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  • 特開-燃料電池用ケース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011607
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】燃料電池用ケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20250117BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20250117BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/2475
H05K9/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113817
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅裕
【テーマコード(参考)】
5E321
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5E321AA14
5E321BB41
5E321CC22
5E321GG01
5E321GG05
5E321GH10
5H126FF10
5H127AB04
5H127AC01
5H127AC02
5H127AC03
5H127BA02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】換気性能と防爆性能を確保しつつ、電磁波の放射や侵入を抑制する燃料電池用ケースを提供する。
【解決手段】燃料電池を内部に収容する燃料電池用ケース10であって、導電性材料で形成され、換気用開口部1を有する筐体2と、換気用開口部1を覆うように筐体2に固定されるガス透過膜3及び金属メッシュ4と、を備え、金属メッシュ4と筐体2の間の導通が確保されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を内部に収容する燃料電池用ケースであって、
導電性材料で形成され、換気用開口部を有する筐体と、
前記換気用開口部を覆うように前記筐体に固定されるガス透過膜及び金属メッシュと、を備え、
前記金属メッシュと前記筐体の間の導通が確保されていることを特徴とする燃料電池用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を内部に収容する燃料電池用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、換気用の貫通孔を有する筐体と、貫通孔を覆う換気膜と、換気膜の外側に配置されるルーバーを備える燃料電池用ケースが開示されている。
【0003】
特許文献2には、換気用開口部を有する筐体と、換気用開口部を覆うガス透過膜及び金属製板部材を備える燃料電池用ケースが開示されている。この金属製板部材には、複数の貫通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-129166号公報
【特許文献2】特開2011-129333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池で水素と酸素を化学反応させて発電した電力で電動機を動かして走行する燃料電池自動車は、燃料電池への雨水の侵入を防止するため、燃料電池を収容する燃料電池用ケースを備えている。このような燃料電池用ケースには、燃料電池スタックからの水素ガスの透過等により燃料電池用ケース内部の水素濃度が上昇することを防ぐため、換気用開口部が設けられており、換気用開口部を覆うようにガス透過膜が固定されている。このような従来技術の燃料電池用ケースでは、燃料電池用ケースの換気用開口部を覆うようにガス透過膜を固定することによって、雨水の侵入を防ぎつつ、換気性能と防爆性能を確保している。
【0006】
しかし、ガス透過膜は樹脂製であり、電磁波はガス透過膜を全透過するため、電磁波は換気用開口部から抵抗なく出入りすることができる。また、特許文献2に開示された燃料電池用ケースは換気用開口部を覆う金属製板部材を備えているが、金属製板部材に形成された貫通孔が大きいため、周波数が高い電磁波は貫通孔を透過してしまう。近年、省スペース化や低コスト化のニーズから、燃料電池用ケースの内部には、燃料電池スタックだけでなく、DC(Direct Current)-DCコンバータやインバータ等の電子機器も設置され、高出力化や小型化に伴う高スイッチング化により、周波数が高い電磁波の放出が強まっている。そのため、燃料電池用ケースは、EMC(Electro-Magnetic Compatibility)性能を確保し、電磁波の放射や侵入を抑制する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、換気性能と防爆性能を確保しつつ、電磁波の放射や侵入を抑制できる燃料電池用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池用ケースは、燃料電池を内部に収容する燃料電池用ケースであって、導電性材料で形成され、換気用開口部を有する筐体と、前記換気用開口部を覆うように前記筐体に固定されるガス透過膜及び金属メッシュと、を備え、前記金属メッシュと前記筐体の間の導通が確保されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、換気性能と防爆性能を確保しつつ、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の燃料電池用ケースの貫通孔の付近の断面図である。
