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特開2025-115743太陽光パネルリサイクル方法、及び太陽光パネルリサイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025115743
(43)【公開日】2025-08-07
(54)【発明の名称】太陽光パネルリサイクル方法、及び太陽光パネルリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20250731BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20250731BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20250731BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20250731BHJP
   B09B 101/15 20220101ALN20250731BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B3/35
B09B3/40
B09B5/00 Z
B09B101:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010360
(22)【出願日】2024-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 竜也
(72)【発明者】
【氏名】保田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】宮城 雅徳
(72)【発明者】
【氏名】町屋 秀憲
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004BA10
4D004CA02
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA29
4D004CA40
4D004CB13
4D004CB31
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA11
4D004DA16
4D004DA17
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルの劣化具合に応じ、適切なリサイクル方法を選定する。
【解決手段】太陽光パネルリサイクル方法は、廃棄された太陽光パネルを押圧して前記太陽光パネルを構成するガラスパネルに歪みを生じさせた状態と、前記ガラスパネルに前記歪みを生じさせない状態とのそれぞれにおいて、前記ガラスパネルに生じたマイクロクラックを検出する検出ステップと、前記歪みを生じさせる前後の前記マイクロクラックの状態変化に基づいて前記ガラスパネルの割れ易さを判定する判定ステップと、前記ガラスパネルの割れ易さの判定結果に基づいて、前記太陽光パネルのリサイクル方法を選択する選択ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄された太陽光パネルを押圧して前記太陽光パネルを構成するガラスパネルに歪みを生じさせた状態と、前記ガラスパネルに前記歪みを生じさせない状態とのそれぞれにおいて、前記ガラスパネルに生じたマイクロクラックを検出する検出ステップと、
前記歪みを生じさせる前後の前記マイクロクラックの状態変化に基づいて前記ガラスパネルの割れ易さを判定する判定ステップと、
前記ガラスパネルの割れ易さの判定結果に基づいて、前記太陽光パネルのリサイクル方法を選択する選択ステップと、
を含む太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記検出ステップは、光干渉方式、及び超音波探傷方式の少なくとも一方を採用して前記マイクロクラックを検出する
太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項3】
請求項1に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記選択ステップは、
前記判定ステップにおいて前記ガラスパネルが割れ易いと判定された場合、前記太陽光パネルを粉砕、溶解するリサイクル方法を選択する
太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記検出ステップは、前記ガラスパネルの曲げ量をX1、前記ガラスパネルの長手方向の長さをLとして、次式によって求まるひずみ量Xが0.1[%]となるように前記太陽光パネルを押圧する
ひずみ量X=X1/L[%]
