(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025116549
(43)【公開日】2025-08-08
(54)【発明の名称】反射吸収特性測定方法及び反射吸収特性評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20250801BHJP
【FI】
G01N21/41 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011036
(22)【出願日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】西田 正弥
(72)【発明者】
【氏名】久保田 博信
(72)【発明者】
【氏名】谷田 登
(72)【発明者】
【氏名】白井 善晶
(72)【発明者】
【氏名】住吉 真聡
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 功一郎
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ01
2G059MM03
2G059MM04
(57)【要約】
【課題】MIM構造を有する基板を用いて、金属粒子と金属層との間のプラズモン結合を効果的に活用することが可能な反射吸収特性測定方法を提供する。
【解決手段】厚さが30nm未満である金属層11と、金属層11の表面に設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面に設けられた金属粒子13と、をこの順に含むMIM構造基板1を用いて、MIM構造基板1の金属層11側の面から、局在表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定する工程を備える、反射吸収特性測定方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが30nm未満である金属層と、前記金属層の表面に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜の表面に設けられた金属粒子と、をこの順に含むMIM構造基板を用いて、前記MIM構造基板の前記金属層側の面から、局在表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定する工程を備える、反射吸収特性測定方法。
【請求項2】
前記金属層の厚さが25nm以下である、請求項1に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項3】
前記金属層の厚さが5nm以上、25nm以下である、請求項1に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項4】
前記金属層は、金からなり、
前記金属粒子は、金粒子である、請求項1に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項5】
前記MIM構造基板は、絶縁性基板をさらに含み、
前記絶縁性基板と前記絶縁膜との間に前記金属層が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項6】
前記MIM構造基板は、前記絶縁性基板の前記金属層側の表面に設けられた下地金属層をさらに含む、請求項5に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項7】
前記下地金属層の厚さが3nm以下である、請求項6に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項8】
前記下地金属層の厚さが1nm以下である、請求項6に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項9】
前記下地金属層は、クロム、チタン又はアルミニウムからなる、請求項6に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項10】
前記金属粒子の平均粒子径が50nm以上、200nm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の反射吸収特性測定方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の反射吸収特性測定方法を用いて、反射吸収特性の変化を評価する工程を備える、反射吸収特性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射吸収特性測定方法及び反射吸収特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオセンサー等のセンサーの一例として、金、銀等の金属の表面に光を照射したときに発現する表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)を利用したセンサーが提案されている。
【0003】
