(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011588
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20250117BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20250117BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B41J2/165 205
B41J2/175 501
B41J2/01 401
B41J2/165 303
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113781
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】安形 和晃
(72)【発明者】
【氏名】夏目 正尊
(72)【発明者】
【氏名】関 賢司
(72)【発明者】
【氏名】山本 なつ美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 里美
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
(72)【発明者】
【氏名】角▲崎▼ 正太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC23
2C056EC32
2C056EC54
2C056EC56
2C056EC57
2C056JA04
2C056JA13
2C056JB04
2C056KB04
2C056KB10
(57)【要約】
【課題】加圧クリーニングにて消費するインクの量を低減できるインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ100は、インクヘッド40と、ダンパー76と、送液ポンプ74と、電磁切換バルブ75と、を備えている。電磁切換バルブ75は、体積変化可能なインク収容部751cを備えている。加圧クリーニング実行時、送液ポンプ74によりダンパー76の内部が加圧される。加圧クリーニング後、電磁切換バルブ75のインク収容部751cの体積を変化させることにより、ダンパー76の内部を減圧させる。これにより、加圧クリーニング後にインクを消費することなく、ダンパー76の内部を減圧することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されたインクタンクと、
前記インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクタンクと前記インクヘッドとを連通するインク供給路と、
前記インク供給路に設けられたダンパーと、
前記インク供給路のうち前記ダンパーと前記インクタンクとの間に配置され、前記インクヘッドに向かう方向に前記インクを送る送液ポンプと、
前記インク供給路のうち前記送液ポンプと前記ダンパーとの間に配置された補助容器と、を備え、
前記補助容器は、前記インクを収容し、かつ体積変化可能に構成されたインク収容部を備えているインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記補助容器は、前記インク収容部が第1の体積を有する状態である第1状態と、前記インク収容部が前記第1の体積よりも大きい第2の体積を有する第2状態と、の間で変化可能に構成され、
前記補助容器は、前記第1状態にあるときに、前記インク供給路のうち前記補助容器よりも上流側の領域と、前記補助容器よりも下流側の領域と、を連通させる、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記補助容器は、前記インク収容部と連通し、かつ前記インクが流れ込む流入口を備え、
前記流入口は、前記インク収容部の下面に接続されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記補助容器は、前記インク供給路に複数設けられている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記補助容器は、前記第1状態と前記第2状態との間で切換可能な電磁切換バルブである、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インクヘッド、前記送液ポンプおよび前記電磁切換バルブを制御する制御装置を備え、
前記電磁切換バルブは、前記インク供給路に複数設けられ、
前記制御装置は、
前記送液ポンプを駆動し、前記ダンパーの内部の圧力を前記インクヘッドが印刷物に前記インクを吐出するときの圧力よりも高い圧力にする加圧制御部と、
前記電磁切換バルブを前記第1状態と前記第2状態との間で切り換える切換部と、を備え、
前記切換部は、前記加圧制御部により前記ダンパーの内部の圧力が制御されているときに、前記複数の電磁切換バルブの少なくとも一つを前記第1状態に切り換え、前記複数の電磁切換バルブの少なくとも他の一つを前記第2状態に切り換える、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記複数の電磁切換バルブは、前記インク収容部の内部に配置され、前記インク収容部の体積を前記第1の体積と前記第2の体積との間で変化させる弾性体を備え、
前記弾性体は、前記電磁切換バルブが前記第1状態のときに、前記インク収容部に印加される圧力が所定の圧力以上になると、前記インク収容部の体積が大きくなる方向へ弾性変形する、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記インクヘッドは、前記インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を備え、
前記ノズル面を拭くワイパーと、前記ノズル面に前記ワイパーを接触させた状態で、前記ワイパーまたは前記インクヘッドを移動させるワイパー移動部と、を有するワイパーユニットと、
