(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025115686
(43)【公開日】2025-08-07
(54)【発明の名称】弾性波フィルタおよび高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 9/64 20060101AFI20250731BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20250731BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20250731BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20250731BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/25 A
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010265
(22)【出願日】2024-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】岩永 穣
(72)【発明者】
【氏名】黒▲柳▼ ▲琢▼真
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敬
(72)【発明者】
【氏名】田上 雄大
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097BB02
5J097BB11
5J097DD21
5J097DD29
5J097EE08
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097GG04
5J097KK03
5J097KK04
5J097LL01
5J097LL06
5J097LL07
5J108AA07
5J108BB01
5J108BB04
5J108BB07
5J108BB08
5J108EE03
5J108EE07
5J108JJ02
5J108JJ04
(57)【要約】
【課題】低損失性が確保された弾性波フィルタを提供する。
【解決手段】弾性波フィルタ1は、入出力端子110および120を結ぶ直列腕経路に配置された直列腕共振子14と、直列腕経路とグランドとの間に接続された並列腕共振子23と、を備え、直列腕共振子14および並列腕共振子23のそれぞれは弾性波共振子を含み、直列腕共振子14の共振周波数frs14および並列腕共振子23の共振周波数frp23は、弾性波フィルタ1の通過帯域の低周波端以下であり、直列腕共振子14の反共振周波数fas14および並列腕共振子23の反共振周波数fap23は、上記通過帯域の高周波端以上であり、共振周波数frs14は共振周波数frp23よりも高く、反共振周波数fas14は反共振周波数fap23よりも高い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域通過型の弾性波フィルタであって、
第1入出力端子および第2入出力端子を結ぶ直列腕経路に配置された第1直列腕共振器と、
前記直列腕経路とグランドとの間に接続された第1並列腕共振器と、を備え、
前記第1直列腕共振器および前記第1並列腕共振器のそれぞれは、弾性波共振子を含み、
前記第1直列腕共振器の共振周波数である第1共振周波数および前記第1並列腕共振器の共振周波数である第2共振周波数は、前記弾性波フィルタの通過帯域の低周波端以下であり、
前記第1直列腕共振器の反共振周波数である第1反共振周波数および前記第1並列腕共振器の反共振周波数である第2反共振周波数は、前記通過帯域の高周波端以上であり、
前記第1共振周波数は前記第2共振周波数よりも高く、前記第1反共振周波数は前記第2反共振周波数よりも高い、
弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記第1直列腕共振器を含む複数の直列腕共振器と、
前記第1並列腕共振器を含む複数の並列腕共振器と、を備え、
前記第1直列腕共振器は、前記複数の直列腕共振器のうちで前記第1入出力端子に最も近く接続され、
前記第1並列腕共振器は、前記複数の並列腕共振器のうちで前記第1入出力端子に最も近く接続される、
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記第1直列腕共振器および前記第1並列腕共振器を含む複数の弾性波共振器、を備え、
前記複数の弾性波共振器のうちで、共振周波数が前記通過帯域の低周波端以下かつ反共振周波数が前記通過帯域の高周波端以上である弾性波共振器の数は、共振周波数が前記通過帯域の低周波端より高い、または、反共振周波数が前記通過帯域の高周波端より低い弾性波共振器の数よりも多い、
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
さらに、
前記直列腕経路に直列配置された第1キャパシタ、および、前記直列腕経路とグランドとを結ぶ並列腕経路に直列配置された第2キャパシタの少なくとも1つを備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記第1並列腕共振器は、直列接続された第1弾性波共振子および第1インダクタを含む、
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
前記第2反共振周波数と前記通過帯域の高周波端との周波数差は、前記通過帯域の低周波端と前記第2共振周波数との周波数差よりも小さい、
請求項5に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
前記第1直列腕共振器は、並列接続された第2弾性波共振子および第2インダクタを含む、
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項8】
前記第1共振周波数と前記通過帯域の低周波端との周波数差は、前記通過帯域の高周波端と前記第1反共振周波数との周波数差よりも小さい、
請求項7に記載の弾性波フィルタ。
【請求項9】
前記第1直列腕共振器および前記第1並列腕共振器を含む複数の弾性波共振器、を備え、
前記複数の弾性波共振器のそれぞれは、弾性波共振子を含み、
前記弾性波フィルタが有する全ての前記弾性波共振子は、同一の圧電性基板に形成される、
請求項5~8のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項10】
互いに対向する第1主面および第2主面を有する実装基板と、
請求項1に記載の弾性波フィルタと、
入力端子が前記第1入出力端子に接続された低雑音増幅器と、を備え、
前記弾性波フィルタは前記第1主面に配置され、
前記低雑音増幅器は前記第2主面に配置され、
前記実装基板を平面視した場合、前記弾性波フィルタと前記低雑音増幅器とは少なくとも一部重なる、
高周波モジュール。
【請求項11】
前記実装基板を平面視した場合、前記第1入出力端子と前記入力端子とは少なくとも一部重なる、
請求項10に記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタおよび高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯域通過型のフィルタおよび整合共振器を備えたフィルタモジュールが開示されている。フィルタの通過帯域が整合共振器の共振周波数と反共振周波数との間の範囲に含まれることでフィルタモジュールの通過帯域のインピーダンスを誘導性にすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたフィルタモジュールでは、整合共振器により通過帯域のインピーダンスを誘導性にできるので、容量性のインピーダンスを有する外部回路と接続された場合の整合損失を低減できる。しかしながら、整合共振器自体の挿入損失を低減できない場合があり、フィルタモジュールの低損失性を確保できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、低損失性が確保された弾性波フィルタおよびそれを備えた高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る弾性波フィルタは、帯域通過型の弾性波フィルタであって、第1入出力端子および第2入出力端子を結ぶ直列腕経路に配置された第1直列腕共振器と、直列腕経路とグランドとの間に接続された第1並列腕共振器と、を備え、第1直列腕共振器および第1並列腕共振器のそれぞれは、弾性波共振子を含み、第1直列腕共振器の共振周波数である第1共振周波数および第1並列腕共振器の共振周波数である第2共振周波数は、弾性波フィルタの通過帯域の低周波端以下であり、第1直列腕共振器の反共振周波数である第1反共振周波数および第1並列腕共振器の反共振周波数である第2反共振周波数は、通過帯域の高周波端以上であり、第1共振周波数は第2共振周波数よりも高く、第1反共振周波数は第2反共振周波数よりも高い。
【0007】
また、本発明の一態様に係る高周波モジュールは、互いに対向する第1主面および第2主面を有する実装基板と、上記弾性波フィルタと、入力端子が第1入出力端子に接続された低雑音増幅器と、を備え、弾性波フィルタは第1主面に配置され、低雑音増幅器は第2主面に配置され、実装基板を平面視した場合、弾性波フィルタと低雑音増幅器とは少なくとも一部重なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低損失性が確保された弾性波フィルタおよび高周波モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る弾性波フィルタおよび高周波モジュールの回路構成図である。
【
図2A】実施の形態に係る弾性波フィルタを構成する弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。
【
図2B】実施の形態に係る弾性波フィルタを構成する弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。
【
図2C】実施の形態に係る弾性波フィルタを構成する弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。
【
