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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001158
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】防曇性樹脂シート及びその二次成形品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20241225BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241225BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20241225BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20241225BHJP
【ＦＩ】
B32B27/18 C
B32B27/30 102
C08L5/00
C08L29/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2023100598
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】505056122
【氏名又は名称】サンディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】杉元 信博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正裕
【テーマコード（参考）】
4F100
4J002
【Ｆターム（参考）】
4F100AH02B
4F100AK12A
4F100AK21B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA10B
4F100EH46B
4F100EJ38A
4F100EJ55A
4F100GB15
4F100JB16A
4F100JL01
4F100JL07B
4F100JL14C
4J002AB05W
4J002BE02X
4J002DE026
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】ショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを使用した防曇性樹脂シートにおいて、良好な防曇性を示しつつ、外観が白化しにくい防曇性樹脂シートの提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）を含有する防曇剤からなる防曇層が形成されている、防曇性樹脂シートである。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）を含有する防曇剤からなる防曇層が形成されている、防曇性樹脂シートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、
モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）を含有する防曇剤からなる防曇層が形成されている、防曇性樹脂シート。
モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）を含有する防曇剤からなる防曇層が形成されている、防曇性樹脂シート。
【請求項2】
前記防曇剤には、さらにポリビニルアルコールが含有されている、請求項１に記載の防曇性樹脂シート。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール（Ｂ）が、ケン化度６５～９０ｍｏｌ％である、請求項２に記載の防曇性樹脂シート。
【請求項4】
前記防曇剤は、ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない、請求項１に記載の防曇性樹脂シート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面とは反対の他方の面にシリコーンオイル（Ｅ）からなる離型層が形成されている、請求項１に記載の防曇性樹脂シート。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂シートがスチレン系樹脂シートである、請求項１に記載の防曇性樹脂シート。
【請求項7】
請求項１～６のいずれか一項に記載の防曇性樹脂シートを成形することにより得られる二次成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装容器やその他各種容器等に用いられる防曇性樹脂シートおよびその二次成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の熱可塑性樹脂を用いて押出成膜された樹脂シートは、真空成形機、圧空真空成形機、熱板圧空成形機等を用いて加熱成形により二次成形され、これにより得られた二次成形品は、軽量食品包装容器やその他物品の包装に多く用いられている。これらの樹脂シートの中でも、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等に代表される透明性樹脂シートは、その透明性から弁当容器や惣菜容器等の蓋材として広く用いられている。しかし、この蓋材では、内容物から発生する水蒸気により蓋材の内面が曇るという問題があった。
【0003】
上記の問題を解決する手段として、例えば、ＨＬＢ値が１０～１８の非イオン系界面活性剤（Ａ）と、デキストリンおよび／またはその誘導体（Ｂ）とを含有してなる防曇剤、この防曇剤の塗膜を熱可塑性樹脂シート上に有する防曇性樹脂シートが提案されている（例えば、特許文献１参照）。
また、農業用プラスチックフィルムの防曇剤として６０％以上のベヘン酸からなるショ糖脂肪酸エステルであって、且つモノエステル６０％以上のショ糖脂肪酸エステルを主要構成成分とする農業用プラスチックフィルムの防曇剤が提案されている（例えば特許文献２参照）。
また、スチレン系樹脂シートの表面処理方法としてモノエステル７０％以上のショ糖ラウリン酸エステルとヤシ油ジエタノールアミドと組み合わせた表面処理方法が提案されている（例えば、特許文献３参照）。
また、農業用プラスチックフィルムの防曇剤として６０％以上のベヘン酸からなるショ糖脂肪酸エステルであって、且つモノエステル６０％以上のショ糖脂肪酸エステルを主要構成成分とする農業用プラスチックフィルムの防曇剤が提案されている（例えば特許文献２参照）。
また、スチレン系樹脂シートの表面処理方法としてモノエステル７０％以上のショ糖ラウリン酸エステルとヤシ油ジエタノールアミドと組み合わせた表面処理方法が提案されている（例えば、特許文献３参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開２００３－１１９４５１号公報
【特許文献2】特開平１０－１３０５１１号公報
