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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011653
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】流動物供給装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113886
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000239758
【氏名又は名称】兵神装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】澤村 智史
(72)【発明者】
【氏名】翁 昂平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋平
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042AA01
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB11
4F042CB19
4F042DH02
4F042DH09
4F042ED03
(57)【要約】
【課題】 流動物が充填されたカートリッジが軟質であっても、流動物の自動吐出動作を安定させる。
【解決手段】 流動物供給装置1は、流動物Fが充填された充填容器91、及び充填容器91の一端部に設けられて流動物Fを充填容器91から流出させる流出口92を有するカートリッジ90を取外し可能に収容する収容容器2と、カートリッジ90から流出された流動物Fを吐出する吐出口4と、充填容器91の他端部を第1押圧力P1で押圧する第1押圧部3Aと、充填容器91と収容容器2との間の環状空間2cに第2押圧力P2に加圧された流体を供給する第2押圧部3Bと、を備える。流動物Fの吐出の開始のため第1押圧部3A及び第2押圧部3Bが起動するときに、第2押圧部3Bにより供給される流体が第2押圧力P2に到達した後、第1押圧部3Aによる押圧力が第1押圧力P1に到達する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜で成形されて流動物が充填された充填容器、及び前記充填容器の一端部に設けられて前記流動物を前記充填容器から流出させる流出口を有するカートリッジを、取外し可能に収容する収容容器と、
前記収容容器に設けられ、前記カートリッジから流出された流動物を吐出する吐出口と、
前記カートリッジが前記収容容器に収容された収容状態において、前記充填容器の他端部を第1押圧力で押圧する第1押圧部と、
前記収容状態において、前記充填容器と前記収容容器との間の環状空間に、第2押圧力に加圧された流体を供給する第2押圧部と、
を備え、
前記流動物の吐出の開始のため前記第1押圧部及び前記第2押圧部が起動するときに、前記第2押圧部により供給される前記流体が前記第2押圧力に到達した後、前記第1押圧部による押圧力が前記第1押圧力に到達する、
流動物供給装置。
【請求項2】
前記第1押圧部は、前記収容容器の内部を摺動する押圧部材を有し、前記収容容器の前記内部が、前記押圧部材により、前記カートリッジが収容されるべき収容空間と、加圧された流体が供給される圧力室とに仕切られ、
前記押圧部材が、前記圧力室に供給された前記流体により、前記充填容器の前記他端部を押圧するよう駆動される、
請求項1に記載の流動物供給装置。
【請求項3】
前記第1押圧力が前記第2押圧力よりも大きい、
請求項2に記載の流動物供給装置。
【請求項4】
前記第2押圧部により供給される前記流体の圧力が、前記第1押圧部による前記押圧力に先立って立ち上がる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流動物供給装置。
【請求項5】
前記第2押圧部により供給される前記流体の圧力が前記第2押圧力に到達した後に前記第1押圧部による前記押圧力を前記第1押圧力に到達させるように、少なくとも前記第1押圧部による前記押圧力の上昇速度を調整する速度調整部を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流動物供給装置。
【請求項6】
前記第2押圧部が、前記環状空間に供給される前記流体の圧力を前記第2押圧力に保つ圧力リリーフ部を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流動物供給装置。
【請求項7】
前記収容容器が、両端が開口した容器本体と、前記容器本体の一端又は他端に選択的に装着される第1ヘッドと、前記容器本体の前記一端及び前記他端のうち前記第1ヘッドとは反対側に装着される第2ヘッドと、を有し、
前記吐出口が前記第1ヘッドに設けられ、前記第1押圧部が前記第2ヘッドに設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流動物供給装置。
【請求項8】
