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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011628
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20250117BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20250117BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B60W50/02
B60L15/20 J
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113852
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 春紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一
【テーマコード(参考)】
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BA62
3D241BA63
3D241BA64
3D241BB03
3D241CD24
3D241DB01Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC01Z
3D241DC25Z
3D241DC31Z
3D241DD11Z
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA09
5H125CA11
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】自動運転キットからの指令に基づいて電源モードを変更可能な車両において、車両の電源モードの変更が適切な状況で行われやすくする。
【解決手段】車両が、自動運転キットからの自動運転に関する指令を受信可能に構成される車両プラットフォームを備える。自動運転キットは、車両プラットフォームの電源モードをウェイクモードへ移行することを要求するウェイク指令を車両プラットフォームへ送信するように構成される。車両プラットフォームは、シフトレバーがパーキングを示し、かつ、車両の車速が0km/hである場合にのみ、ウェイク指令によってウェイクモードへ移行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転キットからの自動運転に関する指令を受信可能に構成される車両プラットフォームを備える車両であって、
前記車両プラットフォームは、複数の第1制御装置を含むベース車両と、第2制御装置を含む車両制御インターフェースボックスとを備え、
前記複数の第1制御装置は、少なくとも1つのボディ系制御装置を含み、
前記ベース車両は、シフトレバーをさらに備え、
前記自動運転キットは、第3制御装置を備え、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置および前記第3制御装置の両方と通信可能に構成され、
前記車両プラットフォームの電源モードは、前記複数の第1制御装置および前記第2制御装置が電源オフの状態であるスリープモードと、前記複数の第1制御装置は所定のボディ系制御装置を除いて起動しておらず、かつ、前記第2制御装置が起動している状態であるウェイクモードと、前記複数の第1制御装置および前記第2制御装置が電源オンの状態である運転中モードとを含み、
前記自動運転キットは、前記車両プラットフォームの電源モードを前記ウェイクモードへ移行することを要求するウェイク指令を前記車両プラットフォームへ送信するように構成され、
前記車両プラットフォームは、前記シフトレバーがパーキングを示し、かつ、前記車両の車速が0km/hである場合にのみ、前記ウェイク指令によって前記ウェイクモードへ移行する、車両。
【請求項2】
前記運転中モードにおいて前記車両制御インターフェースボックスが前記自動運転キットから前記ウェイク指令を受信すると、前記第2制御装置は、前記シフトレバーがパーキングを示していることと、前記車両の車速が0km/hであることとの両方の要件を同時に満たすか否かを判断し、両方の要件を同時に満たすと判断された場合には、前記第2制御装置が、前記ウェイク指令に従う電源モード変更を前記第1制御装置に要求し、
前記第1制御装置は、前記第2制御装置からの要求に応じて、前記車両プラットフォームの電源モードを変更する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両は、システムの作動/停止を切り替えるためのユーザ操作を受け付ける起動スイッチをさらに備え、
前記起動スイッチが停止を示すときには、前記シフトレバーがパーキングを示し、かつ、前記車両の車速が0km/hである状態で前記車両プラットフォームの電源モードが前記スリープモードになっており、
前記起動スイッチが停止を示すときには、前記自動運転キットと前記車両制御インターフェースボックスとの間での通信は行われず、
前記起動スイッチが停止から作動に切り替わった場合には、前記自動運転キットが、前記車両制御インターフェースボックスとの通信を開始し、前記ウェイク指令を前記車両制御インターフェースボックスへ送信する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記自動運転キットは、前記車両プラットフォームの電源モードを前記運転中モードへ移行することを要求するドライブ指令を前記車両制御インターフェースボックスへさらに送信するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記第1制御装置は、前記ベース車両に関する車両情報を前記第2制御装置へ送信するように構成され、
