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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011654
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ソフトアクチュエータシステム
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113887
(22)【出願日】2023-07-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)刊行物名:2022年 電気学会 電子・情報・システム部門大会予稿集CD-ROM 発行者名:一般社団法人 電気学会 発行日:令和4年8月30日
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 章彦
(72)【発明者】
【氏名】塚原 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 洸樹
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081BB03
3H081CC20
3H081CC23
3H081DD06
3H081DD07
3H081HH10
(57)【要約】
【課題】空気圧方式を含む流体圧式のソフトアクチュエータの局所的な伸縮運動を非直線運動に変換するソフトアクチュエータシステムを提供する。
【解決手段】内部に作動流体を収納可能な流体室112を有し、該作動流体の圧力によって伸縮するソフトアクチュエータ110と、ソフトアクチュエータ110に装着され、ソフトアクチュエータ110と比べて剛性が高い材料からなる連結調整部材120と、複数の連結調整部材120を備えたソフトアクチュエータ110の連結調整部材120同士を連結させるとともに、連結された連結調整部材120相互の動作を規制する規制部材160と、を備える
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動流体を収納可能な流体室を有し、該作動流体の圧力によって伸縮するソフトアクチュエータと、
前記ソフトアクチュエータに装着され、前記ソフトアクチュエータと比べて剛性が高い材料からなる連結調整部材と、
複数の前記連結調整部材を備えた前記ソフトアクチュエータの前記連結調整部材同士を連結させるとともに、連結された前記連結調整部材相互の動作を規制する規制部材と、を備えるソフトアクチュエータシステム。
【請求項2】
隣接する前記ソフトアクチュエータのそれぞれの前記流体室が連通している、ことを特徴とする請求項1のソフトアクチュエータシステム。
【請求項3】
前記規制部材には連結方向に沿った複数の孔が形成され、
前記連結調整部材には該孔に挿通されるピンが形成され、
該孔内で該ピンが回転することで、前記連結調整部材の回転方向を規制する、ことを特徴とする請求項1に記載のソフトアクチュエータシステム。
【請求項4】
前記孔に挿通された前記ピンと、前記孔の内縁との間に所定の間隙が形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載のソフトアクチュエータシステム。
【請求項5】
前記規制部材が、前記ソフトアクチュエータと比べて剛性が高い弾性材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のソフトアクチュエータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットフィンガー、ロボットアーム、リハビリテーション機器などに使用される空気圧ソフトアクチュエータシステムに係り、詳しくはソフトアクチュエータの伸縮運動を非直線運動に変換するソフトアクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧ソフトアクチュエータとは、シリコーンなどの柔軟性のある素材からなり、加えた空気圧により伸縮・屈曲等の動作を行うものである。空気圧ソフトアクチュエータの任意の動作(伸縮、湾曲、ねじれなど)を実現する構造や機構が考案されており、その構造や機構が空気圧ソフトアクチュエータの動作を決定する大きな要素となっている。
【0003】