前記第1押圧部及び前記第2押圧部の動作を制御する制御部を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流動物供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動物供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筒状のカートリッジから液体材料を定量吐出する定量吐出装置を開示している。カートリッジは、液体材料が充填される充填室を圧縮するピストンを有する。定量吐出装置は、カートリッジを収容する筒状の装置本体を有する。圧縮空気を装置本体内へと供給することによってピストンが押圧され、液体材料がカートリッジから吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6084322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、カートリッジの中には、環境負荷を考慮して、軟質の材料で成形されているものもある。このようなカートリッジを対象にして、押圧力が上記同様に圧力バランスへの配慮なく供給されると、カートリッジが部分的に折れ曲がったり、最悪の場合、カートリッジ内圧の急増により破壊されたり等、定量吐出が困難になるおそれがある。
【0005】
本発明は、流動物が充填されたカートリッジが軟質であっても、流動物を自動的に吐出する動作を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、薄膜で成形されて流動物が充填された充填容器、及び前記充填容器の一端部に設けられて前記流動物を前記充填容器から流出させる流出口を有するカートリッジを、取外し可能に収容する収容容器と、前記収容容器に設けられ、前記カートリッジから流出された流動物を吐出する吐出口と、前記カートリッジが前記収容容器に収容された収容状態において、前記充填容器の他端部を第1押圧力で押圧する第1押圧部と、前記収容状態において、前記充填容器と前記収容容器との間の空間に、第2押圧力に加圧された流体を供給する第2押圧部と、を備え、前記流動物の吐出の開始のため前記第1押圧部及び前記第2押圧部が起動するときに、前記第2押圧部により供給される前記流体が前記第2押圧力に到達した後、前記第1押圧部による押圧力が前記第1押圧力に到達する、流動物供給装置を提供する。
【0007】
上記構成によれば、充填容器及びその一端部に設けられた流出口を有するカートリッジが、取外し可能に収容容器に収容される。充填容器に充填された流動物は、第1押圧部及び第2押圧部の作用で、収容容器に設けられた吐出口を介し、収容容器から自動的に吐出される。充填容器は、薄膜で成形されているため流動物が空になった後小さく折りたたむことができ、廃棄物の減容等によって環境負荷の低減に貢献できる一方、軟質であるため流動物を良好に吐出するための形状を保つ力が弱い。
【0008】
第1押圧部は、充填容器の他端部、すなわち流出口とは反対側の端部に第1押圧力を付与する。他方、第2押圧部は、充填容器と収容容器との間の空間に第2押圧力の流体を供給し、それにより充填容器の外周面に第2押圧力を付与する。このため、第1押圧力が充填容器の内周面に付与されても、第2押圧力により薄膜の充填容器の外周が十分に支えられ、内圧と外圧の差圧も小さい状態で流出口方向への第1押圧力が付与されるため、充填容器がひしゃげることなく吐出困難に至る変形や破裂を防止できる。特に、吐出開始時に、第2押圧部により供給される流体の圧力が第2押圧力に到達してから、第1押圧部による押圧力が第1押圧力に到達する。第1押圧部及び第2押圧部が安定動作に入る前の過渡期において、充填容器が吐出困難に至る変形や破裂するおそれを低減できる。これにより、第1押圧力が、吐出のためのエネルギーとして有効に活用され、カートリッジが軟質であっても流動物の吐出動作を安定化できる。
【0009】
前記第1押圧部は、前記収容容器の内部を摺動する押圧部材を有し、前記収容容器の前記内部が、前記押圧部材により、前記カートリッジが収容されるべき収容空間と、加圧された流体が供給される圧力室とに仕切られ、前記押圧部材が、前記圧力室に供給された前記流体により、前記充填容器の前記他端部を押圧するよう駆動されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、押圧部材の他端部に第1押圧力を満遍なく付与でき、吐出動作が安定する。また、吐出動作に応じて、押圧部材が摺動して収容空間が圧縮され、薄膜のカートリッジが自動的に減容する。カートリッジの廃棄作業の省力化に資する。さらに、他の方式の押圧機構に比べて流動物供給装置の大きさを小さくすることができる。
【0011】
前記第1押圧力が前記第2押圧力よりも大きくてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1押圧力は、流出口とは反対側の端部に付与され、第2押圧力は、充填容器の周面に外側から付与される。第1押圧力が第2押圧力よりも大きいと、流動物が充填容器内で流出口に向けて流動させやすくなり、カートリッジの使い切り性が向上する。
【0013】
前記第2押圧部により供給される前記流体の圧力が、前記第1押圧部による前記押圧力に先立って立ち上がってもよい。
【0014】
上記構成によれば、吐出開始時において、第1押圧部による押圧力が第1押圧力に到達する前に、第2押圧部により供給される流体の圧力を適切に上昇させ、第2押圧力に到達させることができる。よって、第1押圧部及び第2押圧部が安定動作に入る前の過渡期において、充填容器が吐出困難に至る変形や破裂するおそれを低減できる。
【0015】
流動物供給装置が、前記第2押圧部により供給される前記流体の圧力が前記第2押圧力に到達した後に前記第1押圧部による前記押圧力を前記第1押圧力に到達させるように、少なくとも前記第1押圧部による前記押圧力の上昇速度を調整する速度調整部を更に備えてもよい。
【0016】
上記構成によれば、第1押圧部及び第2押圧部が安定動作に入る前の過渡期において、充填容器が吐出困難に至る変形や破裂するおそれを一層低減できる。
【0017】
前記第2押圧部が、前記環状空間に供給される前記流体の圧力を前記第2押圧力に保つ圧力リリーフ部を有してもよい。
【0018】
