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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011622
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250117BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250117BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02J7/00 L
H02M7/12 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113845
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠二
(72)【発明者】
【氏名】増井 出
(72)【発明者】
【氏名】中村 公計
【テーマコード(参考)】
5G503
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA05
5G503FA06
5H006CA02
5H006CB08
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H770AA01
5H770BA02
5H770BA11
5H770BA20
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770GA13
5H770GA17
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770HA14W
5H770JA11W
5H770JA17Y
5H770QA11
(57)【要約】
【課題】蓄電池を充電する充電器としてモータ及びインバータを利用する場合に、蓄電池の充電効率を高めることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、蓄電池20を電源とするモータ30と、蓄電池20に接続され、モータ30の各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流を制御するインバータ40と、を備える。電力変換装置10は、各相巻線31U,31V,31Wを介して、単相交流電源60の一端を、インバータ40の3相のうち2相の上下アームスイッチに接続するとともに、単相交流電源60の他端を、残りの1相の上下アームスイッチに接続する接続部70を備える。3相のうち2相の上下アームスイッチは、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流の電流フィードバック制御を行うのに用いられる。残りの1相の上下アームスイッチは、単相交流電源60の出力電流を整流するのに用いられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線(31U,31V,31W)を有するモータ(30)と、
蓄電部(20)及び前記電機子巻線を電気的に接続し、前記電機子巻線に流れる電流を制御するインバータ(40)と、
を備える電力変換装置(10)において、
単相交流電源(60)の一端及び前記電機子巻線を電気的に接続する接続部(70)と、
前記単相交流電源の他端及び前記蓄電部を電気的に接続し、前記単相交流電源から前記蓄電部に充電電流が流れるように、前記単相交流電源の出力電流を整流する整流部(QUH,QUL,QVH,QVL,QWH,QWL,SH,SL)と、
を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記電機子巻線は、3相分の電機子巻線として、第1電機子巻線、第2電機子巻線及び第3電機子巻線を有し、
前記インバータは、各相の前記電機子巻線に対応して設けられた上下アームのスイッチ(QUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL)を有し、
前記第1電機子巻線、前記第2電機子巻線及び前記第3電機子巻線の第1端には、対応する相における前記上下アームのスイッチの接続点が電気的に接続されており、
前記接続部は、モータ駆動状態又は外部充電状態に切り替え可能に構成されており、
前記モータ駆動状態は、前記各電機子巻線の第2端が互いに電気的に接続された状態であり、
前記外部充電状態は、前記単相交流電源の一端が、前記第1電機子巻線の第2端側に電気的に接続されるとともに、前記単相交流電源の他端が、前記第2電機子巻線の第2端側に電気的に接続される状態であり、
前記整流部は、前記外部充電状態において前記第2電機子巻線に対応して設けられている前記上下アームのスイッチであり、前記単相交流電源の出力電圧における極性に応じてスイッチング制御されるスイッチである、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記接続部は、前記第3電機子巻線の第2端を、前記第1電機子巻線の第2端に電気的に接続し、かつ前記第2電機子巻線の第2端から電気的に遮断するように構成された切替スイッチ(71a,71b,71c)を有する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記接続部は、
前記第3電機子巻線の第2端側を、前記第1電機子巻線の第2端側に電気的に接続する第1電流経路(73a)と、
前記第3電機子巻線の第2端側を、前記第2電機子巻線の第2端側に電気的に接続する第2電流経路(73b)と、を有し、
前記切替スイッチとして、前記第1電流経路に設けられた第1切替スイッチ(71a)と、前記第2電流経路に設けられた第2切替スイッチ(71b)と、を有する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記外部充電状態において、前記第1切替スイッチ及び前記第2切替スイッチのうちオンするスイッチ及びオフするスイッチを、前記モータが有するロータ(32)の電気角に基づいて切り替える切替制御部を備える、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電気角に基づいて、前記各電機子巻線に流れるq軸電流が0又は0付近の値となるように、前記第1電機子巻線に接続された前記上下アームのスイッチ、及び前記第3電機子巻線に接続された前記上下アームのスイッチのスイッチング制御を行う電流制御部を備える、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電流制御部は、前記第1電機子巻線に接続された前記上下アームのスイッチのスイッチング制御と、前記第3電機子巻線に接続された前記上下アームのスイッチのスイッチング制御とを同期させる、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記モータの出力の規格値は、前記単相交流電源の出力電力の時間平均値よりも大きい、請求項7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ及びインバータを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータの直流側に接続された蓄電部を、単相交流電源により充電する技術が知られている。単相交流電源は、モータの電機子巻線及びインバータを介して蓄電部に電気的に接続される。この場合に、モータ及びインバータが、蓄電部を充電する充電器として利用される。このような技術の例として、特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-11993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ及びインバータを充電器として利用する際に、蓄電部を充電するため回路が電力変換装置に付属することがある。この場合、電力変換装置に付属する付属回路で損失が発生することに起因して、蓄電部の充電効率が低下することが懸念される。
【0005】
本開示の主たる目的は、蓄電部を充電する充電器としてモータ及びインバータを利用する場合に、蓄電部の充電効率を高めることができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
電機子巻線を有するモータと、
蓄電部及び前記電機子巻線を電気的に接続し、前記電機子巻線に流れる電流を制御するインバータと、
を備える電力変換装置において、
単相交流電源の一端及び前記電機子巻線を電気的に接続する接続部と、
前記単相交流電源の他端及び前記蓄電部を電気的に接続し、前記単相交流電源から前記蓄電部に充電電流が流れるように、前記単相交流電源の出力電流を整流する整流部と、
を備える。
【0007】
本開示では、単相交流電源の一端が電機子巻線に電気的に接続され、単相交流電源の他端が整流部に接続される。整流部では、蓄電部の充電電流が流れるように、単相交流電源の交流電流が整流され、蓄電部が充電される。この場合に、インバータのスイッチング制御が行われ、電機子巻線に流れる電流が制御されることにより、単相交流電源の出力電力を、蓄電部の充電電力に変換することが可能となる。これにより、モータ及びインバータとは別に、単相交流電源から入力される交流電力を変換するための回路を、電力変換装置に設けることが必要なくなる。そのため、単相交流電源により蓄電部を充電する場合に、電力変換装置において損失が発生することを抑制できる。その結果、蓄電部の充電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】外部充電制御の制御態様の一例を示す図。
図3】外部充電制御の制御態様の一例を示すタイムチャート。
図4】外部充電制御の制御態様の一例を示す図。
図5】外部充電制御の制御態様の一例を示すタイムチャート。
図6】外部充電制御中に発生するモータのトルクについて説明するための図。
図7】外部充電制御中に発生するモータのトルクについて説明するための図。
図8】外部充電制御の一例を示すタイムチャート。
図9】モータのトルクの発生が抑制されることを説明するための図。
図10】モータのトルクの発生が抑制されることを説明するための図。
図11】モータ制御装置が行う外部充電制御の機能ブロック図。
図12】外部充電制御の処理手順を示すフローチャート。
図13】相電流指令振幅の設定方法の一例を示す図。
図14】第2実施形態に係る電流フィードバック制御の制御例を示す図。
図15】同相駆動を説明するための図。
図16】インターリーブ駆動を説明するための図。
図17】外部充電制御中に各相巻線に流れる電流を示す図。
図18】外部充電制御中に発生する損失の低減効果を示す図。
図19】外部充電制御中に発生するモータのトルクの低減効果を示す図。
図20】第3実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図21】その他の実施形態に係る接続部の構成図。
図22】その他の実施形態に係る接続部の構成図。
図23】その他の実施形態に係る接続部の構成図。
図24】その他の実施形態に係る接続部の構成図。
図25】その他の実施形態に係る制御システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換装置は、例えば電気自動車又はハイブリッド車等の電動車両に搭載され、制御システムを構成する。
【0010】
図1に示すように、制御システムは、電力変換装置10と、蓄電池20とを備えている。蓄電池20は、充放電可能な2次電池であり、例えば百V以上となる端子電圧を有している。蓄電池20は、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0011】
