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特開2025-11598積層型圧電振動子、圧電振動デバイス、および恒温槽型圧電発振器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011598
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】積層型圧電振動子、圧電振動デバイス、および恒温槽型圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20250117BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113799
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】森脇 徹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 直人
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA43
5J079BA47
5J079CA04
5J079CA12
5J079HA02
5J079HA07
5J079HA25
5J108AA04
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108FF09
5J108GG03
5J108GG14
5J108HH06
(57)【要約】
【課題】OCXOにおける伝熱性の向上を図ることが可能な積層型圧電振動子を提供する。
【解決手段】水晶振動板10と、第1封止部材20と、第2封止部材30とを有する積層型圧電振動子であって、発振用IC52と接合材により接合される第1封止部材20の第3端子23が、無電極域R21と電極域R22とを有する。ヒータ用IC51と接合材により接合される第2封止部材30の外部端子32が、無電極域R31と電極域R32とを有する。第3端子23および外部端子32の電極域R22,R32とシールパス41,42とが、外枠部12で重畳している。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠部と、保持部と、励振電極が形成された振動部とが一体的に構成された圧電振動板と、
前記振動部の上面側を覆う第1封止部材と、
前記振動部の下面側を覆う第2封止部材とを有する積層型圧電振動子であって、
前記第1封止部材の外表面または前記第2封止部材の外表面には、加熱外部部材と接合材により接合され、無電極域および電極域を有する伝熱電極が形成され、
前記第1封止部材と前記圧電振動板との間には、環状の第1の封止用電極が形成され、
前記第2封止部材と前記圧電振動板との間には、環状の第2の封止用電極が形成され、
前記伝熱電極の前記電極域と前記第1の封止用電極と前記第2の封止用電極とが、前記外枠部で重畳していることを特徴とする積層型圧電振動子。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型圧電振動子であって、
前記伝熱電極の前記電極域と前記第1の封止用電極と前記第2の封止用電極とが、前記外枠部で環状に重畳していることを特徴とする積層型圧電振動子。
【請求項3】
請求項1に記載の積層型圧電振動子を備えた圧電振動デバイスであって、
前記加熱外部部材が、発振用ICまたはヒータ用ICからなり、前記伝熱電極の前記無電極域と前記電極域の両方にまたがった状態で前記積層型圧電振動子の外表面に接合材により接合されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動デバイスであって、
前記積層型圧電振動子が、前記発振用ICと前記ヒータ用ICとの間に挟まれた状態で積層配置されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項5】
請求項3に記載の圧電振動デバイスを備えた恒温槽型圧電発振器であって、
前記圧電振動デバイスが、断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入され、
コア部が、少なくとも前記発振用IC、前記積層型圧電振動子、および前記ヒータ用ICを含み、前記積層型圧電振動子の外表面に前記発振用ICまたは前記ヒータ用ICの少なくとも一方が積層された構成になっており、
前記コア部は、基板を介して前記パッケージに搭載され、前記基板と前記パッケージの内底面との間には、空間が設けられていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項6】
請求項5に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記基板は、当該基板の両端部で接合材によって前記パッケージの前記内底面に機械的接合され、
前記コア部は、ワイヤによって前記パッケージに電気的接合されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電振動子、圧電振動デバイス、および恒温槽型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子は、固有の周波数温度特性に基づいて、温度に応じて振動周波数が変化する。そこで、圧電振動子の周囲の温度を一定に保つために、恒温槽内に圧電振動子を封入した恒温槽型圧電発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下、「OCXO」とも言う。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のOCXOは、発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICが積層されたコア部を、可撓性コア基板を介して断熱用のパッケージ内部に支持し、ワイヤボンディングを用いて必要な配線を行っている。このような構成のOCXOでは、小型化を実現しながらもコア部の断熱効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/097132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなOCXOでは、3層構造(積層型)の圧電振動子が用いられており、圧電振動子の底面に4つの外部端子が設けられた構成になっている。このため、ダイボンディンク時の接合部材による短絡の問題や、加熱外部部材からの伝熱性が悪い等といった問題点があった。
