(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011611
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】リサイクルシステム、リサイクル方法、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20250117BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20250117BHJP
B29C 45/18 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
C08J11/10
B29C45/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113821
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 美子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
(72)【発明者】
【氏名】野村 真由香
(72)【発明者】
【氏名】校條 貴行
(72)【発明者】
【氏名】清家 幸治
【テーマコード(参考)】
4F206
4F401
【Fターム(参考)】
4F206AA50
4F206AL09
4F206JA07
4F206JE29
4F206JF01
4F206JF11
4F206JF51
4F206JL02
4F401AA22
4F401AC11
4F401BA06
4F401BA13
4F401CA22
4F401CA43
4F401CA67
4F401CA75
4F401CB14
4F401CB32
4F401DB00
4F401DC04
4F401DC05
4F401EA60
4F401FA20X
(57)【要約】
【課題】リサイクル品の品質を安定化できるリサイクルシステム等を提供する。
【解決手段】リサイクルシステムは、リサイクル対象の重合体を含むPETフレーク等の固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定する品質判定部710と、固体材料を、品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別する材料選別部720と、高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すメカニカルリサイクル装置900と、低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すケミカルリサイクル装置100と、を備える。ケミカルリサイクル装置100は、低品質材料を解重合反応によって解重合体に分解する解重合反応槽300と、解重合体から異物を除去する異物除去装置340~360と、解重合体を重合反応によって重合体に合成する重合反応槽400と、重合体の重合度を高める重合促進装置500と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクル対象の重合体を含む固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定する品質判定部と、
前記固体材料を、前記品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、前記品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別する材料選別部と、
前記高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すメカニカルリサイクル装置と、
前記低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すケミカルリサイクル装置と、
を備えるリサイクルシステム。
【請求項2】
前記ケミカルリサイクル装置は、前記低品質材料を解重合反応によって解重合体に分解する解重合反応槽と、当該解重合反応槽の後段に設けられて前記解重合体から異物を除去する異物除去装置と、当該異物除去装置の後段に設けられて前記解重合体を重合反応によって前記重合体に合成する重合反応槽と、当該重合反応槽の後段に設けられて前記重合体の重合度を高める重合促進装置と、を備える、請求項1に記載のリサイクルシステム。
【請求項3】
前記メカニカルリサイクル装置は、前記ケミカルリサイクル装置と前記重合促進装置を共用して前記高品質材料の重合度を高める、請求項2に記載のリサイクルシステム。
【請求項4】
前記メカニカルリサイクル装置および前記ケミカルリサイクル装置の後段に設けられ、前記メカニカルリサイクル処理が施された前記高品質材料および前記ケミカルリサイクル処理が施された前記低品質材料を混合状態で成形機に供給する重合体供給部を備える、請求項1から3のいずれかに記載のリサイクルシステム。
【請求項5】
前記材料選別部と前記メカニカルリサイクル装置の間には、前記高品質材料を解重合反応によって解重合体に部分的に分解する高品質材料部分解重合部が設けられ、
前記高品質材料部分解重合部で得られる固体分は、前記メカニカルリサイクル装置に供給され、
前記高品質材料部分解重合部で得られる液体分は、前記ケミカルリサイクル装置に供給される、
請求項1から3のいずれかに記載のリサイクルシステム。
【請求項6】
前記材料選別部と前記ケミカルリサイクル装置の間には、前記低品質材料を解重合反応によって解重合体に部分的に分解する低品質材料部分解重合部が設けられ、
前記低品質材料部分解重合部で得られる固体分は、前記ケミカルリサイクル装置に供給される、
請求項1から3のいずれかに記載のリサイクルシステム。
【請求項7】
前記重合体は、ポリエチレンテレフタラートである、請求項1から3のいずれかに記載のリサイクルシステム。
【請求項8】
リサイクル対象の固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定することと、
前記固体材料を、前記品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、前記品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別することと、
前記高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すことと、
前記低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すことと、
をコンピュータを通じて実行するリサイクル方法。
【請求項9】
リサイクル対象の固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定することと、
前記固体材料を、前記品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、前記品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別することと、
前記高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すことと、
前記低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すことと、
をコンピュータを通じて実行させるリサイクルプログラムを記憶している記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はリサイクルシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ペット(PET:ポリエチレンテレフタラート)ボトルのリサイクルのために、当該PETボトルの粉砕等によって新たなPETボトルの原材料となるPETフレークを製造する方法が開示されている。具体的には、粉砕したPETボトルを加熱溶融した後に、固相重合等によってPETフレークを得るメカニカルリサイクルや、粉砕したPETボトルを解重合反応によってビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)等の中間体または解重合体に分解した後に、再重合反応によってPETフレークを得るケミカルリサイクルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-153176号公報
【特許文献2】特開2022-27158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなPETフレークやPETペレット(以下では簡略化してフレークやペレットとも表され、PETを原材料としないフレークやペレットも包括的に表す)の品質は、その原材料であるPETボトル等の品質に依存する。このように品質がばらつきうるフレークやペレットに対して、同じリサイクル処理(メカニカルリサイクル処理またはケミカルリサイクル処理)を施しても、品質が不安定なPETボトル等ができてしまう。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、リサイクル品の品質を安定化できるリサイクルシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のリサイクルシステムは、リサイクル対象の重合体を含む固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定する品質判定部と、固体材料を、品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別する材料選別部と、高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すメカニカルリサイクル装置と、低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すケミカルリサイクル装置と、を備える。
【0007】
本態様では、固体材料が品質判定基準に基づいて高品質材料と低品質材料に選別される。高品質材料は、品質改善効果は低いが装置が簡素なメカニカルリサイクル処理によって効率的にリサイクルされ、低品質材料は、品質改善効果が高いケミカルリサイクル処理によって品質が高められながらリサイクルされる。このように、本態様によれば、固体材料の品質に応じた適切なリサイクル処理(メカニカルリサイクル処理またはケミカルリサイクル処理)を適用することで、リサイクル品の品質を安定化できる。
【0008】
本開示の別の態様は、リサイクル方法である。この方法は、リサイクル対象の固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定することと、固体材料を、品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別することと、高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すことと、低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すことと、をコンピュータを通じて実行する。
【0009】
本開示の更に別の態様は、記憶媒体である。この記憶媒体は、リサイクル対象の固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定することと、固体材料を、品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料と、に選別することと、高品質材料にメカニカルリサイクル処理を施すことと、低品質材料にケミカルリサイクル処理を施すことと、をコンピュータを通じて実行させるリサイクルプログラムを記憶している。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、リサイクル品の品質を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ケミカルリサイクル成形システムの構成を模式的に示す。