前記第2制御装置と前記第3制御装置との間の通信には、API(Application Program Interface)で定義されたAPI信号が使用され、
前記API信号は、前記ベース車両に対する指令を示すAPIコマンドと、前記ベース車両の状態を示すAPIステータスとを含み、
前記第2制御装置は、前記第3制御装置からの前記APIコマンドを前記第1制御装置が実行可能な信号に変換して、変換後の前記信号を前記第1制御装置へ送信するように構成され、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置からの前記車両情報を用いて前記APIステータスを取得し、取得された前記APIステータスを前記第3制御装置へ送信するように構成され、
前記APIコマンドは、前記車両プラットフォームの電源モード制御に関する電源モードコマンドを含み、
前記電源モードコマンドは、
前記車両プラットフォームの電源モードの変更を要求しない第1の値と、
前記ウェイク指令に相当する第2の値と、
前記ドライブ指令に相当する第3の値と、
のいずれかを示し、
前記第3制御装置が前記第2の値または前記第3の値を示す前記電源モードコマンドを前記第2制御装置へ送信してから所定時間が経過しても、当該電源モードコマンドに従う電源モード変更が行われない場合には、前記第3制御装置は、前記電源モードコマンドに前記第1の値を設定してから、再度、前記第2の値または前記第3の値が設定された前記電源モードコマンドを前記第2制御装置へ送信する、請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-177807号公報(特許文献1)には、ルーフトップに自動運転キットが取り付けられた車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-177807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源モードによって電源供給状況が変わる車両が知られている。例えば、ある電源モードでは、車両に搭載された全ての制御装置に電力が供給され、別の電源モードでは、一部の制御装置にのみ電力が供給されてもよい。自動運転キットを備える車両は、自動運転キットからの指令に従って車両制御を実行できる。そこで、自動運転キットからの指令によって車両の電源モードを変更することが考えられる。しかしながら、自動運転キットが常に正しい指令を送るとは限らない。自動運転キットからの指令に基づいて電源モードが変更される車両において、例えば自動運転キットのソフトウェア不具合(例えば、バグ)によって自動運転キットから正しくない指令が送られると、車両の電源モードの変更が適切でない状況で行われる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動運転キットからの指令に基づいて電源モードを変更可能な車両において、車両の電源モードの変更が適切な状況で行われやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る車両は、自動運転キットからの自動運転に関する指令を受信可能に構成される車両プラットフォームを備える。車両プラットフォームは、複数の第1制御装置を含むベース車両と、第2制御装置を含む車両制御インターフェースボックスとを備える。複数の第1制御装置は、少なくとも1つのボディ系制御装置を含む。ベース車両はシフトレバーをさらに備える。自動運転キットは第3制御装置を備える。第2制御装置は、第1制御装置および第3制御装置の両方と通信可能に構成される。車両プラットフォームの電源モードはスリープモードとウェイクモードと運転中モードとを含む。スリープモードは、複数の第1制御装置および第2制御装置が電源オフの状態である。ウェイクモードは、複数の第1制御装置が所定のボディ系制御装置を除いて起動しておらず、かつ、第2制御装置が起動している状態である。運転中モードは、複数の第1制御装置および第2制御装置が電源オンの状態である。自動運転キットは、車両プラットフォームの電源モードをウェイクモードへ移行することを要求するウェイク指令を車両プラットフォームへ送信するように構成される。車両プラットフォームは、シフトレバーがパーキングを示し、かつ、車両の車速が0km/hである場合にのみ、ウェイク指令によってウェイクモードへ移行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、自動運転キットからの指令に基づいて電源モードを変更可能な車両において、車両の電源モードの変更が適切な状況で行われやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図2図1に示した車両の制御システムの詳細を示す図である。
図3】本開示の実施の形態に係る電源モード制御方法について説明するための図である。
図4】本開示の実施の形態に係る電源モードの制御方法について説明するためのフローチャートである。
図5】本開示の実施の形態に係る車両の自動運転制御について説明するためのフローチャートである。
図6】本開示の実施の形態に係る電源モードの制御方法において、電源モードコマンドの値を決定する処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。図1を参照して、車両1は、VP(車両プラットフォーム)100と、ADK(自動運転キット)200とを備える。VP100は、VCIB(車両制御インターフェースボックス)110と、ベース車両120とを含む。ベース車両120にVCIB110を追加することによって、ADK200が着脱可能なVP100が形成される。そして、VP100に対してADK200を取り付けることによって車両1が完成する。この実施の形態では、ベース車両120のルーフトップにADK200が取り付けられる。ただし、ADK200の取り付け位置は適宜変更可能である。