上記構成によれば、流動物の消費に伴いカートリッジの減容が進行し、空間の容積が小さくなっていっても、空間内の流体の圧力が過剰に高くなることを抑制できる。したがって、流動物の吐出動作が、カートリッジを使い切るまで継続的に安定する。
【0019】
前記収容容器が、両端が開口した容器本体と、前記容器本体の一端又は他端に選択的に装着される第1ヘッドと、前記容器本体の前記一端及び前記他端のうち前記第1ヘッドとは反対側に装着される第2ヘッドと、を有し、前記吐出口が前記第1ヘッドに設けられ、前記第1押圧部が前記第2ヘッドに設けられていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、吐出口の位置と第1押圧部の位置とを入替可能になる。収容容器がこのような「リバーシブル構造」を有していると、カートリッジの交換作業を迅速に行うことができる。
【0021】
前記第1押圧部及び前記第2押圧部の動作を制御する制御部を更に備えてもよい。
【0022】
上記構成によれば、吐出開始時において、第2押圧部により供給される流体の昇圧と、第1押圧部による押圧力の上昇とを自動化でき、充填容器が破裂するおそれを低減しやすい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、流動物が充填されたカートリッジが軟質であっても、流動物を自動的に吐出する動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る流動物供給装置が適用された吐出システムの構成図。
図2】第1実施形態に係る流動物供給装置の断面図。
図3A】第1実施形態に係る流動物供給装置の正面図。
図3B】第1実施形態に係る流動物供給装置の側面図。
図3C】第1実施形態に係る流動物供給装置の平面図。
図4】第1実施形態に係る流動物供給装置のブロック図。
図5】第1実施形態に係る流動物供給装置のタイミングチャート。
図6】第1実施形態に係る流動物供給装置の流動物吐出時の作用図。
図7A】新品カートリッジが収容され且つ一端に吐出口が設けられた状態を示す流動物供給装置の断面図。
図7B図7Aに示す状態からカートリッジ内の流動物を使い切り且つヘッドを取り外した状態を示す流動物供給装置の断面図。
図7C】使い切ったカートリッジを収容容器から取り除き、新品のカートリッジを収容容器に挿入している状態を示す流動物供給装置の断面図。
図7D】新品のカートリッジが収容され且つ他端に吐出口が設けられた状態を示す流動物供給装置の断面図。
図8】第2実施形態に係る流動物供給装置が適用された吐出システムの構成図。
図9】第2実施形態に係る流動物供給装置のブロック図。
図10】第2実施形態に係る流動物供給装置のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付して詳細な説明の重複を省略する。
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る流動物供給装置1は、流動物Fを吐出してワーク(図示せず)の所要箇所に流動物Fを塗布する吐出システム100に適用される。吐出システム100は、流動物供給装置1のほか、カートリッジ90、ディスペンサ80、流動物供給路85、及び移動機構(図示せず)を備えている。流動物供給装置1は、収容容器2及び押圧部3を備えている。
【0027】
カートリッジ90は、取外し可能に収容容器2に収容される。カートリッジ90は、流動物Fが充填される充填容器91、及び充填容器91の一端部に設けられた流出口92を有する。収容容器2には、吐出口4が設けられている。吐出口4は、流動物供給路85を介してディスペンサ80と接続される。ディスペンサ80は、例えば一軸偏心ねじポンプによって構成され、当該ポンプの先端に設けられた吐出ノズル81を有している。
【0028】
押圧部3は、収容容器2内に収容されている状態(以下単に「収容状態」ともいう)のカートリッジ90に対し、流動物Fを流出させるために必要な押圧力を付与する。押圧部3は、第1押圧部3A及び第2押圧部3Bを含む。第1押圧部3Aは、充填容器91の他端部を第1押圧力P1で押圧する。第2押圧部3Bは、充填容器91と収容容器2との間の環状空間2cに、第2押圧力P2に加圧された流体を供給する。
【0029】
本実施形態では、第1押圧部3Aも、第2押圧部3Bと同様に、第1押圧力P1まで加圧された流体を供給する。流体は、作動油のような液体でもよく、本実施形態のようにエアでもよい。第1押圧力P1も第2押圧力P2も、大気圧よりも高圧である。第1押圧力P1は、第2押圧力P2よりも高圧である。
【0030】
収容容器2は、第1押圧力P1のエアが供給される第1圧力ポート5と、第2押圧力P2のエアが供給される第2圧力ポート6とを有する。第1圧力ポート5は、収容容器2の端部であって吐出口4とは反対側の端部に設けられる。第2圧力ポート6は、収容容器2の端部であって吐出口4と同じ側の端部に設けられる。
【0031】
収容容器2の内部に、押圧部材の一例としてのピストン7が収容されている。ピストン7は、個々のカートリッジ90に備わっているものではない。ピストン7は、第1押圧部3Aの一部を構成する。収容容器2の内部は、ピストン7により、カートリッジ90が収容されるべき収容空間2aと、第1圧力ポート5が開口する圧力室2bとに仕切られる。第1押圧力P1のエアは、第1圧力ポート5を介し、圧力室2bに供給される。ピストン7は、そのエアによって駆動され、収容容器2の内部を摺動し、充填容器91の他端部を押圧する。
【0032】
流動物Fは、充填容器91から流出口92を介して充填容器91の外部且つ収容容器2の内部に流出し、吐出口4を介して収容容器2の外部に吐出される。更に、流動物Fは、流動物供給路85を介してディスペンサ80に供給され、吐出ノズル81から吐出され、ワーク(図示せず)に塗布される。
