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特開2025-11583インク供給システム、インクジェットプリンタおよびインク減圧方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011583
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】インク供給システム、インクジェットプリンタおよびインク減圧方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20250117BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250117BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B41J2/165 203
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/165 303
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/175 503
B41J2/165 205
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113776
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB16
2C056EB34
2C056EC16
2C056EC18
2C056EC32
2C056FA04
2C056FA10
2C056JA13
2C056JB04
2C056KA04
2C056KB04
2C056KB13
2C056KB35
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】加圧クリーニングにて消費するインクの量を低減できるインク供給システムを提供する。
【解決手段】インク供給システム70は、チューブポンプ74と、ダンパー76と、制御装置90と、を備えている。制御装置90により、チューブポンプ74の備えるチューブ74bの押圧状態と開放状態とを変化させる。チューブ74bが押圧状態のとき、ダンパー76の内部が加圧され、加圧クリーニングを実行することができる。その後、制御装置90により、チューブ74bが開放状態に変化すると、ダンパー76の内部が減圧される。これにより、加圧クリーニング後にインクを消費することなく、ダンパー76の内部を減圧することができる。
【選択図】図7C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されたインクタンクと、
前記インクを吐出するインクヘッドと、前記インクタンクと前記インクヘッドとを連通するインク供給路と、
前記インク供給路に設けられたダンパーと、
前記インク供給路のうち前記ダンパーと前記インクタンクとの間に配置され、前記インクヘッドに向かう方向に前記インクを送るチューブポンプと、
前記チューブポンプを制御する制御装置と、を備え、
前記チューブポンプは、
弾性変形可能なチューブと、
前記チューブを押圧して前記チューブを変形させる押圧状態と、前記チューブを変形させない開放状態と、に変化させる押圧体と、を備え、
前記制御装置は、
前記チューブを前記押圧状態に変化させることにより、前記ダンパーの内部の圧力を、前記インクヘッドが印刷物に前記インクを吐出するときの圧力よりも高い圧力にする加圧制御部と、
前記加圧制御部により前記ダンパーの内部を加圧した後に、前記チューブを前記開放状態に変化させる減圧制御部と、を備えている、インク供給システム。
【請求項2】
前記インク供給路のうち、前記インクタンクと前記チューブポンプとの間に配置され、前記インク供給路を開閉する開閉弁を備え、
前記制御装置は、前記加圧制御部により前記チューブが前記押圧状態となる前に前記開閉弁を閉鎖し、かつ前記減圧制御部により前記チューブが前記開放状態となった後に、前記開閉弁を開放する第1開閉弁制御部を備えている、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1開閉弁制御部による制御が行われていない場合であって、前記チューブが前記押圧状態のときに前記開閉弁を開放し、かつ前記チューブが前記開放状態のときに前記開閉弁を閉鎖する第2開閉弁制御部を備えている、請求項2に記載のインク供給システム。
【請求項4】
前記ダンパーに接続され、前記ダンパーの内部の圧力を測定する圧力センサを備え、
前記制御装置は、
前記圧力センサの測定値を取得する圧力取得部と、
前記圧力取得部が取得した測定値に基づいて、前記チューブが前記押圧状態であるか、前記チューブが開放状態であるか、を判定する状態判定部と、を備えている、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項5】
前記チューブポンプは、
前記押圧体を支持する支持部と、
前記支持部を回転させる回転部と、を備え、
前記加圧制御部は、前記状態判定部により前記チューブが前記押圧状態であると判定されてから前記回転部を所定の回転量だけ回転させ、
前記所定の回転量は、1回転未満の回転量である、請求項4に記載のインク供給システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載のインク供給システムを備えた、インクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インクヘッドは、前記インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を備え、
前記ノズル面を拭くワイパーと、前記ノズル面に前記ワイパーを接触させた状態で、前記ワイパーまたは前記インクヘッドを移動させるワイパー移動部と、を有するワイパーユニットと、
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップと、前記インクヘッドに対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャップ移動部と、前記キャップに接続された吸引ポンプと、を有するキャップユニットと、の少なくとも一つを備えるクリーニングユニットを備える、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