電力変換装置10は、モータ30と、インバータ40とを備えている。モータ30は、蓄電池20を電源として駆動される。モータ30は、車載主機であり、ロータを有する。ロータは、車両の駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータ30は、ステータ巻線として3相分の巻線31U,31V,31Wを備えている。各相巻線31U,31V,31Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。モータ30は、例えばロータに界磁極としての永久磁石を有する永久磁石同期機である。
【0012】
インバータ40は、スイッチングデバイス部41と、モータ制御装置42とを備えている。スイッチングデバイス部41は、U,V,W相上アームスイッチQUH,QVH,QWHと、U,V,W相下アームスイッチQUL,QVL,QWLとの直列接続体を3相分備えている。モータ制御装置42は、モータ30を制御対象とし、各スイッチQUH~QWLのオンオフを制御する。
【0013】
本実施形態では、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられている。このため、各スイッチQUH~QWLの高電位側端子はドレインであり、低電位側端子はソースである。各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLには、ボディダイオードが内蔵されている。
【0014】
各相上アームスイッチQUH,QVH,QWHのドレインと、蓄電池20の正極端子とは、バスバー等の正極側母線Lpにより接続されている。各相下アームスイッチQUL,QVL,QWLのソースと、蓄電池20の負極端子とは、バスバー等の負極側母線Lnにより接続されている。
【0015】
各相において、上アームスイッチQUH,QVH,QWHのソースと、下アームスイッチQUL,QVL,QWLのドレインとには、バスバー等の導電部材32U,32V,32Wを介して、巻線31U,31V,31Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線31U,31V,31Wの第2端は、互いに中性点Oで接続可能とされている。
【0016】
インバータ40は、平滑コンデンサ43を備えている。平滑コンデンサ43は、正極側母線Lpと負極側母線Lnとを接続している。なお、平滑コンデンサ43は、インバータ40に内蔵されていてもよいし、インバータ40の外部に設けられていてもよい。
【0017】
電力変換装置10は、電圧センサ50と、相電流センサ51と、角度センサ52とを備えている。電圧センサ50は、平滑コンデンサ43の電圧を検出する。相電流センサ51は、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流を検出する。角度センサ52は、モータ30が有するロータの回転角(具体的には、電気角)を検出する。各センサ50~52の検出値は、モータ制御装置42に入力される。
【0018】
制御システムは、監視ユニット21を備えている。監視ユニット21は、蓄電池20の電圧、電流及びSOC等を検出する。
【0019】
モータ制御装置42は、監視ユニット21と互いに通信可能に構成されている。例えば、モータ制御装置42と監視ユニット21とは、各センサ50~52の検出値及び蓄電池20のSOC等の情報のやり取りが可能になっている。
【0020】
モータ制御装置42は、マイコン44を主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。マイコン44は、CPU(Central Processing Unit)を備えている。マイコン44が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、各マイコン44がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、各マイコン44は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図12等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0021】
モータ制御装置42は、各センサ50~52の検出値に基づいて、モータ30の制御量を指令値にフィードバック制御すべく、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。制御量は例えばトルクである。各相において、上アームスイッチQUH,QVH,QWHと下アームスイッチQUL,QVL,QWLとは交互にオンされる。これにより、モータ30が有するロータの回転動力が駆動輪に伝達され、車両が走行する。
【0022】
続いて、車両の外部に設けられた外部充電器により蓄電池20を充電する外部充電制御に関する構成について説明する。
【0023】
制御システムは、単相交流電源60及び外部制御装置61を備えている。単相交流電源60及び外部制御装置61は、蓄電池20を充電可能な外部充電器を構成している。外部充電器は、例えば定置式の充電器である。単相交流電源60は、例えば系統電源である。外部制御装置61は、マイコンを主体として構成される電子制御装置である。例えば、外部制御装置61は、単相交流電源60の出力電圧及び出力電流等を制御する。モータ制御装置42と外部制御装置61とは、単相交流電源60の出力電圧及び出力電流等の情報のやり取りが可能になっている。
【0024】
電力変換装置10は、接続部70を備えている。接続部70は、各相巻線31U,31V,31Wと単相交流電源60とを電気的に接続する。この場合に、制御システムが、モータ30及びインバータ40を介して、単相交流電源60から蓄電池20へと電流を流すことが可能な状態とされる。これにより、モータ30及びインバータ40が、蓄電池20を充電する充電器の一部として利用される。
【0025】
詳しくは、接続部70は、U,V,W相接続経路72U,72V,72Wと、UV相間経路73aと、VW相間経路73bとを有する。U相接続経路72Uは、U相巻線31Uの第2端を、単相交流電源60の第1端に電気的に接続する。W相接続経路72Wは、W相巻線31Wの第2端を、単相交流電源60の第2端に電気的に接続する。この場合、接続部70は、外部充電状態である。
【0026】
UV相間経路73aは、U相接続経路72UとV相接続経路72Vとを電気的に接続する。VW相間経路73bは、V相接続経路72VとW相接続経路72Wとを電気的に接続する。この場合、V相巻線31Vの第2端が、UV相間経路73aを介して、U相巻線31Uに電気的に接続される。また、V相巻線31Vの第2端が、VW相間経路73bを介して、W相巻線31Wの第2端に電気的に接続される。なお、UV相間経路73aが「第1電流経路」に相当し、VW相間経路73bが「第2電流経路」に相当する。
【0027】
接続部70は、第1切替スイッチ71aと、第2切替スイッチ71bとを有する。第1切替スイッチ71aは、UV相間経路73aに設けられている。第2切替スイッチ71bは、VW相間経路73bに設けられている。各切替スイッチ71a,71bは、オフされると双方向の電流の流通を阻止し、オンされると双方向の電流の流通を許容する。例えば、各切替スイッチ71a,71bは、機械式のリレーである。
【0028】
モータ制御装置42は、モータ30を回転駆動させる場合、外部充電制御を行わない場合又は単相交流電源60が車両側に接続されていない場合に、各切替スイッチ71a,71bをオンすることにより、各相巻線31U,31V,31Wの第2端を互いに中性点Oで電気的に接続する。これにより、各相巻線31U,31V,31WがY結線された状態となる。この場合、接続部70は、モータ駆動状態である。
【0029】
モータ制御装置42は、接続部70が外部充電状態である場合に、各切替スイッチ71a,71bのうちいずれか一方をオンするとともに、他方をオフする。これにより、モータ制御装置42は、V相巻線31Vの第2端を、U,W相巻線31U,31Wの第2端のうちいずれか一方に電気的に接続し、かつ、V相巻線31Vの第2端を他方から電気的に遮断するように、各相巻線31U,31V,31Wの第2端側の電流経路を切り替える。
【0030】
図2及び図3に、第1切替スイッチ71aがオンされ、かつ第2切替スイッチ71bがオフされた場合における外部充電制御の制御態様を示す。図2では、単相交流電源60の出力電圧が正極性である場合に、U,V相巻線31U,31Vに流れる電流Iu,Ivを破線で示し、W相巻線31Wに流れる電流Iwを一点鎖線で示している。ここでは、単相交流電源60の第1端の電位が第2端の電位よりも高い場合を正極性とし、第2端の電位が第1端よりも高い場合を負極性としている。図3では、各相において、巻線31U,31V,31Wの第2端から第1端に向けて電流が流れる方向を正とし、巻線31U,31V,31Wの第1端から第2端に向けて電流が流れる方向を負としている。
【0031】
各相電流Iu,Iv,Iwには、単相交流電源60の出力電流の周期Tと同じ周期の交流電流が流れる。各巻線31U,31Vにおいて、U,V相電流Iu,Ivは互いに同じ方向に流れる。W相電流Iwは、U,V相電流Iu,Ivとは反対方向に流れる。なお、単相交流電源60の出力電流の周期Tは、例えば50Hz又は60Hzである。
【0032】
モータ制御装置42は、U相上,下アームスイッチQUH,QULと、V相上,下アームスイッチQVH,QVLとのスイッチング制御を行うことにより、U,V相電流Iu,Ivを制御する。これにより、単相交流電源60から入力される交流電流及び交流電圧の力率が改善されたり、蓄電池20の充電電圧が調整されたりして、単相交流電源60の出力電力が蓄電池20の充電電力に変換される。
【0033】
モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電圧における極性に応じて、W相上,下アームスイッチQWH,QWLのスイッチング制御を行う。具体的には、モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電圧が正極性である場合、W相上アームスイッチQWHをオフするとともに、W相下アームスイッチQWLをオンする。一方、モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電圧が負極性である場合、W相上アームスイッチQWHをオンするとともに、W相下アームスイッチQWLをオフする。これにより、蓄電池20を充電する電流が流れるように、単相交流電源60の出力電流が整流される。
【0034】
図4及び図5に、第1切替スイッチ71aがオフされ、かつ第2切替スイッチ71bがオンされた場合における外部充電制御の制御態様を示す。図4では、単相交流電源60の出力電圧が正極性である場合に、V,W相巻線31V,31Wに流れるV,W相電流Iv,Iwを破線で示し、U相巻線31Uに流れるU相電流Iuを一点鎖線で示している。図5において、各相電流Iu,Iv,Iwの符号の定義は、先の図3と同様である。
【0035】
各巻線31V,31Wにおいて、V,W相電流Iv,Iwは互いに同じ方向に流れる。U相電流Iuは、V,W相電流Iv,Iwとは反対方向に流れる。
【0036】
モータ制御装置42は、先の図2及び図3で説明した場合と同様の制御を行う。具体的には、モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電力を蓄電池20の充電電力に変換すべく、V,W相上,下アームスイッチQUH,QVH,QUL,QVLのスイッチング制御を行う。また、モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電流を整流すべく、単相交流電源60の出力電圧における極性に応じてU相上,下アームスイッチQUH,QULのスイッチング制御を行う。