【0006】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、OCXOにおける伝熱性の向上を図ることが可能な積層型圧電振動子を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような積層型圧電振動子を備えた圧電振動デバイス、およびOCXOを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、外枠部と、保持部と、励振電極が形成された振動部とが一体的に構成された圧電振動板と、前記振動部の上面側を覆う第1封止部材と、前記振動部の下面側を覆う第2封止部材とを有する積層型圧電振動子であって、前記第1封止部材の外表面または前記第2封止部材の外表面には、加熱外部部材と接合材により接合され、無電極域および電極域を有する伝熱電極が形成され、前記第1封止部材と前記圧電振動板との間には、環状の第1の封止用電極が形成され、前記第2封止部材と前記圧電振動板との間には、環状の第2の封止用電極が形成され、前記伝熱電極の前記電極域と前記第1の封止用電極と前記第2の封止用電極とが、前記外枠部で重畳していることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、加熱外部部材と接合された伝熱電極の電極域が、無電極域に比べて効率よく加熱される。伝熱電極の電極域と第1の封止用電極と第2の封止用電極とが、外枠部で重畳しているため、伝熱電極の電極域の熱が、第1の封止用電極および第2の封止用電極を介して外枠部へ伝達され、さらには外枠部から保持部を介して振動部へ伝達される。これにより、加熱外部部材から、外枠部および保持部を経由した振動部への伝熱性を向上させることができる。したがって、OCXOにおける伝熱性の向上を図ることが可能な積層型圧電振動子を提供することができる。
【0009】
上記構成において、前記伝熱電極の前記電極域と前記第1の封止用電極と前記第2の封止用電極とが、前記外枠部で環状に重畳していることが好ましい。これにより、伝熱電極の電極域と第1の封止用電極と第2の封止用電極とが、平面視で外枠部と環状に重畳しているので、加熱外部部材から、外枠部および保持部を経由した振動部への伝熱性をさらに向上させることができる。したがって、OCXOにおける伝熱性の向上を図ることが可能な積層型圧電振動子を提供することができる。
【0010】
また、本発明は、上記構成の積層型圧電振動子を備えた圧電振動デバイスであって、前記加熱外部部材が、発振用ICまたはヒータ用ICからなり、前記伝熱電極の前記無電極域と前記電極域の両方にまたがった状態で前記積層型圧電振動子の外表面に接合材により接合されていることを特徴とする。これにより、圧電振動デバイスにおいて、接合材による発振用ICまたはヒータ用ICの圧電振動子に対する接合強度が向上する。
【0011】
上記構成において、前記積層型圧電振動子が、前記発振用ICと前記ヒータ用ICとの間に挟まれた状態で積層配置されていることが好ましい。
これにより、発振用ICおよびヒータ用ICによって、積層型圧電振動子の両側から圧電振動板の振動部への伝熱が行われるので、発振用ICおよびヒータ用ICから圧電振動板の振動部への伝熱性をさらに向上させることができる。
【0012】
また、本発明は、上記構成の圧電振動デバイスを備えた恒温槽型圧電発振器であって、前記圧電振動デバイスが、断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入され、コア部が、少なくとも前記発振用IC、前記積層型圧電振動子、および前記ヒータ用ICを含み、前記積層型圧電振動子の外表面に前記発振用ICおよび前記ヒータ用ICの少なくとも一方が積層された構成になっており、前記コア部は、基板を介して前記パッケージに搭載され、前記基板と前記パッケージの内底面との間には、空間が設けられていることを特徴とする。これにより、空間によって、コア部の断熱性を高めることができ、コア部の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をより小さく抑えることができ、消費電力をより低減することができる。
【0013】
上記構成において、前記基板は、当該基板の両端部で接合材によって前記パッケージの前記内底面に機械的接合され、前記コア部は、ワイヤによって前記パッケージに電気的接合されていることが好ましい。これにより、コア部がパッケージに直接機械的に接合されることによって外部へ熱が逃げることを抑制でき、かつコア部から外部への必要な電気的接続が実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱外部部材と接合された伝熱電極の電極域が、無電極域に比べて効率よく加熱される。伝熱電極の電極域と第1の封止用電極と第2の封止用電極とが、外枠部で重畳しているため、伝熱電極の電極域の熱が、第1の封止用電極および第2の封止用電極を介して外枠部へ伝達され、さらには外枠部から保持部を介して振動部へ伝達される。これにより、加熱外部部材から、外枠部および保持部を経由した振動部への伝熱性を向上させることができる。したがって、OCXOにおける伝熱性の向上を図ることが可能な積層型圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図2図1のOCXOの平面図である。
図3図1のOCXOの底面図である。
図4図1のOCXOのコア部およびコア基板の概略構成を示す断面図である。
図5図5のコア部の水晶発振器を模式的に示した概略構成図である。
図6】本発明の実施形態にかかる水晶振動子の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図7】水晶振動子の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図8】水晶振動子の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図9】水晶振動子の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図10】水晶振動子の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図11】水晶振動子の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態にかかるOCXO1は、図1図3に示すように、セラミック製等で断面形状が略H型形状のパッケージ(筐体)2の凹部2aの内部にコア部5が配置され、リッド(蓋)3によって気密封止された構造とされている。図2は、リッド3を取り外した状態のOCXO1を示しており、パッケージ2の凹部2aの内部の構造を示している。
【0018】