弾性変形可能なチューブと、前記チューブを押圧して前記チューブを変形させる押圧状態と、前記チューブを変形させない開放状態と、に変化させる押圧体と、を備えるチューブポンプが配置され、かつインクヘッドに接続されるインク供給路に配置されたダンパーの内部を減圧するインク減圧方法であって、
前記チューブポンプの備える前記チューブを押圧状態にすることにより、前記ダンパーの内部の圧力をインクヘッドが印刷物にインクを吐出するときの圧力よりも高い圧力にする加圧工程と、
前記加圧工程により前記ダンパーの内部を加圧した後に、前記チューブを開放状態にする減圧工程と、を含むインク減圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給システム、インクジェットプリンタおよびインク減圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを吐出するインクジェットプリンタが知られている。特許文献1には、インクを収容する液体容器と、インクを吐出するノズルを備えた吐出ヘッドと、液体容器と吐出ヘッドとを接続する液体流路と、液体流路に設けられ、インクが一時的に貯留される貯留室を有するダンパーと、液体流路に設けられた送液ポンプと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。ダンパーは、貯留室にインクを貯留することにより、インクの圧力変動を緩和し、インクの吐出を安定させるものである。
【0003】
ここで、インクジェットプリンタの中には、インクをノズルから排出してクリーニングを行う機能を備えたものが存在する。その1つの方法は、例えば、液体流路内のインクを加圧してノズルからインクを排出させる、いわゆる加圧クリーニングである。特許文献1には、送液ポンプにより液体流路のインクを加圧してノズルから排出させる加圧クリーニングの方法が開示されている。加圧クリーニングは、例えば、液体流路内の気泡をインクとともに排出する目的で行われる。また、加圧することにより、クリーニング時にノズル付近で混色されるインクがノズルに吸い込まれるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-199658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、係るインクジェットプリンタにおいて、加圧クリーニングを行うと、ダンパーの内部のインクが加圧される。インクが加圧された状態から、インクが印刷可能な圧力である状態に戻すためには、ダンパーの内部のインクを減圧させる必要がある。減圧は、例えば、吸引用のポンプを用いてインクを吸引する方法、あるいは吐出ヘッドからインクを吐出させる、いわゆるフラッシングを行う方法などにより実現される。
【0006】
しかしながら、吸引用のポンプを用いた吸引、あるいはフラッシングを行うことにより、吐出ヘッドからインクが吐出される。すなわち、加圧されたインクを減圧するためにインクを消費する必要がある。加圧クリーニングにより消費されるインクの量は比較的多い。そのため、インクの無駄が多くなってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧クリーニングにて消費するインクの量を低減できるインク供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインク供給システムは、インクが収容されたインクタンクと、前記インクを吐出するインクヘッドと、前記インクタンクと前記インクヘッドとを連通するインク供給路と、前記インク供給路に設けられたダンパーと、前記インク供給路のうち前記ダンパーと前記インクタンクとの間に配置され、前記インクヘッドに向かう方向に前記インクを送るチューブポンプと、前記チューブポンプを制御する制御装置と、を備えている。前記チューブポンプは、弾性変形可能なチューブと、前記チューブを押圧して前記チューブを変形させる押圧状態と、前記チューブを変形させない開放状態と、に変化させる押圧体と、を備えている。前記制御装置は、前記チューブを前記押圧状態に変化させることにより、前記ダンパーの内部の圧力を、前記インクヘッドが印刷物に前記インクを吐出するときの圧力よりも高い圧力にする加圧制御部と、前記加圧制御部により前記ダンパーの内部を加圧した後に、前記チューブを前記開放状態に変化させる、減圧制御部と、を備えている。
【0009】
係るインク供給システムによれば、前記加圧制御部により、前記チューブポンプの前記チューブが押圧状態に変化する。これにより、前記インク供給路のうち前記インクタンク側のインクが前記インクヘッド側に送られる。すなわち、インク供給路のうち前記チューブポンプより前記インクヘッド側が加圧され、前記チューブポンプより前記インクタンク側が減圧される。このとき、前記ダンパーの内部の圧力は、前記インクヘッドが印刷物に前記インクを吐出するときの圧力よりも高い。したがって、加圧クリーニングを行うことが可能となる。その後、前記減圧制御部により、前記チューブポンプの前記チューブが前記開放状態に変化する。前記チューブが前記開放状態に変化すると、前記チューブポンプより前記インクヘッド側と、前記チューブポンプより前記インクタンク側と、において圧力差が生じなくなる。すなわち、前記インク供給路の内部の圧力が一様となる。したがって、加圧されていた前記ダンパーの内部は、減圧される。このことにより、前記インクヘッドからインクを吐出させることなく、前記ダンパーの内部を減圧させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧クリーニングにて消費するインクの量を低減できるインク供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタを示す正面図である。
図2】キャリッジの下面の構成を模式的に示した図である。
図3】クリーニングユニットの構成を模式的に示した正面図である。
図4】インク供給システムの構成を示す模式図である。
図5】一実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図6】加圧クリーニングを実行し、ダンパーの内部の圧力を吐出圧力に戻す手順を示すフローチャートである。
図7A】チューブが開放状態のときのインク供給システムを示す図である。