【0011】
ベース車両120は、例えば市販されるxEV(電動車)である。この実施の形態では、ベース車両120としてBEV(電気自動車)を採用する。ただしこれに限られず、ベース車両120は、BEV以外のxEVであってもよい。ベース車両120は、統合制御マネージャ130と、ベース車両120を制御するための各種システムおよび各種センサ(車輪速センサ127A,127B、舵角センサ127Cなど)と、アクティブセーフティシステム125が衝突リスクを検知するためのカメラ129Aおよびレーダセンサ129B,129Cとを備える。統合制御マネージャ130は制御装置として機能する。統合制御マネージャ130は、車載センサの検出結果に基づいてベース車両120の動作に関わる各種システムを統合して制御する。
【0012】
図2は、車両1の制御システムの詳細を示す図である。図1とともに図2を参照して、ADK200は、車両1の自動運転を行うための自動運転システム(以下、「ADS」と表記する)210を含む。ADS210は、コンピュータアセンブリ(以下、「ADSCOM」と表記する)211と、認識用センサ212と、姿勢用センサ213と、センサクリーナ216と、HMI(Human Machine Interface)218とを含む。
【0013】
ADSCOM211は、コンピュータモジュール(以下、「ADC」と表記する)211A,211Bを含む。ADC211A,211Bの各々は、プロセッサと、後述するAPIを利用した自動運転ソフトウェアを記憶する記憶装置とを備え、プロセッサによって自動運転ソフトウェアを実行可能に構成される。認識用センサ212は、車両1の外部環境を示す環境情報を取得する。認識用センサ212は、カメラ、ミリ波レーダ、およびライダーの少なくとも1つを含んでもよい。姿勢用センサ213は、車両1の姿勢に関する姿勢情報を取得する。姿勢用センサ213は、車両1の加速度、角速度、および位置を検出する各種センサを含んでもよい。HMI218は入力装置および報知装置を含む。
【0014】
ベース車両120は、車両システム120aを含む。車両システム120aは、ブレーキシステム121と、ステアリングシステム122と、パワートレーンシステム123と、アクティブセーフティシステム125と、ボディシステム126とを備える。この実施の形態では、各システムが電子制御装置(以下、「ECU」とも称する)を備える。
【0015】
VCIB110は、通信バスを介して、ベース車両120およびADK200の両方と通信するように構成される。これらの物理通信はCAN(Controller Area Network)を利用した通信であってもよい。車両1においては、車両1の挙動(走る・止まる・曲がる)に関する制御系が冗長性を有する。ADC211A、211Bがそれぞれメイン制御系、サブ制御系に指示を与える。VCIB110は、VCIB111A(メイン制御系の制御部)およびVCIB111B(サブ制御系の制御部)を含む。各制御部は、プロセッサおよび記憶装置を備えるコンピュータを含んでもよい。VCIB111Aおよび111Bは、各システムと直接的に通信してもよいし、図1に示した統合制御マネージャ130を介して通信してもよい。
【0016】
ブレーキシステム121は、制動機構と、ドライバからのブレーキ操作を受け付ける操作部と、ブレーキ制御部121A,121Bとを含む。ステアリングシステム122は、操舵機構と、ドライバからのステアリング操作を受け付ける操作部と、ステアリング制御部122A,122Bとを含む。パワートレーンシステム123は、シフト装置と、車両駆動装置と、EPB装置と、P-Lock装置と、EPB制御部123Aと、P-Lock制御部123Bと、推進制御部123Cとを含む。「EPB」は電動パーキングブレーキ、「P-Lock」はパーキングロックを意味する。シフト装置は、シフトレンジを決定し、決定されたシフトレンジに応じてベース車両120の推進方向および変速モードを切り替える。シフト装置は、変速機構に加えて、ドライバからのシフト操作を受け付ける操作部をさらに備える。車両駆動装置は、シフトレンジが示す推進方向に推進力を付与する。車両駆動装置は、メインバッテリと、メインバッテリから電力の供給を受ける走行用モータとを備える。車両駆動装置は、車両1を加速するためにドライバによって操作されるアクセルペダルをさらに備える。P-Lock装置は、パーキングロック機構およびアクチュエータに加えて、ドライバからの駐車操作を受け付ける操作部をさらに備える。
【0017】
ボディシステム126は、ボディ系部品(例えば、方向指示器、ホーン、およびワイパー)と、ボディ系部品を制御するボディ系制御装置(ボディ系ECU)とを備える。ボディECUは、手動モードでは、ユーザ操作に従ってボディ系部品を制御し、自動モードでは、ADK200からの指令に従ってボディ系部品を制御する。この実施の形態では、ボディシステム126が複数のボディ系制御装置(ボディ系ECU126aおよび126bを含む)を備える。しかし、ボディ系制御装置の数は任意であり、1つであってもよい。
【0018】
この実施の形態では、ベース車両120(車両システム120a)が備える各制御装置が、本開示に係る「第1制御装置」の一例に相当する。また、VCIB111A,111Bの各々が、本開示に係る「第2制御装置」として機能する。ADC211A,211Bの各々が、本開示に係る「第3制御装置」として機能する。
【0019】