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップと、前記インクヘッドに対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャップ移動部と、前記キャップに接続された吸引ポンプと、を有するキャップユニットと、の少なくとも一つを備えるクリーニングユニットを備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを吐出するインクジェットプリンタが知られている。特許文献1には、インクを収容する液体容器と、インクを吐出するノズルを備えた吐出ヘッドと、液体容器と吐出ヘッドとを接続する液体流路と、液体流路に設けられ、インクが一時的に貯留される貯留室を有するダンパーと、液体流路に設けられた送液ポンプと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。ダンパーは、貯留室にインクを貯留することにより、インクの圧力変動を緩和し、インクの吐出を安定させるものである。
【0003】
ここで、インクジェットプリンタの中には、インクをノズルから排出してクリーニングを行う機能を備えたものが存在する。その1つの方法は、例えば、液体流路内のインクを加圧してノズルからインクを排出させる、いわゆる加圧クリーニングである。特許文献1には、送液ポンプにより液体流路のインクを加圧してノズルから排出させる加圧クリーニングの方法が開示されている。加圧クリーニングは、例えば、液体流路内の気泡をインクとともに排出する目的で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、係るインクジェットプリンタにおいて、加圧クリーニングを行うと、ダンパーの内部のインクが加圧される。インクが加圧された状態から、インクが印刷可能な圧力である状態に戻すためには、ダンパーの内部のインクを減圧させる必要がある。減圧は、例えば、吸引用のポンプを用いてインクを吸引する方法、あるいは吐出ヘッドからインクを吐出させる、いわゆるフラッシングを行う方法などにより実現される。
【0006】
しかしながら、吸引用のポンプを用いた吸引、あるいはフラッシングを行うことにより、吐出ヘッドからインクが吐出される。すなわち、加圧されたインクを減圧するためにインクを消費する必要がある。加圧クリーニングにより消費されるインクの量は比較的多い。そのため、インクの無駄が多くなってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧クリーニングにて消費するインクの量を低減できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェットプリンタは、インクが収容されたインクタンクと、前記インクを吐出するインクヘッドと、前記インクタンクと前記インクヘッドとを連通するインク供給路と、前記インク供給路に設けられたダンパーと、前記インク供給路のうち前記ダンパーと前記インクタンクとの間に配置され、前記インクヘッドに向かう方向に前記インクを送る送液ポンプと、前記インク供給路のうち前記送液ポンプと前記ダンパーとの間に配置された補助容器と、を備えている。前記補助容器は、前記インクを収容し、かつ体積変化可能に構成されたインク収容部を備えている。
【0009】
係るインクジェットプリンタによれば、前記送液ポンプの駆動により、前記インクタンクに収容された前記インクが前記インク供給路および前記ダンパーを通り、前記インクヘッドに送られる。前記ダンパーの内部の圧力は、前記送液ポンプの駆動に対応した圧力となっている。加圧クリーニングを行うとき、前記ダンパーの内部の圧力は、印刷時に比べて高い。このとき、前記補助容器の体積を変化させることにより、前記ダンパーの内部の圧力が印刷可能な状態の圧力へと減圧される。したがって、前記インクを吐出させることなく、前記ダンパーの内部を減圧させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧クリーニングにて消費するインクの量を低減できるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタを示す正面図である。
【
図2】キャリッジの下面の構成を模式的に示した図である。
【
図3】クリーニングユニットの構成を模式的に示した正面図である。
【
図4】インク供給システムの構成を示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係る制御装置のブロック図である。
【
図10】加圧クリーニングを実行し、ダンパーの内部の圧力を吐出圧力に戻す手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100(以下、プリンタ100という。)の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示し、図面中の符号X(
図2参照)は副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
プリンタ100は、記録媒体5に対して印刷を行うものである。本実施形態では、記録媒体5はロール状の記録紙であり、いわゆる、ロール紙である。しかしながら、記録媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体10と、操作パネル12と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド40(
図2参照)と、クリーニングユニット60と、インク供給ユニット70と、制御装置90と、を備えている。操作パネル12は、例えばプリンタ本体10の右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ100のステータスなどが表示される表示部、および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
図3に示すように、クリーニングユニット60は、ワイパーユニット61と、キャップユニット62と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、プリンタ本体10は、主走査方向Yに延びたケーシング10aを有している。プラテン13には、記録媒体5が支持され、プラテン13上において印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がったものである。
【0017】