【0037】
なお、本実施形態において、V相巻線31Vが「第3電機子巻線」に相当する。第1切替スイッチ71aがオンされ、かつ第2切替スイッチ71bがオフされた場合の外部充電制御では、U相巻線31Uが「第1電機子巻線」に相当し、W相巻線31Vが「第2電機子巻線」し、W相上,下アームスイッチQWH,QWLが「整流部」に相当する。第1切替スイッチ71aがオフされ、かつ第2切替スイッチ71bがオンされた場合の外部充電制御では、W相巻線31Wが「第1電機子巻線」に相当し、U相巻線31Uが「第2電機子巻線」に相当し、U相上,下アームスイッチQUH,QULが「整流部」に相当する。
【0038】
ところで、外部充電制御中に各相巻線31U,31V,31Wに電流が流れると、モータ30が有するロータの電気角θeによっては、モータ30のトルクが発生することがある。
【0039】
図6及び図7を参照しつつ、具体的に説明する。ここでは、便宜上、U相電流Iu及びV相電流Ivが正方向に同じ大きさで流れており、W相電流Iwが流れていない場合について説明する。図6及び図7では、3相固定座標系において、モータ30が有するロータ32の電気角θeを、ロータ32が有する永久磁石のN極の方向として示している。例えば、ロータ32の電気角θeは、3相固定座標系におけるU相軸線を0°とし、時計回りに回転する方向を正として、0°≦θe≦360°の範囲で定めることが可能である。なお、以下では、便宜上、電気角θeの範囲を、-30°≦θe≦330°の範囲で表して説明する。
【0040】
図6では、3相固定座標系において、ロータ32が有する永久磁石のN極が-30°の方向に向いており、U相電流ベクトルIur及びV相電流ベクトルIvrの合計電流ベクトルISが60°の方向に流れている。つまり、U相電流ベクトルIur及びV相電流ベクトルIvrの合計電流ベクトルISが、ロータ32が有する永久磁石のN極と直交する方向に流れている。この場合、U相電流ベクトルIur及びV相電流ベクトルIvrの合計電流ベクトルISが、2相回転座標系(dq座標系)におけるq軸方向に流れる。ここで、d,q軸座標系は、3相固定座標系におけるU,V,W相電流Iu,Iv,Iwを、ロータ32の電気角θeに基づいて変換した座標系ある。合計電流ベクトルISがq軸方向に流れる場合、外部充電制御中においてモータ30のトルクが発生することが懸念される。
【0041】
この点、U相電流ベクトルIur及びV相電流ベクトルIvrの合計電流ベクトルISを、ロータ32が有する永久磁石のN極と同じ方向に流し、外部充電制御中におけるモータ30のトルクの発生を抑制することが考えられる。例えば、図7に示すように、3相固定座標系において、ロータ32が有する永久磁石のN極が60°の方向に向いている場合に、U相電流ベクトルIur及びV相電流ベクトルIvrの合計電流ベクトルISを60°の方向に流す。この場合、U,V相電流ベクトルIur,Ivrの合計電流ベクトルISがdq座標系における正のd軸方向に流れ、q軸電流が0になる。これにより、モータ30のトルクが発生することが抑制される。なお、U,V相電流ベクトルIur,Ivrの合計電流ベクトルISがdq座標系における負のd軸方向に流れ、q軸電流が0になることでも、外部充電制御中におけるモータ30のトルクの発生が抑制される。
【0042】
そこで、モータ制御装置42は、外部充電制御において、q軸電流が0となるように、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。
【0043】
具体的には、第1切替スイッチ71aがオフされ、かつ第2切替スイッチ71bがオンされた場合における外部充電制御(先の図4参照)において、ロータ32の電気角θeが‐30°で停止している場合を想定して説明する。
【0044】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが‐30°である場合、外部充電制御において、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの合計電流ベクトルISが3相固定座標系における‐30°又は150°の方向に流れるように、V,W相上,下アームスイッチQVH,QWH,QVL,QWLのスイッチング制御を行う。この場合、図8に示すように、W相電流Iwが0とされ、U相電流IuとV相電流Ivとが互いに逆位相の交流電流とされる。
【0045】
図9に、先の図8の時刻t1におけるU,V相電流ベクトルIur,Ivrと、ロータ32との関係を示す。時刻t1は、U相電流ベクトルIurが正のピーク値となるタイミングである。この場合、U相電流ベクトルIurとV相電流ベクトルIvrとの合計電流ベクトルISが、ロータ32における永久磁石のN極と同じ方向(-30°方向)に流れる。これにより、dq座標系において、合計電流ベクトルISが正のd軸方向に流れ、q軸電流が0とされる。そのため、外部充電制御中におけるモータ30のトルクの発生が抑制される。
【0046】
図10に、先の図8の時刻t2におけるU,V相電流ベクトルIur,Ivrと、ロータ32との関係を示す。時刻t2は、U相電流ベクトルIurが負のピーク値となるタイミングである。この場合、U相電流ベクトルIurとV相電流ベクトルIvrとの合計電流ベクトルISが、ロータ32における永久磁石のS極と同じ方向(150°方向)に流れる。これにより、dq座標系において、合計電流ベクトルISが負のd軸方向に流れ、q軸電流が0とされる。そのため、外部充電制御中におけるモータ30のトルクの発生が抑制される。
【0047】
モータ制御装置42は、第1切替スイッチ71aをオフし、かつ第2切替スイッチ71bをオンした場合の外部充電制御において、ロータ32の電気角θeが‐30°以外の角度であっても、モータ30のトルクの発生を抑制するように、V,W相上,下アームスイッチQVH,QWH,QVL,QWLのスイッチング制御を行うことが可能である。具体的には、モータ制御装置42は、-30°<θe<30°又は150°≦θe<210°である電気角θeに応じて、q軸電流が0となるように、V,W相上,下アームスイッチQVH,QWH,QVL,QWLのスイッチング制御を行うことが可能ある。
【0048】
詳しくは、ロータ32の電気角θeが-30°≦θe<30°又は150°≦θe<210°である場合、V相電流振幅Ivaが下式(eq1)であり、かつW相電流振幅Iwaが下式(eq2)であると、q軸電流が0になる。
【0049】
【数1】
ここで、上式(eq1),(eq2)において、Iaは、単相交流電源60の出力電流振幅である。
【0050】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが-30°≦θe<30°又は150°≦θe<210°である場合、V相電流振幅Ivaが、ロータ32の現状の電気角θeにおける上式(eq1)右辺の値になるように、V相上,下アームスイッチQVH,QVLのスイッチング制御を行う。また、モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが-30°≦θe<30°又は150°≦θe<210°である場合、W相電流振幅Iwaが、ロータ32の現状の電気角θeにおける上式(eq2)右辺の値になるように、W相上,下アームスイッチQWH,QWLのスイッチング制御を行う。
【0051】
モータ制御装置42は、第1切替スイッチ71aをオンし、かつ第2切替スイッチ71bをオフした場合の外部充電制御において、モータ30のトルクの発生を抑制可能である。具体的には、モータ制御装置42は、30°≦θe≦90°又は210°≦θe≦270°である電気角θeに応じて、q軸電流が0となるように、U,V相上,下アームスイッチQUH,QVH,QUL,QVLのスイッチング制御を行うことが可能である。
【0052】
詳しくは、ロータ32の電気角θeが30°≦θe≦90°又は210°≦θe≦270°である場合、U相電流振幅Iuaが下式(eq3)であり、かつV相電流振幅Ivaが下式(eq4)であると、q軸電流が0になる。
【0053】
【数2】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが30°≦θe≦90°又は210°≦θe≦270°である場合、U相電流振幅Iuaが、ロータ32の現状の電気角θeにおける上式(eq3)右辺の値となるように、U相上,下アームスイッチQUH,QULのスイッチング制御を行う。モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが30°≦θe≦90°又は210°≦θe≦270°である場合、V相電流振幅Ivaが、ロータ32の現状の電気角θeにおける下式(eq4)右辺の値となるように、V相上,下アームスイッチQVH,QVLのスイッチング制御を行う。
【0054】
続いて、図11を参照しつつ、モータ制御装置42が外部充電制御を行うための構成について説明する。ここでは、ロータ32の電気角θeが30°≦θe≦90°又は210°≦θe≦270°である場合を例として、具体的に説明する。この場合、モータ制御装置42は、第1切替スイッチ71aをオンし、かつ第2切替スイッチ71bをオフする。また、モータ制御装置42は、U,V相電流Iu,Ivの電流フィードバック制御を行うとともに、W相において単相交流電源60の出力電流を整流する整流制御を行う。以下では、まず、整流制御を行うための構成について説明する。
【0055】
モータ制御装置42は、整流制御部80を備えている。整流制御部80は、単相交流電源60から蓄電池20に充電電流が流れるように、単相交流電源60の出力電流を整流すべく、W相上,下アームスイッチQWH,QWLのスイッチング制御を行う。
【0056】
整流制御部80は、比較部81と、反転部82とを有する。比較部81は、単相交流電源60の出力電圧VACにおける極性に応じて、W相下アームスイッチQWLの操作信号を生成する。W相下アームスイッチQWLの操作信号は、オン操作信号又はオフ操作信号である。比較部81は、例えばコンパレータである。
【0057】
具体的には、比較部81の非反転入力端子には、単相交流電源60の出力電圧VACが入力される。比較部81は、単相交流電源60の出力電圧VACとして、外部制御装置61から取得した値を用いることが可能である。比較部81の反転入力端子には、出力電圧VACの極性の判定値として0が入力される。比較部81は、VAC>0である場合、W相下アームスイッチQWLのオン操作信号を出力する。一方、比較部81は、VAC≦0である場合、W相下アームスイッチQWLのオフ操作信号を出力する。
【0058】
反転部82は、W相下アームスイッチQWLの操作信号の論理を反転させることにより、W相上アームスイッチQWHの操作信号を生成する。
【0059】
続いて、U,V相電流Iu,Ivの電流フィードバック制御を行うための構成について説明する。
【0060】
モータ制御装置42は、電流指令値を設定する設定部83を備えている。ここでは、設定部83が、定電圧制御を行う一例を説明する。設定部83は、定電圧制御において、平滑コンデンサ43の電圧である電源電圧VDCが指令電圧VDCrefとなるように、電流指令値を設定する。ここでは、設定部83は、電流指令値として、U相指令電流Iu*及びV相指令電流Iv*を設定する。
【0061】
具体的には、設定部83は、電圧偏差算出部84と、電圧フィードバック制御部85と、電流振幅算出部86と、電流分配部87と、第1正弦乗算部88aと、第2正弦乗算部88bとを有する。電圧偏差算出部84には、指令電圧VDCrefと、電源電圧VDCとが入力される。例えば、電圧偏差算出部84は、指令電圧VDCrefとして、モータ制御装置42よりも上位の制御装置から取得した値を用いることが可能である。また、電圧偏差算出部84は、電源電圧VDCとして、電圧センサ50の検出値を用いることが可能である。電圧偏差算出部84は、指令電圧VDCrefから電源電圧VDCを減算することにより、電圧偏差ΔVを算出する。
