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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011565
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】二次電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20250117BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20250117BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/262 Z
H01M50/291
H01M50/211
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113752
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木下 智博
(72)【発明者】
【氏名】清水 航
(72)【発明者】
【氏名】星川 渉
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AA36
5H040AS07
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY10
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】充放電によって体積が変動する二次電池を用いても、サイクル特性が優れる二次電池モジュールを提供すること。
【解決手段】複数個の二次電池を積層した電池積層体と、前記電池積層体の積層方向の両端に配置された一対のエンドプレートと、を有する二次電池モジュールであって、隣接する前記二次電池の間及び前記電池積層体と前記エンドプレートとの間の少なくとも一方に配置される緩衝材をさらに備え、前記電池積層体の積層方向に直交する第1方向において、前記緩衝材の一方の端部は前記積層方向の長さが大きい厚肉部とされ、他方の端部は前記積層方向の長さが前記厚肉部よりも小さい薄肉部とされている、二次電池モジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の二次電池を積層した電池積層体と、前記電池積層体の積層方向の両端に配置された一対のエンドプレートと、を有する二次電池モジュールであって、
隣接する前記二次電池の間及び前記電池積層体と前記エンドプレートとの間の少なくとも一方に配置される緩衝材をさらに備え、
前記電池積層体の積層方向に直交する第1方向において、前記緩衝材の一方の端部は前記積層方向の長さが大きい厚肉部とされ、他方の端部は前記積層方向の長さが前記厚肉部よりも小さい薄肉部とされている、二次電池モジュール。
【請求項2】
前記二次電池は、充放電によって体積が変動する、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項3】
前記緩衝材の前記薄肉部は前記第1方向に沿って先細るように傾斜しており、前記厚肉部に対する前記薄肉部の傾斜角度は0.057~1.15度である、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項4】
前記積層方向と前記第1方向とに直交する第2方向において、前記緩衝材の前記厚肉部は中央を頂点とする円弧状とされている、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項5】
前記緩衝材は、前記積層方向と前記第1方向とに直交する第2方向と、前記第1方向と、に沿う面に溝が設けられていて、
前記面の前記第1方向における長さをAとし、前記第2方向における長さをCとして、
前記溝は、前記第1方向における前記厚肉部側端部の前記第2方向の中央点と、前記第1方向の薄肉部側端部の前記第2方向の両端から前記厚肉部側に向かって2/3Aの長さまで位置にある2つの点とを結ぶ曲線状であるか、又は、前記中央点と、前記第1方向の薄肉部側端部の両端から前記第2方向に向かって1/5Cの長さまでの位置にある2つの点とを結ぶ曲線状である、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項6】
前記緩衝材は、前記薄肉部が前記厚肉部よりも重力方向の上側に位置するように配置されている、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項7】
前記二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して積層した電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び電解液を収容する包装体と、を有し、
前記二次電池は、前記電極積層体の積層方向が前記電池積層体の積層方向に一致するように配置されている、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項8】