図2】第2の実施形態の燃料電池用ケースの貫通孔の付近の断面図である。
図3】第3の実施形態の燃料電池用ケースの貫通孔の付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、図1を参照しながら、第1の実施形態の燃料電池用ケース10について説明する。図1は、燃料電池用ケース10の換気用開口部1の付近の断面図である。燃料電池用ケース10は、燃料電池自動車に搭載され、不図示の燃料電池スタックやコンバータ等の電子機器を内部に収容している。図1に示すように、燃料電池用ケース10は、換気用開口部1を有する筐体2と、換気用開口部1を覆うように筐体2に固定されるガス透過膜3及び金属メッシュ4と、保持フレーム5を備える。筐体2は、アルミニウム等の導電性材料で形成されている。
【0012】
ガス透過膜3は、高分子材料の樹脂で形成されている。そして、ガス透過膜3は金属メッシュ4の表側と裏側に1枚ずつ配置され、金属メッシュ4を両側から挟み込むように圧着成型されている。このように圧着成型されることにより、2枚のガス透過膜3と1枚の金属メッシュ4が一体となって、ガス透過膜3が金属メッシュ4を挟み込むサンドイッチ構造の圧着成型板6を形成する。
【0013】
筐体2の外側には、圧着成型板6に接触する接触面21が設けられている。そして、筐体2には、接触面21から突出するピン22が設けられている。ピン22は、導電性材料で形成されており、先端が尖った形状を有する。圧着成型板6を筐体2へ固定する際に、圧着成型板6を筐体2の接触面21に接触させると、ピン22が圧着成型板6に突き刺さり、片側のガス透過膜3を貫通して金属メッシュ4に到達する。このようにピン22がガス透過膜3を貫通して金属メッシュ4に到達することにより、筐体2と金属メッシュ4の間の導通が確保される。そして、このように圧着成型板6を筐体2の接触面21に接触させた状態で、保持フレーム5が筐体2に固定される。保持フレーム5が筐体2に固定されると、圧着成型板6は接触面21と保持フレーム5の間に挟まれて、換気用開口部1を覆う状態で筐体2に固定される。保持フレーム5には凹部51が形成されているため、ピン22が圧着成型板6を貫通しても、ピン22が保持フレーム5に干渉することを避けることができる。
【0014】
このように筐体2に固定された圧着成型板6は換気用開口部1を覆うが、気体はガス透過膜3及び金属メッシュ4を透過することができる。そのため、燃料電池用ケース10は、内部で水素ガスの漏れが発生しても、水素ガスを換気用開口部1から排出して、水素ガスの濃度の上昇を防ぐことができる。このように水素ガスを換気用開口部1から排出できるため、燃料電池用ケース10は換気性能と防爆性能を確保することができる。
【0015】
換気用開口部1から出入りしようとする電磁波は、金属メッシュ4に当たり、微弱なノイズ電流に変換されて吸収される。金属メッシュ4に吸収されたノイズ電流は、ピン22を経由して筐体2へ流れ、筐体2からアース線を経由してアースへ流れ出る。そのため、燃料電池用ケース10は、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。そして、金属メッシュ4の目開きは、3ミリメートル以下となっている。燃料電池用ケース10内に収容される電子機器が発する電磁波の主な周波数は100MHz以下であるため、3ミリメートルは電磁波の波長の1000分の1以下に該当する。そのため、金属メッシュ4は、目開きを3ミリメートル以下とすることによって、燃料電池用ケース10内の電子機器が発する電磁波の透過を防ぐことができる。
【0016】
このように燃料電池用ケース10は、換気性能と防爆性能を確保しつつ、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。また、燃料電池用ケース10では、金属メッシュ4が表側も裏側も樹脂製のガス透過膜3に覆われており、水分や汚れによる金属メッシュ4の劣化が少ない。そのため、燃料電池用ケース10は、金属メッシュ4の耐久性を高めることができる。
【0017】
<第2の実施形態>
次に、図2を参照しながら、第2の実施形態の燃料電池用ケース20について説明する。図2は、燃料電池用ケース20の換気用開口部1の付近の断面図である。燃料電池用ケース20は、燃料電池自動車に搭載され、不図示の燃料電池スタックやコンバータ等の電子機器を内部に収容している。図2に示すように、燃料電池用ケース20は、換気用開口部1を有する筐体2aと、換気用開口部1を覆うように筐体2aに固定されるガス透過膜3及び金属メッシュ4と、保持フレーム5aと、導電性シート7を備える。筐体2aは、アルミニウム等の導電性材料で形成されている。
【0018】
導電性シート7は、筐体2aの外側に設けられた接触面21に接触するように配置される。金属メッシュ4は、導電性シート7に接触させて換気用開口部1を覆うように配置される。ガス透過膜3は、金属メッシュ4に重ねて換気用開口部1を覆うように配置される。そして、筐体2aの接触面21の上にガス透過膜3、金属メッシュ4及び導電性シート7を重ね合わせた状態で保持フレーム5aが筐体2aへ固定されることにより、ガス透過膜3、金属メッシュ4及び導電性シート7が接触面21と保持フレーム5aの間に挟まれて筐体2aへ固定される。
【0019】