太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項5】
請求項1に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記検出ステップの前段に、前記太陽光パネルの表面を洗浄する洗浄ステップ、を含む
太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項6】
請求項1に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記判定ステップにおいて前記ガラスパネルが割れにくいと判定された場合、前記太陽光パネルの発電性能に基づいて耐用年数を評価し、前記耐用年数に基づいて、前記太陽光パネルを中古品として再利用するリサイクル方法、または前記太陽光パネルを解体して前記ガラスパネルを中古品として再利用するリサイクル方法を選択する性能検査ステップ、
を含む太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項7】
請求項6に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記太陽光パネルを解体して前記ガラスパネルを中古品として再利用する際の前記ガラスパネルの歩留まり率を学習データとしてデータベース化し、前記学習データと、前記判定ステップにおける前記ガラスパネルの割れ易さを判定する際に用いる閾値とを入力とする機械学習を行い、前記歩留まり率を向上させ得る最適な前記閾値を決定する機械学習ステップ、
を含む太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の太陽光パネルリサイクル方法であって、
前記太陽光パネルを解体して前記ガラスパネルを中古品として再利用する際に、前記ガラスパネルの劣化程度を検出し、前記劣化程度に応じて前記ガラスパネルの再利用先の候補を選択する再利用先候補選択ステップ、
を含む太陽光パネルリサイクル方法。
【請求項9】
廃棄された太陽光パネルを押圧して前記太陽光パネルを構成するガラスパネルに歪みを生じさせた状態と、前記ガラスパネルに前記歪みを生じさせない状態とのそれぞれにおいて、前記ガラスパネルに生じたマイクロクラックを検出し、前記歪みを生じさせる前後の前記マイクロクラックの状態変化に基づいて前記ガラスパネルの割れ易さを判定する第1のマイクロクラック検査装置と、
前記ガラスパネルが割れ易いと判定された前記太陽光パネルを粉砕する太陽光パネル粉砕設備と、
前記ガラスパネルが割れにくいと判定された前記太陽光パネルの発電性能に基づいて耐用年数を評価する太陽光パネル性能検査装置と、
前記耐用年数が所定閾値以下の前記太陽光パネルを解体して前記ガラスパネルを分離する太陽光パネル解体・分離設備と、
を備える太陽光パネルリサイクルシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の太陽光パネルリサイクルシステムであって、
前記太陽光パネル粉砕設備から出力された粉砕ガラス、及び太陽光パネル解体・分離設備から出力された破損ガラスの少なくとも一方を溶解するガラス再融解設備、を備える
太陽光パネルリサイクルシステム。
【請求項11】
請求項9または10に記載の太陽光パネルリサイクルシステムであって、
太陽光パネル解体・分離設備から出力された前記ガラスパネルの劣化程度を検出し、前記劣化程度に応じて前記ガラスパネルの再利用先の候補を選択する第2のマイクロクラック検査装置、を備える
太陽光パネルリサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルリサイクル方法、及び太陽光パネルリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光パネルの設置が増加しており、将来的には劣化した太陽光パネルの廃棄の増加が予想される。廃棄された太陽光パネルは、ガラスパネル、シリコンセル、金属、封止材等に解体・分離してそれぞれをリサイクルすることが望ましい。しかしながら、実際には解体・分離のコストが高いために埋立処分されることが多く、2040年には最終処分場(埋立地)の枯渇が予想されている。よって、太陽光パネルの埋め立て処分量を減少させ、低コストでリサイクルさせる技術の出現が望まれている。
【0003】