詳細には、図1図2に示すように、OCXO1は、上方が開口された凹部2aおよび下方が開口された凹部2eが形成された断面形状が略H型形状のパッケージ2を有している。パッケージ2の凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8を介してシーム溶接によって固定されており、凹部2aの内部が密閉状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Sn合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。また、これらに限らず、金属リングを用いたシーム封止や金属リングを用いないダイレクトシーム封止、ビーム封止等の手法による封止部材の構成を採用することも可能である(真空度を低下させない上では、シーム封止が好ましい)。凹部2aの内部空間は、高真空(例えば真空度が10Pa以下)あるいは低真空の雰囲気、または低圧の窒素やアルゴン等の熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。
【0019】
図1図3に示すように、パッケージ2のコア部5の実装部となる主面(凹部2aが形成された主面)と反対側の他主面に形成される凹部2eには、コア部5のヒータ用IC52と組み合わせて使用される調整用電子部品として、コンデンサ9等の回路部品が配置されている。凹部2eは、凹部2aとは異なり、リッド3によって封止する必要はない。このように、パッケージ2のコア部5を収容する空間外に回路部品を配置することで、コア部5の小電力での温度制御や、コア部5の温度追従性の向上を図ることができる。また、気密封止された凹部2a内部の雰囲気に対して、はんだやフラックス等による事後的なガスの発生をなくすことができる。このため、ガスの悪影響をコア部5に対して与えることがなくなり、電気的特性のさらなる安定化を実現できるうえで望ましい。
【0020】
本実施形態では、3つのコンデンサ9が、パッケージ2における一主面とは反対側の他主面(この場合、凹部2eの底面)に搭載されている。コンデンサ9は、パッケージ2の凹部2eの底面に形成された搭載パッド9aに、はんだによって接合される。コンデンサ9の配置領域を図3では一点鎖線にて示している。一対の搭載パッド9a,9aは、パッケージ2の短辺方向に沿って対向して配置されており、3つのコンデンサ9それぞれのパッケージ2の短辺方向の両端部が、搭載パッド9a,9aに接合されるようになっている。パッケージ2の下面には、OCXO1を外部に設けられる外部回路基板(図示省略)にはんだ等を介して電気的に接続するための複数(図3では8つ)の外部接続端子2gも形成されている。なお、パッケージ2の他主面に搭載されるコンデンサ9の数は特に限定されるものではなく、コンデンサ9の数は3つ以外であってもよい。また、コンデンサ9以外の回路部品をパッケージ2の他主面に搭載してもよい。また、全ての回路部品の大きさ(体積、表面積)が同一でなくてもよい。
【0021】
図1図2に示すように、パッケージ2の凹部2aの周壁部2bの内壁面には、複数の接続端子(ワイヤパッド)2hの並びに沿った段差部2cが形成されている。コア部5は、対向する一対の段差部2c,2c間における凹部2aの底面(内底面)に、板状の可撓性部材からなるコア基板(可撓性基板)4を介して配置されている。あるいは、段差部2cは、凹部2aの底面の4方を囲むように形成されていてもよい。段差部2cの段差面上に形成されたワイヤパッド2hは、ワイヤ6a,6bを介して、コア部5の各構成部材に形成されたワイヤパッドにワイヤボンディングにより接続されている。具体的には、段差部2cのワイヤパッド2hが、ワイヤ6aを介して、コア部5の発振用IC51に形成されたワイヤパッド(図2参照)に接続されている。段差部2cのワイヤパッド2hが、ワイヤ6bを介して、コア部5のヒータ用IC52に形成されたワイヤパッド(図2参照)に接続されている。また、コア部5の水晶振動子50に形成された第1、第2端子21,22(図5参照)が、ワイヤ6cを介して発振用IC51に形成されたワイヤパッド(図2参照)にワイヤボンディングにより接続されている。
【0022】
コア基板4は、非導電性接着剤(接合材)7により凹部2aの底面に接合されており、コア基板4の下側の部分には空間(ギャップ)2dが形成されている。具体的には、パッケージ2の底面には、所定の間隔を隔てて一対のスペーサ部材2fが設けられており、各スペーサ部材2fの上に非導電性接着剤7が塗布されている。非導電性接着剤7により、コア基板4が、コア基板4の両端部でパッケージ2の底面に機械的接合されるようになっている。各スペーサ部材2fおよび非導電性接着剤7は、コア基板4の短手方向(図1の紙面に直交する方向)に沿って直線状に設けられている。
【0023】
また、コア基板4をパッケージ2に接合するための接合領域(非導電性接着剤7の塗布領域)は、平面視においてコア基板4の上面におけるコア部5の配置領域と重畳しないように配置されている。コア基板4は、例えばポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料からなる。スペーサ部材2fは、例えばモリブデン、タングステン等のペースト材(メタライズ材)からなる。非導電性接着剤7としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。なお、コア基板4を水晶によって形成してもよい。
【0024】
次に、コア部5について、図4を参照して説明する。図4では、コア部5がコア基板4上に搭載された状態を図示している。コア部5は、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、発振用IC51、水晶振動子(圧電振動子)50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっている。発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。コア部5は、特に、温度特性の大きい水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ用IC52の温度調整を行うことで、OCXO1の発振周波数を安定させるように構成されている。なお、コア部5の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。
【0025】
水晶振動子50および発振用IC51によって、水晶発振器100が構成される。発振用IC51としては、例えばVCXO用ICを用いることが可能であり、この場合、水晶発振器100がVCXOとして構成される。発振用IC51によって水晶振動子50の圧電振動を制御することにより、OCXO1の発振周波数が制御されるようになっている。
【0026】
水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤53が介在されており、非導電性接着剤53によって水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面)と、発振用IC51の下面とが、非導電性接着剤53を介して接合される。