図3は、この実施の形態に係る電源モード制御方法について説明するための図である。図3において、ベース車両120は、車両システム120aと、バッテリ20A,20Bと、スイッチ回路21~23と、起動スイッチ30と、シフトレバー40とを含む。起動スイッチ30は、システムの作動/停止を切り替えるためのユーザ操作を受け付ける。一般に、車両の起動スイッチは「パワースイッチ」または「イグニッションスイッチ」などと称される。シフトレバー40は、前述したシフト装置の操作部に相当する。シフトレバー40は、ドライバからのシフト操作に応じてシフトレンジを指定する。車両1のシフトレンジは、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、およびD(ドライブ)を含む。
【0020】
バッテリ20Aは、前述の車両駆動装置に含まれるメインバッテリである。バッテリ20Bは補機バッテリである。メインバッテリの容量は補機バッテリ(サブバッテリ)の容量よりも大きい。この実施の形態に係る車両1に含まれる各制御装置は、バッテリ20Aとバッテリ20Bとの少なくとも一方から電力の供給を受ける。しかし、こうした電源形態は一例にすぎない。例えば、ADC211A,211B(第3制御装置)は、ADK200に搭載された蓄電装置から電力の供給を受けてもよい。
【0021】
VP100の電源モードは、スリープモード(Sleep Mode)と、ウェイクモード(Wake Mode)と、運転中モード(Driving Mode)とを含む。
【0022】
スリープモードでは、VP100が電源OFFの状態になる(車両電源OFF)。この状態では、メインバッテリ(バッテリ20A)から各システムへの給電はなく、VCIBおよびその他のECUも起動していない。すなわち、スリープモードでは、車両システム120aに含まれる全ての制御装置と、VCIB110に含まれる全ての制御装置とが、電源オフの状態になる。
【0023】
ウェイクモードでは、VCIBが起動している。この状態では、メインバッテリ(バッテリ20A)からの給電はなく、VCIB以外のECUは、一部のボディ系ECUを除き起動していない。すなわち、ウェイクモードでは、車両システム120aに含まれる各制御装置は一部のボディ系ECU(所定のボディ系制御装置)を除いて起動しておらず、かつ、VCIB110に含まれる各制御装置(VCIB111A,111B)が補機バッテリ(バッテリ20B)からの給電によって起動している。所定のボディ系制御装置は、ボディ系ECU126a(図2)でもよいし、複数のボディ系ECUを含んでもよい。
【0024】
運転中モードでは、VP100が電源ONの状態になる(車両電源ON)。この状態では、メインバッテリ(バッテリ20A)からVP100の全体へ電力が供給される。すなわち、運転中モードでは、車両システム120aに含まれる全ての制御装置と、VCIB110に含まれる全ての制御装置とが、電源オンの状態になる。
【0025】
運転中モードでは、車両システム120aがVCIB110を介してADK200と通信する。ADK200とVCIB110との間の通信には、API(Application Program Interface)で定義された信号(API信号)が使用される。ADK200は、APIで定義された各種信号を処理するように構成される。ADK200は、APIで定義された各種コマンド(APIコマンド)をVCIB110へ出力する。また、ADK200は、ベース車両120の状態を示す各種信号(APIステータス)をVCIB110から受信する。APIコマンドおよびAPIステータスはどちらもAPI信号に相当する。
【0026】
この実施の形態では、ADK200が、以下に説明するAPIコマンドを使用する。
【0027】
電源モードコマンドは、VP100の電源モードの制御を要求するAPIコマンドである。電源モードコマンドには、要求なし(No Request)を示す値「0」(第1の値)と、ウェイクモードへの移行を要求する値「2」(第2の値)と、運転中モードへの移行を要求する値「6」(第3の値)とのいずれかが設定される。以下では、値「2」、「6」を示す電源モードコマンドをそれぞれ「Wake指令」、「Drive指令」と称する。
【0028】
車両モードコマンドは、自動モードまたは手動モードへの遷移を要求するAPIコマンドである。推進方向コマンドは、シフトレンジ(R/D)の切替えを要求するAPIコマンドである。推進方向コマンドには、要求なし(No Request)を示す値「0」と、R(リバース)レンジへの変更を要求する値「2」と、D(ドライブ)レンジへの変更を要求する値「4」とのいずれかが設定される。後述する走行方向ステータスが停車を示す場合にのみ、推進方向コマンドに従うシフトレンジの切替えが可能になる。加速コマンドは、車両の加速度を指示するAPIコマンドである。加速コマンドは、後述する推進方向ステータスが示す方向に対する加速度(+)および減速度(-)を要求する。不動化コマンドは、不動化の適用または解除を要求するAPIコマンドである。不動化の適用は、EPBをON状態(作動状態)にし、シフトレンジをP(パーキング)にすることを意味する。
【0029】
以上、車両1において使用される一部のAPIコマンドについて説明した。VCIB110はADK200から各種APIコマンドを受信する。VCIB110は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドを、ベース車両120の制御装置が実行可能な信号の形式に変換する。以下、ベース車両120の制御装置が実行可能な信号の形式に変換されたAPIコマンドを、「内部指令」とも称する。VCIB110は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドに対応する内部指令をベース車両120へ出力する。
【0030】
次に、APIステータスについて説明する。ADK200は、例えば以下に説明するAPIステータスを用いてベース車両120の状態を把握する。
【0031】
電源モードステータスは、VP100の電源モードの状態を示すAPIステータスである。電源モードステータスには、ウェイクモードを示す値「2」と、運転中モードを示す値「6」とのいずれかが設定される。