太陽光パネルのリサイクルに関し、例えば特許文献1には、「ガラス板と太陽電池素子とが封止材を介して積層された太陽電池モジュールのガラス板の厚みを測定し、測定したガラス板の厚みの情報に基づいて、太陽電池モジュールのガラス板を破砕する破砕手段の可動範囲を決定してガラス板を破砕することを特徴とするリサイクル方法及びリサイクル装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-192942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術の場合、太陽電池モジュールのガラスパネルを破砕してリサイクルすることを前提としているため、太陽光パネルを解体・分離して得られたガラスパネル等に割れ等の破損が発生していても問題ない。
【0006】
一方、太陽光パネルを解体・分離して得られたガラスパネルを中古品として再利用する場合には、太陽光パネルを解体・分離する作業の際にガラスパネルに割れ等の破損をできるだけ発生させないように、すなわち歩留まり率が高くなるように当該作業を実施する必要がある。
【0007】
ただし、廃棄された太陽光パネルは、通常、長年に亘って屋外で使用されており、その劣化具合には差があるので、太陽光パネルの劣化具合に応じ、解体・分離して中古品として利用したり、粉砕・溶解して製品の材料として利用したりする等のリサイクル方法を選定することが不可欠である。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、太陽光パネルの劣化具合に応じ、適切なリサイクル方法を選定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る太陽光パネルリサイクル方法は、廃棄された太陽光パネルを押圧して前記太陽光パネルを構成するガラスパネルに歪みを生じさせた状態と、前記ガラスパネルに前記歪みを生じさせない状態とのそれぞれにおいて、前記ガラスパネルに生じたマイクロクラックを検出する検出ステップと、前記歪みを生じさせる前後の前記マイクロクラックの状態変化に基づいて前記ガラスパネルの割れ易さを判定する判定ステップと、前記ガラスパネルの割れ易さの判定結果に基づいて、前記太陽光パネルのリサイクル方法を選択する選択ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽光パネルの劣化具合に応じ、適切なリサイクル方法を選定することが可能となる。
【0012】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステムの構成例を示す図である。
図2図2は、マイクロクラック検査装置の構成例を示す図である。
図3図3は、最適なひずみ量の決定方法を説明するための図である。
図4図4は、最適なひずみ量の決定方法を説明するための図である。
図5図5は、最適なひずみ量の決定方法の説明するための図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステムの変形例を示す図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステムの構成例を示す図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステムの変形例を示す図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステムの構成例を示す図である。
図10図10は、機械学習装置の構成例を示す図である。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステムの変形例を示す図である。
図12図12は、従来の太陽光パネルリサイクルシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の複数の実施形態を説明する。各実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除しない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含む。また、「取得」は、その具体例として、主語が生成、算出、外部からの受信する、ことを少なくとも含むものとする。
【0015】
<従来の太陽光パネルリサイクルシステム100の構成例>
始めに、本発明と従来技術との差異を明確にするため、従来の太陽光パネルリサイクルシステム100の構成例について説明する。
【0016】
図12は、従来の太陽光パネルリサイクルシステム100の構成例を示している。太陽光パネルリサイクルシステム100は、太陽光パネル性能検査装置101、太陽光パネル解体・分離設備102、シリコンセル・金属再融解設備103、及びガラス再融解設備104を備える。
【0017】