搬送機構20は、プラテン13に支持された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。搬送機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15の下方に配置され、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。グリットローラ22は、上部がプラテン13から上方に露出した状態で、プラテン13に設けられている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。なお、ピンチローラ21およびグリットローラ22のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。本実施形態では、
図1に示すように、ピンチローラ21およびグリットローラ22は、プラテン13の左端部および右端部にそれぞれ配置されている。
【0018】
ここでは、プラテン13の右端部に配置されたグリットローラ22に、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、記録媒体5は、副走査方向Xに搬送される。なお、プラテン13の左端部に配置されてグリットローラ22にフィードモータ23が接続されていてもよい。
【0019】
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40(
図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33と、を備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の近傍に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の近傍に設けられている。ベルト32は、例えば無端状であり、左のプーリ31aと右のプーリ31bとに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付け固定されている。
【0020】
右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が左右のプーリ31a、31bの間で走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0021】
図2は、キャリッジ17の下面の構成を模式的に示した図である。
図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その下面をキャリッジ17の下方に露出させるように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40は、インクを吐出するものである。なお、インクヘッド40の数は特に限定されないが、本実施形態では、4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。インクヘッド40は、インクを吐出するノズル41が形成されたノズル面42を備えている。ノズル面42は、インクヘッド40の下面を構成しており、プラテン13(
図1参照)と対向している。ノズル面42には、複数のノズル41が副走査方向Xに並んでいる。ノズル41は、記録媒体5(
図1参照)にインクを吐出する微細な穴である。複数のノズル41は、副走査方向Xに並ぶノズル列41aを形成している。ノズル41は、インクヘッド40の内部の圧力室(図示せず)につながっている。圧力室には、インクが収容されている。圧力室の圧力を適切に保つことにより、ノズル41にメニスカスが形成され、インクヘッド40が印刷可能な状態となる。インクを吐出する方法は特に限定されないが、例えば、圧電素子により形成されるアクチュエータ(図示せず)を用いてインクの吐出が行われる。アクチュエータは、圧力室につながっている。したがって、アクチュエータが駆動され、圧力室が膨張/収縮されることにより、ノズル41からインクが吐出される。
【0022】
図3は、クリーニングユニット60の模式的に示した正面図である。クリーニングユニット60は、キャリッジ17が所定のクリーニング位置P1に移動された状態においてインクヘッド40をクリーニングすることが可能なように構成されている。
図3に示すように、本実施形態では、クリーニング位置P1は、ガイドレール15の右端部付近である。ただし、クリーニング位置P1の場所は特に限定されない。
図3に示すように、ここでは、クリーニングユニット60は、ワイパーユニット61とキャップユニット62とを備えている。ワイパーユニット61は、ワイパー61aとワイパー移動部61bとを備えている。ワイパー61aは、主走査方向Yおよび上下方向に延びる平板状に構成されている。ワイパー61aは、例えば、ゴムで形成されている。ワイパー移動部61bは、ワイパー61aを副走査方向Xに移動させ、インクヘッド40のノズル面42(
図2参照)に接触させる。インクヘッド40のノズル面42は、副走査方向Xに移動するワイパー61aにより払拭される。これをワイピング処理と称する。ワイピング処理は、インクヘッド40をクリーニングするクリーニング処理の1つである。なお、ワイパーユニット61の構成は上記に限定されない。ワイピングは、例えば、キャリッジ17が移動することにより行われてもよく、主走査方向Yに進行するように行われてもよい。
【0023】
キャップユニット62は、インクヘッド40を保護するとともに、インクヘッド40のノズル41(
図2参照)からインクを吸引する。ノズル41からインクを吸引する処理を吸引処理と称する。吸引処理は、クリーニング処理の1つである。
図3に示すように、キャップユニット62は、キャップ62aと、キャップ移動部62bと、吸引ポンプ62cとを備えている。キャップ62aは、インクヘッド40に装着可能に構成されている。キャップ移動部62bは、キャップ62aを上下方向に移動させ、インクヘッド40に装着または離反させる。吸引ポンプ62cは、キャップ62aがインクヘッド40に装着された状態でキャップ62a内を減圧することにより、ノズル41のインクを吸引する。これにより吸引処理が実行される。また、クリーニング処理において、キャップ62aが離反した状態で、インクヘッド40からキャップ62aに向かってインクを吐出させる処理が行われる。この処理をフラッシング処理と称する。フラッシング処理は、クリーニング処理の1つである。
【0024】
図1に示すように、プリンタ100は、インク供給ユニット70を備えている。インク供給ユニット70は、インクヘッド40(