【
図2】PETの重合反応と解重合反応を模式的に示す。
【
図4】変形例に係るケミカルリサイクル成形システムの構成を模式的に示す。
【
図5】第2実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図6】略一体的に構成される品質判定部および材料選別部を模式的に示す。
【
図7】第3実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図8】略一体的に構成される部分解重合部および固液分離部を模式的に示す。
【
図9】
図8に示される処理装置の変形例を模式的に示す。
【
図10】
図8に示される処理装置の変形例を模式的に示す。
【
図11】
図8に示される処理装置の変形例を模式的に示す。
【
図12】
図7の変形例に係るリサイクルシステムの構成を模式的に示す。
【
図14】機械的混合部の第1実施例を模式的に示す。
【
図15】機械的混合部の第2実施例を模式的に示す。
【
図16】機械的混合部の第3実施例を模式的に示す。
【
図17】機械的混合部の第4実施例を模式的に示す。
【
図18】第4実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図19】第5実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図20】第6実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図21】第7実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図22】第8実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【
図23】第9実施形態に係るリサイクルシステムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0014】
図1は、本開示に係るリサイクルシステムの一実施形態としてのケミカルリサイクル成形システムの構成を模式的に示す。後述するように、本開示に係るリサイクルシステムは、メカニカルリサイクル成形システムとして構成されてもよいし、ケミカルリサイクル装置とメカニカルリサイクル装置の両方を備えるハイブリッドリサイクル成形システムとして構成されてもよい。また、
図1に例示されるリサイクル成形システム(ケミカルリサイクル成形システム)は、リサイクル装置(ケミカルリサイクル装置100)および成形機(射出成形機1)を備えるが、本開示に係るリサイクルシステムは成形機を備えなくてもよい。
【0015】
図1に示されるケミカルリサイクル成形システムは、ケミカルリサイクル装置100と射出成形機1を備える。ケミカルリサイクル装置100は、PETボトル等の第1成形品および/または各種の第1成形品に由来するPETフレークやPETペレット等の固体材料に対して、以下で詳述するケミカルリサイクル処理を施す。
【0016】
ケミカルリサイクル装置100は、重合体調整装置200と、解重合反応槽300と、重合反応槽400と、重合促進装置500と、重合体供給部600を備える。射出成形機1(
図1では模式的に2台が示されている)、重合体調整装置200、解重合反応槽300、重合反応槽400、重合促進装置500、重合体供給部600のそれぞれの設置数は任意である。特に、典型的には他の処理部より処理速度または反応速度が遅い射出成形機1や重合反応槽400の数を他の処理部より多くすることで、これらの処理部が深刻なボトルネックとならないように処理性能を高められる。
【0017】
重合体調整装置200は、PETボトル等の第1成形品および/またはPETフレーク等の固体材料を構成するPET等の重合体を、後段の解重合反応槽300のために調整する。具体的には、重合体調整装置200は、PETボトル等の第1成形品および/またはPETフレーク等の固体材料に対して粉砕、加熱溶融、混合等の処理を施し、解重合反応槽300における解重合反応に好適な状態(相、形状、サイズ等)にPET等の重合体を調整する。なお、第1成形品は、シート、フィルム、繊維等の、ボトル以外の任意の成形品でよい。また、第1成形品および/または固体材料を構成する重合体は、ポリエステル(PETも含まれる)、ポリアミド、ポリウレタン等の、PET以外の任意の重合体またはポリマーでよい。
【0018】
重合体調整装置200は、PETボトル等の第1成形品に対して粉砕等の処理を施し、PETフレーク等の固体材料を生成するものでもよい。また、解重合反応槽300が受け入れ可能な場合は、PETフレーク等の既製の固体材料が、重合体調整装置200を介さずに、そのまま解重合反応槽300に投入されてもよい。更に、後述するように、重合体調整装置200および/または解重合反応槽300の前段には、PETフレーク等の固体材料の品質を判定する品質判定部、固体材料を高品質材料と低品質材料に選別する材料選別部、PETフレーク等の固体材料を部分的に分解する部分解重合部、部分解重合部で得られる固体分と液体分を分離する固液分離部等が設けられてもよい。
【0019】
解重合反応槽300は、PETフレーク等の固体材料に含まれるリサイクル対象のPET等の重合体を、解重合反応によって解重合体に分解する。解重合反応槽300に供給される重合体がPETの場合、解重合反応槽300における解重合反応を通じて、中間体であるBHETが解重合体として得られる。なお、解重合反応槽300で得られる解重合体は、重合体の単量体またはモノマーを含んでもよい。重合体がPETである場合の単量体は、例えば、エチレングリコール、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、エチレンテレフタラートである。
【0020】
図2に模式的に示されるように、重合体としてのPETの解重合反応(300)では、解重合材供給部310(
図1)から解重合反応槽300に供給される解重合材としてのエチレングリコール(EG)によってPETが分解され、解重合体としてのBHETが得られる。なお、解重合材供給部310に代えてまたは加えて、EGが重合体調整装置200において供給されてもよい。このような解重合反応を促進するため、解重合反応槽300に併設される加熱器320(
図1)または保温器によって、解重合反応槽300内が解重合反応に好適な温度に維持される。
図2のPETのBHETへの解重合反応に好適な温度は220℃と250℃の間であり、230℃と245℃の間とするのが好ましく、235℃と240℃の間とするのが更に好ましい。また、
図2のPETのBHETへの解重合反応に好適な圧力は0.3MPaと0.8MPaの間であり、0.4MPaと0.6MPaの間とするのが好ましく、0.45MPaと0.55MPaの間とするのが更に好ましい。解重合反応槽300内の圧力は、解重合反応槽300に併設される不図示のポンプ等によって調整される。
【0021】
ポリマーであるPETに比べて分子量の小さいBHETが生成される解重合反応槽300内の流体の粘度は、分子量の大きいPETが生成される後述の重合反応槽400内の流体の粘度より低いため、解重合反応槽300内の流体を撹拌して解重合反応を促進するための撹拌翼330としては低粘度用のものが使用される。低粘度用の撹拌翼330としては、プロペラ翼、ディスクタービン翼、パドル翼が例示される。
【0022】
解重合反応槽300の後段には、解重合体としてのBHETを主成分とする流体から異物を除去する異物除去装置340、350、360が設けられる。異種樹脂除去装置340は、PET等の目的樹脂とは異なる樹脂および/またはその解重合体を、浮遊分離や沈降除去の原理によって除去する。着色物除去装置350は、活性炭等によって着色物を除去する。金属イオン除去装置360は、金属イオンをイオン交換等の原理によって除去する。異物除去装置340、350、360の後段には、異物が除去された後のBHET等を主成分とする流体を、重合反応槽400に供給する前に一時的に貯留するバッファタンク370が設けられる。
【0023】
バッファタンク370には、後段の重合反応槽400に供給される前に解重合体(BHET等を主成分とする流体)を加熱または保温する第1予熱器371が設けられてもよい。第1予熱器371は、解重合反応槽300に併設される加熱器320と同様の温度(220℃と250℃の間)に解重合体を維持してもよいし、後述する重合反応槽400に併設される加熱器410と同様の重合反応に好適な温度(250℃と300℃の間)に解重合体を維持してもよい。このように、必要に応じて予熱機構(第1予熱器371)を備えるバッファタンク370を、重合反応槽400の前段に設けることで、典型的には解重合反応槽300や後述の重合促進装置500等の他の処理部より処理速度または反応速度が遅い重合反応槽400への投入待ちの解重合体を適温に保ちながら貯蔵できる。この結果、ケミカルリサイクル装置100の全体としてのキャパシティを高められ、解重合反応槽300、重合反応槽400、重合促進装置500、重合体供給部600等の各処理部に適切な量の反応物を適時に供給しながら(いわゆる「樹脂切れ」を起こすことなく)安定的かつ連続的にケミカルリサイクル装置100を稼働できる。なお、第1予熱器371のような予熱機構は、バッファタンク370に限らず、解重合反応槽300と重合反応槽400の間の任意の箇所(例えば、異物除去装置340、350、360)に任意の態様で設けられてもよい。
【0024】
重合反応槽400は、解重合反応槽300において生成されて異物除去装置340、350、360によって異物が除去されたBHET等の解重合体を、重合反応によって重合体に合成する。解重合反応槽300において生成される解重合体がBHETの場合、重合反応槽400における重合反応を通じて重合体であるPETが再び得られる。
【0025】
図2に模式的に示されるように、解重合体としてのBHETの重合反応(400)では、重合体である主生成物としてのPETと共に副生成物としてのEGが生成される。このEGは、解重合材供給部310に環流されて、解重合反応槽300におけるPETの解重合反応に利用されてもよい。重合反応槽400で生成されるEGを無駄にすることなく、その場(解重合反応槽300)で再利用できるため、ケミカルリサイクル装置100の稼働効率を高められる。特に、解重合反応槽300におけるPETの解重合反応のためのEGの購入量を著しく低減できるため、ケミカルリサイクル装置100の稼働コストの削減に繋がる。
【0026】
以上のような重合反応を促進するため、重合反応槽400に併設される第2加熱器としての加熱器410(
図1)または保温器によって、重合反応槽400内が重合反応に好適な温度に維持される。
図2のBHETのPETへの重合反応に好適な温度は250℃と300℃の間であり、260℃と290℃の間とするのが好ましく、270℃と280℃の間とするのが更に好ましい。ここで、重合反応槽400に併設される加熱器410による重合加熱温度は、解重合反応槽300に併設される加熱器320による解重合加熱温度より高い。重合反応槽400では分子量が大きく融点の高いPETが生成されるが、分子量が小さく融点の低いBHETが生成される解重合反応槽300より高温に維持されることで、重合反応槽400の主生成物であるPETが溶融状態に維持される。なお、
図2のBHETのPETへの重合反応は、真空状態で行われるのが好ましい。このため、重合反応槽400には不図示の真空ポンプ等が併設される。
【0027】
分子量が大きいPETが生成される重合反応槽400内の流体の粘度は、ポリマーであるPETに比べて分子量が小さいBHETが生成される解重合反応槽300内の流体の粘度より高いため、重合反応槽400内の流体を撹拌して重合反応を促進するための撹拌翼420としては高粘度用のものが使用される。高粘度用の撹拌翼420としては、アンカー翼、ヘリカルリボン翼が例示される。