【0032】
車両モードステータスは、車両モード状態を示すAPIステータスである。車両モードは、手動モードと自動モードとスタンバイモードとを含む。手動モードは、車両がドライバ(人間)のコントロール下にある車両モードである。自動モードは、車両プラットフォーム(ベース車両を含む)が自動運転キットのコントロール下にある車両モードである。スタンバイモードは、車両の移動が禁止された車両モードである。初期状態では、車両モードが手動モードになる。ドライバは、車載HMIを通じて所望の車両モードを選択できる。ベース車両120は、車両1の状況とドライバの選択とを考慮して車両モードを決定する。車両モードステータスは、現在の車両モードが手動モード、自動モード、スタンバイモードである場合に、それぞれ対応する値「0」、「1」、「2」を出力する。
【0033】
走行方向ステータスは、車両の進行方向を示すAPIステータスである。走行方向ステータスは、前進時に値「0」を出力し、後退時に値「1」を出力する。全ての車輪(4輪)が一定時間車速「0」を示す場合には、走行方向ステータスは、停車(Standstill)を示す値「2」を出力する。車速ステータスは、車両の縦方向の速度を示すAPIステータスである。車速(車両の縦方向の速度)は推定値であってもよい。車速ステータスは車速の絶対値を出力する。すなわち、車速ステータスは、後退時にも正の値を出力する。
【0034】
推進方向ステータスは、現在のシフトレンジを示すAPIステータスである。推進方向ステータスは、現在のシフトレンジがP、R、N、Dである場合に、それぞれ対応する値「1」、「2」、「3」、「4」を出力する。また、現在のシフトレンジが不定の場合には、推進方向ステータスは値「7」(Invalid Value)を出力する。シフトレバーステータスは、シフトレバー40の状態を示すAPIステータスである。シフトレバーステータスは、現在のシフトレバー40の位置がP、R、N、Dである場合に、それぞれ対応する値「1」、「2」、「3」、「4」を出力する。また、現在のシフトレバー40の状態が不定の場合には、シフトレバーステータスは値「7」(Invalid Value)を出力する。シフトレバー介入ステータスは、ドライバによってシフトレバー40の位置を変えるような操作がなされたか否かを示すAPIステータスである。なお、自動モードでは、ドライバによるシフトレバー操作は受け入れられない。
【0035】
以上、車両1において使用される一部のAPIステータスについて説明した。VCIB110は、ベース車両120から各種のセンサ検出値および状態判別結果を受信し、ベース車両120の状態を示す各種APIステータスをADK200へ出力する。VCIB110は、ベース車両120の状態を示す値が設定されたAPIステータスを取得し、得られたAPIステータスをADK200へ出力する。
【0036】
スイッチ回路21~23の各々は、電路の接続/遮断を切り替えるように構成される。スイッチ回路21~23の各々は電磁式リレーを含んでもよい。スイッチ回路21~23の各々はDC/DCコンバータを含んでもよい。バッテリ20Bはスイッチ回路21を介してADK200(ADC211A,211B)に電力を供給する。スイッチ回路21の状態(接続/遮断)は、起動スイッチ30の状態(作動/停止)に応じて切り替わる。ADC211A,211Bの各々が停止していても、起動スイッチ30に対するオン操作によって、起動スイッチ30からの起動要求がスイッチ回路21に作用し、スイッチ回路21が遮断状態(開)から接続状態(閉)に切り替わる。バッテリ20Bは、スイッチ回路22を介して、ウェイクモードで起動する所定のボディ系ECU(以下、「ウェイクECU」と称する)と、VCIB111A,111Bとの各々に電力を供給する。VCIB111A,111Bの各々が停止していても、ADK200からのWake指令によってスイッチ回路22は遮断状態(開)から接続状態(閉)に切り替わる。バッテリ20Aはスイッチ回路23を介して車両システム120aに電力を供給する。車両システム120aが停止していても、ADK200からのDrive指令(ドライブ指令)によってスイッチ回路23は遮断状態(開)から接続状態(閉)に切り替わる。
【0037】
スリープモードでは、スイッチ回路21~23の全てが遮断状態になる。ウェイクモードでは、スイッチ回路21、22、23がそれぞれ接続、接続、遮断の状態になる。運転中モードでは、スイッチ回路21~23の全てが接続状態になる。
【0038】
ユーザ操作に応じて起動スイッチ30の状態(作動/停止)が切り替わる。以下では、起動スイッチ30が作動を示す状態を「IG-ON」、起動スイッチ30が停止を示す状態を「IG-OFF」と称する。起動スイッチ30をOFF状態(停止)にするユーザ操作(以下、「OFF操作」と称する)によってIG-OFFになる。ただし、OFF操作は、所定のOFF条件が成立する場合にのみ有効となり、当該OFF条件が成立しない場合にはOFF操作は無効となる。OFF条件は、シフトレバー40がパーキングを指定すること(以下、「第1要件」と称する)と、車両1の車速が0km/hであること(以下、「第2要件」と称する)と、シフトレンジがパーキングを示すこと(以下、「第3要件」と称する)とを含む。OFF条件が成立する状態でユーザが起動スイッチ30に対してOFF操作を行うと、IG-OFFになる。車両1の加速制御もシフトチェンジ(シフトレンジの変更)も、IG-OFFにおいては行われない。このため、IG-OFFにおいては第1~第3要件が満たされる。起動スイッチ30に対する有効なOFF操作によってVP100の電源モードはスリープモードへ移行する。
【0039】