図2参照)にインクを供給するものである。
図4は、インク供給ユニット70の模式図である。
図4に示すように、インク供給ユニット70は、インクタンク71と、インク供給路72と、開閉弁73と、送液ポンプ74と、電磁切換バルブ75と、ダンパー76と、圧力センサ77と、を備えている。
【0025】
インクタンク71は、インクが収容された容器である。インクタンク71は、本実施形態では、インクカートリッジである。ただし、インクタンク71は、インクカートリッジに限定されない。インクタンク71は、例えば、パウチ状のものであってもよい。インクタンク71には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インクタンク71に貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0026】
インク供給路72は、インクタンク71が接続された流路である。インク供給路72は、インクヘッド40のノズル41に連通している。インク供給路72は、インクタンク71に収容されたインクをノズル41に導く。ここで、インク供給路72におけるインクの流れについて、インクタンク71側を上流側と称し、ノズル41側を下流側と称することとする。インク供給路72は、例えば、可撓性を有するチューブにより形成される。なお、インク供給路72は、下流側のインクを上流側に流す循環経路を備えていてもよい。
【0027】
開閉弁73は、インクタンク71の下流側に配置されている。開閉弁73は、インク供給路72を開放または閉鎖可能に構成されている。ここで、例えば、「開閉弁73がインク供給路72を開放または閉鎖」するとは、開閉弁73がインク供給路72の流路を完全に開放または閉鎖する場合と、インク供給路72の流路を部分的に開放する場合と、を含む。開閉弁73が開放されると、インク供給路72の流路が開放され、開閉弁73が閉鎖されると、インク供給路72の流路が閉鎖される。開閉弁73がインク供給路72の流路を開放することにより、インクタンク71に貯留されているインクをインク供給路72に導くことができる。開閉弁73は、制御装置90(
図5参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。開閉弁73は、例えば、電磁弁である。
【0028】
送液ポンプ74は、インク供給路72のうちダンパー76とインクタンク71との間に配置されている。本実施形態では、開閉弁73と電磁切換バルブ75との間に配置されている。送液ポンプ74は、インクヘッド40へ向かう方向、すなわち下流側へインクを送るポンプである。開閉弁73が開放されている状態において、送液ポンプ74を駆動することにより、インクタンク71に収容されたインクをノズル41に供給することができる。送液ポンプ74の種類は特に限定されないが、送液ポンプ74は、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。送液ポンプ74は、制御装置90(
図5参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。
【0029】
電磁切換バルブ75は、インク供給路72のうち送液ポンプ74とダンパー76との間に配置されている。
図6は、電磁切換バルブ75の斜視図である。電磁切換バルブ75は、インクを収容し、体積変化可能に構成されたバルブである。電磁切換バルブ75は、後述するインク収容部751c(
図7参照)の体積を変化させる。電磁切換バルブ75は、インク収容部751cを第1状態と第2状態とに切り換える。ここで、第1状態とは、後述するインク収容部751cの体積が第1の体積の状態であることを指す。第2状態とは、後述するインク収容部751cの体積が第1の体積よりも大きい第2の体積の状態であることを指す。
図7は、
図6に示すA-A断面における電磁切換バルブ75の断面図であり、第1状態の電磁切換バルブ75を図示している。
図8は、第2状態の電磁切換バルブ75を図示したものである。電磁切換バルブ75は、本発明における補助容器の一例である。
図4に示すように、本実施形態では、電磁切換バルブ75は、インク供給路72に3つ設けられている。ここでは、3つの電磁切換バルブ75をインク供給路72の上流側から順にそれぞれ電磁切換バルブ75A、75Bおよび75Cとも称することとする。本実施形態では、電磁切換バルブ75A、75Bおよび75Cは、全て同一の構造を有している。以下の説明では、電磁切換バルブ75A、75Bおよび75Cの全てに対して共通する説明の場合には、電磁切換バルブ75という文言を適宜使用することとする。なお、電磁切換バルブ75の数は、3つに限定されない。以下、電磁切換バルブ75の構造について説明する。
【0030】
図7および
図8に示すように、電磁切換バルブ75は、本体部750とソレノイド760とを備えている。本体部750は、インクが通過する部分である。ソレノイド760は、第1状態と第2状態との切換を行う部分である。
図9は、
図8における本体部750の拡大図である。
【0031】
図7に示すように、本体部750は、本体751と、バルブ弁体752と、カバー753と、バルブロッド754と、第1バネホルダー755(
図9参照)と、第2バネホルダー756(
図9参照)と、調圧部材757と、第1バネ810(
図9参照)と、第2バネ820(
図9参照)と、を備えている。
【0032】
図9に示すように、本体751には、流入路751aと、流入口751bと、インク収容部751cと、流出路751dと、が形成されている。
【0033】
流入路751aは、本体751の下部に形成され、インクが通過する流路である。流入路751aは、インク供給路72(
図4参照)に接続されている。インク供給路72を通るインクは、流入路751aより電磁切換バルブ75に流入する。流入路751aは、水平に延びる水平流入路751aaと、垂直に延びる垂直流入路751abとを備えている。水平流入路751aaと垂直流入路751abとは、インク収容部751cの下方にて接続されている。
【0034】
流入口751bは、インク収容部751cの下面に接続されている。流入口751bは、インク収容部751cに連通している。流入口751bは、流入路751aを通過したインクがインク収容部751cに流れ込む部分である。
【0035】