【0027】
発振用IC51は、平面視における面積が水晶振動子50よりも小さくなっており、発振用IC51の全体が、平面視で水晶振動子50の範囲内に位置している。発振用IC51の下面の全体が、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面)に接合されている。
【0028】
ヒータ用IC52は、例えば発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされている。ヒータ用IC52によってコア部5の温度制御を行うことにより、コア部5の温度が略一定の温度に維持され、OCXO1の発振周波数の安定化が図られている。なお、温度センサがヒータ用IC52とは別部材として設けられた構成であってもよい。
【0029】
水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間には、導電性接着剤54が介在されており、導電性接着剤54によって水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面)と、ヒータ用IC52の上面とが、導電性接着剤54を介して接合される。
【0030】
水晶振動子50は、平面視における面積がヒータ用IC52よりも小さくなっており、水晶振動子50の全体が、平面視でヒータ用IC52の範囲内に位置している。水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面)の全体が、ヒータ用IC52の上面に接合されている。
【0031】
ヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面の間には、非導電性接着剤55が介在されており、非導電性接着剤55によってヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面が固定されている。非導電性接着剤53,55、および導電性接着剤54としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0032】
図5に示すコア部5において、発振用IC51、水晶振動子50およびヒータ用IC52の上面にはワイヤボンディング用のワイヤパッド(図2参照)が形成されている。発振用IC51、水晶振動子50およびヒータ用IC52のワイヤボンディングは、コア部5をパッケージ2に搭載する前には行われず、コア部5(コア基板4)をパッケージ2に搭載した後に行われる。すなわち、図1図2に示すように、コア部5(コア基板4)をパッケージ2に搭載した後、水晶振動子50の上面に形成されたワイヤパッドがワイヤ6cを介して、発振用IC51に形成されたワイヤパッドに接続される。発振用IC51に形成されたワイヤパッドがワイヤ6aを介して、段差部2cの段差面上に形成されたワイヤパッド2hに接続される。ヒータ用IC52の上面に形成されたワイヤパッドがワイヤ6bを介して、段差部2cの段差面上に形成されたワイヤパッド2hに接続される。このように、コア部5をパッケージ2に搭載した後でワイヤボンディングを行うことによって、効率よくワイヤボンディングを行うことができ、量産性に優れたOCXO1を提供することができる。
【0033】
このように、本実施形態では、コア部5は、コア基板4を介してパッケージ2に支持されており、コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を有しており、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52の順に積層された構成になっている。そして、ヒータ用IC52において、発熱体に供給する電流を制御することによって、コア部5の温度調整を行って、コア部5の温度を略一定の温度に維持するようにしている。
【0034】
コア部5に用いられる水晶振動子50の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、積層型水晶振動子を好適に使用できる。積層型水晶振動子は、ガラスや水晶からなる第1、第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが、圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された圧電振動板の振動部が気密封止される3枚重ね構造のデバイスである。
【0035】
このような積層型水晶振動子としての水晶振動子50と、発振用IC(例えばVCXO用IC)51とが一体的に設けられた水晶発振器100の一例について、図5図11を参照して説明する。
【0036】
水晶発振器100は、図5に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、および発振用IC51を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶発振器100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(図8図9参照)が気密封止される。
【0037】
水晶発振器100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、スルーホールを用いて電極の導通を図っている。第1封止部材20上に搭載される発振用IC51は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。また、水晶発振器100は、上述したヒータ用IC52上に、導電性接着剤54を介して搭載される。
【0038】
水晶振動板10は、図8図9に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図8図9に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。
【0039】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部(連結部)13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。
【0040】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0041】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動側封止部としては振動側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動側封止部としては振動側第2接合パターン122が形成されている。振動側第1接合パターン121および振動側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0042】