図7B】押圧体がチューブを押圧するときのインク供給システムを示す図である。
図7C】押圧体が押圧終了位置にあるときのインク供給システムを示す図である。
図7D】押圧体が押圧終了位置からさらに移動したときのインク供給システムを示す図である。
図8】ダンパーの内部の圧力の変化を示す図である。
図9】別実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図10A】別実施形態において、チューブが押圧状態のときのインク供給システムを示す図である。
図10B】別実施形態において、チューブが開放状態のときのインク供給システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100(以下、プリンタ100という。)の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示し、図面中の符号X(図2参照)は副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
プリンタ100は、記録媒体5に対して印刷を行うものである。本実施形態では、記録媒体5はロール状の記録紙であり、いわゆる、ロール紙である。しかしながら、記録媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体10と、操作パネル12と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、クリーニングユニット60と、インク供給システム70と、を備えている。図3に示すように、クリーニングユニット60は、ワイパーユニット61と、キャップユニット62と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、プリンタ本体10は、主走査方向Yに延びたケーシング10aを有している。操作パネル12は、例えばプリンタ本体10の右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ100のステータスなどが表示される表示部、および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。プラテン13には、記録媒体5が支持され、プラテン13上において印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がったものである。
【0017】
搬送機構20は、プラテン13に支持された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。搬送機構20の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15の下方に配置され、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。グリットローラ22は、上部がプラテン13から上方に露出した状態で、プラテン13に設けられている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。なお、ピンチローラ21およびグリットローラ22のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。本実施形態では、図1に示すように、ピンチローラ21およびグリットローラ22は、プラテン13の左端部および右端部にそれぞれ配置されている。
【0018】
ここでは、プラテン13の右端部に配置されたグリットローラ22に、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、記録媒体5は、副走査方向Xに搬送される。なお、プラテン13の左端部に配置されてグリットローラ22にフィードモータ23が接続されていてもよい。
【0019】
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40(図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33と、を備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の近傍に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の近傍に設けられている。ベルト32は、例えば無端状であり、左のプーリ31aと右のプーリ31bとに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付け固定されている。
【0020】
右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が左右のプーリ31a、31bの間で走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0021】
図3は、クリーニングユニット60を模式的に示した正面図である。クリーニングユニット60は、キャリッジ17が所定のクリーニング位置L1に移動した状態において、インクヘッド40をクリーニングすることが可能なように構成されている。図3に示すように、本実施形態では、クリーニング位置L1は、ガイドレール15の右端部付近である。ただし、クリーニング位置L1の場所は特に限定されない。図3に示すように、ここでは、クリーニングユニット60は、ワイパーユニット61とキャップユニット62とを備えている。ワイパーユニット61は、ワイパー61aとワイパー移動部61bとを備えている。ワイパー61aは、主走査方向Yおよび上下方向に延びる平板状に構成されている。ワイパー61aは、例えば、ゴムで形成されている。ワイパー移動部61bは、ワイパー61aを副走査方向Xに移動させ、インクヘッド40のうち、後述するノズル面42(図2参照)に接触させる。インクヘッド40ノズル面42は、副走査方向Xに移動するワイパー61aにより払拭される。これをワイピング処理と称する。ワイピング処理は、インクヘッド40をクリーニングするクリーニング処理の1つである。なお、ワイパーユニット61の構成は上記に限定されない。ワイピングは、例えば、キャリッジ17が移動することにより行われてもよく、主走査方向Yに進行するように行われてもよい。
【0022】