インク収容部751cは、インクを収容し、かつ体積変化可能に構成された部分である。インク収容部751cは、空間752aを有している。空間752aは、インク収容部751cとバルブ弁体752とに囲まれた空間である。空間752aには、インクが流入する。本実施形態では、バルブ弁体752が弾性変形することにより、空間752aの形状が変化し、インク収容部751cの体積が変化する。
図7に示す第1状態のときのインク収容部751cの体積を第1の体積V1とする。
図8に示す第2状態のときのインク収容部751cの体積を第2の体積V2とする。第2の体積V2は、第1の体積V1よりも大きい。ただし、第1の体積V1は、0より大きい数値である。インク収容部751cの体積がV1からV2に変化すると、インク供給路72(
図4参照)全体の体積がV2-V1の分だけ増加する。したがって、インク供給路72の内部のインクが減圧される。すなわち、後述するダンパー76の内部のインクが減圧される。
【0036】
流出路751dは、本体751の下部に形成され、インクが通過する流路である。流出路751dは、インク収容部751cに接続されている。流出路751dは、インクがインク収容部751cから流出する路である。流出路751dは、インク供給路72(
図4参照)に接続されている。
【0037】
バルブ弁体752は、空間752aの上端を形成している。バルブ弁体752は、弾性変形することにより、空間752aの形状を変化させるものである。すなわち、バルブ弁体752が変形することにより、インク収容部751cの体積が変化する。バルブ弁体は、本発明における弾性体の一例である。バルブ弁体752は、その外周端が本体751とカバー753とにより挟まれた状態で支持されている。バルブ弁体752は、例えば、ゴムなどの可撓性を有する材料により形成されている。
図7に示すように、バルブ弁体752は、第1状態のときにバルブロッド754により下方に押されている。したがって、バルブ弁体752は、その外周端を固定端として、下方に凸な形状となるように変形している。ただし、バルブ弁体752は、流入口751bを閉鎖しない位置に配置されている。すなわち、電磁切換バルブ75は、第1状態のときでも流入路751a、流入口751b、インク収容部751cおよび流出路751dが連通している。したがって、電磁切換バルブ75は、インク供給路72(
図4参照)のうち電磁切換バルブ75よりも上流側の領域と、電磁切換バルブ75よりも下流側の領域とを連通させている。
【0038】
カバー753は、バルブ弁体752の上方に設けられている。
図9に示すように、カバー753は、本体751とともにバルブ弁体752弁体の外周端を保持する。カバー753は、ネジ840により、本体751に固定されている。カバー753は、中空状に形成された円筒状の凸部753aを有している。凸部753aの内部には、第1バネホルダー755と、第2バネホルダー756と、第1バネ810と、バルブロッド754の一部と、が配置されている。また、凸部753aを囲むように、第2バネ820が取り付けられている。
【0039】
バルブロッド754は、バルブ弁体752に接続され、上下方向に移動することによってバルブ弁体752を弾性変形させる円筒状の部材である。バルブロッド754は、バルブ弁体752の上部に接続されている。バルブロッド754は、上端に位置する頭部754aと上下方向に延びる胴部754bとを備えている。頭部754aが調圧部材757の上方に配置され、胴部754bの一部が調圧部材757の内部に配置されるようにバルブロッド754が組み付けられている。
図9に示すように、電磁切換バルブ75が第2状態のとき、調圧部材757の上端が頭部754aの下端に当接する。したがって、調圧部材757が上方に移動するとき、頭部754aが上方に押し上げられ、バルブロッド754が調圧部材757とともに移動するように構成されている。
【0040】
第1バネホルダー755および第2バネホルダー756は、カバー753の凸部753aの内部に配置されている。第1バネホルダー755は、バルブロッド754に接続されている。第1バネホルダー755は、バルブロッド754が挿通され、凸形状を有する部材である。第2バネホルダー756は、バルブロッド754が挿通され、凹形状を有する部材である。第1バネホルダー755と第2バネホルダー756とは、第1バネ810を介して対向するように配置されている。これにより、第1バネ810による弾性力が第1バネホルダー755および第2バネホルダー756に加わっている。すなわち、第1バネホルダー755は、バルブロッド754を下方に押す方向に力を加える。第2バネホルダー756は、カバー753を押す方向に力が加えられ、カバー753に押し付けられている。
【0041】
調圧部材757は、第2バネ820の上端に載置されている。調圧部材757は、第2バネ820に載置され、第2バネ820の伸縮により、上下方向に移動可能に組み付けられている。調圧部材757には、バルブロッド754の頭部754aの下方に第1挿通孔757aおよび第2挿通孔757bが形成されている。第1挿通孔757aおよび第2挿通孔757bは、バルブロッド754が挿通される孔である。第1挿通孔757aは、その径方向の中心の位置がバルブロッド754の径方向の中心の位置と揃った孔である。第2挿通孔757bは、第1挿通孔757aの上部に形成されている。第2挿通孔757bの径方向の中心の位置は、第1挿通孔757aの中心の位置に対して水平方向にずれた位置(
図9における図面視では左方)にある。第2挿通孔757bは、平面視にて第1挿通孔757aの一部と重なっている。第1挿通孔757aの中心の位置と第2挿通孔757bの中心の位置とのずれにより、調圧部材757に肩部757cが形成されている。肩部757cは、バルブロッド754の径方向において、頭部754aの外径よりも内側に位置している。したがって、第2バネ820の弾性力により調圧部材757が上方に押し上げられると、肩部757cが頭部754aに当接し、バルブロッド754も上方に押し上げられる。
【0042】
第1バネ810は、バルブロッド754を囲むように配置されている。第1バネ810は、その両端が第1バネホルダー755と第2バネホルダー756とに接して配置されている。第1バネ810は、第1バネホルダー755に対して下方に向かう弾性力を付与するものである。
【0043】
第2バネ820は、バルブロッド754およびカバー753の凸部753aを囲むように配置されている。第2バネ820は、その両端がカバー753と調圧部材757に接して配置されている。第2バネ820は、調圧部材757に対して上方に向かう弾性力を付与するものである。電磁切換バルブ75の動作範囲内において、第2バネ820の弾性力は、第1バネ810の弾性力よりも常に大きい。