また、水晶振動板10には、図8図9に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図8図9では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、第1主面101側では振動側第1接合パターン121が、第2主面102側では振動側第2接合パターン122がそれぞれ形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0043】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0044】
次に、第1封止部材20は、図6図7に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶発振器100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0045】
第1封止部材20の第1主面201(水晶振動板10に面しない主面)には、図6に示すように、パッケージの外表面に形成される配線用の第1、第2端子21,22およびシールド用(アース接続用)の第3端子23が形成されている。第1、第2端子21,22は、ワイヤ6cを介して、発振用IC51に形成されたワイヤパッド(図2参照)にワイヤボンディングにより接続されている。第1端子21は、水晶振動板10の第1励振電極111に電気的に接続されている。第2端子22は、水晶振動板10の第2励振電極112に電気的に接続されている。第1、第2端子21,22は、Z´軸方向の両端部に設けられており、第1端子21が、+Z´方向側に設けられ、第2端子22が、-Z´方向側に設けられている。
【0046】
第3端子23は、第1封止部材20の第1主面201の4隅(角部)および中央の領域に設けられており、略H型形状になっている。第3端子23は、第1、第2端子21,22とは所定の間隔を隔てて配置されており、第3端子23は、第1封止部材20の第1主面201の第1、第2端子21,22が形成されていない領域のうち、ほとんど全ての領域に設けられている。この第3端子23の上側に、発振用IC51が非導電性接着剤53を介して搭載されるようになっている。第3端子23は、第2封止部材30の第2主面302に形成された外部端子32に電気的に接続され、アース接続されている。なお、第3端子23は、必ずしもアース接続されていなくてもよく、言い換えれば、第3端子は、電気的な接続機能を有していなくてもよい。
【0047】
第1封止部材20には、図6図7に示すように、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5スルーホール212,213は、図6図7の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0048】
第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0049】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン24が形成されている。封止側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。封止側第1接合パターン24は、各第3スルーホール211の周囲にも形成されている。また、第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン262が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン261が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0050】
次に、第2封止部材30は、図10図11に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0051】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン31が形成されている。封止側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。封止側第2接合パターン31は、後述する第6スルーホール33の周囲にも形成されている。
【0052】
第2封止部材30の第2主面302には、外部端子32が環状に形成されており、中央部の略円形の部分を除いて略全面に形成されている。外部端子32は、後述する第6スルーホール33の周囲にも形成されている。
【0053】
第2封止部材30には、図10図11に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する第6スルーホール33が1つ形成されている。第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。なお、第1封止部材20の第3端子23をアース接続しない場合には、第2封止部材30に第6スルーホール33を設けない構成としてもよい。
【0054】
上記構成の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図5に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0055】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶発振器100における電気的導通が得られるようになっている。具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212、第1端子21、ワイヤ6cを順に経由して、発振用IC51に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213、第2端子22、ワイヤ6cを順に経由して、発振用IC51に接続される。
【0056】
水晶発振器100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着またはスパッタリングにより形成されているものとすることが好ましい。また、水晶発振器100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0057】