【0028】
PET等の重合体の重合度と相関のある数値として、IV(Intrinsic viscosity)値または固有粘度が知られている。IV値(dL/g)は重合体の用途の指標としても使われており、PETでは約0.72以上のIV値があればボトルに使用でき、約0.65以上のIV値があればシートやフィルム等に使用でき、約0.58以上のIV値があれば繊維に使用できる。本実施形態では、ボトルやシートに使用可能なIV値のPETを最終的に得ることを目的とする。後述するように、重合反応槽400の後段の重合促進装置500および/または重合体供給部600においてもIV値が高められるため、重合反応槽400で合成されるPETのIV値は比較的低くてもよい。具体的には、重合反応槽400で合成されるPETのIV値は0.2と0.7の間であり、0.3と0.7の間とするのが好ましく、0.3と0.55の間とするのが更に好ましい。
【0029】
重合反応槽400の後段には、重合反応槽400で合成された重合体を、後段の重合促進装置500および/または重合体供給部600に供給する前に一時的に貯留するバッファタンク430が設けられてもよい。バッファタンク430には、後段の重合促進装置500および/または重合体供給部600に供給される前に重合体を加熱または保温する第2予熱器431が設けられてもよい。第2予熱器431は、重合反応槽400に併設される加熱器410と同様の温度(250℃と300℃の間)に重合体を維持してもよいし、後述する重合促進装置500に併設される加熱器520と同様の重合反応に好適な温度(250℃と290℃の間)に重合体を維持してもよいし、後述する重合体供給部600に併設される加熱器620と同様の温度(250℃と290℃の間)に重合体を維持してもよい。
【0030】
このように、必要に応じて予熱機構(第2予熱器431)を備えるバッファタンク430を、重合促進装置500および/または重合体供給部600の前段に設けることで、重合促進装置500および/または重合体供給部600への投入待ちの重合体を適温に保ちながら貯蔵できる。この結果、ケミカルリサイクル装置100の全体としてのキャパシティを高められ、解重合反応槽300、重合反応槽400、重合促進装置500、重合体供給部600等の各処理部に適切な量の反応物を適時に供給しながら(いわゆる「樹脂切れ」を起こすことなく)安定的かつ連続的にケミカルリサイクル装置100を稼働できる。なお、第2予熱器431のような予熱機構は、バッファタンク430に限らず、重合反応槽400と重合促進装置500の間の任意の箇所および/または重合促進装置500と重合体供給部600の間の任意の箇所に任意の態様で設けられてもよい。
【0031】
重合反応槽400の後段(かつ後述する重合体供給部600の前段)には、重合反応槽400における重合反応によって生成されたPET(主生成物)およびEG(副生成物)が通されて、副生成物としてのEGを除去する副生成物除去装置または重合促進装置500が設けられてもよい。図示の例の重合促進装置500は、上方から下方に延在する多数の線状部材510を備える。多数の線状部材510によって増加した表面積のために、各線状部材510の表面に付着したEGの揮発等が促進され、高粘度のPETからEGが効果的に分離除去される。
【0032】
このEGは、解重合材供給部310に環流されて、解重合反応槽300におけるPETの解重合反応に利用されてもよい。重合促進装置500で分離除去されるEGを無駄にすることなく、その場(解重合反応槽300)で再利用できるため、ケミカルリサイクル装置100の稼働効率を高められる。特に、解重合反応槽300におけるPETの解重合反応のためのEGの購入量を著しく低減できるため、ケミカルリサイクル装置100の稼働コストの削減に繋がる。
【0033】
また、各線状部材510の表面には、重合度(すなわちIV値)が比較的低いPETや、重合反応槽400では未反応のBHETも付着することで、重合反応槽400と同様の重合反応が大きな表面積によって効果的に進行する。このため、重合促進装置500を通過することで、主生成物としてのPETのIV値が高められる。具体的には、重合促進装置500を通過した後のPETのIV値は0.7以上であり、0.8以上とするのが好ましく、0.85以上とするのが更に好ましい。
【0034】
このような重合反応を促進するため、重合促進装置500に併設される第2加熱器としての加熱器520(
図1)または保温器によって、重合促進装置500内が重合反応に好適な温度に維持される。具体的には、加熱器520による加熱温度は250℃と290℃の間であり、260℃と280℃の間とするのが好ましい。ここで、重合促進装置500に併設される加熱器520による加熱温度は、重合反応槽400に併設される加熱器410による重合加熱温度より高くするのが好ましい。重合促進装置500では重合反応槽400より重合反応が進む結果、重合体としてのPETの分子量が大きくなって融点が高くなるため、重合促進装置500内を重合反応槽400内より高温に維持することで、重合促進装置500の生成物としてのPETを溶融状態に維持できる。なお、重合反応槽400と重合促進装置500の間の配管等の周囲に、少なくとも重合反応槽400に併設される加熱器410による重合加熱温度に加熱または保温する第2加熱器としての加熱器または保温器を設けてもよい。また、重合促進装置500内の重合反応は、重合反応槽400内の重合反応と同様に真空状態で行われるのが好ましい。このため、重合促進装置500には不図示の真空ポンプ等が併設される。重合促進装置500内を真空状態(減圧状態)とすることで、副生成物としてのEGを効率的に除去できる。
【0035】
なお、重合促進装置500の構成は、
図1に示されるような「縦型」に限られない。例えば、
図3に示されるような「横型」の撹拌装置を重合促進装置500として用いてもよい。この撹拌装置は、
図3の紙面に垂直な方向に延びる二つの回転軸と、それぞれの周りで回転して撹拌対象としてのPETおよびEGを撹拌する二つの撹拌翼群を備える。二つの撹拌翼群によって撹拌されることでEGの揮発等が促進されるため、高粘度のPETからEGが効果的に分離除去される。なお、
図3の撹拌装置の詳細は、引用によって本書に援用される特許第2925599号に開示されている。このような「縦型」や「横型」等の重合促進装置500の構成または機能は、後述する重合体供給部600の一部として実現されてもよい。この場合、重合体供給部600と別に重合促進装置500を設ける必要はない。
【0036】
重合体供給部600は、重合反応槽400および/または重合促進装置500で合成されたPET等の重合体を、PETボトル等の第2成形品を成形する射出成形機1に供給する。重合体供給部600は、重合促進装置500で副生成物としてのEGが除去された高純度かつ高粘度(すなわち高重合度あるいは高IV値)のPETを、溶融状態のまま射出成形機1に供給することに適したギアポンプやスクリューポンプ等の移送ポンプ610を備える。
【0037】
重合体供給部600には、移送ポンプ610によって射出成形機1に移送されるPET等の重合体を加熱または保温して溶融状態に維持する第1加熱器としての加熱器620または保温器が設けられる。具体的には、加熱器620による加熱温度は250℃と290℃の間であり、260℃と280℃の間とするのが好ましい。ここで、重合体供給部600に設けられる加熱器620(第1加熱器)による加熱温度(第1加熱温度)は、重合反応槽400に併設される加熱器410、重合促進装置500に併設される加熱器520、重合反応槽400と重合促進装置500の間に設けられる不図示の加熱器等の第2加熱器による第2加熱温度より高くするのが好ましい。重合反応槽400で開始した重合反応が徐々に進行して重合促進装置500において完了する結果、重合体供給部600では重合反応槽400および重合促進装置500よりも、重合体としてのPET等の分子量が大きくなって融点が高くなる。そこで、重合体供給部600における第1加熱温度を、それ以前の第2加熱温度より高くすることで、高粘度(すなわち高重合度あるいは高IV値)かつ高融点のPET等の重合体を溶融状態に維持できる。また、重合体供給部600には、不図示の真空ポンプ等が併設されてもよい。重合体供給部600内を真空状態(減圧状態)とすることで、重合体供給部600においても重合度を高められる。
【0038】
重合反応槽400から重合体供給部600にかけて加熱温度が段階的に高くなるように温度傾斜を設けてもよい。例えば、重合反応槽400に併設される加熱器410による加熱温度より、重合反応槽400と重合促進装置500の間に設けられる不図示の加熱器による加熱温度を高くし、当該不図示の加熱器による加熱温度より重合促進装置500に併設される加熱器520による加熱温度を高くし、当該加熱器520による加熱温度より重合体供給部600に設けられる加熱器620による加熱温度を高くすることで、重合反応槽400から重合体供給部600にかけて融点が高くなるPET等の重合体を確実に溶融状態に維持できる。なお、重合体供給部600と射出成形機1の間に、PET等の重合体を加熱または保温して溶融状態に維持する加熱器が設けられてもよい。
【0039】
射出成形機1は、ケミカルリサイクル装置100で生成された溶融状態のPET等の重合体を第2成形品に成形する。第2成形品は、重合体調整装置200で粉砕等の処理が施される第1成形品と同種でもよいし異種でもよい。例えば、第1成形品と第2成形品は共にPETボトルでもよい。また、第1成形品と第2成形品の一方がPETボトルで、他方がシート、フィルム、繊維等のボトル以外の成形品でもよい。一般的にメカニカルリサイクルでは、リサイクル後の第2成形品のIV値はリサイクル前の第1成形品および/または固体材料のIV値より低くなってしまうが、異物除去装置340、350、360や重合促進装置500等のIV値を高める機構を備える本実施形態に係るケミカルリサイクル装置100によれば、リサイクル後の第2成形品のIV値をリサイクル前の第1成形品および/または固体材料のIV値より高くすることもできる。例えば、本実施形態によれば、第1成形品および/または固体材料としての低IV値のPET繊維を、第2成形品としての高IV値のPETボトルにリサイクルすることもできる。
【0040】
射出成形機1は、PET等の溶融樹脂を第2成形品に成形する。溶融樹脂を原材料とする射出成形機は、例えば特許文献2に開示されている。本願は、2020年7月31日に出願された当該文献(日本出願2020-130985)の全内容を参照することによって援用する。
図1に模式的に示されるように、複数の射出成形機1が並列的に設けられてもよい。なお、ケミカルリサイクル装置100から溶融樹脂等が供給される成形機は、射出成形機に限られない任意の成形機(例えばコンプレッション成形機)でよい。
【0041】
以上のような本実施形態では、重合反応槽400で再合成された重合体がフレークやペレットにされずに、そのまま重合体供給部600によって射出成形機1に供給される。従来のようなフレークやペレットに関する冷却過程および加熱過程が不要になるため、より少ないエネルギーでPETボトル等の成形品をリサイクルできる。
【0042】
このような本実施形態に係るケミカルリサイクル装置100では、重合反応槽400で再合成された重合体がそのまま射出成形機1に供給されるため、その成形品(第2成形品)に求められる重合体のIV値を高速に実現する必要がある。本実施形態では、重合反応を促進して重合体のIV値を高める機能を有する重合促進装置500および/または重合体供給部600が重合反応槽400に加えて設けられるため、このような要求にも十分に応えられる。
【0043】
図4は、変形例に係るケミカルリサイクル成形システムの構成を模式的に示す。
図1と同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本変形例では、重合反応槽400で合成された重合体の少なくとも一部を、重合反応槽400および/または解重合反応槽300に返送する重合体返送部1000が設けられる。図示の例における重合体返送部1000は、副生成物除去装置500と重合体供給部600の間に設けられるが、これに限定されない。重合体返送部1000は、副生成物除去装置500と射出成形機1の間の任意の位置に設けられうる。重合体返送部1000は、例えば、重合体供給部600と射出成形機1の間に設けられてもよい。