前記負極は、充電によって体積が増加し、放電によって体積が減少する、請求項7に記載の二次電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池モジュールに関する研究開発が行われている。二次電池モジュールは、複数個の二次電池を組み合わせてモジュール化したものであり、一般に、複数個の二次電池を積層したセル積層体と、セル積層体の積層方向の両端に配置された一対のエンドプレートとを含む。二次電池モジュールは、電気自動車やハイブリッド電気自動車のモータ駆動用等、大電流、高電圧を要する用途に用いられる。
【0003】
二次電池モジュールでは、二次電池と二次電池との間やセル積層体とエンドプレートとの間に緩衝材を配置して、バッテリセルの積層方向に荷重(拘束力)を付与することが検討されている。緩衝材としては、板ばねや液体ばねなどのばね弾性体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-96974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池モジュールに関する技術においては、電気容量の向上が課題である。二次電池の電気容量の向上のため、二次電池として、正極と負極とをセパレータを介して積層させた電極積層体と電解液とを外装体に収容したものを用い、負極の負極活物質としてリチウム金属やシリコン粒子を用いることが検討されている。しかしながら、リチウム金属やシリコン粒子を用いたリチウム二次電池は、充電時に負極の体積が大きく増加し、放電時に負極の体積が大きく減少する。このため、充放電サイクルを繰り返すと、電極積層体の内部から電解液が電極積層体と外装体との間に流出して、電極積層体の電解液が不足する液枯れが起こり、サイクル特性が低下するおそれがある。
【0006】
本願は上記課題の解決のため、充放電によって体積が変動する二次電池を用いても、サイクル特性が優れる二次電池モジュールを提供することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、二次電池と二次電池との間やセル積層体とエンドプレートとの間に、一方の端部は厚みが大きい厚肉部とされ、他方の端部は前記厚肉部よりも厚みが小さい薄肉部とされている緩衝材を配置することによって、上記の課題を解決することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は次のものを提供する。
【0008】
(1)複数個の二次電池を積層した電池積層体と、前記電池積層体の積層方向の両端に配置された一対のエンドプレートと、を有する二次電池モジュールであって、隣接する前記二次電池の間及び前記電池積層体と前記エンドプレートとの間の少なくとも一方に配置される緩衝材をさらに備え、前記電池積層体の積層方向に直交する第1方向において、前記緩衝材の一方の端部は前記積層方向の長さが大きい厚肉部とされ、他方の端部は前記積層方向の長さが前記厚肉部よりも小さい薄肉部とされている、二次電池モジュール。
【0009】
(1)の二次電池モジュールによれば、緩衝材が厚肉部と薄肉部とを有するので、二次電池の体積の変動量に合わせて緩衝材の潰れ量が変化し、これにより、二次電池に付与される拘束力を制御することが可能となるので、充放電時の二次電池内の電解液の流れを調整することができる。このため、(1)の二次電池モジュールによれば、充放電によって体積が変動する二次電池を用いても、電解液の液枯れが起こりにくく、サイクル特性が優れる。
【0010】
(2)前記二次電池は、充放電によって体積が変動する、上記(1)に記載の二次電池モジュール。
【0011】
(2)の二次電池モジュールによれば、二次電池は充放電によって体積が変動しても、その体積の変動量に応じて緩衝材が潰れることによって、二次電池内の電解液の移動方向を調整することができるので、電解液の液枯れが起こりにくく、サイクル特性が優れる。
【0012】
(3)前記緩衝材の前記薄肉部は前記第1方向に沿って先細るように傾斜しており、前記厚肉部に対する前記薄肉部の傾斜角度は0.057~1.15度である、上記(1)又は(2)に記載の二次電池モジュール。
【0013】
(3)の二次電池モジュールによれば、連続的に緩衝材の薄肉部の潰れ量を調整することができるため、より確実に電解液の液枯れが発生しないように、二次電池に付与される拘束力を調整することができる。
【0014】
(4)前記積層方向と前記第1方向とに直交する第2方向において、前記緩衝材の前記厚肉部は中央を頂点とする円弧状とされている、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の二次電池モジュール。
【0015】
(4)の二次電池モジュールによれば、二次電池の体積が増加したときは二次電池内の電解液が第2方向に流れやすくなる。また、二次電池の体積が減少したときは、電解液が第2方向から二次電池内の電極に侵入するため、二次電池の電極内に電解液を均等に供給することが可能となる。
【0016】
(5)前記緩衝材は、前記積層方向と前記第1方向とに直交する第2方向と、前記第1方向と、に沿う面に溝が設けられていて、前記面の前記第1方向における長さをAとし、前記第2方向における長さをCとして、前記溝は、前記第1方向における前記厚肉部側端部の前記第2方向の中央点と、前記第1方向の薄肉部側端部の前記第2方向の両端から前記厚肉部側に向かって2/3Aの長さまで位置にある2つの点とを結ぶ曲線状であるか、又は、前記中央点と、前記第1方向の薄肉部側端部の両端から前記第2方向に向かって1/5Cの長さまでの位置にある2つの点とを結ぶ曲線状である、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の二次電池モジュール。