【0062】
電圧フィードバック制御部85には、電圧偏差算出部84により算出された電圧偏差ΔVが入力される。電圧フィードバック制御部85は、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として、指令電流の実効値Ieを算出する。なお、電圧フィードバック制御部85で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0063】
電流振幅算出部86には、電圧フィードバック制御部85により算出された指令電流の実効値Ieが入力される。電流振幅算出部86は、指令電流の振幅Iatとして、実効値Ieに√2を乗算した値を算出する。
【0064】
電流分配部87には、電流振幅算出部86により算出された指令電流の振幅Iatと、ロータ32の電気角θeとが入力される。電流分配部87は、ロータ32の電気角θeとして、角度センサ52の検出値を用いることが可能である。電流分配部87は、指令電流の振幅Iat及び電気角θeに基づいて、各相巻線31U,31V,31Wに流れるq軸電流が0となるように、U相指令電流振幅Iua*及びV相指令電流振幅Iva*を算出する。U相指令電流振幅Iua*は、第1正弦乗算部88aに入力される。V相指令電流振幅Iva*は、第2正弦乗算部88bに入力される。
【0065】
例えば、電流分配部87は、上式(eq3),(eq4)の右辺において、Iaを指令電流の振幅Iatとし、θeを角度センサ52の検出値とすることにより、U,V相指令電流振幅Iua*,Iva*を算出することが可能である。
【0066】
各正弦乗算部88a,88bには、ロータ32の電気角θeの正弦(sinθe)が入力される。各正弦乗算部88a,88bは、ロータ32の電気角θeの正弦として、角度センサ52の検出値を用いて算出された値を用いることが可能である。第1正弦乗算部88aは、設定部83から入力されたU相指令電流振幅Iua*に、電気角θeの正弦「sinθe」を乗算することにより、U相指令電流Iu*を算出する。第2正弦乗算部88bは、設定部83から入力されたV相指令電流振幅Iva*に、電気角θeの正弦「sinθe」を乗算することにより、V相指令電流Iv*を算出する。
【0067】
モータ制御装置42は、第1電流偏差算出部89aと、第2電流偏差算出部89bとを備えている。第1電流偏差算出部89aには、第1正弦乗算部88aにより算出されたU相指令電流Iu*と、U相電流Iuとが入力される。第2電流偏差算出部89bには、第2正弦乗算部88bにより算出されたV相指令電流Iv*と、V相電流Ivとが入力される。第1,第2電流偏差算出部89a,89bは、U,V相電流Iu,Ivとして、相電流センサ51の検出値を用いることが可能である。
【0068】
第1電流偏差算出部89aは、U相指令電流Iu*からU相電流Iuを減算することにより、U相電流偏差ΔIuを算出する。第2電流偏差算出部89bは、V相指令電流Iv*からV相電流Ivを減算することにより、V相電流偏差ΔIvを算出する。
【0069】
モータ制御装置42は、第1電流フィードバック制御部90aと、第2電流フィードバック制御部90bとを備えている。第1電流フィードバック制御部90aには、第1電流偏差算出部89aにより算出されたU相電流偏差ΔIuが入力される。第1電流フィードバック制御部90aは、U相電流偏差ΔIuを0にフィードバック制御するための操作量として、U相指令電圧Vu*を算出する。
【0070】
第2電流フィードバック制御部90bには、第2電流偏差算出部89bにより算出されたV相電流偏差ΔIvが入力される。第2電流フィードバック制御部90bは、V相電流偏差ΔIvを0にフィードバック制御するための操作量として、V相指令電圧Vv*を算出する。なお、各電流フィードバック制御部90a,90bで用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0071】
モータ制御装置42は、第1変調部91aと、第2変調部91bとを備えている。各変調部91a,91bには、電源電圧VDCとして、電圧センサ50の検出値が入力される。第1変調部91aは、第1電流フィードバック制御部90aにより算出されたU相指令電圧Vu*を、電源電圧VDCで除算することにより、U相変調率Muを算出する。第2変調部91bは、第2電流フィードバック制御部90bにより算出されたV相指令電圧Vv*を、電源電圧VDCで除算することにより、V相変調率Mvを算出する。
【0072】
モータ制御装置42は、フィードフォワード制御部92を備えている。フィードフォワード制御部92は、各相変調率Mu,Muにフィードフォワード項を加算する処理を行う。
【0073】
具体的には、フィードフォワード制御部92は、絶対値取得部93と、第1フィードフォワード項算出部94と、第2フィードフォワード項算出部95と、選択部96と、第1加算部97aと、第2加算部97bとを有する。
【0074】
絶対値取得部93は、単相交流電源60の出力電圧VACの絶対値|VAC|を取得する。絶対値取得部93は、単相交流電源60の出力電圧VACとして、外部制御装置61から取得した値を用いることが可能である。
【0075】
第1フィードフォワード項算出部94には、絶対値取得部93により取得された単相交流電源60における出力電圧VACの絶対値|VAC|と、電源電圧VDCとしての電圧センサ50の検出値とが入力される。第1フィードフォワード項算出部94は、単相交流電源60における出力電圧VACの絶対値|VAC|を、電源電圧VDCで除算することにより、第1フィードフォワード項「|VAC|/VDC」を算出する。
【0076】
第2フィードフォワード項算出部95には、第1フィードフォワード項が入力される。第2フィードフォワード項算出部95は、1から第1フィードフォワード項を減算することにより、第2フィードフォワード項算「1-|VAC|/VDC」を算出する。
【0077】
選択部96には、第1,第2フィードフォワード項と、単相交流電源60の出力電圧VACが入力される。選択部96は、単相交流電源60の出力電圧VACとして、外部制御装置61から取得した値を用いることが可能である。選択部96は、VAC≦0である場合、第1フィードフォワード項「|VAC|/VDC」を選択する。一方、選択部96は、VAC>0である場合、第2フィードフォワード項「1-|VAC|/VDC」を選択する。例えば、選択部96は、マルチプレクサである。
【0078】
第1,第2加算部97a,97bには、第1,第2フィードフォワード項のうち選択部96により選択された方が入力される。第1加算部97aは、第1変調部91aにより算出されたU相変調率Muに、選択部96により選択されたフィードバック項を加算する。第2加算部97bは、第2変調部91bにより算出されたV相変調率Mvに、選択部96により選択されたフィードバック項を加算する。
【0079】
モータ制御装置42は、第1比較部98aと、第2比較部98bとを備えている。第1比較部98aには、フィードフォワード項が加算された後のU相変調率Muが入力される。第1比較部98aは、U相変調率Muと、キャリア信号との大小比較に基づいて、U相上,下アームスイッチQUH,QULの操作信号を生成する。U相上,下アームスイッチQUH,QULの操作信号は、U相上アームスイッチQUHと、U相下アームスイッチQULとを交互にオンさせる信号である。
【0080】
第2比較部98bには、フィードフォワード項が加算された後のV相変調率Mvが入力される。第2比較部98bは、V相変調率Mvと、キャリア信号との大小比較に基づいて、V相上,下アームスイッチQVH,QVLの操作信号を生成する。相上,下アームスイッチQVH,QVLの操作信号は、V相上アームスイッチQVHと、V相下アームスイッチQVLとを交互にオンさせる信号である。
【0081】
本実施形態では、第1比較部98a及び第2比較部98bは、キャリア信号として、互いに位相が180°ずれた信号を用いる。キャリア信号は、例えば三角波信号である。そして、各比較部98a,98bにより生成された操作信号に基づいて、各スイッチQUH,QVH,QUL,QVLが駆動される。この場合、U相上アームスイッチQUHのオンへの切り替えタイミングと、V相上アームスイッチQVHのオンへの切り替えタイミングとが、スイッチング周期で180°ずらされる。つまり、本実施形態では、U相上,下アームスイッチQUH,QULと、V相上,下アームスイッチQVH,QVLとがインターリーブ駆動される。
【0082】
なお、ロータ32の電気角θeが‐30°≦θe<30°又は150°≦θe<210°である場合にも、図11で説明した外部充電制御と同様の制御を行うことが可能である。この場合、整流制御部80、電流分配部87、各正弦乗算部88a,88b、各電流偏差算出部89a,89b、各電流フィードバック制御部90a,90b、各加算部97a,97b、各比較部98a,98bが以下のように機能する。
【0083】
整流制御部80は、単相交流電源60から蓄電池20に充電電流が流れるように、単相交流電源60の出力電流を整流すべくU相上,下アームスイッチQUH,QULのスイッチング制御を行う。
【0084】
電流分配部87は、V相指令電流振幅Iva*及びW相指令電流振幅Iwa*を算出する。例えば、電流分配部87は、上式(eq1),(eq2)の右辺において、Iaを指令電流の振幅Iatとし、θeを角度センサ52の検出値とすることにより、V,W相指令電流振幅Iva*,Iwa*を算出することが可能である。
【0085】
第1正弦乗算部88a、第1電流偏差算出部89a、第1電流フィードバック制御部90a、第1加算部97a及び第1比較部98aは、V相電流Ivの電流フィードバック制御を行う。この場合、第1比較部98aにより生成された操作信号に基づいて、V相上,下アームスイッチQVH,QVLのスイッチング制御が行われる。
【0086】
第2正弦乗算部88b、第2電流偏差算出部89b、第2電流フィードバック制御部90b、第2変調部91b、第2加算部97b及び第2比較部98bは、W相電流Iwの電流フィードバック制御を行う。この場合、第2比較部98bにより生成された操作信号に基づいて、W相上,下アームスイッチQWH,QWLのスイッチング制御が行われる。
【0087】
図12に、モータ制御装置42が行う外部充電制御の処理手順を示す。外部充電制御は、例えば、モータ制御装置42よりも上位の制御装置からの指令により行われる。ここでは、単相交流電源60の第1端がU相接続経路72Uに電気的に接続され、単相交流電源60の第2端がW相接続経路72Wに電気的に接続されているとする。
【0088】
ステップS10では、モータ30が有するロータ32の停止位置を調整する。例えば、ロータ32の電気角θeが-30°≦θe≦90°又は150°≦θe≦270°となるように、ロータ32を回転させる。この場合、第1,第2切替スイッチ71a,71bをオンし、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。これにより、各相巻線31U,31V,31Wに電流を流し、ロータ32を回転させ、ロータ32の停止位置を調整する。
【0089】
ステップS11では、調整後におけるロータ32の電気角θeが、30°≦θe≦90°又は210°≦θe≦270°であるか否かを判定する。ステップS11において肯定判定した場合、ステップS12に進む。ステップS12では、第1切替スイッチ71aをオンするとともに、第2切替スイッチ71bをオフする。
【0090】
ステップS11において否定判定した場合、調整後におけるロータ32の電気角θeが、-30°≦θe<30°又は150°≦θe<210°であると判定し、ステップS13に進む。ステップS13では、第1切替スイッチ71aをオフするとともに、第2切替スイッチ71bをオンする。なお、ステップS11,S12,S13の処理が「切替制御部」に相当する。