【0033】
詳細図示を省略するが、移動機構は、少なくともディスペンサ80を変位させ、ワークに対する吐出ノズル81の相対位置を変更する。流動物供給路85がチューブによって構成され、そのチューブが可撓性を有し且つ長尺である場合には、収容容器2が定置されていてもよい。移動機構は、ディスペンサ80と共に収容容器2を変位させてもよい。例えば、移動機構は、産業用多関節ロボットにより実現されてもよい。この場合、ディスペンサ80は、ロボットアームの先端に取り付けられる。
【0034】
図2を参照して、カートリッジ90は、充填容器91、及び流出口92を有する。充填容器91は、長尺の袋状であり、流動物Fが、充填容器91の内部に充填される。充填容器91は、少なくとも新品状態において、円筒状である。流出口92は、充填容器91の一端部に設けられる。充填容器91の内部が加圧されると、流動物Fは、流出口92を介して充填容器91の外部に流出する。本実施形態では、充填容器91には、流出口92以外に、開口が設けられていない。
【0035】
充填容器91は、薄膜で成形されている。膜厚は、一例として、10~50μmである。LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエチレン系樹脂材や、それらの樹脂にアルミニウム蒸着加工を施した素材、またはプレス加工したアルミニウム箔は、バリア性及び可撓性に優れる点に照らして、充填容器91に適用される薄膜の素材の好適例である。
【0036】
充填容器91が薄膜で成形されるため、充填容器91は、流動物Fの流出に応じて容易に圧縮される。流動物Fを使い切ると、カートリッジ90の容積は、新品状態と比べて大きく減少する。廃棄量を削減でき、環境負荷の低減に資する。
【0037】
なお、流動物Fは、接着剤、シーリング剤、充填剤、放熱剤、潤滑剤、及びコーティング剤であってもよい。流動物Fの粘度は、一例として、10~10000Pa・sである。
【0038】
カートリッジ90は、充填容器91の一端部に設けられた流出ヘッド93と、充填容器91の他端部に設けられた受圧ヘッド94とを有する。流出ヘッド93及び受圧ヘッド94は、充填容器91よりも硬質の樹脂で成形されている。流出ヘッド93は、充填容器91の一端面に接合された円筒状である。受圧ヘッド94は、充填容器91の他端面に接合された円筒状である。充填容器91をヘッドと接合するための手段は、特に限定されず、接着剤を使用した接着を適用してもよいし、熱融着を適用してもよい。
【0039】
流出ヘッド93は、充填容器91に接合される円盤状の底壁93a、底壁93aの中心部から充填容器91とは反対側に突出する筒状のノズル93b、及び底壁93aの周縁から充填容器91とは反対側に突出する外周壁93cを有する。ノズル93bは両端が開口する貫通穴を有し、この貫通穴が流出口92を構成する。ノズル93bの外周面には、雄ねじが切られている。
【0040】
受圧ヘッド94は、充填容器91に接合される円盤状の底壁94a、底壁94aの周縁から突出する外周壁94bを有する。外周壁94bは、充填容器91の他端部に外嵌され、充填容器91の他端部の外周面に接合される。
【0041】
図2図3A、及び図3Bを参照して、収容容器2は、容器本体20、第1ヘッド21、及び第2ヘッド22を有する。
【0042】
容器本体20は、高い剛性を有し、鋼やアルミニウム合金のような金属で成形されている。容器本体20は、両端が開口した円筒状である。容器本体20の外周面の一端部及び他端部には、雄ねじ部20a,20bが形成されている。2つの雄ねじ部20a,20bのねじ仕様(例えばピッチなど)は、互いに同じである。
【0043】
第1ヘッド21は、円筒部21aを有する。円筒部21aの内周面には、雄ねじ部20aにも雄ねじ部20bにも螺合可能な雌ねじ部21bが形成されている。第2ヘッド22も、円筒部22aを有する。円筒部22aの内周面には、雄ねじ部20aにも雄ねじ部20bにも螺合する雌ねじ部22bが形成されている。
【0044】
第1ヘッド21は、容器本体20の一端部又は他端部に選択的に取外し可能に装着される。第2ヘッド22も、容器本体20の一端部又は他端部に取外し可能に選択的に装着される。装着において、ヘッドの円筒部が容器本体20の端部に締め回される。容器本体20の端部の開口は、当該端部に装着されているヘッドによって閉じられる。
【0045】
第1ヘッド21が一端部に装着されると、第2ヘッド22は反対側の他端部に装着される。以下、この状態を「(収容容器2の)第1状態」という。第1ヘッド21が他端部に装着されると、第2ヘッド22が反対側の一端部に装着される。以下、この状態を「(収容容器2の)第2状態」という。以下、特段断らなければ、収容容器2は第1状態にある。
【0046】
吐出口4は、第1ヘッド21に設けられている。具体的には、第1ヘッド21は、円筒部21aの中央部から外方へ突出する突出部21cを有し、吐出口4は、突出部21cの内部に形成される。吐出口4は、突出部21cの内部で軸方向に延びるアキシャル部4aと、アキシャル部4aから径方向外周側に延びるラジアル部4bとを含む。アキシャル部4aは円筒部21aの内部に開口し、ラジアル部4bは突出部21cの外面に開口する。アキシャル部4aは、突出部21cに形成された貫通穴の先端をプラグ8で閉塞することによって構成される。アキシャル部4aの内周面には、雌ねじが切られている。
【0047】
第1圧力ポート5は、第2ヘッド22に設けられている。具体的には、第2ヘッド22の円筒部22aの底壁の中心に、ねじ穴が形成されており、第1圧力ポート5は、ねじ穴に螺合されたプラグ部材によって構成されている。第1圧力ポート5の一端は、プラグ部材の外面に開口し、第1圧力ポート5の他端は、ねじ穴内で開口する。
