾曲面を組み合わせたものであってもよい。また、上記傾斜した個々の個別構造物21a、個々の円錐形状の個別構造物21aのうち少なくとも一方又は両方を、領域A1に形成してもよい。
【0050】
このようにすれば、アウターレンズ30(特に、傾斜部31)の内面で反射され、構造物21に入射するミリ波E1が構造物21で様々な方向に反射(拡散反射)されるため、再度アウターレンズ30の内面で反射され、レーダユニット70で受信されるミリ波が減少する。その結果、実際には存在しない対象物の検出が防止される。
【0051】
なお、ハウジング20の厚さH2(
図2参照)は、ハウジング20中のミリ波の波長λc/4の奇数倍とするのが望ましい。
【0052】
このようにすれば、ハウジング20を透過するミリ波が減少する。これにより、車両側構造物80(例えば、車体フレーム)で反射され、再度ハウジング20を透過してアウターレンズ30の内面で反射され、レーダユニット70で受信されるミリ波が減少する。その結果、実際には存在しない対象物の検出が防止される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、レーダユニット70が送信するミリ波の一部がアウターレンズ30の内面で反射されることに起因して、実際には存在しない対象物(ゴーストターゲット)が検出されるのを防止することができる。
【0054】
これは、ハウジング20のうちレーダユニット70から送信されアウターレンズ30(特に、傾斜部31)の内面で反射されたミリ波が入射する領域に、ミリ波を減衰させる構造物21を形成したことによるものである。
【0055】
次に変形例について説明する。
【0056】
上記実施形態では、構造物21として、四角錐形状の個別構造物21aを用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、構造物21として、三角錐形状、5角錐形状等の多角錐形状の個別構造物を用いてもよい。これによっても四角錐形状の個別構造物21aを用いる場合と同様の効果を奏することができる。
【0057】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0058】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本開示は限定的に解釈されるものではない。本開示はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…車両用灯具
20…ハウジング
21…構造物
21a…個別構造物
30…アウターレンズ
31…傾斜部
40…第1灯具ユニット
50A、50B…第2灯具ユニット
60…RR(リフレックスリフレクタ)
70…レーダユニット
80…車両側構造物
E1、E2…ミリ波
S0…灯室
S1-S3…スペース
V0…対象物
θH…広がり角
θV…広がり角