【0091】
ステップS14では、制御システムに異常が発生したか否かを判定する。例えば、図示しない漏電検出装置により、蓄電池20と設置部との間において漏電が発生していると判定された場合、制御システムに異常が発生したと判定する。ステップS14において肯定判定した場合、ステップS15に進み、外部充電制御を停止する。一方、ステップS15において否定判定した場合、ステップS16に進む。
【0092】
ステップS16では、蓄電池20が満充電状態であるか否かを判定する。具体的には、蓄電池20のSOCが所定の満充電判定値以上である場合に、蓄電池20が満充電状態であると判定する。ステップS16において肯定判定した場合、ステップS15に進む。一方、ステップS16において否定判定した場合、ステップS17に進む。
【0093】
ステップS17では、蓄電池20のSOCが所定値より小さいか否かを判定する。ステップS17において否定判定した場合、ステップS18に進む。ステップS18では、蓄電池20のSOCが所定範囲内であるか否かを判定する。例えば、所定範囲は、ステップS17の処理において用いた所定値と、所定値よりも大きい上限値とにより定められるSOCの範囲である。なお、ステップS16,S17,S18の処理において、蓄電池20のSOCとして、監視ユニット21から取得した値を用いることが可能である。
【0094】
ステップS17において肯定判定した場合、ステップS19に進み、定電流制御を行う。ステップS18において肯定判定した場合、ステップS20に進み、定電力制御を行う。ステップS18において否定判定した場合、ステップS21に進み、定電圧制御を行う。
【0095】
ステップS19,S20,S21の処理は、指令電流の実効値Ieを算出する処理である。ステップS19では、蓄電池20の充電電流が定電流となるように、指令電流の実効値Ieを算出する。ステップS20では、蓄電池20の充電電力が定電力となるように、指令電流の実効値Ieを算出する。ステップS21では、蓄電池20の充電電圧が定電圧となるように、指令電流の実効値Ieを算出する。なお、ステップS21において、モータ制御装置42は、先の図11で説明した電圧偏差算出部84及び電圧フィードバック制御部85として機能する。
【0096】
ステップS22では、指令電流の振幅Iatを設定する。この場合、モータ制御装置42は、先の図11で説明した電流振幅算出部86として機能する。
【0097】
ステップS23では、第1切替スイッチ71aをオンし、かつ第2切替スイッチ71bをオフしたか否かを判定する。ステップS23において肯定判定した場合、ステップS24に進む。一方、ステップS23において否定判定した場合、ステップS25に進む。
【0098】
ステップS24では、指令電流の振幅Iat及びロータ32の電気角θeに基づいて、各相巻線31U,31V,31Wに流れるq軸電流が0となるように、U,V相指令電流Iu*,Iv*を設定する。ステップS25では、指令電流の振幅Iat及びロータ32の電気角θeに基づいて、各相巻線31U,31V,31Wに流れるq軸電流が0となるように、V,W相指令電流Iv*,Iw*を設定する。ステップS24,S25において、モータ制御装置42は、先の図11で説明した電流分配部87及び各正弦乗算部88a,88bとして機能する。
【0099】
図13には、ロータ32の電気角θeに対応して定められる各相指令電流振幅Iua*,Iva*,Iwa*の一例を示す。図13の各相指令電流振幅Iua*,Iva*,Iwa*の波形は、上式(eq1),(eq2),(eq3),(eq4)におけるIaを、指令電流の振幅Iatとしたものである。各相において、相指令電流振幅Iua*,Iva*,Iwa*に、ロータ32の電気角θeの正弦「sinθe」を乗算したものを、相指令電流Iu*,Iv*,Iw*として設定する。
【0100】
なお、図13において、90°<θe<150°及び270°<θe<330°である領域Rにおいて、相指令電流が定められていないのは、先のステップS10の処理において、-30°≦θe≦90°又は150°≦θe≦270°の範囲内の値となるように、電気角θeを調整しているためである。
【0101】
ステップS26では、ステップS24又はS25の処理で設定された相指令電流に基づいて、電流フィードバック制御を行う。この場合、モータ制御装置42は、各電流偏差算出部89a,89b、各電流フィードバック制御部90a,90b、各変調部91a,91b、フィードフォワード制御部92及び各比較部98a,98bとして機能する。また、蓄電池20の充電電流が流れるように、単相交流電源60の出力電流を整流する制御を行う。この場合、モータ制御装置42は、整流制御部80として機能する。なお、ステップS24,S25,S26の処理が「電流制御部」に相当する。
【0102】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0103】
単相交流電源60が各相巻線31U,31V,31Wを介してインバータ40に電気的に接続される。この場合に、インバータ40が有する3相分の上下アームスイッチのうち、2相分の上下アームスイッチのスイッチング制御が行われ、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流が制御される。これにより、単相交流電源60から入力される交流電流及び交流電圧の力率が改善されたり、蓄電池20の充電電圧が調整されたりして、単相交流電源60の出力電力が蓄電池20の充電電力に変換される。つまり、モータ30及びインバータ40が、単相交流電源60の出力電力を蓄電池20の充電電力に変換する変換回路として利用される。そのため、モータ30及びインバータ40とは別に、単相交流電源60の出力電力を蓄電池20の充電電力に変換するための回路を設けることが必要なくなる。その結果、単相交流電源60により蓄電池20を充電する場合に、電力変換装置10において損失が発生することを抑制でき、蓄電池20の充電効率を高めることができる。
【0104】
3相のうち残りの相の上下アームスイッチのスイッチング制御が行われ、蓄電池20の充電電流が流れるように、単相交流電源60の交流電流が整流される。この場合、インバータ40が、単相交流電源60の出力電力を蓄電池20の充電電力に変換する変換回路として利用されることに加えて、単相交流電源60の出力電流を整流する整流回路としても利用される。これにより、モータ30及びインバータ40とは別に、単相交流電源60の出力電流を整流する整流回路を設けることが必要なくなる。そのため、単相交流電源60により蓄電池20を充電する場合に、電力変換装置10において損失が発生することを的確に抑制でき、蓄電池20の充電効率を的確に高めることができる。
【0105】
接続部70は、V相巻線31Vの第2端を、U,W相巻線31U,31Vの第2端のうちいずれか一方に電気的に接続し、かつ他方から電気的に遮断するように構成されている。この場合、蓄電池20の充電中にモータ30のトルクが発生することが抑制されるように、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流を制御することが可能となる。そのため、蓄電池20の充電中にモータ30のトルクが発生し、種々の不都合が発生することを抑制することができる。
【0106】
接続部70には、第1切替スイッチ71a及び第2切替スイッチ71bの2つのスイッチが設けられている。この場合、各切替スイッチ71a,71bのうちいずれか一方しか接続部70に設けられていない構成に比べて、蓄電池20の充電時においてモータ30のトルクの発生を抑制しつつ、電流フィードバック制御を行うことが可能なロータ32の電気角θeの範囲を広くすることができる。また、各相巻線31U,31V,31Wの第2端側に3つ以上のスイッチが設けられる構成に比べて、接続部70が有するスイッチの数を低減することができる。そのため、接続部70に設けられるスイッチの数を低減しつつ、モータ30のトルクが発生しないように蓄電池20を充電するのに好適な構成を実現することができる。
【0107】
外部充電制御において、第1切替スイッチ71a及び第2切替スイッチ71bのうちオンするスイッチ及びオフするスイッチが、モータ30が有するロータ32の電気角θeに基づいて切り替えられる。これにより、ロータ32の現状の電気角θeを、電流フィードバック制御によりモータ30のトルクの発生を抑制可能な範囲内に含まれるようにすることができる。そのため、蓄電池20の充電中にモータ30のトルクが発生することを的確に抑制することができる。
【0108】
第1切替スイッチ71a及び第2切替スイッチ71bのうちオンされた切替スイッチを介して、2相の電機子巻線が電気的に接続され、かつ2相の電機子巻線に対応して設けられた上下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。この場合に、ロータ32の現状の電気角θeに基づいて、各相巻線31U,31V,31Wに流れるq軸電流が0となるように、2相の上下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。これにより、蓄電池20の充電時において、モータ30のトルクが発生することを抑制するのに好適なスイッチング制御を行うことができる。
【0109】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電流フィードバック制御により駆動されるスイッチの駆動方式を変更する。
【0110】
外部充電制御中に各相巻線31U,31V,31Wに電流が流れることにより発生する磁束が、ロータ32側に漏れることに起因して、モータ30における鉄損が増大することが懸念される。この場合、蓄電池20の充電効率が低下することが懸念される。
【0111】
例えば、ロータ32のd軸方向には、磁束を通しにくい永久磁石が配置されている。一方、ロータ32のq軸方向には、永久磁石を保持する磁石保持部等の鉄で構成された部材が配置されている。この場合、ロータ32のq軸方向は、d軸方向よりも磁路が形成され易い方向となる。そのため、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの合計電流ベクトルISがq軸方向に向く場合に、各相巻線31U,31V,31Wに電流が流れることにより発生する磁束がロータ32側に漏れ易くなり、モータ30における鉄損が増大することが懸念される。
【0112】
上述した点に鑑みて、本実施形態では、モータ制御装置42は、電流フィードバック制御により駆動する2相分の上下アームスイッチにおいて、スイッチング制御を同期させる。
【0113】
ここでは、電流フィードバック制御により、U相上,下アームスイッチQUH,QULと、V相上,下アームスイッチQVH,QVLとが駆動される場合について説明する。第1比較部98a及び第2比較部98bは、キャリア信号として、位相が揃えられた信号を用いる。この場合、U相上アームスイッチQUHのオンへの切り替えタイミングと、V相上アームスイッチQVHのオンへの切り替えタイミングとが揃えられる。これにより、U相上,下アームスイッチQUH,QULのスイッチング制御と、V相上,下アームスイッチQVH,QVLのスイッチング制御とが同期した同相駆動が行われる。
【0114】
図14及び図15には、電流フィードバック制御が行われた場合の各相電流Iu,Iv,Iwの一例を示す。図14には、単相交流電源60の出力電流の1周期T分の各相電流Iu,Iv,Iwの波形を示す。ここでは、U相電流IuとV相電流Ivとの振幅が互いに同じとなるように制御された場合の一例を示している。図15は、U相上,下アームスイッチQUH,QULと、V相上,下アームスイッチQVH,QVLとが同相駆動された場合において、図14の期間Pを拡大して示すものである。U,V相上,下アームスイッチQUH,QVH,QUL,QVLのスイッチング制御に伴いリプル電流が生じる。同相駆動時では、U,V相において、リプル電流のピークとなるタイミングが同じとなる。