起動スイッチ30が停止を示すときには、シフトレバー40がP(パーキング)を示し、かつ、車両1の車速が0km/hである状態でVP100の電源モードがスリープモードになっている。起動スイッチ30が停止を示すときには、ADK200とVCIB110との間での通信は行われない。そして、起動スイッチ30が停止(IG-OFF)から作動(IG-ON)に切り替わった場合に、ADK200がS1~S3の処理フローを実行する。起動スイッチ30が作動に切り替わったときには、第1要件および第2要件が満たされる。この処理フローは、基本的にはADC211Aによって実行される。ただし、ADC211Aに異常が生じた場合には、ADC211Aの代わりにADC211Bが実行してもよい。以下、フローチャート中の各ステップを「S」と表記する。
【0040】
S1では、ADK200がVCIB110との通信を開始する。IG-OFFでは両者の通信が停止しているため、通信による電力消費で車両1が電欠状態になることを抑制できる。続くS2では、ADK200がWake指令をVCIB110へ送信する。VP100はADK200からのWake指令に応じて電源モードをウェイクモードへ移行する。続くS3では、ADK200がDrive指令をVCIB110へ送信する。VP100はADK200からのDrive指令に応じて電源モードを運転中モードへ移行する。
【0041】
図4は、この実施の形態に係る電源モードの制御方法について説明するためのフローチャートである。図4を参照して、図3に示したS2,S3の各々では、ADK200がS101~S105の処理フローを実行する。さらに、VCIB110がS201~S203の処理フローを実行する。この処理フローは、基本的にはVCIB111Aによって実行される。ただし、VCIB111Aに異常が生じた場合には、VCIB111Aの代わりにVCIB111Bが実行してもよい。また、ベース車両120が備える複数の制御装置(例えば、図1図2に示した統合制御マネージャ130および各システムの制御装置)がS301~S303の処理フローを実行する。
【0042】
S101では、ADK200が電源モードコマンド(S2:Wake指令、S3:Drive指令)をVCIB110へ送信する。ADK200からVCIB110を起動させる場合は、ADK200がCANでNM(ネットワーク管理)フレームを定期的に送信してもよい。VCIB110が電源モードコマンドを受信すると、S201~S203の処理フローが開始される。S201では、VCIB110が電源モードコマンドに応じた処理を実行する。S202では、電源モードコマンドに従う電源モード制御が完了したか否かを、VCIB110が判断する。例えば、停止状態のVCIB110はWake指令を受信すると起動する。そして、VCIB110が起動すると(S202にてYES)、VCIB110は、S203において、ウェイクモード(値「2」)を示す電源モードステータスをADK200へ送信する。他方、ウェイクモードにおいてVCIB110がDrive指令を受信すると、VCIB110は、Drive指令に対応する内部指令をベース車両120へ送信する(S201)。ベース車両120がこの内部指令を受信すると、S301~S303の処理フローが開始される。S301では、ベース車両120が電源モードコマンドに従う電源モード制御を実行する。S302では、電源モードコマンドに従う電源モード制御が完了したか否かを、ベース車両120が判断する。Drive指令に従ってウェイクモードから運転中モードへの移行が完了すると(S302にてYES)、ベース車両120は、S303において、電源モード制御の完了を示す完了信号をVCIB110へ送信する。VCIB110がこの完了信号を受信すると(S202にてYES)、VCIB110は、S203において、運転中モード(値「6」)を示す電源モードステータスをADK200へ送信する。
【0043】
ADK200は、S101で電源モードコマンドを送信した後、続くS102でリトライ条件が成立するか否かを判断する。この実施の形態では、ADK200が電源モードコマンドを送信してから所定時間(例えば4秒)が経過しても、当該電源モードコマンドに従う電源モード変更が行われたことを示す電源モードステータスをADK200が受信しない場合に、リトライ条件が成立する。リトライ条件が成立する場合には(S102にてYES)、ADK200は、S103において、電源モードコマンドに値「0」を設定してから、値「2」(S2)または値「6」(S3)を再度設定し、S104において、電源モードコマンド(S2:Wake指令、S3:Drive指令)をVCIB110へ再度送信する。その後、処理はS105に進む。リトライ条件が成立しない場合には(S102にてNO)、リトライ(S102~S104)が実行されることなく、処理はS105に進む。
【0044】
上記制御では、ADK200が電源モードの変更を要求しても電源モードの変更が実行されない場合に、電源モードコマンドの送信だけでなくコマンドの設定もリトライされる。これにより、正確なコマンドをベース車両120へ送信しやすくなる。上記制御によれば、ADK200が要求する電源モード変更をより確実に実行することが可能になる。
【0045】
S105では、ADK200が、電源モードコマンドに従う電源モード変更が行われたことを示す電源モードステータス(S203)を受信したか否かを判断する。ADK200が電源モードステータスを受信していないと判断されると(S105にてNO)、処理はS102に戻る。ADK200が電源モードステータスを受信したと判断されると(S105にてYES)、処理はメインルーチン(図3に示した処理フロー)に戻る。
【0046】
図5は、この実施の形態に係る車両1の自動運転制御について説明するためのフローチャートである。VP100の電源モードが運転中モードになると、車両システム120aに含まれる制御装置(第1制御装置)がS11~S16の処理フローを開始する。
【0047】