【特許文献3】特開昭５９－５１９２２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、防曇性樹脂シートが白化すると、透明性が低下し、外観の悪い防曇性樹脂シートが得られる。
そこで、良好な防曇性を示しつつ、シートの白化は生ぜず、透明性に優れ、外観の良好な防曇性樹脂シートの提供が望まれている。
本発明者らは、上記特許文献１に記載の防曇性樹脂シートについて検討したところ、特許文献１で規定するＨＬＢ値のショ糖脂肪酸エステルを用いて形成された防曇性樹脂シートの中に、シートの白化が生じ、透明性の悪い防曇性樹脂シートが得られる場合があることがわかった。つまり、本願発明の目的である良好な防曇性を示しつつ、外観が白化せず透明性に優れた防曇性樹脂シートを得るという観点からは、特許文献１に記載の防曇性樹脂シートは、満足のいくものとはいえず検討の余地があった。
また、上記特許文献２に記載のベヘン酸からなるショ糖脂肪酸エステルは水溶性が悪く、水系の塗布型防曇剤としては不適当であった。
また、上記特許文献３の方法はラウリン酸エステルを主体とするショ糖脂肪酸エステルに限られた方法であり、他の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステルについて、例えばショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを使用した場合の表面処理については不明であった。
そこで、良好な防曇性を示しつつ、シートの白化は生ぜず、透明性に優れ、外観の良好な防曇性樹脂シートの提供が望まれている。
本発明者らは、上記特許文献１に記載の防曇性樹脂シートについて検討したところ、特許文献１で規定するＨＬＢ値のショ糖脂肪酸エステルを用いて形成された防曇性樹脂シートの中に、シートの白化が生じ、透明性の悪い防曇性樹脂シートが得られる場合があることがわかった。つまり、本願発明の目的である良好な防曇性を示しつつ、外観が白化せず透明性に優れた防曇性樹脂シートを得るという観点からは、特許文献１に記載の防曇性樹脂シートは、満足のいくものとはいえず検討の余地があった。
また、上記特許文献２に記載のベヘン酸からなるショ糖脂肪酸エステルは水溶性が悪く、水系の塗布型防曇剤としては不適当であった。
また、上記特許文献３の方法はラウリン酸エステルを主体とするショ糖脂肪酸エステルに限られた方法であり、他の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステルについて、例えばショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを使用した場合の表面処理については不明であった。
【0006】
本発明は、ショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを使用した防曇性樹脂シートにおいて、良好な防曇性を示しつつ、外観が白化せず透明性に優れた防曇性樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、防曇剤に含有されるショ糖ステアリン酸エステルまたはショ糖パルミチン酸エステルのモノエステル量を特定の範囲に規定することで、良好な防曇性を示しつつ、外観が白化しにくい防曇性樹脂シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[１] 熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、
モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）を含有する防曇剤からなる防曇層が形成されている、防曇性樹脂シート。
[２] 前記防曇剤には、さらにポリビニルアルコールが含有されている、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[３] 前記ポリビニルアルコール（Ｂ）が、ケン化度６５～９０ｍｏｌ％である、[２]に記載の防曇性樹脂シート。
[４] 前記防曇剤は、ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[５] 前記熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面とは反対の他方の面にシリコーンオイル（Ｅ）からなる離型層が形成されている、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[６] 前記熱可塑性樹脂シートがスチレン系樹脂シートである、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[７] [１]～[６]のいずれか一項に記載の防曇性樹脂シートを成形することにより得られる二次成形品。
[１] 熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、
モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）を含有する防曇剤からなる防曇層が形成されている、防曇性樹脂シート。
[２] 前記防曇剤には、さらにポリビニルアルコールが含有されている、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[３] 前記ポリビニルアルコール（Ｂ）が、ケン化度６５～９０ｍｏｌ％である、[２]に記載の防曇性樹脂シート。
[４] 前記防曇剤は、ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[５] 前記熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面とは反対の他方の面にシリコーンオイル（Ｅ）からなる離型層が形成されている、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[６] 前記熱可塑性樹脂シートがスチレン系樹脂シートである、[１]に記載の防曇性樹脂シート。
[７] [１]～[６]のいずれか一項に記載の防曇性樹脂シートを成形することにより得られる二次成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを使用した防曇性樹脂シートにおいて、良好な防曇性を示しつつ、外観が白化しにくい防曇性樹脂シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0011】
（防曇性樹脂シート）
本発明の防曇性樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートと防曇層とを有する。
防曇層は、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に形成される。
防曇層は、防曇剤を用いて形成される。
本発明の防曇性樹脂シートは、さらに離型層を有してもよい。
離型層は、熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面とは反対の他方の面に形成されるとよい。