【0048】
図2及び図3Cを参照して、第2圧力ポート6は、第1ヘッド21に設けられている。具体的には、第1ヘッド21の円筒部21aの底壁の内面には、円環溝6aが形成されている。複数のアキシャル溝6bが、周方向に等間隔をあけて配置されている。各アキシャル溝6bは、円環溝6aから軸方向に延び、第1ヘッド21の円筒部21aの外面に開口している。
【0049】
図2を参照して、ピストン7は、円柱状である。ピストン7の外周面の軸方向中央部には、リング7aが嵌め込まれている。リング7aは、ピストン7の収容容器2内における軸方向の摺動を許容しつつ、収容容器2の内周面に密着する。
【0050】
カートリッジ90の収容状態において、ノズル93bは、アキシャル部4aに締め回されており、カートリッジ90は、収容容器2に取外し可能に固定される。充填容器91の内部は、流出口92を介し、吐出口4と連通する。
【0051】
ピストン7の収容空間2a側の端面は、カートリッジ90の受圧ヘッド94の底壁94aの外面に当接する。充填容器91の外径は、収容容器2の内径よりも小さい。そのため、前述した環状空間2cが形成される。環状空間2cは、第1ヘッド21の円環溝6a、すなわち第2圧力ポート6に連通する。一方、収容空間2aの一部としての環状空間2cは、ピストン7によって閉塞され、圧力室2bから隔絶されている。
【0052】
図3B及び図3Cを参照して、第1ヘッド21には、ブラケット23を介し、近接センサ11が取り付けられている。近接センサ11は、ピストン7の接近、より詳しくは、ピストン7が第1ヘッド21付近の下死点(BDC)に到達したことを検出する。近接センサ11の原理は、特に限定されない。近接センサ11が、例えば磁気形である場合、永久磁石7bがピストン7に内蔵される。
【0053】
図1に戻り、押圧部3は、空圧源30、共通ライン31、第1分岐ライン32A、第2分岐ライン32B、一次レギュレータ33、残圧排気弁34、第1開閉弁35、第1スピードコントローラ36(速度調整部)、二次レギュレータ弁37(圧力リリーフ部)、第2開閉弁38、及び第2スピードコントローラ39(速度調整部)を有する。
【0054】
空圧源30は、高圧(元圧P0)のエアを貯留する。共通ライン31は、空圧源30から延在する。第1分岐ライン32A及び第2分岐ライン32Bは、共通ライン31から互いに分かれて延在する。第1分岐ライン32Aは、第1圧力ポート5に接続される。第2分岐ライン32Bは、第2圧力ポート6に接続される。空圧源30内のエアは、共通ライン31及び第1分岐ライン32Aを介して第1圧力ポート5に供給され、共通ライン31及び第2分岐ライン32Bを介して第2圧力ポート6に接続される。
【0055】
一次レギュレータ33及び残圧排気弁34は、共通ライン31上に介在し、空圧源30からこの順で並ぶ。一次レギュレータ33は、元圧P0を第1押圧力P1に調整(減圧)する。残圧排気弁34は、第1圧力ポート5及び第2圧力ポート6を大気開放する排気位置と、第1圧力ポート5及び第2圧力ポート6を一次レギュレータ33に接続する加圧位置とを切り換える。
【0056】
第1開閉弁35、及び第1スピードコントローラ36は、第1分岐ライン32A上に介在し、第2分岐ライン32Bとの分岐点から第1圧力ポート5に向かってこの順で並ぶ。第1開閉弁35は、第1圧力ポート5を残圧排気弁34から遮断する閉位置と、第1圧力ポート5を残圧排気弁34と連通させる開位置とを切り換える。
【0057】
第1スピードコントローラ36は、可変絞り36aと、可変絞り36aに並列接続された逆止弁36bとを有する。逆止弁36bは、加圧方向(残圧排気弁34から第1圧力ポート5に向かう方向)の流れを阻止し、排気方向(第1圧力ポート5から残圧排気弁34に向かう方向)の流れを許容する。これにより、第1分岐ライン32Aにおいてエアが加圧方向に通流するときには、エアが可変絞り36aを通過する。
【0058】
二次レギュレータ37、第2開閉弁38、及び第2スピードコントローラ39は、第2分岐ライン32B上に介在し、第1分岐ライン32Aとの分岐点から第2圧力ポート6に向かってこの順で並ぶ。二次レギュレータ37は、例えば精密レギュレータと呼ばれる内部にリリーフ弁を備えた圧力制御弁である。すなわち、一次レギュレータ33から出力される第1押圧力P1を第2押圧力P2に調整(減圧)する。また、二次レギュレータ37は、内部のリリーフ弁により、自身から見て第2圧力ポート6側におけるエアの圧力(すなわち、二次圧)が第2押圧力P2以上になった場合エアを外部にリリーフし、二次圧を定圧に維持する。
【0059】
第2開閉弁38は、第2圧力ポート6を二次レギュレータ37から遮断する閉位置と、第2圧力ポート6を二次レギュレータ37と連通させる開位置とを切り換える。第2スピードコントローラ39は、第1スピードコントローラ36と同様に構成され、可変絞り39a及び逆止弁39bを有する。
【0060】
第1押圧部3A及び第2押圧部3Bは、空圧源30、共通ライン31、一次レギュレータ33、及び残圧排気弁34を共通構成として具備する。
【0061】
図2も併せて参照して、第1押圧部3Aは、上記の共通構成に加えて、第1分岐ライン32A、第1開閉弁35、第1スピードコントローラ36を更に有する。また、第1押圧部3Aは、第1圧力ポート5、圧力室2b、及びピストン7を更に有する。第1押圧部3Aは、残圧排気弁34が加圧位置にあり且つ第1開閉弁35が開位置にあると、空圧源30からのエアを第1押圧力P1に調整して第1圧力ポート5に供給する。第1押圧力P1のエアが圧力室2bに供給され、それによりピストン7が摺動する。充填容器91の他端部がピストン7により押圧される。