太陽光パネル性能検査装置101は、廃棄された太陽光パネル1の発電性能を検査し、発電性能に基づいて今後の耐用年数を評価し、今後の耐用年数が閾値d(例えば、10年間)以上であるか否かを判定する。ここで、今後の耐用年数が閾値d以上であると判定された再利用可能太陽光パネル2は、洗浄後、中古品の太陽光パネルとして再利用される。この際、再利用可能太陽光パネル2は、耐用年数や、今後発電可能な電力量に見合った価格で取引される。今後の耐用年数が閾値d未満であると判定された再利用不可能太陽光パネル3は、太陽光パネル解体・分離設備102に送られる。
【0018】
太陽光パネル解体・分離設備102は、刃物による分解、加熱によって接着剤を剥離して分解、レーザ光の照射によって接着層だけを溶解して分解、高水圧ジェットによって分解等の機械的手法により、再利用不可能太陽光パネル3をガラスパネル4、シリコンセル・金属6、その他の封止材等(不図示)に分離する。
【0019】
分離の際に、割れや傷等の破損が生じなかったガラスパネル4は、洗浄後、例えば、太陽光パネルの材料として再利用される。なお、分離の際に、割れや傷等の破損が生じた破損ガラス5はガラス再融解設備104に送られ、ガラス再融解設備104において、溶解されて、新たに製造されるガラスパネル等の材料となる。分離されたシリコンセル・金属6は、シリコンセル・金属再融解設備103に送られ、シリコンセル・金属再融解設備103においてそれぞれ溶解され、シリコンセルや太陽光パネルの金属枠等の材料となる。分離された封止材等は廃棄物として処分される。
【0020】
なお、太陽光パネル解体・分離設備102において、再利用不可能太陽光パネル3からガラスパネル4を分離する際、割れ等が発生すると、一旦、その作業ラインを停止して、破損ガラス5等の清掃のために時間を要するため、リサイクル効率が著しく低下してしまう。
【0021】
そこで、本実施形態においては、太陽光パネル解体・分離設備102において、再利用不可能太陽光パネル3からガラスパネル4を分離する前に、太陽光パネル1のガラスパネルが解体・分離の際に割れ易いか否かを判定し、割れ易い場合には、太陽光パネル解体・分離設備102に送らず、粉砕処分するようになされている。これにより、太陽光パネル解体・分離設備102におけるガラスパネル4の歩留まり率(ガラスパネル4を破損なく分離できる割合)を向上させることができる。
【0022】
<本発明の第1実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステム10の構成例>
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステム10の構成例を示している。
【0023】
太陽光パネルリサイクルシステム10は、従来の太陽光パネルリサイクルシステム100(図12)に対して、マイクロクラック検査装置11、及び太陽光パネル粉砕設備12を追加したものである。なお、太陽光パネルリサイクルシステム10と、太陽光パネルリサイクルシステム100とで共通する装置や設備については同一の符号を付して、その説明を省略する。マイクロクラック検査装置11は、本発明の第1のマイクロクラック検査装置に相当する。
【0024】
マイクロクラック検査装置11は、光干渉方式、及び超音波探傷方式の少なくとも一方を採用して、廃棄された太陽光パネル1を構成するガラスパネルに生じたマイクロクラックを検出し、検出結果に基づいて当該ガラスパネルが割れ易いか否かを判定する。ただし、光干渉方式は、超音波探傷方式より検出時間が短時間で済むので、リサイクルに要するコストの低減を考慮した場合、光干渉方式を採用することが望ましい。
【0025】
そして、マイクロクラック検査装置11は、太陽光パネル1を構成するガラスパネルの割れ易さに基づいて、太陽光パネル1のリサイクル方法を選択する。具体的には、ガラスパネルが割れ易くない(割れにくい)と判定された太陽光パネル1は、太陽光パネル性能検査装置101に送られて、これ以降、従来と同様にリサイクルされる。
【0026】
一方、ガラスパネルが割れ易いと判定された太陽光パネル1は、太陽光パネル粉砕設備12に送られて粉砕され、その結果得られた粉砕ガラス7はガラス再融解設備104に送られ、シリコンセル・金属8はシリコンセル・金属再融解設備103に送られる。その他の封止材等の粉砕物については、廃棄物として処分される。
【0027】
図2は、光干渉方式を採用した場合におけるマイクロクラック検査装置11の構成例を示している。
【0028】
マイクロクラック検査装置11は、固定部111、押圧部112、照明部113、撮像部114、及び画像処理部115を備える。
【0029】
固定部111は、太陽光パネル1の長手方向の両端を固定する。押圧部112は、照明部113からの太陽光パネル1の光照射面の反対側の面から太陽光パネル1のガラスパネルが曲がる方向(図面の下側の面から上方向)に押圧して、太陽光パネル1のガラスパネルに、ひずみ量SL(strain length)のひずみを生じさせる。(ひずみ量SLについては後述する)