本発明の防曇性樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートと防曇層とを有する。
防曇層は、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に形成される。
防曇層は、防曇剤を用いて形成される。
本発明の防曇性樹脂シートは、さらに離型層を有してもよい。
離型層は、熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面とは反対の他方の面に形成されるとよい。
【0012】
＜熱可塑性樹脂シート＞
本発明の防曇性樹脂シートの基材となる熱可塑性樹脂シートの樹脂種としては、特に限定されるものではないが、透明であることが好ましく、例えば、ポリスチレン、結晶性ポリスチレン、スチレン－ブタジエン共重合体、スチレン－イソプレン－スチレン共重合体、スチレン－イソプレン－ブタジエン－スチレン共重合体、スチレン－エチレン－ブタジエン－スチレン共重合体、透明性スチレン－ブタジエン－（メタ）アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン－（メタ）アクリル酸共重合体、スチレン－無水マレイン酸共重合体、スチレン－（メタ）アクリル酸アルキルエステル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン－ブタジエン共重合体、エチレン－プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン６に代表されるポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂等が好ましい。
本発明の防曇性樹脂シートの基材となる熱可塑性樹脂シートの樹脂種としては、特に限定されるものではないが、透明であることが好ましく、例えば、ポリスチレン、結晶性ポリスチレン、スチレン－ブタジエン共重合体、スチレン－イソプレン－スチレン共重合体、スチレン－イソプレン－ブタジエン－スチレン共重合体、スチレン－エチレン－ブタジエン－スチレン共重合体、透明性スチレン－ブタジエン－（メタ）アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン－（メタ）アクリル酸共重合体、スチレン－無水マレイン酸共重合体、スチレン－（メタ）アクリル酸アルキルエステル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン－ブタジエン共重合体、エチレン－プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン６に代表されるポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂等が好ましい。
【0013】
また、本発明の防曇性樹脂シートの透明性を阻害しない範囲で、これらの樹脂を二種類以上混合して使用しても良い。さらに、これらの熱可塑性樹脂シートは、これらの樹脂を一種類以上使用した二層以上の多層化シートであってもよい。さらにまた、これらの熱可塑性樹脂シートに一軸または二軸方向の延伸処理が施してあってもよい。
【0014】
さらに、二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートは、熱板圧空成形機で加熱成形する場合が多く、この場合、従来の防曇剤を用いた場合では加熱成形時の成形体の防曇性低下が著しい傾向にある。しかし、本発明の防曇性樹脂シートにおいては、基材として二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートを用いた場合においても優れた防曇性を有する二次成形品が得られる。汎用の熱板圧空成形機との適合性の観点から、本発明の防曇性樹脂シート用基材として、ポリスチレン系樹脂シートが好ましく、二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートが最も好ましい。
【0015】
これらの熱可塑性樹脂シートの厚みは、特に限定されるものではないが、防曇性樹脂シートを二次成形する場合の二次成形品の剛性や強度の観点より０．０５～１．０ｍｍが好ましい。
【0016】
これらの熱可塑性樹脂シートに使用される樹脂中には、防曇性樹脂シートのブロッキング防止を目的として、樹脂シート表面に突起を生じさせるための各種の微粒子を樹脂シートの透明性を損なわない範囲で添加することができる。
微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂架橋ビーズ、（メタ）アクリル酸エステル系樹脂架橋ビーズ、ポリウレタン系樹脂架橋ビーズ等の樹脂架橋ビーズ、シリカ、疎水化処理シリカ、球状シリカ、軟質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等の無機微粒子、ゴム微粒子などが挙げられる。ゴム微粒子としては、ゴム含有樹脂を併用する方法が挙げられ、ここで用いるゴム含有樹脂としては、防曇性樹脂シートの基材となる熱可塑性樹脂と異なるものであって、例えば、耐衝撃性ポリスチレン（ＨＩＰＳ）、スチレン－アクリロニトリル－ブタジエン共重合体（ＡＢＳ）、スチレン－エチレン－ブタジエン－スチレン共重合体（ＳＥＢＳ）、スチレン－ブタジエン－（メタ）アクリル酸エステル共重合体（ＭＢＳ）、耐衝撃性（メタ）アクリル酸エステル（ＨＩ－ＰＭＭＡ）等のゴム含有樹脂が挙げられる。
微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂架橋ビーズ、（メタ）アクリル酸エステル系樹脂架橋ビーズ、ポリウレタン系樹脂架橋ビーズ等の樹脂架橋ビーズ、シリカ、疎水化処理シリカ、球状シリカ、軟質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等の無機微粒子、ゴム微粒子などが挙げられる。ゴム微粒子としては、ゴム含有樹脂を併用する方法が挙げられ、ここで用いるゴム含有樹脂としては、防曇性樹脂シートの基材となる熱可塑性樹脂と異なるものであって、例えば、耐衝撃性ポリスチレン（ＨＩＰＳ）、スチレン－アクリロニトリル－ブタジエン共重合体（ＡＢＳ）、スチレン－エチレン－ブタジエン－スチレン共重合体（ＳＥＢＳ）、スチレン－ブタジエン－（メタ）アクリル酸エステル共重合体（ＭＢＳ）、耐衝撃性（メタ）アクリル酸エステル（ＨＩ－ＰＭＭＡ）等のゴム含有樹脂が挙げられる。
【0017】
＜防曇層＞
防曇層は、防曇剤を用いて形成される。
防曇剤は、モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）（以下、（Ａ）で表される特定のショ糖脂肪酸エステルともいう）を含有する。
防曇剤は、さらにポリビニルアルコールが含有されていてもよい。
防曇剤には、水（Ｃ）が含有されているとよい。
防曇剤には、上記（Ａ）で表される特定のショ糖脂肪酸エステルやポリビニルアルコールや水以外にも、帯電防止効果のある界面活性剤や滑剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