従来の空気圧ソフトアクチュエータにおいては、柔軟性のある素材(シリコーン等)および、アクチュエータの動作機能を満たすための構造、機構が一体となっているものが報告されている。例えば、(1)シートとワイヤを応用した構造(特許文献1参照)、(2)紙などの伸縮しないシートを応用した構造(特許文献2参照)、(3)ワイヤを応用した構造(特許文献3参照)、(4)ワイヤを応用したもの(特許文献4参照)等が知られている。
【0004】
さらに、内部に気体室を有し、可撓性の部材からなる複数のチャンバと、各チャンバの一端を互いに連結して連結部に気体を導通させる導通構造と、チャンバ間の気体の導通部を支点として各チャンバの膨張、収縮によって隣り合って互いに接触するチャンバどうしの向きを相対的に変位させて、複数のチャンバからなる構造体の全体形状を屈曲させる複数の蝶番構造と、を有し、気体圧力の増減によって屈曲、伸長動作する空気を含む流体式アクチュエータの技術が開示されている(特許文献5,6,7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US2016/0252110A1
【特許文献2】US2015/0266186A1
【特許文献3】特開2009-121658号公報
【特許文献4】特開2019-503278号公報
【特許文献5】特表2018-512304号公報
【特許文献6】特開2014-020462号公報
【特許文献7】特開2003-184819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4に開示された技術は、空気圧ソフトアクチュエータの初期形状や動作方向を決める構造または機構が空気圧ソフトアクチュエータに組み込まれている。そのため、空気圧ソフトアクチュエータの大幅な調節が困難であること、また、カスタマイズ等の余地や、使用用途が制限されてしまうおそれがあった。
【0007】
また、特許文献5~7に開示された技術は、長尺なソフトアクチュエータの全体形状を屈曲させるものであり、アクチュエータの一部を局所的に屈曲や伸縮させることは困難であった。
【0008】
ロボットフィンガー、ロボットアーム、リハビリテーション機器において、アクチュエータを用いることは、指定された箇所における動作の際に加える力や速度、角度などを自由に制御することを目的としている。しかしながら、特許文献1~7にて開示された技術では、これらの要求される動作を実現させるために、複雑な機構そして複数の空気圧方式を含む流体圧式アクチュエータを備える必要があり、故障の可能性を増大させるとともに、製造・組み立て・調整作業の煩雑さを増大させるおそれがあった。
【0009】
本発明は、前記背景におけるこれらの実情に鑑みてなされたものであり、当初から機構等を組み込むことなく、空気圧方式を含む流体圧式のソフトアクチュエータの局所的な伸縮運動を非直線運動に変換するソフトアクチュエータシステムを提供するものである。そして、本発明は、ソフトアクチュエータの初期形状や動作方向、屈曲箇所の調節を可能な構造を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、内部に作動流体を収納可能な流体室を有し、該作動流体の圧力によって伸縮するソフトアクチュエータと、ソフトアクチュエータに装着され、ソフトアクチュエータと比べて剛性が高い材料からなる連結調整部材と、複数の連結調整部材を備えたソフトアクチュエータの連結調整部材同士を連結させるとともに、連結された連結調整部材相互の動作を規制する規制部材と、を備えるソフトアクチュエータシステムである。
【0011】
本構成によれば、複数の連結調整部材を備えたソフトアクチュエータを連結させるとともに、連結された連結調整部材相互の動作を規制する規制部材と、を備えることで、当初から機構等を組み込むことなく、意図する初期形状を実現することができる。さらに複数の連結調整部材を連結する規制部材によって、ソフトアクチュエータが流体圧によって伸縮する際の動作方向を規制することや、動作量を調節することができる。
【0012】
本構成は、ロボットフィンガー、ロボットアーム、リハビリテーション機器において、アクチュエータに要求される初期形状、動作方向、動作量について、サーボモータ等を使った機構的なアクチュエータと同様な機能を実現できる。そして、本構成によって、形状適応性や柔軟性、伸縮性に富み、軽量で安価であること、素材を入手しやすいこと、大気中でも安定し、動作音がないというソフトアクチュエータの利点を享受することができる。さらに、電気的な問題等による急激な負荷の上昇、暴走等を防止する安定的な動作を実現することができる。