キャップユニット62は、インクヘッド40を保護するとともに、インクヘッド40のノズル41(図2参照)からインクを吸引する。ノズル41からインクを吸引する処理を吸引処理と称する。吸引処理は、クリーニング処理の1つである。図3に示すように、キャップユニット62は、キャップ62aと、キャップ移動部62bと、吸引ポンプ62cとを備えている。キャップ62aは、インクヘッド40に装着可能に構成されている。キャップ移動部62bは、キャップ62aを上下方向に移動させ、インクヘッド40に装着または離反させる。吸引ポンプ62cは、キャップ62aがインクヘッド40に装着された状態でキャップ62a内を減圧することにより、ノズル41のインクを吸引する。これにより吸引処理が実行される。また、クリーニング処理において、キャップ62aが離反した状態で、インクヘッド40からキャップ62aに向かってインクを吐出させる処理が行われる。この処理をフラッシング処理と称する。フラッシング処理は、クリーニング処理の1つである。
【0023】
図1に示すように、プリンタ100は、インク供給システム70を備えている。図4は、インク供給システム70の模式図である。図4に示すように、インク供給システム70は、インクヘッド40と、インクタンク71と、インク供給路72と、開閉弁73と、チューブポンプ74と、ダンパー76と、圧力センサ77と、制御装置90(図1参照)と、を備えている。インク供給システム70は、インクタンク71からインクヘッド40にインクを供給するものである。
【0024】
図2は、キャリッジ17の下面の構成を模式的に示した図である。図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その下面をキャリッジ17の下方に露出させるように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40は、インクを吐出するものである。なお、インクヘッド40の数は特に限定されないが、本実施形態では、4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。インクヘッド40は、インクを吐出するノズル41が形成されたノズル面42を備えている。ノズル面42は、インクヘッド40の下面を構成しており、プラテン13(図1参照)と対向している。ノズル面42には、複数のノズル41が副走査方向Xに並んでいる。ノズル41は、記録媒体5(図1参照)にインクを吐出する微細な穴である。複数のノズル41は、副走査方向Xに並ぶノズル列41aを形成している。ノズル41は、インクヘッド40の内部の圧力室(図示せず)につながっている。圧力室には、インクが収容されている。圧力室の圧力を適切に保つことにより、ノズル41にメニスカスが形成され、インクヘッド40が印刷可能な状態となる。インクを吐出する方法は特に限定されないが、例えば、圧電素子により形成されるアクチュエータ(図示せず)を用いてインクの吐出が行われる。アクチュエータは、圧力室につながっている。したがって、アクチュエータが駆動され、圧力室が膨張/収縮されることにより、ノズル41からインクが吐出される。
【0025】
図4に示すように、インクタンク71は、インクが収容された容器である。インクタンク71は、本実施形態では、インクカートリッジである。ただし、インクタンク71は、インクカートリッジに限定されない。本実施形態では、インクタンク71は、インクヘッド40よりも上方に配置されている。したがって、インクタンク71に収容されたインクは、水頭差により、インクヘッド40へと移動する。インクタンク71は、例えば、パウチ状のものであってもよい。インクタンク71には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インクタンク71に貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0026】
インク供給路72は、インクタンク71が接続された流路である。インク供給路72は、インクヘッド40のノズル41に連通している。インク供給路72は、インクタンク71に収容されたインクをノズル41に導く。ここで、インク供給路72におけるインクの流れについて、インクタンク71側を上流側と称し、ノズル41側を下流側と称することとする。インク供給路72は、例えば、可撓性を有するチューブにより形成される。本実施形態では、インク供給路72は、第1インク供給路72aと、第2インク供給路72bと、第3インク供給路72cと、を備えている。第1インク供給路72aは、インクタンク71と開閉弁73とを接続する流路である。第2インク供給路72bは、開閉弁73とチューブポンプ74とを接続する流路である。第3インク供給路72cは、チューブポンプ74とダンパー76とを接続する流路である。なお、図示は省略するが、インク供給路72は、ダンパー76およびインクヘッド40の内部にインクを補充するための回路を別途備えている。なお、インク供給路72は、下流側のインクを上流側に流す循環経路を備えていてもよい。
【0027】
開閉弁73は、インクタンク71の下流側にて、インクタンク71とチューブポンプ74との間に配置されている。開閉弁73は、インク供給路72を開放または閉鎖可能に構成されている。より詳しくは、開閉弁73は、第1インク供給路72aと第2インク供給路72bとを連通または遮断可能に構成されている。ここで、「開閉弁73がインク供給路72を開放」するとは、開閉弁73がインク供給路72を完全に開放する場合と部分的に開放する場合とを含む。開閉弁73が開放されると、第1インク供給路72aと第2インク供給路72bとが接続される。このとき、インクタンク71に貯留されているインクをノズル41に導くことができる。開閉弁73が閉鎖されると、第1インク供給路72aと第2インク供給路72bとが遮断される。開閉弁73は、制御装置90(図5参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。開閉弁73は、例えば、電磁弁である。
【0028】
チューブポンプ74は、インク供給路72のうち開閉弁73とダンパー76との間に配置されている。すなわち、チューブポンプ74は、第2インク供給路72bと第3インク供給路72cとに接続されている。チューブポンプ74は、ダンパー76の内部の圧力を調整し、インクヘッド40によるインクの吐出に適した圧力を調整するためのポンプである。チューブポンプ74は、円弧状に形成された本体ケース74aと、本体ケース74a内に配置されたチューブ74bと、チューブ74bの一部を押圧可能な押圧体74cと、押圧体74cを支持する支持部74dと、押圧体74cおよび支持部74dを回転させる回転部74eと、を備えている。