【0017】
(5)の二次電池モジュールによれば、二次電池と接する緩衝材の面に溝が設けれていて、二次電池の体積が増加するときは、緩衝材の溝が設けられていない部分から二次電池内の電極に付与される圧力が増加するので、二次電池内の電解液が緩衝材の溝が設けられている部分に対向する部分に移動しやすくなる。また、二次電池の体積が減少するときは、緩衝材の溝が設けられている部分に対向する部分から二次電池の電極内に電解液が侵入するため、二次電池の電極内に電解液を均等に供給することが可能となる。
【0018】
(6)前記緩衝材は、前記薄肉部が前記厚肉部よりも重力方向の上側に位置するように配置されている、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の二次電池モジュール。
【0019】
(6)の二次電池モジュールによれば、二次電池の体積が増加するときは、二次電池の付与される拘束力が下方から上方に向けて高くなるので、電解液を二次電池の上方に異方性をもって移動させることができる。一方、二次電池の体積が減少するときは、二次電池に付与される拘束力が上方から下方に向けて低くなるので、電解液の自重により、電解液を二次電池の上方から下方に向けて移動させることができる。このため、充放電を繰り返しても、電解液の液化枯れが起こりにくく、サイクル特性が優れる。
【0020】
(7)前記二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して積層した電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び電解液を収容する包装体と、を有し、前記二次電池は、前記電極積層体の積層方向が前記電池積層体の積層方向に一致するように配置されている、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の二次電池モジュール。
【0021】
(7)の二次電池モジュールによれば、二次電池の体積変動が大きい電極積層体の積層方向と、電池積層体の積層方向とが一致するので、二次電池の充放電の状態に関わらず一定の圧力を二次電池に付与することができる。このため、二次電池の充放電容量が安定する。
【0022】
(8)前記負極は、充電によって体積が増加し、放電によって体積が減少する、上記(7)に記載の二次電池モジュール。
【0023】
(8)の二次電池モジュールによれば、負極活物質としてリチウム金属やシリコン粒子を用いることができるので、二次電池の容量が増加する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、充放電によって体積が変動する二次電池を用いても、サイクル特性が優れる二次電池モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池モジュールの放電状態を示す正面図である。
図2図1に示す二次電池モジュールの底面図である。
図3A図1に示す二次電池モジュールで用いられる緩衝材の正面図である。
図3B図1に示す二次電池モジュールで用いられる緩衝材の斜視図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る二次電池モジュールで用いられる二次電池の放電状態を示す断面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る二次電池モジュールで用いられる二次電池の充電状態を示す断面図である。
図5図1に示す二次電池モジュールの充電状態を示す正面図である。
図6図5に示す二次電池モジュールの底面図である。
図7】本発明の変形例に係る二次電池モジュールの放電状態の底面図である。
図8図7に示す二次電池モジュールの充電状態の底面図である。
図9】本発明の二次電池モジュールで用いられる緩衝材の変形例の形状を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面において、X方向は、二次電池を積層した積層方向であり、Y方向は、X方向に直交する第1方向であり、Z方向は、X方向とY方向とに直交する第2方向を意味する。Y方向は、重力方向でもある。また、本実施形態では、二次電池10は、放電状態で体積が減少し、充電状態で体積が増大するものとされている。なお、放電状態は、二次電池の製造直後の状態を含む。
【0027】
本発明の一実施形態である二次電池モジュール1aは、図1、2に示すように、3個の二次電池10を積層した電池積層体100と、電池積層体100の積層方向(X方向)の両端に配置された一対のエンドプレート20とを有する。隣接する二次電池10の間には、緩衝材30aが配置され、電池積層体100とエンドプレート20との間には緩衝材30bが配置されている。二次電池10は放電状態であり、体積が減少した状態である。
【0028】
一対のエンドプレート20は、締結部材(不図示)によって拘束されている。一対のエンドプレート20は、締結部材によって付与された拘束力を電池積層体100に伝達することにより、電池積層体100をX方向に拘束する。エンドプレート20の材料は、特に制限はなく、バッテリモジュール用のエンドプレートで利用されている各種の材料を用いることができる。