【0115】
図16には、U相上,下アームスイッチQUH,QULと、V相上,下アームスイッチQVH,QVLとがインターリーブ駆動された場合において、図14の期間Pを拡大して示している。この場合、U,V相において、リプル電流のピークとなるタイミングがずらされる。
【0116】
図17に、U,V相上,下アームスイッチQUH,QVH,QUL,QVLのスイッチング制御が行われた場合において、3相固定座標系における各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrを、スイッチの駆動方式及び各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数成分で比較して示す。スイッチの駆動方式として、U,V相上,下アームスイッチQUH,QVH,QUL,QVLがインターリーブ駆動された場合と、同相駆動された場合とを比較している。各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数成分として、単相交流電源60の出力電流の基本周波数(以下、周波数A)成分と、U,V相上,下アームスイッチQUH,QVH,QUL,QVLのスイッチング周波数(以下、周波数B)成分とを比較している。周波数Bは、周波数Aよりも高い。例えば、周波数Aが50Hzであり、周波数Bが36kHzである。
【0117】
各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数A成分における合計電流ベクトルISAは、各スイッチQUH,QVH,QUL,QVLがインターリーブ駆動されても、同相駆動されても、ロータ32の電気角θe(ここでは、240°)と同じ方向に流れるように制御可能である。
【0118】
一方、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数B成分における合計電流ベクトルISBは、各スイッチQUH,QVH,QUL,QVLがインターリーブ駆動された場合と、同相駆動された場合とでは異なる方向に流れる。詳しくは、各スイッチQUH,QVH,QUL,QVLがインターリーブ駆動された場合、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数B成分における合計電流ベクトルISBは、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数A成分における合計電流ベクトルISAに対して、電気角θeで90°ずれた方向に流れる。そのため、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数A成分における合計電流ベクトルISAを電気角θeと同じ方向に流した場合、周波数B成分の各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの合計電流ベクトルISBはq軸方向(ここでは、150°)に流れる。
【0119】
各スイッチQUH,QVH,QUL,QVLが同相駆動された場合、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数B成分における合計電流ベクトルISBは、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数A成分における合計電流ベクトルISAと同じ方向に流れる。そのため、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数A成分における合計電流ベクトルISAを電気角θeと同じ方向に流した場合、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数B成分における合計電流ベクトルISBはd軸方向(ここでは、240°)に流れる。このため、各スイッチQUH,QVH,QUL,QVLが同相駆動された場合、インターリーブ駆動された場合よりも、各相巻線31U,31V,31Wに電流が流れることにより発生する磁束が、ロータ32側に漏れることが抑制される。そのため、モータ30における鉄損が増大することを抑制することができる。
【0120】
図18に、外部充電制御中に発生する損失を、比較例、第1実施形態及び第2実施形態の場合で比較した図を示す。比較例の構成は、モータ及びインバータとは別に、電力変換装置に降圧コンバータ及び整流回路が付属されている構成である。比較例では、モータ及びインバータが、昇圧コンバータとして動作される。
【0121】
第1実施形態の結果は、電流フィードバック制御において、2相分の上下アームスイッチがインターリーブ駆動された場合の結果である。第2実施形態の結果は、電流フィードバック制御において、2相分の上下アームスイッチが同相駆動された場合の結果である。
【0122】
比較例では、電力変換装置に降圧コンバータ及び整流回路が付属されていることに起因して、付属回路の損失が発生している。第1実施形態及び第2実施形態では、モータ30及びインバータ40とは別に、蓄電池20を充電するための回路が電力変換装置10に付属されていないため、余分な損失が発生することが抑制されている。
【0123】
比較例では、モータ及びインバータが昇圧コンバータとして動作される際に、各相巻線の中性点側から直流電流が入力され、各相巻線を介してインバータ側へと電流が流れる。この場合、各相巻線の中性点からインバータへの電流流通経路のインダクタンスが小さくなり、リプル電流が増大することがある。一方、第1実施形態及び第2実施形態では、外部充電制御中において、各相巻線31U,31V,31Wのうちいずれか2相の巻線と、残りの1相の巻線との直列接続体に電流が流れる。この場合、外部充電制御中の電流流通経路のインダクタンスが大きくなり、リプル電流の増大が抑制されることがある。そのため、図18に示す例では、第1実施形態及び第2実施形態におけるモータ損失は、比較例に比べて低減されている。
【0124】
第2実施形態では、電流フィードバック制御により駆動される2相分の上下アームスイッチが同相駆動される。この場合、上述したように、各相巻線31U,31V,31Wに電流が流れることにより発生する磁束が、ロータ32側に漏れることが抑制される。これにより、ロータ32における鉄損の発生が抑制される。そのため、第2実施形態では、第1実施形態に比べて、モータ損失がさらに低減されている。
【0125】
第1実施形態及び第2実施形態では、外部充電制御中に発生する損失が低減されることにより、単相交流電源60の出力電力に対する蓄電池20に蓄えられた電力の比である充電効率を向上することができた。図18に示す例では、第1実施形態では、比較例に比べて、充電効率を6%向上することができた。第2実施形態では、比較例に比べて、充電効率を10%向上することができた。
【0126】
図19に、比較例、第1実施形態及び第2実施形態における外部充電制御の制御例を示す。図19において、(a)は単相交流電源60の出力電圧VACの波形を示し、(b)は単相交流電源60の出力電流IACの波形を示し、(c)は各相電流Iu,Iv,Iwの波形を示し、(d)は平滑コンデンサ43の電圧の波形を示し、(e)はモータ30の発生トルクTrqの波形を示す。
【0127】
第1実施形態及び第2実施形態では、モータ30の発生トルクTrqの大きさが、所定のトルク閾値Trqth以下に抑えられている。例えば、トルク閾値Trqthは、ロータ32と動力伝達可能に構成された駆動輪が回転し始めるトルクであり、駆動輪が回転し始めるトルクとして想定される範囲の上限値に設定されている。
【0128】
第2実施形態では、電流フィードバック制御により駆動される2相分の上下アームスイッチが同相駆動されることにより、第1実施形態に比べて、各相電流ベクトルIur,Ivr,Iwrの周波数B成分における合計電流ベクトルISBがq軸方向に流れることが抑制される。そのため、第2実施形態では、第1実施形態に比べて、モータ30の発生トルクTrqの変動幅が低減されている。
【0129】
ところで、電流フィードバック制御において、2相分の上下アームスイッチが同相駆動されると、各相巻線31U,31V,31Wに流れるリプル電流が、インターリーブ駆動される場合よりも増大することが懸念される。
【0130】
この点、本実施形態では、モータ30として、単相交流電源60の出力電力の時間平均値よりも大きい出力の規格値であるモータを用いている。例えば、規格値は、モータ30の定格出力、及びモータ30が出力可能な動力の上限値等のモータ30の仕様に応じて定められる値である。例えば、単相交流電源60の出力電力の時間平均値は、単相交流電源60の定格電流の実効値と、単相交流電源60の定格電圧の実効値との積である。
【0131】
本実施形態によれば、各相巻線31U,31V,31Wのリプル電流が増大することにより生じる不都合の発生を抑制することができる。そのため、電流フィードバック制御において、2相分の上下アームスイッチを同相駆動させるのに好適な構成を実現することができる。
【0132】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図20に示すように、インバータ40とは別に、単相交流電源60の出力電流を整流する整流部11が設けられる。
【0133】
整流部11は、上アーム整流スイッチSHと、下アーム整流スイッチSLとを備えている。本実施形態では、上アーム整流スイッチSH及び下アーム整流スイッチSLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはNチャネルMOSFETが用いられている。各整流スイッチSH,SLには、ボディダイオードが内蔵されている。
【0134】
上アーム整流スイッチSHのドレインと、蓄電池20の正極端子とは、正極側母線Lpにより接続されている。下アーム整流スイッチSLのソースと、蓄電池20の負極端子とは、負極側母線Lnにより接続されている。
【0135】
接続部70は、第1接続経路73と、第2接続経路74と、接続スイッチ75とを有する。第1接続経路73は、単相交流電源60の第1端と、各相巻線31U,31V,31Wの中性点Oとを電気的に接続する。第2接続経路74は、単相交流電源60の第2端と、上アーム整流スイッチSH及び下アーム整流スイッチSLの接続点とを電気的に接続する。
【0136】
接続スイッチ75は、第1接続経路73に設けられている。接続スイッチ75は、オフされると双方向の電流の流通を阻止し、オンされると双方向の電流の流通を許容する。例えば、接続スイッチ75は、機械式のリレーである。
【0137】
モータ制御装置42は、モータ30を回転駆動させる場合、外部充電制御を行わない場合又は単相交流電源60が車両側に接続されていない場合に、接続スイッチ75をオフする。一方、モータ制御装置42は、外部充電制御を行う場合に、接続スイッチ75をオンする。
【0138】
モータ制御装置42は、外部充電制御において、単相交流電源60の出力電圧における極性に応じて、上,下アーム整流スイッチSH,SLのスイッチング制御が行われる。具体的には、モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電圧が正極性である場合、上アーム整流スイッチSHをオフするとともに、下アーム整流スイッチSLをオンする。一方、モータ制御装置42は、単相交流電源60の出力電圧が負極性である場合、上アーム整流スイッチSHをオンするとともに、下アーム整流スイッチSLをオフする。
【0139】
モータ制御装置42は、外部充電制御において、単相交流電源60から入力される交流電流及び交流電圧の力率を改善しつつ、蓄電池20の充電電圧を調整すべく、各相上,下アームスイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLのスイッチング制御を行う。