防曇層は、防曇剤を用いて形成される。
防曇剤は、モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）（以下、（Ａ）で表される特定のショ糖脂肪酸エステルともいう）を含有する。
防曇剤は、さらにポリビニルアルコールが含有されていてもよい。
防曇剤には、水（Ｃ）が含有されているとよい。
防曇剤には、上記（Ａ）で表される特定のショ糖脂肪酸エステルやポリビニルアルコールや水以外にも、帯電防止効果のある界面活性剤や滑剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0018】
＜＜モノエステル８０％以上のショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはモノエステル８０％以上のショ糖パルミチン酸エステル＞＞
ショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルは、非イオン性の界面活性剤として知られており、本発明では、通常、商取引されている商品を用いることができる。
下記実施例で示されているように、ショ糖ステアリン酸エステルおよびショ糖パルミチン酸エステルのモノエステル含有量は、８０％以上である必要がある。モノエステルの含有量が８０％以上であるショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを含有させることで、良好な防曇性、及び外観の白化防止の両方を満足する防曇性樹脂シートを得ることができる。
ショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルは、非イオン性の界面活性剤として知られており、本発明では、通常、商取引されている商品を用いることができる。
下記実施例で示されているように、ショ糖ステアリン酸エステルおよびショ糖パルミチン酸エステルのモノエステル含有量は、８０％以上である必要がある。モノエステルの含有量が８０％以上であるショ糖ステアリン酸エステルやショ糖パルミチン酸エステルを含有させることで、良好な防曇性、及び外観の白化防止の両方を満足する防曇性樹脂シートを得ることができる。
【0019】
＜＜ポリビニルアルコール（Ｂ）＞＞
防曇剤は、さらにポリビニルアルコールが含有されていてもよい。
防曇剤にポリビニルアルコールが含有されていると、ポリビニルアルコールが含有されていない系に比べ、シートの白化防止を担保しつつ、防曇性の性能をより向上させることができる。
ポリビニルアルコール（ＰＶＡともいう）（Ｂ）としては、ビニルアルコール単位からなるホモポリマー又はビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位からなるコポリマーであり、ビニルアルコール単位の含有量は５０質量％以上である。
ポリビニルアルコール（Ｂ）としては、ポリビニルアセテートの部分ケン化反応生成物が好ましく、ケン化度が６５～９０ｍｏｌ％のものが好ましく、ケン化度が７０～９０ｍｏｌ％のものがより好ましく、ケン化度が８０～９０ｍｏｌ％のものがさらに好ましい。
好ましいケン化度とは、防曇性改良効果が有意に得られかつ防曇性樹脂シートの外観を悪化させない観点から決定され、例えば、ケン化度を６５ｍｏｌ％以上にすることで水溶性を向上させ、防曇剤被膜を水溶液の塗布で形成させる場合、被膜中のポリビニルアルコールの分散均一性を向上させることができる。また、ケン化度を９０ｍｏｌ％以下にすることで、防曇性が良好となる。
また、ポリビニルアルコール（Ｂ）の４質量％水溶液の２０℃での粘度は、２～３０ｍＰａ・ｓであることが好ましく、２～２５ｍＰａ・ｓであることがより好ましく、４～１５ｍＰａ・ｓであることがさらに好ましく、４～９ｍＰａ・ｓであることがさらにより好ましく、４～８ｍＰａ・ｓであることが特に好ましく、４．５～６．０ｍＰａ・ｓであることが特により好ましい。ポリビニルアルコールの粘度は、防曇性改良効果が得られかつオレイン酸塩との混合の容易性等の観点から、上記のように２ｍＰａ・ｓ以上で、３０ｍＰａ・ｓ以下であることが好ましい。
防曇剤は、さらにポリビニルアルコールが含有されていてもよい。
防曇剤にポリビニルアルコールが含有されていると、ポリビニルアルコールが含有されていない系に比べ、シートの白化防止を担保しつつ、防曇性の性能をより向上させることができる。
ポリビニルアルコール（ＰＶＡともいう）（Ｂ）としては、ビニルアルコール単位からなるホモポリマー又はビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位からなるコポリマーであり、ビニルアルコール単位の含有量は５０質量％以上である。
ポリビニルアルコール（Ｂ）としては、ポリビニルアセテートの部分ケン化反応生成物が好ましく、ケン化度が６５～９０ｍｏｌ％のものが好ましく、ケン化度が７０～９０ｍｏｌ％のものがより好ましく、ケン化度が８０～９０ｍｏｌ％のものがさらに好ましい。
好ましいケン化度とは、防曇性改良効果が有意に得られかつ防曇性樹脂シートの外観を悪化させない観点から決定され、例えば、ケン化度を６５ｍｏｌ％以上にすることで水溶性を向上させ、防曇剤被膜を水溶液の塗布で形成させる場合、被膜中のポリビニルアルコールの分散均一性を向上させることができる。また、ケン化度を９０ｍｏｌ％以下にすることで、防曇性が良好となる。
また、ポリビニルアルコール（Ｂ）の４質量％水溶液の２０℃での粘度は、２～３０ｍＰａ・ｓであることが好ましく、２～２５ｍＰａ・ｓであることがより好ましく、４～１５ｍＰａ・ｓであることがさらに好ましく、４～９ｍＰａ・ｓであることがさらにより好ましく、４～８ｍＰａ・ｓであることが特に好ましく、４．５～６．０ｍＰａ・ｓであることが特により好ましい。ポリビニルアルコールの粘度は、防曇性改良効果が得られかつオレイン酸塩との混合の容易性等の観点から、上記のように２ｍＰａ・ｓ以上で、３０ｍＰａ・ｓ以下であることが好ましい。
【0020】
＜＜その他ショ糖脂肪酸エステル＞＞
本発明の防曇剤は、モノエステルの含有量が８０％以上であるショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステルを含有していれば、これら以外のショ糖脂肪酸エステルは含有していても含有していなくても、どちらでも構わない。例えば、ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない態様とすることができる。ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない、または実質的に含有しない防曇剤とは、例えば具体的には、高速液体クロマトグラフィーなどの測定方法を用いて、ショ糖ラウリン酸エステルの含有量を測定した場合、一般的な測定の下限である１０ｐｐｍ未満の含有量である防曇剤をいう。