図3】実施の形態に係る弾性波フィルタの通過特性および各弾性波共振器のインピーダンス特性を示すグラフである。
【
図4】実施の形態に係る弾性波フィルタの通過特性、ならびに第1直列腕共振器および第1並列腕共振器のインピーダンス特性を模式的に示す図である。
【
図5A】実施の形態に係る高周波モジュールの回路構成図である。
【
図5B】比較例に係る高周波モジュールの回路構成図である。
【
図6A】実施の形態および比較例に係る高周波モジュールの通過帯域のインピーダンスを示すスミスチャートである。
【
図6B】比較例に係る高周波モジュールの整合用インダクタのインダクタンス値と雑音指数との関係を表すグラフである。
【
図6C】実施の形態および比較例に係る雑音指数の周波数特性を示すグラフである。
【
図7】実施の形態の変形例1に係る弾性波フィルタの回路構成図である。
【
図8A】実施の形態の変形例2に係る弾性波フィルタの回路構成図である。
【
図8B】変形例2に係る弾性波フィルタの通過帯域近傍帯域の通過特性および第1並列腕共振器のインピーダンス特性を示すグラフである。
【
図8C】変形例2に係る弾性波フィルタの広域の第1並列腕共振器のインピーダンス特性を示すグラフである。
【
図9】実施の形態に係る高周波モジュールの平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0011】
なお、各図は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡素化される場合がある。
【0012】
本開示の回路構成において、「接続される」とは、接続端子および/または配線導体で直接接続される場合だけでなく、整合素子またはスイッチ回路を介して電気的に接続される場合も含む。「AおよびBの間に接続される」とは、AおよびBの間でAおよびBの両方に接続されることを意味する。
【0013】
本発明において、「端子」とは、要素内の導体が終了するポイントを意味する。なお、要素間の導体のインピーダンスが十分に低い場合には、端子は単一のポイントだけでなく、要素間の導体上の任意のポイント(ノード)または導体全体と解釈される。
【0014】
また、本開示の回路素子配置において、「回路素子Aが経路Bに直列配置される」とは、回路素子Aの信号入力端および信号出力端が、経路Bの少なくとも一部を構成する2つの配線のそれぞれに接続されていることを意味する。なお、2つの配線の少なくとも一方は、電極や端子であってもよい。
【0015】
以下の各図において、x軸およびy軸は、モジュール基板の主面と平行な平面上で互いに直交する軸である。具体的には、平面視においてモジュール基板が矩形状を有する場合、x軸は、モジュール基板の第1辺に平行であり、y軸は、モジュール基板の第1辺と直交する第2辺に平行である。また、z軸は、モジュール基板の主面に垂直な軸であり、その正方向は上方向を示し、その負方向は下方向を示す。
【0016】
また、「平行」および「垂直」などの要素間の関係性を示す用語、「矩形」などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差をも含むことを意味する。
【0017】
また、本発明の部品配置において、「モジュール基板の平面視」とは、z軸正側からxy平面に物体を正投影して見ることを意味する。「Aは平面視においてBと重なる」とは、xy平面に正投影されたAの領域の少なくとも一部が、xy平面に正投影されたBの領域の少なくとも一部と重なることを意味する。また、「AがBおよびCの間に配置される」とは、B内の任意の点とC内の任意の点とを結ぶ複数の線分のうちの少なくとも1つがAを通ることを意味する。
【0018】
本発明の部品配置において、「部品が基板に配置される」とは、部品が基板の主面上に配置されること、および、部品が基板内に配置されることを含む。「部品が基板の主面上に配置される」とは、部品が基板の主面に接触して配置されることに加えて、部品が主面と接触せずに当該主面の上方に配置されること(例えば、部品が主面と接触して配置された他の部品上に積層されること)を含む。また、「部品が基板の主面上に配置される」は、主面に形成された凹部に部品が配置されることを含んでもよい。「部品が基板内に配置される」とは、部品がモジュール基板内にカプセル化されることに加えて、部品の全部が基板の両主面の間に配置されているが部品の一部が基板に覆われていないこと、および、部品の一部のみが基板内に配置されていることを含む。
【0019】
また、以下の実施の形態において、フィルタの通過帯域は、当該通過帯域内における挿入損失の最小値から3dB大きい2つの周波数間の周波数帯域と定義される。
【0020】
なお、弾性波共振器とは、(1)弾性波共振子および当該弾性波共振子に並列接続された回路(または回路素子)で構成された共振回路(弾性波共振子と回路(または回路素子)との並列接続回路)、(2)弾性波共振子および当該弾性波共振子の2つの入出力端の一方のみに接続された回路(または回路素子)で構成され、上記弾性波共振子と上記回路(または回路素子)とを接続する接続ノードには、他の回路(および他の回路素子)ならびにグランドが接続されていない構成を有する共振回路(弾性波共振子と回路(または回路素子)との直列接続回路)、(3)互いに並列接続された複数の弾性波共振子で構成された共振回路(分割共振子の並列接続回路)、ならびに(4)互いに直列接続された複数の弾性波共振子で構成され、当該複数の弾性波共振子間を接続する接続ノードには、当該複数の弾性波共振子以外の回路(および回路素子)ならびにグランドは接続されていない構成を有する共振回路(分割共振子の直列接続回路)、のいずれかと定義される。
【0021】
また、本開示の実施の形態において、共振帯域幅とは、弾性波共振子の反共振周波数と共振周波数との周波数差を意味する。
【0022】
なお、上記実施の形態および変形例において示された共振周波数および反共振周波数は、例えば、弾性波共振子または弾性波共振器が他の回路素子と接続されていない状態で、弾性波共振子または弾性波共振器の2つの入出力電極にRFプローブを接触させ、ネットワークアナライザ等で反射特性(インピーダンス特性)を測定することで導出される。
【0023】
また、本開示において、「バンド」とは、無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)を用いて構築される通信システムのために、標準化団体など(例えば3GPP(登録商標)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)等)によって予め定義された周波数バンドのアップリンク動作バンドおよびダウンリンク動作バンドの少なくとも一方を意味する。本実施の形態では、通信システムとしては、例えばLTE(Long Term Evolution)システム、5G(5th Generation)-NR(New Radio)システム、およびWLAN(Wireless Local Area Network)システム等を用いることができるが、これらに限定されない。なお、周波数バンドのアップリンク動作バンドとは、当該周波数バンドのうちのアップリンク用に指定された周波数範囲を意味する。また、周波数バンドのダウンリンク動作バンドとは、当該周波数バンドのうちのダウンリンク用に指定された周波数範囲を意味する。
【0024】
(実施の形態)
[1 弾性波フィルタ1および高周波モジュール100の回路構成]
図1は、実施の形態に係る弾性波フィルタ1および高周波モジュール100の回路構成図である。同図に示すように、高周波モジュール100は、弾性波フィルタ1と、低雑音増幅器2と、出力端子130と、を備える。
【0025】
低雑音増幅器2は、弾性波フィルタ1と出力端子130との間に接続されている、具体的には、低雑音増幅器2の入力端子は、弾性波フィルタ1の入出力端子120に接続されている。低雑音増幅器2は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)またはバイポーラトランジスタ(Bipolar Transistor)である増幅トランジスタを含み、当該増幅トランジスタのゲート(またはベース)が入出力端子120に接続され、ドレイン(またはコレクタ)が出力端子130に接続され、ソース(またはエミッタ)がグランドに接続される。さらに、上記増幅トランジスタのゲート(またはベース)には、直流バイアス電圧(直流バイアス電流)が供給される。上記構成により、低雑音増幅器2は、ゲート(またはベース)に直流バイアス電圧(直流バイアス電流)が供給されることで、弾性波フィルタ1を通過した高周波信号を増幅して出力端子130へ出力する。また、低雑音増幅器2の入力インピーダンスは、容量性かつ高インピーダンスとなる。
【0026】
弾性波フィルタ1は、帯域通過型のフィルタ(バンドパスフィルタ)であって、直列腕共振子11、12、13および14と、並列腕共振子21、22および23と、キャパシタ15および24と、入出力端子110および120と、を備える。
【0027】
直列腕共振子11~14のそれぞれは、弾性波共振子を含む弾性波共振器の一例であり、入出力端子110(第2入出力端子)および入出力端子120(第12入出力端子)を結ぶ直列腕経路に配置される。直列腕共振子11は直列腕共振子11のみで1つの直列腕共振器(弾性波共振器)を構成し、直列腕共振子12は直列腕共振子12のみで1つの直列腕共振器(弾性波共振器)を構成し、直列腕共振子13は直列腕共振子13のみで1つの直列腕共振器(弾性波共振器)を構成し、直列腕共振子14は直列腕共振子14のみで1つの直列腕共振器(弾性波共振器)を構成している。キャパシタ15は、第1キャパシタの一例であり、上記直列腕経路に直列配置される。
【0028】
直列腕共振子11~14およびキャパシタ15のそれぞれは、入出力端子110から順に、直列腕共振子11、キャパシタ15、直列腕共振子12、13および14の順に接続されている。
【0029】
並列腕共振子21~23のそれぞれは、弾性波共振子を含む弾性波共振器の一例であり、上記直列腕経路とグランドとの間に接続される。並列腕共振子21は、直列腕共振子11およびキャパシタ15の接続点とグランドとの間に接続される。並列腕共振子22は、キャパシタ15および直列腕共振子12の接続点とグランドとの間に接続される。並列腕共振子21は並列腕共振子21のみで1つの並列腕共振器(弾性波共振器)を構成し、並列腕共振子22は並列腕共振子22のみで1つの並列腕共振器(弾性波共振器)を構成し、並列腕共振子23は並列腕共振子23のみで1つの並列腕共振器(弾性波共振器)を構成している。キャパシタ24は、第2キャパシタの一例であり、直列腕共振子12および13の間の直列腕経路とグランドとを結ぶ並列腕経路に直列配置される。並列腕共振子23は、直列腕共振子13および14の接続点とグランドとの間に接続される。