【0044】
重合体返送部1000は、重合反応槽400で合成された重合体(図示の例では、更に副生成物除去装置500によって副生成物が除去された重合体)の少なくとも一部を、重合体供給部600に送る代わりに重合反応槽400および/または解重合反応槽300に返送する。例えば、重合体返送部1000は、重合反応槽400に重合体を返送するために、当該重合反応槽400の前段に設けられるバッファタンク370に重合体を供給してもよいし、解重合反応槽300に重合体を返送するために、当該解重合反応槽300の前段に設けられる重合体調整装置200に重合体を供給してもよい。
【0045】
重合体返送部1000の主な目的は、ケミカルリサイクル装置100と射出成形機1の稼働時間やキャパシティのミスマッチに対処することである。例えば、ケミカルリサイクル装置100は典型的には連続的に稼働(連続運転)し、射出成形機1は典型的には間欠的に稼働(間欠運転)するため、特に射出成形機1が金型等のメンテナンス等のために停止している間は、射出成形機1が重合体供給部600からの重合体の全量を受け入れられない(受入不能期間)。このような受入不能期間においても、射出成形機1によって受け入れられない余剰な重合体を無駄にすることなく、ケミカルリサイクル装置100を連続的に稼働し続けられるように、当該余剰な重合体が溶融状態のまま重合反応槽400および/または解重合反応槽300に戻される。このように、射出成形機1によって受け入れられない溶融状態の余剰な重合体を、冷却や放熱によってフレークやペレットにする必要がなくなるため、エネルギーの浪費が低減される。
【0046】
重合体返送部1000は、受入不能期間の長さに応じて、余剰な重合体の返送先(重合反応槽400および/または解重合反応槽300)や返送割合を変えてもよい。例えば、受入不能期間が所定の期間閾値を超える前は、解重合反応槽300より多くの重合体を重合反応槽400に返送し、受入不能期間が期間閾値を超えた後は、重合反応槽400より多くの重合体を解重合反応槽300に返送してもよい。
【0047】
受入不能期間が期間閾値を超えない短期間であれば、溶融状態の重合体が高温(例えば、前述のように270℃と280℃の間)のまま重合反応槽400(および、副生成物除去装置500)を循環しても、重合体の劣化やIV値の過度な上昇は起こらないと考えられる。このため、短い受入不能期間に対しては、重合体返送部1000が余剰な重合体の大部分(例えば、100%、80%、60%)を重合反応槽400(バッファタンク370)に返送するのが好ましい。
【0048】
一方、受入不能期間が期間閾値を超えて長期間になると、溶融状態の重合体が高温(例えば、前述のように270℃と280℃の間)のまま重合反応槽400(および、副生成物除去装置500)を循環することによる熱履歴のために、重合体の劣化やIV値の過度な上昇の恐れがある。そこで、長い受入不能期間に対しては、重合体返送部1000が余剰な重合体の大部分(例えば、100%、80%、60%)を解重合反応槽300(重合体調整装置200)に返送するのが好ましい。解重合反応槽300における再度の解重合反応によって、上記の熱履歴が実質的にリセットされるため、受入不能期間後に重合体供給部600が射出成形機1に供給する重合体の劣化やIV値の過度な上昇が効果的に防止される。
【0049】
本変形例では、循環する溶融状態の重合体の温度が略一定(例えば、前述のように270℃と280℃の間)であるため、受入不能期間の長さが熱履歴を表す。一方、循環する溶融状態の重合体の温度が有意に変化しうる場合は、当該温度を受入不能期間の長さに加えて監視することで熱履歴を厳密に把握してもよい。この場合、重合体返送部1000は、熱履歴が所定の熱履歴閾値を超える前は、解重合反応槽300より多くの重合体を重合反応槽400に返送し、熱履歴が熱履歴閾値を超えた後は、重合反応槽400より多くの重合体を解重合反応槽300に返送してもよい。
【0050】
なお、重合体返送部1000は、返送対象の重合体のIV値等の物性値に応じて、返送先(重合反応槽400および/または解重合反応槽300)や返送割合を変えてもよい。例えば、IV値が所定の許容範囲内である場合は、解重合反応槽300より多くの重合体を重合反応槽400に返送し、IV値が許容範囲外である場合(具体的には、許容範囲の上限より大きい場合)は、重合反応槽400より多くの重合体を解重合反応槽300に返送してもよい。後者の場合、解重合反応槽300における再度の解重合反応によって、過度に上昇したIV値が許容範囲内まで低減される。
【0051】
また、重合体返送部1000は、受入不能期間の長さや返送対象の重合体のIV値等の物性値に応じて、重合反応槽400および解重合反応槽300への返送割合を徐々に変えてもよい。例えば、受入不能期間が長くなるにつれて解重合反応槽300への返送割合を徐々に高めてもよいし、IV値が上昇するにつれて解重合反応槽300への返送割合を徐々に高めてもよい。
【0052】
図5は、本開示に係るリサイクルシステムの第2実施形態を模式的に示す。
図1における第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。また、
図5および後続の同様の図では、リサイクルシステムの構成要素が便宜的に機能ブロックとして示される。
【0053】
第2実施形態に係るリサイクルシステムは、品質判定部710と、材料選別部720と、ケミカルリサイクル装置100と、メカニカルリサイクル装置900を備える。ケミカルリサイクル装置100は、
図1における第1実施形態と同様に構成されるが、
図5では重合体調整装置200が省略されている。
図5の例では、重合体調整装置200に代えてまたは加えて、品質判定部710と材料選別部720が設けられている。
【0054】
メカニカルリサイクル装置900は、PETフレーク等の固体材料(具体的には、後述する高品質材料)にメカニカルリサイクル処理を施す。メカニカルリサイクル装置900は、ケミカルリサイクル装置100から完全に独立した別の装置として構成されてもよいが、
図5の例では、ケミカルリサイクル装置100の最後段における重合促進装置500および/または重合体供給部600が、メカニカルリサイクル装置900でも共用されている。このようなメカニカルリサイクル装置900では、加熱器910によってPETフレーク等の固体材料(高品質材料)が加熱溶融され、重合促進装置500および/または重合体供給部600における重合反応等によって所期の重合度またはIV値を有するPET等の重合体が得られる。
【0055】
メカニカルリサイクル装置900の加熱器910は、ケミカルリサイクル装置100のバッファタンク430および第2予熱器431と同様に構成されてもよい。すなわち、加熱器910は、第2予熱器431と同様に、後段の重合促進装置500および/または重合体供給部600に供給される前に、PET等の重合体を含む高品質材料を加熱して溶融する。加熱器910は、ケミカルリサイクル装置100における重合反応槽400に併設される加熱器410と同様の温度(250℃と300℃の間)に高品質材料を加熱してもよいし、重合促進装置500に併設される加熱器520と同様の重合反応に好適な温度(250℃と290℃の間)に高品質材料を加熱してもよいし、重合体供給部600に併設される加熱器620と同様の温度(250℃と290℃の間)に高品質材料を加熱してもよい。また、加熱器910は、バッファタンク430と同様に、加熱溶融したPET等の高品質材料を、後段の重合促進装置500および/または重合体供給部600に供給する前に一時的に貯留してもよい。
【0056】
このように、加熱機能および貯留機能を備える加熱器910を、重合促進装置500および/または重合体供給部600の前段に設けることで、重合促進装置500および/または重合体供給部600への投入待ちの重合体(高品質材料由来のPET等)を適温に保ちながら貯蔵できる。この結果、メカニカルリサイクル装置900またはリサイクルシステム全体のキャパシティを高められ、安定的かつ連続的にメカニカルリサイクル装置900またはリサイクルシステム全体を稼働できる。
【0057】
重合体供給部600がメカニカルリサイクル装置900とケミカルリサイクル装置100で共用されている
図5の例では、メカニカルリサイクル装置900においてメカニカルリサイクル処理が施された高品質材料由来のPET等およびケミカルリサイクル装置100においてケミカルリサイクル処理が施された低品質材料由来のPET等が混合状態で射出成形機1に供給される。
【0058】
品質判定部710は、PETフレーク等の固体材料の品質を所定の品質判定基準に基づいて判定する。材料選別部720は、PETフレーク等の固体材料を、品質判定部710によって品質判定基準より品質が高いと判定された高品質材料と、品質判定部710によって品質判定基準より品質が低いと判定された低品質材料に選別する。品質判定部710および材料選別部720は別体として構成されてもよいが、
図6に模式的に例示されるように略一体的に構成されるのが好ましい。
【0059】
図6では、固体材料としてのPETフレークが左上の供給口から投入される。PETフレークは、品質判定部710における品質判定基準より品質が高い高品質材料(模式的に実線の円によって示される)と、当該品質判定基準より品質が低い低品質材料(模式的に破線の円によって示される)を含みうる。例えば、PETフレークがPETボトル由来の場合、PETボトルの外周面近傍にあったPETフレークは外部の光や水等の影響で劣化している可能性があり、PETボトルの内周面近傍にあったPETフレークは内容物に含まれているリモネン等が吸着している可能性がある。これらのPETフレークは低品質材料に分類されうる。一方、PETボトルの外周面からも内周面からも離れていたPETフレーク、あるいは、外周面および内周面に劣化または汚染がないPETフレークは、高品質材料に分類されうる。
【0060】
このように、低品質材料と高品質材料の混合物であるPETフレーク等の固体材料は、ベルトコンベア721の一端部(
図6における左端部)から他端部(
図6における右端部)まで搬送されて落下する。センサ711は、ベルトコンベア721の他端部から落下した各PETフレークを非接触で測定する。この非接触測定の方式は任意であり、電気、磁気、熱等が利用されてもよいが、好ましくは光および/または電磁波が利用される。この場合のセンサ711は、ベルトコンベア721の他端部から落下した各PETフレークを光学的に測定する。具体的には、センサ711は、各PETフレークからの光または各PETフレークの画像を取得する。センサ711は、各PETフレークが反射した自然光または環境光を測定してもよいし、当該センサ711自体が発する任意の波長の測定光を各PETフレークが反射したものを測定してもよい。
【0061】
センサ711によって連続的に測定されるPETフレーク群のうち、低品質材料は品質の劣化に伴って光学的特性(例えば、色)等の各種の特性が変化しているため、低品質材料と高品質材料の間でセンサ711による測定値に有意な差が生じる。そこで、品質判定部710は、センサ711による測定値に対して適切な品質判定基準または品質判定閾値を適用することで、PETフレーク群を高品質材料と低品質材料に判別できる。そして、材料選別部720が、品質判定部710による判別結果に応じてPETフレーク群を高品質材料と低品質材料に選別する。
図6の例ではエアノズルによって実現される材料選別部720は、品質判定部710によって低品質材料と判定されたPETフレークのみに対して空気を噴射することで(逆に、品質判定部710によって高品質材料と判定されたPETフレークのみに対して空気を噴射してもよい)、高品質材料から選別または分離する。
【0062】
以上のように、品質判定部710および材料選別部720の作用によって、