【0029】
チューブ74bは、内部をインクが通過し、弾性変形可能に形成されている。チューブ74bは、本体ケース74aの内壁に沿って配置されている。チューブ74bの両端は、本体ケース74aの外部に配置されている。チューブ74bの一端は、第2インク供給路72bに接続され、チューブ74bの他端は、第3インク供給路72cに接続されている。すなわち、第2インク供給路72bからチューブ74bに流入したインクは、第3インク供給路72cへ流される。チューブ74bは、押圧体74cにより、本体ケース74aの径方向外側に向かって押圧される。
【0030】
押圧体74cは、チューブ74bを本体ケース74aの径方向外側に向かって押圧する部材である。押圧体74cは、回転部74eが矢印D1の方向に向かって回転することにより、同じ方向に回転可能に構成されている。押圧体74cが回転移動を1回転分行うときに、チューブ74bを押圧してチューブ74bを変形させ始める位置を押圧開始位置CPと称することとする。押圧体74cが押圧開始位置CPからさらに回転移動することにより、チューブ74b内のインクをインクヘッド40に向けて送るように構成されている。これにより、チューブポンプ74の上流側が減圧され、チューブポンプ74の下流側が加圧される。押圧体74cは、押圧開始位置CPから矢印D1の方向に180度回転した位置までチューブ74bを押圧する。押圧開始位置CPから矢印D1の方向に180度回転した位置を押圧終了位置EPと称する。押圧終了位置EPからさらに矢印D1の方向に押圧体74cが移動すると、押圧体74cは、チューブ74bから離反する。なお、「押圧体74cがチューブ74bから離反する」とは、押圧体74cがチューブ74bと接触していない状態と、押圧体74cがチューブ74bと接触しているがチューブ74bを押圧していない状態(即ちチューブ74bが変形していない状態)とを含む。ここで、押圧体74cが押圧開始位置CPから押圧終了位置EPに向かって移動するまでのチューブ74bの状態、すなわち、チューブ74bが押圧された状態を押圧状態と称することとする。また、押圧体74cが押圧終了位置EPを通過してから押圧開始位置CPに向かって移動するまでのチューブ74bの状態、すなわち、チューブ74bが変形していない状態を開放状態と称することとする。したがって、押圧体74cは、チューブ74bの押圧状態と開放状態とを変化させる。なお、本実施形態では、押圧開始位置CPから矢印D1の方向に180度回転した位置を押圧終了位置EPとしているが、押圧開始位置CPと押圧終了位置EPとの位置関係は、これに限定されない。
【0031】
支持部74dは、回転部74eに接続され、押圧体74cを支持する部材である。支持部74dは、回転部74eに接続されているため、回転部74eの回転と共に回転する。支持部74dが押圧体74cを支持しているため、押圧体74cは、回転部74eと共に回転可能となっている。
【0032】
回転部74eは、支持部74dの長手方向の一端に接続されている。回転部74eは、矢印D1の方向に回転する。回転部74eの構成は特に限定されないが、例えば、モータに接続された駆動軸である。回転部74eと支持部74dとが接続され、支持部74dと押圧体74cとが接続されているため、回転部74eの回転により押圧体74cが回転可能に構成されている。回転部74eは、制御装置90(図5参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。
【0033】
ダンパー76は、インク供給路72を通るインクの圧力変動を緩和して、インクヘッド40のインクの吐出を安定させるものである。例えば、ダンパー76内の圧力に応じてチューブポンプ74の駆動が制御される。ここでは、ダンパー76は、インク供給路72に設けられ、インクヘッド40に連通している。本実施形態では、ダンパー76は、インクヘッド40の上部に配置されている。なお、ダンパー76の構成は特に限定されない。例えば、ダンパー76は、インクが一時的に貯留されるインク室を有している。図示は省略するが、インク室の壁の一部は弾性膜によって形成され、インクの量に応じて伸縮する。
【0034】
圧力センサ77は、ダンパー76内の圧力を検出するものである。ここで、「ダンパー76内の圧力」とは、ダンパー76を構成するインク室内のインクの圧力のことを意味する。圧力センサ77は、例えば、ダンパー76内のインクの圧力の大きさを電気信号により直接測定するセンサである。当該電気信号は、制御装置90に送信される。また、圧力センサ77は、ダンパー76の有するインク室の大きさ(例えば伸縮の程度)に基づいてダンパー76内の圧力を検出するものであってもよい。
【0035】
図5に示すように、制御装置90は、印刷に関する制御などを行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置90は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はない。例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0036】
本実施形態では、制御装置90は、チューブポンプ74と通信可能に接続されている。制御装置90は、チューブポンプ74を駆動する。より詳しくは、チューブポンプ74の回転部74eの回転を制御する。
【0037】
本実施形態では、制御装置90は、加圧制御部91と、減圧制御部92と、第1開閉弁制御部93と、クリーニング制御部94と、圧力取得部95と、状態判定部96と、を備えている。なお、制御装置90の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、制御装置90の各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。プロセッサによって行われる場合、プロセッサの数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0038】