【0030】
照明部113は、太陽光パネル1に対して斜め方向から複数の同心円から成る干渉縞116の光を照射する。撮像部114は、押圧部112によって太陽光パネル1のガラスパネルに押圧していない状態(ひずみを生じさせていない状態)と、押圧部112によって太陽光パネル1のガラスパネルに押圧している状態(ひずみを生じさせている状態)とのそれぞれの状態において干渉縞116を撮像し、得られた2枚の干渉縞116の画像を画像処理部115に出力する。
【0031】
画像処理部115は、2枚の画像それぞれについて干渉縞116のひずみを検出し、検出したひずみに基づいて、当該ガラスパネルに生じているマイクロクラックの長さ、及び深さを検出する。そして、検出結果と、所定の閾値a,b,c,dとを比較することにより、当該ガラスパネルが割れ易いか否かを判定する。
【0032】
閾値aは、マイクロクラックの長さに関する閾値であり、例えば100[μm]とする。閾値bは、マイクロクラックの深さに関する閾値であり、例えば5[μm]とする。閾値cは、太陽光パネル1のガラスパネルに押圧することによるマイクロクラックの長さ変化に関する閾値であり、例えば10[%]とする。閾値dは、マイクロクラックの数に関する閾値であり、例えば10[個]とする。
【0033】
例えば、画像処理部115では、干渉縞116の画像に基づいて検出したマイクロクラックの長さが閾値a以上、且つ、深さが閾値b以上、且つ、ガラスパネルに押圧していない状態と押圧している状態でのマイクロクラックの長さの伸び率が閾値c以上であるものについては、割れに発展するマイクロクラックである判断し、その数が閾値d以上存在する場合には、ガラスパネルが割れ易いと判定されて、当該太陽光パネル1は太陽光パネル粉砕設備12に送られる。
【0034】
なお、上述したガラスパネルが割れ易い太陽光パネル1であるか否かの判定の説明は、一例であって、これに限定するものではない。また、閾値a,b,c,dについては、太陽光パネル1のサイズ、縦横比(例えば、1:10以内)、材料の組成率に応じて変更するものとする。
【0035】
一方、ガラスパネルが割れにくいと判定された太陽光パネル1は、太陽光パネル性能検査装置101に送られて、これ以降、従来の場合と同様にリサイクルされるが、再利用可能太陽光パネル2は、今後の耐用年数等に応じた価格で取引され、再生利用されるガラスパネル4は、検出されたマイクロクラックの長さ、深さ、長さの伸び率、数に応じた価格で取引される。
【0036】
図3は、マイクロクラック検査装置11における最適なひずみ量SLの決定方法について説明するための図である。
【0037】
当該決定方法には、廃棄された太陽光パネル1を再現するため、新品の太陽光パネルに対して、屋外に配置して30年間使用した場合に相当する劣化加速試験を行ったものを用いた。劣化加速試験では、新品の太陽光パネルを温度120[℃]、湿度100[%]、加圧202[kPa]の環境下に30時間(加速率1年/時間)放置した。そして、劣化加速試験後の太陽光パネルの長手方向の両端を固定し、当該太陽光のガラスパネルが曲がる方向に、太陽光パネル1のガラスパネルが割れるまで押圧した。そして、ガラスパネルが割れた際の曲げ量をX1[mm]として、次式に従い、ひずみ量Xを計算した。なお、L[mm]は、ガラスパネルの長手方向の長さである。
ひずみ量X=X1/L[%]
【0038】
図4は、ガラスNo.1~No.10のサンプル(新品の太陽光パネル)に対する劣化試験前後のひずみ量Xの変化を示している。同図から、新品の太陽光パネルにおけるひずみ量Xは0.7~1.0[%]であることに対し、劣化加速試験後の太陽光パネルのひずみ量Xは0.3~0.5[%]まで低減しており、その最小値は0.3[%]であることがわかる。
【0039】
図5は、劣化試験後の太陽光パネルにおけるひずみ量Xに対する、マイクロクラック検査精度(破線)、及びガラスパネルの割れ発生率(実線)の結果を示している。同図から、マイクロクラック検査精度はひずみ量Xに比例して増加することがわかる。一方、ガラスパネルの割れ発生率は、ひずみ量Xが0~0.2[%]程度までは0[%]であるが、ひずみ量Xが0.2[%]以降はひずみ量Xと共に増加し、ひずみ量Xが0.5[%]では、ガラスパネルの割れ発生率が略100[%]になることがわかる。
【0040】
一般的にガラスの安全率は3~5倍に設定されていることを勘案すると、ガラスパネルの割れ発生率50[%]に対応するひずみ量Xは0.32[%]であるため、マイクロクラック検査時の最適なひずみ量SLは、最大で0.1以下[%]が妥当な数値として決定される。
【0041】
例えば、太陽光パネル1の長手方向の長さが1000[mm]である場合、マイクロクラック検査装置11の押圧部112は、ひずみ量Xが0.1[%]となるように、曲げ量X1が1[mm]となるまで太陽光パネル1を押圧すればよい。