【0013】
また、本構成によれば、従来ロボットフィンガーなどに複雑かつ正確な動作をさせるためには、かなりの数の人工筋肉等のソフトアクチュエータを配置するか、もしくは、かなりの数のワイヤ等の押し引きが必要であったが、配置するアクチュエータの数を減少させるとともに、制御量も減らすことができることから、信頼性を向上させるとともに安価な制御システムとすることができる。
【0014】
なお、本発明におけるソフトアクチュエータは、ゴム等のエラストマー材料、または圧力下で拡開、伸縮、屈曲する、いわゆる人工筋肉やアコーディオン状構造で配列されたプラスチック材料、もしくは比較的に軟質の材料から形成されているものを適宜選択することができる。ソフトアクチュエータの製法については特に限定されず、例えば、エラストマー材料を成形することができる。ソフトアクチュエータの圧力を付加するための流体については、空気等の気体、水等の液体から適宜用途に応じて選択することができる。
【0015】
前記構成において、隣接するソフトアクチュエータのそれぞれの流体室が連通するように構成することができる。
【0016】
本構成は、流体室を連通することで、連通されたアクチュエータを同時に加圧、付勢する制御ができ、制御量を減らすことができる。
【0017】
本構成によれば、ソフトアクチュエータシステムの制御に要求される部位のサイズおよび動作形態に応じて、例えば相互に連通した複数の圧力室を有するアコーディオン状構造のソフトアクチュエータや、人工筋肉をシリーズやパラレルで連結した状態で用いることができる。
【0018】
前記構成において、規制部材には連結方向に沿った複数の孔が形成され、連結調整部材には該孔に挿通されるピンが形成され、該孔内で該ピンが回転することで、連結調整部材の回転方向を規制するように構成することができる。
【0019】
本構成は、規制部材に形成された孔に挿通されたピンにより、連結調整部材を規制部材に対して任意の方向に回転させることができる。ここで孔は、円孔でも、楕円孔でも、矩形でも良く、設計に応じて連結調整部材の回転を規制できるように選択することができる。また、孔の穿孔方向は、ソフトアクチュエータシステムの意図する初期状態を実現させるために、ソフトアクチュエータに対して、斜めの方向に形成された孔とすることや、ソフトアクチュエータを初期的にねじれた状態とすることもできる。
【0020】
前記構成において、孔に挿通されたピンと、孔の内縁との間に所定の間隙が形成されているように構成することができる。
【0021】
本構成によれば、ピンと孔の内縁との間に所定の間隙があることで、規制部材に対して連結調整部材が自由に動くことができ、例えばロボットフィンガーなどの可動範囲を任意に広げることができる。
【0022】
前記構成において、規制部材が、ソフトアクチュエータと比べて剛性が高い弾性材料からなる、ことを特徴とするように構成することができる。
【0023】
本構成によれば、規制部材自体の弾性により、ソフトアクチュエータシステムが屈曲等の動作をした後に、初期状態へ復帰することを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、空気圧方式を含む流体圧式のソフトアクチュエータの局所的な伸縮運動を非直線運動に変換するソフトアクチュエータシステムを提供するものである。そして、本発明は、当初から機構等を組み込むことなく、ソフトアクチュエータの初期形状や動作方向、屈曲箇所の調節を可能な構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る要素技術となる構成部品である。
図2】本発明の第1実施形態に係るソフトアクチュエータシステムの構造及び機能説明図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るソフトアクチュエータシステムの全体概要図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るソフトアクチュエータシステムの動作例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態の説明>
以下、図1図2を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る要素技術となる構成部品である。図2は、本発明の第1実施形態に係るソフトアクチュエータシステムの構造及び機能説明図である。