【0044】
図7および
図8に示すように、ソレノイド760は、ソレノイド本体761と軸芯762とを有している。ソレノイド本体761は、内部において下方に開口した空間761aを有している。ソレノイド本体761のうち空間761aの周囲には、ソレノイドコイルが巻かれている。ソレノイドコイルが通電されると、軸芯762に上向きの吸引力が生じる。軸芯762は、ソレノイド本体761の空間761aに挿通されており、ソレノイド本体761に対して上下に移動可能である。軸芯762は、調圧部材757と接触可能であり、軸芯762が下方に移動することで調圧部材757に接触する。軸芯762の下部には、側方に延びたフランジ763が設けられている。
【0045】
本実施形態では、ソレノイド760には、第3バネ830が設けられている。第3バネ830は、軸芯762を囲むように配置されている。第3バネ830は、ソレノイド本体761と、フランジ763との間に介在している。第3バネ830は、軸芯762に対して下方に向かう弾性力を付与するものである。第3バネ830は、軸芯762に対してソレノイド本体761から離れる方向に弾性力を付与する。電磁切換バルブ75の動作範囲内において、第3バネ830の弾性力は、第2バネ820の弾性力と同等かそれよりも大きい。電磁切換バルブ75の動作範囲内において、第3バネ830の弾性力は、ソレノイド760の吸引力より常に小さい。
【0046】
本実施形態では、ソレノイド760をONまたはOFFにすることで、ソレノイド本体761に対する軸芯762の上下位置、および、軸芯762の移動範囲が変更される。なお、ここでのソレノイド760をONにするとは、通電している状態のことをいい、ソレノイド760をOFFにするとは、非通電の状態のことをいう。以上、電磁切換バルブ75の構造について説明した。
【0047】
図4に示すように、ダンパー76は、インク供給路72を通るインクの圧力変動を緩和して、インクヘッド40のインクの吐出を安定させるものである。例えば、ダンパー76内の圧力に応じて送液ポンプ74の駆動が制御される。ここでは、ダンパー76は、インク供給路72に設けられ、インクヘッド40に連通している。本実施形態では、ダンパー76は、インクヘッド40の上部に配置されている。なお、ダンパー76の構成は特に限定されない。例えば、ダンパー76は、インクが一時的に貯留されるインク室を有している。図示は省略するが、インク室の壁の一部は弾性膜によって形成され、インクの量に応じて伸縮する。
【0048】
圧力センサ77は、ダンパー76内の圧力を検出するものである。ここで、「ダンパー76内の圧力」とは、ダンパー76を構成するインク室内のインクの圧力のことを意味する。圧力センサ77は、例えば、ダンパー76内のインクの圧力の大きさを電気信号により直接測定するセンサである。また、圧力センサ77は、ダンパー76の有するインク室の大きさ(例えば伸縮の程度)に基づいてダンパー76内の圧力を検出するものであってもよい。
【0049】
図5に示すように、制御装置90は、印刷に関する制御などを行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置90は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はない。例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0050】
本実施形態では、制御装置90は、送液ポンプ74と通信可能に接続されている。制御装置90は、送液ポンプ74を駆動する。また、制御装置90は、電磁切換バルブ75のソレノイド760と通信可能に接続されている。制御装置90は、ソレノイド760のON/OFFの制御を行う。
【0051】
本実施形態では、制御装置90は、加圧制御部91と、切換部92と、クリーニング制御部93と、吐出圧力制御部94と、を備えている。なお、制御装置90の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、制御装置90の各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。プロセッサによって行われる場合、プロセッサの数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0052】
加圧制御部91は、送液ポンプ74を駆動することにより、ダンパー76の内部の圧力を加圧クリーニング実行時の圧力に制御する。加圧クリーニング実行時の圧力とは、インクヘッド40が記録媒体5にインクを吐出するときのダンパー76の内部の圧力よりも高い圧力である。例えば、加圧クリーニング実行時の圧力は、ノズル41(
図2参照)に形成されるメニスカスがノズル41の外側に張り出すような圧力、あるいは、メニスカスが壊れるほどの圧力である。なお、ダンパー76の内部の圧力の制御は、圧力センサ77の測定値に基づいて制御される。
【0053】
切換部92は、電磁切換バルブ75の第1状態と第2状態との切換を行う。すなわち、切換部92は、ソレノイド760のON/OFFの切換を行う。本実施形態では、切換部92は、電磁切換バルブ75A、75Bおよび75Cの切換をそれぞれ独立に制御可能に構成されている。切換部92は、加圧制御部91がダンパー76の内部の圧力を加圧クリーニング実行時の圧力に制御しているとき、電磁切換バルブ75A、75Bおよび75Cのうち少なくとも1つを第1状態とし、少なくとも1つを第2状態とするように構成されている。
【0054】
クリーニング制御部93は、加圧制御部91により、ダンパー76の内部の圧力が加圧された状態にて、インクヘッド40のクリーニングを実行する。すなわち、クリーニング制御部93により、加圧クリーニングが実行される。クリーニング制御部93は、例えば、吸引処理、ワイピング処理、およびフラッシング処理の順にそれぞれ各処理を実行する。ただし、クリーニング制御部93は、上述した各処理のいずれか1つ、または2つを実行するものであってもよい。また、クリーニング制御部93が各処理を実行する順番は特に限定されない。
【0055】