このようにガス透過膜3及び金属メッシュ4が換気用開口部1を覆うように筐体2aへ固定されても、気体はガス透過膜3及び金属メッシュ4を透過することができる。そのため、燃料電池用ケース20は、内部で水素ガスの漏れが発生しても、水素ガスを換気用開口部1から排出して、水素ガスの濃度の上昇を防ぐことができる。このように水素ガスを換気用開口部1から排出できるため、燃料電池用ケース20は換気性能と防爆性能を確保することができる。
【0020】
金属メッシュ4は導電性シート7を介して筐体2aの接触面21に接触するため、筐体2aと金属メッシュ4の間の導通が確保される。換気用開口部1から出入りしようとする電磁波は、金属メッシュ4に当たり、微弱なノイズ電流に変換されて吸収される。金属メッシュ4に吸収されたノイズ電流は、導電性シート7を経由して筐体2aへ流れ、筐体2aからアース線を経由してアースへ流れ出る。そのため、燃料電池用ケース20は、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。そして、金属メッシュ4の目開きは、3ミリメートル以下となっている。燃料電池用ケース20内に収容される電子機器が発する電磁波の主な周波数は100MHz以下であるため、3ミリメートルは電磁波の波長の1000分の1以下に該当する。そのため、金属メッシュ4は、目開きを3ミリメートル以下とすることによって、燃料電池用ケース20内の電子機器が発する電磁波の透過を防ぐことができる。
【0021】
このように燃料電池用ケース20は、換気性能と防爆性能を確保しつつ、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。また、燃料電池用ケース20は、第1の実施形態の燃料電池用ケース10とは異なり、圧着成型板6を形成せず、ピン22も設けられていないため、第1の実施形態の燃料電池用ケース10と比較してコストを下げることができる。なお、燃料電池用ケース20は、導電性シート7を用いる代わりに、導電性接着剤で金属メッシュ4を筐体2aの接触面21に接着させてもよい。
【0022】
<第3の実施形態>
次に、図3を参照しながら、第3の実施形態の燃料電池用ケース30について説明する。図3は、燃料電池用ケース30の換気用開口部1の付近の断面図である。燃料電池用ケース30は、燃料電池自動車に搭載され、不図示の燃料電池スタックやコンバータ等の電子機器を内部に収容している。図3に示すように、燃料電池用ケース30は、換気用開口部1を有する筐体2bと、換気用開口部1を覆うように筐体2bに固定されるガス透過膜3及び金属メッシュ4と、保持フレーム5bと、アースボルト8を備える。筐体2bは、アルミニウム等の導電性材料で形成されている。
【0023】
ガス透過膜3は、筐体2bの外側に設けられた接触面21に接触した状態で換気用開口部1を覆うように配置される。保持フレーム5bは、ガス透過膜3を接触面21と保持フレーム5bの間に挟み込むように配置される。金属メッシュ4は、保持フレーム5bをガス透過膜3と金属メッシュ4の間に挟み込んで換気用開口部1を覆うように配置される。そして、筐体2bの接触面21の上にガス透過膜3、保持フレーム5b及び金属メッシュ4を重ね合わせた状態でアースボルト8が筐体2bへ締結されることにより、ガス透過膜3、保持フレーム5b及び金属メッシュ4が筐体2bへ固定される。
【0024】
このようにガス透過膜3及び金属メッシュ4が換気用開口部1を覆うように筐体2bへ固定されても、気体はガス透過膜3及び金属メッシュ4を透過することができる。そのため、燃料電池用ケース30は、内部で水素ガスの漏れが発生しても、水素ガスを換気用開口部1から排出して、水素ガスの濃度の上昇を防ぐことができる。このように水素ガスを換気用開口部1から排出できるため、燃料電池用ケース30は換気性能と防爆性能を確保することができる。
【0025】
金属メッシュ4はアースボルト8を介して筐体2bに接触するため、筐体2bと金属メッシュ4の間の導通が確保される。換気用開口部1から出入りしようとする電磁波は、金属メッシュ4に当たり、微弱なノイズ電流に変換されて吸収される。金属メッシュ4に吸収されたノイズ電流は、アースボルト8を経由して筐体2bへ流れ、筐体2bからアース線を経由してアースへ流れ出る。そのため、燃料電池用ケース30は、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。そして、金属メッシュ4の目開きは、3ミリメートル以下となっている。燃料電池用ケース30内に収容される電子機器が発する電磁波の主な周波数は100MHz以下であるため、3ミリメートルは電磁波の波長の1000分の1以下に該当する。そのため、金属メッシュ4は、目開きを3ミリメートル以下とすることによって、燃料電池用ケース30内の電子機器が発する電磁波の透過を防ぐことができる。
【0026】
このように燃料電池用ケース30は、換気性能と防爆性能を確保しつつ、電磁波の放射や侵入を抑制することができる。また、燃料電池用ケース30は、アースボルト8を外すことにより、金属メッシュ4とガス透過膜3を交換することができる。そのため、燃料電池用ケース30は、金属メッシュ4やガス透過膜3が劣化した際に、簡易な方法で金属メッシュ4やガス透過膜3を交換することができる。更に、燃料電池用ケース30は、第1の実施形態の燃料電池用ケース10とは異なり、圧着成型板6を形成せず、ピン22も設けられていないため、第1の実施形態の燃料電池用ケース10と比較してコストを下げることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 換気用開口部、2,2a,2b 筐体、3 ガス透過膜、4 金属メッシュ、5,5a,5b 保持フレーム、6 圧着成型板、7 導電性シート、8 アースボルト、10,20,30 燃料電池用ケース、21 接触面、22 ピン、51 凹部。
図1
図2
図3