本発明の防曇剤は、モノエステルの含有量が８０％以上であるショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステルを含有していれば、これら以外のショ糖脂肪酸エステルは含有していても含有していなくても、どちらでも構わない。例えば、ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない態様とすることができる。ショ糖ラウリン酸エステルを含有しない、または実質的に含有しない防曇剤とは、例えば具体的には、高速液体クロマトグラフィーなどの測定方法を用いて、ショ糖ラウリン酸エステルの含有量を測定した場合、一般的な測定の下限である１０ｐｐｍ未満の含有量である防曇剤をいう。
【0021】
＜＜水（Ｃ）＞＞
防曇剤は、水（Ｃ）を含有するとよい。
水（Ｃ）は、イオン交換水、蒸留水、工業用水等の水を主成分とする媒体である。
水（Ｃ）は、上記ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）１質量部に対して、５質量部以上であることが好ましい。例えば、ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）を含有する水１００質量部中における水が占める割合は、８３質量部以上が好ましく、８５質量部以上がより好ましい。
また、水（Ｃ）は、防曇剤組成物の粘度を低下させ、塗装作業性を向上させる観点から、上記ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）１質量部に対して、５質量部以上であることが好ましく、また、防曇剤組成物の粘度を適正に保ち、塗装作業性を向上させる観点から、１０００質量部以下であることが好ましい。
防曇剤は、水（Ｃ）を含有するとよい。
水（Ｃ）は、イオン交換水、蒸留水、工業用水等の水を主成分とする媒体である。
水（Ｃ）は、上記ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）１質量部に対して、５質量部以上であることが好ましい。例えば、ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）を含有する水１００質量部中における水が占める割合は、８３質量部以上が好ましく、８５質量部以上がより好ましい。
また、水（Ｃ）は、防曇剤組成物の粘度を低下させ、塗装作業性を向上させる観点から、上記ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）１質量部に対して、５質量部以上であることが好ましく、また、防曇剤組成物の粘度を適正に保ち、塗装作業性を向上させる観点から、１０００質量部以下であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）の含有割合としては、本発明の防曇剤を含む水溶液１００質量部に対して、０．１質量部～１５質量部であることが好ましく、０．１質量部～５質量部であることがより好ましい。
本発明に係る防曇剤がポリビニルアルコール（Ｂ）を含有する場合には、ポリビニルアルコール（Ｂ）の含有割合としては、本発明の防曇剤を含む水溶液１００質量部に対して、０．１質量部～１５質量部であることが好ましく、０．１質量部～５質量部であることがより好ましい。
本発明に係る防曇剤がポリビニルアルコール（Ｂ）を含有する場合には、ポリビニルアルコール（Ｂ）の含有割合としては、本発明の防曇剤を含む水溶液１００質量部に対して、０．１質量部～１５質量部であることが好ましく、０．１質量部～５質量部であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明に係る防曇剤におけるショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）とポリビニルアルコール（Ｂ）の含有割合としては、ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）（質量部）：ポリビニルアルコール（Ｂ）（質量部）＝８５：１５～１０：９０が好ましく、８０：２０～１０：９０がより好ましく、８０：２０～１５：８５がさらに好ましく、７５：２５～１５：８５がさらにより好ましく、７０：３０～１５：８５が特に好ましい。
なお、本発明において、（Ａ）成分として、ショ糖ステアリン酸エステルとショ糖パルミチン酸エステルのいずれも含有する場合には、上記（Ａ）成分の含有量は、これらを両方足し合わせた合計量とする。
なお、本発明において、（Ａ）成分として、ショ糖ステアリン酸エステルとショ糖パルミチン酸エステルのいずれも含有する場合には、上記（Ａ）成分の含有量は、これらを両方足し合わせた合計量とする。
【0024】
＜離型層＞
本発明において、熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面の他方の面に、剥離剤を塗布してなる剥離層を形成することができる。
剥離剤としては、シリコーンオイル（Ｅ）を用いることができる。このシリコーンオイル（Ｅ）は、安全性、経済性の観点より、２５℃における粘度が１００～５０万ｍｍ２／ｓの範囲のジメチルポリシロキサンが好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面の他方の面に、剥離剤を塗布してなる剥離層を形成することができる。
剥離剤としては、シリコーンオイル（Ｅ）を用いることができる。このシリコーンオイル（Ｅ）は、安全性、経済性の観点より、２５℃における粘度が１００～５０万ｍｍ２／ｓの範囲のジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0025】
また、シリコーンオイル（Ｅ）を熱可塑性樹脂シートの表面に塗布する際には、シリコーンエマルジョンの形態で用いるとよい。なお、シリコーンエマルジョン中のシリコーンオイル（Ｅ）の平均粒子径は、１μｍ以下であることが好ましい。すなわち、平均粒子径が１μｍを超えると均一に塗ることが困難であり、防曇性樹脂シートの外観が低下する。
【0026】
また、本発明に用いるシリコーンオイル（Ｅ）は、シート、二次成形品の外観が良好となることから、防曇剤を被覆した面の他方の面に塗ることが好ましい。すなわち、防曇剤中にシリコーンオイル（Ｅ）を混合して塗布した場合は、シート、二次成形品の外観が悪化する問題があり、本発明の防曇剤を含む水溶液１００質量部に対して、シリコーンオイル（Ｅ）の配合量は、１０．０質量部以下にする必要がある。さらには、５．０質量部以下とすることが好ましく、防曇剤中にシリコーンオイルを含まないことが特に好ましい。
【0027】
さらに、本発明に用いるシリコーンオイル（Ｅ）を含むシリコーンエマルジョンの液中には、帯電防止効果のある界面活性剤や滑剤等を添加することも可能である。
【0028】
＜防曇性樹脂シートの製造方法＞
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法は、例えば、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖ステアリン酸エステルおよびショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）と、必要に応じて適宜ポリビニルアルコール（Ｂ）とを含有する溶液状の防曇剤（防曇性組成物）を塗布し、その溶媒を乾燥させることにより防曇層とするものである。なお、上記防曇剤（防曇性組成物）がショ糖ラウリン酸エステルは含有しない防曇剤（防曇性組成物）であってもよい。