図5を参照して、S11では、ベース車両120が、現在の車両情報を取得する。続くS12では、ベース車両120が、得られた車両情報をVCIB110へ送信する。現在の車両情報は、現在のベース車両120の状態を示す各種センサ検出値と、ユーザ操作またはセンサ検出値に基づく状態判別結果とを含む。ベース車両120は、車両情報を送信した後、S13において、ADK200からの指令(ADK指令)を受信したか否かを判断する。ベース車両120がADK指令を受信しない間は(S13にてNO)、S11~S13が繰り返され、処理がS14に進まない。
【0048】
S21~S26の処理フローは、VCIB110(VCIB111Aまたは111B)によって実行される。VCIB110は、ベース車両120から現在の車両情報を受信すると、処理フローを開始する。S21では、VCIB110が、現在の車両情報に基づいて現在のベース車両120の状態を示す各種APIステータスを取得する。VCIB110は、各種センサ検出値に基づいて各種APIステータスの値を決定してもよい。続くS22では、VCIB110が、S21で取得した各種APIステータスをADK200へ送信する。その後、VCIB110は、S23において、ADK200からAPIコマンドを受信したか否かを判断しつつ、APIコマンドを待つ。VCIB110がAPIコマンドを受信しない間は(S23にてNO)、処理がS24に進まない。
【0049】
S31~S35の処理フローは、ADK200(ADC211Aまたは211B)によって実行される。ADK200は、VCIB110から上記APIステータスを受信すると、処理フローを開始する。S31では、受信した車両モードステータスが自動モードを示すか否かを、ADK200が判断する。車両モードステータスが自動モードを示す場合には(S31にてYES)、ADK200は、S32において、各種センサの検出結果(例えば、環境情報および姿勢情報)と、VCIB110から取得したAPIステータスとに基づいて、走行計画を作成する。走行計画は、所定期間において目標とする車両1の挙動を示すデータである。ADK200は、車両1の挙動(車速、姿勢など)を計算し、車両1の状態および外部環境に適した走行計画を作成してもよい。続くS33では、ADK200が、S32で作成された走行計画から制御的な物理量(加速度、タイヤ切れ角など)を抽出する。続くS34では、ADK200が、S33で抽出された物理量をAPI周期ごとに分割する。そして、ADK200は、分割された物理量に基づいて、走行計画に従う物理量を実現するための自動運転指令(各種APIコマンドの値)を求める。その後、処理はS35に進む。車両モードステータスが自動モードを示さない場合には(S31にてNO)、自動運転指令が生成されることなく、処理はS35に進む。
【0050】
S35では、ADK200が、自動運転指令以外のAPIコマンドの値を求める。そして、ADK200は、各種APIコマンドをVCIB110へ送信する。ADK200は、車両1の状態に基づいて電源モードコマンドの値を決定する。決定された電源モードコマンドが電源モード変更を要求する場合には、ADK200は、図4に示したS101~S105の処理フローによってリトライを実行してもよい。電源モードコマンドのリトライ間隔は4秒以上であってもよい。S35で送信されるAPIコマンドは、ベース車両120に対する指令に相当する。自動モードでは、自動運転指令を示すAPIコマンドが、S32~S34で決定され、S35で送信される。S35の処理が実行されると、S31~S35の処理フローが終了する。ただし、ADK200がAPIステータス(S22)を受信するたびに当該処理フローは開始される。
【0051】
VCIB110は、上記APIコマンドを受信すると(S23にてYES)、S24において、電源モードコマンドの値を決定する。VCIB110がADK200からの電源モードコマンドを受け入れない場合には、ADK200が設定した電源モードコマンドの値をVCIB110が変更する。図6は、S24の詳細を示す図である。図6を参照して、VCIB110は、S251において、ADK200からWake指令を受信したか否かを判断する。VCIB110がWake指令を受信した場合には(S251にてYES)、続くS252で、VCIB110が、S21で取得したシフトレバーステータスに基づいて、第1要件(シフトレバー=P)を満たすか否かを判断する。第1要件を満たす場合には(S252にてYES)、続くS253で、VCIB110が、S21で取得した車速ステータスに基づいて、第2要件(車速=0km/h)を満たすか否かを判断する。
【0052】
第1要件および第2要件の両方を満たす場合には(S252,S253の両方でYES)、VCIB110がADK200からのWake指令(値「2」)を受け入れる。他方、第1要件と第2要件との少なくとも一方を満たさない場合には、S254においてVCIB110が電源モードコマンドを値「2」から値「0」(要求なし)に変更する。その後、処理がメインルーチン(図5に示した処理フロー)に戻る。
【0053】
再び図5を参照して、VCIB110は、S24で電源モードコマンドの値を決定した後、続くS25において、ADK200から受信した各種APIコマンドを内部指令に変換する。こうした信号変換により、APIコマンドに対応する内部指令が得られる。続くS26では、VCIB110が、得られた内部指令(ADK指令)をベース車両120へ送信する。S26の処理が実行されると、S21~S26の処理フローは終了する。ただし、VCIB110がベース車両120から最新の車両情報を受信するたびに当該処理フローは開始される。
【0054】