【0042】
なお、マイクロクラック検査装置11が、超音波探傷方式を使用した場合の詳細な説明は省略するが、光干渉方式と同様、太陽光パネル1にひずみを生じさせる前後で超音波を照射し、その計測値の差異に基づいてガラスパネルに割れを生じさせ得るマイクロクラックの有無を検出すればよい。
【0043】
以上に説明した太陽光パネルリサイクルシステム10によれば、マイクロクラック検査装置11により、ガラスパネルが割れ易いか否かを判定し、ガラスパネルが割れ易い太陽光パネル1については、太陽光パネル解体・分離設備102に送らずに、太陽光パネル粉砕設備12に送るようにした。これにより、廃棄された再利用不可能太陽光パネル3を解体・分離するガラスパネル4の歩留まり率の向上、リサイクルの効率化(低コスト化)、埋立量の削減、資源の有効活用等による環境負荷や温暖化対策を実現できる。
【0044】
図6は、太陽光パネルリサイクルシステム10の変形例を示している。当該変形例は、太陽光パネル解体・分離設備102において解体・分離されたガラスパネル4を検査対象とするマイクロクラック検査装置13を追加したものである。マイクロクラック検査装置13は、本発明の第2のマイクロクラック検査装置に相当する。マイクロクラック検査装置13は、マイクロクラック検査装置11と同様に構成され、ガラスパネル4に生じているマイクロクラックに基づいてガラスパネル4の劣化程度を検出し、その劣化程度に応じてガラスパネル4の再利用先の候補を選択するようになされている。当該変形例によれば、ガラスパネル4の劣化程度によってガラスパネル4の再利用先の候補を選択することができる。
【0045】
<本発明の第2実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステム20の構成例>
図7は、本発明の第2実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステム20の構成例を示している。太陽光パネルリサイクルシステム20の構成要素のうち、太陽光パネルリサイクルシステム10(図1)と共通するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
太陽光パネルリサイクルシステム20は、太陽光パネルリサイクルシステム10(図1)のマイクロクラック検査装置11の前段にガラスパネル洗浄装置21を追加したものである。
【0047】
ガラスパネル洗浄装置21は、後段のマイクロクラック検査装置11において光干渉方式を採用していることを前提としたものであり、太陽光パネル1の表面の汚れを洗浄、除去する。ガラスパネル洗浄装置21を設けたことにより、太陽光パネル1の汚れに起因してマイクロクラック検査装置11におけるマイクロクラックの検出精度の低下を防ぐことができる。
【0048】
なお、ガラスパネル洗浄装置21において太陽光パネル1の表面の汚れを洗浄、除去する時間を考慮しても、光干渉方式は、太陽光パネル1の全体をスキャニングする必要がある超音波探傷方式に比べて短時間でマイクロクラックを検出することができる。
【0049】
太陽光パネルリサイクルシステム20によれば、太陽光パネルリサイクルシステム10と同様の効果に加えて、マイクロクラック検査装置11における太陽光パネル1を構成するガラスパネルが割れ易いか否かの判定精度を上げることができる。
【0050】
図8は、太陽光パネルリサイクルシステム20の変形例を示している。当該変形例は、太陽光パネルリサイクルシステム10の変形例(図6)と同様、太陽光パネル解体・分離設備102において解体・分離されたガラスパネル4を検査対象とするマイクロクラック検査装置13を追加したものである。当該変形例によれば、ガラスパネル4の劣化程度によってガラスパネル4の再利用先の候補を選択することができる。
【0051】
<本発明の第3実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステム30の構成例>
図9は、本発明の第3実施形態に係る太陽光パネルリサイクルシステム30の構成例を示している。太陽光パネルリサイクルシステム30の構成要素のうち、太陽光パネルリサイクルシステム20(図7)と共通するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
太陽光パネルリサイクルシステム30は、太陽光パネルリサイクルシステム20(図7)に、歩留まり率DB(データベース)31、及び機械学習装置32を追加したものである。
【0053】