【0030】
直列腕共振子11~14のうち、直列腕共振子14は、第1直列腕共振器の一例であり、共振周波数frs14(第1共振周波数)および反共振周波数fas14(第1反共振周波数)を有する。
【0031】
並列腕共振子21~23のうち、並列腕共振子23は、第1並列腕共振器の一例であり、共振周波数frp23(第2共振周波数)および反共振周波数fap23(第2反共振周波数)を有する。
【0032】
なお、直列腕共振子11~14および並列腕共振子21~23のそれぞれ(弾性波共振器)は、1つの弾性波共振子のみを有するが、直列腕共振子11~14および並列腕共振子21~23のそれぞれは、例えば、(1)弾性波共振子と、当該弾性波共振子に並列接続されたキャパシタおよびインダクタの少なくとも1つを含む回路とで構成された共振器、(2)弾性波共振子と、当該弾性波共振子に直列接続されたキャパシタおよびインダクタの少なくとも1つを含む回路とで構成された共振器、(3)並列接続された複数の弾性波共振子で構成された共振器、ならびに(4)直列接続された複数の弾性波共振子で構成された共振器、のいずれかであってもよい。
【0033】
また、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、直列腕共振子14を含む1以上の直列腕共振器および並列腕共振子23を含む1以上の並列腕共振器を備えていればよく、その他の弾性波共振子およびキャパシタはなくてもよい。
【0034】
また、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、ラダー型のフィルタを構成する直列腕共振器および並列腕共振器の他、縦結合型共振器を備えてもよい。
【0035】
[2 弾性波共振子の構造]
次に、弾性波フィルタ1を構成する弾性波共振子(直列腕共振子および並列腕共振子)の構造について例示する。
【0036】
図2Aは、実施の形態に係る弾性波フィルタ1を構成する弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。同図には、弾性波フィルタ1を構成する複数の弾性波共振子のそれぞれの基本構造が例示されている。なお、
図2Aに示された弾性波共振子60は、弾性波フィルタ1を構成する弾性表面波共振子の典型的な構造を説明するためのものであって、電極を構成する電極指の本数および長さなどは、これに限定されない。
【0037】
弾性波共振子60は、圧電性基板50と、櫛形電極60aおよび60bとで構成されている。
【0038】
図2Aの(a)に示すように、圧電性基板50の上には、互いに対向する一対の櫛形電極60aおよび60bが形成されている。櫛形電極60aは、互いに平行な複数の電極指61aと、複数の電極指61aを接続するバスバー電極62aとで構成されている。また、櫛形電極60bは、互いに平行な複数の電極指61bと、複数の電極指61bを接続するバスバー電極62bとで構成されている。複数の電極指61aおよび61bは、弾性波伝搬方向(X軸方向)と直交する方向に沿って形成されている。
【0039】
また、複数の電極指61aおよび61b、ならびに、バスバー電極62aおよび62bで構成されるIDT電極54は、
図2Aの(b)に示すように、密着層540と主電極層542との積層構造となっている。
【0040】
密着層540は、圧電性基板50と主電極層542との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。主電極層542は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。保護層55は、櫛形電極60aおよび60bを覆うように形成されている。保護層55は、主電極層542を外部環境から保護する、周波数温度特性を調整する、および、耐湿性を高めるなどを目的とする層であり、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする誘電体膜である。
【0041】
なお、密着層540、主電極層542および保護層55を構成する材料は、上述した材料に限定されない。さらに、IDT電極54は、上記積層構造でなくてもよい。IDT電極54は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。また、保護層55は、形成されていなくてもよい。
【0042】
次に、圧電性基板50の積層構造について説明する。
【0043】
図2Aの(c)に示すように、圧電性基板50は、高音速支持基板51と、低音速膜52と、圧電膜53とを備え、高音速支持基板51、低音速膜52および圧電膜53がこの順で積層された構造を有している。
【0044】
圧電膜53は、例えばθ°YカットX伝搬LiTaO3圧電単結晶または圧電セラミックス(X軸を中心軸としてY軸からθ°回転した軸を法線とする面で切断したリチウムタンタレート単結晶、またはセラミックスであって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶またはセラミックス)からなる。なお、各フィルタの要求仕様により、圧電膜53として使用される圧電単結晶の材料およびカット角θが適宜選択される。
【0045】
高音速支持基板51は、低音速膜52、圧電膜53ならびにIDT電極54を支持する基板である。高音速支持基板51は、さらに、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、高音速支持基板51中のバルク波の音速が高速となる基板であり、弾性表面波を圧電膜53および低音速膜52が積層されている部分に閉じ込め、高音速支持基板51より下方に漏れないように機能する。高音速支持基板51の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl2O4、FeAl2O4、ZnAl2O4、MnAl2O4を挙げることができる。
【0046】
低音速膜52は、圧電膜53を伝搬するバルク波よりも、低音速膜52中のバルク波の音速が低速となる膜であり、圧電膜53と高音速支持基板51との間に配置される。この構造と、弾性波が本質的に低音速な媒質にエネルギーが集中するという性質とにより、弾性表面波エネルギーの圧電膜53外への漏れが抑制される。低音速膜52の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0047】
なお、圧電性基板50の上記積層構造によれば、圧電基板を単層で使用している従来の構造と比較して、共振周波数および反共振周波数におけるQ値を大幅に高めることが可能となる。すなわち、Q値が高い弾性波共振子を構成し得るので、当該弾性波共振子を用いて、挿入損失が小さいフィルタを構成することが可能となる。
【0048】
なお、高音速支持基板51は、支持基板と、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、伝搬するバルク波の音速が高速となる高音速膜とが積層された構造を有していてもよい。この場合、高音速膜の材料としては、高音速支持基板51の材料と同じ材料を用いることができる。また、支持基板の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどのセラミック、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウムなどの半導体、もしくは樹脂、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0049】
なお、本明細書において、「材料の主成分」とは、当該材料に占める割合が50重量%を超える成分をいう。上記主成分は、単結晶、多結晶およびアモルファスのうちいずれかの状態、もしくは、これらが混在した状態で存在していてもよい。
【0050】
図2Bは、実施の形態に係る弾性波フィルタ1を構成する弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。
図2Aに示した弾性波共振子60では、IDT電極54が、圧電膜53を有する圧電性基板50上に形成された例を示したが、当該IDT電極54が形成される基板は、
図2Bに示すように、圧電体層の単層からなる圧電単結晶基板57であってもよい。
【0051】
圧電単結晶基板57は、例えば、LiNbO3の圧電単結晶で構成されている。本例に係る弾性波共振子は、LiNbO3の圧電単結晶基板57と、IDT電極54と、圧電単結晶基板57上およびIDT電極54上に形成された保護層58と、で構成されている。
【0052】
上述した圧電膜53および圧電単結晶基板57は、弾性波フィルタ装置の要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、カット角、および、厚みを変更してもよい。上述したカット角以外のカット角を有するLiTaO3圧電基板などを用いた弾性波共振子であっても、上述した圧電膜53を用いた弾性波共振子60と同様の効果を奏することができる。
【0053】
また、IDT電極54が形成される基板は、支持基板と、エネルギー閉じ込め層と、圧電膜とが、この順で積層された構造を有していてもよい。圧電膜上にIDT電極54が形成される。圧電膜は、例えば、LiTaO3圧電単結晶または圧電セラミックスが用いられる。支持基板は、圧電膜、エネルギー閉じ込め層、およびIDT電極54を支持する基板である。
【0054】
エネルギー閉じ込め層は1層または複数の層からなり、その少なくとも1つの層を伝搬するバルク弾性波の速度は、圧電膜近傍を伝搬する弾性波の速度よりも大きい。例えば、エネルギー閉じ込め層は、低音速層と、高音速層との積層構造となっていてもよい。低音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、低音速層中のバルク波の音速が低速となる膜である。高音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、高音速層中のバルク波の音速が高速となる膜である。なお、支持基板を高音速層としてもよい。
【0055】