【0062】
第2押圧部3Bは、上記の共通構成に加えて、第2分岐ライン32B、二次レギュレータ37、第2開閉弁38、及び第2スピードコントローラ39を更に有する。また、第2押圧部3Bは、第2圧力ポート6を更に有する。第2押圧部3Bは、残圧排気弁34が加圧位置にあり且つ第2開閉弁38が開位置にあると、空圧源30からのエアを第2押圧力P2まで順次に減圧し、第2押圧力P2のエアを第2圧力ポート6に供給する。第2押圧力P2のエアは、収容容器2と充填容器91との間の環状空間2cに供給され、充填容器91の外周面に第2押圧力P2が付与される。第2圧力ポート6は、複数の開口を有するため、第2分岐ライン32Bの下流端部は、第2圧力ポート6の開口数に応じて更に分岐され、複数の開口それぞれに接続される。
【0063】
本実施形態では、一次レギュレータ33及び二次レギュレータ37が、二次圧をパイロット圧として利用するパイロット駆動弁である。残圧排気弁34、第1開閉弁35、及び第2開閉弁38は、手動切換弁である。第1スピードコントローラ36及び第2スピードコントローラ39の可変絞り36a,39aにおける絞り量は、手動で調整される。本実施形態では、押圧部3が、電子制御によって作動する要素を有さない。
【0064】
図4を参照して、流動物供給装置1は、前述した近接センサ11のほか、第1圧力センサ12a、第2圧力センサ12b、操作盤19、コントローラ10(制御部)、及び警報器18を備える。第1圧力センサ12aは、一次レギュレータ33の二次圧を検出する。第2圧力センサ12bは、二次レギュレータ37の二次圧を検出する。操作盤19は、作業員によって操作される。操作盤19には、例えば吐出動作を起動するスイッチ、吐出動作を緊急停止するスイッチなどが設けられる。
【0065】
コントローラ10は、第1圧力センサ12a、第2圧力センサ12b、操作盤19、及び警報器18と接続されている。コントローラ10は、メモリ、CPU、及び入出力インターフェイスを有するコンピュータによって実現されてもよい。CPUは、メモリに予め記憶されたプログラムを読み出し、プログラムによって指示される手順に沿って情報処理を実行する。警報器18は、どのような形態であってもよく、ランプやディスプレイのように視覚に訴えて作業員に情報を報知してもよく、ブザーやスピーカのように聴覚に訴えて作業員に情報を報知してもよい。
【0066】
上記構成の流動物供給装置1の動作について説明する。図5において、第1押圧力P1及び第2押圧力P2は、大気圧に対するゲージ圧である。
【0067】
図5を参照して、流動物供給装置1が停止しているときには、残圧排気弁34が排気位置に位置し、第1開閉弁35及び第2開閉弁38が開位置に位置する。第1圧力ポート5が、第1スピードコントローラ36、第1開閉弁35、及び残圧排気弁34を介し、大気に開放される。第2圧力ポート6が、第2スピードコントローラ39、第2開閉弁38、二次レギュレータ37、及び残圧排気弁34を介し、大気開放される。これにより、圧力室2b及び環状空間2cは、大気圧(ゲージ圧:0)となる。その後、作業員は、手動で第1開閉弁35及び第2開閉弁38を閉位置に切り換える。図5のタイムチャートは、この状態からスタートしている。
【0068】
流動物供給装置1を起動させるため、作業員が、手動で残圧排気弁34を排気位置から加圧位置に切り換える(時点t0)。次に、作業員が、手動で第2開閉弁38を閉位置から開位置に切り換える(時点t1B)。このとき、第1開閉弁35は、閉位置に維持され、第2押圧部3Bにより供給されるエアの圧力が、第1押圧部3Aによる押圧力に先立って立ち上がる。そのため、第1圧力ポート5は大気圧で維持される一方、第2圧力ポート6の圧力は、空圧源30からのエアが供給されることにより上昇していく。第2分岐ライン32Bには、第2スピードコントローラ39が介在する。そのため、第2圧力ポート6の圧力は、第2スピードコントローラ39で設定された絞り量に応じた速度で、大気圧から第2押圧力P2へと上昇する。
【0069】
作業員は、第2開閉弁38の切換操作から所定時間が経過するのを待機する。待機中に、第2圧力ポート6の圧力が第2押圧力P2に到達する(時点t2B)。所定時間は、第2押圧力P2の圧力値及び第2スピードコントローラ39で設定された圧力上昇速度に応じて、適宜決定される。
【0070】
所定時間の経過後、すなわち環状空間2cに供給されるエアの圧力が第2押圧力P2に到達した後、作業員は、手動で第1開閉弁を開位置に切り換える(時点t1A)。すると、第1圧力ポート5の圧力は、空圧源30からのエアが供給されることにより上昇していく。第1分岐ライン32Aには、第1スピードコントローラ36が介在する。第1圧力ポート5の圧力は、第1スピードコントローラ36で設定された絞り量に応じた速度で、大気圧から上昇し、第1押圧力P1に到達する(時点t2A)。
【0071】
図示例では、第1スピードコントローラ36で設定された圧力上昇速度は、第2スピードコントローラ39で設定された圧力上昇速度と同じであるが、これは単なる一例である。第2押圧力P2への到達後に第1圧力ポート5の圧力上昇を開始させる本実施形態において、圧力上昇速度はどちらが速くてもよい。
【0072】
図2及び図6は、カートリッジ90が新品状態であり、ピストン7が上死点(TDC)にある。ピストン7が上死点にあるとき、カートリッジ90の軸方向長さが最大化され、収容空間2aの容積が最大化され、圧力室2bは最小化される。ピストン7の収容空間2a側の端面は、新品カートリッジ90Nの受圧ヘッド94に当接する。
【0073】