【0140】
例えば、モータ制御装置42は、外部充電制御において、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流の大きさが等しくなるように、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。この場合、外部充電制御中にモータ30のトルクが発生することが抑制される。なお、モータ制御装置42は、モータ30のトルクが所定値以下となる範囲内において、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流の大きさが異なるように、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行ってもよい。
【0141】
本実施形態によれば、インバータ40の各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御が行われることにより、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流が制御される。これにより、単相交流電源60の出力電力が、蓄電池20の充電電力に変換される。そのため、モータ30及びインバータ40とは別に、単相交流電源60の出力電力を充電電力に変換するための回路が設けられることを抑制することができる。
【0142】
また、各整流スイッチSH,SLのスイッチング制御が行われることにより、蓄電池20の充電電流が流れるように、単相交流電源60の交流電流が整流される。この場合、単相交流電源60と整流部11とが、各相巻線31U,31V,31Wを介さずに電気的に接続される。これにより、3相分の上下アームスイッチのうちいずれか1相を整流素子として利用する場合に比べて、各整流スイッチSH,SLのスイッチング制御に伴い発生するノイズを低減することができる。
【0143】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0144】
図21に示すように、接続部70の構成を変更してもよい。ここでは、VW相間経路73bに第2切替スイッチ71bが設けられていない構成を示す。なお、図21において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0145】
接続部70は、VW相接続経路76と、VW相接続スイッチ77とを有する。単相交流電源60の第1端は、第1実施形態と同様に、U相接続経路72Uを介して、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続されている。VW相接続経路76は、単相交流電源60の第2端を、VW相間経路73bに電気的に接続する。つまり、単相交流電源60の第2端は、VW相接続経路76、VW相間経路73b及びW相接続経路72Wを介して、W相巻線31Wの第2端に電気的に接続されている。また、単相交流電源60の第2端は、VW相接続経路76、VW相間経路73b及びV相接続経路72Vを介して、V相巻線31Vの第2端に電気的に接続されている。
【0146】
VW相接続スイッチ77は、VW相接続経路76に設けられている。VW相接続スイッチ77は、オフされると双方向の電流の流通を阻止し、オンされると双方向の電流の流通を許容する。例えば、VW相接続スイッチ77は、機械式のリレーである。
【0147】
モータ制御装置42は、モータ30を回転駆動させる場合、外部充電制御を行わない場合又は単相交流電源60が車両側に接続されていない場合に、第1切替スイッチ71aをオンするとともに、VW相接続スイッチ77をオフする。
【0148】
一方、モータ制御装置42は、外部充電制御を行う場合に、第1切替スイッチ71aをオフするとともに、VW相接続スイッチ77をオンする。これにより、V相巻線31Vの第2端が、W相巻線31Wの第2端に電気的に接続され、かつU相巻線31Uの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。なお、本実施形態において、W相巻線31Wが「第1電機子巻線」に相当し、U相巻線31Uが「第2電機子巻線」に相当し、V相巻線31Vが「第3電機子巻線」に相当する。
【0149】
本実施形態では、ロータ32の電気角θeが-30°≦θe≦30°又は150°≦θe≦210°である場合に、外部充電制御中にモータ30のトルクの発生が抑制されるように、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流を制御することが可能となる。この場合、モータ制御装置42は、先の図12で説明した外部充電制御の処理を以下のように変更して実行する。
【0150】
ステップS10では、ロータ32の電気角θeが-30°≦θe≦30°又は150°≦θe≦210°の範囲内の値となるように、ロータ32を回転させる。この場合、第1切替スイッチ71aをオンした状態で、各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。これにより、各相巻線31U,31V,31Wに電流を流し、ロータ32を回転させ、ロータ32の停止位置を調整する。ステップS10の処理の後、ステップS11の処理を行わずに、ステップS12に進む。
【0151】
ステップS12では、第1切替スイッチ71aをオフするとともに、VW相接続スイッチ77をオンする。
【0152】
ステップS22の処理の後、ステップS23の処理を行わずに、ステップS24に進む。ステップS24の処理は、第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、ステップS13,S25の処理を行わない。
【0153】
図22に示すように、接続部70の構成を変更してもよい。ここでは、外部充電制御中にモータ30のトルクの発生が抑制されるように、各相巻線31U,31V,31Wに電流を流すことが可能な電気角θeの範囲が、-30°≦θe≦330°である構成の一例を示す。なお、図22において、先の図1,21に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0154】
接続部70は、第3切替スイッチ71cと、UW相間経路73cと、VW相切替スイッチ78とを有する。単相交流電源60の第1端は、第1実施形態と同様に、U相接続経路72Uを介して、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続されている。VW相切替スイッチ78は、3つの端子を有する。VW相切替スイッチ78の第1端子が単相交流電源60の第2端に電気的に接続され、第2端子がV相接続経路72Vに電気的に接続され、第3端子がW相接続経路72Wに電気的に接続されている。VW相切替スイッチ78は、第1端子を、第2端子又は第3端子に電気的に接続する。VW相切替スイッチ78は、例えば双投式のスイッチである。
【0155】
UW相間経路73cは、U相接続経路72UとW相接続経路72Wとを電気的に接続する。第3切替スイッチ71cは、UW相間経路73cに設けられている。第3切替スイッチ71cは、オフされると双方向の電流の流通を阻止し、オンされると双方向の電流の流通を許容する。例えば、第3切替スイッチ71cは、機械式のリレーである。
【0156】
モータ制御装置42は、モータ30を回転駆動させる場合、外部充電制御を行わない場合又は単相交流電源60が車両側に接続されていない場合に、第1切替スイッチ71a、第2切替スイッチ71b及び第3切替スイッチ71cのうち少なくとも2つをオンする。一方、モータ制御装置42は、外部充電制御を行う場合に、ロータ32の電気角θeに基づいて、第1切替スイッチ71a、第2切替スイッチ71b、第3切替スイッチ71c及びVW相切替スイッチ78を制御する。
【0157】
具体的には、モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが第1範囲内である場合、第1切替スイッチ71aをオンし、第2切替スイッチ71b及び第3切替スイッチ71cをオフし、VW相切替スイッチ78の第1端子を第3端子に電気的に接続する。ここで、第1範囲は、30°≦θe<90°及び210°≦θe<270°である。これにより、V相巻線31Vの第2端が、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続され、かつW相巻線31Wの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。この場合では、U相巻線31Uが「第1電機子巻線」に相当し、W相巻線31Wが「第2電機子巻線」に相当し、V相巻線31Vが「第3電機子巻線」に相当する。
【0158】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが第2範囲内である場合、第2切替スイッチ71bをオンし、第1切替スイッチ71a及び第3切替スイッチ71cをオフし、VW相切替スイッチ78の第1端子を第2端子に電気的に接続する。ここで、第2範囲は、-30°≦θe<30°及び150°≦θe<210°である。これにより、W相巻線31Wの第2端が、V相巻線31Vの第2端に電気的に接続され、U相巻線31Uの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。この場合では、V相巻線31Vが「第1電機子巻線」に相当し、U相巻線31Uが「第2電機子巻線」に相当し、W相巻線31Wが「第3電機子巻線」に相当する。
【0159】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが第3範囲内である場合、第3切替スイッチ71cをオンし、第1切替スイッチ71a及び第2切替スイッチ71bをオフし、VW相切替スイッチ78の第1端子を第2端子に電気的に接続する。ここで、第3範囲は、90°≦θe<150°及び270°≦θe≦330°である。これにより、W相巻線31Wの第2端が、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続され、V相巻線31Vの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。この場合では、U相巻線31Uが「第1電機子巻線」に相当し、V相巻線31Vが「第2電機子巻線」に相当し、W相巻線31Wが「第3電機子巻線」に相当する。
【0160】
本実施形態では、上述したように、ロータ32の電気角θeに基づいて、各切替スイッチ71a~71c,78が制御されることにより、接続部70の電流経路が切り替えられる。これにより、外部充電制御中にモータ30のトルクの発生が抑制されるように、各相巻線31U,31V,31Wに流れる電流を制御することが可能となる。この場合、モータ制御装置42は、先の図12で説明した外部充電制御の処理を以下のように変更して実行する。
【0161】
ステップS10~S13の処理に代えて、各切替スイッチ71a~71c,78を制御する切替処理を行う。切替処理では、ロータ32の現状の電気角θeが、第1範囲、第2範囲及び第3範囲のうちいずれであるかに応じて、上述したように各切替スイッチ71a~71c,78を制御する。そのため、本実施形態では、ステップS10のロータ32の停止位置を調整する処理を行わなくてもよい。
【0162】
ステップS23~S25の処理代えて、各相巻線31U,31V,31Wに流れるq軸電流が0となるように、相指令電流を設定する設定処理を行う。設定処理では、ロータ32の現状の電気角θeが、第1範囲、第2範囲及び第3範囲のうちいずれであるかに応じて、相指令電流を設定する相を変更する。
【0163】