吐出圧力制御部94は、ダンパー76の内部の圧力を、インクヘッド40が記録媒体5にインクを吐出するときの圧力に制御する。このときの圧力を吐出圧力と称することとする。吐出圧力制御部94は、送液ポンプ74を停止し、第1状態の電磁切換バルブ75のうち少なくとも一つを第2状態へと切り換える。電磁切換バルブ75を第1状態から第2状態に切り換えると、電磁切換バルブ75のインク収容部751cの体積が増加し、ダンパー76の内部の圧力が低下する。なお、吐出圧力制御部94が切り換える電磁切換バルブ75の数は予め定められていてよい。
【0056】
次に、電磁切換バルブ75の切換の動作について説明する。電磁切換バルブ75は、ソレノイド760をONまたはOFFにすることにより、軸芯762が上下方向へ移動し、切換が行われるものである。
【0057】
図7は、ソレノイド760がOFFの状態のときの電磁切換バルブ75を図示している。このとき、電磁切換バルブ75は、第1状態である。ソレノイド760がOFFのとき、ソレノイド760には、吸引力が生じていない。したがって、軸芯762は、第3バネ830の弾性力により下方に移動する。このとき、軸芯762が調圧部材757に接触する。第3バネ830の弾性力と第2バネ820の弾性力とが釣り合うまで、軸芯762が調圧部材757を下方に移動させる。このとき、バルブロッド754の頭部754aに当接していた調圧部材757の肩部757cが頭部754aから離間する。したがって、第2バネ820の弾性力がバルブロッド754に対して働かなくなる。第2バネ820の弾性力がバルブロッド754に対して働かなくなると、バルブロッド754に接続された第1バネホルダー755に対して下方に向かう弾性力が第1バネ810により付与される。したがって、第1バネホルダー755を介してバルブロッド754に対して下方に向かう弾性力が第1バネ810により付与される。すなわち、バルブロッド754が下方へ移動する。このとき、バルブロッド754により、バルブ弁体752が下方に凸となるように変形され、インク収容部751cの体積が小さくなる。このときのインク収容部751cの体積は、第1の体積V1である。
【0058】
なお、電磁切換バルブ75が第1状態のとき、インク収容部751cの内部のインクの圧力が所定の圧力を超えると、インク収容部751cの内部の圧力がバルブ弁体752を押す力が、第1バネ810の弾性力を超え、バルブ弁体752が上方に向かって変形する。すなわち、インク収容部751cの体積が大きくなる方へバルブ弁体752が変形する。
【0059】
図8は、ソレノイド760がONの状態のときの電磁切換バルブ75を図示している。このとき、電磁切換バルブ75は、第2状態である。ソレノイド760がONのとき、ソレノイド760には、上方に向かう吸引力が生じている。当該吸引力により軸芯762が上方に移動され、ソレノイド本体761の内部に衝突する。このとき、軸芯762は、調圧部材757から離間する。軸芯762が調圧部材757から離間すると、第3バネ830の弾性力が調圧部材757に働かなくなる。このとき、第2バネ820が調圧部材757を上方に押し上げる。調圧部材757の肩部757cがバルブロッド754の頭部754aに当接すると、バルブロッド754が上方に押し上げられる。ここで、第2バネ820の弾性力は、第1バネ810の弾性力よりも大きいため、バルブロッド754は、上方に押し上げられる。バルブロッド754が押し上げられることにより、バルブロッド754に接続されたバルブ弁体752が上方に向かって変形する。したがって、インク収容部751cの体積が増加する。このときのインク収容部751cの体積は、第2の体積V2である。
【0060】
次に、加圧クリーニングを実行した後、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力に戻す動作について説明する。
図10は、加圧クリーニングを実行し、その後、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力に戻す手順を説明したフローチャートである。なお、以下のフローにおいて、開閉弁73(
図4参照)は、開かれているものとする。
【0061】
ステップS101において、加圧制御部91は、送液ポンプ74を駆動することにより、ダンパー76の内部を加圧する。これにより、ダンパー76の内部の圧力が加圧クリーニング実行時の圧力となる。ステップS102において、切換部92は、電磁切換バルブ75の切換を行う。例えば、切換部92は、電磁切換バルブ75Aが第1状態、かつ電磁切換バルブ75Bおよび75Cが第2状態となるように、それぞれのソレノイド760の通電の状態を制御する。
【0062】
ステップS103において、クリーニング制御部93は、吸引処理、ワイピング処理およびフラッシング処理を行うことにより、インクヘッド40のクリーニングを実行する。すなわち、ステップS103において加圧クリーニングが実行される。なお、インクヘッド40のクリーニングは、クリーニング位置P1にて実行される。
【0063】
ステップS104において、吐出圧力制御部94は、電磁切換バルブ75の切換を実行することにより、ダンパー76の内部の圧力を低下させる。本実施形態では、ステップS103において、第1状態であった電磁切換バルブ75Aを第2状態に切り換える。電磁切換バルブ75Aを第1状態から第2状態に切り換えることにより、インク収容部751cの体積が増加し、ダンパー76の内部が吐出圧力まで低下する。
【0064】
ステップS105において、ユーザは、再度加圧クリーニングを実行するか否かを決定する。加圧クリーニングを実行するか否かは、例えば、操作パネル12を操作することにより選択される。再度加圧クリーニングを実行する場合は、ステップS101に進む。再度ステップS101からフローを開始する場合、ステップS102において第1状態とする電磁切換バルブ75は、前回のフローにおいて第1状態に切り換えなかった電磁切換バルブ75を第1状態とする。例えば、ステップS101~ステップS105のフローを3回行う場合、1回目のフローでは電磁切換バルブ75Aを第1状態とし、2回目のフローでは電磁切換バルブ75Bを第1状態とし、3回目のフローでは電磁切換バルブ75Cを第1状態とする。なお、ステップS104とステップS105との間にて例えばインクジェットプリンタ100による印刷などが実行されてもよい。ステップS105にて加圧クリーニングを実行しない場合は、フローを終了する。
【0065】