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法は、例えば、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖ステアリン酸エステルおよびショ糖パルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも１種（Ａ）と、必要に応じて適宜ポリビニルアルコール（Ｂ）とを含有する溶液状の防曇剤（防曇性組成物）を塗布し、その溶媒を乾燥させることにより防曇層とするものである。なお、上記防曇剤（防曇性組成物）がショ糖ラウリン酸エステルは含有しない防曇剤（防曇性組成物）であってもよい。
【0029】
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂を公知の方法で成膜することで得た熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、水溶液からなる防曇剤を塗布することが好ましく、具体的には、熱可塑性樹脂シートの一方の面に親水化処理を施した後、本発明に係る防曇剤をこの処理面に塗布し、溶媒を乾燥させることにより防曇層とする方法が挙げられる。
【0030】
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法で使用される防曇剤の塗布方法としては、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、ローターダンプニングコーター、アプリケーター方式等公知の方法が挙げられ、特に制限はない。
【0031】
本発明の防曇性樹脂シートの防曇剤の塗布量は、防曇効果の向上と塗布ムラによる外観不良を防ぐために、所定の量に調整することが好ましい。具体的には、乾燥後の固形分塗布量、すなわち、防曇性樹脂シートの単位面積あたりの防曇層の質量で５～１，０００ｍｇ／ｍ２であることが好ましく、５～１５０ｍｇ／ｍ２であることが特に好ましい。
【0032】
防曇剤の塗布量の定量分析は、フーリエ変換式赤外分光光度計による分析法（多重内部反射法）〔ＦＴＩＲ分析法（ＡＴＲ法）〕によって行うことが可能である。
【0033】
また、熱可塑性樹脂シートの表面の親水化処理の方法としては、酸処理、火炎処理、コロナ処理等公知の方法が挙げられる。これらの親水化処理を施した熱可塑性樹脂シートの表面のぬれ張力は、３８ｍＮ／ｍ以上であることが好ましく、防曇剤を均一に塗布し、充分な防曇効果を得るためには４５～６０ｍＮ／ｍの範囲内であることがより好ましい。ここで、ぬれ張力は、ＪＩＳ Ｋ６７６８－１９９９に記載された方法により測定される値である。
【0034】
（二次成形品）
本発明の防曇性樹脂シートを、真空成形、圧空真空成形、熱板圧空成形などの手段で成形することにより、弁当容器、惣菜容器、寿司容器、刺身容器等の食品容器、特に該食品容器の防曇性透明蓋に好適な二次成形品を作製することができる。
本発明の防曇性樹脂シートを、真空成形、圧空真空成形、熱板圧空成形などの手段で成形することにより、弁当容器、惣菜容器、寿司容器、刺身容器等の食品容器、特に該食品容器の防曇性透明蓋に好適な二次成形品を作製することができる。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
（実施例１）
ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル１００％、ＨＬＢ１９）０．９質量％、ポリビニルアルコール（ケン化度、４％水溶液の２０℃粘度４．７ｍＰａ・ｓ）０．４質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（１）を得た。防曇剤（１）は、常温にて静置しても白色沈殿物は生じなかった。
ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル１００％、ＨＬＢ１９）０．９質量％、ポリビニルアルコール（ケン化度、４％水溶液の２０℃粘度４．７ｍＰａ・ｓ）０．４質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（１）を得た。防曇剤（１）は、常温にて静置しても白色沈殿物は生じなかった。
【0037】
次いで、表面にコーティング処理を施していない厚さ０．２１ｍｍの二軸延伸ポリスチレン系樹脂シート（サンディック株式会社製「サンディックシート５１０」）の片面に、ぬれ張力５０ｍＮ／ｍのコロナ処理を施し、ロールコーター方式を用いて、そのコロナ処理面に防曇剤の固形分塗布量が５０ｍｇ／ｍ２となるように、防曇剤（１）を適宜水で希釈して塗布し、ドライヤーで乾燥して、ポリスチレン系樹脂シート上に防曇層が形成された防曇性樹脂シート（１）を得た。
なお、防曇剤塗布量は、フーリエ変換式赤外分光光度計（ＦＴＩＲ）を用いて多重内部反射法（ＡＴＲ法）によりシート表面の赤外吸収スペクトルを測定し、塗布量が既知の標準サンプルより作成した検量線を基に定量分析を行うことにより求めた。
なお、防曇剤塗布量は、フーリエ変換式赤外分光光度計（ＦＴＩＲ）を用いて多重内部反射法（ＡＴＲ法）によりシート表面の赤外吸収スペクトルを測定し、塗布量が既知の標準サンプルより作成した検量線を基に定量分析を行うことにより求めた。
【0038】
得られた防曇性樹脂シート（１）について、下記の方法にしたがい、シート外観、防曇性について評価した。
【0039】
（防曇性樹脂シートの外観の評価）
防曇剤塗布後のシートを目視にて観察し、シートの白化の有無を評価した。シートの白化の度合いが低い程、良好な外観を有する防曇性樹脂シートである。
[評価基準]
○：塗布後のシートが白化しておらず、透明性を維持している
△：塗布後のシートが僅かに白化しているが、実用上支障のないレベルである
×：塗布後のシートが白化しており、透明性が著しく低下している
防曇剤塗布後のシートを目視にて観察し、シートの白化の有無を評価した。シートの白化の度合いが低い程、良好な外観を有する防曇性樹脂シートである。
[評価基準]
○：塗布後のシートが白化しておらず、透明性を維持している
△：塗布後のシートが僅かに白化しているが、実用上支障のないレベルである
×：塗布後のシートが白化しており、透明性が著しく低下している
【0040】
（二次成形品の防曇性の評価）
防曇性樹脂シート（１）を、熱板温度１２５℃の熱板圧空成形機を用いて、下記に示す金型を用いて成形し二次成形品（１）を得た。
・金型：９４ｍｍ（縦）×９４ｍｍ（横）×３０ｍｍ（深さ）、角部：２Ｒ