【0029】
緩衝材30a、30bは、二次電池10付与される拘束力を緩和する作用を有する。緩衝材30a、30bは、図3A、Bに示すように、Y方向(第1方向)において、X方向(積層方向)の長さが大きい厚肉部31と、X方向の長さが厚肉部31よりも小さい薄肉部32とを有する。厚肉部31は常に二次電池と接触している。薄肉部32は、Y方向に沿って先細るように傾斜していて、二次電池10と離間した隙間50を形成している。Y方向(重力方向)において、緩衝材30a、30bの薄肉部32が上方に位置し、厚肉部31が下方に位置するように、二次電池モジュール1aは配置される。
緩衝材30bは、緩衝材30aをY方向に沿って1/2とした形状とされていること以外は、緩衝材30aと同じであるので、緩衝材30aを例に取って詳細に説明する。
【0030】
緩衝材30aの厚肉部31に対する薄肉部32の傾斜角度θ(図3A参照)は、特に限定されるものではないが0.057~1.15度の範囲内である。
緩衝材30aのY方向(第1方向)の長さA(図3A参照)は、例えば二次電池10と同じであってもよい。厚肉部31のY方向の長さAs(図3A参照)は、例えば緩衝材30aのY方向の長さAに対して20~80%の範囲内にあってもよい。厚肉部31のY方向の長さAsが20%以上であると、二次電池10の体積が増減しても二次電池10と緩衝材30aとの間の位置ずれが起こりにくくなる。また、厚肉部31のY方向の長さAsが80%以下であると、薄肉部32の範囲が広くなるので、二次電池10の体積が減少した状態で、緩衝材30aとの間に形成される隙間50の領域が広くなる。
【0031】
緩衝材30aの厚肉部31の底部31aのX方向(積層方向)の長さB(図3A参照)は、例えば二次電池10のX方向の長さに対して10~40%の範囲内にあってもよい。また、厚肉部31の底部31aのX方向の長さBに対する薄肉部32のX方向の長さの比は、薄肉部32の傾斜角度θ、緩衝材30aのY方向の長さA、厚肉部31のY方向の長さAsで決まる。
【0032】
緩衝材30a、30bの材料としては、ゴム材料、及びばねとプラスチックの併用を用いることができる。ゴム材料の例としては、天然ゴム、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム等のゴムを挙げることができる。緩衝材30a、30bのヤング率は、例えば0.002~4GPaの範囲内にあってもよい。
【0033】
二次電池10は、図4Aに示すように、正極11と負極14とをセパレータ17を介して積層させた電極積層体18と、電解液(不図示)と、電極積層体18及び電解液を収容する包装体19とを有する。二次電池10は負極活物質としてリチウム金属を用いたリチウム金属二次電池とされている。二次電池10は、電極積層体18の積層方向が電池積層体100のX方向(積層方向)に一致するように配置されている。
【0034】
正極11は、正極集電体12と正極活物質層13とを有する。正極集電体12は、正極リード端子(不図示)により、外部に引き出されている。
正極集電体12の材料としては、例えばAlを用いることができる。
【0035】
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質の例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2-x-y(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。正極活物質層13は、バインダー及び導電助剤など正極活物質層の材料として用いられている各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
負極14は負極集電体15を有する。負極集電体15は、負極リード端子(不図示)により、外部に引き出されている。負極集電体15の材料としては、例えばCuを用いることができる。負極集電体15の表面にはLi箔が積層されていてもよい。
【0037】
負極14は、図4Bに示すように、充電によって負極活物質層16(リチウム金属層)が生成する。このための充電後の二次電池10bの負極14は、電極積層体18の積層方向の厚みが厚くなり、体積が増加する。充電後の二次電池10bは、放電によって負極活物質層16が溶解して消失し、体積が減少する。
【0038】
電解液は、有機溶媒と電解質とを含む。有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エーテル、鎖状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、芳香族エーテル、スルホン、環状エステル、鎖状カルボン酸エステル、ニトリルを用いることができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル1,3-ジオキソラン等が挙げられる。鎖状エーテルの例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。ハイドロフルオロエーテルの例としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1,2-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。芳香族エーテルの例としては、アニソールが挙げられる。スルホンの例としては、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。環状エステルの例としては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルの例としては、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。ニトリルの例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。有機溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