図5に示されるリサイクルシステムに供給されるPETフレーク群が、固体状態のまま高品質材料と低品質材料に選別される。
図5に示されるように、材料選別部720によって選別された固体状態の高品質材料は、メカニカルリサイクル装置900に供給されて、メカニカルリサイクル処理が施される。また、材料選別部720によって選別された固体状態の低品質材料は、ケミカルリサイクル装置100に供給されて、ケミカルリサイクル処理が施される。なお、材料選別部720によって選別された高品質材料および/または低品質材料は、そのままメカニカルリサイクル装置900および/またはケミカルリサイクル装置100に投入されてもよいし、メカニカルリサイクル装置900および/またはケミカルリサイクル装置100に投入される前に一時的に貯留されてもよい。
【0063】
本実施形態では、PETフレーク等の固体材料が品質判定基準に基づいて高品質材料と低品質材料に選別される。高品質材料は、品質改善効果は低いが装置が簡素なメカニカルリサイクル処理(メカニカルリサイクル装置900)によって効率的にリサイクルされ、低品質材料は、品質改善効果が高いケミカルリサイクル処理(ケミカルリサイクル装置100)によって品質が高められながらリサイクルされる。このように、本実施形態によれば、PETフレーク等の固体材料の品質に応じた適切なリサイクル処理(メカニカルリサイクル処理またはケミカルリサイクル処理)を適用することで、リサイクル品の品質を安定化できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、材料選別部720によって選別された高品質材料が、メカニカルリサイクル装置900に振り分けられるため、ケミカルリサイクル装置100の負担を軽減できる。このため、一般的にメカニカルリサイクル装置900より複雑で高価なケミカルリサイクル装置100の規模を小さくできる。更に、材料選別部720によって選別された高品質材料は、ケミカルリサイクル装置100より構成が簡素で稼働コストが低いメカニカルリサイクル装置900によって迅速かつ効率的にリサイクルされるため、リサイクルシステム全体のスループットや効率性を飛躍的に高められる。
【0065】
加えて、本実施形態に係るリサイクルシステムは、高品質材料に対応するメカニカルリサイクル装置900と、低品質材料に対応するケミカルリサイクル装置100の両方を備えるため、不安定な品質のPETフレーク等の固定材料も受け入れられる。このように、本実施形態によれば、幅広い固定材料に対応可能な汎用性の高いリサイクルシステムを提供できる。
【0066】
図7は、本開示に係るリサイクルシステムの第3実施形態を模式的に示す。前述の各実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。第3実施形態に係るリサイクルシステムは、部分解重合部730と、固液分離部740と、劣化材料回収部750と、ケミカルリサイクル装置100を備える。ケミカルリサイクル装置100は、
図1における第1実施形態と同様に構成されるが、
図7では重合体調整装置200が省略されている。
図7の例では、重合体調整装置200に代えてまたは加えて、部分解重合部730、固液分離部740、劣化材料回収部750が設けられている。
【0067】
部分解重合部730は、PETフレーク等の固体材料を解重合反応によって解重合体に部分的に分解する。固体材料に含まれるリサイクル対象の重合体がPETである場合、
図2に示される解重合反応(300)に従って、解重合材としてのEGによってPETが分解され、解重合体としてのBHETが得られる。この解重合反応は、ケミカルリサイクル装置100における解重合反応槽300で発生するものと実質的に同じであるが、部分解重合部730では、PETフレーク等の固体材料の表面部分のみが解重合反応によって分解する。前述のように、例えば、PETボトルに由来するPETフレークは、PETボトルの外部からの光や水等の影響や、PETボトルの内容物に含まれているリモネン等の吸着によって、表面の品質が劣化している可能性がある。部分解重合部730の主な目的は、このように品質が劣化している可能性があるPETフレーク等の固体材料の表面部分を、解重合反応によって分解することである。
【0068】
固液分離部740は、部分解重合部730で得られる固体分と液体分を分離する。固体材料がPETフレークである場合、固体分は、部分解重合部730において液状のBHETまで分解されずに残った高品質のPETフレークまたは高品質のPET粒子を含み、液体分は、PETフレークの表面部分が解重合反応によって分解して生成したBHET、劣化したPETフレークの表面部分の微粒子、未反応のEG、PETフレークの表面部分の品質劣化に関する汚染物質、水等の洗浄液等による混合液である。高品質の固体材料である固体分は、ケミカルリサイクル装置100に供給されて、ケミカルリサイクル処理が施される。汚染物質も含みうるリサイクル処理に適しない液体分は、劣化材料回収部750において回収される。
【0069】
なお、本実施形態に係る固液分離部740は、固体と液体を完全に分離する必要はない。例えば、後述する
図8~
図11において具体的に例示される固液分離部740では、固体である高品質のPETフレークまたは高品質のPET粒子が、液体と混ざったスラリー等の状態で底部の固体分取出部850から取り出される。このように、固液分離部740が分離する固体分は、高品質のPETフレークまたは高品質のPET粒子等の任意の形態の固体を含むものであればよく、当該固体と共にスラリー等を形成する液体を含んでいてもよい。換言すれば、本実施形態における固体分とは、液体の有無によらず、固体材料に由来する任意の形態の固体(典型的には、固体粒子)を含むものであればよい。
【0070】
本実施形態では、PETフレーク等の固体材料において品質が劣化しやすい表面等が部分的に分解されて、品質が比較的高い固体分が分離される。このように高品質な固体分にケミカルリサイクル処理を施すことで、リサイクル品の品質を安定化できる。
【0071】
また、本実施形態に係るリサイクルシステムは、部分解重合部730および固液分離部740の作用によって、品質が劣化しやすい表面部分を効果的に除去できるため、低い品質のPETフレーク等の固定材料も受け入れられる。このように、本実施形態によれば、幅広い固定材料に対応可能な汎用性の高いリサイクルシステムを提供できる。
【0072】
なお、部分解重合部730および固液分離部740は別体として構成されてもよいが、
図8に模式的に例示されるように略一体的に構成されるのが好ましい。
図8では、部分解重合部730および固液分離部740が、部分解重合反応槽810と、固体材料供給部820と、解重合材供給部830と、解重合体排出部840と、固体分取出部850によって構成される。
【0073】
部分解重合反応槽810では、部分解重合部730に関して前述したPETフレーク等の固体材料の部分的な解重合反応が起こる。固体材料供給部820は、部分解重合反応槽810内にPETフレーク等の固体材料を供給する。解重合材供給部830は、部分解重合反応槽810内にPET等の重合体を分解するEG等の解重合材を供給する。後述するように、解重合材供給部830は、解重合反応後に残る固体分(高品質のPET等)を洗浄する洗浄液を部分解重合反応槽810内に供給してもよい。解重合体排出部840は、解重合反応によって生成する液状のBHET等の解重合体を排出する。後述するように、解重合体排出部840は、BHET等の解重合体に限らず、部分解重合反応槽810内の任意の液体分を排出可能であり、例えば、上記の洗浄液を排出してもよい。固体分取出部850は、解重合反応後に残る固体分(高品質のPET等)を取り出す。
【0074】
図8の構成は、例えば、以下のような手順によって、部分解重合部730および固液分離部740の機能を実現する。最初に、第1ステップとして、固体材料供給部820が、部分解重合反応槽810内にPETフレーク等の固体材料を供給し、解重合材供給部830が、部分解重合反応槽810内にEG等の解重合材を供給する。この時、部分解重合反応槽810内は、前述の解重合反応槽300内と同様の温度(例えば、220℃と250℃の間、好ましくは230℃と245℃の間、更に好ましくは235℃と240℃の間)や圧力(例えば、0.3MPaと0.8MPaの間、好ましくは0.4MPaと0.6MPaの間、更に好ましくは0.45MPaと0.55MPaの間)に維持される。このため、部分解重合反応槽810内では、解重合反応槽300内で発生するものと実質的に同じ解重合反応が、固体材料供給部820によって供給されたPETフレーク等の固体材料の表面部分において発生する。
【0075】
解重合材供給部830は、EG等の解重合材を液状(例えば、水溶液)で部分解重合反応槽810内に供給してもよいが、EG等の解重合材の蒸気を部分解重合反応槽810内に供給するのが好ましい。例えば、
図8に模式的に示されるように、部分解重合反応槽810の天井部に設けられる解重合材供給部830が、EGの蒸気を部分解重合反応槽810内に噴射または噴霧してもよい。EG等の解重合材を蒸気で供給することの利点としては、沸点をまたぐ相変化の影響を低減できるため高温環境下で安定的かつ高速に解重合反応を進行させられることや、反応温度を高められるためEG等以外の触媒の必要性を低減でき、極端な場合には無触媒で表面解重合反応を発生させられること等が例示される。
【0076】
部分解重合反応槽810内でPETフレーク等の固体材料の表面部分の解重合反応が十分に進行した後(すなわち、第1ステップの後)、または、当該解重合反応が進行している間(すなわち、第1ステップと同時)、第2ステップとして、解重合反応によって生成したBHET等の解重合体、劣化したPETフレーク等の固体材料の表面部分の微粒子、未反応のEG等の解重合材、PETフレーク等の固体材料の表面部分の品質劣化に関する汚染物質等を含む液体分が、部分解重合反応槽810の底部に設けられる解重合体排出部840から排出される。解重合体排出部840は、液体分を常時または間欠的に排出可能なストレーナやバルブによって構成される。
【0077】
部分解重合反応槽810内でPETフレーク等の固体材料の表面部分の解重合反応が十分に進行した後、第1ステップより後の第3ステップとして、部分解重合反応槽810の天井部に設けられる解重合材供給部830が、解重合反応後に残る固体分(劣化した表面部分が除去された高品質のPETフレーク等)を洗浄する洗浄液を部分解重合反応槽810内に供給してもよい。洗浄液としては、水や、解重合材としても使用される液状のEG(例えば、水溶液)等が例示される。この場合、第3ステップ以降の第4ステップとして、部分解重合反応槽810の底部に設けられる解重合体排出部840は洗浄液を排出する。ここで、解重合体排出部840から液体分を排出する第2ステップと第4ステップは同時に行われてもよい。
【0078】
以上の第1~第4ステップの終了後、部分解重合反応槽810の底部には、第1および第2ステップにおいて劣化した表面部分が除去され、第3および第4ステップにおいて洗浄された高品質のPETフレーク等が固体分として堆積して残る。最後の第5ステップでは、このような高品質のPETフレーク等を含む固体分が、部分解重合反応槽810の底部に設けられる固体分取出部850から取り出される。
【0079】
以上のような第1~第5ステップは、これらのステップにより実行される部分解重合部730による部分解重合(または表面解重合)および固液分離部740による固液分離の処理対象となる固体材料の処理単位またはバッチ毎に繰り返されてもよい。また、
図8に示されるような処理装置を複数設けることで、大量の固体材料であっても並列的に高速処理できるようにしてもよい。
【0080】
あるいは、
図8に示されるような専用の処理装置を設ける代わりに、同じく解重合反応を発生させるための解重合反応槽300を、部分解重合部730および固液分離部740として機能させてもよい。例えば、PETフレークが最初に供給された時は、解重合反応槽300が部分解重合部730および固液分離部740として機能し、表面解重合反応を通じて高品質のPETフレークからなる固体分を抽出する(液体分は劣化材料回収部750で分離回収される)。続いて、解重合反応槽300は、本来の解重合反応槽300として機能し、当該固体分(高品質のPETフレーク)の全量を、解重合反応によって解重合体としてのBHETに分解する。