また、エネルギー閉じ込め層は、音響インピーダンスが相対的に低い低音響インピーダンス層と、音響インピーダンスが相対的に高い高音響インピーダンス層とが、交互に積層された構成を有する音響インピーダンス層であってもよい。
【0056】
ここで、弾性波共振子60を構成するIDT電極54の電極パラメータについて説明する。
【0057】
弾性波共振子の波長とは、
図2Aの(b)に示すIDT電極54を構成する複数の電極指61aまたは61bの繰り返し周期である波長λで規定される。また、電極指ピッチは、波長λの1/2であり、櫛形電極60aおよび60bをそれぞれ構成する電極指61aおよび61bのライン幅をWとし、隣り合う電極指61aと電極指61bとの間のスペース幅をSとした場合、(W+S)で定義される。また、IDT電極54のデューティーは、電極指61aおよび61bのライン幅占有率であり、電極指61aおよび61bのそれぞれのライン幅とスペース幅との加算値に対する当該ライン幅の割合であり、W/(W+S)で定義される。また、IDT電極54の交叉幅は、電極指61aおよび電極指61bを弾性波伝搬方向(X軸方向)から見た場合に重複する電極指の長さである。
【0058】
なお、IDT電極54において、隣り合う電極指間の間隔が一定でない場合には、IDT電極54の電極指ピッチは、IDT電極54の平均電極指ピッチで定義される。IDT電極54の平均電極指ピッチは、IDT電極54に含まれる電極指61a、61bの総本数をNi本とし、IDT電極54の、弾性波伝搬方向における一方端に位置する電極指と他方端に位置する電極指との中心間距離をDiとすると、Di/(Ni-1)と定義される。
【0059】
また、
図2Cは、実施の形態に係る弾性波フィルタ1を構成する弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。
図2Cには、弾性波フィルタ1の弾性波共振子として、バルク弾性波共振子が示されている。同図に示すように、バルク弾性波共振子は、例えば、支持基板65と、下部電極66と、圧電体層67と、上部電極68と、を有しており、支持基板65、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68がこの順で積層された構成となっている。
【0060】
支持基板65は、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68を支持するための基板であり、例えば、シリコン基板である。なお、支持基板65は、下部電極66と接触する領域に、空洞が設けられている。これにより、圧電体層67を自由に振動させることが可能となる。
【0061】
下部電極66は、支持基板65の一方面上に形成されている。上部電極68は、支持基板65の一方面上に形成されている。下部電極66および上部電極68は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。
【0062】
圧電体層67は、下部電極66と上部電極68との間に形成されている。圧電体層67は、例えば、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KN(ニオブ酸カリウム)、LN(リチウムニオベイト)、LT(リチウムタンタレート)、水晶、およびLiBO(ホウ酸リチウム)の少なくとも1つを主成分とする。
【0063】
上記積層構成を有するバルク弾性波共振子は、下部電極66と上部電極68との間に電気的なエネルギーを印加することで圧電体層67内にてバルク弾性波を誘発して共振を発生させるものである。このバルク弾性波共振子により生成されるバルク弾性波は、下部電極66と上部電極68との間を、圧電体層67の膜面に垂直な方向に伝搬する。つまり、バルク弾性波共振子は、バルク弾性波を利用した共振子である。
【0064】
[3 弾性波フィルタ1の共振特性および通過特性]
まず、1つの直列腕共振子および1つの並列腕共振子で構成されたラダー型バンドパスフィルタの基本的な動作原理について説明しておく。
【0065】
並列腕共振子は共振周波数frpおよび反共振周波数fap(>frp)を有し、直列腕共振子は共振周波数frsおよび反共振周波数fas(>frs>frp)を有する。上記共振特性を有する直列腕共振子および並列腕共振子において、一般的には、並列腕共振子の反共振周波数fapと直列腕共振子の共振周波数frsとを近接させる。これにより、並列腕共振子のインピーダンスが0に近づく共振周波数frp近傍は、低周波側阻止域となる。また、これより周波数が増加すると、反共振周波数fap近傍で並列腕共振子のインピーダンスが高くなり、かつ、共振周波数frs近傍で直列腕共振子のインピーダンスが0に近づく。これにより、反共振周波数fap~共振周波数frsの近傍では、直列腕経路である信号経路において信号通過域となる。これにより、弾性波共振子の電極パラメータおよび電気機械結合係数を反映した通過帯域を形成することが可能となる。さらに、周波数が高くなり、反共振周波数fas近傍になると、直列腕共振子のインピーダンスが高くなり、高周波側阻止域となる。
【0066】
また、直列腕共振子および並列腕共振子のそれぞれにおいて、共振周波数よりも低周波側の周波数帯域では、共振子のインピーダンスは容量性(C性)を示し、共振周波数よりも高周波側かつ反共振周波数よりも低周波側の周波数帯域では、共振子のインピーダンスは誘導性(L性)を示す。また、反共振周波数よりも高周波側の周波数帯域では、共振子のインピーダンスは容量性を示す。
【0067】
なお、共振帯域幅が所望の通過帯域幅よりも広い場合、並列腕共振子の反共振周波数は通過帯域の高域端よりも高く、直列腕共振子の共振周波数は通過帯域の低域端よりも低くてもよい。共振周波数から反共振周波数までの周波数範囲である共振帯域の少なくとも一部が弾性波フィルタ1の通過帯域と重なる共振子は、弾性波フィルタ1の通過帯域の形成に寄与する共振子と定義される。
【0068】
次に、弾性波フィルタ1のインピーダンス特性および通過特性について説明する。
【0069】
図3は、実施の形態に係る弾性波フィルタ1の通過特性および各弾性波共振器のインピーダンス特性を示すグラフである。同図に示すように、弾性波フィルタ1の通過帯域幅(10MHz)は、各弾性波共振子の共振帯域幅(80-100MHz)と比較して狭帯域となっている。弾性波フィルタ1は、例えば、LTEのためのバンドB30または5G-NRのためのバンドn30のダウンリンク動作バンド(2350~2360MHz)を含む通過帯域を有している。
【0070】
本実施の形態に係る弾性波フィルタ1の通過帯域(2350~2360MHz)は、直列腕共振子12~14のそれぞれの共振周波数と反共振周波数との間に位置し、かつ、並列腕共振子21~23のそれぞれの共振周波数と反共振周波数との間に位置している。
【0071】
つまり、直列腕共振子12~14および並列腕共振子21~23は、共振帯域の少なくとも一部が弾性波フィルタ1の通過帯域と重なっているので、弾性波フィルタ1の通過帯域の形成に寄与する共振子である。
【0072】
一方、直列腕共振子11は、共振周波数および反共振周波数の双方が通過帯域高域端よりも高いので、弾性波フィルタ1の通過帯域の形成に寄与しない共振子である。
【0073】
なお、キャパシタ15および24に替えて、弾性波共振器が配置されてもよい。直列腕共振子12~14および並列腕共振子21~23の共振帯域幅は弾性波フィルタ1の所望の通過帯域よりも広い。これに対して、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1では、キャパシタ15および24が配置されることにより、広い共振帯域幅を有する弾性波共振子を用いて狭い通過帯域を形成し易くしている。
【0074】
また、各弾性波共振子の共振帯域幅(80-100MHz)が揃っていることから、弾性波フィルタ1を構成する全ての弾性波共振子は、1枚の圧電性基板に形成することが可能となる。これによれば、弾性波フィルタ1を小型化できる。
【0075】
図4は、実施の形態に係る弾性波フィルタ1の通過特性、ならびに直列腕共振子14(第1直列腕共振器)および並列腕共振子23(第1並列腕共振器)のインピーダンス特性を模式的に示す図である。
【0076】
同図に示すように、直列腕共振子14(第1直列腕共振器)の共振周波数frs14(第1共振周波数)および並列腕共振子23(第1並列腕共振器)の共振周波数frp23(第2共振周波数)は、弾性波フィルタ1の通過帯域の低周波端以下である。また、直列腕共振子14(第1直列腕共振器)の反共振周波数fas14(第1反共振周波数)および並列腕共振子23(第1並列腕共振器)の反共振周波数fap23(第2反共振周波数)は、上記通過帯域の高周波端以上である。
【0077】
つまり、直列腕共振子14の共振帯域は弾性波フィルタ1の通過帯域を含むこととなり、直列腕共振子14のインピーダンスは通過帯域にわたり誘導性となる。また、並列腕共振子23の共振帯域は弾性波フィルタ1の通過帯域を含むこととなり、並列腕共振子23のインピーダンスは通過帯域にわたり誘導性となる。
【0078】
さらに、共振周波数frs14は共振周波数frp23よりも高く、反共振周波数fas14は反共振周波数fap23よりも高い。
【0079】
つまり、インピーダンスが極小となる共振周波数frs14およびfrp23のうち共振周波数frs14が通過帯域により近く、インピーダンスが極大となる反共振周波数fas14およびfap23のうち反共振周波数fas14が通過帯域からより遠い。これにより、直列腕共振子14の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なり、並列腕共振子23の誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。
【0080】
図5Aは、実施の形態に係る高周波モジュール100の回路構成図である。また、
図5Bは、比較例に係る高周波モジュール500の回路構成図である。また、
図6Aは、実施の形態および比較例に係る高周波モジュールの通過帯域を含む帯域(1800~2800MHz)のインピーダンスを示すスミスチャートである。
【0081】
なお、本実施の形態に係る高周波モジュール100は、
図5Aに示すように、入力端子140、および、入力端子140に接続される外部回路とのインピーダンス整合をとるためのインダクタ42が付加されてもよい。
【0082】