電解質は、電荷移動媒体であるリチウムイオンの供給源であり、リチウム塩を含む。リチウム塩の例としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO(LiTFSI)、LiN(FSO(LiFSI)、及びLiBC等が挙げられる。リチウム塩は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。電解質の濃度は、例えば1.0モル/L~4.0モル/Lの範囲内である。
【0040】
包装体19は、充放電による負極14の体積の増加、減少に合わせて伸縮可能とされている。包装体19の材料としては、ラミネートフィルムを用いることができる。ラミネートフィルムとしては、内側から内側樹脂層、金属層、外側樹脂層がこの順で積層された3層構造の積層フィルムを用いることができる。外側樹脂層は例えばポリアミド層であり、金属層は例えばアルミニウム層であり、内側樹脂層は例えばポリプロピレン層であってもよい。
【0041】
充電によって、電池積層体100の二次電池10の体積が増加すると、体積増加による圧縮力により、緩衝材30a、30bの厚肉部31はX方向に潰される。厚肉部31が潰れることによって、圧縮力に対する反発力が発生して、厚肉部31から二次電池10に付与される拘束力が増加し、二次電池10の内部に拘束力が大きくなる。一方、緩衝材30a、30bの薄肉部32と二次電池10との間には隙間50があるため、充電の初期では、薄肉部32に圧縮力は付与されない。このため、充電初期では、二次電池10の電極積層体18の厚肉部31に対向する部分に拘束力が付与され、電解液がY方向(重力方向)の上方に向かって移動する。さらに、二次電池10の体積増加に伴って、Y方向の下方から薄肉部32が二次電池10に接触すると、薄肉部32も潰される。薄肉部32が潰れると、薄肉部32から二次電池10に拘束力が付与されて、薄肉部32に対向する二次電池10内部の電極積層体18の電解液がY方向の上方に向かって移動する。そして、薄肉部32全体が潰れると、電極積層体18の外に押し出される。
【0042】
図5に示すように、充電終了後の二次電池モジュール1bの正面(X-Y方向に沿う面)を見ると、緩衝材30a、30bから二次電池10bに付与される拘束力は、厚肉部31に対向する部分が最も高く、薄肉部32に対向する部分は先に行くほど弱くなる(図5中の矢印は、太さが大きいほど拘束力が大きいことを示す)。一方、図6に示すように、充電終了後の二次電池モジュール1bの底面では、二次電池10bによる圧縮力が緩衝材30a、30bの厚肉部31に均等に付与されるため、潰れ量が均一である。よって、緩衝材30a、30bの厚肉部31から二次電池10bに付与される拘束力は均一である。
【0043】
充電後の二次電池10bを放電して二次電池10bの体積が徐々に減少すると、二次電池10bから緩衝材30a、30bに付与される圧縮力が低くなる。これにより、緩衝材30a、30bの厚肉部31及び薄肉部32の潰れ量が小さくなり、薄肉部32と二次電池10bと薄肉部32との間に隙間50が形成される。隙間50が形成されると、その隙間50から電解液が電極積層体18の内部に侵入する。電極積層体18の内部に侵入した電解液は、自重によってY方向(重力方向)の上端から下方に流れて、正極11及び負極14に均一に供給される。
【0044】
本実施形態の二次電池モジュール1によれば、緩衝材30は厚肉部31と薄肉部32とを有するので、二次電池10の体積が増加するときは、二次電池10に付与される拘束圧を制御することが可能となるので、充放電時の二次電池10内の電解液の流れを調整することができる。このため、本実施形態の二次電池モジュール1は、充放電によって体積が変動する二次電池10を用いても、電解液の液化枯れが起こりにくく、サイクル特性が優れる。
本実施形態の二次電池モジュール1において、緩衝材30a、30bの薄肉部32はY方向(第1方向)に沿って先細るように傾斜しており、厚肉部31に対する薄肉部32の傾斜角度が0.057~1.15度とされているので、連続的に緩衝材30a、30bの薄肉部32と二次電池10との接触領域の緩衝材の潰れ量を調整することができる。このため、より確実に電解液の液枯れが発生しないように、二次電池10に付与される拘束力を調整することができる。さらに、本実施形態の二次電池モジュール1によれば、緩衝材30a、30bの薄肉部32が厚肉部31よりも重力方向の上側に位置するように配置されているので、二次電池10の体積が増加するときは、電解液を二次電池10の上方に異方性をもって移動させることができる。一方、二次電池10の体積が減少するときは、電解液の自重により、電解液を二次電池10の上方から下方に向けて移動させることができる。このため、充放電を繰り返しても、電解液の液化枯れが起こりにくく、サイクル特性が優れる。