【0081】
図9~
図11は、
図8に示される処理装置の変形例を模式的に示す。
図8~
図11における同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。
【0082】
図9の変形例では、部分解重合部730および固液分離部740が、部分解重合反応槽810と、固体材料供給部820と、解重合材供給部830と、解重合体排出部840と、固体分取出部850と、仕切り860によって構成される。
【0083】
EG等の解重合材および/または洗浄液を部分解重合反応槽810内に供給する解重合材供給部830は、
図8のような天井部に限られない部分解重合反応槽810の内壁面における任意の箇所(例えば、側面や底部を含む)に設けられる。部分解重合反応槽810内を上下に区画する仕切り860は、解重合反応前のPETフレーク等の固体材料の少なくとも一部が通過できない孔を備える。このような仕切り860は、例えば、ステンレス鋼等の金属製のメッシュや、一般的なPETフレークより小さい孔を有する網や板によって構成される。固体材料供給部820および解重合材供給部830の少なくとも一つは仕切り860より上側に設けられ、解重合材供給部830の少なくとも一つ、解重合体排出部840、固体分取出部850は、仕切り860より下側に設けられてもよい。
【0084】
図9に模式的に示されるように、解重合反応前のPETフレークは仕切り860上に集まる。そして、このように仕切り860上に集められたPETフレークに対して、複数の解重合材供給部830が様々な方向からEG等の解重合材を噴射することで、PETフレークの表面部分が効率的に解重合反応によって分解される。解重合反応によって生成した液状のBHET等の解重合体は、仕切り860の孔を下方に通過して解重合体排出部840から排出される。更に、複数の解重合材供給部830の少なくとも一つから供給される洗浄液も、仕切り860の孔を下方に通過して解重合体排出部840から排出される。また、表面部分の解重合反応によって小さくなった高品質のPETフレーク等の固体分は、仕切り860の孔を下方に通過して固体分取出部850から取り出される。
【0085】
図10の変形例では、部分解重合部730および固液分離部740が、部分解重合反応槽810と、固体材料供給部820と、解重合材供給部830と、解重合体排出部840と、固体分取出部850と、撹拌翼870によって構成される。
【0086】
この変形例では、解重合材供給部830が部分解重合反応槽810の底部に設けられ、解重合体排出部840が部分解重合反応槽810の上部(あるいは、固体分取出部850より上方)に設けられる。解重合材供給部830から供給される液状のEG等の解重合材や触媒および/または解重合反応によって生成した液状のBHET等の解重合体は、部分解重合反応槽810を底部から解重合体排出部840が設けられる位置まで満たす。このように、解重合体排出部840が設けられる位置に部分解重合反応槽810内の液面が形成される。過剰な液体分は、ストレーナやバルブによって構成される解重合体排出部840から排出される。なお、複数の解重合体排出部840が、異なる高さに設けられてもよい。この場合、最も高い位置に設けられる解重合体排出部840は、オーバーフローを防止して部分解重合反応槽810内の液面を形成する機能を担い、それより低い位置に設けられる解重合体排出部840は、中間的な高さ位置からBHET等の解重合体等を排出する。
【0087】
撹拌翼870は、特に、解重合反応中に反応物としてのPETフレーク等の固体材料とEG等の解重合材を撹拌する。このような撹拌によって、解重合反応が効率的に進行するだけでなく、表面部分の解重合反応後に残る固体分(高品質のPET等)が微細化される。微細化された固体分は、ストレーナやバルブによって構成される固体分取出部850を通過できるようになり、部分解重合反応槽810外に取り出される。
【0088】
以上のような一連の処理は、
図8や
図9と同様のバッチ処理として実行されてもよいし、連続処理として実行されてもよい。連続処理では、撹拌翼870が部分解重合反応槽810内で連続的に回転している状態で、固体材料供給部820からの固体材料の供給、解重合材供給部830からの解重合材の供給、解重合体排出部840からの解重合体の排出、固体分取出部850からの固体分の取り出し、の少なくともいずれかが連続的または断続的に実行される。
【0089】
図11の変形例では、部分解重合部730および固液分離部740が、部分解重合反応槽810と、固体材料供給部820と、解重合材供給部830と、解重合体排出部840と、固体分取出部850と、撹拌翼870と、バッフル880によって構成される。
【0090】
この変形例では、PETフレーク等の固体材料の表面部分の解重合反応後に残る固体分(高品質のPET等)が、撹拌翼870によって撹拌される際に邪魔板とも呼ばれるバッフル880に衝突することで効率的に微細化される。
【0091】
図12は、
図7の変形例に係るリサイクルシステムの構成を模式的に示す。
図7と同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本変形例では、部分解重合部730に、解重合材によって重合体を解重合体に分解する解重合反応の少なくとも前期において、解重合材と重合体を機械的または物理的に混合する機械的混合部760が設けられる。
【0092】
図2に示されるように、EG等の解重合材によってPET等の重合体をBHET等の解重合体に分解する解重合反応は、本質的には化学的なプロセスである。しかし、
図13に模式的に示されるように、重合体の重合度が高い解重合反応の初期または前期では、PET等の重合体がフレークやペレット等の大きな塊で存在していることもあり、化学的作用(化学反応)より撹拌や混合等の機械的作用が優勢である。一方、解重合反応の後期では、所期の化学的作用(化学反応)が優勢になる。
【0093】
本変形例に係る機械的混合部760は、特に、機械的作用が優勢な解重合反応の初期または前期において、EG等の解重合材とPET等の重合体を機械的に混合することで当該期間を効率的に進め、所期の化学的作用(化学反応)が優勢になる後期(部分解重合部730より後段の解重合反応槽300において主に進行する)への迅速な移行を可能にする。この結果、部分解重合部730および解重合反応槽300における解重合反応を、短時間で効率的に進められる。機械的混合部760は、機械的作用が優勢な解重合反応の初期または前期だけでなく、化学的作用(化学反応)が優勢な解重合反応の後期(部分解重合部730において進行する場合)においても、EG等の解重合材とPET等の重合体の機械的な混合を継続してもよい。なお、機械的混合部760は、前述の重合体調整装置200と同様に、粉砕、加熱溶融、混合等の処理を担いうる。このため、重合体調整装置200は設けられなくてもよいし、重合体調整装置200が機械的混合部760に統合されてもよい。
【0094】
以上のような機械的混合部760は、
図8~
図11に示されるような一槽構成の部分解重合部730(および、固液分離部740)に併設または外付けされてもよい。例えば、機械的混合部760としての後述する超音波装置を、部分解重合部730の外壁面および/または内壁面に取り付けてもよいし、機械的混合部760としての後述するキャビテーション装置を、部分解重合部730の前段に設けてもよい。
【0095】
以上のような機械的混合部760は、解重合反応の特に初期においてEG等の解重合材とPET等の重合体を機械的に混合するという機能が実現される限り、任意の方式によって構成されてもよい。以下では、
図10に示される部分解重合部730および固液分離部740を例として、それに設けられてもよい機械的混合部760の複数の非限定的な実施例が列挙される。
【0096】
図14は、機械的混合部760の第1実施例を模式的に示す。本実施例は、
図10に示される部分解重合部730および固液分離部740に、機械的混合部760の第1実施例としての超音波装置761が追加的に設けられたものである。
【0097】
部分解重合反応槽810では、PETフレーク等の重合体の部分的な解重合反応、特に、
図13に関して前述した初期または前期におけるEG等の解重合材との機械的な混合が行われる。重合体供給部820は、部分解重合反応槽810内にPETフレーク等の重合体を供給する。部分解重合反応槽810の底部に設けられる解重合材供給部830は、部分解重合反応槽810内にPET等の重合体を分解するEG等の解重合材を供給する。部分解重合反応槽810の上部に設けられる解重合体排出部840は、解重合反応によって生成する液状のBHET等の解重合体を排出する。重合体取出部850は、解重合反応後に残るPETスラリー等を取り出す。重合体取出部850から取り出されたPETスラリー等は、後段の解重合反応槽300に送られ、更なる解重合反応(特に、
図13に関して前述した後期における所期の化学反応)を経て、BHET等の解重合体に分解される。
【0098】
撹拌翼870および/または超音波装置761は、部分解重合反応槽810内において、重合体供給部820から供給されるPET等の重合体と、解重合材供給部830から供給されるEG等の解重合材を機械的に混合または撹拌することで、部分解重合部730が担う解重合反応の初期または前期における機械的混合を促進する。このような機械的混合によって、解重合反応が効率的に進行するだけでなく、PETフレーク等が微細化されてスラリー状になる。微細化されたPETスラリーは、ストレーナやバルブによって構成される重合体取出部850を通過できるようになり、部分解重合反応槽810外に取り出されて解重合反応槽300に送られる。
【0099】
超音波装置761は、例えば、部分解重合反応槽810の外壁面および/または内壁面の任意の箇所に、連続的(例えば、環状)または間欠的に取り付けられる。超音波装置761が発生させる超音波(振動)は、部分解重合反応槽810内におけるPET等の重合体とEG等の解重合材を機械的に混合する。なお、超音波装置761を部分解重合反応槽810の壁面に取り付けることが難しい場合は、超音波装置761が組み込まれた別の超音波槽を部分解重合反応槽810に接続してもよい。この場合、超音波装置761による機械的混合は超音波槽内で行われ、微細化されたPET等は部分解重合反応槽810の重合体取出部850から取り出される。
【0100】
図14の構成によれば、超音波装置761で発生した超音波が、重合体供給部820によって供給されたPETフレーク等の重合体と、解重合材供給部830によって供給されたEG等の解重合材を機械的に混合する。なお、PETフレーク等が大きすぎる場合等は接触式の撹拌翼870による撹拌が困難であるが、非接触式の超音波装置761であればPETフレーク等のサイズ等に関わらず効果的に混合できる。
【0101】
部分解重合反応槽810内でPETフレーク等の重合体の機械的混合が十分に進行した後、または、当該機械的混合が進行している間、解重合反応によって生成したBHET等の解重合体等を含む解重合液が、部分解重合反応槽810の上部に設けられる解重合体排出部840から排出される。解重合体排出部840は、液体分を常時または間欠的に排出可能なストレーナやバルブによって構成される。解重合材供給部830から供給される液状のEG等の解重合材や触媒および/または解重合反応によって生成した液状のBHET等の解重合体は、部分解重合反応槽810を底部から解重合体排出部840が設けられる位置まで満たす。このように、解重合体排出部840が設けられる位置に部分解重合反応槽810内の液面が形成される。過剰な液体分は、ストレーナやバルブによって構成される解重合体排出部840から排出される。なお、複数の解重合体排出部840が、異なる高さに設けられてもよい。この場合、最も高い位置に設けられる解重合体排出部840は、オーバーフローを防止して部分解重合反応槽810内の液面を形成する機能を担い、それより低い位置に設けられる解重合体排出部840は、中間的な高さ位置からBHET等の解重合体等を排出する。