ベース車両120がVCIB110から各種APIコマンドに対応する各種内部指令(ADK指令)を受信すると(S13にてYES)、S14において、受信した内部指令にWake指令に対応する内部指令が含まれるか否かを、ベース車両120が判断する。ベース車両120がWake指令に対応する内部指令を受信した場合には(S14にてYES)、S16において、ベース車両120が、Wake指令に従う電源モード制御を図4に示したS301~S303の処理フローによって実行する。S301では、電源モードが運転中モードからウェイクモードに変更される。これにより、車両システム120aに含まれる複数の制御装置は一部のボディ系ECU(ウェイクECU)を除いて停止する。
【0055】
VCIB110から受信した内部指令(ADK指令)にWake指令に対応する内部指令が含まれない場合には(S14にてNO)、ベース車両120が、S15において、ADK指令に従う車両制御を実行する。自動モードでは、ベース車両120が、ADK200からの自動運転指令に従う自動運転制御を実行する。VP100の電源モードは運転中モードに維持される。その後、処理が最初のステップ(S11)に戻る。
【0056】
図6中の線L1~L5は、自動モードにおける車両1の動作例を示す。タイムチャート中の「t」はタイミングを意味する。線L5で示すように、車両1は自動運転で減速して停止する。線L1で示すように、期間t1~t2と期間t3~t4との各々においてWake指令がADK200からVCIB110へ送信される。これらの期間においては第1要件を満たさないため、S254の処理により電源モードコマンドの値が変更される。線L3で示すように、t5で不動化コマンドが解除から適用に切り替わる。これにより、線L4で示すように、t6でシフトレバーステータスがDからPに切り替わる。自動モードでは、ADK200がシフトレバー40を動かしてシフトレンジを変更する。これにより、第1要件および第2要件の両方を満たすようになる。このため、t7でWake指令がADK200からVCIB110へ送信されると、このWake指令に応じて、t8で電源モードステータスが運転中モードからウェイクモードに切り替わる(線L2)。
【0057】
上記実施の形態では、ADK200がシフトレバー40を動かしてシフトレンジを変更する。しかしこれに限られず、シフトレバー40は、ADK200からの指令では動かず、ドライバによる手動操作によってのみ動いてもよい。ADK200からの指令によってシフトレンジが変更されて推進方向ステータスがPを示したときに、ベース車両120が、シフトレバー40の位置をPに動かすことをドライバに要求してもよい。
【0058】
以上説明したように、この実施の形態に係る車両1は、VP100(車両プラットフォーム)とADK200(自動運転キット)とを備える。VP100は、ADK200からの自動運転に関する指令を受信可能に構成される。ADK200は、VP100の電源モードをウェイクモードへ移行することを要求するウェイク指令をVP100へ送信する。VP100は、シフトレバーがパーキングを示し、かつ、車両の車速が0km/hである場合にのみ、ウェイク指令によってウェイクモードへ移行する(図6参照)。
【0059】
上記構成を有する車両1は、自動運転キットからのWake指令(ウェイク指令)に基づいて電源モードを変更できる。運転中モードからウェイクモードへの移行によってベース車両に含まれる複数の第1制御装置は一部のボディ系制御装置を除いて停止する。このため、ウェイクモードへの移行は車両制御に影響し得る。この点、上記構成では、第1要件と第2要件との少なくとも一方を満たさない場合には、ウェイクモードへの移行が実行されない。ADK200のソフトウェア不具合(例えば、バグ)などによって、第1要件と第2要件との少なくとも一方を満たさない場合にADK200からウェイク指令が送られてきても、VP100は受け付けない(図6参照)。このため、ウェイクモードへの移行が車両1の挙動へ影響することを抑制できる。よって、車両1の電源モードの変更が適切な状況で行われやすくなる。
【0060】
運転中モードにおいてVCIB110がADK200からウェイク指令を受信すると(図6のS251にてYES)、VCIB110(第2制御装置)は、第1要件と第2要件との両方の要件を同時に満たすか否かを判断する(図6のS252,S253)。両方の要件を同時に満たすと判断された場合には、VCIB110(第2制御装置)が、ウェイク指令に従う電源モード変更をベース車両120に要求する(図5のS26)。ベース車両120(第1制御装置)は、VCIB110からの要求に応じて、VP100の電源モードを変更する(図5のS16)。こうした構成では、ウェイクモードへの移行に適した状況であるか否かを、VCIB110が判断する。そして、ウェイクモードへの移行に適した状況であると判断した場合に、VCIB110がベース車両120にウェイクモードへの移行を要求する。このため、適切でない状況においてベース車両120に対してウェイクモードへの移行が要求されることを抑制できる。
【0061】
VCIB110は、図6のS252において、第1要件(シフトレバーがパーキングを示すこと)の代わりに、第3要件(シフトレンジがパーキングを示すこと)を満たすか否かを判断してもよい。そして、第2要件および第3要件の両方を満たす場合には、VCIB110がADK200からのWake指令を受け入れてもよい。第2要件と第3要件との少なくとも一方を満たさない場合には、S254においてVCIB110が電源モードコマンドを値「2」から値「0」(要求なし)に変更してもよい。すなわち、VP100は、シフトレンジがパーキングを示し、かつ、車両の車速が0km/hである場合にのみ、ウェイク指令によってウェイクモードへ移行してもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 車両、100 車両プラットフォーム、110 車両制御インターフェースボックス、120 ベース車両、120a 車両システム、126 ボディシステム、126a,126b ボディECU、200 自動運転キット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6