一方、比較例に係る高周波モジュール500は、弾性波フィルタ501と、低雑音増幅器2と、インダクタ41および43と、入力端子140と、出力端子130と、を備える。弾性波フィルタ501は、弾性波フィルタ1と同様の回路構成を有し、4つの直列腕共振子、3つの並列腕共振子および2つのキャパシタを有する。ただし、上記4つの直列腕共振子のそれぞれの共振周波数は弾性波フィルタ501の通過帯域内に位置し、上記3つの並列腕共振子のそれぞれの反共振周波数は弾性波フィルタ501の通過帯域内に位置する。これと、弾性波共振子の構造(IDT電極構造または圧電膜積層構造)に起因して、弾性波フィルタ501の通過帯域におけるインピーダンスは容量性となる傾向にある。これにより、容量性の入力インピーダンスを有する低雑音増幅器2と弾性波フィルタ501との間に、誘導性インピーダンスを有するインダクタ41を配置することで基準インピーダンスにて双方の整合をとることが可能となる。ただし、低雑音増幅器2と弾性波フィルタ501との間にインダクタ41を配置した場合、インダクタ41の配線に起因した寄生容量32が低雑音増幅器2の入力端子近傍に発生する。
【0083】
図6Aに示すように、ノードAから低雑音増幅器2を見た通過帯域のインピーダンスは容量性インピーダンス(A)となる。
【0084】
これに対して、比較例に係る高周波モジュール500では、寄生容量32が並列付加されることで、ノードBから低雑音増幅器2を見た帯域(1800~2800MHz)のインピーダンスは、
図6Aに示すように、等コンダクタンス円を時計回りに移動し、より高い容量性インピーダンス(B)となる。また、ノードC2から弾性波フィルタ501、インダクタ41および低雑音増幅器2を見た帯域(1800~2800MHz)のインピーダンスは、
図6Aに示すように、インピーダンス(B)に対して等レジスタンス円(以下、等レジスタンス円RBと記す)を時計回りに移動し、インピーダンス(C2)となる。
【0085】
一方、本実施の形態に係る高周波モジュール100では、インピーダンス整合用のインダクタ41が付加されていないため、ノードC1から、弾性波フィルタ1および低雑音増幅器2を見た帯域(1800~2800MHz)のインピーダンスは、
図6Aに示すように、インピーダンス(A)に対して、等レジスタンス円RBよりも高レジスタンスの等レジスタンス円を時計回りに移動し、インピーダンス(C1)となる。
【0086】
これにより、
図6Aに示すように、比較例に係る高周波モジュール500では、インダクタ41の付加に起因して発生する寄生容量32により、弾性波フィルタ501の入力側から見た通過帯域のインピーダンスは実施の形態に係る高周波モジュール100と比較して、低インピーダンスとなり基準インピーダンスからずれてしまう。
【0087】
つまり、本実施の形態では、弾性波フィルタ1の通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることが可能となるので、高周波モジュール100のインピーダンスを、インダクタ41を付加することなく基準インピーダンスに近づけることが可能となる。よって、弾性波フィルタ1および高周波モジュール100の整合損失を低減でき、高周波モジュール100を小型化できる。
【0088】
さらに、前述したように、共振周波数frs14は共振周波数frp23よりも高く、反共振周波数fas14は反共振周波数fap23よりも高い。これにより、直列腕共振子14の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なり、並列腕共振子23の誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。これによれば、弾性波フィルタ1の挿入損失を低減できる。
【0089】
よって、整合損失および挿入損失の双方の観点から低損失性が確保された弾性波フィルタ1および高周波モジュール100を提供できる。
【0090】
なお、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1において、第1直列腕共振器(直列腕共振子14)は、複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続され、第1並列腕共振器(並列腕共振子23)は、複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されている。
【0091】
これによれば、通過帯域が誘導性インピーダンスを示す共振器が、容量性インピーダンスを示す低雑音増幅器2の入力端子に最も近く配置されるので、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とのインピーダンス整合を高効率かつ高精度に合わせることが可能となる。
【0092】
なお、第1直列腕共振器は、直列腕共振子14でなくてもよく、直列腕共振子11~13のいずれかであってもよい。また、第1並列腕共振器は、並列腕共振子23でなくてもよく、並列腕共振子21または22であってもよい。つまり、第1直列腕共振器は、複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されていなくてもよく、また、第1並列腕共振器は、複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されていなくてもよい。この場合であっても、弾性波フィルタ1の通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることが可能となるので、弾性波フィルタ1および高周波モジュール100の整合損失を低減でき、高周波モジュール100を小型化できる。
【0093】
また、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、第1直列腕共振器および第1並列腕共振器を少なくとも1つずつ備えればよい。つまり、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1において、直列腕共振子11~13および並列腕共振子21~22のそれぞれは、共振帯域が通過帯域を含まなくてもよい。
【0094】
また、本発明に係る弾性波フィルタにおいて、複数の弾性波共振器のうちで、共振周波数が通過帯域の低周波端以下かつ反共振周波数が通過帯域の高周波端以上である弾性波共振器の数は、共振周波数が通過帯域の低周波端より高い、または、反共振周波数が通過帯域の高周波端より低い弾性波共振器の数よりも多いことが望ましい。
【0095】
これによれば、通過帯域のインピーダンスが誘導性である弾性波共振器の数が、通過帯域のインピーダンスが容量性である弾性波共振器の数よりも多くなるので、弾性波フィルタ1全体の通過帯域のインピーダンスが誘導性となる。よって、容量性の入力インピーダンスを有する低雑音増幅器2と弾性波フィルタ1とのインピーダンス整合をより高精度にとることが可能となる。よって、整合損失がより低減された弾性波フィルタ1および高周波モジュール100を提供できる。
【0096】
図6Bは、比較例に係る高周波モジュール500のインダクタ41のインダクタンス値Lgと雑音指数との関係を表すグラフである。同図に示すように、インダクタンス値Lgが小さくなるほど、インダクタ41の抵抗成分が小さくなることで、低雑音増幅器2の雑音指数が低減される。また、本実施の形態に係る高周波モジュール100のように、インダクタ41が付加されない(インダクタンス値Lgが0である)場合、インダクタ41の実装電極および当該実装電極から低雑音増幅器2までの配線に起因して発生する寄生容量32が小さくなることで、低雑音増幅器2の雑音指数は大幅に低減される。
【0097】
図6Cは、実施の形態および比較例に係る低雑音増幅器2の雑音指数の周波数特性を示すグラフである。実施の形態に係る低雑音増幅器2のほうが、比較例に係る低雑音増幅器2よりも、通過帯域を含む帯域(1800~2800MHz)にわたり雑音指数が低くなっている。よって、本実施の形態に係る高周波モジュール100によれば、低雑音増幅器2の雑音指数を低減できる。
【0098】
[4 変形例1に係る弾性波フィルタ1Aの構成]
図7は、実施の形態の変形例1に係る弾性波フィルタ1Aの回路構成図である。同図に示すように、変形例1に係る弾性波フィルタ1Aは、帯域通過型のフィルタ(バンドパスフィルタ)であって、直列腕共振子11、12、13および16と、並列腕共振子21、22および25と、キャパシタ35および36と、入出力端子110および120と、を備える。本変形例に係る弾性波フィルタ1Aは、実施の形態に係る弾性波フィルタ1と比較して、直列腕共振子14、並列腕共振子23、キャパシタ15および24が配置されず、直列腕共振子16、並列腕共振子25、キャパシタ35および36が配置される点が回路構成として異なる。以下、本変形例に係る弾性波フィルタ1Aについて、実施の形態に係る弾性波フィルタ1と同じ構成については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0099】
互いに並列接続された直列腕共振子16およびキャパシタ36は、弾性波共振子を含む弾性波共振器の一例であり、直列腕共振器16Aを構成する。直列腕共振器16Aは、入出力端子110(第2入出力端子)および入出力端子120(第12入出力端子)を結ぶ直列腕経路に配置される。キャパシタ36が直列腕共振子16に並列接続されることで、直列腕共振器16Aの共振帯域幅は、直列腕共振子16の共振帯域幅よりも狭くなる。
【0100】
直列腕共振子11~13および直列腕共振器16Aのそれぞれは、入出力端子110から順に、直列腕共振子11、直列腕共振器16A、直列腕共振子12および13の順に接続されている。
【0101】
互いに直列接続された並列腕共振子25およびキャパシタ35は、弾性波共振子を含む弾性波共振器の一例であり、並列腕共振器25Aを構成する。並列腕共振器25Aは、直列腕共振子12および13の接続点とグランドとの間に接続される。キャパシタ35が並列腕共振子25に直列接続されることで、並列腕共振器25Aの共振帯域幅は、並列腕共振子25の共振帯域幅よりも狭くなる。
【0102】
直列腕共振子13は、第1直列腕共振器の一例であり、共振周波数frs13(第1共振周波数)および反共振周波数fas13(第1反共振周波数)を有する。
【0103】
並列腕共振器25Aは、第1並列腕共振器の一例であり、共振周波数frp25A(第2共振周波数)および反共振周波数fap25A(第2反共振周波数)を有する。