【0045】
本実施形態の二次電池モジュール1aでは、緩衝材30a、30bの厚肉部31の底部は長方形とされているが、緩衝材30a、30bの厚肉部31の底部は湾曲していてもよい。図7に、緩衝材30a、30bの底部を湾曲させた変形例を示す。
【0046】
図7に示す二次電池モジュール2aでは、緩衝材40a、40bの底部は、Z方向(第2方向)の中央を頂点とする円弧状とされている。厚肉部31のZ方向の中央は、放電状態であり、体積が減少した状態である二次電池10と接触し、Z方向の両端は二次電池10と離間し、隙間50を形成する。充電によって、二次電池10の体積がX方向に増加すると、二次電池10によって、緩衝材30a、30がX方向に押されて、厚肉部31のX方向の長さが徐々に減少すると共に隙間50の間隔が狭くなる。充電終了後の二次電池モジュール2bは、図8に示すように、二次電池10bと緩衝材30a、30bのZ方向の薄肉部32とが接触する。充電終了後の二次電池10bは、緩衝材30a、30bから圧力が付与される。緩衝材30a、30bから付与される圧力は、図8に示すように、Z方向の中央が最も高くなり、Z方向の両端に行くほど弱くなる(図8中の矢印は、太さが大きいほど拘束力圧力が大きいことを示す)。
【0047】
本変形例の二次電池モジュール2によれば、二次電池10の体積が増加するときは、電極積層体18内の電解液が第2方向に流れやすくなる。また、二次電池10の体積が減少したときは、電解液が第2方向から電極積層体18内に侵入するため、二次電池10の電極積層体18内に電解液をより均等に供給することが可能となる。
【0048】
本実施形態の二次電池モジュール1aでは、緩衝材30a、30bの二次電池10と接する側面は平面とされているが、緩衝材30a、30bの二次電池10と接する側面に溝を設けてもよい。
【0049】
図9に示す緩衝材40cは、溝41と溝42が仮想線で示されている。
溝41と溝42は、緩衝材40cの二次電池10と接する側面、すなわち、Y方向(第1方向)とZ方向(第2方向)に沿うY-Z面に設けられている。このY-Z面のY方向における長さをAとし、Z方向における長さをCとして、溝41は、Y-Z面のY方向における厚肉部側端部のZ方向の中央点Pと、Y方向の薄肉部側端部の両端P10、P20からZ方向に向かって1/5Cの長さまでの位置にある2つの点P11、P21とを結ぶ曲線状とされている。溝42は、Y方向における厚肉部側端部のZ方向の中央点Pと、Y方向の薄肉部側端部のZ方向の両端から厚肉部側に向かって2/3Aの長さまで位置にある2つの点P12、P22とを結ぶ曲線状とされている。溝41は、中央点Pから端部の点P11、P21に向かって外側に膨らんだ曲線状であり、溝42は、中央点Pから端部の点P12、P22に向かって外側に膨らんだ曲線状である。溝は円弧状であってもよい。溝41、42のX方向の長さは、例えば厚肉部31の表面から0.1~2.0mmの範囲内である。
【0050】
緩衝材40cを用いた二次電池モジュールは、二次電池10と接する面であるY-Z面に溝41、42が設けれていて、二次電池10の体積が増加するときは、緩衝材40cの溝41、42が設けられていない部分から二次電池10に付与される圧力が増加するので、電極積層体18内の電解液が緩衝材40cの溝が設けられている部分に対向する部分に移動しやすくなる。また、二次電池10の体積が減少するときは、緩衝材40cの溝が設けられている部分に対向する部分から電解液が電極積層体18内に侵入するため、二次電池10の電極積層体18内に電解液を均等に供給することが可能となる。溝41の端部は点P11、P21とされ、溝42の端部は点P12、P22とされているが、端部の位置はこれに限定されるものではない。溝の端部は、P10~P11の間及びP20~P21の間にあってもよいし、P10~P12の間、P20~P22の間にあってもよい。溝の端部の位置は、中央点Pを中心として対称の位置にあってもよい。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態において、緩衝材30a、30bの薄肉部32はY方向に沿って先細るように連続的にX方向の長さが減少しているが、薄肉部32の形状はこれに限定されるものではない。薄肉部32のX方向の長さは、段階的に減少していてもよい。
【0052】
また、本実施形態において、二次電池10は負極活物質としてリチウム金属を用いたリチウム金属二次電池とされているが、二次電池10はこれに限定されるものではない。二次電池10の負極活物質としてシリカ粒子を用いてもよい。また、二次電池10は、充放電によって体積が変動しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1a、1b、2a、2b 二次電池モジュール
10、10b 二次電池
11 正極
12 正極集電体
13 正極活物質層
14 負極
15 負極集電体
16 負極活物質層
17 セパレータ
18 電極積層体
19 包装体
20 エンドプレート
30a、30b、40a、40b、40c 緩衝材
31 厚肉部
31a 底部
32 薄肉部
32a 先端
41、42 溝
50 隙間
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9