次に、高温食品用容器に用いて外部から内容物を透視観察する場合を想定した防曇性を評価する目的で、二次成形品の高温防曇性の評価を次の要領で実施した。すなわち、二次成形品と同型状の底材（熱可塑性樹脂シートを二次成形して得られたもの）を準備し、１５ｍｍ角の碁盤模様を印刷した紙をしいた後、底材中に９０℃の湯を１００ｍＬ入れ、その上部を上記実施例で得られた二次成形品で蓋をして、２３℃にて５分放置し、その二次成形品を通して見える碁盤模様のゆがみ、並びに、その天面および四隅の内側に付着した水滴の程度を目視で観察した。二次成形品に曇りが少ない程、または、目視における碁盤模様のゆがみが少ない程、良好な防曇性を有する防曇性樹脂シートである。
［評価基準］
○：二次成形品に曇りがなく、かつ二次成形品の８５％以上の面積で碁盤模様がゆがみなく見える
△：二次成形品に曇りはないが、二次成形品の１５％より広い面積で碁盤模様がゆがんで見える
×：二次成形品の天面または四隅に小さな水滴が付着して曇る
防曇性樹脂シート（１）を、熱板温度１２５℃の熱板圧空成形機を用いて、下記に示す金型を用いて成形し二次成形品（１）を得た。
・金型：９４ｍｍ（縦）×９４ｍｍ（横）×３０ｍｍ（深さ）、角部：２Ｒ
次に、高温食品用容器に用いて外部から内容物を透視観察する場合を想定した防曇性を評価する目的で、二次成形品の高温防曇性の評価を次の要領で実施した。すなわち、二次成形品と同型状の底材（熱可塑性樹脂シートを二次成形して得られたもの）を準備し、１５ｍｍ角の碁盤模様を印刷した紙をしいた後、底材中に９０℃の湯を１００ｍＬ入れ、その上部を上記実施例で得られた二次成形品で蓋をして、２３℃にて５分放置し、その二次成形品を通して見える碁盤模様のゆがみ、並びに、その天面および四隅の内側に付着した水滴の程度を目視で観察した。二次成形品に曇りが少ない程、または、目視における碁盤模様のゆがみが少ない程、良好な防曇性を有する防曇性樹脂シートである。
［評価基準］
○：二次成形品に曇りがなく、かつ二次成形品の８５％以上の面積で碁盤模様がゆがみなく見える
△：二次成形品に曇りはないが、二次成形品の１５％より広い面積で碁盤模様がゆがんで見える
×：二次成形品の天面または四隅に小さな水滴が付着して曇る
【0041】
実施例１の評価結果を表１－１に示す。以下、表１－１及び表１－２を合わせて、表１ともいう。
防曇性樹脂シート（１）は、シート外観、防曇性が良好であった。
防曇性樹脂シート（１）は、シート外観、防曇性が良好であった。
【0042】
（実施例２）
実施例１において、ポリビニルアルコールを除き、ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル１００％、ＨＬＢ１９）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（２）を得た以外は、実施例１と同様にして、防曇剤を得た。係る防曇剤に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例２の評価結果を表１に示す。
防曇性樹脂シート（２）は、防曇性は実施例１より多少劣るものの、実用上使用可能な範囲であり、シートの白化は実施例１と同様防止でき、シート外観は良好であった。
実施例１において、ポリビニルアルコールを除き、ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル１００％、ＨＬＢ１９）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（２）を得た以外は、実施例１と同様にして、防曇剤を得た。係る防曇剤に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例２の評価結果を表１に示す。
防曇性樹脂シート（２）は、防曇性は実施例１より多少劣るものの、実用上使用可能な範囲であり、シートの白化は実施例１と同様防止でき、シート外観は良好であった。
【0043】
（実施例３）
ショ糖パルミチン酸エステル（モノエステル８０％、ジ・トリエステル２０％、ＨＬＢ１６）０．９質量％、ポリビニルアルコール０．４質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（３）を得た。防曇剤（３）は常温にて静置しても白色沈殿物は生成しなかった。
防曇剤（３）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例３の評価結果を表１に示す。
防曇性樹脂シート（３）は、シート外観、防曇性が良好であった。
ショ糖パルミチン酸エステル（モノエステル８０％、ジ・トリエステル２０％、ＨＬＢ１６）０．９質量％、ポリビニルアルコール０．４質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（３）を得た。防曇剤（３）は常温にて静置しても白色沈殿物は生成しなかった。
防曇剤（３）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例３の評価結果を表１に示す。
防曇性樹脂シート（３）は、シート外観、防曇性が良好であった。
【0044】
（実施例４）
実施例３において、ポリビニルアルコールを除き、ショ糖パルミチン酸エステル（モノエステル８０％、ジ・トリエステル２０％、ＨＬＢ１６）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（４）を得た以外は、実施例３と同様にして、防曇剤を得た。係る防曇剤に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例４の評価結果を表１に示す。
防曇性樹脂シート（４）は、防曇性は実施例３より多少劣るものの、実用上使用可能な範囲であり、シートの白化は実施例３と同様防止でき、シート外観は良好であった。
実施例３において、ポリビニルアルコールを除き、ショ糖パルミチン酸エステル（モノエステル８０％、ジ・トリエステル２０％、ＨＬＢ１６）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、防曇剤（４）を得た以外は、実施例３と同様にして、防曇剤を得た。係る防曇剤に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例４の評価結果を表１に示す。
防曇性樹脂シート（４）は、防曇性は実施例３より多少劣るものの、実用上使用可能な範囲であり、シートの白化は実施例３と同様防止でき、シート外観は良好であった。
【0045】
（実施例５～８）
実施例１において、ポリビニルアルコールの含有量を表１－１に記載するように変更した以外は、実施例１と同様にして、防曇剤を得て、係る防曇剤に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例５～８の評価結果を表１に示す。
実施例１において、ポリビニルアルコールの含有量を表１－１に記載するように変更した以外は、実施例１と同様にして、防曇剤を得て、係る防曇剤に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
実施例５～８の評価結果を表１に示す。
【0046】
（比較例１）
ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル７０％、ジ・トリエステル３０％、ＨＬＢ１５）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、比較防曇剤（１）を得た。比較防曇剤（１）を常温にて静置したところ、白色沈殿物が生成した。