以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は、同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0027】
本発明に係るソフトアクチュエータシステムは、内部に作動流体を収納可能な流体室を有し、該作動流体の圧力によって伸縮するソフトアクチュエータと、ソフトアクチュエータに装着され、ソフトアクチュエータと比べて剛性が高い材料からなる連結調整部材と、複数の連結調整部材を備えたソフトアクチュエータの連結調整部材同士を連結させるとともに、連結された連結調整部材相互の動作を規制する規制部材と、を備えるものであれば、どのような構成であっても構わない。
【0028】
図1には、本実施形態に係るソフトアクチュエータシステムを構成する要素技術を示し、図2には、これらの要素技術をアセンブリしたソフトアクチュエータシステムの全体構成および動作説明を示している。
【0029】
図1(A)は、一般的なソフトアクチュエータの概念図を示す。ソフトアクチュエータは、軽量で柔軟な材料が変形することによりアクチュエータとして機能する材料、素子、デバイスである。ソフトアクチュエータ110は、弾性体を材料とする容器114の内部に作動流体Airを収納可能な流体室112を有し、作動流体Airの圧力によって矢視方向に伸縮する。
【0030】
図1(A)では、流体室112の上部から作動流体であるAirの注入および排出によって容器114の矢印方向への伸縮を行う。伸縮の方向については、容器114の壁の厚みを変えたり、マッキベン型人工筋肉のように伸縮方向と直角方向に剛性の高い材料を巻き付けたりして方向性を設定することができる。
【0031】
容器114の材料には、ゴム等のエラストマー材料、または圧力下で拡開、伸縮、屈曲する、いわゆる人工筋肉やアコーディオン状構造で配列されたプラスチック材料、もしくは比較的に軟質の材料から形成されているものを適宜用途に応じて選択することができる。ソフトアクチュエータの製法については特に限定されず、例えば、エラストマー材料を成形することができる。ソフトアクチュエータの圧力を付加するための流体については、空気等の気体、水等の液体から適宜選択することができる。
【0032】
図1(B)は、連結調整部材120の一例であり、ソフトアクチュエータ110に図2に示すように装着される。装着は、機械的な取り付けでも、接着でも良く、特に限定されない。本実施形態における連結調整部材120は、ヒンジに類似した形態を適用した。すなわち、ソフトアクチュエータ110と比べて剛性の高い板状の装着版128の一側面(図1(B)の左側)のほぼ中央にヒンジ管124が一つ形成され、他側面(図1(B)の右側)の上端側、下端側にそれぞれヒンジ管126,126が形成されている。ヒンジ管126,126は、それぞれ上下のヒンジ管126,126の間にヒンジ管124が収まるように配置されている。ヒンジ管124,126は、中央に孔122を有する管状に形成され、図1(C)のピン150が挿通される。
【0033】
連結調整部材120の材料は、ソフトアクチュエータ110と比べて剛性の高いものであれば特に限定されず、金属、樹脂等から選択することができる。
【0034】
図2を参照すると、ソフトアクチュエータ110と、ソフトアクチュエータ110に装着された連結調整部材120と、隣り合う連結調整部材120のヒンジ管124とヒンジ管126とが、それぞれの孔122を連通させるように互いに嵌入されている。そして、この孔122にピン150が挿通され、ピン150の端部が突出するように配置して、ソフトアクチュエータ110(110a、110b、110c、110d)の連結調整部材120(120a、120b、120c、120d)同士を連結させている。
【0035】
本実施形態における規制部材160,170は、長尺の薄板であり、連結調整部材120の連結方向に沿った複数の孔162,164,172,174が形成され、この孔162,164,172,174にピン150が挿通される。
このように要素技術であるソフトアクチュエータ110、連結調整部材120、ピン150、規制部材160,170をアセンブリすることでソフトアクチュエータシステム100が構成される。
【0036】
以下、規制部材160,170に機能について順に説明する。