加圧制御部91は、チューブポンプ74(図4参照)の回転部74eを回転させることにより、押圧体74cを回転移動させる。これにより、チューブ74b(図4参照)を押圧状態とし、ダンパー76の内部の圧力を加圧クリーニング実行時の圧力に制御する。加圧クリーニング実行時の圧力とは、インクヘッド40が記録媒体5(図1参照)にインクを吐出するときのダンパー76の内部の圧力よりも高い圧力である。ここで、インクヘッド40が記録媒体5(図1参照)にインクを吐出するときのダンパー76の内部の圧力を吐出圧力と称することとする。吐出圧力は、例えば、-1.0kPa程度である。また、加圧クリーニング実行時の圧力は、例えば、ノズル41(図2参照)に形成されるメニスカスがノズル41の外側に張り出すような圧力、あるいは、メニスカスが壊れるほどの圧力である。このとき、ノズル41からインクが染み出す。このときの圧力は、例えば、3.0kPa程度である。加圧制御部91は、まず、回転部74e(図4参照)を矢印D1の方向に回転させ、押圧開始位置CPに押圧体74c(図4参照)を配置させる。その後、さらに押圧体74cを矢印D1の方向に回転させ、チューブ74bの内部のインクをインク供給システム70の下流側に送る。このとき、ダンパー76の内部が加圧される。なお、本実施形態では、チューブ74bが押圧状態となってから、回転部74eを回転させる量は、1回転未満である。本実施形態では、押圧開始位置CPから180度回転した位置に押圧終了位置EPが位置している。すなわち、本実施形態における加圧制御部91は、押圧開始位置CPに押圧体74cが配置された状態から押圧体74cを180度回転させるように構成されている。
【0039】
減圧制御部92は、加圧制御部91によりダンパー76の内部を加圧した後にチューブ74bを開放状態に変化させる。本実施形態では、加圧制御部91による制御が実行されると、押圧体74cが押圧終了位置EP(図4参照)に配置される。減圧制御部92は、この状態からさらに、回転部74eを回転させ、押圧体74cを回転移動させる。減圧制御部92が押圧体74cを回転させる量は、180度未満である。すなわち、減圧制御部92は、チューブ74bが開放状態となるように押圧体74cを回転させる。このとき、チューブポンプ74の下流側にて加圧されていたインクが減圧される。
【0040】
第1開閉弁制御部93は、加圧制御部91によりチューブ74bが押圧状態となる前に開閉弁73を閉鎖し、かつ減圧制御部92によりチューブ74bが開放状態となった後に開閉弁73を開放する。すなわち、第1開閉弁制御部93は、加圧制御部91による制御前にチューブ74bが開放状態となっているときに、開閉弁73を閉鎖する。また、減圧制御部92による制御後にチューブ74bが開放状態となっているときに開閉弁73を開放する。
【0041】
クリーニング制御部94は、加圧制御部91により、ダンパー76の内部の圧力が加圧された状態にて、インクヘッド40のクリーニングを実行する。すなわち、クリーニング制御部94により、加圧クリーニングが実行される。クリーニング制御部94は、例えば、フラッシング処理、吸引処理、およびワイピング処理の順にそれぞれ各処理を実行する。ただし、クリーニング制御部94は、上述した各処理のいずれか1つ、または2つを実行するものであってもよい。また、クリーニング制御部94が各処理を実行する順番は特に限定されない。
【0042】
圧力取得部95は、圧力センサ77が測定した測定値を取得する。より詳しくは、圧力センサ77が測定した際に送信した電気信号を取得することにより、圧力センサ77の測定値を取得する。
【0043】
状態判定部96は、圧力取得部95が取得した測定値に基づいて、チューブ74bが押圧状態であるか、開放状態であるかを判定する。本実施形態では、状態判定部96は、圧力センサ77の測定値が閾値Pc以下であるか否かにより判定を行う。測定値が閾値Pcを超えている場合、状態判定部96は、チューブ74bが押圧状態であると判定する。測定値が閾値Pc以下である場合、状態判定部96は、チューブ74bが開放状態であると判定する。なお、閾値Pcは、例えば、チューブ74bが開放状態のときのインク供給路72の内部の圧力の理論値のうち最大の値である。減圧制御部92による減圧が完了したときに、測定値が閾値Pc以下である場合、状態判定部96は、例えば、減圧が完了したことを操作パネル12に表示するように構成されていてもよい。また、減圧制御部92による制御が完了したときに、測定値が閾値Pcを上回っている場合、状態判定部96は、例えば、操作パネル12にエラー表示を行うように構成されていてもよい。
【0044】
次に、加圧クリーニングを実行した後、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力に戻す動作について説明する。図6は、加圧クリーニングを実行し、その後、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力に戻す手順を説明したフローチャートである。図7A図7Dは、図6に示すフローチャート実行時におけるチューブポンプ74の動作を示す模式図である。なお、図7A図7Cにおいて、開閉弁73の「×」は、開閉弁73が閉鎖されていることを示している。なお、以下の説明において、第3インク供給路72cの内部の圧力と、ダンパー76の内部の圧力と、は同様であるものとする。図8は、図6のフローチャート実行時の第3インク供給路72cの内部の圧力、すなわち、ダイパ―76の内部の圧力の変化を示すグラフである。図8のグラフは、縦軸が圧力を示し、横軸が時間を示している。なお、図8のグラフにおいて、圧力変化時の傾きおよび圧力が一定となっている時間は、一例に過ぎず、適宜変化するものであってよい。ここで、図6に示すフローチャート開始前は、チューブ74bが開放状態となっている。フローチャート開始前は、インク供給路72の内部のインクの圧力は、吐出圧力となっている。吐出圧力のときの圧力の大きさを圧力P1とする。フローチャート開始前は、第1インク供給路72a、第2インク供給路72bおよび第3インク供給路72cのいずれも圧力P1であり、一様な圧力であるものとする。
【0045】
ステップS101において、図7Aに示すように、チューブ74bが開放状態のとき、第1開閉弁制御部93(図5参照)により開閉弁73が閉鎖される。ステップS101において、図8に示すように、第3インク供給路72cの内部のインクの圧力は、P1である。なお、このとき、第1インク供給路72aおよび第2インク供給路72bの内部の圧力もP1である。
【0046】