表面プラズモンとは、金属表面に局在した自由電子の集団的振動に基づく疎密波である。金属表面に光が入射するとき、金属表面に局在する表面プラズモンと入射光が共鳴する条件になると、入射光のエネルギーが金属表面へと移動する。この現象が表面プラズモン共鳴と呼ばれる。表面プラズモン共鳴には、金属薄膜を用いる伝搬型の表面プラズモン共鳴、金属ナノ粒子又は金属ナノ構造を用いる局在型の表面プラズモン共鳴がある。
【0004】
例えば、金属に物質が吸着する等して金属の表面状態が変化すると、金属表面近傍の屈折率が変化するが、屈折率の変化に応じて共鳴波長がシフトする。そのため、共鳴波長の変化からセンシングを行うことができる。
【0005】
特許文献1には、金属粒子の配置を制御するための複雑なパターン形成技術を必要とせず、製造が容易であり、かつ、検出感度の高い局在型の表面プラズモンセンサーを構築することのできるSPR測定用基板及びその製造方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、絶縁性基板上に金属層と絶縁層とがこの順で構成されており、上記絶縁層上に金属粒子からなる単層の金属コロイド結晶が形成されており、上記金属粒子の平均粒子径が50nm以上500nm以下であり、上記金属粒子の間隔が50nm以上1000nm以下であることを特徴とするSPR測定用基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のSPR測定用基板では、金属層と絶縁層と金属粒子とにより、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造が金属層上に形成されている。
【0008】
特許文献1に記載のSPR測定用基板を用いて、表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定する場合、基板の各金属要素でプラズモン共鳴が生じるが、一般的には金属粒子間の距離に比べて金属粒子と金属層との間の距離が小さいため、金属粒子と金属層との間のプラズモン共鳴が最も強くなる。しかしながら、金属粒子と金属層との間のプラズモン結合を効果的に活用する点においては改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、MIM構造を有する基板を用いて、金属粒子と金属層との間のプラズモン結合を効果的に活用することが可能な反射吸収特性測定方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記測定方法を用いた反射吸収特性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の反射吸収特性測定方法は、厚さが30nm未満である金属層と、上記金属層の表面に設けられた絶縁膜と、上記絶縁膜の表面に設けられた金属粒子と、をこの順に含むMIM構造基板を用いて、上記MIM構造基板の上記金属層側の面から、局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance:LSPR)による反射吸収特性を測定する工程を備える。
【0011】
本発明の反射吸収特性評価方法は、本発明の反射吸収特性測定方法を用いて、反射吸収特性の変化を評価する工程を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、MIM構造を有する基板を用いて、金属粒子と金属層との間のプラズモン結合を効果的に活用することが可能な反射吸収特性測定方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記測定方法を用いた反射吸収特性評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の範囲内である実施例に係る反射吸収特性測定方法の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の範囲外である比較例に係る反射吸収特性測定方法の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、MIM構造基板の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、MIM構造基板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、MIM構造基板の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、MIM構造基板のさらに別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の範囲内である実施例に係る反射吸収特性測定方法を用いた反射率の結果を示すグラフの一例である。
【
図8】
図8は、本発明の範囲外である比較例に係る反射吸収特性測定方法を用いた反射率の結果を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の反射吸収特性測定方法及び反射吸収特性評価方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。以下の実施形態において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