【0104】
直列腕共振子13(第1直列腕共振器)の共振周波数frs13(第1共振周波数)および並列腕共振器25A(第1並列腕共振器)の共振周波数frp25A(第2共振周波数)は、弾性波フィルタ1Aの通過帯域の低周波端以下である。また、直列腕共振子13(第1直列腕共振器)の反共振周波数fas13(第1反共振周波数)および並列腕共振器25A(第1並列腕共振器)の反共振周波数fap25A(第2反共振周波数)は、上記通過帯域の高周波端以上である。
【0105】
さらに、共振周波数frs13は共振周波数frp25Aよりも高く、反共振周波数fas13は反共振周波数fap25Aよりも高い。
【0106】
これによれば、本変形例に係る弾性波フィルタ1Aの通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることにより、弾性波フィルタ1Aおよび低雑音増幅器2を有する本変形例に係る高周波モジュールのインピーダンスを整合用のインダクタを付加することなく、基準インピーダンスに近づけることが可能となる。よって、弾性波フィルタ1Aおよび本変形例に係る高周波モジュールの整合損失を低減でき、当該高周波モジュールを小型化できる。
【0107】
さらに、直列腕共振子13の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なり、並列腕共振器25Aの誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。これによれば、弾性波フィルタ1Aの挿入損失を低減できる。
【0108】
よって、整合損失および挿入損失の双方の観点から低損失性が確保された弾性波フィルタ1Aおよび高周波モジュールを提供できる。
【0109】
なお、本変形例において、第1直列腕共振器は、直列腕共振子13に限定されず、直列腕共振子11、12および直列腕共振器16Aのいずれかであってもよい。また、第1並列腕共振器は、並列腕共振器25Aに限定されず、並列腕共振子21および22のいずれかであってもよい。
【0110】
なお、本変形例に係る弾性波フィルタ1Aにおいて、第1直列腕共振器(直列腕共振子13)は、複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続され、第1並列腕共振器(並列腕共振器25A)は、複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されている。
【0111】
これによれば、通過帯域が誘導性インピーダンスを示す共振器が、容量性インピーダンスを示す低雑音増幅器2の入力端子に最も近く配置されるので、弾性波フィルタ1Aと低雑音増幅器2とのインピーダンス整合を高効率かつ高精度に合わせることが可能となる。
【0112】
なお、第1直列腕共振器(直列腕共振子13)は、複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されていなくてもよく、また、第1並列腕共振器(並列腕共振器25A)は、複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されていなくてもよい。この場合であっても、弾性波フィルタ1Aの通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることが可能となるので、弾性波フィルタ1Aおよび高周波モジュールの整合損失を低減できる。
【0113】
また、並列腕共振器25Aの共振帯域幅が並列腕共振子25の共振帯域幅よりも狭くなり、直列腕共振器16Aの共振帯域幅が直列腕共振子16の共振帯域幅よりも狭くなることで、通過帯域近傍の減衰量を大きく確保できる。
【0114】
[5 変形例2に係る弾性波フィルタ1Bの構成]
図8Aは、実施の形態の変形例2に係る弾性波フィルタ1Bの回路構成図である。
図8Bは、変形例2に係る弾性波フィルタ1Bの通過帯域近傍帯域の通過特性および並列腕共振器20のインピーダンス特性を示すグラフである。
図8Cは、変形例2に係る弾性波フィルタ1Bの広域の並列腕共振器20のインピーダンス特性を示すグラフである。
【0115】
図8Aに示すように、変形例2に係る弾性波フィルタ1Bは、帯域通過型のフィルタ(バンドパスフィルタ)であって、直列腕共振子11、12、13および14と、並列腕共振子21、22、23および25と、インダクタ45と、入出力端子110および120と、を備える。本変形例に係る弾性波フィルタ1Bは、実施の形態に係る弾性波フィルタ1と比較して、キャパシタ15および24が配置されず、並列腕共振子25およびインダクタ45が配置される点が回路構成として異なる。以下、本変形例に係る弾性波フィルタ1Bについて、実施の形態に係る弾性波フィルタ1と同じ構成については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0116】
直列腕共振子11~14のそれぞれは、入出力端子110から順に、直列腕共振子11、12、13および14の順に接続されている。
【0117】
並列腕共振子21は、直列腕共振子11および12の接続点とグランドとの間に接続される。並列腕共振子22は、直列腕共振子12および13の接続点とグランドとの間に接続される。並列腕共振子23は、直列腕共振子13および14の接続点とグランドとの間に接続される。
【0118】
互いに直列接続された並列腕共振子25(第1弾性波共振子)およびインダクタ45(第1インダクタ)は、弾性波共振子を含む弾性波共振器の一例であり、並列腕共振器20を構成する。並列腕共振器20は、直列腕共振子14および入出力端子120の接続点とグランドとの間に接続される。インダクタ45が並列腕共振子25に直列接続されることで、並列腕共振器20の共振周波数frp20が並列腕共振子25の共振周波数frp25に対して低周波側にシフトする。つまり、インダクタ45が並列腕共振子25に直列接続されることで、並列腕共振器20の共振帯域幅は、並列腕共振子25の共振帯域幅よりも広くなる。
【0119】
直列腕共振子11~14のうち、直列腕共振子14は、第1直列腕共振器の一例であり、共振周波数frs14(第1共振周波数)および反共振周波数fas14(第1反共振周波数)を有する。
【0120】
並列腕共振子21~23および並列腕共振器20のうち、並列腕共振器20は、第1並列腕共振器の一例であり、共振周波数frp20(第2共振周波数)および反共振周波数fap20(第2反共振周波数)を有する。
【0121】
直列腕共振子14(第1直列腕共振器)の共振周波数frs14(第1共振周波数)および並列腕共振器20(第1並列腕共振器)の共振周波数frp20(第2共振周波数)は、弾性波フィルタ1Bの通過帯域の低周波端以下である。また、直列腕共振子14(第1直列腕共振器)の反共振周波数fas14(第1反共振周波数)および並列腕共振器20(第1並列腕共振器)の反共振周波数fap20(第2反共振周波数)は、上記通過帯域の高周波端以上である。
【0122】
上記構成によれば、本変形例に係る弾性波フィルタ1Bの通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることにより、弾性波フィルタ1Bおよび低雑音増幅器2を有する本変形例に係る高周波モジュールのインピーダンスを整合用のインダクタを付加することなく、基準インピーダンスに近づけることが可能となる。よって、弾性波フィルタ1Bおよび本変形例に係る高周波モジュールの整合損失を低減できる。
【0123】
また、共振周波数frs14は共振周波数frp20よりも高く、反共振周波数fas14は反共振周波数fap20よりも高い。つまり、インピーダンスが極小となる共振周波数frs14およびfrp20のうち共振周波数frs14が通過帯域により近く、インピーダンスが極大となる反共振周波数fas14およびfap20のうち反共振周波数fas14が通過帯域からより遠い。さらに、
図8Bに示すように、並列腕共振器20の反共振周波数fap20と弾性波フィルタ1Bの通過帯域の高周波端との周波数差Δfaは、上記通過帯域の低周波端と並列腕共振器20の共振周波数frp20との周波数差Δfrよりも小さい。
【0124】
これにより、直列腕共振子14の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なり、並列腕共振器20の誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。よって、弾性波フィルタ1Bの挿入損失を低減できる。
【0125】
なお、本変形例に係る弾性波フィルタ1Bにおいて、第1直列腕共振器(直列腕共振子14)は、複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続され、第1並列腕共振器(並列腕共振器20)は、複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されている。
【0126】
これによれば、通過帯域が誘導性インピーダンスを示す共振器が、容量性インピーダンスを示す低雑音増幅器2の入力端子に最も近く配置されるので、弾性波フィルタ1Bと低雑音増幅器2とのインピーダンス整合を高効率かつ高精度に合わせることが可能となる。
【0127】
なお、第1直列腕共振器(直列腕共振子14)は、複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されていなくてもよく、また、第1並列腕共振器(並列腕共振器20)は、複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続されていなくてもよい。この場合であっても、弾性波フィルタ1Bの通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることが可能となるので、弾性波フィルタ1Bおよび高周波モジュールの整合損失を低減できる。
【0128】
また、
図8Cに示すように、並列腕共振器20はDC(直流)領域において高インピーダンスを有する。これにより、低雑音増幅器2に供給される直流バイアス電流(直流バイアス電圧)が弾性波フィルタ1B側へ漏洩することを防止できるので、弾性波フィルタ1Bと低雑音増幅器2との間にDCカット用のキャパシタを配置する必要がない。
【0129】
これによれば、本変形例に係る高周波モジュールを小型化できる。