図6に示すステップS102において、加圧制御部91は、チューブ74bを押圧状態に変化させることにより、ダンパー76の内部を加圧する。加圧制御部91は、回転部74eを回転させ、図7Bに示す押圧開始位置CPに、押圧体74cを移動させる。その後、加圧制御部91は、回転部74eを180度回転させ、押圧体74cを押圧終了位置EPまで回転移動させる。このとき、押圧体74cは、チューブ74bを押しつぶしながら移動する。第2インク供給路72bは減圧され、第3インク供給路72cは加圧される。すなわち、ダンパー76の内部が加圧される。このときの第2インク供給路72bの内部の圧力をP2(<P1)とする。また、図8に示すように、第3インク供給路72cの内部の圧力をP3(>P1)とする。圧力P3は、前述したノズル41に形成されるメニスカスがノズル41の外側に張り出すような圧力、あるいは、メニスカスが壊れるほどの圧力であり、例えば、3.0kPa程度である。なお、開閉弁73が閉鎖されているため、第1インク供給路72aの内部の圧力は、P1のままである。また、このとき、圧力センサ77は、圧力P3を測定しており、状態判定部96は、チューブ74bが押圧状態であると判定する。
【0047】
図6に示すステップS103において、クリーニング制御部94は、フラッシング処理、吸引処理、ワイピング処理を行うことにより、インクヘッド40のクリーニングを実行する。すなわちステップS103において加圧クリーニングが実行される。加圧クリーニング実行時には、ノズル41からインクが染み出している。これにより、第3インク供給路72cの内部の圧力が低下する。このときの第3インク供給路72cの内部の圧力をP4とする。図8に示すように、圧力P4は、圧力P3よりも低い圧力である。ただし、圧力P4は、圧力P1およびP2よりも高い圧力である。インクヘッド40のクリーニングは、クリーニング位置L1(図3参照)にて実行される。
【0048】
図6に示すステップS104において、減圧制御部92は、チューブ74bを開放状態に変化させることにより、ダンパー76の内部を減圧する。図7Cに示すように、減圧制御部92(図5参照)は、回転部74eを回転させることにより、押圧体74cを押圧終了位置EPから回転移動させる。これにより、チューブ74bが開放状態となる。このとき、第2インク供給路72bの内部の圧力がP2から上昇し、第3インク供給路72cの内部の圧力がP4から低下する。やがて、第2インク供給路72bと第3インク供給路72cの内部の圧力が一様となる。このときの圧力をP5とする。ここで、前述したように、ステップS103において、ノズル41からインクが染み出し、第3インク供給路72cの内部の圧力が低下した。したがって、図8に示すように、圧力P5は、圧力P1よりも低い圧力となっている。なお、図7Cに示すように、開閉弁73が閉鎖されているため、第1インク供給路72aの内部の圧力はP1のままである。
【0049】
図6に示すステップS105において、第1開閉弁制御部93は、開閉弁73を開放する。したがって、図7Dに示すように、第1インク供給路72aと第2インク供給路72bと第3インク供給路72cとが接続される。ここで、第1インク供給路72aの内部の圧力P1は、第2インク供給路72bおよび第3インク供給路72cの内部の圧力P5よりも高い。また、インクタンク71は、インクヘッド40よりも上方に配置されている。したがって、第1インク供給路72aは、第2インク供給路72bおよび第3インク供給路72cよりも上方に配置されている。このとき、水頭差により、第2インク供給路72bおよび第3インク供給路72cの内部の圧力が上昇する。このときの第3インク供給路72cの内部の圧力をP6とする。図8に示すように、圧力P6は、圧力P5よりも高く、圧力P1よりも低い圧力である。
【0050】
ステップS106において、状態判定部96は、圧力センサ77の測定値が閾値Pc以下であるか否かを判定する。すなわち、状態判定部96は、圧力P6と閾値Pcにおいて、P6≦Pcが成り立っているか否かを確認する。P6≦Pcが成り立つとき、状態判定部96は、減圧が完了したことを操作パネル12に表示する。P6>Pcが成り立つとき、状態判定部96は、操作パネル12にエラー表示を行う。なお、圧力P6が吐出圧力を下回っている場合がある。このとき、ダンパー76およびインクヘッド40の内部にインクを補充するための回路を用いて、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力まで上昇させてもよい。
【0051】
以上のように本実施形態のインク供給システム70によると、加圧制御部91により、チューブポンプ74のチューブ74bが押圧状態に変化する。押圧体74cは、チューブ74bを押しつぶしながら押圧開始位置CPから押圧終了位置EPに向けて移動する。これにより、チューブ74b内のインクが第3インク供給路72cに送られる。第3インク供給路72cが加圧され、第2インク供給路72bが減圧される。このときダンパー76の内部の圧力は、吐出圧力よりも高い。したがって、加圧クリーニングを行うことが可能となる。その後、減圧制御部92により、チューブポンプ74のチューブ74bが開放状態に変化する。チューブ74bが開放状態に変化すると、チューブ74bが押圧されなくなる。したがって、第3インク供給路72cの内部の圧力が低下し、第2インク供給路72bの内部の圧力が上昇する。このことにより、インクヘッド40からインクを吐出させることなく、ダンパー76の内部を減圧させることができる。本実施形態によれば、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力に戻すために、インクを吐出させる必要がない。加圧クリーニングを実行してから印刷を開始する前に、インクを吐出させる必要がない。よって、インクの無駄な消費を削減することができる。
【0052】
本実施形態のインク供給システム70によると、開閉弁73がインクタンク71とチューブポンプ74との間に配置されている。すなわち、開閉弁73により、第1インク供給路72aと第2インク供給路72bとが連通または遮断可能に構成されている。第1開閉弁制御部93は、加圧制御部91によりチューブ74bが押圧状態となる前に開閉弁73を閉鎖する。これにより、チューブ74bが押圧状態となり、第2インク供給路72bが圧力P2に減圧されているとき、第1インク供給路72aの内部の圧力はP1のままである。また、第1開閉弁制御部93は、減圧制御部92によりチューブ74bが開放状態となった後に開閉弁73を開放する。減圧制御部92によりチューブ74bが開放状態となったとき、第2インク供給路72bおよび第3インク供給路72cの圧力は、いずれも圧力P5となる。圧力P5は、ダンパー76の内部の加圧時のインクの染み出しにより、圧力P1よりも低い値となっている。開閉弁73が開放されることにより、圧力P5となっていた第2インク供給路72bおよび第3インク供給路72cの圧力がP6まで上昇する。したがって、加圧時にインクの染み出しにより減少した圧力の一部を補填することができる。