本発明の反射吸収特性測定方法では、厚さが30nm未満である金属層と、上記金属層の表面に設けられた絶縁膜と、上記絶縁膜の表面に設けられた金属粒子と、をこの順に含むMIM構造基板を用いて、上記MIM構造基板の上記金属層側の面から、局在表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の反射吸収特性評価方法では、本発明の反射吸収特性測定方法を用いて、反射吸収特性の変化を評価することを特徴とする。
【0018】
上述のとおり、金属に物質が吸着する等して金属の表面状態が変化すると、金属表面近傍の屈折率が変化するが、屈折率の変化に応じて共鳴波長がシフトする。したがって、MIM構造基板を用いて局在表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定し、反射吸収特性の変化を評価することで、バイオセンサー等のセンサーとして利用することができる。
【0019】
また、本発明の反射吸収特性評価方法においては、反射吸収特性の変化として、共鳴ピークシフトの変化を評価してもよく、共鳴ピーク深さの変化を評価してもよく、両方の変化を評価してもよい。共鳴ピークシフトについては、長波長側へのシフトであってもよく、短波長側へのシフトであってもよい。
【0020】
図1は、本発明の範囲内である実施例に係る反射吸収特性測定方法の一例を示す模式図である。
【0021】
図1に示すMIM構造基板1は、厚さが30nm未満である金属層11と、金属層11の表面に設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面に設けられた金属粒子13と、をこの順に含む。
【0022】
図1に示すように、MIM構造基板1は、絶縁性基板10をさらに含むことが好ましい。その場合、絶縁性基板10と絶縁膜12との間に金属層11が設けられている。絶縁性基板10は、例えば、ガラス基板である。
【0023】
図1に示す実施例では、MIM構造基板1の金属層11側の面(
図1では下面)に測定プローブ20が配置されている。光ファイバ21は、図示しない光源からの光を測定プローブ20に導き、測定プローブ20からMIM構造基板1の金属層11へ入射光LIとして照射する。光ファイバ21は、金属層11で反射した光を反射光LRとして受光し、図示しない分光器に導く。分光器で分光された反射光LRは、光検出器によって検出される。光検出器によって検出された光から、反射吸収特性を測定する。このように、
図1に示す実施例では、MIM構造基板1の金属層11側の面(
図1では下面)から反射吸収特性を測定する。さらに、反射吸収特性の変化を評価することで、センサーとして利用することができる。
【0024】
図2は、本発明の範囲外である比較例に係る反射吸収特性測定方法の一例を示す模式図である。
【0025】
図2に示す比較例では、MIM構造基板1の金属粒子13側の面(
図2では上面)に測定プローブ20が配置されている。光ファイバ21は、図示しない光源からの光を測定プローブ20に導き、測定プローブ20からMIM構造基板1の金属粒子13又は金属層11へ入射光LIとして照射する。光ファイバ21は、金属粒子13又は金属層11で反射した光を反射光LRとして受光し、図示しない分光器に導く。分光器で分光された反射光LRは、光検出器によって検出される。光検出器によって検出された光から、反射吸収特性を測定する。このように、
図2に示す比較例では、MIM構造基板1の金属粒子13側の面(
図2では上面)から反射吸収特性を測定する。さらに、反射吸収特性の変化を評価することで、センサーとして利用することができる。
【0026】
上述のとおり、表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定する場合、MIM構造基板1の各金属要素でプラズモン共鳴が生じるが、一般的には金属粒子13間の距離に比べて金属粒子13と金属層11との間の距離が小さいため、金属粒子13と金属層11との間のプラズモン共鳴が最も強くなる。
【0027】
しかしながら、
図2に示す比較例のように、MIM構造基板1の金属粒子13側の面から反射吸収特性を測定する方法では、金属粒子13と金属層11との間のプラズモン結合を充分に活用できていないことが判明した。その理由は、金属粒子13の影響で、金属粒子13と金属層11との間のプラズモン共鳴が減衰するためではないかと推定される。
【0028】
これに対して、
図1に示す実施例のように、金属層11の厚さを30nm未満まで薄くして、MIM構造基板1の金属層11側の面から反射吸収特性を測定する方法では、
図2に示す比較例と比べて金属粒子13の影響を受けにくいため、金属粒子13と金属層11との間のプラズモン結合を効果的に活用することができる。
【0029】
図3は、MIM構造基板の一例を模式的に示す斜視図である。
図4は、MIM構造基板の一例を模式的に示す断面図である。
【0030】
図3及び
図4に示すMIM構造基板1は、
図1に示すMIM構造基板1と共通の構成を有する。
【0031】
MIM構造基板1が絶縁性基板10を含む場合、金属層11は、絶縁性基板10の一方の主面(
図3及び