【0102】
部分解重合反応槽810内でPETフレーク等の重合体とEG等の解重合材の機械的混合が十分に進行した後、部分解重合反応槽810の底部に設けられる重合体取出部850から、微細化されて堆積したPETスラリーが取り出される。
【0103】
以上のような各ステップは、重合体供給部820によるPETフレーク等の重合体の供給と解重合材供給部830によるEG等の解重合材の供給を継続することで連続的に実行されてもよいし(連続処理)、PETフレーク等の重合体とEG等の解重合材の所定の処理単位またはバッチ毎に実行されてもよい(バッチ処理)。例えば、連続処理では、超音波装置761が連続的に超音波を発しており、および/または、撹拌翼870が部分解重合反応槽810内で連続的に回転している状態で、重合体供給部820からの重合体(PETフレーク等)の供給、解重合材供給部830からの解重合材の供給、解重合体排出部840からの解重合体の排出、重合体取出部850からの重合体(PETスラリー等)の取り出し、の少なくともいずれかが連続的または断続的に実行される。
【0104】
図15は、機械的混合部760の第2実施例を模式的に示す。本実施例は、
図10に示される部分解重合部730および固液分離部740に、機械的混合部760の第2実施例としてのキャビテーション装置762が追加的に設けられたものである。
【0105】
撹拌翼870および/またはキャビテーション装置762は、部分解重合反応槽810内において、重合体供給部820から供給されるPET等の重合体と、解重合材供給部830から供給されるEG等の解重合材を機械的に混合または撹拌することで、部分解重合部730が担う解重合反応の初期または前期における機械的混合を促進する。このような機械的混合によって、解重合反応が効率的に進行するだけでなく、PETフレーク等が微細化されてスラリー状になる。微細化されたPETスラリーは、ストレーナやバルブによって構成される重合体取出部850を通過できるようになり、部分解重合反応槽810外に取り出されて解重合反応槽300に送られる。
【0106】
キャビテーション装置762は、例えば、解重合材供給部830が部分解重合反応槽810にEG等の解重合材を供給する供給路上に設けられる。キャビテーション装置762は、液状のEG等の解重合材内に圧力差を導入して、泡の発生と消滅を伴うキャビテーション(空洞現象)を引き起こす。キャビテーションに伴う典型的には微小な泡は、部分解重合反応槽810内におけるPET等の重合体とEG等の解重合材を機械的に混合する。なお、キャビテーション装置762を第1解重合反応槽301に設けることが難しい場合は、キャビテーション装置762が組み込まれた別のキャビテーション槽を部分解重合反応槽810に接続してもよい。この場合、キャビテーション装置762による機械的混合はキャビテーション槽内で行われ、微細化されたPET等は部分解重合反応槽810の重合体取出部850から取り出される。なお、キャビテーション装置762に代えてまたは加えて、キャビテーションとは異なる原理で微小な泡(ファインバブルやマイクロバブルとも呼ばれる)を生成する泡生成装置が、機械的混合部760として使用されてもよい。
【0107】
図15の構成によれば、キャビテーション装置762が、解重合材供給部830によって部分解重合反応槽810内に供給されるEG等の解重合材内にキャビテーションに伴う微小な泡を発生させる。これらの微小な泡は、EG等の解重合材と共に部分解重合反応槽810内に導入され、重合体供給部820によって供給されたPETフレーク等の重合体と、解重合材供給部830によって供給されたEG等の解重合材を機械的に混合する。なお、PETフレーク等が大きすぎる場合等は接触式の撹拌翼870による撹拌が困難であるが、非接触式のキャビテーション装置762であればPETフレーク等のサイズ等に関わらず効果的に混合できる。
【0108】
図16は、機械的混合部760の第3実施例としての横型撹拌装置763を模式的に示す。横型撹拌装置763は、
図12における部分解重合部730を構成する。また、
図12における解重合反応槽300は、
図1や
図4に示されるような縦型撹拌装置である。ここで、「横型」とは、鉛直方向に交差する方向(例えば、水平方向)の回転軸の周りに回転する回転体によって撹拌を行うことを意味し、「縦型」とは、水平方向に交差する方向(例えば、鉛直方向)の回転軸の周りに回転する回転体(例えば、撹拌翼)によって撹拌を行うことを意味する。
【0109】
図16(および、後述する
図17)では、便宜的に、X軸、Y軸、Z軸による三次元座標系が設定されている。例えば、X軸およびY軸は水平方向であり、Z軸は鉛直方向である。図示の例における横型撹拌装置763は、X方向に長尺である。
【0110】
横型撹拌装置763は、容器1010と、回転体1020と、回転駆動部1040を備える。
【0111】
容器1010には、例えば、
図1や
図4における重合体調整装置200から、第1成形品に由来するPET等の重合体PMが溶融状態で供給される。容器1010は、重合体調整装置200に接続されて重合体PMを容器1010内に供給する重合体供給口1011と、後述する回転体1020によってEG等の解重合材と撹拌(機械的に混合)された重合体PM(未反応の解重合材や、生成物としてのBHET等の解重合体も含む)を容器1010外に排出し、後段の固液分離部740および/または解重合反応槽300に対して供給する排出口1012を備える。重合体供給口1011には、容器1010内への重合体PMの供給量や供給速度を調整可能なギアポンプやスクリューポンプ等の移送ポンプが接続されてもよいし、排出口1012には、容器1010外への重合体PM等の排出量や排出速度を調整可能なギアポンプやスクリューポンプ等の移送ポンプが接続されてもよい。また、容器1010には、重合体PMの溶融状態が維持されるように、容器1010内を適温に制御するヒータ等の温度制御部が設けられてもよい。
【0112】
容器1010は、
図16に例示されるようにX方向に長尺であり、例えば略矩形のYZ断面(不図示)を有する。複数の回転体1020がY方向にずれて配置される場合は、それらを収容するために容器1010のYZ断面はY方向に長尺(すなわち、長方形)になっている。
【0113】
図16において、重合体供給口1011は、容器1010のX方向における一端部(
図16における左端部)に設けられ、排出口1012は、容器1010のX方向における他端部(
図16における右端部)に設けられる。重合体供給口1011および排出口1012の間のX方向領域には、窒素等の気体を容器1010内の気相に送る一または複数の送気口1013と、重合体PMと機械的に混合されるEG等の解重合材を容器1010内の気相に供給する一または複数の解重合材供給口1014が設けられる。また、重合体供給口1011および排出口1012の間のX方向領域には、一または複数の回転体1020が設けられて、重合体供給口1011から供給される溶融状態の重合体PMと、解重合材供給口1014から供給されるEG等の解重合材を撹拌(機械的に混合)する。
【0114】
回転体1020は、容器1010内で回転して重合体PMおよび解重合材を撹拌する。回転体1020は、鉛直方向(
図16の例では、Z方向)に交差する方向(
図16の例では、Z方向に直交するX方向)の回転軸1022の周りに回転する一または複数の回転板1021を備える。回転板1021は、例えば、円形のYZ断面を有する円板である。但し、回転板1021のYZ断面の形状は任意であり、例えば、楕円形、三角形や四角形等の多角形でもよい。回転板1021のYZ平面における中心または重心は、回転軸1022の中心と一致するのが好ましい。この場合、一または複数の回転板1021と回転軸1022は、同軸状に配置される。なお、回転体1020は、回転板1021に代えてまたは加えてスクリュを備えてもよい。回転体1020がスクリュを備える場合、PET等の重合体PMが固体状態で供給されてもよい。
【0115】
図16の例では、回転体1020が、回転軸1022の軸方向(X方向)に離間された複数の回転板1021を備える。隣接する二つの回転板1021の間の軸方向の距離は一定でもよいし、図示されるように異なっていてもよい。重合体PMおよび解重合材の撹拌が進み、その一部がBHET等の解重合体に分解されると、重合体PMの粘度または重合度が低くなる。一方、容器1010の入口側(すなわち、重合体供給口1011側)に近いほど、重合体PMの粘度または重合度が高いため、当該重合体PMが回転板1021に付着しやすくなる。このような容器1010の入口側における回転板1021の間隔が小さすぎると、それぞれの回転板1021に付着した重合体PMが互いに干渉して、当該重合体PMの撹拌(解重合材との機械的混合)や回転体1020の回転を阻害する恐れがある。そこで、図示されるように、容器1010の重合体供給口1011(前段)から排出口1012(後段)に向かって、回転板1021の間隔を小さくするのが好ましい。
【0116】
このように、回転板1021の間隔が小さい後段(排出口1012側)では、重合体PMおよび解重合材が効率的に撹拌または混合される。ここで、複数の解重合材供給口1014が設けられる場合、各解重合材供給口1014から供給される解重合材の量を前段から後段に向かって増やすことで、重合体PMおよび解重合材の機械的混合の効率を更に高められる。
【0117】
回転体1020は、モータ等によって構成される回転駆動部1040によって回転駆動される。具体的には、回転駆動部1040は、回転体1020の回転軸1022に連結されて、それを回転駆動する。このように、回転駆動部1040によって回転軸1022が回転駆動されると、それに固定された複数の回転板1021が一体的に回転する。そして、重合体供給口1011から容器1010内に供給されて排出口1012に向かう重合体PMが、回転する複数の回転板1021によって解重合材供給口1014から容器1010内に供給される解重合材と効果的に混合される。
【0118】
回転体1020によって撹拌されることで、重合体PMおよび解重合材が機械的に混合されるだけでなく、BHET等の解重合体への分解(化学反応)も部分的に進行する。この結果、容器1010内のPET等の重合体PMのIV値、粘度、重合度は、重合体供給口1011から排出口1012に向かうにつれて徐々に下がる。なお、回転体1020の各回転板1021に付着する重合体PMの位置または高さは、重合体PMのIV値、粘度、重合度を間接的に表す。そこで、不図示の付着位置検知部によって、回転板1021に付着した重合体PMの、鉛直方向(Z方向)における最高到達位置を検知することで、重合体PMのIV値、粘度、重合度を把握してもよい。例えば、付着位置検知部は、鉛直方向(Z方向)および回転軸1022(X方向)に交差する方向(Y方向)に進む光を通じて、回転板1021に付着した重合体PMの鉛直方向(Z方向)における最高到達位置を検知してもよい。
【0119】
不図示の撹拌態様調整部は、付着位置検知部によって検知された重合体PMの付着位置(例えば、最高到達位置)の所望位置からの乖離が小さくなるように、容器1010内における撹拌態様を調整してもよい。ここでの所望位置は、容器1010内における重合体PMの所望の粘度や重合度に対応する。すなわち、撹拌態様調整部は、容器1010内の重合体PMが所望の粘度や重合度になるように、容器1010内における撹拌態様を調整してもよい。
【0120】
具体的には、撹拌態様調整部は、容器1010内における撹拌態様として、容器1010内への重合体PMおよび/または解重合材の供給量、容器1010内への重合体PMおよび/または解重合材の供給速度、排出口1012を通じた容器1010外への排出量、排出口1012を通じた容器1010外への排出速度、回転体1020の回転速度、容器1010内の圧力、容器1010内の温度の少なくともいずれかを調整してもよい。
【0121】