比較防曇剤（１）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
比較例１の評価結果を表２に示す。
比較防曇性樹脂シート（１）は、防曇性は多少劣るものの実用上問題のないレベルであったが、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル７０％、ジ・トリエステル３０％、ＨＬＢ１５）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、比較防曇剤（１）を得た。比較防曇剤（１）を常温にて静置したところ、白色沈殿物が生成した。
比較防曇剤（１）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
比較例１の評価結果を表２に示す。
比較防曇性樹脂シート（１）は、防曇性は多少劣るものの実用上問題のないレベルであったが、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
【0047】
（比較例２）
ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル７５％、ジ・トリエステル２５％、ＨＬＢ１６）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、比較防曇剤（２）を得た。比較防曇剤（２）を常温にて静置したところ、白色沈殿物が生成した。
比較防曇剤（２）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
比較例２の評価結果を表２に示す。
比較防曇性樹脂シート（２）は、防曇性は多少劣るものの実用上問題のないレベルであったが、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
ショ糖ステアリン酸エステル（モノエステル７５％、ジ・トリエステル２５％、ＨＬＢ１６）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、比較防曇剤（２）を得た。比較防曇剤（２）を常温にて静置したところ、白色沈殿物が生成した。
比較防曇剤（２）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
比較例２の評価結果を表２に示す。
比較防曇性樹脂シート（２）は、防曇性は多少劣るものの実用上問題のないレベルであったが、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
【0048】
（比較例３）
）ショ糖パルミチン酸エステル（モノエステル７０％、ジ・トリエステル３０％、ＨＬＢ１５）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、比較防曇剤（３）を得た。比較防曇剤（３）を常温にて静置したところ、白色沈殿物が生成した。
比較防曇剤（３）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
比較例３の評価結果を表２に示す。
比較防曇性樹脂シート（３）は、防曇性は多少劣るものの実用上問題のないレベルであったが、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
）ショ糖パルミチン酸エステル（モノエステル７０％、ジ・トリエステル３０％、ＨＬＢ１５）１．３質量％を、水９８．７質量％に混合、６０度の温浴にて溶解させ、比較防曇剤（３）を得た。比較防曇剤（３）を常温にて静置したところ、白色沈殿物が生成した。
比較防曇剤（３）に対し、実施例１と同様にして、シート外観、防曇性を評価した。
比較例３の評価結果を表２に示す。
比較防曇性樹脂シート（３）は、防曇性は多少劣るものの実用上問題のないレベルであったが、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
【0049】
【表1-1】
【0050】
【表1-2】
【0051】
【表2】
【0052】
実施例の防曇性樹脂シートは、防曇性は実用上使用可能なレベルであり、白化は生ぜず、シート外観は良好であった。特に、ポリビニルアルコールを含有する防曇剤を用いた場合は、防曇性樹脂シートは、防曇性、及びシート外観ともに良好であった。
比較例の防曇性樹脂シートは、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
比較例の防曇性樹脂シートは、シートの白化が生じ、シート外観が悪かった。
【0053】
上記表１及び２で示されている通り、ＨＬＢ値が同じような値のショ糖脂肪酸エステルを用いても、炭素原子数の数やジ・トリエステルの量で防曇性樹脂シートの性能は異なっている。
ショ糖ステアリン酸エステル、及びショ糖パルミチン酸エステルを用いる場合には、モノエステルが８０％含有されている必要があり、モノエステルが８０％以上のショ糖ステアリン酸エステル及びショ糖パルミチン酸エステルを用いることで、これらを含有する防曇剤は白色沈殿物を生じることがないため、防曇性樹脂シートの白化を防止することができ、良好な外観のシートが得られる。なお、これらの防曇性樹脂シートは防曇性も良好である。
特にモノエステルが８０％以上のショ糖ステアリン酸エステル及びショ糖パルミチン酸エステルを含有する防曇剤において、ポリビニルアルコールを含有させることで、より防曇性に優れた樹脂シートを得ることができるが、中でも、ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）（質量部）：ポリビニルアルコール（Ｂ）（質量部）が８０：２０～１０：９０である樹脂シートは、より防曇性に優れたものとすることができる。
実施例から明らかなように、本発明の防曇性樹脂シートは、良好なシート外観、良好な防曇性を満足するものである。
ショ糖ステアリン酸エステル、及びショ糖パルミチン酸エステルを用いる場合には、モノエステルが８０％含有されている必要があり、モノエステルが８０％以上のショ糖ステアリン酸エステル及びショ糖パルミチン酸エステルを用いることで、これらを含有する防曇剤は白色沈殿物を生じることがないため、防曇性樹脂シートの白化を防止することができ、良好な外観のシートが得られる。なお、これらの防曇性樹脂シートは防曇性も良好である。
特にモノエステルが８０％以上のショ糖ステアリン酸エステル及びショ糖パルミチン酸エステルを含有する防曇剤において、ポリビニルアルコールを含有させることで、より防曇性に優れた樹脂シートを得ることができるが、中でも、ショ糖ステアリン酸エステルおよび／またはショ糖パルミチン酸エステル（Ａ）（質量部）：ポリビニルアルコール（Ｂ）（質量部）が８０：２０～１０：９０である樹脂シートは、より防曇性に優れたものとすることができる。
実施例から明らかなように、本発明の防曇性樹脂シートは、良好なシート外観、良好な防曇性を満足するものである。