図4では上面)に設けられていることが好ましい。金属層11は、絶縁性基板10の一方の主面の全体に設けられていてもよく、絶縁性基板10の一方の主面の一部に設けられていてもよい。
【0032】
金属層11は、例えば、金属膜である。金属膜は、例えば、蒸着、スパッタリング、化学めっき等の方法により形成することができる。
【0033】
金属層11は、例えば、金からなる。金属層11の種類としては、強いプラズモン共鳴を示し得る金又は銀等の貴金属が好適である。
【0034】
MIM構造基板1の金属層11側の面から反射吸収特性を測定しやすくするために、金属層11の厚さは、30nm未満であり、好ましくは25nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。一方、金属層11の厚さは、例えば3nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。
【0035】
絶縁膜12は、金属層11の表面に設けられている。MIM構造基板1が絶縁性基板10を含む場合、絶縁膜12は、金属層11の絶縁性基板10とは反対側の表面に設けられている。絶縁膜12は、金属層11の表面の全体に設けられていてもよく、金属層11の表面の一部に設けられていてもよい。なお、絶縁膜12は、金属層11が設けられている側の絶縁性基板10の主面(
図3及び
図4では上面)に加えて、金属層11が設けられていない側の絶縁性基板10の主面(
図3及び
図4では下面)に設けられていてもよい。
【0036】
絶縁膜12は、表面が正又は負の電荷を有することが好ましい。
【0037】
図4に示す例では、絶縁膜12の表面は、正電荷を有する。正電荷を有する絶縁膜12としては、例えば、アミノ基を有するシリカ膜等が挙げられる。
【0038】
正電荷を有する絶縁膜12は、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MEPTMS)等のメルカプト基を有する第1のシランカップリング剤を用いてシリカ層を金属層11の表面に形成した上で、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)等の第2のシランカップリング剤を用いてアミノ基をシラン層に結合させたり、又は、ポリエチレンイミンやポリ(2-ビニルピリジン)等のカチオン基を有する高分子を表面に吸着させたりして形成することができる。
【0039】
絶縁膜12の厚さは特に限定されず、金属層11の厚さより小さくてもよく、金属層11の厚さと同じでもよく、金属層11の厚さより大きくてもよい。
【0040】
金属粒子13は、絶縁膜12の表面に設けられている。具体的には、金属粒子13は、絶縁膜12の金属層11とは反対側の表面に設けられている。金属粒子13は、絶縁膜12の表面の全体に設けられていてもよく、絶縁膜12の表面の一部に設けられていてもよい。
【0041】
金属粒子13は、絶縁膜12の表面において単層に配列されていることが好ましい。言い換えると、金属粒子13は、絶縁膜12の表面において2次元的に配列されていることが好ましい。この場合、金属粒子13は、絶縁膜12の表面の少なくとも一部の領域において単層に配列されていればよい。
【0042】
例えば、光学顕微鏡、電子顕微鏡等の顕微鏡を用いてMIM構造基板1を観察した際、試料台の高さを一定の高さに設定したときのみ金属粒子13が観察される場合、金属粒子13が絶縁膜12の表面において単層に配列されていると確認することができる。
【0043】
図3及び
図4に示すMIM構造基板1において、絶縁性基板10の一方の主面の一部に金属層11が設けられている場合、金属粒子13は、金属層11上の絶縁膜12の表面にのみ選択的に設けられていることが好ましい。
【0044】
金属粒子13は、絶縁膜12の表面電荷と反対符号の電荷を有することが好ましい。
図4に示す例では、金属粒子13の表面は、負電荷を有する。
【0045】
図4に示すように、例えば、絶縁膜12の表面が正電荷を有し、金属粒子13の表面が負電荷を有する場合、金属粒子13同士は、金属粒子13の間に働く静電的な反発力によって、間隔を空けて絶縁膜12の表面に配列される。一方、絶縁膜12の表面が正電荷を有するため、負電荷を有する金属粒子13は静電引力によって絶縁膜12の表面に吸着する。
【0046】
図3に示すMIM構造基板1のように、絶縁膜12の表面には、金属粒子13が規則的に配列された2次元コロイド結晶が形成されていることが好ましい。この場合、金属粒子13同士は、間隔を空けて絶縁膜12の表面に2次元的に規則的に並んで配置されていることが好ましい。
【0047】
金属粒子13は、例えば、金粒子である。金属粒子13の種類としては、強いプラズモン共鳴を示し得る金又は銀等の貴金属が好適である。
【0048】
金属粒子13の平均粒子径は特に限定されないが、例えば、50nm以上、200nm以下である。金属粒子13の平均粒子径は、100nm以上であってもよく、一方、150nm以下であってもよい。
【0049】
金属粒子13の平均粒子径は、MIM構造基板1を厚さ方向から見た平面視において、100個以上、200個以下の金属粒子13を対象とする粒子径(直径)の平均値として測定される。
【0050】
金属粒子13同士の間隔は特に限定されない。
【0051】