ここでは、一例として、規制部材160の孔162は円孔、孔164は長孔と、規制部材179の孔172は長孔、孔174は円孔としているが、孔の形状はこれらには限定されない。例えば孔の開口をピンに対して大きく設定すれば、ソフトアクチュエータシステム100は、直線状態に対して揺動する範囲を増加させることができ、ソフトアクチュエータ110への応力集中等を抑制することもできる。
【0037】
規制部材160の孔162、孔164にピン150が挿通されると、連結調整部材120a、120b、120cの位置関係が固定される。ソフトアクチュエータ110a、110b、110cの流体室112に作動流体が注入され、流体室112内の圧力が上昇すると、ソフトアクチュエータ110a、110b、110cは矢印Lの方向に伸びようとする。しかしながら、規制部材160が装着された連結調整部材120a、120b、120cによって、動作が規制される。
【0038】
ソフトアクチュエータ110aは、連結調整部材120a、120bとのピン150結合によって、図2の手前側に回転して屈曲する。ソフトアクチュエータ110bは、連結調整部材120a、120bおよび連結調整部材120b、120cとのピン150結合と、規制部材160による制限があるため、ソフトアクチュエータ110aのように回転屈曲動作はできない。しかしながら、伸縮方向に延びた長孔である孔164によって、長孔の分だけ矢印L方向に伸びる。ソフトアクチュエータ110cも、ソフトアクチュエータ110bと同様な動作をする。
【0039】
次に、規制部材170の孔172、孔174にピン150が挿通されると、連結調整部材120b、120c、120dの位置関係が固定される。規制部材170は、規制部材160と異なり、中央に形成された孔174を中心とした屈曲形状となっており、初期状態を決定している。ソフトアクチュエータ110b、110c、110dの流体室112に作動流体が注入され、流体室112内の圧力が上昇すると、ソフトアクチュエータ110b、110cは矢印Lの方向へ、ソフトアクチュエータ110dは矢印Sの方向に伸びようとする。しかしながら、規制部材160が装着された連結調整部材120b、120c、120dによって、動作が規制される。
【0040】
ソフトアクチュエータ110bは、連結調整部材120b、120cとのピン150結合によって、図2の手前側に回転屈曲する。ソフトアクチュエータ110cは、連結調整部材120b、120cおよび連結調整部材120c、120dとのピン150結合と、規制部材170による制限があるため、ソフトアクチュエータ110bのように屈曲動作はできない。しかしながら、伸縮方向に延びた長孔である孔172によって、長孔の分だけ矢印L方向に伸びる。ソフトアクチュエータ110dは、屈曲した規制部材170の矢印Sの方向へ直線的に伸びる。
【0041】
このように連結調整部材120、および規制部材160,170の孔122,162,164,172,174に挿通されるピン150が回転することで、連結調整部材120の回転方向、動作方向を規制するとともにソフトアクチュエータシステム100の初期状態を決定することができる。
【0042】
本実施形態では孔の形状の一例として円孔、長孔を説明したが、これらの形状に限定されることはない。また、孔に挿通されるピンと孔の内縁との間に所定の間隙を設けて、規制部材に対して連結調整部材が自由に動くことができ、例えばロボットフィンガーなどの可動範囲を任意に広げることができる。
【0043】
また、規制部材170のように屈曲形状など、所定の形状に形成された規制部材を適用することで、ソフトアクチュエータシステム100に対して、任意の初期形状を与えることができる。
さらに、連結調整部材120、規制部材160,170の材質を適宜選択することで、ソフトアクチュエータ110の伸縮動作の許容量を変化させることもできる。例えば、規制部材170に弾性材料を適用することで、ソフトアクチュエータ110が加圧されたときには、矢印S方向の屈曲部分が矢印L方向の直線方向に伸びるが、減圧時には規制部材170の弾性変位によって初期状態へ復帰させるのを容易にすることもできる。
【0044】
<第2実施形態の説明>
次に、図3,4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係るソフトアクチュエータシステムの全体概要図である。図4は、本発明の第2実施形態に係るソフトアクチュエータシステムの動作例の写真である。
【0045】