【0130】
また、本変形例に係る弾性波フィルタ1Bでは、弾性波フィルタ1Bが有する全ての弾性波共振子は、同一の圧電性基板70に形成されている。これにより、弾性波フィルタ1Bの通過帯域を形成する全ての弾性波共振子の共振帯域を上記通過帯域と同程度に設定できる。これに対して、並列腕共振子25にインダクタ45を直列接続することで、上記通過帯域よりも広い共振帯域が必要な並列腕共振器20を設定できる。これによれば、広い共振帯域幅を有する弾性波共振子を準備する必要がなく、かつ、全ての弾性波共振子を1枚の圧電性基板に集積できるので、弾性波フィルタ1Bを小型化できる。
【0131】
よって、整合損失および挿入損失の双方の観点から低損失性が確保された小型の弾性波フィルタ1Bおよび高周波モジュールを提供できる。
【0132】
なお、本変形例において、第1直列腕共振器は、直列腕共振子14に限定されず、直列腕共振子11~13のいずれかであってもよい。また、第1並列腕共振器は、並列腕共振器20に限定されず、並列腕共振子21~23のいずれかであってもよい。
【0133】
また、本変形例に係る弾性波フィルタ1Bにおいて、直列腕共振子11~14のいずれか(第2弾性波共振子)に第2インダクタが並列接続されてもよい。この場合、第2弾性波共振子と第2インダクタとが並列接続された回路が、第1直列腕共振器であってもよい。
【0134】
第2インダクタが第2弾性波共振子に並列接続されることで、第1直列腕共振器の第1反共振周波数が第2弾性波共振子の反共振周波数に対して高周波側にシフトする。つまり、第2インダクタが第2弾性波共振子に並列接続されることで、第1直列腕共振器の共振帯域幅は、第2弾性波共振子の共振帯域幅よりも広くなる。
【0135】
この場合、第1直列腕共振器の第1共振周波数および第1並列腕共振器の第2共振周波数は、弾性波フィルタ1Bの通過帯域の低周波端以下である。また、第1直列腕共振器の第1反共振周波数および第1並列腕共振器の第2反共振周波数は、上記通過帯域の高周波端以上である。
【0136】
上記構成によれば、本変形例に係る弾性波フィルタ1Bの通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることにより、弾性波フィルタ1Bおよび低雑音増幅器2を有する本変形例に係る高周波モジュールのインピーダンスを整合用のインダクタを付加することなく、基準インピーダンスに近づけることが可能となる。よって、弾性波フィルタ1Bおよび本変形例に係る高周波モジュールの整合損失を低減できる。
【0137】
また、第1共振周波数は第2共振周波数よりも高く、第1反共振周波数は第2反共振周波数よりも高い。つまり、インピーダンスが極小となる第1共振周波数および第2共振周波数のうち第1共振周波数が通過帯域により近く、インピーダンスが極大となる第1反共振周波数および第2反共振周波数のうち第1反共振周波数が通過帯域からより遠い。さらに、弾性波フィルタ1Bの通過帯域の低周波端と第1共振周波数との周波数差Δfr1は、第1反共振周波数と上記通過帯域の高周波端との周波数差Δfa1よりも小さい。
【0138】
これにより、第1直列腕共振器の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なり、第1並列腕共振器の誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。よって、弾性波フィルタ1Bの挿入損失を低減できる。
【0139】
[6 高周波モジュール100の部品配置]
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール100の部品配置について説明する。
【0140】
図9は、実施の形態に係る高周波モジュール100の平面図および断面図である。
図9の(a)には、実装基板90の主面90aをz軸正方向側から見た場合の回路部品の配置が示されている。また、
図9の(b)には、実装基板90の主面90bをz軸正方向側から透視した場合の回路部品の配置が示されている。また、
図9の(c)には、
図9の(a)および(b)のIXC-IXC線における断面図が示されている。なお、
図9において、実装基板90および各回路部品を接続する配線の図示が一部省略されている。
【0141】
図9に示された高周波モジュール100は、
図1に示された高周波モジュール100に対して、さらに、実装基板90を有している。
【0142】
実装基板90は、互いに対向する主面90a(第1主面)および90b(第2主面)を有する。なお、
図9において、実装基板90は、平面視において矩形状を有するが、実装基板90の形状はこれに限定されない。
【0143】
実装基板90としては、例えば、複数の誘電体層の積層構造を有する低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)基板もしくは高温同時焼成セラミックス(HTCC:High Temperature Co-fired Ceramics)基板、部品内蔵基板、再配線層(RDL:Redistribution Layer)を有する基板、または、プリント基板等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0144】
実装基板90の主面90aには弾性波フィルタ1が配置されている。実装基板90の主面90bには低雑音増幅器2が配置されている。なお、主面90aおよび90bに樹脂部材およびシールド電極層が形成されていてもよい。これによれば、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とが実装基板90の主面90aおよび90bに振り分けて配置されているので、高周波モジュール100を小型化できる。
【0145】
図9の(a)に示すように、弾性波フィルタ1は、例えば、圧電性基板およびパッケージなどで1チップ化(以下、フィルタチップと記す)されている。フィルタチップの実装基板90と対面する主面には、入出力端子110(IN)および120(OUT)、ならびにグランド電極(GND)が形成されている。なお、入出力端子110および120ならびにグランド電極は、平面電極であってもよく、また、バンプ電極であってもよい。
【0146】
図9の(b)に示すように、低雑音増幅器2は、集積回路80に形成される。集積回路80の実装基板90と対面する主面には、低雑音増幅器2の入力端子210(IN)および出力端子220(OUT)が形成されている。なお、入力端子210および出力端子220は、平面電極であってもよく、また、バンプ電極であってもよい。
【0147】
集積回路80は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いて構成され、具体的にはSOI(Silicon on Insulator)プロセスにより製造されてもよい。なお、集積回路80は、CMOSに限定されない。
【0148】
図9の(c)に示すように、入出力端子120と入力端子210とは、整合用の回路素子を介さずに、ビア導体300により接続されている。
【0149】
ここで、実装基板90を平面視した場合、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とは少なくとも一部重なっている。
【0150】
これによれば、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とを接続する配線を短くできるので、高周波モジュール100を低損失化できる。
【0151】
また、さらに、実装基板90を平面視した場合、入出力端子120と入力端子210とは少なくとも一部重なってもよい。
【0152】
これによれば、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とをビア導体300のみで接続できるので、高周波モジュール100をより低損失化できる。
【0153】
[7 効果など]
以上のように、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、入出力端子110および120を結ぶ直列腕経路に配置された直列腕共振子14(第1直列腕共振器)と、直列腕経路とグランドとの間に接続された並列腕共振子23(第1並列腕共振器)と、を備え、直列腕共振子14および並列腕共振子23のそれぞれは弾性波共振子を含み、直列腕共振子14の共振周波数frs14(第1共振周波数)および並列腕共振子23の共振周波数frp23(第2共振周波数)は、弾性波フィルタ1の通過帯域の低周波端以下であり、直列腕共振子14の反共振周波数fas14(第1反共振周波数)および並列腕共振子23の反共振周波数fap23(第2反共振周波数)は、上記通過帯域の高周波端以上であり、共振周波数frs14は共振周波数frp23よりも高く、反共振周波数fas14は反共振周波数fap23よりも高い。
【0154】
これによれば、直列腕共振子14および並列腕共振子23の上記通過帯域におけるインピーダンスは誘導性となるので、弾性波フィルタ1の通過帯域におけるインピーダンスを誘導性とすることが可能となる。よって、容量性インピーダンスを有する外部回路と接続された場合に、インピーダンス整合用のインダクタを付加することなく、弾性波フィルタ1および上記外部回路を合わせたインピーダンスを基準インピーダンスに近づけることが可能となる。よって、弾性波フィルタ1および高周波モジュール100の整合損失を低減できる。さらに、直列腕共振子14の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なり、並列腕共振子23の誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。これによれば、弾性波フィルタ1の挿入損失を低減できる。よって、整合損失および挿入損失の双方の観点から低損失性が確保された弾性波フィルタ1を提供できる。
【0155】
また例えば、弾性波フィルタ1は、複数の直列腕共振器と複数の並列腕共振器とを備え、直列腕共振子14は上記複数の直列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続され、並列腕共振子23は上記複数の並列腕共振器のうちで入出力端子120に最も近く接続される。
【0156】