金属粒子13同士の間隔は、MIM構造基板1を厚さ方向から見た平面視において、100個以上、200個以下の金属粒子13を対象とする粒子間距離の平均値として測定される。
【0052】
図5は、MIM構造基板の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【0053】
図5に示すMIM構造基板1Aは、絶縁性基板10の金属層11側の表面に設けられた下地金属層14をさらに含むことを除いて、
図3に示すMIM構造基板1と共通の構成を有する。
【0054】
下地金属層14は、例えば、金属膜である。金属膜は、例えば、蒸着、スパッタリング、化学めっき等の方法により形成することができる。
【0055】
下地金属層14は、例えば、クロム(Cr)、チタン(Ti)又はアルミニウム(Al)からなる。これらの金属は、単体であってもよく、合金であってもよい。下地金属層14の種類は、金属層11の種類と異なることが好ましい。
【0056】
下地金属層14の厚さは、金属層11の厚さより小さいことが好ましい。下地金属層14の厚さは、例えば3nm以下であり、好ましくは1nm以下である。一方、下地金属層14の厚さの下限は特に限定されないが、例えば0.1nm以上である。
【0057】
図6は、MIM構造基板のさらに別の一例を模式的に示す平面図である。
【0058】
図6に示すMIM構造基板1Bのように、金属粒子13が2次元的に規則的に配列されている領域(ドメイン)が、向きを変えて凝集した多結晶状態になっていてもよい。
【0059】
なお、絶縁膜12の表面に金属粒子13の2次元コロイド結晶が形成されている場合、金属粒子13が規則的に配列されている領域のみが存在してもよく、金属粒子13が規則的に配列されている領域に加えて、金属粒子13が不規則に配列されている領域が存在してもよい。
【0060】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0061】
<1>
厚さが30nm未満である金属層と、上記金属層の表面に設けられた絶縁膜と、上記絶縁膜の表面に設けられた金属粒子と、をこの順に含むMIM構造基板を用いて、上記MIM構造基板の上記金属層側の面から、局在表面プラズモン共鳴による反射吸収特性を測定する工程を備える、反射吸収特性測定方法。
【0062】
<2>
上記金属層の厚さが25nm以下である、<1>に記載の反射吸収特性測定方法。
【0063】
<3>
上記金属層の厚さが5nm以上、25nm以下である、<1>又は<2>に記載の反射吸収特性測定方法。
【0064】
<4>
上記金属層は、金からなり、
上記金属粒子は、金粒子である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の反射吸収特性測定方法。
【0065】
<5>
上記MIM構造基板は、絶縁性基板をさらに含み、
上記絶縁性基板と上記絶縁膜との間に上記金属層が設けられている、<1>~<4>のいずれか1つに記載の反射吸収特性測定方法。
【0066】
<6>
上記MIM構造基板は、上記絶縁性基板の上記金属層側の表面に設けられた下地金属層をさらに含む、<5>に記載の反射吸収特性測定方法。
【0067】
<7>
上記下地金属層の厚さが3nm以下である、<6>に記載の反射吸収特性測定方法。
【0068】
<8>
上記下地金属層の厚さが1nm以下である、<6>又は<7>に記載の反射吸収特性測定方法。
【0069】
<9>
上記下地金属層は、クロム、チタン又はアルミニウムからなる、<6>~<8>のいずれか1つに記載の反射吸収特性測定方法。
【0070】
<10>
上記金属粒子の平均粒子径が50nm以上、200nm以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の反射吸収特性測定方法。
【0071】
<11>
<1>~<10>のいずれか1つに記載の反射吸収特性測定方法を用いて、反射吸収特性の変化を評価する工程を備える、反射吸収特性評価方法。
【実施例0072】
以下、本発明の反射吸収特性測定方法及び反射吸収特性評価方法をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
図1に示す実施例の方法又は
図2に示す比較例の方法を用いて、エチレングリコール-水混合溶媒の屈折率を測定し、反射率を求めた。水の屈折率は1.33、エチレングリコールの屈折率は1.45であり、エチレングリコールの濃度を変化させることで、屈折率を調節した。
【0074】
図7は、本発明の範囲内である実施例に係る反射吸収特性測定方法を用いた反射率の結果を示すグラフの一例である。
図8は、本発明の範囲外である比較例に係る反射吸収特性測定方法を用いた反射率の結果を示すグラフの一例である。
【0075】
図7及び
図8より、いずれの方法においても、局在表面プラズモン共鳴による共鳴ピークが確認できる。そして、エチレングリコール(EG)の割合の変化に伴う屈折率の変化によって、共鳴ピークがシフトしていることも確認できる。
【0076】
特に、
図7では、
図8に比べて共鳴ピークのシフト量が大きくなっている。
図7及び
図8の比較から、
図1に示す実施例の方法では、
図2に示す比較例の方法に比べて測定感度が向上していると考えられる。