図3には、本発明の第2実施形態に係るアコーディオン状構造のソフトアクチュエータシステム200を示す。アコーディオン状構造のソフトアクチュエータとは、特許文献7に開示されているように、主液室へ液体が移動することで屈曲動作を行う長尺な可動部と、前記主液室との間で液体が移動するリザーバ室と、このリザーバ室及び前記主液室の流体移動を行うポンプ部と、このポンプ部の駆動制御を行うポンプ駆動部とを備えたフレキシブルアクチュエータ、をいう。
【0046】
図3(B)に示すソフトアクチュエータ210は、容器となる外郭214内に形成された連通した複数の流体室212を有しており、空気等の気体もしくは液体等の流体が流体室に注入され、流体室212の圧力が上昇し、圧力が上昇することで、湾曲した状態から直線状に伸びる。
【0047】
図3(A)の矢視Xから見た図3(C)に示すように連結調整部材220は、第1実施形態と同様に隣り合う連結調整部材220のヒンジ管224、226が相互に嵌入されて組み合わさり、孔222にピン250が挿通される。そして、図3(A)に示すように、ソフトアクチュエータ210に装着版228を介して装着される。
【0048】
図3(D)に示すように、規制部材260は、長尺の薄板であり、連結調整部材220の連結方向に沿った複数の孔262が形成され、この孔262にピン250が挿通される。
【0049】
本実施形態は、ソフトアクチュエータシステムの制御に要求される部位のサイズおよび動作形態に応じて、規制部材260を適宜配置することで、相互に連通した複数の圧力室を有するアコーディオン状構造のソフトアクチュエータに適用することができる。
【0050】
次に、このアコーディオン状構造のソフトアクチュエータシステム200について、いくつかの実施例を示す。図4(A)(B)(C)は、いずれもソフトアクチュエータシステム200の初期形状を示したものであり、規制部材260の形態によって、湾曲した状態(A)、ほぼ直線の状態(B)、反った状態(C)を実現することができる。
【0051】
図4(D)(E)には、初期もしくはアクチュエータ付勢のときにねじれ状態としたり、曲げ状態にしたりすることができる。
【0052】
本発明の変形の態様は、以上の説明に限定されず、例えば次のような変形も可能となる。
(1)規制部材もしくは連結調整部材の孔間の軸距離の長さを変更することにより、任意の初期形状とすることができる。例えば、軸距離を長くすることで反り返る形状になり、短くすることで湾曲した形状となる。
(2)孔とピンのサイズを変え、両者の間に間隙を設けることで、回転方向の可動域を調節し、ねじれ動作を発生させることができる。
(3)規制部材もしくは連結調整部材の材質をゴムなどの伸縮性を有する材質に変更することで、伸び動作が可能となる。
(4)ピンの表面粗さを調節することで、蝶番の開閉動作に抵抗を持たせることができる。
(5)規制部材もしくは連結調整部材をバネ材料もしくはバネを付加することで、初期形状の保持や、復帰を容易にすることができる。
(6)本発明の第1実施形態において、ヒンジ(蝶番)に類似した形態の連結調整部材を適用しているが、ヒンジ(蝶番)には、多くの形態があり、平蝶番(平丁番)、長蝶番(長丁番)、抜き差し蝶番(抜き差し丁番)、スプリング蝶番 (スプリング丁番)、スライドヒンジ(スライド丁番)、隠し蝶番 (隠し丁番)トルクヒンジ(フリーストップヒンジ)、ダンパーヒンジ (ソフトダウンヒンジ)、クリックヒンジ等、一般に流通しているものから、ソフトアクチュエータシステムの要求に応じて適宜選択することができることは言うまでもない。
【0053】
以上説明したように、本発明は、空気圧方式を含む流体圧式のソフトアクチュエータの局所的な伸縮運動を非直線運動に変換するソフトアクチュエータシステムを提供することができる。さらに、本発明は、当初から機構等を組み込むことなく、ソフトアクチュエータの初期形状や動作方向、屈曲箇所の調節を可能な構造を提供することができる。
なお、本開示の態様は上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100,200・・・ソフトアクチュエータシステム
110,210・・・ソフトアクチュエータ
112,212・・・流体室
114・・・容器
120,220・・・連結調整部材
122,162,164,172,174,222,262・・・孔
124,126,224,226・・・連結調整部材
128,228・・・装着版
160,170,260・・・規制部材
図1
図2
図3
図4