具体的には、ロータ32の現状の電気角θeが第1範囲内である場合、U,V相指令電流Iu*,Iv*を設定する。ロータ32の現状の電気角θeが第2範囲内である場合、V,W相指令電流Iv*,Iw*を設定する。ロータ32の現状の電気角θeが第3範囲内である場合、U,W相指令電流Iu*,Iw*を設定する。
【0164】
ステップS26では、設定処理で設定した相指令電流に基づいて、電流フィードバック制御を行う。また、3相のうち電流フィードバック制御を行う相以外の相における上下アームスイッチを用いて、単相交流電源60から蓄電池20に充電電流が流れるように、単相交流電源60の出力電流を整流する制御を行う。
【0165】
図23に示すように、接続部70の構成を変更してもよい。ここでは、先の図22で説明したようにステップS10の処理を行わなくてもよい構成の変形例を示す。なお、図22において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0166】
接続部70は、第1電源経路100と、U,V,W相第1経路101U,101V,101Wと、U,V,W相第1スイッチ102U,102V,102Wとを有する。第1電源経路100は、単相交流電源60の第1端を、U相第1経路101Uを介して、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続する。U相第1経路101Uには、U相第1スイッチ102Uが設けられている。
【0167】
V相第1経路101Vは、V相巻線31Vの第2端を、U相第1経路101UのうちU相第1スイッチ102Uよりも単相交流電源60側の部分に電気的に接続する。つまり、V相巻線31Vの第2端は、U,V相第1経路101U,101V及び第1電源経路100を介して、単相交流電源60の第1端に電気的に接続されている。V相第1経路101Vには、V相第1スイッチ102Vが設けられている。
【0168】
W相第1経路101Wは、W相巻線31Wの第2端を、V相第1経路101VのうちV相第1スイッチ102Vよりも単相交流電源60側の部分に電気的に接続する。つまり、W相巻線31Wの第2端は、U,V,W相第1経路101U,101V,101W及び第1電源経路100を介して、単相交流電源60の第1端に電気的に接続されている。W相第1経路101Wには、W相第1スイッチ102Wが設けられている。
【0169】
本実施形態において、UV相間経路73aは、U相第1経路101UのうちU相第1スイッチ102UよりもU相巻線31U側の部分と、V相第1経路101VのうちV相第1スイッチ102VよりもV相巻線31V側の部分とを電気的に接続する。VW相間経路73bは、V相第1経路101VのうちV相第1スイッチ102VよりもV相巻線31V側の部分と、W相第1経路101WのうちW相第1スイッチ102WよりもW相巻線31W側の部分とを電気的に接続する。
【0170】
接続部70は、第2電源経路103と、U,V,W相第2経路104U,104V,104Wと、U,V,W相第2スイッチ105U,105V,105Wとを有する。第2電源経路103は、単相交流電源60の第2端を、U,V,W相第2経路104U,104V,104Wの第1端に電気的に接続する。
【0171】
UV相間経路73aのうち第1切替スイッチ71aよりもU相第1経路101U側の部分に、U相第2経路104Uの第2端が電気的に接続されている。U相第2経路104Uには、U相第2スイッチ105Uが設けられている。
【0172】
VW相間経路73bのうち第2切替スイッチ71bよりもV相第1経路101V側の部分に、V相第2経路104Vの第2端が電気的に接続されている。V相第2経路104Vには、V相第2スイッチ105Vが設けられている。
【0173】
W相第1経路101WのうちW相第1スイッチ102WよりもW相巻線31W側の部分に、W相第2経路104Wの第2端が電気的に接続されている。W相第2経路104Wには、W相第2スイッチ105Wが設けられている。
【0174】
モータ制御装置42は、モータ30を回転駆動させる場合、外部充電制御を行わない場合又は単相交流電源60が車両側に接続されていない場合に、第1,第2切替スイッチ71a,71bをオンするとともに、各相第1,第2スイッチ102U,102V,102W,105U,105V,105Wをオフする。一方、モータ制御装置42は、外部充電制御を行う場合に、ロータ32の電気角θeに基づいて、各スイッチ71a,71b,102U,102V,102W,105U,105V,105Wを制御する。
【0175】
例えば、モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeに基づいて、各スイッチ71a,71b,102U,102V,102W,105U,105V,105Wを以下のように切り替える。
【0176】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが第1範囲内である場合、第1切替スイッチ71a、U相第1スイッチ102U及びW相第2スイッチ105Wをオンするとともに、第2切替スイッチ71b、V,W相第1スイッチ102V,102W及びU,V相第2スイッチ105U,105Vをオフする。これにより、V相巻線31Vの第2端が、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続され、かつW相巻線31Wの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。
【0177】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが第2範囲内である場合、第2切替スイッチ71b、V相第1スイッチ102V及びU相第2スイッチ105Uをオンするとともに、第1切替スイッチ71a、U,W相第1スイッチ102U,102W及びV,W相第2スイッチ105V,105Wをオフする。これにより、W相巻線31Wの第2端が、V相巻線31Vの第2端に電気的に接続され、U相巻線31Uの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。
【0178】
モータ制御装置42は、ロータ32の電気角θeが第3範囲内である場合、U,W相第1スイッチ102U,102W及びV相第2スイッチ105Vをオンするとともに、第1,第2切替スイッチ71a,71b、V相第1スイッチ102V及びU,W相第2スイッチ105U,105Wをオフする。これにより、W相巻線31Wの第2端が、U相巻線31Uの第2端に電気的に接続され、V相巻線31Vの第2端から電気的に遮断されるように、接続部70の電流経路が切り替えられる。
【0179】
・先の図1,20~23において示した接続部70の各スイッチは、機械式リレーに代えて、半導体スイッチング素子としてもよい。図24には、第1切替スイッチ71a及び第2切替スイッチ71bを、一対のNチャネルMOSFETにより構成した一例を示す。図24では、第1,第2切替スイッチ71a,71bを構成する各スイッチは、互いのドレインが接続されている。なお、各スイッチの互いのソースを接続することにより、第1,第2切替スイッチ71a,71bを構成してもよい。
【0180】
図25に示すように、電力変換装置10は、DCDCコンバータ120を備えていてもよい。本実施形態において、DCDCコンバータ120は、絶縁型のDCDCコンバータである。DCDCコンバータ120は、蓄電池20及びインバータ40の間を電気的に絶縁しつつ、蓄電池20及びインバータ40間の電力伝達を行う。
【0181】
DCDCコンバータ120は、DAB(Dual Active Bridge)方式のものであり、第1フルブリッジ回路121と、第2フルブリッジ回路123と、各フルブリッジ回路121,123の間の電力伝達を行うトランス122とを備えている。トランス122は、第1フルブリッジ回路121に接続された第1コイル122Aと、第2フルブリッジ回路123に接続された第2コイル122Bと、各コイル122A,122Bを磁気結合するコア122Cとを備えている。第1コイル122Aを第1フルブリッジ回路121に電気的に接続する電気経路と、第2コイル122Bを第2フルブリッジ回路123に電気的に接続する電気経路とには、受動素子であるコンデンサ及びインダクタが設けられている。なお、DCDCコンバータ120は、他の方式(例えばLLC方式)のものであってもよい。
【0182】
電力変換装置10は、正極側システムメインリレー130pと、負極側システムメインリレー130nとを備えている。正極側システムメインリレー130pは、正極側母線Lpのうち蓄電池20及びインバータ40の間の部分に設けられている。負極側システムメインリレー130nは、負極側母線Lnのうち蓄電池20及びインバータ40の間の部分に設けられている。例えば、各システムメインリレー130p,130nは、機械式のリレーである。
【0183】
第1フルブリッジ回路121は、正極側母線Lpのうち正極側システムメインリレー130pよりもインバータ40側と、負極側母線Lnのうち負極側システムメインリレー130nよりもインバータ40側とに接続されている。第2フルブリッジ回路123は、正極側母線Lpのうち正極側システムメインリレー130pよりも蓄電池20側と、負極側母線Lnのうち負極側システムメインリレー130nよりも蓄電池20側とに接続されている。
【0184】
各フルブリッジ回路121,123は、上下アームのスイッチと、コンデンサとにより構成されている。各フルブリッジ回路121,123のスイッチは、半導体スイッチング素子であり、具体的にはNチャネルMOSFETである。モータ制御装置42は、DCDCコンバータ120を動作させる場合、各システムメインリレー130p,130nをオフする。
【0185】
・第1実施形態及び第2実施形態において、モータ制御装置42は、モータ30のトルクが所定値以下となる範囲内で、q軸電流が0付近の値となるように、電流フィードバック制御を行ってもよい。例えば、所定値は、ユーザに違和感を与えない程度の小さいトルクである。この場合でも、蓄電池20の充電中にモータ30のトルクが発生し、種々の不都合が発生することを抑制することができる。
【0186】
・各スイッチQUH~QWL,SH,SLとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の高電位側端子がコレクタとなり、低電位側端子がエミッタとなる。各スイッチQUH~QWL,SH,SLには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続される。
【0187】
モータ30の各相巻線は、Y結線されるものに限らず、Δ結線されるものであってもよい。この場合に、接続部70を、Δ結線された各相巻線と単相交流電源60とを電気的に接続するように構成することが可能である。これにより、モータ30の各相巻線がΔ結線されている場合であっても、モータ30及びインバータ40を、蓄電池20を充電する充電器の一部として利用することが可能である。
【0188】
・外部充電器による充電対象となる蓄電部としては、蓄電池に限らず、例えば、大容量の電気二重層キャパシタ、又は蓄電池及び電気二重層キャパシタの双方を備えるものであってもよい。
【0189】
・電力変換装置が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、電力変換装置の搭載先は、移動体に限らず、定置式の装置であってもよい。
【0190】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0191】
10…電力変換装置、20…蓄電池、30…モータ、31U,31V,31W…U,V,W相巻線、40…インバータ、60…単相交流電源、70…接続部。
図1
図2
図3
図4
図5
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