上述のように構成された水晶発振器100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止用電極(シールパス)41,42は、平面視で、環状に形成されている。第1の封止用電極としてのシールパス41は、上述した振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24の拡散接合によって形成され、シールパス41の外縁形状および内縁形状が略矩形に形成されている。同様に、第2の封止用電極としてのシールパス42は、上述した振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31の拡散接合によって形成され、シールパス42の外縁形状および内縁形状が略矩形に形成されている。シールパス41,42は、上述した第1、第2励振電極111,112に接続される配線とは電気的に接続されていない。一方、シールパス41,42は、第1スルーホール161内の貫通電極、第3スルーホール211内の貫通電極、および第6スルーホール33内の貫通電極を介して、第1封止部材20の第3端子23および第2封止部材30の外部端子32に電気的に接続されている。外部端子32は、導電性接着剤54を介してヒータ用IC52に接続されており、これにより、シールパス41,42および第3端子23がアース接続されるようになっている。
【0058】
本実施形態では、水晶振動子50は、第1封止部材20、水晶振動板10、および第2封止部材30が積層された積層型水晶振動子であって、第1封止部材20の外表面には、加熱外部部材(発振用IC51)と接合材により接合される上面伝熱電極としての第3端子23が形成され、第2封止部材30の外表面には、加熱外部部材(ヒータ用IC52)と接合材により接合される底面伝熱電極としての外部端子32が形成され、第3端子23および外部端子32は、無電極域R21,R31および電極域R22,R32を有しており、第3端子23および外部端子32の電極域R22,R32と、封止用電極としてのシールパス41,42とが、平面視で外枠部12と環状に重畳している。以下、この点について、図5図11を参照して説明する。
【0059】
第1封止部材20の第1主面201に形成された上面伝熱電極としての第3端子23が、加熱外部部材としての発振用IC51と接合材(非導電性接着剤53)により接合されている。第3端子23は、図6に示すように、略H型形状になっており、水晶振動板10の振動部11の一部と重畳する無電極域(電極が形成されていない領域)R21と、水晶振動板10の外枠部12の一部と重畳する電極域(電極が形成されている領域)R22とを有している。具体的には、第3端子23の中央部の領域と、第1、第2端子21,22との間の空間が、無電極域R21になっており、第3端子23のX軸方向で対向する2辺の部分が、電極域R22になっている。第3端子23の平面視での面積が、第1封止部材20の平面視での面積の50%以上に形成されている。第3端子23と、シールパス41,42とが、接続電極としての第1スルーホール161内の貫通電極、第3スルーホール211内の貫通電極、および第6スルーホール33内の貫通電極を介して、電気的に接続されており、第3端子23と、シールパス41,42とが、熱的に結合されている。
【0060】
また、第2封止部材30の第2主面302に形成された底面伝熱電極としての外部端子32が、加熱外部部材としてのヒータ用IC52と接合材(導電性接着剤54)により接合されている。外部端子32は、図11に示すように、中央部に略円形の空間を有する環状に形成されており、この空間が水晶振動板10の振動部11と重畳する無電極域(電極が形成されていない領域)R31になっている。また、外部端子32の略円形の空間以外の環状の部分が、水晶振動板10の外枠部12と重畳する電極域(電極が形成されている領域)R32になっている。外部端子32の電極域R32は、水晶振動板10の外枠部12の全部分と平面視で重畳している。外部端子32の平面視での面積が、第2封止部材30の平面視での面積の50%以上に形成されている。外部端子32と、シールパス41,42とが、接続電極としての第3スルーホール211内の貫通電極、および第6スルーホール33内の貫通電極を介して、電気的に接続されており、外部端子32と、シールパス41,42とが、熱的に結合されている。そして、外部端子32と、シールパス41,42とが、平面視で外枠部12と環状に重畳している。ここで、水晶振動子50の外表面の電極構成(上面伝熱電極としての第3端子23、底面伝熱電極としての外部端子32等)は、例えば、Ti膜、NiTi膜、Au膜を含む積層構成になっており、水晶振動子50の内部の水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30の電極構成は、例えば、Ti膜、Au膜を含む積層構成になっている。また、水晶振動板10の電極構成のTi膜は、第1、第2封止部材20,30の電極構成のTi膜よりも薄くなっている。なお、電極構成としてはこれらのもの以外の膜材料や積層を使用してもよい。
【0061】
本実施形態によれば、発振用IC51により第1封止部材20の第3端子23が加熱され、ヒータ用IC52により第2封止部材30の外部端子32が加熱される。この場合、第3端子23および外部端子32の電極域R22,R32が、無電極域R21,R31に比べて効率よく加熱される。発振用IC51、ヒータ用IC52によって加熱された第3端子23および外部端子32の電極域R22,R32と、シールパス41,42とが、平面視で外枠部12と重畳しているため、第3端子23および外部端子32の電極域R22,R32の熱が、シールパス41,42を介して外枠部12へ伝達され、さらには外枠部12から保持部13を介して振動部11へ伝達される。これにより、発振用IC51およびヒータ用IC52から、水晶振動板10の外枠部12および保持部13を経由した振動部11への伝熱性を向上させることができる。これに加えて、外部端子32の電極域R32と、シールパス41,42とが、平面視で外枠部12と環状に重畳しているので、ヒータ用IC52から、水晶振動板10の外枠部12および保持部13を経由した振動部11への伝熱性をさらに向上させることができる。したがって、OCXO1における伝熱性の向上を図ることが可能な積層型圧電振動子を提供することができる。
【0062】
本実施形態では、第1封止部材20の第1主面201および第2封止部材30の第2主面302の両方に第3端子23および外部端子32が設けられているので、発振用IC51およびヒータ用IC52から水晶振動板10の振動部11への伝熱性をさらに向上させることができる。また、外部端子32とヒータ用IC52とが導電性接着剤54により接合されているので、非導電性接着剤を用いた場合に比べて、ヒータ用IC52から水晶振動板10の振動部11への伝熱性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態では、第3端子23が、シールパス41,42のうち、外枠部12の少なくとも2辺に形成された部分と平面視で重畳している。具体的には、第3端子23が、シールパス41,42のうち、X軸方向で対向する2辺に形成された部分と平面視で重畳している。また、外部端子32が、シールパス41,42のうち、外枠部12の少なくとも2辺に形成された部分と平面視で重畳している。具体的には、外部端子32が、シールパス41,42の全周(X軸方向で対向する2辺およびZ´軸方向で対向する2辺)と平面視で重畳している。このような位置関係により、発振用IC51およびヒータ用IC52から水晶振動板10の振動部11への伝熱性を向上させることができる。