図6を参照して、本実施形態では、流動物Fの吐出の開始のため第1押圧部3A及び第2押圧部3Bが起動するときに、第2押圧部3Bにより環状空間2cに供給されるエアの圧力が、第2押圧力P2に到達する。その後に、第1押圧部3Aにより圧力室2bに供給されるエアの圧力が、第1押圧力P1に到達する。特に、本実施形態では、第2押圧部3Bにより供給されるエアの圧力の上昇中は、圧力室2bの圧力は大気圧のまま維持されている。第2押圧部3Bによる環状空間2cの圧力上昇開始から環状空間2cの圧力上昇完了まで、一貫して、圧力室2bの圧力は環状空間2cの圧力よりも低く維持される。
【0074】
ここで、環状空間2cへの圧力供給がなく、ピストン7がカートリッジ90の受圧ヘッド94を他端部から一端部に向けて第1押圧力P1で押圧する場合を仮想する。この場合、充填容器91内の流動物Fに、第1押圧力P1に応じた高圧が付与される。それにより、流動物Fが流出口92より流出する一方、流動物Fは、充填容器91の内周面に高圧を付与する。充填容器91は薄膜で成形されているため、ピストン7のわずかな傾きなどに起因して押圧する軸が偏り、充填容器91が中間部で折れ曲がるように変形したり、内外の差圧の急激な変動により充填容器91が破損するおそれがある。
【0075】
そこで、本実施形態では、環状空間2cに第2押圧力P2のエアが供給され、充填容器91の外周面が第2押圧力で押し返される。第2押圧力P2により薄膜の充填容器91の外周面が十分に支えられ、内圧と外圧の差圧も小さい状態で流出口92方向への第1押圧力P1が付与される。よって、充填容器91がひしゃげるのを抑制したうえで、充填容器91の破裂を防止できる。ピストン7の上死点からの摺動に応じて、充填容器91内の流動物Fは流出口92から安定して吐出される。
【0076】
本実施形態では、吐出の開始において、第2押圧部3Bにより供給されるエアの圧力が第2押圧力P2に到達してから、第1押圧部3Aによる押圧力が第1押圧力P1に到達する。第1押圧部3A及び第2押圧部3Bが安定動作に入る前の過渡期においても、充填容器91が破裂するおそれを低減できる。
【0077】
ピストン7が上死点から摺動すると、ピストン7が受圧ヘッド94に当接する状態を維持しつつ、充填容器91の可撓性の高さに起因してカートリッジ90は減容されていく。収容空間2aが圧縮され、収容空間2aの一部としての環状空間2cも圧縮されていく。圧力室2bは膨張するが、第1押圧部3Aは第1押圧力P1のエアを供給し続けており、圧力室2bの内圧は第1押圧力P1で安定する。
【0078】
環状空間2cの圧縮に伴い、環状空間2cに供給されるエアの圧力が上昇するおそれがある。本実施形態では、第2分岐ライン32Bにリリーフ機能を備えた二次レギュレータ37が設けられている。二次レギュレータ37の内部のリリーフ弁は、自身を基準として第2圧力ポート6側の圧力を第2押圧力P2で維持するように作動する。そのため、環状空間2cが圧縮されても、即座に二次レギュレータ37のリリーフ弁の作用で環状空間2cの内圧は第2押圧力P2で保たれる。よって、第1押圧力P1が環状空間2cの圧力に押し負けて吐出が不安定となることはなく流動物Fの吐出動作を安定的に継続できる。
【0079】
ピストン7が下死点(BDC)まで移動すると(図7Aを参照)、近接センサ11が検出信号を出力する。コントローラ10は、検出信号に応じて警報器18を作動させる。作業員は、吐出を停止すべき時期が到来したことを知ることができる。図5を参照して、作業員は、手動で残圧排気弁34を加圧位置から排気位置に切り換える(時点t3)。圧力室2b及び環状空間2cの圧力はどちらも、大気圧まで降圧する。残圧排気弁34の切換後に所定時間が経過すると、作業員は、手動で第1開閉弁35及び第2開閉弁38を開位置から閉位置に切り換える(時点t4)。
【0080】
図7Bを参照して、作業員は、カートリッジ90の交換のため、第1ヘッド21を容器本体20の一端部から取り外し、第2ヘッド22を容器本体20の他端部から取り外す。このとき、第1ヘッド21には流動物供給路85及び第2分岐ライン32Bが接続されたままでもよい。また、第2ヘッド22には第1分岐ライン32Aが接続されたままでもよい。
【0081】
図7Cを参照して、使い切ったカートリッジ90が、容器本体20の一端側の開口から排出される。この廃カートリッジ90Wは、新品カートリッジ90Nと比べて大きく減容されており、廃棄が容易である。併せて、新品カートリッジ90Nが、容器本体20の他端側の開口から容器本体20の内部に挿入される。このとき、新品カートリッジ90Nは、受圧ヘッド94から先に容器本体20内に挿入される。
【0082】
次に、図7Dを参照して、第1ヘッド21が容器本体20の他端部に装着され、新品カートリッジ90Nのノズル93bと螺合される。第2ヘッド22が容器本体20の一端部に装着される。このように、収容容器2が第1状態から第2状態に切り換えられる。第1状態でのピストン7の下死点は、第2状態において上死点となる。圧力室2bに第1押圧力P1のエアを供給することで、ピストン7は、一端部側の上死点から、他端部側の下死点へと摺動する。第2状態でのピストン7の下死点は、第1状態において上死点となる。
【0083】
このように、本実施形態に係る収容容器2はリバーシブル型に構成されている。交換時に作業員がピストン7の位置を戻す必要がなくなり、吐出動作の停止から再開までの時間を短縮できる。
【0084】
(第2実施形態)
次に、図8図10を参照して、上記実施形態との相違点を中心に第2実施形態に係る流動物供給装置1について説明する。
【0085】