歩留まり率DB31は、太陽光パネル解体・分離設備102におけるガラスパネル4の歩留まり率(ガラスパネル4を破損なく分離できる割合)を学習データとして蓄積する。機械学習装置32は、太陽光パネル1のサイズ、縦横比、材料の組成率の組合せ毎に、歩留まり率DB31に蓄積された学習データと、マイクロクラック検査装置11において検出されたマイクロクラックに関する現状の閾値a,b,c,dとに基づき、歩留まり率を向上させ得る最適な閾値a,b,c,dを決定する。
【0054】
図10は、機械学習装置32の構成例を示している。機械学習装置32は、制御部321、処理部322、及び通信部323を備える。
【0055】
機械学習装置32は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等の一般的なコンピュータによって実現される。当該コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリ、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージ、キーボードやマウス、メディアドライブ等の入力デバイス、ディスプレイ等の出力デバイス、及びEthernet(商標)カードやWi-Fi(商標)アダプタ等の通信モジュールを備える。
【0056】
例えば、機械学習装置32をなすコンピュータは、プロセッサがメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、制御部321、及び処理部322を実現する。
【0057】
なお、プロセッサが実行する所定のプログラムは、予めメモリに格納しておいてもよいし、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリ等)又はインターネット等のネットワークを介して所定のサーバ等からダウンロードし、非一時的記憶媒体であるストレージに格納しておき、必要な時に、ストレージから読み出すようにしてもよい。このため、コンピュータは、リムーバブルメディアからデータを読み込むインタフェースを有するとよい。
【0058】
また、機械学習装置32は、1台の物理的、又は論理的コンピュータで実現してもよいし、2台以上の物理的、又は論理的コンピュータで実現してもよい。2台以上の物理的、又は論理的コンピュータは、それぞれネットワーク上に分散して配置してもよい。
【0059】
制御部321は、処理部322、及び通信部323の動作を制御する。処理部322は、現状の閾値a,b,c,d、及び学習データを入力として機械学習を行い、最適な閾値a,b,c,dを決定して通信部323に出力する。
【0060】
通信部323は、コンピュータの通信モジュールから成り、マイクロクラック検査装置11から現状の閾値a,b,c,dを取得し、歩留まり率DB31から蓄積された学習データを取得して処理部322に出力する。また、通信部323は、処理部322によって決定された最適な閾値a,b,c,dをマイクロクラック検査装置11に出力する。
【0061】
太陽光パネルリサイクルシステム30によれば、太陽光パネルリサイクルシステム20と同様の効果に加えて、太陽光パネル解体・分離設備102におけるガラスパネル4の歩留まり率を向上させることができる。
【0062】
図11は、太陽光パネルリサイクルシステム30の変形例を示している。当該変形例は、太陽光パネルリサイクルシステム10の変形例(図6)と同様、太陽光パネル解体・分離設備102において解体・分離されたガラスパネル4を検査対象とするマイクロクラック検査装置13を追加したものである。当該変形例によれば、ガラスパネル4の劣化程度によってガラスパネル4の再利用先の候補を選択することができる。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・太陽光パネル、2・・・再利用可能太陽光パネル、3・・・再利用不可能太陽光パネル、4・・・ガラスパネル、5・・・破損ガラス、6・・・シリコンセル・金属、7・・・粉砕ガラス、8・・・シリコンセル・金属、10・・・太陽光パネルリサイクルシステム、11・・・マイクロクラック検査装置、111・・・固定部、112・・・押圧部、113・・・照明部、114・・・撮像部、115・・・画像処理部、12・・・太陽光パネル粉砕設備、13・・・マイクロクラック検査装置、20・・・太陽光パネルリサイクルシステム、21・・・ガラスパネル洗浄装置、30・・・太陽光パネルリサイクルシステム、31・・・歩留まり率DB、32・・・機械学習装置、321・・・制御部、322・・・処理部、323・・・通信部、100・・・太陽光パネルリサイクルシステム、101・・・太陽光パネル性能検査装置、102・・・太陽光パネル解体・分離設備、103・・・シリコンセル・金属再融解設備、104・・・ガラス再融解設備
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