【0053】
本実施形態のインク供給システム70によると、圧力センサ77は、ダンパー76の内部の圧力を測定している。圧力取得部95は、圧力センサ77の測定値を取得する。状態判定部96は、圧力取得部95が取得した測定値が閾値Pcを超えているか否かによりチューブ74bが押圧状態か開放状態かを判定する。チューブポンプ74のチューブ74bが押圧状態か開放状態かを判定するには、例えば、押圧体74cの位置を検出する位置センサを設ける方法がある。しかしながら、本実施形態のように、圧力センサ77の測定値に基づいてチューブ74bの状態を判定することにより、位置センサを設けなくてもチューブ74bの状態を把握することができる。したがって、インク供給システム70を構成する部品点数の増加を抑制することができる。
【0054】
本実施形態のインク供給システム70によると、チューブポンプ74は、支持部74dと回転部74eとを備えている。加圧制御部91は、状態判定部96により、チューブ74bが押圧状態であると判定されてから回転部74eを180度回転するように構成されている。すなわち、押圧体74cは、押圧開始位置CPからチューブ74bを押圧しながら180度回転するように移動する。回転部74eが回転する量が180度であり、1回転未満であるため、加圧制御部91による制御の最中は、チューブ74bは押圧状態のままである。加圧制御部91によりダンパー76の内部を加圧している最中に、チューブ74bが開放状態になると、ダンパー76の内部が減圧される。したがって、このとき、ダンパー76の内部の圧力の低下を防ぐ必要がある。例えば、チューブ74bが開放状態となっている間、開閉弁73を開放することにより、ダンパー76の内部の圧力の低下を防止することができる。しかしながら、この場合、開閉弁73の開閉の回数が増加し、制御が複雑化する。本実施形態のように、回転部74eが回転する量が1回転未満の場合、開閉弁73の制御を簡易化することができる。
【0055】
本実施形態のプリンタ100には、クリーニングユニット60が設けられている。クリーニングユニット60は、ワイパーユニット61とキャップユニット62とを備えている。これにより、プリンタ100において、フラッシング処理、吸引処理およびワイピング処理を実行することができる。したがって、加圧クリーニングにおいて、より多くの処理を実行することができ、クリーニングの効果が向上する。
【0056】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上述した実施形態に限定されない。
【0057】
上述した実施形態では、インクタンク71とインクヘッド40との水頭差を用いて、インクを移動していた。よって、インク供給路72は、ダンパー76およびインクヘッド40の内部にインクを補充するための回路を別途備えていたが、これに限定されない。インクタンク71は、インクヘッド40よりも下方に配置されていてもよい。このとき、図9に示すように、制御装置90Aが第2開閉弁制御部97を備えていてもよい。なお、制御装置90Aのうち第2開閉弁制御部97以外は、図5に示す制御装置90と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0058】
第2開閉弁制御部97は、第1開閉弁制御部93による制御が行われていない場合であって、チューブ74bが押圧状態のときに開閉弁73を開放し、かつチューブ74bが開放状態のときに開閉弁73を閉鎖する。例えば、第2開閉弁制御部97は、インクヘッド40およびダンパー76にインクを補充するときに開閉弁73を制御する。図10Aおよび図10Bは、インクヘッド40およびダンパー76にインクを補充するときのインク供給システム70の模式図である。なお、図10Aおよび図10Bにおいて、インクタンク71は、インクヘッド40よりも下方に配置されている。図10Aに示すように、チューブ74bが押圧状態であるとき、第2開閉弁制御部97(図9参照)は、開閉弁73を開放する。これにより、インクタンク71の有するインクがインクヘッド40およびダンパー76に送られる。また、図10Bに示すように、チューブ74bが開放状態であるとき、第2開閉弁制御部97は、開閉弁73を閉鎖する。チューブ74bが押圧状態のとき、チューブポンプ74の下流側が加圧されている。したがって、チューブ74bが押圧状態から開放状態になったとき、インクヘッド40およびダンパー76の内部のインクがインクタンク71に逆流する可能性がある。しかしながら、チューブ74bが開放状態のときに開閉弁73が閉鎖されていることにより、インクタンク71への逆流を防ぐことができる。よって、第2開閉弁制御部97を備えていることにより、チューブポンプ74をインクヘッド40およびダンパー76にインクを補充する送液ポンプとしても使用することができる。したがって、送液ポンプを別途設ける必要がなく、インク供給システム70の部品点数の増加を抑制することができる。また、このとき、インクタンク71とインクヘッド40の上下方向における位置関係が制限されない。
【0059】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えば、記録媒体を台の上に固定し、台を搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジを主走査方向Yおよび前後方向に移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
40 インクヘッド
41 ノズル
42 ノズル面
70 インク供給システム
71 インクタンク
72 インク供給路
74 チューブポンプ
74b チューブ
74c 押圧体
90 制御装置
91 加圧制御部
92 減圧制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B