以上のように、本実施形態のプリンタ100によると、送液ポンプ74を駆動することにより、インクタンク71に収容されたインクがインク供給路72およびダンパー76を通りインクヘッド40のノズル41に送られる。ダンパー76の内部の圧力は、送液ポンプ74の駆動に応じた圧力となる。ダンパー76の内部圧力を高めることにより、加圧クリーニングを行うことができる。加圧クリーニングの実行時の圧力は、吐出圧力よりも高くなっている。加圧クリーニングを実行した後、電磁切換バルブ75を切り換え、インク収容部751cの体積を増加させることにより、ダンパー76の内部が減圧される。したがって、インクヘッド40からインクを吐出させることなく、ダンパー76の内部を減圧させることができる。本実施形態によれば、ダンパー76の内部圧力を吐出圧力に戻すために、インクを吐出させる必要がない。加圧クリーニングを実行してから印刷を開始する前に、インクを吐出させる必要がない。よって、インクの無駄な消費を削減することができる。
【0066】
上述した実施形態によると、電磁切換バルブ75は、インク収容部751cの体積が第1の体積V1である第1状態と、インク収容部751cの体積が第2の体積V2である第2状態と、の間で切換可能である。なお、第2の体積V2は、第1の体積V1よりも大きい。電磁切換バルブ75は、第1状態のときでも、流入路751a、流入口751b、インク収容部751cおよび流出路751dが連通している。流入路751aおよび流出路751dは、インク供給路72に接続されている。すなわち、インク供給路72のうち電磁切換バルブ75の上流側と下流側とが連通している。ここで、流入路751a、流入口751b、インク収容部751cおよび流出路751dの連通が途切れることがあると、インク収容部751cの内部のインクが流れなくなるため、インクの沈降が生じる可能性がある。インクの沈降は、印刷部の色ムラなどの品質低下に繋がる。本実施形態では、インク収容部751cの体積が最小のときである第1状態でもインク収容部751cのインクを流すことができるため、インクの沈降が比較的生じにくい。したがって、印刷物の品質低下を抑制することができる。
【0067】
上述した実施形態によると、インクがインク収容部751cに入り込む部分である流入口751bがインク収容部751cの下面に接続されている。したがって、インク収容部751cに流入するインクは、インク収容部751cの下部から上部に向かって流入する。これにより、インク収容部751cの下部付近のインクが上方に流動する。よって、インク収容部751cの内部にてインクの沈降が比較的生じにくい。したがって、印刷物の品質低下を抑制することができる。
【0068】
上述した実施形態によると、電磁切換バルブ75は、インク供給路72に複数設けられている。ここで、インク収容部751cの体積が比較的大きい場合、電磁切換バルブ75の本体部750をインクが通過したとき、インク収容部751cの内部のインクのうち流動するインクの量は、インク収容部751cの内部のインク全体に対して少ない。このとき、インク収容部751cの内部にてインクの沈降が比較的生じやすい。一方、第1状態から第2状態に切り換えたときにダンパー76の内部が減圧される度合いは、インク収容部751cの体積により決まる。本実施形態のように、電磁切換バルブ75がインク供給路72に複数設けられることにより、電磁切換バルブ75が1つのみ設けられている場合に比べ、1つあたりの電磁切換バルブ75のインク収容部751cの体積を小さくすることができる。インク収容部751cの体積が小さいと、インク収容部751cの内部のインクの流動が比較的生じやすくなる。このことにより、インクの沈降が比較的生じにくい。したがって、ダンパー76の内部の圧力を吐出圧力にすることを可能としたまま、印刷物の品質低下を抑制することができる。
【0069】
上述した実施形態によると、補助容器は、第1状態と第2状態との間で切換可能な電磁切換バルブ75である。電磁切換バルブ75は、ソレノイド760の通電を切り換えることにより、第1状態と第2状態とを切り換えることができる。よって、第1状態と第2状態との切換が比較的容易である。
【0070】
上述した実施形態によると、制御装置90の加圧制御部91がダンパー76の内部の圧力を加圧クリーニング実行時の圧力にしたとき、切換部92は、電磁切換バルブ75Aを第1状態とし、電磁切換バルブ75Bおよび75Cを第2状態とするように制御する。このことにより、加圧クリーニング実行時の圧力としたときに第1圧力とする電磁切換バルブ75をローテーションさせることができる。したがって、複数の電磁切換バルブ75を備えている場合でも、全ての電磁切換バルブ75においてインクの沈降が比較的生じにくい。このことにより、印刷物の品質の低下を防止することができる。
【0071】
上述した実施形態によると、電磁切換バルブ75が第1状態のとき、インク収容部751cの内部のインクの圧力が所定の圧力を超えると、バルブ弁体752が上方に向かって変形する。すなわち、インク収容部751cの体積が大きくなる方にバルブ弁体752が変形する。したがって、インク収容部751cの内部のインクの圧力が所定の圧力を超えないように保たれている。複数の電磁切換バルブ75を第1状態とすることにより、当該所定の圧力の値がより高くなる。すなわち、複数の電磁切換バルブ75のうち、第1状態とするものの個数によりダンパー76の内部の圧力を決定することができる。これにより、電磁切換バルブ75によりダンパー76の内部の圧力調整が可能となる。
【0072】
本実施形態のプリンタ100には、クリーニングユニット60が設けられている。クリーニングユニット60は、ワイパーユニット61とキャップユニット62とを備えている。これにより、プリンタ100において、吸引処理、ワイピング処理およびフラッシング処理を実行することができる。したがって、加圧クリーニングにおいて、より多くの処理を実行することができ、クリーニングの効果が向上する。
【0073】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えば、記録媒体を台の上に固定し、台を搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジを主走査方向Yおよび前後方向に移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
40 インクヘッド
41 ノズル
42 ノズル面
71 インクタンク
72 インク供給路
74 送液ポンプ
75 電磁切換バルブ(補助容器)
751c インク収容部
76 ダンパー
100 プリンタ(インクジェットプリンタ)