これによれば、入出力端子120に接続される外部回路が容量性インピーダンスを有する場合、上記通過帯域において誘導性インピーダンスを示す弾性波共振器が、上記外部回路に最も近く配置されるので、弾性波フィルタ1と上記外部回路とのインピーダンス整合を高効率かつ高精度に合わせることが可能となる。
【0157】
また例えば、弾性波フィルタ1において、複数の弾性波共振器のうちで、共振周波数が上記通過帯域の低周波端以下かつ反共振周波数が上記通過帯域の高周波端以上である弾性波共振器の数は、共振周波数が上記通過帯域の低周波端より高い、または、反共振周波数が上記通過帯域の高周波端より低い弾性波共振器の数よりも多い。
【0158】
これによれば、上記通過帯域のインピーダンスが誘導性である弾性波共振器の数が、通過帯域のインピーダンスが容量性である弾性波共振器の数よりも多くなるので、弾性波フィルタ1全体の通過帯域のインピーダンスが誘導性となる。よって、容量性インピーダンスを有する外部回路と弾性波フィルタ1とのインピーダンス整合をより高精度にとることが可能となる。よって、整合損失がより低減された弾性波フィルタ1を提供できる。
【0159】
また例えば、弾性波フィルタ1は、さらに、直列腕経路に直列配置されたキャパシタ15および直列腕経路とグランドとを結ぶ並列腕経路に直列配置されたキャパシタ24の少なくとも1つを備える。
【0160】
これによれば、広い共振帯域幅を有する弾性波共振子を用いて狭い通過帯域を有する弾性波フィルタを設計し易くなる。
【0161】
また例えば、変形例2に係る弾性波フィルタ1Bにおいて、並列腕共振器20は、直列接続された並列腕共振子25およびインダクタ45を含む。
【0162】
これによれば、上記通過帯域よりも広い共振帯域を有する弾性波共振子を準備することなく、共振帯域が広い並列腕共振器20を形成できる。
【0163】
また例えば、弾性波フィルタ1Bにおいて、反共振周波数fap20と上記通過帯域の高周波端との周波数差Δfaは、上記通過帯域の低周波端と共振周波数frp20との周波数差Δfrよりも小さい。
【0164】
これによれば、並列腕共振器20の誘導性インピーダンス帯域のうちで高インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。よって、弾性波フィルタ1Bの挿入損失を低減できる。
【0165】
また例えば、弾性波フィルタ1Bにおいて、第1直列腕共振器は、並列接続された第2弾性波共振子および第2インダクタを含む。
【0166】
これによれば、上記通過帯域よりも広い共振帯域を有する弾性波共振子を準備することなく、共振帯域が広い第1直列腕共振器を形成できる。
【0167】
また例えば、弾性波フィルタ1Bにおいて、第1共振周波数と上記通過帯域の低周波端との周波数差は、上記通過帯域の高周波端と第1反共振周波数との周波数差よりも小さい。
【0168】
これによれば、第1直列腕共振器の誘導性インピーダンス帯域のうちで低インピーダンス帯域が通過帯域と重なる。よって、弾性波フィルタ1Bの挿入損失を低減できる。
【0169】
また例えば、弾性波フィルタ1Bにおいて、弾性波フィルタ1Bが有する全ての弾性波共振子は同一の圧電性基板に形成される。
【0170】
これによれば、弾性波フィルタ1Bの通過帯域を形成する全ての弾性波共振子の共振帯域幅を上記通過帯域幅と同程度に設定できる。これに対して、並列腕共振子25にインダクタ45を直列接続することで、上記通過帯域よりも広い共振帯域が必要な並列腕共振器20を設定できる。よって、広い共振帯域幅を有する弾性波共振子を準備する必要がなく、かつ、全ての弾性波共振子を1枚の圧電性基板に集積できるので、弾性波フィルタ1Bを小型化できる。
【0171】
また、本実施の形態に係る高周波モジュール100は、互いに対向する主面90aおよび90bを有する実装基板90と、弾性波フィルタ1(または1A、1B)と、入力端子210が入出力端子120に接続された低雑音増幅器2と、を備え、弾性波フィルタ1は主面90aに配置され、低雑音増幅器2は主面90bに配置され、実装基板90を平面視した場合、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とは少なくとも一部重なる。
【0172】
これによれば、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とを接続する配線を短くできるので、高周波モジュール100を低損失化および小型化できる。
【0173】
また、高周波モジュール100において、実装基板90を平面視した場合、入出力端子120と入力端子210とは少なくとも一部重なる。
【0174】
これによれば、弾性波フィルタ1と低雑音増幅器2とをビア導体300のみで接続できるので、高周波モジュール100をより低損失化できる。
【0175】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る弾性波フィルタおよび高周波モジュールについて、実施の形態および変形例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る弾性波フィルタおよび高周波モジュールを内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0176】
また、例えば、上記実施の形態および変形例に係る弾性波フィルタおよび高周波モジュールにおいて、各構成要素の間に、インダクタおよびキャパシタなどの整合素子、ならびにスイッチ回路が接続されていてもかまわない。
【0177】
以下に、上記実施の形態および変形例に基づいて説明した弾性波フィルタおよび高周波モジュールの特徴を示す。
【0178】
<1>
帯域通過型の弾性波フィルタであって、
第1入出力端子および第2入出力端子を結ぶ直列腕経路に配置された第1直列腕共振器と、
前記直列腕経路とグランドとの間に接続された第1並列腕共振器と、を備え、
前記第1直列腕共振器および前記第1並列腕共振器のそれぞれは、弾性波共振子を含み、
前記第1直列腕共振器の共振周波数である第1共振周波数および前記第1並列腕共振器の共振周波数である第2共振周波数は、前記弾性波フィルタの通過帯域の低周波端以下であり、
前記第1直列腕共振器の反共振周波数である第1反共振周波数および前記第1並列腕共振器の反共振周波数である第2反共振周波数は、前記通過帯域の高周波端以上であり、
前記第1共振周波数は前記第2共振周波数よりも高く、前記第1反共振周波数は前記第2反共振周波数よりも高い、弾性波フィルタ。
【0179】
<2>
前記第1直列腕共振器を含む複数の直列腕共振器と、
前記第1並列腕共振器を含む複数の並列腕共振器と、を備え、
前記第1直列腕共振器は、前記複数の直列腕共振器のうちで前記第1入出力端子に最も近く接続され、
前記第1並列腕共振器は、前記複数の並列腕共振器のうちで前記第1入出力端子に最も近く接続される、<1>に記載の弾性波フィルタ。
【0180】
<3>
前記第1直列腕共振器および前記第1並列腕共振器を含む複数の弾性波共振器、を備え、
前記複数の弾性波共振器のうちで、共振周波数が前記通過帯域の低周波端以下かつ反共振周波数が前記通過帯域の高周波端以上である弾性波共振器の数は、共振周波数が前記通過帯域の低周波端より高い、または、反共振周波数が前記通過帯域の高周波端より低い弾性波共振器の数よりも多い、<1>に記載の弾性波フィルタ。
【0181】
<4>
さらに、
前記直列腕経路に直列配置された第1キャパシタ、および、前記直列腕経路とグランドとを結ぶ並列腕経路に直列配置された第2キャパシタの少なくとも1つを備える、<1>~<3>のいずれかに記載の弾性波フィルタ。
【0182】
<5>
前記第1並列腕共振器は、直列接続された第1弾性波共振子および第1インダクタを含む、<1>~<4>のいずれかに記載の弾性波フィルタ。
【0183】
<6>
前記第2反共振周波数と前記通過帯域の高周波端との周波数差は、前記通過帯域の低周波端と前記第2共振周波数との周波数差よりも小さい、<5>に記載の弾性波フィルタ。
【0184】
<7>
前記第1直列腕共振器は、並列接続された第2弾性波共振子および第2インダクタを含む、<1>~<4>のいずれかに記載の弾性波フィルタ。
【0185】
<8>
前記第1共振周波数と前記通過帯域の低周波端との周波数差は、前記通過帯域の高周波端と前記第1反共振周波数との周波数差よりも小さい、<7>に記載の弾性波フィルタ。
【0186】
<9>
前記第1直列腕共振器および前記第1並列腕共振器を含む複数の弾性波共振器、を備え、
前記複数の弾性波共振器のそれぞれは、弾性波共振子を含み、
前記弾性波フィルタが有する全ての前記弾性波共振子は、同一の圧電性基板に形成される、<1>~<8>のいずれかに記載の弾性波フィルタ。
【0187】
<10>
互いに対向する第1主面および第2主面を有する実装基板と、
<1>~<9>のいずれかに記載の弾性波フィルタと、
入力端子が前記第1入出力端子に接続された低雑音増幅器と、を備え、
前記弾性波フィルタは前記第1主面に配置され、
前記低雑音増幅器は前記第2主面に配置され、
前記実装基板を平面視した場合、前記弾性波フィルタと前記低雑音増幅器とは少なくとも一部重なる、高周波モジュール。
【0188】
<11>
前記実装基板を平面視した場合、前記第1入出力端子と前記入力端子とは少なくとも一部重なる、<10>に記載の高周波モジュール。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、マルチバンド化された周波数規格に適用できる低損失の弾性波フィルタおよび高周波モジュールとして、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0190】
1、1A、1B、501 弾性波フィルタ
2 低雑音増幅器
11、12、13、14、16 直列腕共振子
15、24、35、36 キャパシタ
16A 直列腕共振器
20、25A 並列腕共振器
21、22、23、25 並列腕共振子
32 寄生容量
41、42、43、45 インダクタ
50、70 圧電性基板
51 高音速支持基板
52 低音速膜
53 圧電膜
54 IDT電極
55、58 保護層
57 圧電単結晶基板
60 弾性波共振子
60a、60b 櫛形電極
61a、61b 電極指
62a、62b バスバー電極
65 支持基板
66 下部電極
67 圧電体層
68 上部電極
80 集積回路
90 実装基板
90a、90b 主面
100、500 高周波モジュール
110、120 入出力端子
130、220 出力端子
140、210 入力端子
300 ビア導体
540 密着層
542 主電極層