図8を参照して、本実施形態に係る流動物供給装置1においては、残圧排気弁34、第1開閉弁35、2次レギュレータ37A、及び第2開閉弁38が電磁弁である。また、第1分岐ライン32A上において、第1開閉弁35よりも上流側に、圧力センサ12cが設けられている。2次レギュレータ37Aは、第1実施形態と異なり、例えば電空レギュレータなどの、リリーフ機能を備えると共に電気信号により圧力設定が可能な圧力制御弁である。圧力計12aは、一次レギュレータ33に付属し、一次レギュレータ33の一次圧(元圧P0)又は二次圧(第1押圧力P1)を指針で示し、作業員は目視で当該圧力を確認可能である。圧力センサ12cは、一次レギュレータ33の二次圧(別の言い方では、二次レギュレータ37Aの一次圧)を検出する。圧力センサ12dは、二次レギュレータ37Aの二次圧を検出する。
【0086】
図9を参照して、圧力センサ12c、12dが、コントローラ10に接続されている。コントローラ10は、残圧排気弁34、第1開閉弁35、2次レギュレータ37A、及び第2開閉弁38に接続されており、これらのバルブに駆動信号を出力する。
【0087】
図10を参照して、作業員が操作盤19で吐出動作を起動する入力操作を行うと、コントローラ10は、順次バルブの動作を制御する。
【0088】
まず、残圧排気弁34が排気位置から加圧位置に切り換えられる(時点t0)。次に、所定時間の経過後、第1開閉弁35及び第2開閉弁38が閉位置から開位置に切り換えられる(時点t1)。第2押圧部3Bにより供給されるエアの圧力と、第1押圧部3Aによる押圧力とが、同時に立ち上がる。
【0089】
本実施形態では、第1スピードコントローラ36で設定された圧力上昇速度が、第2スピードコントローラ39で設定された圧力上昇速度よりも遅い。また、第2押圧力P2は、第1押圧力P1よりも流動物Fを正常に吐出するために必要な圧力差の所定値Pnだけ低圧である。そのため、第2圧力ポート6の圧力が、第1圧力ポート5の圧力よりも高い状態を維持して、第2押圧力P2に到達する(時点t2A)。これに遅れて、第1圧力ポート5の圧力が、第1押圧力P1に到達する(時点t2B)。
【0090】
本実施形態においても、吐出の開始において、第2押圧部3Bにより供給されるエアの圧力が第2押圧力P2に到達してから、第1押圧部3Aによる押圧力が第1押圧力P1に到達する。第1押圧部3A及び第2押圧部3Bが安定動作に入る前の過渡期においても、充填容器91が破裂するおそれを低減できる。
【0091】
本実施形態では、コントローラ10は、圧力センサ12dが取得した(二次レギュレータ37Aの)二次圧と、圧力センサ12cが取得した(二次レギュレータ37Aの)一次圧との圧力差が常に所定値Pnであるかどうかを監視する。コントローラ10は、流動物Fの消費に伴いカートリッジ90の減容が進行し、ピストン7の移動で環状空間2cの容積が減少することにより二次圧が第2押圧力P2以上に上昇した場合、電気信号により二次レギュレータ37Aのリリーフ弁を開放して二次圧を低下させる。これにより、常に一次圧と二次圧との圧力差を所定値Pnに維持することができ、カートリッジ90からの流動物Fの吐出量を安定化できる。
【0092】
近接センサ11が検出信号を出力すると、コントローラ10は、残圧排気弁34を加圧位置から排気位置に切り換える(時点t3)。これにより、第1圧力ポート5及び第2圧力ポート6が大気開放され、ピストン7の動作が停止する。所定時間の経過後、第1開閉弁35及び第2開閉弁38が開位置から閉位置に切り換えられる(時点t4)。このように、ピストン7が下死点まで移動した後には、ピストン7の停止動作を自動化できる。
【0093】
(変形例)
これまで、実施形態について説明したが、上記の構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜追加、変更、又は削除可能である。
【0094】
上記実施形態では、第1押圧部3Aが、第1押圧力P1のエアで駆動されるピストン7を有している。第1押圧部3Aは、カートリッジ90の他端部を一端部に向けて押すことができれば、どのように構成されていてもよく、プランジャ、油圧シリンダ、又はその他の機械的アクチュエータによって構成されてもよい。
【0095】
上記実施形態では、二次レギュレータ37,37Aを内部にリリーフ弁を備えた圧力制御弁であったが、これに替えて、リリーフ機能のない圧力制御弁と、別体のリリーフ弁とを組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 流動物供給装置
2 収容容器
2a 収容空間
2b 圧力室
2c 環状空間
3 押圧部
3A 第1押圧部
3B 第2押圧部
4 吐出口
4a アキシャル部
4b ラジアル部
5 第1圧力ポート
6 第2圧力ポート
6a 円環溝
6b アキシャル溝
7 ピストン
7a リング
7b 永久磁石
8 プラグ
10 コントローラ
11 近接センサ
12a 第1圧力センサ
12b 第2圧力センサ
12c,12d 圧力センサ
18 警報器
19 操作盤
20 容器本体
20a,20b 雄ねじ部
21 第1ヘッド
21a 円筒部
21b 雌ねじ部
21c 突出部
22 第2ヘッド
22a 円筒部
22b 雌ねじ部
23 ブラケット
30 空圧源
31 共通ライン
32A 第1分岐ライン
32B 第2分岐ライン
33 一次レギュレータ
34 残圧排気弁
35 第1開閉弁
36 第1スピードコントローラ
37,37A 2次レギュレータ
38 第2開閉弁
39 第2スピードコントローラ
80 ディスペンサ
81 吐出ノズル
85 流動物供給路
90 カートリッジ
91 充填容器
92 流出口
93 流出ヘッド
93a 底壁
93b ノズル
93c 外周壁
94 受圧ヘッド
94a 底壁
94b 外周壁
100 吐出システム
F 流動物
P0 元圧
P1 第1押圧力
P2 第2押圧力
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10