重合体PMの重合度を間接的に検知する付着位置検知部に加えて、当該付着位置検知部によって検知された重合体PMの付着位置に基づいて、当該重合体PMの重合度を推定する不図示の重合度推定部が設けられてもよい。この場合の撹拌態様調整部は、重合度推定部によって推定された重合体PMの重合度の所望値からの乖離が小さくなるように、容器1010内における撹拌態様を調整する。
【0122】
図17は、機械的混合部760の第4実施例としての横型撹拌装置764を模式的に示す。
図16と同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。横型撹拌装置764は、
図12における部分解重合部730を構成する。
図16に示される横型撹拌装置763が一槽型であったのに対し、
図17に示される横型撹拌装置764は複数槽型(図示の例では、二槽型)である。具体的には、横型撹拌装置764は、前段または上流側の第1横型撹拌装置764Aと、後段または下流側の第2横型撹拌装置764Bを備える。図示の例における第1横型撹拌装置764Aおよび第2横型撹拌装置764Bは、いずれもX方向に長尺である。
【0123】
第1横型撹拌装置764Aおよび第2横型撹拌装置764Bは、いずれも前述の容器1010と、回転体1020と、回転駆動部1040を備える。第1横型撹拌装置764Aの排出口1012は、第2横型撹拌装置764Bの重合体供給口1011に接続されている。
【0124】
第1横型撹拌装置764Aおよび第2横型撹拌装置764Bにおける回転体1020は、回転軸1022の軸方向(X方向)に離間された複数の回転板1021を備える。第1横型撹拌装置764Aにおける隣接する回転板1021の間の軸方向の距離は一定であり、第2横型撹拌装置764Bにおける隣接する回転板1021の間の軸方向の距離は一定である。ここで、第2横型撹拌装置764Bにおける隣接する回転板1021の間の一定距離は、第1横型撹拌装置764Aにおける隣接する回転板1021の間の一定距離より小さくされるのが好ましい。重合体PMおよび解重合材の撹拌(および、BHET等の解重合体への分解)が進んだ後段の第2横型撹拌装置764Bでは、重合体PMの粘度または重合度が低くなっているため、回転板1021の間の距離を第1横型撹拌装置764Aより小さくできる。
【0125】
このように、回転板1021の間隔が小さい後段の第2横型撹拌装置764Bでは、重合体PMおよび解重合材が効率的に撹拌または混合される。ここで、第2横型撹拌装置764Bにおける解重合材供給口1014から供給される解重合材の量を、第1横型撹拌装置764Aにおける解重合材供給口1014から供給される解重合材の量より増やすことで、重合体PMおよび解重合材の機械的混合の効率を更に高められる。
【0126】
図18は、本開示に係るリサイクルシステムの第4実施形態を模式的に示す。前述の各実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。第4実施形態に係るリサイクルシステムは、部分解重合部730と、固液分離部740と、劣化材料回収部750と、メカニカルリサイクル装置900を備える。メカニカルリサイクル装置900は、
図5における第2実施形態と同様に構成される。また、部分解重合部730、固液分離部740、劣化材料回収部750は、
図7~
図12における第3実施形態と同様に構成される。
【0127】
本実施形態では、PETフレーク等の固体材料において品質が劣化しやすい表面等が部分的に分解されて、品質が比較的高い固体分が分離される。このように高品質な固体分にメカニカルリサイクル処理を施すことで、リサイクル品の品質を安定化できる。
【0128】
また、本実施形態によれば、部分解重合部730および固液分離部740の作用によって、品質が劣化しやすい表面部分を効果的に除去することで、品質の高い固体材料(固体分)が安定的に得られる。このため、典型的には品質の低い固体材料に好適なケミカルリサイクル装置100(
図7)を使用する必要がなくなり、それより構成が簡素で稼働コストが低いメカニカルリサイクル装置900によって迅速かつ効率的にリサイクルを行える。
【0129】
更に、本実施形態に係るリサイクルシステムは、部分解重合部730および固液分離部740の作用によって、品質が劣化しやすい表面部分を効果的に除去できるため、低い品質のPETフレーク等の固定材料も受け入れられる。このように、本実施形態によれば、幅広い固定材料に対応可能な汎用性の高いリサイクルシステムを提供できる。
【0130】
図19は、本開示に係るリサイクルシステムの第5実施形態を模式的に示す。前述の各実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。第5実施形態に係るリサイクルシステムは、
図5の第2実施形態における品質判定部710および材料選別部720を、部分解重合部730および固液分離部740によって置き換えたものである。
【0131】
固液分離部740によって分離された高品質の固体分は、品質改善効果は低いが装置が簡素なメカニカルリサイクル処理(メカニカルリサイクル装置900)によって効率的にリサイクルされ、固液分離部740によって分離された低品質の液体分は、品質改善効果が高いケミカルリサイクル処理(ケミカルリサイクル装置100)によって品質が高められながらリサイクルされる。なお、液体分は部分解重合部730において既に解重合されているため、ケミカルリサイクル装置100における解重合反応槽300を経ずに、異物除去装置340~360に直接的に供給されてもよい。この異物除去装置340~360において、液体分に含まれる汚染物質が効果的に除去される。
【0132】
図20は、本開示に係るリサイクルシステムの第6実施形態を模式的に示す。前述の各実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。第6実施形態に係るリサイクルシステムでは、部分解重合部730と同様の第1部分解重合部731および第2部分解重合部732が設けられ、固液分離部740と同様の第1固液分離部741および第2固液分離部742が設けられる。
【0133】
PETフレーク等の固体材料は、第1部分解重合部731および第1固液分離部741に供給される。第1固液分離部741によって分離された低品質の液体分は、劣化材料回収部750によって回収される。一方、第1固液分離部741によって分離された中品質の固体分は、第2部分解重合部732および第2固液分離部742に供給される。
【0134】
第2固液分離部742によって分離された高品質の固体分は、品質改善効果は低いが装置が簡素なメカニカルリサイクル処理(メカニカルリサイクル装置900)によって効率的にリサイクルされ、第2固液分離部742によって分離された中品質の液体分は、品質改善効果が高いケミカルリサイクル処理(ケミカルリサイクル装置100)によって品質が高められながらリサイクルされる。なお、液体分は第2部分解重合部732において既に解重合されているため、ケミカルリサイクル装置100における解重合反応槽300を経ずに、異物除去装置340~360に直接的に供給されてもよい。この異物除去装置340~360において、液体分に含まれる汚染物質が効果的に除去される。
【0135】
本実施形態では、第1固液分離部741によって分離された低品質の液体分がケミカルリサイクル装置100に供給されず、二段階目の第2固液分離部742によって分離された中品質の液体分がケミカルリサイクル装置100に供給されるため、ケミカルリサイクル装置100の負担を軽減できる。
【0136】
図5における第2実施形態で例示した品質判定部710および/または材料選別部720と、
図7における第3実施形態、
図18における第4実施形態、
図19における第5実施形態、
図20における第6実施形態で例示した部分解重合部730および/または固液分離部740は、様々な態様で組み合わされてもよい。以下では、そのような態様の具体例をいくつか示す。先述の各実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して同趣旨の説明を省略する。
【0137】
図21は、本開示に係るリサイクルシステムの第7実施形態を模式的に示す。本実施形態では、材料選別部720によって選別された高品質材料がメカニカルリサイクル装置900に供給され、材料選別部720によって選別された低品質材料が部分解重合部730および固液分離部740に供給される。そして、固液分離部740によって分離された高品質のPET等を含む固体分が、材料選別部720によって選別された高品質材料と共にメカニカルリサイクル装置900に供給される。
【0138】
本実施形態では、材料選別部720によって選別された高品質材料には、部分解重合部730による部分解重合処理が施されないので、当該部分解重合処理において良質なPET等が除去されることを防止できる。なお、本実施形態におけるメカニカルリサイクル装置900の代わりにケミカルリサイクル装置100が設けられてもよい。
【0139】
図22は、本開示に係るリサイクルシステムの第8実施形態を模式的に示す。本実施形態では、PETフレーク等の固体材料が、部分解重合部730および固液分離部740に供給される。固液分離部740によって分離された低品質の液体分は、劣化材料回収部750によって回収される。一方、固液分離部740によって分離された固体分は、品質判定部710および材料選別部720に供給される。
【0140】
材料選別部720によって選別された高品質材料は、品質改善効果は低いが装置が簡素なメカニカルリサイクル処理(メカニカルリサイクル装置900)によって効率的にリサイクルされ、材料選別部720によって選別された低品質材料は、品質改善効果が高いケミカルリサイクル処理(ケミカルリサイクル装置100)によって品質が高められながらリサイクルされる。
【0141】
本実施形態では、固液分離部740によって分離された低品質の液体分がケミカルリサイクル装置100に供給されず、材料選別部720によって選別された低品質材料(但し、固液分離部740によって分離された液体分より品質が高い)がケミカルリサイクル装置100に供給されるため、ケミカルリサイクル装置100の負担を軽減できる。
【0142】
図23は、本開示に係るリサイクルシステムの第9実施形態を模式的に示す。本実施形態では、PETフレーク等の固体材料が、品質判定部710および材料選別部720に供給される。材料選別部720によって選別された高品質材料は、第1部分解重合部731(高品質材料部分解重合部)および第1固液分離部741に供給される。第1固液分離部741によって分離された固体分は、メカニカルリサイクル装置900に供給され、第1固液分離部741によって分離された液体分は、ケミカルリサイクル装置100に供給される。材料選別部720によって選別された低品質材料は、第2部分解重合部732(低品質材料部分解重合部)および第2固液分離部742に供給される。第2固液分離部742によって分離された固体分は、ケミカルリサイクル装置100に供給され、第2固液分離部742によって分離された液体分は、劣化材料回収部750によって回収される。
【0143】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0144】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0145】
1 射出成形機、100 ケミカルリサイクル装置、200 重合体調整装置、300 解重合反応槽、340 異種樹脂除去装置、350 着色物除去装置、360 金属イオン除去装置、400 重合反応槽、500 重合促進装置、600 重合体供給部、710 品質判定部、720 材料選別部、730 部分解重合部、731 第1部分解重合部、732 第2部分解重合部、740 固液分離部、741 第1固液分離部、742 第2固液分離部、750 劣化材料回収部、810 部分解重合反応槽、820 固体材料供給部、830 解重合材供給部、840 解重合体排出部、850 固体分取出部、860 仕切り、870 撹拌翼、880 バッフル、900 メカニカルリサイクル装置、910 加熱器。