【0064】
また、第3端子23および外部端子32が、導電性接着剤54を介してヒータ用IC52に接続され、グランド電源に接続されている。これにより、第3端子23および外部端子32によるシールド機能を確保することができ、外部からのノイズの影響を低減できる。
【0065】
本実施形態では、第3端子23の重心部(中央部)と、第1封止部材20の重心部(中央部)とが略一致している。また、外部端子32の重心部(中央部)と、第2封止部材30の重心部(中央部)とが略一致している。このような位置関係により、発振用IC51およびヒータ用IC52から水晶振動板10の振動部11への伝熱を効率よく行うことができる。
【0066】
また、第3端子23の平面視での面積が、第1封止部材20の平面視での面積の50%以上であり、外部端子32の平面視での面積が、第2封止部材30の平面視での面積の50%以上であるので、発振用IC51およびヒータ用IC52から水晶振動板10の振動部11への伝熱性をさらに向上させることができる。
【0067】
ここで、第3端子23の形状を、外部端子32と同様に、中央部に略円形の空間を有する環状に形成してもよい。この場合、第3端子23の中央部の略円形の空間が、水晶振動板10の振動部11と重畳する無電極域(電極が形成されていない領域)R21となり、また、第3端子23の略円形の空間以外の環状の部分が、水晶振動板10の外枠部12と重畳する電極域(電極が形成されている領域)R22となる。第3端子23の電極域R22は、水晶振動板10の外枠部12の全部分と平面視で重畳している。この構成によれば、外部端子32の電極域R32およびシールパス41,42だけでなく、第3端子23の電極域R22も、平面視で外枠部12と環状に重畳するので、発振用IC51およびヒータ用IC52からの熱を、外枠部12を通じてより効率的に水晶振動板10の振動部11へ伝達することができる。なお、第3端子23の電極域および外部端子32の無電極域R21,R31を、矩形状やその他の形状としてもよい。また、第3端子23の電極域および外部端子32の無電極域R21,R31を、メッシュ状に形成してもよいし、あるいは、金属膜の厚さが疎と密(金属膜の厚さが小と大)の部分が混在するような形状としてもよい。
【0068】
上記構成の水晶振動子50を備えた水晶発振器(圧電振動デバイス)100において、加熱外部部材が、発振用IC51およびヒータ用IC52であり、伝熱電極(第3端子23、外部端子32)の無電極域と電極域の両方にまたがった状態で水晶振動子50の外表面に接合材により接合されている。具体的には、発振用IC51が、水晶振動子50の第1封止部材20の第3端子23の無電極域R21と電極域R22の両方にまたがった状態で非導電性接着剤53により接合されている。ヒータ用IC52が、水晶振動子50の第2封止部材30の外部端子32の無電極域R31と電極域R32の両方にまたがった状態で導電性接着剤54により接合されている。これにより、接合材による発振用IC51およびヒータ用IC52の水晶振動子50に対する接合強度が向上する。ここで、外部端子32の電極域R32が環状に形成されているため、中央部の無電極域R31(水晶素地の部分)と導電性接着剤54(樹脂接着剤)との接着強度が強く、周囲の電極域R32(金属膜の部分)と導電性接着剤54との接着強度が弱くなる。これにより、水晶振動板10の外枠部12に重畳する領域において、導電性接着剤54の応力を弱めることができ、水晶振動板10の封止部に不要な応力が加わることを抑制できる。なお、第3端子23の電極域R22を環状に形成することによっても、同様の効果が得られる。
【0069】
本実施形態では、水晶振動子50が、発振用IC51とヒータ用IC52との間に挟まれた状態で積層配置されている。これにより、発振用IC51およびヒータ用IC52によって、水晶振動子50の両側から水晶振動板10の振動部11への伝熱が行われるので、発振用IC51およびヒータ用IC52から水晶振動板10の振動部11への伝熱性をさらに向上させることができる。
【0070】
上記構成の水晶発振器100を備えたOCXO1において、水晶発振器100が、断熱用のパッケージ2の内部に密閉状態で封入され、コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を含み、水晶振動子50の外表面に発振用IC51およびヒータ用IC52の少なくとも一方が積層された構成になっており、コア部5は、コア基板4を介してパッケージ2に搭載され、コア基板4とパッケージ2の内底面との間には、空間2dが設けられている。これにより、空間2dによって、コア部5の断熱性を高めることができ、コア部5の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をより小さく抑えることができ、OCXO1の消費電力をより低減することができる。
【0071】
本実施形態では、OCXO1において、コア基板4は、当該コア基板4の両端部で接合材によってパッケージ2の内底面に機械的接合され、コア部5は、ワイヤ6a,6bによってパッケージ2に電気的接合されている。これにより、コア部5がパッケージ2に直接機械的に接合されることによって外部へ熱が逃げることを抑制でき、かつコア部5から外部への必要な電気的接続が実現できる。
【0072】
本実施形態では、水晶振動子50は、ワイヤ6cを介して発振用IC51と接続されているのみであり、水晶振動子50は、パッケージ2とは直接、ワイヤ接続されていない。この構成によれば、水晶振動子50からワイヤを通じてパッケージ2側へ熱が逃げることを抑制できる。その結果、水晶振動子50に対する断熱性が高くなり、水晶振動子50に対する温度制御性が高くなるといったメリットがある。なお、水晶振動子50に接続されるワイヤ6cの線径を、水晶振動子50に接続されていないワイヤ6a,6bの線径よりも小さくすることによって、水晶振動子50の熱が外部へ逃げることを抑制できる。また、水晶振動子50のヒータ用IC52側の第2封止部材30の厚みを、水晶振動板10および第1封止部材20の厚みよりも大きくすることによって、水晶振動子50の熱が外部へ逃げることを抑制できる。また、接合材として、高熱伝導性フィルムや、感光性ポリイミドフィルムをヒータ用IC51と水晶振動子50の間に介在させてもよく、これにより、水晶振動子50の熱が外部へ逃げることを抑制できる。
【0073】
本実施形態では、OCXO1において、コア基板4のうち非導電性接着剤7による接合領域(パッケージ2の凹部2aの内底面と機械的に接合される領域)は、平面視でコア基板4に対するコア部5の配置領域と重畳していない。これにより、コア基板4を挟んで、コア部5の配置領域と接合領域とが連続して設けられていないため、コア部5の熱が、接合領域(非導電性接着剤7)を介して外部へ逃げることを抑制できる。また、コア部5は、パッケージ2の内部で真空封止されており、これにより、コア部5の熱の逃げを抑制しやすくなっている。
【0074】
また、OCXO1において、スペーサ部材2fと非導電性接着剤7とが上下に重ねて配置されているので、コア基板4とパッケージ2の内底面との間に空間2dを確保しやすくなっている。なお、スペーサ部材2fと非導電性接着剤7とを左右に並べて配置したり、スペーサ部材2fを上下に2段重ねにしたりしてもよい。
【0075】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0076】
上記実施形態では、第1封止部材20の外表面および第2封止部材30の外表面の両方に伝熱電極(第3端子23、外部端子32)を設けたが、これに限らず、第1封止部材20の外表面および第2封止部材30の外表面の一方のみに伝熱電極を設けてもよい。なお、第1封止部材20の伝熱電極および第2封止部材30の伝熱電極の両方に、水晶振動板10の振動部11の一部と重畳する無電極域(電極が形成されていない領域)と、水晶振動板10の外枠部12の一部と重畳する電極域(電極が形成されている領域)とを設けてもよいし、あるいは、第1封止部材20の伝熱電極および第2封止部材30の伝熱電極の一方のみに、水晶振動板10の振動部11の一部と重畳する無電極域(電極が形成されていない領域)と、水晶振動板10の外枠部12の一部と重畳する電極域(電極が形成されている領域)とを設けてもよい。
【0077】
上述した第3端子23および外部端子32の形状や大きさは一例であって、さまざまに変更することが可能である。例えば、第3端子23を第1封止部材20の第1主面201の略全面に形成してもよい。また、第3端子23を対向する2辺と重心部を含む略H型形状としたが、これに限らず、第3端子23をT型形状や、Z型形状、環状、8の字状等としてもよい。また、第3端子23を環状に形成した場合には、外部端子32を第2封止部材30の第2主面302の略全面に形成してもよい。
【0078】
上記実施形態では、コア部5が、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された構成であったが、これとは逆に、コア部5が、少なくともヒータ用IC52、水晶振動子50、および発振用IC51が上側から順に積層された構成であってもよい。なお、コア部5が、少なくとも発振用IC51、ヒータ用IC52、および水晶振動子50が上側から順に積層された構成であってもよく、この構成では、比較的大きいサイズの水晶振動子50を用いることができ、水晶振動子50に必要な特性を容易に確保することができる。
【0079】
コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が順に積層された構成を有していればよく、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52の積層構造に、例えばヒータ基板等を付加する構成としてもよい。例えばヒータ基板、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が、上側から順に積層された4層構造としてもよいし、あるいはヒータ用IC52、水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ基板が、上側から順に積層された4層構造としてもよい。これらの場合、発振用IC51に発熱体であるヒータ基板を積層することによって、コア部5の温度をより均一化させることができる。
【0080】
また、コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を有していればよく、上述したような積層構造を有していなくてもよい。例えば、コア部5を、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52に加えて、ヒータ基板や、複数のチップコンデンサ(バイパスコンデンサ)等を有する構成としてもよい。この場合、コア基板4に直接的に接合される構成部品(例えばヒータ基板)と、コア基板4との接合領域が、コア部5が設けられた領域とされる。
【0081】
上記実施の形態では、コア基板4を経由せずにコア部5とパッケージ2との電気的な接続を行ったが、コア基板4を経由してコア部5とパッケージ2とを電気的に接続してもよい。
【0082】
上記実施形態では、コア部5が、ヒータ用IC52の上に水晶振動子50が搭載され、その水晶振動子50上に発振用IC51が搭載された構成であった。しかし、これに限らず、コア部5を、ヒータ用IC52の上に、水晶振動子50および発振用IC51が横置き状態で搭載された構成としてもよい。
【0083】
上記実施形態では、水晶振動板10として、ATカット水晶振動板を用いたが、それ以外の水晶振動板(例えばSCカット水晶振動板、水晶Z板等)を用いてもよい。また、第1封止部材20および第2封止部材30を水晶板によって形成したが、これに限定されるものではなく、第1封止部材20および第2封止部材30を、例えば、ガラスまたは樹脂によって形成してもよい。
【0084】
上記実施形態では、積層型圧電振動子としての水晶振動子50が、OCXO1に適用された場合について説明した。しかし、これに限らず、積層型圧電振動子を、例えば、サーミスタ等の温度センサが搭載された温度センサ付きの圧電振動子(TSX等)に適用してもよいし、あるいは、圧電発振器に温度補償回路が付加された温度補償型圧電発振器(TCXO等)に適用してもよい。これらの温度センサ付きの圧電振動子や、温度補償型圧電発振器においても、積層型圧電振動子と、温度センサやICとの伝熱性が高まることにより、互いの温度差が生じにくくなり、電気的特性の向上に寄与することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 OCXO(恒温槽型圧電発振器)
2 パッケージ
4 コア基板
5 コア部
10 水晶振動板
11 振動部
12 外枠部
13 保持部
20 第1封止部材
23 第3端子(上面伝熱電極)
30 第2封止部材
32 外部端子(底面伝熱電極)
41 シールパス(第1の封止用電極)
42 シールパス(第2の封止用電極)
50 水晶振動子(積層型圧電振動子)
51 発振用IC(加熱外部部材)
52 ヒータ用IC(加熱外部部材)
100 水晶発振器(圧電振動デバイス)
111 第1励振電極
112 第2励振電極
R21、R31 無電極域
R22、R32 電極域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11